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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】荷役助力装置
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/18 20060101AFI20220225BHJP
   B66D 1/46 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B66D3/18 E
B66D1/46 E
B66D1/46 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017255094
(22)【出願日】2017-12-29
(65)【公開番号】P2019119550
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄
(72)【発明者】
【氏名】杉山 康之
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222462(JP,A)
【文献】国際公開第2017/063014(WO,A1)
【文献】特開平08-127490(JP,A)
【文献】特開2017-047977(JP,A)
【文献】特開平02-250531(JP,A)
【文献】特開2015-034082(JP,A)
【文献】特開昭63-288893(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0063634(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00 - 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体装置と、前記本体装置を遠隔操作する遠隔操作装置と、で構成されて、前記本体装置に係止した荷役物の昇降を前記本体装置内の動力によって助力する荷役助力装置であって、
前記遠隔操作装置は、無線通信を行う遠隔操作装置送受信部と、前記本体装置を遠隔操作するための操作手段と、前記操作手段による操作指令を受けて指令信号を前記遠隔操作装置送受信部へ送信する遠隔操作装置制御部とを備え、
前記本体装置は、前記遠隔操作装置送受信部と無線通信を行う本体装置送受信部と、前記本体装置送受信部と通信を行うと共に複数の動作モードにて前記荷役物の昇降を制御する本体装置制御部とを備え、
前記本体装置制御部は、前記指令信号を前記遠隔操作装置から受信すると、前記指令信号に応じた前記各動作モードに前記本体装置が移行するように制御し、前記遠隔操作装置送受信部と前記本体装置送受信部との通信間隔を前記各動作モードに応じた各所定の通信間隔にする指令を前記遠隔操作装置へ送信し、
前記遠隔操作装置送受信部は、当該指令を受信した後に前記各所定の通信間隔にて前記本体装置送受信部へ通信の確立の確認信号を送信し、
前記動作モードは、前記荷役物を現在の位置で保持する保持モードと、前記荷役物をバランス状態にするバランスモードを含み、
前記本体装置制御部は、
前記保持モードでは前記遠隔操作装置送受信部と前記本体装置送受信部とが第1の通信間隔で通信を行うように前記遠隔操作装置へ指令し、
前記バランスモードでは前記遠隔操作装置送受信部と前記本体装置送受信部とが前記第1の通信間隔より短い第2の通信間隔で通信を行うように前記遠隔操作装置へ指令し、 前記バランスモード中に、
前記本体装置送受信部は、前記遠隔操作装置送受信部との通信が第1の期間以上途絶えた時に通信の途絶えを前記本体装置制御部へ通知し、
前記本体装置制御部は前記通知を受けて前記本体装置を前記保持モードに移行させることを特徴とする荷役助力装置。
【請求項2】
前記本体装置は前記本体装置に係止される重量を検出して重量値を出力する重量検出部を含み、
前記本体装置制御部が、前記重量検出部からの前記重量値が所定の値よりも小さいことを検出し、前記遠隔操作装置から前記荷役物をバランス状態にする前記指令信号を受信した時、
前記本体装置制御部は、前記遠隔操作装置送受信部と前記本体装置送受信部の通信間隔を前記第2の通信間隔より長い第3の通信間隔にて行うように前記遠隔操作装置送受信部へ指令し、
前記遠隔操作装置送受信部は前記第3の通信間隔の指令を受信して、前記本体装置送受信部と前記第3の通信間隔にて通信を行うことを特徴とする請求項1に記載の荷役助力装置。
【請求項3】
前記遠隔操作装置送受信部は、前記遠隔操作装置制御部から操作の前記指令信号を受信した後、前記本体装置送受信部との通信を前記第2の通信間隔以下の第4の通信間隔にて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の荷役助力装置。
【請求項4】
前記遠隔操作装置送受信部は、前記遠隔操作装置制御部からの操作の前記指令信号がオンからオフに変化した時点から第2の期間を経過後、前記本体装置送受信部との通信を、前記本体装置制御部から指令された前記通信間隔にて行うことを特徴とする請求項3に記載の荷役助力装置。
【請求項5】
本体装置と、前記本体装置を遠隔操作する遠隔操作装置と、で構成されて、前記本体装置に係止した荷役物の昇降を前記本体装置内の動力によって助力する荷役助力装置であって、
前記遠隔操作装置は、無線通信を行う遠隔操作装置送受信部と、前記本体装置を遠隔操作するための操作手段と、前記操作手段による操作指令を受けて指令信号を前記遠隔操作装置送受信部へ送信する遠隔操作装置制御部とを備え、
前記本体装置は、前記遠隔操作装置送受信部と無線通信を行う本体装置送受信部と、前記本体装置送受信部と通信を行うと共に、前記荷役物を現在の位置で保持する保持モードと、前記荷役物をバランス状態にするバランスモードを含む複数の動作モードにて前記荷役物の昇降を制御する本体装置制御部とを備え、
前記本体装置制御部は、前記指令信号を前記遠隔操作装置から受信すると、前記指令信号に応じた前記各動作モードに前記本体装置が移行するように制御し、前記遠隔操作装置送受信部と前記本体装置送受信部との通信間隔を前記各動作モードに応じた各所定の通信間隔にする指令を前記遠隔操作装置へ送信し、
前記遠隔操作装置送受信部は、当該指令を受信した後に前記各所定の通信間隔にて前記本体装置送受信部へ通信の確立の確認信号を送信し、
前記バランスモード中に、
前記本体装置送受信部は、前記遠隔操作装置送受信部との通信が第1の期間以上途絶えた時に通信の途絶えを前記本体装置制御部へ通知し、
