(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】電動昇降装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B66D 1/46 20060101AFI20220225BHJP
B66D 3/20 20060101ALI20220225BHJP
B66F 7/12 20060101ALI20220225BHJP
B66F 17/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B66D1/46 E
B66D1/46 F
B66D3/20 K
B66F7/12
B66F17/00 A
B66F17/00 K
(21)【出願番号】P 2017197526
(22)【出願日】2017-10-11
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160031(JP,A)
【文献】特開2002-080189(JP,A)
【文献】特開2016-222462(JP,A)
【文献】特開2015-218005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00-5/34
B66C 13/00-15/06,19/00-23/94
B66F 7/00-7/28,13/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降させる物品を係止する係止部材と、
前記係止部材に接続されて前記係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
前記昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
前記係止部材に印加される重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
前記係止部材の昇降位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
前記位置検出部からの前記位置信号と前記重量検出部からの前記重量信号に基づいて、前記モータ部の制御を行う制御部と、
前記制御部と繋がって前記係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
を備え、
前記制御部は、前記重量検出部から所定重量以上の前記重量信号を受信した時、前記係止部材を下降方向に所定距離だけ移動させた後、前記重量検出部から前記所定重量よりも小さい前記重量信号を受信した時に前記係止部材の位置を保持し、前記操作指令部の指令を待機するように制御することを特徴とする電動昇降装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記重量検出部より前記所定重量以上の前記重量信号を受信した時から、前記操作指令部の指令を待機している期間中に、
前記係止部材の位置を保持した状態で待機していることを音、光、画像表示及び振動の少なくとも1つにて報知を行う報知手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電動昇降装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記昇降作動部が発生させる前記係止部材への力と前記係止部材に加わる鉛直下向きの力を釣り合わせて前記係止部材を任意の位置にてバランス状態になるように、前記モータ部の制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動昇降装置。
【請求項4】
前記昇降作動部が、
半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交互に連接され、片端が前記係止部材に連結するリンクチェーンと、
前記モータ部の駆動により回転して、前記リンクチェーンを巻回して前記リンクチェーンの繰り出しと引込みを巻回する回転部材と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動昇降装置。
【請求項5】
前記昇降作動部が、
対をなして相互に噛み合い、片端が前記係止部材に連結して鉛直上方向に剛直化する噛合チェーンと、
前記モータ部の駆動により回転して、前記噛合チェーンと噛み合って前記噛合チェーンの繰り出し及び引込みを行う歯車と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動昇降装置。
【請求項6】
昇降させる物品を係止する係止部材と、
前記係止部材に接続されて前記係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
前記昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
前記係止部材に印加される重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
前記係止部材の昇降位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
前記位置検出部からの前記位置信号と前記重量検出部からの前記重量信号に基づいて、前記モータ部の制御を行う制御部と、
前記制御部と繋がって前記係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
を備える電動昇降装置の制御方法であって、
前記制御部は、
前記重量検出部から所定重量以上の前記重量信号を受信したかどうかを判断する第1の判断ステップと、
前記第1の判断ステップにより前記所定重量以上の前記重量信号を受信したと判断した時に前記係止部材を下降方向に所定距離だけ移動させる移動ステップと、
前記重量検出部から前記所定重量以上の前記重量信号を受信したかどうかを判断する第2の判断ステップと、
前記第2の判断ステップにより前記所定重量より小さい前記重量信号を受信したと判断した時に前記係止部材の位置を保持する保持ステップと、
前記操作指令部の指令を待つ待機ステップと、
を実行することを特徴とする電動昇降装置の制御方法。
【請求項7】
