(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】単結晶の磁場印加引き上げに用いられる磁性体、および単結晶の磁場印加引き上げ方法
(51)【国際特許分類】
C30B 15/00 20060101AFI20220225BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C30B15/00 Z
C30B29/06 502G
(21)【出願番号】P 2019568025
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(86)【国際出願番号】 CN2018094315
(87)【国際公開番号】W WO2019184129
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2019-12-04
(31)【優先権主張番号】201810298489.3
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519433447
【氏名又は名称】蘇州八匹馬超導科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU BAMA SUPERCONDUCTIVE TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Room 4,No.156,Gangpu Middle Road,Zhangpu Town Kunshan,Jiangsu 215323,China
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】湯洪明
(72)【発明者】
【氏名】傅林堅
(72)【発明者】
【氏名】劉黎明
(72)【発明者】
【氏名】劉賽波
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-233332(JP,A)
【文献】特開2004-051475(JP,A)
【文献】特開2003-007526(JP,A)
【文献】特開平10-316488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイル(1)を備え、前記複数のコイル(1)が、直列に接続され、且つ、単結
晶炉(10)の外周を囲むように配置され、前記複数のコイル(1)のうち、対向して配
置された2つのコイル(1)が前記単結晶炉(10)の中心軸を中心として対称に配置さ
れ、且つ、各前記コイル(1)の中心軸が前記単結晶炉(10)の中心点を通過し、各前
記コイル(1)は、同軸に配置された1次コイル(11)および2次コイル(12)を含
み、前記2次コイル(12)は、前記1次コイル(11)に対して前記単結晶炉(10)
から離れるように配置され、
前記コイル(1)に通電すると、前記1次コイル(11)内の電流方向と前記2次コイ
ル(12)内の電流方向とは逆となり、
前記単結晶炉(10)の周辺に配置される低温容器(2)を更に備え、
第1電流リード(21)の常温端が電源の正極に接続され、前記第1電流リード(21
)の超電導端が前記コイルの正極ポートに接続されることと、
第2電流リード(22)の常温端が前記電源の負極に接続され、前記第2電流リード(
22)の超電導端が前記コイルの負極ポートに接続されることと、を更に含み、
前記低温容器(2)に互いに対向する2つの冷凍機(24)が配置され、各冷凍機(2
4)には、上から下へ順次配置されたコールドヘッド1段(241)およびコールドヘッ
ド2段(242)がそれぞれ設けられ、
前記コールドヘッド1段(241)は、前記第1電流リード(21)および前記第2電
流リード(22)を冷却するように構成され、
前記コールドヘッド2段(242)は、前記低温容器(2)内の低温液体を凝縮するよ
うに構成され、
前記2次コイル(12)は前記1次コイル(11)の外側に配置され、
前記1次コイル(11)と前記2次コイル(12)との間に、所定の距離が設けられ、
各前記コイル(1)の中心軸は、前記単結晶炉(10)の中心軸と第1角度をなし、