前記本体装置制御部は前記通知を受けて前記本体装置を前記保持モードに移行させることを特徴とする荷役助力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造分野の製造組立てや搬送などに用いる荷役助力装置であって、例えば荷役物を昇降させる際にモータによるアシストで重量バランスさせ僅かな操作力で上下移動させる荷役助力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から工業製品の組立てを行う工場では、大きな重量を有する工具、作業用機器、製品、半完成品などの荷役物を吊下げて上下移動させる荷役装置を使用している。その荷役装置の中でも、大きな重量の荷役物に対してバランス状態を作り出し、使用者が軽い操作力で任意の高さに上下移動できるように助力を発生させる荷役助力装置が一部で使用されている。このように助力を発生させる荷役助力装置は、モータによって助力を行いバランス状態を作り出し、荷役物に小さな操作力を加えることでスムーズに移動させるため、単に上下動作を電動モータで行うものとは異なり、荷役物の荷重やこれに加わる操作力を例えば荷重検出器で検出して、回転角検出器と繋がったACサーボモータ等で細かいバランス制御を行うように構成されている。
【0003】
このような荷役助力装置を無線遠隔の操作で行うことが要望されている。特に荷役物の昇降をリンクチェーンで行うタイプの荷役助力装置は揚程を高くすることが容易であるため、高所に取り付けられて無線で操作を行うことによって作業範囲の拡大が可能となる。そして作業を行う装置を無線遠隔操作する技術については、例えば特許文献1にて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-47977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、操作部からの指令が安全に係る操作指令であるか否やによって制御部は動作を変更する技術が開示されている。しかしながら安全に係る操作指令は受信側の受信確認を必要としていることから、通信が途絶えた際において安全性の確保に改善の余地があった。
【0006】
また無線遠隔操作装置いわゆるリモコンは電池駆動であることから、消費電力を下げて電池交換の頻度を少なくしたいという要望がある。
【0007】
このような問題に鑑みて、本発明は無線遠隔操作装置を用いた荷役助力装置において、操作性と安全性の確保及び遠隔操作装置の消費電力の低減を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の荷役助力装置は,
本体装置と、本体装置を遠隔操作する遠隔操作装置と、で構成されて、本体装置に係止した荷役物の昇降を本体装置内の動力によって助力する荷役助力装置であって、
遠隔操作装置は、無線通信を行う遠隔操作装置送受信部と、本体装置を遠隔操作するための操作手段と、操作手段による操作指令を受けて指令信号を遠隔操作装置送受信部へ送信する遠隔操作装置制御部とを備え、
本体装置は、遠隔操作装置送受信部と無線通信を行う本体装置送受信部と、本体装置送受信部と通信を行うと共に複数の動作モードにて荷役物の昇降を制御する本体装置制御部とを備え、
本体装置制御部は、指令信号を遠隔操作装置から受信すると、指令信号に応じた各動作モードに本体装置が移行するように制御し、遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部との通信間隔を各動作モードに応じた各所定の通信間隔にする指令を遠隔操作装置へ送信し、
遠隔操作装置送受信部は、当該指令を受信した後に各所定の通信間隔にて本体装置送受信部へ通信の確立の確認信号を送信するように構成されている。
【0009】
そして、動作モードは、荷役物を現在の位置で保持する保持モードと、荷役物をバランス状態にするバランスモードを含み、
本体装置制御部は、
保持モードでは遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部とが第1の通信間隔で通信を行うように遠隔操作装置へ指令し、
バランスモードでは遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部とが第1の通信間隔より短い第2の通信間隔で通信を行うように遠隔操作装置へ指令し、
バランスモード中に、
本体装置送受信部は、遠隔操作装置送受信部との通信が第1の期間以上途絶えた時に通信の途絶えを本体装置制御部へ通知し、
本体装置制御部は通知を受けて本体装置を保持モードに移行させるように構成されている。
【0010】
また、本体装置は本体装置に係止される重量を検出して重量値を出力する重量検出部を含み、 本体装置制御部が、重量検出部からの重量値が所定の値よりも小さいことを検出し、遠隔操作装置から荷役物をバランス状態にする指令信号を受信した時、
本体装置制御部は、遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部の通信間隔を第2の通信間隔より長い第3の通信間隔にて行うように遠隔操作装置送受信部へ指令し、
遠隔操作装置送受信部は第3 の通信間隔の指令を受信して、本体装置送受信部と第3 の通信間隔にて通信を行うように構成されている。
【0011】
また、遠隔操作装置送受信部は、遠隔操作装置制御部から操作の指令信号を受信した後、本体装置送受信部との通信を第2の通信間隔以下の第4の通信間隔にて行うように構成されている。
【0012】
また、遠隔操作装置送受信部は、遠隔操作装置制御部からの操作の指令信号がオンからオフに変化した時点から第2の期間を経過後、本体装置送受信部との通信を、本体装置制御部から指令された通信間隔にて行うように構成されている。
【0013】
また、本体装置と、本体装置を遠隔操作する遠隔操作装置と、で構成されて、本体装置に係止した荷役物の昇降を本体装置内の動力によって助力する荷役助力装置であって、
遠隔操作装置は、無線通信を行う遠隔操作装置送受信部と、本体装置を遠隔操作するための操作手段と、操作手段による操作指令を受けて指令信号を遠隔操作装置送受信部へ送信する遠隔操作装置制御部とを備え、
本体装置は、遠隔操作装置送受信部と無線通信を行う本体装置送受信部と、本体装置送受信部と通信を行うと共に荷役物の昇降を制御する本体装置制御部とを備え、
遠隔操作装置送受信部が、本体装置送受信部に信号を送信したが本体装置送受信部から受信確認信号を受け取れず、さらに所定の回数だけ信号を再送してもなお本体装置送受信部から受信確認信号を受け取れない場合、遠隔操作装置送受信部は本体装置送受信部との通信を休止する休止状態となるように構成されている。
【0014】
また、遠隔操作装置送受信部が休止状態にあって、操作手段による操作が発生し、遠隔操作装置送受信部が遠隔操作装置制御部から操作の指令信号を受信した時、遠隔操作装置送受信部は本体装置送受信部との通信を開始するように構成されている。
【発明の効果】
【0015】
また、本体装置制御部が本体装置の動作モードに応じて遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部との通信を適切な間隔に設定する指令を遠隔操作装置へ送信し、遠隔操作装置送受信部はこれにしたがって確認信号を送信するため、操作性を低下させずに遠隔操作装置の消費電力を低減することができる。
【0016】