前記制御部は、前記昇降作動部が発生させる前記係止部材への力と前記係止部材に加わる鉛直下向きの力を釣り合わせて前記係止部材を任意の位置にてバランス状態になるように、前記モータ部の制御を実行することを特徴とする請求項6に記載の電動昇降装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造分野の製造組立て設備、運輸分野の移送設備などに用いて、物品を鉛直上下方向にモータによって昇降移動させる電動昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から工業製品の組立てを行う工場では、大きな重量を有する工具、作業用機器、製品、半完成品などの荷役物を吊下げ及び上下動作させる荷役機械を使用している。その中でも、使用者が大きな重量の荷役物を比較的軽い操作力で任意の高さに上下動できるように助力を発生させる昇降装置は、圧力エアを用いたものと、電動モータを用いたものが知られている。
【0003】
エアシリンダを用いたものは、主としてアーム式で、圧力エアが必要であることからエアコンプレッサ等が別途必要であり、またエア供給が切れた際の安全装置が必要であるという難点があった。また異なる重量の荷役物を吊下げると、その重量差によって助力の度合いが変わってしまうため、これを修正するために、都度手動でエア圧を調整するようにすると作業効率が低下し、荷役物重量をコンピュータに登録して登録呼出しで行うようにしようとすると電空レギュレータを用いるため配管なども含め構成が複雑になるという難点があった。
【0004】
これに対して電動モータを用いた昇降装置には、物品をロープやチェーンで吊下げる吊下げ式が知られていて、ロープやチェーンを巻胴に巻回して鉛直上下方向にモータによるアシストで重量バランスさせ僅かな操作力で昇降移動させるバランス型電動昇降装置の実用化が始まっている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなバランス型の電動昇降装置において、構造物に固定されたものを誤ってj持ち上げようとしたり、物品が何か固定物に引っかかったりして、昇降装置の可搬重量を超える力が加わった時、非常用のブレーキをかけて停止させる動作を行うのが一般的であった。この時、過負荷状態で非常ブレーキが作動するため物品や昇降装置に強い負荷が加わったままになって昇降装置や物品の破損を生じることがあり、また物品の取り外しも困難であるということから改善の余地があった。
【0007】
このような問題に鑑みて、本発明は、対象とする物品を支持して任意の位置でバランスさせ、小さな外力を加えることで昇降移動させる電動昇降装置の安全性、操作性の向上を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の電動昇降装置は、上記の目的を達成するために、昇降させる物品を係止する係止部材と、
係止部材に接続されて係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
係止部材に印加される重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
係止部材の昇降位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
位置検出部からの位置信号と重量検出部からの重量信号に基づいて、モータ部の制御を行う制御部と、
制御部と繋がって係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
を備え、
制御部は、重量検出部から所定重量以上の重量信号を受信した時、係止部材を下降方向に所定距離だけ移動させた後、重量検出部から所定重量よりも小さい重量信号を受信した時に係止部材の位置を保持し、操作指令部の指令を待機するように制御するように構成されている。
【0009】
請求項2に記載の電動昇降装置は、上記の目的を達成するために、制御部は、重量検出部より所定重量以上の重量信号を受信した時から、操作指令部の指令を待機している期間中に、係止部材の位置を保持した状態で待機していることを音、光、画像表示及び振動の少なくとも1つにて報知を行う報知手段をさらに有して構成されている。
【0010】
請求項3に記載の電動昇降装置は、上記の目的を達成するために、制御部は、昇降作動部が発生させる係止部材への力と係止部材に加わる鉛直下向きの力を釣り合わせて係止部材を任意の位置にてバランス状態になるように、モータ部の制御を行うように構成されている。
【0011】
請求項4に記載の電動昇降装置は、上記の目的を達成するために、昇降作動部が、
半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交互に連接され、片端が係止部材に連結するリンクチェーンと、
モータ部の駆動により回転して、リンクチェーンを巻回してリンクチェーンの繰り出しと引込みを巻回する回転部材と、
を備えている。
【0012】
請求項5に記載の電動昇降装置の制御装置は、上記の目的を達成するために、昇降作動部が、
対をなして相互に噛み合い、片端が係止部材に連結して鉛直上方向に剛直化する噛合チェーンと、
モータ部の駆動により回転して、噛合チェーンと噛み合って噛合チェーンの繰り出し及び引込みを行う歯車と、
を備えている。
【0013】
請求項6に記載の電動昇降装置の制御方法は、上記の目的を達成するために、昇降させる物品を係止する係止部材と、
係止部材に接続されて係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
昇降作動部と繋がっている駆動源のモータ部と、
係止部材に印加される重量を検出して重量信号を出力する重量検出部と、
係止部材の昇降位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
位置検出部からの位置信号と重量検出部からの重量信号に基づいて、モータ部の制御を行う制御部と、
制御部と繋がって係止部材の昇降に係る指令を行う操作指令部と、
を備える電動昇降装置の制御方法であって、
制御部は、
重量検出部から所定重量以上の重量信号を受信したかどうかを判断する第1の判断ステップと、
第1の判断ステップにより所定重量以上の重量信号を受信したと判断した時に係止部材を下降方向に所定距離だけ移動させる移動ステップと、
重量検出部から所定重量以上の重量信号を受信したかどうかを判断する第2の判断ステップと、
第2の判断ステップにより所定重量より小さい重量信号を受信したと判断した時に係止部材の位置を保持する保持ステップと、
操作指令部の指令を待つ待機ステップと、
を実行するように構成されている。
【0014】
