(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】自己修復機能性ポリビニル系化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/18 20060101AFI20220225BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20220225BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20220225BHJP
C08F 220/34 20060101ALI20220225BHJP
C09D 133/08 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C08F220/18
C08F220/26
C08F220/30
C08F220/34
C09D133/08
(21)【出願番号】P 2020506695
(86)(22)【出願日】2018-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2018004286
(87)【国際公開番号】W WO2018190647
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】10-2017-0047902
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517361694
【氏名又は名称】セコ カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519368459
【氏名又は名称】タングク ユニバーシティ チョナン キャンパス インダストリー アカデミック コーポレイション ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】507421795
【氏名又は名称】ポステック アカデミー-インダストリー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー ムンホア
(72)【発明者】
【氏名】クウォン キュンホ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ウォンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ハン クワンヨン
(72)【発明者】
【氏名】リム シュンキュ
(72)【発明者】
【氏名】パク ビョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ドンホン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒュンジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ホンチュル
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンラエ
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-145648(JP,A)
【文献】特公昭49-014630(JP,B1)
【文献】国際公開第2013/162019(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/077806(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/18
C08F 220/26
C08F 220/30
C08F 220/34
C09D 133/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式中、l、o、p、q、rは、0<l≦400、0<o≦400、0<p≦400、0<q≦400、0≦r<400であり、5≦(l+o+p+q+r)≦2000であり、好ましくは、0<l≦100、0<o≦100、0<p≦100、0<q≦100、0≦r<100である。)
で示される構造を含む自己修復機能性ポリビニル系化合物。
【請求項2】
重量平均分子量が、500~5,000,000である
請求項1に記載の自己修復機能性ポリビニル系化合物。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の自己修復機能性ポリビニル系化合物を、基板上にコーティングすることにより形成された高分子薄膜。
【請求項4】
前記コーティングが、スピンコーティング、ドロップコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、静電コーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、インクジェットコーティング及びロールコーティングからなる群から選ばれるいずれか一つの方法により行われる
請求項
3に記載の高分子薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己修復機能性ポリビニル系化合物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子塗膜に形成されたスクラッチなどの自己修復ための従来知られている方法は、大きく2つの方法に分けることができる。
【0003】
一つは、材料内に治癒剤をカプセルの形(Capsular System)や管束の形(Vascular System)で導入し、外傷によって微小損傷が引き起こされると、治癒剤が漏れて損傷した部位を充填して回復する方法である(特許文献1、2、3、4)。もう一つは、外部治癒剤の助けを借りずに、材料自体の弾、高分子鎖の移動性(Chain Mobility)、光反応性官能基、熱反応性官能基、非共有結合官能基などによって微小損傷を回復する方法である(特許文献5、6、7)。
【0004】
