(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】有機物分解機
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20220225BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20220225BHJP
【FI】
B09B3/00 302E
B09B3/00 Z ZAB
(21)【出願番号】P 2019091531
(22)【出願日】2019-05-14
(62)【分割の表示】P 2017209646の分割
【原出願日】2017-10-30
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】517381131
【氏名又は名称】黄 義麟
(73)【特許権者】
【識別番号】517380606
【氏名又は名称】金田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 義麟
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-142649(JP,A)
【文献】特開平01-168796(JP,A)
【文献】特開2010-155231(JP,A)
【文献】特開2007-204723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
C10B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の底壁に接する外側壁と該外側壁の内側に設けられた内側壁とからなる二重構造を有し、前記内側壁に囲まれた第一空間に有機物を開閉自在な投入口を通じて密閉可能に収納する直方体状の筐体と、
前記第一空間における底壁と前記内側壁の接続部分を覆うように所定の傾斜角で設けられ、前記第一空間と連通する第二空間を前記内側壁との間に形成する一対の仕切り板と、
内部に磁石を有し、前記筐体の外部から前記第二空間に
前記磁石によりイオン化した空気を取り入れるための複数の吸気管と、
前記内側壁と前記外側壁の間に所定の間隔を空けて形成された第三空間と前記第一空間とを連通する貫通孔と、
前記第三空間から回収された、前記第一空間における有機物の分解により生じる水蒸気が冷やされて液化した木酢液を加熱により過熱水蒸気に換えて前記第一空間に送り込む第一過熱水蒸気装置と、
前記第一空間から前記第三空間に排出された水蒸気の一部を前記筐体の外部に排出する排出口とを備えた有機物分解機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物分解機に関し、詳しくは、イオン化した空気を内部に導入して有機物が分解することにより生じる水蒸気が冷やされて液化した木酢液を加熱により過熱水蒸気に換えて循環させることにより、有機物の分解を促進し、分解処理後の廃棄物である汚水と残渣を極めて少なくした有機物分解機に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の消費社会において、大量に排出されるごみの処理は、公衆衛生、環境保護および経済コスト等の点から、極めて優先順位の高い問題である。この問題に対処するために、様々なごみの処理装置が考案されているが、中でも有機物の処理にイオン化した空気を用いる磁場熱分解炉が、低コストかつ環境負荷の少ない技術として注目されている。
また、飽和水蒸気をさらに加熱することにより得られる過熱水蒸気を用いて有機性廃棄物の乾燥、減容、脱臭を行うことができる処理装置も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、通常の運転時には、種火のみで、燃料や電力を必要とせず、可燃物の完全燃焼を図ることができ、最小限の灰しか生じない磁場熱分解炉が開示されている。
【0004】
特許文献2には、還元状態での磁場振動を利用した熱分解により、塩化物を処理してもダイオキシン等が発生せず、処理物の容積を投入時の1/200まで減量化することができる磁場熱分解炉が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ダイオキシン等の有害物を発生させずに廃棄物を熱分解により灰化処理することができる廃棄物処理装置が開示されている。
【0006】