請求項6に記載の電動昇降装置の制御方法は、上記の目的を達成するために、制御部は、昇降作動部が発生させる係止部材への力と係止部材に加わる鉛直下向きの力を釣り合わせて係止部材を任意の位置にてバランス状態になるように、モータ部の制御を実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明の電動昇降装置によれば、電動昇降装置の制御部は、物品を上昇させている時に可搬重量を超える過荷重を検出した際には、係止部材を鉛直下方向に所定の距離降下させた後再度重量を検出し、過荷重が解消していれば保持状態となって操作指令を受け付けて待機するので、物品及び係止部材に過大な荷重が継続して加わることがなく、安全性と操作性に優れた電動昇降装置を提供することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明の電動昇降装置によれば上記効果に加えて、可搬重量を超える過荷重を検出した時点から操作指令部からの指令を待機する期間において報知手段によってその状態を作業者に報知するので、電動昇降装置が現在どのような状態にあるかを作業者は知ることができ、安全性及び操作性に優れた電動昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の斜視構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の一部を透明化した斜視構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作フローチャート図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の斜視構成図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の正面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の側面斜視図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る電動昇降装置について、図面を基に詳細な説明を行う。
【0019】
図1は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置1の外観構成を示した斜視図である。電動昇降装置1は、カバーにて覆われた本体部11と、この本体部11からリンクチェーン6に沿って下方に伸びた位置にある操作指令部22aと、リンクチェーン6の片端に繋がって物品30aを吊下げ係止する係止部材8a、リンクチェーン6の他端側(無負荷側)にてリンクチェーン6を巻上げている時にリンクチェーン6の一部を収納するリンクチェーン収納部12とで構成されている。
【0020】
図2は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置1の本体部11の一部の内部構造を示したものであって、
図1における本体部11の一部を省略して表したものである。
【0021】
モータとモータの負荷側に取り付けられた減速機とでモータ部2を構成している。モータは例えばサーボモータである。そして減速機はモータの回転速度を所定の速度に減速している。減速機は例えば波動歯車減速機である。波動歯車減速機は外周が楕円状のウエーブジェネレータと、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なフレクスプラインと、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えたサーキュラスプラインとからなる。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げた回転出力軸3に取り出されて伝達するようになっている。
【0022】
減速機に例えば波動歯車減速機のようなバックラッシが微小なものを使用することで、モータの正逆回転切り換えを頻繁に行って助力動作を行う時に、切り換え時の制御不能な領域をなくし、スムーズな操作感を実現できる。回転出力軸3は減速機にて減速された回転軸であり、昇降作動部7aに連結され、昇降作動部7aを連続的に正逆に回転させるものである。
【0023】
本体部11の天面にはこの電動昇降装置1を吊下げるための吊下げ用フック9が固定されている。この吊下げ用フック9は水平方向の位置で電動昇降装置1の重心位置に近いところに設けられる。
【0024】
リンクチェーン6は、半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交差して交互に連接されたものであって、一端は係止部材8aに繋がっていて、他端(無負荷側)はリンクチェーン収納部12に収納されている。
【0025】
係止部材8aは物品30aを係止して吊下げるためのものであって、本実施形態ではリンクチェーン6に連結されたフック形状のものを使用している。係止部材8aはフックに限らず、対象とする物品30aの形状によって適宜選択される。
【0026】
昇降作動部7aは、駆動源のモータ部2からの動力の伝達によって回転する回転部材と、係止部材8aに接続されたリンクチェーン6を含んで構成される。本実施形態では昇降作動部7aの回転部材は円筒の形状であって、回転出力軸3と繋がっていて、リンクチェーン6の繰り出しと引込みを行う。リンクチェーン6が巻回される位置は、おおよそ吊下げ用フック9の鉛直下付近であって、本体部11の重心位置に近いところに設けられる。リンクチェーン6は回転部材に設けられたポケット溝に嵌入されておおよそ180度ほど巻回される。本実施形態では係止部材8aに繋がった昇降作動部7aにリンクチェーン6を用いたが、これに限らずワイヤーロープ等であっても良い。その際昇降作動部7aの回転部材はドラム形状でワイヤーロープはその一端がドラムの胴部に固定されて巻回される。
【0027】
モータ部2の反負荷側にはモータの回転角位置を検出する位置検出部4がモータ部2に連結されている。位置検出部4はいわゆるアブソリュートエンコーダであって、光学式にてモータの回転角位置を検出して位置信号を出力する。この位置検出部4は、係止部材8aの繰り出し位置すなわち昇降位置を検出することができる。
【0028】
本実施形態では、位置検出部4はモータ部2の反負荷側に配置したがこれに限らず、減速機の出力である回転出力軸3や昇降作動部7aに設けられても良く、また両方に設けられても良い。さらに光学式に限らず磁気式や静電容量式等であっても良い。
【0029】
重量検出部5は昇降作動部7aに巻きつけられているリンクチェーン6から伝達される力を反力として検出できるように起歪体と起歪体に貼られた歪みゲージを備えている。歪みゲージは重量に応じて起歪体に生ずる歪みを電気信号に変換するホイートストーンブリッジ回路に組み込まれ、これによって重量検出部5は重量信号を出力する。
【0030】