そして、動作モードが保持モードの時は例えば荷役物が静止している状態なので、遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部との通信間隔を比較的長くすることで、遠隔操作装置の消費電力を低減することができる。一方動作モードがバランスモードの時、遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部との通信が途絶えた場合に、所定の時間経過後に本体装置は保持モードへの移行を行って荷役物を保持静止させることから、作業の安全性の向上を図ることができる。そして動作モードがバランスモードの時に遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部との通信間隔を保持モードの時よりも短くすることで、遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部との通信が途絶えた場合に、本体装置の保持モードへの移行時間を短縮できるので、本体装置の安全性の向上を図ることができる。
【0017】
また、重量検出部からの重量値が所定の値よりも小さい時、例えば本体装置が荷役物を係止していない時に作業者がバランス釦を押すと、本体装置制御部は通信間隔を荷役物が係止されたバランスモードの時よりも長くするように遠隔操作装置へ指示するため、作業者が係止部材を掴んで荷役物に係止させるような作業を行う期間中、遠隔操作装置の消費電力を低減することができる。
【0018】
また、遠隔操作装置の操作手段である操作釦が使用者によって押された後から、遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部との通信間隔を通常のバランスモードの時よりも短くしていることから、例えば上昇釦/下降釦を連続的に押した時に指令の頻度が多く滑らかな操作が実現できる。
【0019】
また、使用者が遠隔操作装置の操作手段である操作釦を押して離した後の所定の期間経過後に、遠隔操作装置送受信部と本体装置送受信部との通信間隔を各動作モードの所定の通信間隔にするように本体装置制御部は遠隔操作装置送受信部へ指令し、これに基づき遠隔操作装置送受信部は通信を行うことから、遠隔操作装置は各動作モードの所定の適切な通信間隔で通信を行うことから遠隔操作装置の消費電力を低減することができる。
【0020】
また、遠隔操作装置送受信部から本体装置送受信部へ信号を所定回数、再送信しても、遠隔操作装置送受信部が確認信号を遠隔操作装置送受信部から受け取れない場合、遠隔操作装置は本体装置送受信部との通信を休止し、操作手段である操作釦が押されるまで休止状態を保つことから、遠隔操作装置の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る荷役助力装置全体の斜視構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の本体装置の一部を省略した斜視構成図と無線遠隔操作装置の拡大斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の電子回路のブロック構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の保持モードと上昇/下降モードにおける通信動作を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の保持モードと上昇/下降モードにおける通信動作を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の保持モードとバランスAモードにおける通信動作を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る荷役助力装置のバランスAモードと上昇/下降モードにおける通信動作を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る荷役助力装置のバランスAモードでの再送通信と保持モードへの移行と上昇/下降モードにおける通信動作を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る荷役助力装置のバランスAモードでの再送通信と保持モード、バランスAモードへの移行における通信動作を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る荷役助力装置のバランスAモードでの再送通信と上昇/下降モード、バランスAモードへの移行における通信動作を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の保持モードからバランスBモードへの移行における通信動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る荷役助力装置について、図面を基に詳細な説明を行う。図1は本発明の実施形態の一例である荷役助力装置全体の斜視構成図である。
【0023】
荷役助力装置1は、荷役物7の昇降を行う本体装置2と、この本体装置2から鉛直下方向へ伸びたリンクチェーン4の下方にある荷役物吊下げフック5及び係止部材6と、本体装置2を遠隔操作する遠隔操作装置9を含んで構成されている。本体装置2の天面部には本体装置吊下げフック3が設けられて、本体装置2を建物の梁などの構造物8等に吊して使用することができる。
【0024】
係止部材6は、リンクチェーン4の一端に設けられた荷役物吊下げフック5を介して荷役物7を係止する部材である。本実施形態では、荷役物7は例えば天部に鍔が設けられた容器とその中に入った部品等である。係止部材6は荷役物7を移動させるために、荷役物7の鍔に係止させる略コの字型の部材と、荷役物吊下げフック5に接続する部材で構成されている。図1において本体装置2がリンクチェーン4を繰り出してこの係止部材6を鉛直下方向に移動させて荷役物7を床面に接地させ、さらに鉛直下方向に移動させることで、係止部材6の折れ曲がった先端部は荷役物7の鍔から離れる。そして作業者がこの係止部材6を水平方向に移動させることで、荷役物7は解放される。
【0025】
図2は本発明の実施形態の荷役助力装置の本体装置2の一部を省略した斜視構成図と遠隔操作装置9の拡大斜視図である。
【0026】
本体装置2はカバーを備えていて、その内部には本体装置制御部10、モータ部11、昇降作動部16及び重量検出部12等が収納されている。
【0027】
本体装置制御部10はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えて、リンクチェーン4を介して複数の動作モードにて係止部材6の上下移動の制御等を行う。各動作モードについては後述する。
【0028】
係止部材6を上下移動させるための駆動源であるモータの負荷側には減速機が取り付けられて、モータと合わせてモータ部11を構成している。このモータは例えば交流サーボモータである。
【0029】