特許文献4には、過熱水蒸気により有機物の種類によらず分解処理することができ、処理後の生成物が吸湿することがない有機物処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-013136号公報
【文献】特開2013-215637号公報
【文献】特許4108387号公報
【文献】特許5762246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および特許文献2に開示された磁場熱分解炉は、不純物を回収し、煙を水蒸気に変える乾留ガス処理槽を有し、回収した不純物を含む液は木酢(磁化木酢液)として再利用が可能であるが、この不純物を含む液自体を処理し、さらに有機物分解の促進に用いるものではない。
特許文献3に開示された排気物処理装置は、焼却炉内へ流入する空気が、永久磁石による磁場を横切ることによりマイナスイオン化され、該マイナスイオン化された雰囲気中で、可燃物である廃棄物を処理することが可能であるとしているが、処理対象の廃棄物が灰化する過程で生じる発煙(未燃性ガスと水蒸気)は、ガス吸着剤により吸着・除去され、液化を経て廃棄物の処理促進に用いられることはない。
【0009】
特許文献4に開示された有機物処理装置は、有機物を収納した密閉容器に、先ず加熱(飽和)水蒸気を導入し、一旦、密閉容器内を常圧にした後、加熱(飽和)水蒸気をさらに加熱して得られる過熱水蒸気を導入して有機物に含まれる水分を気化排出することにより、粗大な有機物であってもパウダー状に処理することが可能であるとしているが、過熱水蒸気を用いて有機物に含まれる水分の不純物処理をするものではない。
【0010】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、イオン化した空気を内部に導入して有機物が分解することにより生じる水蒸気が冷やされて液化した木酢液を加熱により過熱水蒸気に換えてさらに循環させることにより、有機物の分解を促進し、分解処理後の廃棄物である汚水と残渣を極めて少なくし、さらに残渣を再利用することができる有機物分解機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、同一の底壁に接する外側壁と該外側壁の内側に設けられた内側壁とからなる二重構造を有し、前記内側壁に囲まれた第一空間に有機物を開閉自在な投入口を通じて密閉可能に収納する直方体状の筐体と、前記第一空間における底壁と前記内側壁の接続部分を覆うように所定の傾斜角で設けられ、前記第一空間と連通する第二空間を前記内側壁との間に形成する一対の仕切り板と、内部に磁石を有し、前記筐体の外部から前記第二空間に前記磁石によりイオン化した空気を取り入れるための複数の吸気管と、前記内側壁と前記外側壁の間に所定の間隔を空けて形成された第三空間と前記第一空間とを連通する貫通孔と、前記第三空間から回収された、前記第一空間における有機物の分解により生じる水蒸気が冷やされて液化した木酢液を加熱により過熱水蒸気に換えて前記第一空間に送り込む第一過熱水蒸気装置と、前記第一空間から前記第三空間に排出された水蒸気の一部を前記筐体の外部に排出する排出口とを備えていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、イオン化した空気を内部に導入して有機物が分解することにより生じる水蒸気が冷やされて液化した木酢液を加熱により過熱水蒸気に換えて循環させることにより、有機物の分解を促進し、分解処理後の廃棄物である汚水と残渣を極めて少なくし、さらに残渣を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機物分解機の正面斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る有機物分解機の背面斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る有機物分解機の内部構造を示す側面斜視図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る有機物分解機の内部構造を示す側面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る有機物分解機の内部構造を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