なお重量検出部5はこれに限らず、係止部材8aに加わる重量を検出できれば良く、減速機と昇降作動部7aとの間に設けた回転出力軸3の捻れからトルクを検出するような回転型トルクセンサの構造や、モータ部2のケーシングと本体部11の固定部材の間に設けてモータ部2が受ける反力を検出する鼓型の構造のものであっても良い。
【0031】
そして不図示の制御部10が昇降作動部7aの近傍で本体部11内に配置されている。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えている。制御部10は、位置検出部4からの位置信号及び重量検出部5からの重量信号を基に、モータ部2を制御する。制御部10をはじめとする電装部は、電動昇降装置1を粉粒や水滴のかかる場所での使用も可能にするために本体部11内に配置されている。
【0032】
操作指令部22aは、係止部材8aの鉛直上方向でリンクチェーン6の端部近傍に配置されている。操作指令部22aは例えば箱型の形状であって、照光式の操作釦等が設けられており、これらの釦は制御部10にスパイラルコード13で電気的に繋がっていて係止部材8aの昇降に係る指令を制御部10へ行うことができる。操作指令部22aと制御部10との接続は有線に限らず赤外線等を用いた無線によるものであっても良い。操作指令部22aの操作釦は、係止部材8aに吊下げた物品30aをバランス状態にするバランス釦22bと、現在の係止部材8aの位置を保持する保持釦22cと、保持釦22cにより保持された後に、電動操作で係止部材8aを上昇させる上昇釦22dと、電動操作で係止部材8aを下降させる下降釦22eと、からなる。これら操作指令部22aの各操作釦は、発光によって押されたことを作業者に報知する。
【0033】
以上の構成にて、係止部材8aに物品30aが吊るされると、物品30aの重量によってリンクチェーン6が引っ張られるため、係止部材8a、リンクチェーン6、昇降作動部7a、回転出力軸3、モータ部2を介して重量検出部5も下方に引張られる。そして重量検出部5の起歪部が変形し、制御部10は、昇降作動部7aに加わる荷重を起歪部に添着された歪みゲージにて検出した荷重信号と、位置検出部4にて検出した位置信号を基に演算して、物品30aがバランスするようにモータ部2に対して助力する制御を行う。すなわち制御部10は、昇降作動部7aに発生させる係止部材8aへの力と係止部材8aに加わる鉛直下向きの力を釣り合わせて係止部材8aと物品30aとを任意の位置にてバランス状態になるように、モータ部2の制御を行っている。もちろん制御部10は、作業者が物品30a若しくは係止部材8aに僅かな上下いずれかの方向の外力を印加することで物品30aをバランスさせ、作業者が外力の印加を止めると物品30a若しくは係止部材8aを上下いずれかの方向に例えば低速で移動させるような動作を行うことも可能である。
【0034】
図3は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明図である。一方、
図6は本発明の実施形態に係る電動昇降装置の動作を示すフローチャート図である。
図3と
図6を用いて本発明の実施形態に係る電動昇降装置を用いた作業の例と制御方法を説明する。
【0035】
作業者は、まず
図3(a)に示すように、床などの固定構造物31に置かれている物品30aに係止部材8aを近づけ、物品30aの被係止部に係止させる。そして作業者は、操作指令部22aの保持釦22cを押すと、制御部10は保持釦22cが押されたことを判断し(ステップS101)、その現在位置を保持するように制御する保持ステップS102を実行する。次いで制御部10は上昇釦22d、下降釦22e若しくはバランス釦22bを受け付けるように待機する待機ステップを実行する。
【0036】
作業者が、上昇釦22dを押すと、制御部10はステップS103にて上昇指令と判断し、ステップS104を実行し、物品30aを上昇させる。 制御部10は、重量検出部5から重量信号を受信して所定重量を超過したかどうかを判断する第1の判断ステップS105を行い、第1の判断ステップS105にて所定重量を超過していないと判断した時には、位置保持の保持ステップS102に戻り、その後待機ステップに戻る。作業者が上昇釦22dを押し続けている時に重量検出部5からの重量信号が所定重量を超過していなければ、保持ステップS102から第1の判断ステップS105をループで繰り返す。作業者が、物品30aを固定構造物31から離れる位置(h1)まで上昇させたところで(
図3(b))、作業者はバランス釦22bを押す。制御部10はバランス釦22bが押されたことを判断し(ステップS108)、次いでバランス制御ステップS109を実行する。すなわち待機ステップは上昇釦22d若しくは下降釦22eが押されたことを判断するステップS103と、バランス釦22bが押されたことを判断するステップS108を含んでいる。
【0037】
バランス制御ステップS109では制御部10は物品30aの重量の登録を行い、次いで登録した重量に基づいて物品30aのバランスを保つようにモータ部2を制御する。より詳細には、制御部10は重量検出部5から重量信号を得て、この信号の値が収束した時点で、物品30aの重量を算出する。算出した物品30aの重量が、この電動昇降装置1の許容重量範囲であれば、制御部10は重量登録が完了したことを、制御部10に繋がっている不図示の報知手段にて作業者へ報知する。報知手段は音、光、画像表示及び振動の少なくとも1つであって、例えばブザー、LED等の発光、表示器による画像や文字表示、小型モータによる振動など、この電動昇降装置1が使用される環境に応じて選択されるものであって、複数の組合せであっても良い。この報知手段からの報知によって物品30aの重量登録が完了となる。なおこの報知手段は制御部10、操作指令部22aの他この電動昇降装置1のいずれの場所に配置しても良く、また電動昇降装置1と着脱可能なもので構成しても良い。
【0038】
作業者がこの重量登録完了を確認した時点で、電動昇降装置1はバランス状態になっていて、作業者は物品30aに僅かな外力を加えることで持ち上げることができる。
【0039】
電動昇降装置1がバランス状態となった後には、作業者が保持釦22cを押したことを制御部10がステップS110によって判断するまで、バランス制御を行うバランス制御ステップS109が行われる。そして電動昇降装置1がバランス状態にある時に、作業者が保持釦22cを押すと、制御部10は保持釦22cを押されたことをステップS110によって判断し、係止部材8a及び物品30aの位置を保持する保持ステップS102に戻る。
【0040】