カプセルと管束に導入された治癒剤を用いた回復の最初の方法は、広範囲の損傷を回復することができるが、治癒剤の繰り返しの回復と保全性に限界がある。
【0005】
これらの欠点を克服し、自己修復材料を繰り返し回復させるために、材料自体の弾性(Elasticity)、高分子鎖の移動性(Chain Mobility)、光/熱反応性官能基、超分子を導入することにより、材料自体の回復能力を向上させるために、多くの研究が行われてきた。
【0006】
特に、現代社会に不可欠な要素である電子機器やディスプレイ機器の表面保護材料として適用される繰り返し回復能力、及び回復後に材料の固有の特性を回復する能力が必要とされている。
【0007】
したがって、ブラシ高分子を使用した自己修復ブラシ高分子は、前述の要件を満たすことができる強力な材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2004-005997号公報
【文献】韓国公開特許第10-2015-0049852号公報
【文献】韓国特許第10-1168038号
【文献】韓国特許第10-1498361号
【文献】韓国公開特許第10-2012-0076149号公報
【文献】韓国公開特許第10-2015-0097902号公報
【文献】韓国公開特許第10-2016-0028556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリビニル系樹脂のブラシに多様な機能性分子を導入して、自己修復能を最大化したポリビニル系化合物及びその製造方法とこれから製造された高分子塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、下記式(1)
【化1】
[式中、R
1とR
2は、水素、又は炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、
mとnは、ポリビニル系化合物単位体の個数を表し、0≦m<1000であり、0≦n<1000であり、5≦(m+n)≦2000であり、
Zは、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、
Aは、-OH、-NH
2、-COOH、-Cl、-Br、-I、及び炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体からなる群から選ばれるいずれか一つであり、
Wは、下記
【化2】
【化3】
(式中、Rは、水素又は炭素数1~20個の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体である)で示された化学誘導体からなる群から2~10個の化学誘導体から選ばれる。]で示される構造を含む自己修復機能性ポリビニル系化合物を提供する。
【0011】
第2形態において、本発明は、自己修復機能性ポリビニル系化合物を製造する方法を提供し、以下の工程を含む:
下記式(3)
【化4】
(式中、R
3は、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、Zは、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体である)
で示されるビニル系単量体を、ラジカル重合反応により下記式(4)
【化5】
(式中、R
3は、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、xは、ポリビニル系化合物の繰り返し単位体の数を表し、5~50,000であり、Zは、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体である)
で示されるポリビニル系化合物を製造する第1工程;及び
式(4)のポリビニル系化合物と下記で示された化学誘導体の縮合反応により下記式(1)
【化6】
[式中、R
1とR
2は、水素、又は炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、
mとnは、ポリビニル系化合物単位体の個数を表し、0≦m<1000であり、0≦n<1000であり、5≦(m+n)≦2000であり、
Zは、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、
Aは、-OH、-NH
2、-COOH、-Cl、-Br、-I、及び炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体からなる群から選ばれるいずれか一つであり、
Wは、下記
【化7】
【化8】
(式中、Rは、水素又は炭素数1~20個の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体である)で示された化学誘導体からなる群から2~10個の化学誘導体から選ばれる。]で示される自己修復機能性ポリビニル系化合物を製造する第2工程。
【0012】
第3形態において、本発明は、自己修復機能性ポリビニル系化合物を、基板上にコーティングすることにより形成された高分子薄膜を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自己修復機能性ポリビニル系化合物は、ブラシに導入される自己修復機能性高分子、並びに材料自体の弾性及び鎖の柔軟性などの固有の物性を使用することにより、繰り返し回復能力を提供し、共有結合及び非共有結合の複合的な補完により回復能力を最大化することができる。この効果的な自己修復能は、表面保護材料として適用できることが期待される。さらに、ポリビニル系を高分子骨格に導入することにより、高分子材料のガラス転移温度及び硬度を改善することにより、高分子素材の物理的特性を最大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例による高分子薄膜の自己修復特性を示す概略図である。
【
図2】本発明の自己修復高分子薄膜の表面レベル測定装置により測定された熱処理時間による高分子薄膜の表面の厚さ変化を示すグラフと高分子薄膜の表面を示す画像である。
【