そして減速機はモータの回転速度を所定の速度に減速している。減速機は例えば波動歯車減速機である。波動歯車減速機は外周が楕円状のウエーブジェネレータと、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なフレクスプラインと、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えたサーキュラスプラインとからなる。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げた出力軸15に取り出されて伝達するようになっている。この装置の減速機に例えば波動歯車減速機のようなバックラッシが微小なものを使用することで、モータの正逆回転切り換えを頻繁に行って上下移動を行う時に、切り換え時の制御不能な領域をなくし、スムーズな操作感を実現できる。
【0030】
出力軸15は減速機にて回転速度を減速されて増大させた動力を出力する回転軸であり、昇降作動部16に連結され、昇降作動部16を連続的に正逆に回転させるものである。
【0031】
リンクチェーン4は、半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交差して交互に連接されたものであって、一端は係止部材6に繋がっていて、他端(無負荷側)はチェーン収納部17に収納されている。
【0032】
昇降作動部16は、駆動源のモータ部11からの動力の伝達によって回転する回転部材を含んで構成される。本実施形態では昇降作動部16の回転部材は中空円柱の形状であって、出力軸15と繋がっていて、リンクチェーン4を巻回し、リンクチェーン4の巻き上げ及び繰り出しを行う。リンクチェーン4が巻回される位置は、おおよそ本体装置吊下げフック3の鉛直下付近であって、本体装置2の重心位置に近いところに設けられる。リンクチェーン4は昇降作動部16の回転部材に設けられたポケット溝に嵌入されておおよそ180度ほど巻回される。本実施形態では係止部材6に繋がって昇降作動部16に巻回されるものにリンクチェーン4を用いたが、これに限らずワイヤーロープであっても良い。ワイヤーロープを使用した時は、昇降作動部16はドラム形状でワイヤーロープはその一端が固定されて回転部材に巻回される。
【0033】
モータ部11の反負荷側にはモータの回転角位置を検出する位置検出部13がモータ部11に連結されている。位置検出部13はいわゆるアブソリュートエンコーダであって、光学式にてモータの回転角位置を検出して位置値を出力する。したがってこの位置検出部13は、係止部材6の繰り出し位置すなわち昇降位置を検出することができる。
【0034】
重量検出部12は昇降作動部16に巻きつけられているリンクチェーン4から伝達される力を反力として検出できるように弾性変形する起歪体と起歪体に貼られた歪みゲージを備えている。歪みゲージは重量に応じて起歪体に生ずる歪みを電気信号に変換するホイートストーンブリッジ回路に組み込まれ、重量検出部12は昇降作動部16に加わる重量を検出して重量値を出力する。
【0035】
そして本体装置制御部10が本体装置2内の昇降作動部16の近傍に配置されている。本体装置制御部10は、位置検出部13からの位置値及び重量検出部12からの重量値を基に、モータ部11を制御する。本体装置制御部10に関連した電装部は、本体装置2を粉粒や水滴のかかる場所での使用も可能にするためにカバー内に配置されている。
【0036】
本実施形態では、位置検出部13はモータ部11の反負荷側に配置したがこれに限らず、減速機の出力である出力軸15や昇降作動部16に設けられても良く、また両方に設けられても良い。さらに光学式に限らず磁気式や静電容量式等であっても良い。
【0037】
また重量検出部12は昇降作動部16に加わる重量を検出できれば良く、減速機と昇降作動部16との間に設けた回転軸の捻れからトルクを検出するような回転型の構造や、モータ部11が受ける反力を検出する鼓型の構造のものであっても良い。さらに歪みゲージ式に限らず静電容量式等であっても良い。
【0038】
本体装置送受信部14が、本体装置制御部10の回路基板と並んで配置されている。本体装置送受信部14は、遠隔操作装置9と無線にて通信するための電子回路を有している。
【0039】
遠隔操作装置9は、本体装置2を遠隔にて操作するための装置であって、本実施形態では電波によって通信している。遠隔操作装置9は、電池によって駆動される。遠隔操作装置9は、操作手段として例えばバランス釦21、保持釦22、上昇釦23及び下降釦24を有している。
【0040】
図3は本発明の実施形態に係る荷役助力装置の電子回路のブロック構成図である。荷役助力装置1は、本体装置2と遠隔操作装置9とを含んで構成されている。
【0041】
本体装置制御部10は本体装置2全体の制御を行っている。本体装置制御部10は、モータ部11を駆動する駆動回路を含んでいる。そして本体装置制御部10は、重量検出部12から昇降作動部16に加わる重量値を受信し、位置検出部13からモータ部11の回転角の位置値を受信し、本体装置送受信部14と信号の送受信を行う。本体装置送受信部14と本体装置制御部10とは有線で繋がっていて、極めて短い時間間隔で高速に信号の送受信を行う。
【0042】
本体装置送受信部14は、遠隔操作装置9の遠隔操作装置送受信部25と無線にて通信を行う。本体装置送受信部14及び遠隔操作装置送受信部25は無線通信を行う電子回路で構成され、電波による送信器と受信器を有する他、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有する場合がある。
【0043】
遠隔操作装置制御部20は遠隔操作装置9全体の制御を行っている。遠隔操作装置制御部20は操作手段による操作指令を受けて、操作の指令信号を遠隔操作装置送受信部25へ送信する。そして遠隔操作装置送受信部25は遠隔操作装置制御部20から受信した操作の指令を、本体装置送受信部14へ無線にて送信する。この指令を含んだ信号は、遠隔操作装置9と本体装置2のペアリングを行う遠隔操作装置9の識別情報が付与されている。なお遠隔操作装置送受信部25から送信する信号は、操作の指令を含んだ信号の他に、本体装置送受信部14との通信が確立されているかの確認をするために送信する確認信号がある。
【0044】
次いで遠隔操作装置9に設けられている操作手段である各操作釦の役割について説明する。各操作釦は例えばモーメンタリスイッチである。作業者がバランス釦21を押すと、本体装置制御部10はこれを受けて本体装置2をバランスモードへ移行を開始する。本体装置制御部10は、重量検出部12が昇降作動部16に加わる重量を検出して出力した重量値を基に演算を行って、昇降作動部16に加わる重量をキャンセルしてバランス状態となるようにモータ部11を制御する。したがってバランス状態となった時から本体装置2はバランスモードとなる。
【0045】