図4は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明図であって、物品30aが固定構造物31に固定されている時の状態を示している。
図4と
図6を用いて本発明の実施形態に係る電動昇降装置の動作を説明する。
【0041】
物品30aはボルト32により固定構造物31に下側から固定されていて、作業者は物品30a側からはボルト32は見えないので固定されているかどうかは判らない状態である。作業者が物品30aを吊上げるためには予めボルト32を外しておかねばならないが、ボルトが多数あって幾つかのボルト32を外し忘れてしまっている場合である。
【0042】
まず作業者は
図4(c)のように床などの固定構造物31に置かれている物品30aに、係止部材8aを近づけ、物品30aの被係止部に係止させる。そして作業者は、操作指令部22aの保持釦22cと、次いで上昇釦22dとを押して物品30aを固定構造物31から離れる位置まで上昇させようとする。しかしながら物品30aはボルト32により固定構造物31に固定されているため、リンクチェーン6に引張力が加わった状態となっているものの、物品30aは固定構造物31から浮き上がることはできない(
図4(d))。したがって作業者は物品30aを浮上させようとして上昇釦22dを押し続けることになる。作業者が上昇釦22dを押し続けると、リンクチェーン6への引張力が増大し、重量検出部5で検出する重量が増加して、この電動昇降装置1で扱える所定重量に達する。
【0043】
制御部10は、作業者が上昇釦22dを押している期間中、重量検出部5から重量信号を受信して所定重量を超過したかどうかを判断する第1の判断ステップS105を行い、第1の判断ステップS105にて所定重量を超過したと判断した時には、係止部材8aを下降方向に所定距離h2だけ移動させる移動ステップS106を行う。
図4(e)は係止部材8aを下降方向に所定距離h2だけ移動させた後の状態を誇張して表したものであって、リンクチェーン6のテンションが緩んだ状態である。所定距離h2は扱う物品30aの形状や重量などを勘案して作業管理者や作業者によって予め定めるものであって、例えば本実施形態では数mm程度である。制御部10が係止部材8aを下降方向に所定距離h2だけ移動させようとするものの、
図4(e)に示すように物品30aは動かず、リンクチェーン6のみが緩むことになる。
【0044】
制御部10は、移動ステップS106の実行後、重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも小さいかどうかを判断する第2の判断ステップS107を実行する。リンクチェーン6が緩むことで、重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも減少すると、制御部10は第2の判断ステップS107で重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも小さいと判断し、所定距離h2の位置で係止部材8aの位置を保持する保持ステップS102に戻り、次いで操作指令部22aからの操作の指令を待って待機する待機ステップであるステップS103及びステップS108を実行する。 したがって例えば作業者は下降釦22eを押すことでさらに係止部材8aを下降させることができる。その後は係止部材8aを物品30aから外しても良いし、もし係止部材8aを物品30aから外さずに物品30aが固定構造物31から解放できるならこの解放作業を実行しても良い。
【0045】
また制御部10が、第1の判断ステップS105から、移動ステップS106、保持ステップS102を経て、ステップS103とステップS108を実行して待機している期間中、制御部10は、制御動作が遷移して保持状態で待機していることを、音、光、画像表示及び振動の少なくとも1つにて報知を行う。報知を行う不図示の報知手段は音、光、画像表示及び振動の少なくとも1つであって、例えばブザー、LED等の発光、表示器による画像や文字表示、小型モータによる振動など、この電動昇降装置1が使用される環境に応じて選択されるものであって、これらの複数の組合せであっても良い。そしてこの報知手段は前述のバランス登録の完了の報知手段と同じであってもよいし、異なるもので構成しても良い。
【0046】
もし制御部10が係止部材8aを下降方向に所定距離h2だけ移動させたにもかかわらず、重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも減少しない場合は、制御部10は第2の判断ステップS107にて重量検出部5で検出する重量が所定重量超過のままと判断し、そしてこれは電動昇降装置1が異常な状態にあると判断し電動昇降装置1は動作を停止する。
【0047】
図5は本発明の第1の実施形態に係る電動昇降装置の動作説明図であって、物品30aが固定構造物31に半固定されている時の状態を示している。
図5と
図6を用いて本発明の実施形態に係る電動昇降装置の動作を説明する。
【0048】
ボルト32のネジ部は物品30aに一部螺合しているが、ボルト32の頭の部分と固定構造物31には距離h3の隙間があって、ボルト32は緩められた途中の状態である(
図5(f))。作業者は、
図5(f)の状態で物品30aを保持釦22cを押して保持状態として、次いで上昇釦22dを押して吊上げ、物品30aが浮いたところでバランス釦22bを押してバランス動作に移行させようとする。しかしながら物品30aは距離h3だけ上昇したところでボルト32によって上昇が制限されそれ以上上昇ができない(
図5(g))。この時にはリンクチェーン6に張力が加わった状態である。
【0049】
もし作業者が、物品30aを保持釦22cを押して保持状態として、次いで上昇釦22dを押して物品30aを吊上げ、物品30aが距離h3より小さな位置でバランス釦22bを押してバランス動作に移行した場合には、その後作業者は係止部材8a若しくは物品30aを外力を加えて持ち上げると、物品30aが距離h3の位置へ到達する。しかしボルト32により制限されて作業者はそれ以上持ち上げできないので、物品30aを下側へ降ろして固定構造物31に到達させることになる。
【0050】
一方作業者が、物品30aを保持釦22cを押して保持状態として、次いで上昇釦22dを押して吊上げ、物品30aが距離h3に到達してもなお上昇釦22dを押し続けると、重量検出部5で検出する重量が増加して、この電動昇降装置1で扱える所定重量を超える重量に達する。
【0051】
制御部10が重量検出部5からこの所定重量以上の重量信号を受信した時には、係止部材8aを下降方向に所定距離h2だけ移動させる(移動ステップS106)。所定距離h2は前述のように扱う物品30aの形状や重量などを勘案して作業管理者や作業者によって予め定めるものである。制御部10が、係止部材8aを下降方向に所定距離h2移動させる移動ステップS106を実行すると、物品30aは降下し始める。