図3】本発明の自己修復高分子薄膜の表面レベル測定装置により測定されたUVエネルギーの大きさによる高分子薄膜の表面の厚さ変化を示すグラフと高分子薄膜の表面を示す画像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の自己修復機能性ポリビニル系化合物は、下記式(1)
【化9】
[式中、R
1とR
2は、水素、又は炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、
mとnは、ポリビニル系化合物単位体の個数を表し、0≦m<1000であり、0≦n<1000であり、5≦(m+n)≦2000であり、
Zは、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、
Aは、-OH、-NH
2、-COOH、-Cl、-Br、-I、及び炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体からなる群から選ばれるいずれか一つであり、
Wは、下記
【化10】
【化11】
(式中、Rは、水素又は炭素数1~20個の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体である)で示された化学誘導体からなる群から2~10個の化学誘導体から選ばれる。]で示される構造を含む。
【0016】
前記Zは、-CH2SRO-、-CH2SROCO-、-CH2SRCOO-、-CH2SRO-、-CH2SRNHCO-、-CH2SROCO(CH2)2OCO-、-CH2SRCO-、-CH2SO2RO-、-CH2SO2ROCO-、-CH2SO2RCOO-、-CH2SO2RNHCO-、-CH2SO2ROCO(CH2)2OCO-、-CH2SO2RCO-、-OCORO-、-OCOROCO-、-OCORCOO-、-OCORNHCO-、-OCOROCO(CH2)2OCO-、-OCORCO-、-COORO-、-COOROCO-、-COORCOO-、-COORNHCO-、-COOROCO(CH2)2OCO-、-COORCO-、-ORO-、-OROCO-、-ORCOO-、-ORNHCO-、-OROCO(CH2)2OCO-、-ORCO-、-NHRO-、-NHROCO-、-NHRCOO-、-NHRNHCO-、-NHROCO(CH2)2OCO-、-NHRCO-、-CH2RO-、-CH2ROCO-、-CH2RCOO-、-CH2RNHCO-、-CH2ROCO(CH2)2OCO-、-OC6H4RO-、-OC6H4ROCO-、-OC6H4RCOO-、-OC6H4RNHCO-、-OC6H4ROCO(CH2)2OCO-、-OC6H4RCO-、-OC6H4COOROCO-、-OC6H4COORCOO-、-OC6H4COORO-、-OC6H4COORNHCO-、-OC6H4COOROCO(CH2)2OCO-、-OC6H4COORCO-、-OC6H4CONHROCO-、-OC6H4CONHRCOO-、-OC6H4CONHRO-、-OC6H4CONHRNHCO-、-OC6H4CONHROCO(CH2)2OCO-、及び-OC6H4CONHRCO-からなる群から選ばれる脂肪族又は芳香族誘導体であり、ここで、Rは、水素又は炭素数1~20の脂肪族誘導体である。
【0017】
前記Aは、-OH、-NH2、-COOH、-Cl、-Br、-I、及び炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体からなる群から選ばれるいずれか一つであり、具体的には、-OH、-NH2、-COOH、-Cl、-Br、-I、-CH3、-CH2OH、-CH2NH2、-CH2COOH、-CH2Cl、-CH2Br、-CH2I、-CH2CH3、-CH2CH2OH、-CH2CH2NH2、-CH2CH2COOH、-CH2CH2Cl、-CH2CH2Br、-CH2CH2I、-CH2CH2CH3、-CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2COOH、-CH2CH2CH2Cl、-CH2CH2CH2Br、-CH2CH2CH2I、-C6H4OH、-C6H4NH2、-C6H4COOH、-C6H4Cl、-C6H4Br、-C6H4I、-C6H4CH3、-C6H4CH2OH、-C6H4CH2NH2、-C6H4CH2COOH、-C6H4CH2Cl、-C6H4CH2Br、-C6H4CH2I、-C6H4CH2CH2、-C6H4CH2CH2OH、-C6H4CH2CH2NH2、-C6H4CH2CH2COOH、-C6H4CH2CH2Cl、-C6H4CH2CH2Br、-C6H4CH2CH2I、-C6H4CH2CH2CH3、-C6H4CH2CH2CH2OH、-C6H4CH2CH2CH2NH2、-C6H4CH2CH2CH2COOH、-C6H4CH2CH2CH2Cl、-C6H4CH2CH2CH2Br、-C6H4CH2CH2CH2I、-CH2C6H4OH、-CH2C6H4NH2、-CH2C6H4COOH、-CH2C6H4Cl、-CH2C6H4Br、-CH2C6H4I、-CH2CH2C6H4OH、-CH2CH2C6H4NH2、-CH2CH2C6H4COOH、-CH2CH2C6H4Cl、-CH2CH2C6H4Br、-CH2CH2C6H4I、-CH2CH2CH2C6H4OH、-CH2CH2CH2C6H4NH2、-CH2CH2CH2C6H4COOH、-CH2CH2CH2C6H4Cl、-CH2CH2CH2C6H4Br、及び-CH2CH2CH2C6H4Iからなる群から選ばれる脂肪族誘導体又は芳香族誘導体である。
【0018】
Wは、下記
【化12】
【化13】
(式中、Rは、水素又は炭素数1~20個の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体である)で示された化学誘導体からなる群から2~10個の化学誘導体から選ばれる。
【0019】
本発明の自己修復機能性ポリビニル系化合物の重量平均分子量は、500~5,000,000、好ましくは5,000~500,000である。
【0020】
本発明の自己修復機能性ポリビニル系化合物の具体的な例として、下記式(2)
【化14】