一方で、作業者が保持釦22を押すと、本体装置制御部10はこれを受けて演算を行って、昇降作動部16を現在位置にて保持すなわち係止部材6及び荷役物7の昇降位置を一定に保つようにモータ部11を制御する。したがってこの時から本体装置2は保持モードとなる。
【0046】
作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を押すと、本体装置制御部10はこれを受けてモータ部11を制御して、係止部材6を上昇若しくは下降させる。上昇釦23若しくは下降釦24が押されている間、本体装置2は上昇/下降モードであって、作業者は上昇釦23若しくは下降釦24を連続的に押すことで、モータ部11により係止部材6及び荷役物7を連続的に上下昇降させることができる。本体装置2が保持モード及びバランスモードいずれにあっても、作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を押すと、上昇/下降モードへ切り替わり、押した上昇釦23若しくは下降釦24から手を離すとその直前の動作モードに戻る。
【0047】
図4から図11は本発明の実施形態に係る荷役助力装置の通信動作を示す図であって、遠隔操作装置制御部20、遠隔操作装置送受信部25、本体装置送受信部14、本体装置制御部10での通信の流れを示すものである。
【0048】
図4は、例えば本体装置2の電源が投入され起動した初期の状態を表している。本体装置2の電源が入って本体装置送受信部14と本体装置制御部10とは通信を開始する。この時、本体装置2の動作モードは保持モードであって、本体装置2の起動は保持モードから開始する。
【0049】
本体装置送受信部14が本体装置制御部10へ情報を送信して、本体装置制御部10がこれを受信すると即座に受信したことの受信確認信号ACKを本体装置送受信部14へ送信する。そして本体装置送受信部14は所定の通信間隔にて引き続き情報を送信する。本体装置送受信部14が送信する情報は遠隔操作装置9との通信状態などが含まれている。本実施形態ではこの所定の通信間隔t0を例えば0.01秒としているが、これに限るものではない。
【0050】
本体装置2は保持モードであって、本体装置制御部10は昇降作動部16を現在位置にて保持している。一方、本体装置2と無線通信が可能な所定のエリア内にて、遠隔操作装置9のいずれかの操作釦が作業者によって押されると、遠隔操作装置制御部20は遠隔操作装置送受信部25へ指令信号を送信し、遠隔操作装置送受信部25は、遠隔操作装置制御部20から受信した指令を本体装置送受信部14へ送信する。したがって遠隔操作装置9と本体装置2は通信を開始する。遠隔操作装置9のいずれかの操作釦が作業者によって押されるまでは、遠隔操作装置送受信部25は休止状態であって本体装置送受信部14との通信は行わない。
【0051】
例えば作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を押すと、遠隔操作装置制御部20はこれを検出して、上昇若しくは下降の指令信号を遠隔操作装置送受信部25へ送信する。遠隔操作装置送受信部25は即座にこの指令を本体装置送受信部14へ送信する。そして本体装置送受信部14は遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置制御部10へ指令の信号を送信し、本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを返す。一方で遠隔操作装置送受信部25は本体装置送受信部14からの受信確認信号ACKを受け、自主的に本体装置送受信部14と、比較的短い間隔の第4の通信間隔t4にて通信を行う。本実施形態ではこの第4の通信間隔t4を例えば0.1秒程度としているが、これに限るものではない。
【0052】
本体装置制御部10は指令を受けて、本体装置2を上昇/下降モードに移行させ、昇降作動部16を回転させてリンクチェーン4の巻き上げ若しくは繰り出しを行う。その後、本体装置制御部10は上昇釦23若しくは下降釦24による上昇若しくは下降の指令を受信していないので、元の保持モードへ戻り、遠隔操作装置送受信部25へ比較的長い第1の通信間隔t1にて確認信号の通信を行うように指令する。本実施形態ではこの第1の通信間隔t1を例えば約10秒としているが、これに限るものではない。本体装置送受信部14はこの指令を受けて、遠隔操作装置送受信部25へ指令の信号を送信する。
【0053】
図4は上昇釦23若しくは下降釦24がごく短時間押された場合を示し、この第4の通信間隔t4の開始以降における遠隔操作装置送受信部25からの信号は動作の指令を含まない確認信号である。そして遠隔操作装置送受信部25は、第2の期間p2経過後には、第4の通信間隔t4による確認通信を終了させ、本体装置制御部10からの指令である第1の通信間隔t1の確認通信に変更する。本実施形態ではこの、第2の期間p2を例えば5秒としているが、これに限るものではない。
【0054】
図5は本体装置2が保持モードにあって、作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を持続的に押した時の例である。作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を持続的に押すと、遠隔操作装置制御部20はこれを検出して、上昇若しくは下降の指令信号を遠隔操作装置送受信部25へ送信する。遠隔操作装置送受信部25は第1の通信間隔t1を待たずして即座にこの指令の信号を本体装置送受信部14へ送信する。そして本体装置送受信部14は遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置制御部10へ指令の信号を送信し、本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを返す。
【0055】
遠隔操作装置送受信部25は本体装置送受信部14からの受信確認信号ACKを受信し、本体装置送受信部14との通信間隔を比較的短い間隔の第4の通信間隔t4に自主的に変更する。なおこの自主的な変更は遠隔操作装置9内で行われるものであって、遠隔操作装置制御部20からの指示によるものであっても良いし、遠隔操作装置送受信部25で判断して行うものであっても良い。第4の通信間隔t4が開始された以降の遠隔操作装置送受信部25からの信号は、上昇若しくは下降の指令を含んで送信される。本体装置送受信部14は遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置制御部10へ指令の信号を送信し、本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを返す。
【0056】
本体装置制御部10は本体装置2を上昇/下降モードにして昇降作動部16を回転させてリンクチェーン4の巻き上げ若しくは繰り出しを行う。その後、本体装置制御部10は上昇釦23若しくは下降釦24による上昇若しくは下降の指令の信号を連続的に受信して、リンクチェーン4の巻き上げ若しくは繰り出しを持続させる。そして本体装置制御部10は上昇若しくは下降の指令の信号が終了した時点で保持モードへ戻し、遠隔操作装置送受信部25へ第1の通信間隔t1にて確認信号の通信を行うように指令する。本体装置送受信部14はこの指令を受けて、遠隔操作装置送受信部25へ指令の信号を送信し、遠隔操作装置送受信部25はこれを受信して記憶する。