【0052】
もし(h3-h2)>0の時は、物品30aは所定距離h2だけ降下して、この時に重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも減少するので、制御部10は所定距離h2の位置で係止部材8aの位置を保持し、次いで操作指令部22aからの操作の指令を待って待機する。
【0053】
一方(h3―h2)≦0の時は、物品30aはh3だけ降下して固定構造物31に着地し、この時に重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも減少するので、制御部10はこの位置で係止部材8aの位置を保持し、次いで操作指令部22aからの操作の指令を待って待機する。
【0054】
制御部10は、保持ステップS102により保持状態とし、次いで操作指令部22aからの操作の指令を待って待機するので、これ以降は電動操作で係止部材8aを上昇させる上昇釦22dと、電動操作で係止部材8aを下降させる下降釦22eとによって作業者は操作が可能である。
【0055】
もし係止部材8aを下降方向に所定距離h2だけ移動させたにもかかわらず、重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも減少しない場合は、制御部10は第2の判断ステップS107にて重量検出部5で検出する重量が所定重量超過のままと判断し、そしてこの時、電動昇降装置1が異常な状態にあると判断し電動昇降装置1は動作を停止する。
【0056】
図7は本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の斜視図である。また
図8は本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の正面図である。
【0057】
本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40は、昇降部として、物品を載せ置く係止部材8bと、係止部材8bを上下方向に昇降可能にする昇降作動部7bと、昇降作動部7bを支持固定する昇降支持部41と、係止部材8bの昇降を案内矯正するリンクアーム46と、昇降作動部7bを駆動するモータ部2と、係止部材8bに印加される重量を検出する重量検出部5と、モータ部2に繋がって係止部材8bの昇降位置を検出する位置検出部4と、係止部材8bの昇降動作を制御する制御部10と、を備えている。そして電動昇降装置40は、これに加えて、車輪43、電源44、ハンドル45及び操作指令部22aを含み、いわゆる移動台車の構造となっている。
【0058】
車輪43は、自由に方向転換可能な複数の自在輪と、方向転換が不能な固定輪からなる複数の従動輪とで構成されている。したがって作業者は、ハンドル45を押し引き操作することで電動昇降装置40を操舵することができる。
【0059】
昇降作動部7bが、昇降支持部41上に係止部材8bを昇降可能にするように載置されている。昇降作動部7bは、例えば噛合チェーン42を有したものであって、対をなして相互に噛合可能なチェーンを有する。噛合チェーン42は、噛み合いが外れた方向に伸長してかつ屈曲自在な状態で昇降作動部7b内の噛合チェーン収容部に収容されている。そして噛合チェーン42は、昇降作動部7bに接続した駆動源を駆動することで、剛直化した状態で鉛直上方向に繰り出されて進み、噛合チェーン42の噛み合った方の一端が接続されている係止部材8bを上昇させる。噛合チェーン42の噛み合った方の一端部は、係止部材8bを構成する支持板48にボルト等によって接続固定される。一方、噛合チェーン42の他端部は噛み合いが外れた箇所からそれぞれ反対方向に昇降作動部7bの噛合チェーン収容部内に設けた案内部に沿って動き、自由端として収容されている。噛合チェーン42は昇降作動部7bのケース内の歯車と噛み合うことで繰り出し及び引込みすることが可能である。そしてこの歯車の回転軸は継ぎ手を介して駆動源であるモータ部2に接続されている。
【0060】
モータ部2は例えば減速機を取り付けたサーボモータであって、モータによるトルクを減速機によって重量物である物品を昇降させるのに必要なトルクに増幅させている。本発明の実施形態では減速機は波動歯車減速機を使用している。波動歯車減速機は、外周が楕円状のウエーブジェネレータと、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なフレクスプラインと、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えたサーキュラスプラインとからなる。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げたスプロケット回転軸に取り出されて伝達する。電動昇降装置においては回転動力系のガタつきは可能な限り低減させることが望ましく、減速機のバックラッシは昇降作動部7bの昇降状態に影響するので、本発明の実施形態ではバックラッシが極めて微小な波動歯車減速機を用いている。
【0061】
モータの回転位置を検出する位置検出部4が、モータ部2の反負荷側に取り付けられている。この位置検出部4は、本実施形態ではモータ部2の反負荷側に配置したエンコーダであるが、昇降作動部7bのケース内の歯車や歯車の回転軸に設けて噛合チェーン42の繰り出し位置を検出しても良い。また位置検出部4を減速機の部分に設けても良い。また本実施形態では位置検出部4は光学的な反射によるエンコーダであるがこれに限らず、光学式で透過式のものであっても良いし、磁力を使用したものであっても良い。さらに位置検出部4は昇降支持部41に設置した反射型の光センサ等で構成し、支持板48の高さを測定して係止部材8bの鉛直方向の位置を検出しても良い。
【0062】
リンクアーム46は、鉛直方向にそれぞれ伸縮する複数のアームで構成され、昇降作動部7bによる係止部材8bの昇降の際の姿勢を矯正保持している。そしてリンクアーム46は、鉛直上方向に複数段組みの構造である。
【0063】
昇降支持部41は金属フレームや板金等で構成され、リンクアーム46及び昇降作動部7bを支持固定している。
【0064】