前記複数のコイル(1)のうち、各2つの隣接する前記コイル(1)の中心軸の間に、
角度が形成され、且つ、隣接する前記角度は異なり、対向する前記角度は同じであり、
前記複数のコイル(1)の数は4つであり、前記4つのコイル(1)のうちの2つのコ
イル(1)が前記単結晶炉(10)の第1側に配置され、前記4つのコイル(1)のうち
の他の2つのコイル(1)が前記単結晶炉(10)の第2側に対向して配置され、
前記4つのコイル(1)のうちの前記単結晶炉(10)の第1側にある隣接する2つの
コイル(1)の中心軸間の角度、および前記4つのコイル(1)のうちの前記単結晶炉(
10)の第2側にある隣接する2つのコイル(1)の中心軸間の角度は、いずれも所定の
角度であり、
前記所定の角度の範囲は50°~70°であり、
前記複数のコイル(1)は超電導コイルであり、
前記低温容器(2)内に低温液体が充填され、前記複数のコイル(1)が前記低温液体
内に置かれ、
前記第1電流リード(21)の超電導端が前記コイルの正極ポートに接続されることは
、
前記第1電流リード(21)は第1銅線端と、前記第1銅線端に接続される第1超電導
端とを含み、前記第1超電導端は前記低温液体内に延在して前記コイルの正極ポートに接
続されることを含み、
前記第2電流リード(22)の超電導端が前記コイルの負極ポートに接続されることは
、
前記第2電流リード(22)は第2銅線端と、前記第2銅線端に接続される第2超電導
端とを含み、前記第2超電導端は前記低温液体内に延在して前記コイルの負極ポートに接
続されることを含む、
単結晶の磁場印加引き上げに用いられる磁性体。
【請求項2】
各前記コイル(1)の中心軸は、前記単結晶炉(10)の中心軸に直交する、
請求項
1に記載の磁性体。
【請求項3】
前記複数のコイル(1)のうち、各2つの隣接する前記コイル(1)の中心軸間の角度
は同じである、
請求項1から
2のいずれか1項に記載の磁性体。
【請求項4】
単結晶炉(10)の外部に、請求項1から
3のいずれか1項に記載の磁性体を配置し、
前記磁性体に通電することと、
前記単結晶炉(10)内に、インゴットが載置されたルツボ(30)を加熱する加熱器
(20)を配置することと、
CZ法により、単結晶シリコンを取得することと、を含む、
単結晶の磁場印加引き上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体の技術分野に関し、例えば、単結晶の磁場印加引き上げに用いられる磁性体、および単結晶の磁場印加引き上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコンは、結晶材料における重要な要素であり、半導体シリコンデバイスを製造する原料であり、大規模集積回路、整流器、パワートランジスタ、ダイオード、および太陽電池パネル等の半導体の技術分野に広く適用されている。
【0003】
単結晶シリコンの製造方法は、CZ法およびFZ法を含む。現在、単結晶シリコンは、通常、CZ法を用いて製造され、CZ法は、単結晶炉を用いて溶融体から棒状の単結晶シリコンを成長させる。CZ法の基本的な特徴として、技術が成熟し、結晶外形および電気的パラメータを制御しやすく、大径の単結晶シリコンの成長に適用する。近年、超大規模集積回路の発展において、単結晶シリコンの寸法および品質に対してより高い要求が求められている。しかし、結晶寸法の増大および溶融体の熱対流の強化に伴い、溶融体中の温度変動および結晶の局所的な溶融が起こり、結晶内の炭素、酸素等の不純物の分布が不均一になり、更に、単結晶シリコンの品質が低下する。
【0004】
上記問題を解決するために、単結晶の磁場印加引き上げ技術が発展しつつある。CZ法の基に、単結晶炉の外側に強力な磁場を印加し、強力な磁場は、溶融体の熱対流を抑制する能力を有する。単結晶シリコンの引き上げを行なう成長システムに、一定の強度および均一性を有する磁場を印加することにより、シリコン溶融体中の熱対流を効果的に抑制し、溶融シリコン中の不純物の輸送を抑制することができる。適当に分布された磁場は、酸素、ホウ素、アルミニウム等の不純物が石英ルツボから溶融体に入ることを低減し、単結晶シリコンの品質を向上させることができる。