る有機物分解機を構成する第一過熱水蒸気装置および第二過熱水蒸気装置の内部構造を示す透視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る有機物分解機を構成する第一過熱水蒸気装置および木酢液タンクの内部構造を示す側面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る有機物分解機を構成する第二過熱水蒸気装置およびタンクの内部構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の有機物分解機に係る好適な実施の形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内および均等の範囲内におけるすべての変更を含む。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る有機物分解機1の正面斜視図である。また、
図2は、本発明の一実施形態に係る有機物分解機1の背面斜視図である。
【0017】
本実施形態に係る有機物分解機1は、筐体10およびタンク40を備えている。筐体10の上面蓋16には、投入筒17が設けられ、ここから筐体10の内部に処理対象の有機物を投入する。筐体10は、支持脚15から構成される支持台に載せられていてもよい。
筐体10の底面付近には、複数の吸気管20が突き出るように配置されている。吸気管20は、内部に磁石を有し、筐体10の外部からイオン化した空気を取り入れる。
タンク40は、図上、筐体10と一体に設置されているが、筐体10の近傍に設置されてもよい。タンク40の上面には、排出筒44が突き出て設けられている。
【0018】
筐体10の底面付近には、木酢液タンク50が設置され、筐体10の内部で有機物が分解することにより生じる水蒸気が冷やされて液化した木酢液が溜められる。
この木酢液は、木酢液タンク50内に設けられた、後述する飽和水蒸気生成用ヒータ53により加熱されて飽和水蒸気に換えられて、第一過熱水蒸気装置60に入る。ここで、飽和水蒸気は、後述する過熱水蒸気生成用ヒータ62により更に加熱され、過熱水蒸気に換えられて、筐体10の内部に戻る。
【0019】
また、筐体10の内部で有機物の分解により生じる水蒸気の一部は、筐体10の外部に排出され、第二過熱水蒸気装置70に入る。この水蒸気の一部は、後述する過熱水蒸気生成用ヒータ72により加熱され、過熱水蒸気に換えられて、タンク40に入る。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態に係る有機物分解機1の内部構造を示す側面斜視図であり、より詳細には、有機物分解機1を構成する筐体10の内部構造を示すものである。
なお、上面蓋16および投入筒17は、筐体10の内部構造の説明のため、ここでは図示していない。
【0021】
筐体10は、ステンレスからなり、直方体状で、同一の底壁14に接する外側壁11と外側壁11の内側に設けられた内側壁12とからなる二重構造を有している。ここで、内側壁12に囲まれた空間を第一空間aとする。
第一空間aにおける底壁14と内側壁12の接続部分を覆うように、鉄からなる一対の仕切り板30が所定の傾斜角で設けられている。この傾斜角としては、45°程度が好ましい。一対の仕切り板30を貫通して底壁14と略平行に中空構造の導管31が複数設けられている。ここで、導管31により第一空間aと連通する空間を第二空間bとする。
筐体10の外部で複数の吸気管20により取り入れられたイオン化した空気は、第二空間bに流入する。底壁14には、ここでは図示しないが、後述する一対の鉄からなる金属板33が敷設されている。
【0022】
内側壁12と外側壁11の間には、所定の間隔を空けて第三空間cが形成される。内側壁12には、貫通孔13が好ましくは上方の位置に複数穿たれ、第一空間aと第三空間cとを連通する。
また、外側壁11には、排出口71が穿たれ、貫通孔13を通じて、第一空間aから第三空間cに排出された水蒸気の一部は、排出口71から筐体10の外部に排出される。ここで、排出された水蒸気を筐体10の外部に単に放出せずに、後述するように、脱臭等のため、一旦、第二過熱水蒸気装置70で加熱して過熱水蒸気に換えて、タンク40に湛えられた液体にてフィルタリングしてから排出するのが好ましい。
【0023】