係止部材8bは支持板48と天板47を有しており、支持板48の上には天板47が配置され、支持板48は天板47を支持している。さらに重量検出部5が、支持板48の上面部付近に、天板47との間に挟み込まれて配置されている。重量検出部5は例えば歪みゲージを有したロードセルである。重量検出部5は起歪部を有して起歪部に歪みゲージが添着されていて、起歪部に加わる歪みを検出できるようになっている。そして重量検出部5は、歪みゲージを含んでホイートストーンブリッジ回路を構成して歪み量に応じたアナログ信号を出力し、これを増幅して演算を行って天板47に加わる重量を求め、重量信号として出力する。そしてこの重量信号は、配線ケーブル(不図示)等によって制御部10へ送信されている。なお配線ケーブルは伸縮するスパイラルコードであっても良いし、アーム部22に沿うようにして配線及び固定されていても良いし、有線に限らず無線で送信するものであっても良い。
【0065】
なお本実施形態では、重量検出部5は係止部材8bに4つ設けてあるがこれに限るものではない。重量検出部を複数配置することで、物品が天板47に置かれる位置の自由度が上がり、フレキシブルな作業の向上を図ることができる。
【0066】
また一方で重量検出部5は、昇降作動部7b内の歯車の軸に起歪部を設けてそこに歪みゲージを添着してトルク値を求め重量を演算して求めるような構成にしても良いし、減速機と一体で設けて減速機の出力軸を起歪部として歪みゲージを添着したものであっても良い。そしてこの場合重量検出は、歪みゲージ式に限らず、磁歪式や静電容量式等によるものであっても良い。
【0067】
制御部10は昇降支持部41にブラケット等で固定されていて、重量検出部5は制御部10にケーブル等で接続されている。制御部10はモータ部2を駆動する回路を有してモータ部2とケーブルで電気的に接続されている。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えている。制御部10は、位置検出部4からの位置信号及び重量検出部5からの重量信号を基に、モータ部2を制御する。
【0068】
電源44は昇降支持部41にブラケット等で固定されていて、 例えば電池とインバータ等で構成され、制御部10とモータ部2等へ電源供給を行うものである。
【0069】
操作指令部22aは例えばハンドル45にあって、制御部10とケーブル等で繋がって、操作の指令を行うものである。なお操作指令部22aはハンドル45から着脱可能であって良いし、制御部10と無線で繋がって通信するものであっても良い。また操作指令部22aに配置された釦類は第2の実施形態では第1の実施形態と同等のものであるが、これに限るものではない。
【0070】
図9は本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の側面斜視図であって、例えば略コの字型をした物品30bを載せた時の状態を示している。この構成で制御部10は、係止部材8bに設けられた重量検出部5から重量信号を、モータ部2の反負荷側の位置検出部4から位置信号をそれぞれ受信し、これに基づき、係止部材8bの鉛直方向の位置を保ちつつ、係止部材8bが受ける重量をキャンセルしてバランスするように指令するための指令信号を演算する。そして制御部10は、この指令信号によってモータ部2の駆動を行い、係止部材8bに置かれた物品30bを任意の位置にて留まらせ、バランス状態を保ちその位置を保持する。そして作業者は係止部材8b若しくは物品30bに手を添えて僅かな外力を加えるという直接的な操作で、係止部材8bを上下方向に昇降移動させることができる。その後作業者が外力を止めると、係止部材8bはその位置でバランス状態となって保持される。すなわち制御部10は、係止部材8bに加わる鉛直下向きの力と、昇降作動部7bが発生させる係止部材8bへの力とを釣り合わせ、係止部材8bを任意の位置にてバランスさせる。
【0071】
図10は本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の動作説明図である。
図10と
図6を用いて本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の動作を説明する。
【0072】
作業者が操作指令部22aにある保持釦22cを押すと、制御部10は保持釦22cが押されたことをステップS101にて検出して、係止部材8bを位置保持するように保持ステップS102を実行する。そして作業者は上昇釦22d若しくは下降釦22eを押して係止部材8bが物品30bを係止できる高さへ移動させて、作業者は係止部材8bが物品30bの鉛直下になるように電動昇降装置40を移動させる(
図10(a))。そして作業者は上昇釦22dを押して物品30bを係止部材8bに当接させてさらに物品30bを固定構造物31から離れる位置(h1)まで上昇させる(
図10(b))。物品30bが浮いた状態で作業者がバランス釦22bを押すと、制御部10はバランス釦22bが押されたことをステップS108にて検出して、係止部材8bをバランス制御するバランス制御ステップS109を実行する。
【0073】
制御部10は、バランス制御ステップS109では物品30bの重量の登録を行い、バランス状態を保つように前述の方法でモータ部2を制御する。より詳細には、制御部10は重量検出部5から重量信号を得て、この信号の値が収束した時点で、物品30bの重量を算出する。算出した結果、この電動昇降装置40の許容重量範囲であれば、制御部10は重量登録が完了したことを、制御部10に繋がっている不図示の報知手段にて作業者へ報知する。報知手段は音、光、画像表示及び振動の少なくとも1つであって、例えばブザー、LED等の発光、表示器による画像や文字表示、小型モータによる振動など、この電動昇降装置40が使用される環境に応じて選択されるものであって、複数の組合せであっても良い。この報知手段からの報知によって物品30bの重量登録が完了となる。なおこの報知手段は制御部10、操作指令部22aの他この電動昇降装置40のいずれの場所に配置しても良く、また電動昇降装置40と着脱可能なもので構成しても良い。
【0074】
作業者がこの重量登録完了を確認した時点で、電動昇降装置40はバランス状態になっていて、作業者は物品30bに僅かな外力を加えることで持ち上げることができる。
【0075】
その後制御部10が、作業者により保持釦22cが押されたことをステップS110によって判断するまで、バランス状態を実行するバランス制御ステップS109が行われる。そして制御部10が、保持釦22cが押されたことをステップS110によって判断すると、位置保持の保持ステップS102に戻る。
【0076】
作業者が物品30bを係止部材8bに載せ置いた後、作業者がこの電動昇降装置40を移動させる際には、係止部材8bは保持状態にして搬送する場合がある。というのもバランス状態では係止部材8bの高さ位置は規定されないので重心位置が上下動することがある。したがって作業者が電動昇降装置40を移動させて床の段差を乗り越える際の安全性等を確保するために係止部材8bを保持状態にして搬送する場合がある。