【0057】
そして遠隔操作装置送受信部25は、遠隔操作装置制御部20から受信していた上昇釦23若しくは下降釦24の指令信号がオフとなった時点から第2の期間p2経過後に、第4の通信間隔t4による確認通信を終了させ、記憶してあった本体装置制御部10からの指令である第1の通信間隔t1に変更して確認信号の通信を継続する。
【0058】
図6は本体装置2が保持モードにある時、作業者がバランス釦21を押した際の通信状態の例を示している。バランス釦21は作業者が押し続けても、遠隔操作装置制御部20からの指令の信号は1度であるように設定されている。遠隔操作装置制御部20はバランス釦21が押されたことを検出して、遠隔操作装置送受信部25へバランスモードへの指令信号を送信する。遠隔操作装置送受信部25は第1の通信間隔t1を待たずして即座にこの指令の信号を本体装置送受信部14へ送信する。そして本体装置送受信部14は遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置制御部10へ指令の信号を送信する。
【0059】
さらに本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを送信すると共に、本体装置2をバランスAモードに移行させる。そして本体装置2は荷役物7をバランスさせるバランスAモードにて動作を行う。なお本体装置2は荷役物7を係止していない状態でバランスさせるバランスBモードもあって、これについては後述する。本体装置2がバランスAモードに移行した後、本体装置制御部10は通信間隔を第2の通信間隔t2に変更するように本体装置送受信部14へ変更指令の信号を送信する。本体装置送受信部14はこの指令を受けて、遠隔操作装置送受信部25へ指令の信号を送信し、遠隔操作装置送受信部25はこれを受信して記憶する。
【0060】
一方で、遠隔操作装置制御部20は、遠隔操作装置9の操作釦が押されたので、通信間隔を第4の通信間隔t4に自主的に変更する。遠隔操作装置送受信部25は第4の通信間隔t4にて本体装置送受信部14へ確認信号を送信する。本体装置送受信部14はこれを受信して、遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを送信する。
【0061】
そして遠隔操作装置送受信部25は、遠隔操作装置制御部20から受信していたバランス釦21の指令信号がオフとなった時点から第2の期間p2経過後に、第4の通信間隔t4による確認通信を終了させ、記憶してあった本体装置制御部10からの指令である第2の通信間隔t2に変更して確認信号の通信を継続する。
【0062】
本体装置2は荷役物7をバランスさせるバランスAモードにて動作を行う期間、遠隔操作装置送受信部25と本体装置送受信部14とは第2の通信間隔t2にて確認信号の通信を行っている。本実施形態ではこの第2の通信間隔t2を例えば0.1秒から0.15秒程度としているが、これに限るものではない。
【0063】
次いでバランスAモード中に、作業者が保持釦22を押すと、遠隔操作装置制御部20は保持釦22が押されたことを検出して、遠隔操作装置送受信部25へ保持モードへの指令信号を送信する。遠隔操作装置送受信部25は第2の通信間隔t2を待たずして即座にこの指令の信号を本体装置送受信部14へ送信する。そして本体装置送受信部14は遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置制御部10へ指令の信号を送信する。
【0064】
一方本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置2を保持モードへ移行させる。本体装置2が保持モードに移行した後、本体装置制御部10は通信間隔を第1の通信間隔t1に変更するように本体装置送受信部14へ変更指令の信号を送信する。本体装置送受信部14はこの指令を受けて、遠隔操作装置送受信部25へ指令の信号を送信し、遠隔操作装置送受信部25はこれを受信して記憶する。
【0065】
そして遠隔操作装置送受信部25は、遠隔操作装置制御部20から受信していた保持釦22の指令信号がオフとなった時点から第2の期間p2経過後に、第4の通信間隔t4による確認通信を終了させ、記憶してあった本体装置制御部10からの指令である第1の通信間隔t1に変更して確認信号の通信を継続する。
【0066】
図7は本体装置2がバランスAモードにある時に、作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を押した時の通信状態の例を示している。遠隔操作装置送受信部25と本体装置送受信部14とは、第2の通信間隔t2にて確認信号の通信を行っている。この時、作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を押すと、遠隔操作装置制御部20はこれを検出して、上昇若しくは下降の指令信号を遠隔操作装置送受信部25へ送信する。遠隔操作装置送受信部25は第2の通信間隔t2を待たずして即座にこの指令の信号を本体装置送受信部14へ送信する。そして本体装置送受信部14は遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置制御部10へ指令の信号を送信し、本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを返す。遠隔操作装置送受信部25は本体装置送受信部14からの受信確認信号ACKを受け、本体装置送受信部14との通信間隔を第4の通信間隔t4に自主的に変更する。
【0067】
作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を押し続けていると、その後の遠隔操作装置送受信部25から本体装置送受信部14への信号も操作の指令を含んでいる。本体装置送受信部14は遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置制御部10へ指令の信号を送信し、本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを返すと共に本体装置2を上昇/下降モードに移行させ、昇降作動部16を回転させてリンクチェーン4の巻き上げ若しくは繰り出しを行う。そして本体装置制御部10は上昇若しくは下降の指令の信号が終了した時点でバランスAモードへ戻し、通信間隔を第2の通信間隔t2に変更するように本体装置送受信部14へ変更指令の信号を送信する。本体装置送受信部14はこの指令を受けて、遠隔操作装置送受信部25へ指令の信号を送信し、遠隔操作装置送受信部25はこれを受信して記憶する。
【0068】