【0005】
従来のMCZ(Magnetic field applied CZ)法の磁場発生装置は、一般的に、永久磁性材料および通常の電磁石を用い、該MCZ法は、永久磁性材料の飽和磁化および通常の電磁石の電力に制限されるため、発生する磁場強度が高くないことが多く、溶融体の熱対流に対する抑制効果は一般的である。超電導磁性体技術の発展に伴い、ますます多くの超電導磁性体は通常の電磁石を取り替え、超電導磁性体はより強力な磁場を発生することができ、溶融体の熱対流に対する抑制効果がより顕著であり、対応する結晶引き上げプロセスに合わせ、より大きな寸法またはより高い品質の単結晶シリコンを製造することができる。
【0006】
MCZ法における超電導磁性体が発生する磁場は、カスプ磁場、横磁場、および縦磁場を含む。ここで、縦磁場は、溶融体の熱対流に対する抑制効果は顕著ではなく、カスプ磁場および横磁場に取り替えられた。
【0007】
磁性体が単結晶炉の外側に配置されているため、単結晶炉との電磁両立の問題を考慮する必要があり、単純コイルが発生する漏洩磁場は一般的に大きく、一般的な電子機器または電源の使用要求、人体への安全要求を満たすことができない。そのため、超電導磁性体は、磁性体の外側にヨークを付加する受動遮蔽方式により漏洩磁場を低減し、これにより、磁性体の重量は急激に増大し、一般的に、ヨークの重量は磁性体全体の50%以上に達し、製造コストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、漏洩磁場を効果的に低減するとともに、磁性体の重量の増加を回避することができる単結晶の磁場印加引き上げに用いられる磁性体、および単結晶の磁場印加引き上げ方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のコイルを備え、前記複数のコイルが、直列に接続され、且つ、単結晶炉の外周を囲むように配置され、前記複数のコイルのうち、対向して配置された2つのコイルが前記単結晶炉の中心軸を中心として対称に配置され、且つ、各前記コイルの中心軸が前記単結晶炉の中心点を通過し、各前記コイルは、同軸に配置された1次コイルおよび2次コイルを含み、前記2次コイルは、前記1次コイルに対して前記単結晶炉から離れるように配置され、前記コイルに通電すると、前記1次コイル内の電流方向と前記2次コイル内の電流方向とは逆となる単結晶の磁場印加引き上げに用いられる磁性体を提供する。
【0010】
好ましくは、前記1次コイルと前記2次コイルの間に、所定の距離が設けられている。
【0011】
好ましくは、各前記コイルの中心軸は、前記単結晶炉の中心軸に直交する。
【0012】
好ましくは、各前記コイルの中心軸は、前記単結晶炉の中心軸と第1角度をなす。
【0013】
好ましくは、前記複数のコイルのうち、各2つの隣接する前記コイルの中心軸間の角度は同じである。
【0014】
好ましくは、前記複数のコイルのうち、各2つの隣接する前記コイルの中心軸の間に、角度が形成され、且つ、隣接する前記角度は異なり、対向する前記角度は同じである。
【0015】
好ましくは、前記複数のコイルの数は4つであり、前記4つのコイルのうちの2つのコイルが前記単結晶炉の第1側に配置され、前記4つのコイルのうちの他の2つのコイルが前記単結晶炉の第2側に対向して配置される。
【0016】
好ましくは、前記4つのコイルのうちの前記単結晶炉の第1側にある隣接する2つのコイルの中心軸間の角度、および前記4つのコイルのうちの前記単結晶炉の第2側にある隣接する2つのコイルの中心軸間の角度は、いずれも所定の角度である。
【0017】
好ましくは、前記所定の角度の範囲は50°~70°である。
【0018】
好ましくは、前記複数のコイルは超電導コイルである。
【0019】
好ましくは、前記磁性体は、前記単結晶炉の周辺に配置される低温容器を更に備える。
【0020】
好ましくは、前記低温容器内に低温液体が充填され、前記複数のコイルが前記低温液体内に置かれている。
【0021】