【0077】
図11は本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の動作説明図であって、物品30bが固定構造物31に固着されている時の状態を示している。したがって第1の実施形態の
図4に示す状況と類似したものである。
図11と
図6を用いて本発明の第2の実施形態に係る電動昇降装置40の動作を説明する。
【0078】
物品30bは例えば接着剤や固定構造物31との長期の結合により固定構造物31に固着状態となっていて、作業者は物品30bが固定構造物31に固着されているかどうかは目視などでは判らない状態である。作業者が物品30bを吊上げるためには予め固着を解放しておく必要があるものの、物品30bが例えば100kgを超えるような重量物であると予め人力で物品30bを水平方向に動かして確認することは困難である。
【0079】
まず作業者は上昇釦22d若しくは下降釦22eを押して係止部材8bが物品30bの係止できる位置へ移動させて、係止部材8bが物品30bの鉛直下になるように電動昇降装置40を移動させる(
図11(c))。そして作業者は、操作指令部22aの保持釦22cと、次いで上昇釦22dとを押して物品30bを固定構造物31から離れる位置まで上昇させようとする。しかしながら物品30bは固定構造物31に固着されているため、噛合チェーン42には圧縮力が加わった状態となっているものの、物品30bは固定構造物31から浮き上がることはできない(
図11(d))。したがって作業者は物品30bを浮上させようとして上昇釦22dを押し続けることになる。作業者が上昇釦22dを押し続けると、噛合チェーン42への圧縮力が増大し、重量検出部5で検出する重量が増加して、この電動昇降装置1で扱える所定重量に達する。
【0080】
制御部10は、作業者が上昇釦22dを押している期間中、重量検出部5から重量信号を受信して所定重量を超過したかどうかを判断する第1の判断ステップS105を行い、第1の判断ステップS105にて所定重量を超過したと判断した時には、係止部材8bを下降方向に所定距離h2だけ移動させる移動ステップS106を行う。
図4(e)は係止部材8bを下降方向に所定距離h2だけ移動させた後の状態を誇張して表したものであって噛合チェーン42への圧縮力が緩んだ状態である。所定距離h2は扱う物品30bの形状や重量などを勘案して作業管理者や作業者によって予め定めるものであって、例えば本実施形態では数mm程度である。制御部10が係止部材8bを下降方向に所定距離h2だけ移動させても、
図11(e)に示すように物品30bは動かずそのままである。
【0081】
制御部10は、移動ステップS106の実行後、重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも小さいかどうかを判断する第2の判断ステップS107を実行する。そして重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも減少すると、制御部10は第2の判断ステップS107で重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも小さいと判断し、所定距離h2の位置で係止部材8bの位置を保持する保持ステップS102に戻り、次いで操作指令部22aからの操作の指令を待って待機する待機ステップであるステップS103及びステップS108を実行する。 したがって例えば作業者は下降釦22eを押すことでさらに係止部材8bを下降させることができる。作業者は電動昇降装置40を物品30bの鉛直下位置からから外すことができる。
【0082】
また制御部10が、第1の判断ステップS105から、移動ステップS106、保持ステップS102を経て、ステップS103とステップS108を実行して待機している期間中、制御部10は、制御動作が遷移して保持状態で待機していることを、音、光、画像表示及び振動の少なくとも1つにて報知を行う。報知を行う不図示の報知手段は音、光、画像表示及び振動の少なくとも1つであって、例えばブザー、LED等の発光、表示器による画像や文字表示、小型モータによる振動など、この電動昇降装置40が使用される環境に応じて選択されるものであって、これらの複数の組合せであっても良い。そしてこの報知手段は前述のバランス登録の完了の報知手段と同じであってもよいし、異なるもので構成しても良い。
【0083】
もし制御部10が係止部材8bを下降方向に所定距離h2だけ移動させたにもかかわらず、重量検出部5で検出する重量が所定重量よりも減少しない場合は、制御部10は第2の判断ステップS107にて重量検出部5で検出する重量が所定重量超過のままと判断し、そしてこの時、電動昇降装置40が異常な状態にあると判断し電動昇降装置40は動作を停止する。
【0084】
また第1の実施形態の
図5に示すように物品30bが固定構造物31に半固定されているような場合においても、第1の実施形態と同様に作業及び動作を行うことは可能である。
【0085】
本発明の電動昇降装置の上述の実施形態によれば、電動昇降装置は物品を上昇させている時に可搬重量を超える過重量を検出した際には、すぐさま係止部材を鉛直下方向に所定の距離降下させ、その後再度重量を検出し、過重量が解消していれば保持状態となって操作指令を受け付けて待機する。したがって物品及び電動昇降装置に過大な荷重が継続して加わることがないので、通常の作業への回復も容易であって、操作性に優れた電動昇降装置を提供することができる。
【0086】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の活用例として、構造物に吊下げられたり、移動できる車両等に搭載されたりして使用される電動昇降装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 :電動昇降装置
2 :モータ部
3 :回転出力軸
4 :位置検出部
5 :重量検出部
6 :リンクチェーン
7a、7b :昇降作動部
8a、8b :係止部材
9 :吊下げ用フック
10:制御部
11 :本体部
12 :リンクチェーン収納部
13 :スパイラルコード
22a :操作指令部
22b :バランス釦
22c :保持釦
22d :上昇釦
22e :下降釦
30a、30b :物品
31 :固定構造物
32 :ボルト
40 :電動昇降装置
41 :昇降支持部
42 :噛合チェーン
43 :車輪
44 :電源
45 :ハンドル
46 :リンクアーム
47 :天板
48 :支持板