そして遠隔操作装置送受信部25は、遠隔操作装置制御部20から来ていた上昇釦23若しくは下降釦24のオンの指令信号がオフとなった時点から第2の期間p2経過後に、第4の通信間隔t4による確認通信を終了させ、記憶してあった本体装置制御部10からの指令である第2の通信間隔t2に変更して確認信号の通信を継続する。
【0069】
図8は本体装置2がバランスAモードにある時、遠隔操作装置9と本体装置2との間に通信障害が起こった際の通信例を示したものである。通信障害が起こる以前には遠隔操作装置送受信部25と本体装置送受信部14とは第2の通信間隔t2にて確認信号の通信を行って成功している。しかしある時点から遠隔操作装置送受信部25は送信した確認信号に対する受信確認信号ACKを本体装置送受信部14から受け取れないため、第2の通信間隔t2にて確認信号を再送する。確認信号の再送が所定の回数に達しても受信確認信号ACKを本体装置送受信部14から受け取れない時、遠隔操作装置送受信部25は再送を終了し、無線通信を止めて休止状態となる。本実施形態ではこの再送の所定回数を例えば5回としているが、これに限るものではない。
【0070】
一方、本体装置送受信部14が遠隔操作装置送受信部25からの通信が第1の期間p1以上途絶えたことを検出すると、本体装置送受信部14は本体装置制御部10へ通信途絶していることを通知する。本体装置制御部10はこれを受けて本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを送信する。さらに本体装置制御部10は直ちに本体装置2を保持モードに移行させる。本実施形態ではこの第1の期間p1を例えば、p1=(第2の通信間隔t2)x(再送の所定回数+1)としているが、これに限るものではない。
【0071】
その後、遠隔操作装置送受信部25と本体装置送受信部14との通信は、遠隔操作装置9のいずれかの釦を作業者が押した時点で再開される。図8は上昇釦23若しくは下降釦24がごく短時間押されて通信が成功した例であって、遠隔操作装置送受信部25はこの指令信号を本体装置送受信部14へ送信する。そして本体装置送受信部14は遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置制御部10へ指令信号を送信し、本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを返す。
【0072】
本体装置制御部10は本体装置2を上昇/下降モードにして昇降作動部16を回転させてリンクチェーン4の巻き上げ若しくは繰り出しを行う。その後、本体装置制御部10は上昇釦23若しくは下降釦24による上昇若しくは下降の指令の信号を受信していないので元の保持モードへ戻し、遠隔操作装置送受信部25へ第1の通信間隔t1にて確認信号の通信を行うように指令する。本体装置送受信部14はこの指令を受けて、遠隔操作装置送受信部25へ指令の信号を送信し、遠隔操作装置送受信部25はこれを受信して記憶する。
【0073】
一方、遠隔操作装置送受信部25は本体装置送受信部14からの受信確認信号ACKを受け、本体装置送受信部14との通信間隔を第4の通信間隔t4に自主的に変更する。そして遠隔操作装置送受信部25は、第2の期間p2経過後には、第4の通信間隔t4による確認通信を終了させ、記憶してあった本体装置制御部10からの指令である第1の通信間隔t1に変更する。
【0074】
図9は本体装置2がバランスAモードにある時、遠隔操作装置9と本体装置2との間に通信障害が起こり本体装置2は保持モードとなり、遠隔操作装置9は休止状態となり、作業者によりバランス釦21が押されて再び本体装置2がバランスAモードになる変遷の通信例を示したものである。
【0075】
本体装置2が保持モードとなって、遠隔操作装置9は休止状態となるまでは図8と同じであるので省略する。
【0076】
遠隔操作装置9は休止状態であって、作業者によりバランス釦21が押されると、遠隔操作装置制御部20はバランス釦21が押されたことを検出して、遠隔操作装置送受信部25へバランスモードへ移行させる指令信号を送信する。遠隔操作装置送受信部25はこの指令の信号を本体装置送受信部14へ送信する。そして本体装置送受信部14は遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置制御部10へ指令の信号を送信し、本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを返す。
【0077】
さらに本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを送信すると共に、本体装置2をバランスAモードに移行させる。本体装置2は荷役物7をバランスさせるバランスAモードにて動作を行う。本体装置2がバランスAモードに移行した後、本体装置制御部10は通信間隔を第2の通信間隔t2に変更するように本体装置送受信部14へ変更指令の信号を送信する。本体装置送受信部14はこの指令を受けて、遠隔操作装置送受信部25へ指令の信号を送信し、遠隔操作装置送受信部25はこれを受信して記憶する。
【0078】
一方で、遠隔操作装置送受信部25は、遠隔操作装置9の操作釦が押されたので、第4の通信間隔t4にて本体装置送受信部14へ確認信号を送信する。本体装置送受信部14はこれを受信して、遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを送信する。
【0079】
そして遠隔操作装置送受信部25は、遠隔操作装置制御部20から受信していたバランス釦21の指令信号がオフとなった時点から第2の期間p2経過後に、第4の通信間隔t4による確認通信を終了させ、記憶してあった本体装置制御部10からの指令である第2の通信間隔t2に変更して確認信号の通信を継続する。
【0080】
図10は本体装置2がバランスAモードにある時、作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を継続的に押した際に、遠隔操作装置9と本体装置2との間に通信障害が起こったが再送によって復帰し、本体装置2が上昇/下降モードを経てバランスAモードになる変遷の通信例を示したものである。
【0081】
遠隔操作装置送受信部25と本体装置送受信部14とは第2の通信間隔t2にて確認信号の通信を行っている。この時、作業者が上昇釦23若しくは下降釦24を押すと、遠隔操作装置制御部20はこれを検出して、上昇若しくは下降の指令信号を遠隔操作装置送受信部25へ送信する。遠隔操作装置送受信部25は第2の通信間隔t2を待たずして即座にこの指令の信号を本体装置送受信部14へ送信する。そして本体装置送受信部14は、遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に本体装置制御部10へ指令信号を送信し、本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを返す。遠隔操作装置送受信部25は継続的に遠隔操作装置制御部20から上昇若しくは下降の指令の信号を受信するので、第4の通信間隔t4にてこの指令信号を本体装置送受信部14へ送信する。