好ましくは、前記複数のコイルが順に直列に接続され、そのうち、前記複数のコイルの1次コイルが順に直列に接続され、前記複数のコイルの2次コイルが順に直列に接続され、直列に接続された1次コイルと2次コイルとが直列に接続され、正極および負極の2つのポートを形成する。
【0022】
好ましくは、前記複数のコイルが順に直列に接続され、そのうち、前記複数のコイルのうちの近接した1次コイルおよび2次コイルが、それぞれ直列に接続されてから、全体として直列に接続され、正極および負極の2つのポートを形成する。
【0023】
好ましくは、前記低温容器に1対の2元電流リードが設けられ、それぞれ第1電流リードおよび第2電流リードである。
【0024】
第1電流リードの常温端が電源の正極に接続され、前記第1電流リードの超電導端が、前記複数のコイルが直列に接続された正極ポートに接続される。
【0025】
第2電流リードの常温端が前記電源の負極に接続され、前記第2電流リードの超電導端が、前記複数のコイルが直列に接続された負極ポートに接続される。
【0026】
好ましくは、前記第1電流リードの超電導端が、前記複数のコイルが直列に接続された正極ポートに接続されることは、
前記第1電流リードは第1銅線端と、前記第1銅線端に接続される第1超電導端とを含み、前記第1超電導端は前記低温液体内に延在し、前記複数のコイルが直列に接続された正極ポートに接続されることを含む。
【0027】
好ましくは、前記第2電流リードの超電導端が、前記複数のコイルが直列に接続された負極ポートに接続されることは、
前記第2電流リードは第2銅線端と、前記第2銅線端に接続される第2超電導端とを含み、前記第2超電導端は前記低温液体内に延在し、前記複数のコイルが直列に接続された負極ポートに接続されることを含む。
【0028】
好ましくは、前記低温容器に冷凍機が配置され、冷凍機に、上から下へ順次配置されたコールドヘッド1段およびコールドヘッド2段が設けられ、
前記コールドヘッド1段は、前記第1電流リードおよび前記第2電流リードを冷却するように構成され、前記コールドヘッド2段は、前記低温容器内の低温液体を凝縮するように構成される。
【0029】
本発明は、
単結晶炉の外部に、上記磁性体を配置し、前記磁性体に通電することと、
前記単結晶炉内に、インゴットが載置されたルツボを加熱する加熱器を配置することと、
CZ法により、単結晶シリコンを取得することと、を含む、
単結晶の磁場印加引き上げ方法を更に提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、コイルを1次コイルおよび2次コイルに分け、1次コイルおよび2次コイルにそれぞれ逆方向の電流を流すことにより、2次コイルが発生する磁場は、1次コイルが外部で発生する磁場を効果的に打ち消すことができ、自発遮蔽方式により、磁性体の漏洩磁場を低減する。且つ、磁性体の重量を低減し、磁性体の製造コストを節約する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施例に係る磁性体および単結晶炉の分布の構造模式図である。
【
図2】本発明の実施例に係る磁性体および単結晶炉の断面図である。
【
図3】本発明の実施例に係る磁性体および単結晶炉の外部の構造模式図である。
【
図4】本発明の実施例に係る磁性体が発生する電界強度と、他の形態で発生する電界強度との対比図である。
【符号の説明】
【0032】
10 単結晶炉
20 加熱器
30 ルツボ
1 コイル
11 1次コイル
12 2次コイル
2 低温容器
21 第1電流リード
22 第2電流リード
23 逃がしバルブ
25 信号線インタフェース
26 真空バルブ
24 冷凍機
241 コールドヘッド1段
242 コールドヘッド2段
【発明を実施するための形態】
【0033】
本実施例は、単結晶の磁場印加引き上げに用いられる磁性体を提供し、
図1および
図2に示すように、該単結晶の磁場印加引き上げに用いられる磁性体は、複数のコイル1を備え、前記複数のコイル1は、順に直列に接続され、且つ、単結晶炉10の外周を囲むように配置され、前記複数のコイル1のうち、対向して配置された2つのコイル1は単結晶炉10の中心軸を中心として対称に配置され、且つ、各コイル1の中心軸が単結晶炉10の中心点を通過し、各前記コイル1は、同軸に配置された1次コイル11および2次コイル12を含み、前記2次コイル12は、前記1次コイル11に対して前記単結晶炉10から離れるように配置され、前記コイル1に通電すると、前記1次コイル11内の電流方向と前記2次コイル12内の電流方向とは逆となる。