図4Aは、本発明の一実施形態に係る有機物分解機1の内部構造を示す側面図であり、
図4Bは、本発明の一実施形態に係る有機物分解機1の内部構造を示す平面図であり、より詳細には、いずれの図も有機物分解機1を構成する筐体10の内部構造を示すものである。
なお、筐体10の内部構造の説明のため、
図4Aでは、支持脚15および上面蓋16に設けられた投入筒17の、
図4Bでは、導管31の他、投入筒17と共に上面蓋16の図示を省略している。
【0024】
上面蓋16と投入筒17との接続部分には、投入口18が開閉自在に設けられている。第一空間aは、投入口18を通じて有機物を収納した後、投入口18を閉じることで密閉可能である。
有機物が第一空間aに収納された状態で、上述したように、内部に磁石を有する吸気管20を通じて筐体10の外部から取り入れた空気は、イオン化して第二空間bに流入する。そして、イオン化した空気は、一対の仕切り板30に設けられた複数の導管31を通じて第一空間aに流入する。
【0025】
ここで、導管31は、イオン化した空気が第一空間a内に向かって勢いを増してより遠くに到達するように、一定の長さで一対の仕切り板30から突き出ている。
一対の仕切り板30は、いずれも同一の傾斜角で設けられ、かつ、導管31は、一対の仕切り板30の両側で対向する向きおよび位置に設けられることで、後述するイオン化した空気の循環に好適な構造となる。
【0026】
筐体10の内部の少なくとも第一空間aに亘って、底壁14には、一対の金属板33が敷設されている。
図4Aおよび
図4Bでは、一対の金属板33は、第一空間aから第二空間bにも延伸して敷設されている。一対の金属板33は、好ましくは、筐体10の長さ方向または幅方向に対向する向きで一定の間隔を空けて敷設されているとよい。
金属板33は、鉄等の磁性体の金属からなる。一対の仕切り板30の其々に設けられた導管31から吹き出したイオン化した空気は、一対の金属板33間の空隙に相当する、導管31から等距離となる底壁14の中央付近で互いにぶつかり、方向を換えて、空気が吹き出した側の導管31が設けられた仕切り板30に向かって、一対の金属板33に沿って流れる。
【0027】
ここで、仕切り板30には、底壁14(あるいは、底壁14に敷設された金属板33)と接触する箇所に一定の間隔を置いて、第一空間aと第二空間bとを連通するスリット32が設けられている。
これにより、スリット32を通じて第一空間aから第二空間bへと戻って来たイオン化した空気は、再度、導管31を通じて第二空間bから第一空間aへと流入し、以降、この経路を循環することで、第一空間aに収容される有機物の分解を促進する。
なお、吸気管20の一部に、外部からの空気の流入を制限するベント(図示せず)を設けてもよい。これにより、ベントの開閉動作と連動して、イオン化した空気の流入を制御して、有機物の分解速度を調整したり、分解反応を停止・開始することができる。
【0028】
また、有機物を第一空間aに収納した当初の初期発熱手段として、底壁14に蓄熱ヒータ34が備えられる。蓄熱ヒータ34は、その表面に蓄熱物質がコーティングされ、0~100℃程度の間で温度範囲を設定するもので、センサを用いた温度管理を行うことができる。
これにより、後述する過熱水蒸気が第一空間aに供給される前に、予め第一空間aの庫内温度を上げ、有機物の分解を促進することができる。
有機物の分解がある程度進み、分解熱が生じるようになると、以降、分解サイクルが自動的に進行し、蓄熱ヒータ34による加熱は、原則、不要となる。但し、庫内温度が設定温度よりも低下したことをセンサが感知すると、蓄熱ヒータ34が再度稼働して、加熱を行うようにしてもよい。
【0029】
また、内側壁12の、好ましくは、仕切り板30が設けられている側とは別の側の中央または中央より僅かに下の位置には、過熱水蒸気噴出孔63が設けられ、第一空間aに過熱水蒸気を供給する。この過熱水蒸気の供給元である、第一過熱水蒸気装置60については後述する。
なお、過熱水蒸気噴出孔63は、貫通孔13が穿かれた内側壁12と向かい合う反対の側の内側壁12に設けられるのが好ましい。
【0030】
図5は、本発明の一実施形態に係る有機物分解機1を構成する第一過熱水蒸気装置60および第二過熱水蒸気装置70の内部構造を示す透視図である。
第一過熱水蒸気装置60および第二過熱水蒸気装置70の内部には、過熱水蒸気生成用ヒータ62,72が備えられ、第一・第二過熱水蒸気装置60,70に接続された2本のパイプの一方から供給された飽和水蒸気を加熱により過熱水蒸気に換えて、他方のパイプに供給する。