【0082】
しかしある時点から遠隔操作装置送受信部25は送信した指令の信号に対する受信確認信号ACKを本体装置送受信部14から受け取れず、第4の通信間隔t4にて信号を再送する。図10では再送を2回行った後、再送3回目で通信が復帰して、上昇若しくは下降の動作が継続する。この時、本体装置制御部10は上昇/下降モードにして本体装置2を制御している。
【0083】
その後本体装置制御部10は、遠隔操作装置制御部20から受信していた上昇釦23若しくは下降釦24のオン信号が、オフとなった時点から、バランスAモードへ移行を始め、バランスAモードとなり次第、本体装置送受信部14と遠隔操作装置送受信部25との通信間隔を第2の通信間隔t2に変更するように本体装置送受信部14へ変更指令の信号を送信する。本体装置送受信部14はこの指令を受けて、遠隔操作装置送受信部25へ指令の信号を送信し、遠隔操作装置送受信部25はこれを受信して記憶する。
【0084】
そして遠隔操作装置送受信部25は、遠隔操作装置制御部20から来ていた上昇釦23若しくは下降釦24の指令信号がオフとなった時点から第2の期間p2経過後に、第4の通信間隔t4による確認通信を終了させ、記憶してあった本体装置制御部10からの指令である第2の通信間隔t2に変更して確認信号の通信を継続する。
【0085】
図11は本体装置2が保持モードになっていて、本体装置送受信部14と遠隔操作装置送受信部25との通信間隔が第1の通信間隔t1にて通信している時から、作業者がバランス釦21を押してバランスBモードにした時の通信例を示している。ここでバランスAモードとバランスBモードの違いについて説明する。
【0086】
バランスAモードは、図1に示すように荷役物7が係止部材6にて係止されて本体装置2に吊下げられた状態であって、重量検出部12には昇降作動部16、リンクチェーン4、荷役物吊下げフック5、係止部材6及び荷役物7の総重量が加わっている。したがって、作業者が本体装置2をバランスAモードにするには、例えば上昇/下降モードを使用して係止部材6を移動させて荷役物7を係止部材6に係止させた後、上昇釦23によって荷役物7を宙に浮かせた状態でバランス釦21を押すことで実行できる。
【0087】
これに対してバランスBモードは、荷役物7が係止部材6にて係止されていない状態でのバランスモードであって、重量検出部12には昇降作動部16、リンクチェーン4、荷役物吊下げフック5及び係止部材6の総重量が加わっている状態であって、所定の重量よりも小さい値として規定される。したがってバランスBモードでは作業者は荷役物吊下げフック5及び係止部材6等を鉛直上下方向へ極めて小さな力で移動できる。
【0088】
本体装置送受信部14と遠隔操作装置送受信部25との通信間隔が第1の通信間隔t1にて確認信号の通信が行われている時、作業者がバランス釦21を押すと、遠隔操作装置制御部20はバランス釦21が押されたことを検出して、遠隔操作装置送受信部25へバランスモードへの指令信号を送信する。遠隔操作装置送受信部25は第1の通信間隔t1を待たずして即座にこの指令の信号を本体装置送受信部14へ送信する。そして本体装置送受信部14は遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを返すと共に、本体装置制御部10へ指令の信号を送信する。
【0089】
さらに本体装置制御部10は本体装置送受信部14へ受信確認信号ACKを送信すると共に、重量検出部12からの重量値が所定の重量値よりも小さい場合には、本体装置2をバランスBモードに移行させる。所定の重量値とは本実施形態では、荷役物7が係止部材6にて係止されていない状態で重量検出部12に加わる重量値である。すなわち本体装置2は荷役物7が係止させていない状態でバランスさせるバランスBモードにて動作を行う。本体装置2がバランスBモードに移行した後、本体装置制御部10は通信間隔を第3の通信間隔t3に変更するように本体装置送受信部14へ変更指令の信号を送信する。第3の通信間隔t3は第2の通信間隔t2より長く設定される。なお本実施形態では、第3の通信間隔t3を例えば10秒に設定しているが、これに限るものではない。本体装置送受信部14はこの指令を受けて、遠隔操作装置送受信部25へ指令の信号を送信し、遠隔操作装置送受信部25はこれを受信して記憶する。
【0090】
一方で、遠隔操作装置制御部20は、遠隔操作装置9の操作釦が押されたので、通信間隔を第4の通信間隔t4にするように遠隔操作装置制御部20から指令を受けて実行する。遠隔操作装置送受信部25は第4の通信間隔t4にて本体装置送受信部14へ確認信号を送信する。本体装置送受信部14これを受信して、遠隔操作装置送受信部25へ受信確認信号ACKを送信する。
【0091】
そして遠隔操作装置送受信部25は、遠隔操作装置制御部20から受信していたバランス釦21の指令信号がオフとなった時点から第2の期間p2経過後に、第4の通信間隔t4による確認通信を終了させ、記憶してあった本体装置制御部10からの指令である第3の通信間隔t3に変更して確認信号の通信を継続する。
【0092】
ゆえに本実施形態によれば、遠隔操作装置9の操作釦を押した時若しくは押し続けて離した時から所定の期間、遠隔操作装置送受信部25は本体装置送受信部14との通信間隔を短くして通信を行うので操作性を損なわずに操作ができる。また本体装置2の動作モードに適した通信間隔で通信を行うため、例えば上昇/下降モードやバランスAモードのように荷役物7が移動するような即時性が求められるモードでは、遠隔操作装置送受信部25と本体装置送受信部14との通信間隔を短くして通信を行うことで安全性や操作性を確保している。一方保持モードやバランスBモードのように荷役物7が静止若しくは係止されていないモードでは、遠隔操作装置送受信部25と本体装置送受信部14との通信間隔を長くすることで遠隔操作装置9の消費電力を低減できる。
【0093】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の活用例として、荷役物の移動を助力して行う荷役助力装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 :荷役助力装置
2 :本体装置
3 :本体装置吊下げフック
4 :リンクチェーン
5 :荷役物吊下げフック
6 :係止部材
7 :荷役物
8 :構造物
9 :遠隔操作装置
10 :本体装置制御部
11 :モータ部
12 :重量検出部
13 :位置検出部
14 :本体装置送受信部
15 :出力軸
16 :昇降作動部
17 :チェーン収納部
20 :遠隔操作装置制御部
21 :バランス釦
22 :保持釦
23 :上昇釦
24 :下降釦
25 :遠隔操作装置送受信部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11