【0034】
本実施例は、コイル1を1次コイル11および2次コイル12に分け、1次コイル11および2次コイル12に逆方向の電流を流すことにより、2次コイル12が発生する磁場は、1次コイル11が外部で発生する磁場を効果的に打ち消すことができ、自発遮蔽方式により、磁性体の漏洩磁場を低減し、磁性体の重量を低減し、磁性体の製造コストを節約し、コイルの外部に強磁性材料を付加する受動遮蔽方式を用いる場合の漏洩磁場が小さくなり、磁性体の重量が増加することを回避する。
【0035】
一実施例において、1次コイル11と2次コイル12との間に、所定の距離が設けられている。本実施例は、2次コイル12を1次コイル11の外側に配置することにより、2次コイル12の、1次コイル11が外部で発生する漏洩磁場を打ち消す効果を向上させることができる。また、本実施例は、所定の距離を限定せず、実際の生産過程において、2次コイル12が1次コイル11から発生する外磁場を打ち消すことができ、磁性体の漏洩磁場を減少することを確保するように、必要に応じて製造してもよい。
【0036】
一実施例において、各コイル1の中心軸は、単結晶炉10の中心軸に直交する。一実施例において、各コイル1の中心軸は、単結晶炉10の中心軸と第1角度をなす。複数のコイル1のうち、対向して配置された2つのコイルは単結晶炉10の中心軸を中心として対称に配置され、且つ、隣接するコイル1の中心軸の間に角度が設けられているため、各コイル1は単結晶炉10内に横磁場を形成し、単結晶炉10により高品質の結晶を製造できることを確保する。一実施例において、1次コイル11は、CZ結晶に必要な主磁場を提供し、2次コイル12は自発遮蔽コイルで1次コイル11と逆方向になる電流を流し、漏洩磁場を低減するとともに、1次コイル11と共に発生する磁場が、単結晶の引き上げを行なうための横磁場を供給する。
【0037】
一実施例において、コイル1の数は4つであり、そのうち、該4つのコイル1は、対応して配置された2対のコイル1を含み、4つのコイル1のうちの2つのコイル1は、単結晶炉10の第1側に配置され、4つのコイル1のうちの他の2つのコイル1は、単結晶炉10の第2側に対向して配置される。前記4つのコイル1のうちの前記単結晶炉10の第1側にある隣接する2つのコイル1の中心軸間の角度、および前記4つのコイル1のうちの前記単結晶炉10の第2側にある隣接する2つのコイル1の中心軸間の角度は、いずれも所定の角度であり、一実施例において、所定の角度の範囲は50°~70°である。
【0038】
本実施例は、該所定の角度を限定せず、1次コイル11と2次コイル12とが共に発生する横磁場が一定の強度および均一性を有し、単結晶炉10内の結晶の製造品質を向上させることを確保するように、実際の必要に応じて調整してもよい。
【0039】
図2および
図3に示すように、本実施例に係る磁性体は、単結晶炉10の周辺に配置される低温容器2を更に備え、コイル1は低温容器2内に配置される。ここで、前記低温容器2内に低温液体が充填され、コイル1は低温液体に置かれている。一実施例において、低温容器2内に真空中間層が配置され、低温容器2には真空バルブ26が更に配置され、真空バルブ26により、低温液体の外部の真空環境が確保でき、断熱の効果を果たし、低温液体はゼロ消費状態にある。一実施例において、低温液体が液体ヘリウムであり、真空層が液体ヘリウムデュアーである。一実施例において、コイルは低温液体によって冷却され、冷凍機で直接冷却する等の形態を用いてもよく、低温液体および真空中間層は他のタイプであってもよく、本実施例はこれについて限定しない。
【0040】