過熱水蒸気生成用ヒータ62,72は、加熱時に表面温度が700~800℃程度になる。第一・第二過熱水蒸気装置60,70の内部の温度は、300℃程度に設定され、センサを用いた温度管理を行うことができる。
【0031】
図6は、本発明の一実施形態に係る有機物分解機1を構成する第一過熱水蒸気装置60および木酢液タンク50の内部構造を示す側面図である。
図3および
図4Aで示したように、有機物の分解により第一空間aで発生した水蒸気は、貫通孔13を通じて、第三空間cに流入する。この水蒸気が冷やされて液化した木酢液51は、木酢液タンク50に溜められる。そして、木酢液51は、フィルタ52により比較的大きな不純物をろ過されて、木酢液タンク50の飽和水蒸気生成用ヒータ53が設けられた側に流入し、加熱により飽和水蒸気に換わる。飽和水蒸気生成用ヒータ53は、加熱時に表面温度が200℃以上になる。
【0032】
この飽和水蒸気は、第一過熱水蒸気装置60に備えられた過熱水蒸気生成用ヒータ62でさらに加熱されて、過熱水蒸気に換わる。過熱水蒸気は、過熱水蒸気噴出孔63を通じて、第一空間aに流入し、有機物の分解をさらに促進する。
また、第一空間aと第一過熱水蒸気装置60との間で水蒸気が循環するサイクルが繰り返されることにより、木酢液51に含まれる不純物は、次第に分解され、木酢液51は、無色無臭の透明液体へと変化する。これにより、木酢液の廃棄の際に、廃棄水の検査を受ける必要がなくなる。
【0033】
このように、イオン化した空気が第一空間aと第二空間bとの間を循環すると共に、第一空間aから第三空間cに流入した水蒸気が、過熱水蒸気に換えられて第一空間aに再度流入することを繰り返すことにより、第一空間aに収納された有機物は、次第に分解され、最終的にセラミック状の残渣として排出される。
これにより、処理対象の有機物を予め選別する作業が不要になるだけでなく、分解後の有機物は、体積比で分解前の1/500~1/1000となり、大幅な減容が実現する。さらに、このセラミック状の残渣は、土壌改良や植物の生育促進のために活用することができる。
【0034】
図7は、本発明の他の実施形態に係る有機物分解機1を構成する第二過熱水蒸気装置70およびタンク40の内部構造を示す側面図である。
図3で示したように、有機物の分解により第一空間aで発生した水蒸気は、貫通孔13を通じて、第三空間cに流入する。ここで、この水蒸気が冷やされて液化した木酢液51を除く、残余の水蒸気は、外側壁11に穿たれた排出口71から筐体10の外部に排出される。
【0035】
この水蒸気は、第二過熱水蒸気装置70に備えられた過熱水蒸気生成用ヒータ72でさらに加熱されて、過熱水蒸気に換わり、タンク40の内部で連絡パイプ41に穿たれた放出孔42を通じて液体43によりフィルタリングされる。これにより、有機物の分解により発生した水蒸気を脱臭すると共に、液体43による冷却を経て、外部に排出することができる。
ここで、過熱水蒸気の放出孔42は、液体43の表面と同レベルに位置し、かつ、液体43の表面を下側にして設けられているのが好ましい。
液体43には、水を用いることを想定するが、この水に銀イオンを添加することにより、一層の脱臭効果が期待できる。
【0036】
タンク40には、フィルタリングされた過熱水蒸気を吸引して外部に排出するファン45がさらに設けられているのが好ましい。ここで、ファン45は、例えば、タンク40の上面を突き抜けて設けられた排出筒44の内部に設けられる。
ファン45が、タンク40内部の空気を外部に排出することにより、タンク40の内部は負圧になり、過熱水蒸気の液体43によるフィルタリングを効率よく進めることができる。
【符号の説明】
【0037】
1…有機物分解機、10…筐体、11…外側壁、12…内側壁、13…貫通孔、14…底壁、15…支持脚、16…上面蓋、17…投入筒、18…投入口、20…吸気管、30…仕切り板、31…導管、32…スリット、33…金属板、34…蓄熱ヒータ、40…タンク、41…連絡パイプ、42…放出孔、43…液体、44…排出筒、45…ファン、50…木酢液タンク、51…木酢液、52…フィルタ、53…飽和水蒸気生成用ヒータ、60…第一過熱水蒸気装置、62…過熱水蒸気生成用ヒータ、63…過熱水蒸気噴出孔、70…第二過熱水蒸気装置、71…排出口、72…過熱水蒸気生成用ヒータ、a…第一空間、b…第二空間、c…第三空間。