低温容器2に、電源に接続される第1電流リード21および第2電流リード22が設けられる。ここで、第1電流リード21および第2電流リード22は、いずれも2元電流リードであり、且つ、第1引電流リード21および第2電流リード22は、いずれも銅線端と、銅線端に接続される超電導端とを含み、超電導端は低温液体内に延在してコイル1に接続される。第1電流リード21および第2電流リード22は、それぞれコイル1および電源に接続され、閉ループを形成し、電源からコイル1に磁場の電流を供給する。
【0041】
また、低温容器2に逃がしバルブ23が更に配置され、コイル1の蓄勢が大きいため、コイル1が意図せずに超電導性を失うと、大量の熱量を放出し、大量の液体ヘリウムを蒸発させ、大きな気圧を発生させ、ひどい場合、磁性体を破損して人に損傷を与える恐れがあり、この時、磁性体の安全性を確保するために、逃がしバルブ23によって放圧する。
【0042】
本実施例は、各1次コイル11および2次コイル12をいずれも超電導コイルとすることにより、超低温環境温度で超電導状態となり、通常のコイルよりも高い電流を負荷でき、より高い磁場が発生し、単結晶シリコンの製造時の品質を確保する。
【0043】
上記低温容器2に冷凍機24が更に配置され、冷凍機24に、上から下へ順次配置されたコールドヘッド1段241およびコールドヘッド2段242が設けられ、ここで、コールドヘッド1段241は、第1電流リード21、第2電流リード22、および輻射防止パネル(図示せず)を冷却するように配置され、コールドヘッド2段242は、低温容器2内の低温液体を凝縮するように配置される。
【0044】
上記低温容器2に信号線インタフェース25が更に配置され、信号線は、信号線インタフェース25を介して低温容器2内にアクセスし、コイル1の温度、電圧降下等の信号を検出するために使用される。
【0045】
図4に示すように、シールド無し、強磁性材料シールド、および自発遮蔽という3つの場合における漏洩磁場の対比図を示す。ここで、横軸は、試験点から中心磁場までの距離を表す。一般的には、1.6メートル~1.8メートルに位置する場合、磁場の強度が500ガウス(GS)よりも小さいことが要求される。人体安全に対する要求は、径方向3メートル内の磁場強度が60ガウス(GS)よりも小さいことである。
図4に示すように、本実施例の自発遮蔽方式を用いることにより、漏洩磁場を効果的に低減するとともに、人体安全の要求を満たすことができる。
【0046】
本実施例は、以下のステップを含む単結晶の磁場印加引き上げ方法を更に提供する。
【0047】
ステップ1において、単結晶炉10の外部に、上記磁性体を配置し、磁性体に通電する。
【0048】
ここで、磁性体に通電することは、コイル1および冷凍機24等に通電することを含む。磁性体内のコイル1に通電すると、1次コイル11内および2次コイル12内に逆方向の電流が流れ、2次コイル12が発生する磁場は、1次コイル11が外部で発生する磁場を効果的に打ち消すことができ、磁性体の漏洩磁場が小さくなる。また、コイル1の外部に強磁性材料を付加する受動遮蔽方式を用いることにより、漏洩磁場が小さくなり、磁性体の重量が増加することを回避するとともに、磁性体の製造コストを節約する。
【0049】
ステップ2において、単結晶炉10内に、インゴットが載置されたルツボ30を加熱する加熱器20を配置する。インゴットを加熱することにより溶融状態になるようにし、コイル1による横磁場が溶融体に作用し、磁場の作用で、導電性を有する溶融体は、流れる際に渦電流を生じ、ローレンツ力を受ける。ローレンツ力の作用で、溶融体の熱対流が抑制され、溶融体の液面における酸素、点欠陥、および他の不純物が抑制される。
【0050】
ステップ3において、CZ法により、単結晶シリコンを取得する。ここで、該コイル1が発生する横磁場は、溶融体の液面から液面下50ミリメートル(mm)程度までの領域で高い磁場均一性(約3‰~1%)を有するため、溶融体の熱対流の抑制に対して一致性を有し、製造された単結晶シリコンは高い純度を有し、微量な不純物の分布は更に均一となり、単結晶シリコンの品質を向上させる。
【0051】
ここで、CZ法とは、溶融体を溶融状態に加熱した後に、化学方法でエッチングされた1つの種結晶を降下させて溶融体に接触させ、単結晶炉10を回転させ、溶融体を一定の直径の結晶となるまで種結晶で結晶し続けて成長させることである。