(式中、l、o、p、q、rは、0<l≦400、0<o≦400、0<p≦400、0<q≦400、0≦r<400であり、5≦(l+o+p+q+r)≦2000であり、好ましくは、0<l≦100、0<o≦100、0<p≦100、0<q≦100、0≦r<100である。)で示される化合物が挙げられる。前記式(2)の化合物は、前記式(1)で示されたWの化学誘導体からなる群から選ばれた4つの自己修復機能性分子を導入する例として表される。しかし、本発明で導入される自己修復機能性ポリビニル系化合物は、前記式(2)で示される高分子化合物に限定されない。
【0021】
本発明による自己修復機能性ポリビニル系化合物は、様々な基材に容易に加工及びコーティングできる経済的な材料であり、自己修復機能性ポリビニル系化合物を用いて高分子薄膜を容易に製造することができる。さらに、高分子薄膜は、特に自己修復機能分子によって表面の微小損傷を回復し、回復能力と繰り返し的に効果的な回復を最大化することができる。
【0022】
別の形態では、本発明は、自己修復機能性ポリビニル系化合物を製造する方法を提供し、以下の工程を含む:
【0023】
下記式(3)
【化15】
(式中、R
3は、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、Zは、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体である)
で示されるビニル系単量体を、ラジカル重合反応により下記式(4)
【化16】
(式中、R
3は、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、xは、ポリビニル系化合物の繰り返し単位体の数を表し、5~50,000であり、Zは、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体である)
で示されるポリビニル系化合物を製造する第1工程;及び
式(4)のポリビニル系化合物と下記で示された化学誘導体の縮合反応により下記式(1)
【化17】
[式中、R
1とR
2は、水素、又は炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、
mとnは、ポリビニル系化合物単位体の個数を表し、0≦m<1000であり、0≦n<1000であり、5≦(m+n)≦2000であり、
Zは、炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体であり、
Aは、-OH、-NH
2、-COOH、-Cl、-Br、-I、及び炭素数1~20の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体からなる群から選ばれるいずれか一つであり、
Wは、下記
【化18】
【化19】
(式中、Rは、水素又は炭素数1~20個の脂肪族誘導体又は芳香族誘導体である)で示された化学誘導体からなる群から2~10個の化学誘導体から選ばれる。]で示される自己修復機能性ポリビニル系化合物を製造する第2工程。
【0024】
本発明の方法の第1工程において、前記式(4)のポリビニル系化合物は、前記式(3)で示されるビニル系単量体のラジカル重合反応、具体的には、RAFT重合によって製造することができる。本発明の実施形態において、RAFT重合は、ラジカル開始剤及び鎖移動剤を用いてポリビニル系化合物を重合することができる。ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トルエン又はそれらの混合溶液を溶媒として使用してもよい。使用することができる。前記第1工程は、-100℃~100℃の温度及び1~5atmの圧力で行うことができる。
【0025】
また、本発明の方法の第2工程において、前記式(1)で示される自己修復ポリビニル系化合物は、式(4)のポリビニル系化合物(具体的には、ポリビニル系化合物の水酸化基(-OH))と前記式(1)のWで表される化学誘導体の縮合反応により製造することができる。ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン又はそれらの混合溶液を溶媒として使用してもよい。
【0026】
本発明の別の態様は、前記自己修復機能性ポリビニル系化合物を基板上にコーティングすることにより形成された高分子薄膜が提供する。
【0027】
特に限定されないが、前記コーティングは、スピンコーティング、ドロップコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、静電コーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、インクジェットコーティング及びロールコーティングからなる群から選ばれるいずれか一つの方法によって行うことができる。
【0028】
以下の合成例及び実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの合成例及び実施例は、本発明を例示的に説明することのみを意図しており、本発明の範囲はそれらによって何ら限定されるものではない。当業者は、本発明に含まれる様々な結合基又は置換基を適用して、本発明の範囲内の様々な置換基を有するポリビニル系化合物を製造することができる。
【0029】
[実施例]
合成例1
【化20】
100mLの丸底フラスコに、5mLの4-ヒドロキシブチルメタクリレートを添加し、窒素雰囲気下、17mLのジメチルホルムアミドに溶解した。そこに、3mgの開始剤と10mgの鎖移動剤を混合溶液に添加した後、60℃で24時間撹拌した。反応終了後、ジエチルエーテルに沈殿し、精製し、これを40℃真空下で8時間乾燥して、ポリ(4-ヒドロキシブチルメタクリレート)を製造した。収率:70%。生成物は、核磁気共鳴分光分析により確認した。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d
6): δ(ppm)= 4.8 (br, -OH), 4.11-3.75 (br, 2H, -COOCH
2-), 3.75-3.44 (br, 2H, -CH
2OH), 2.44-0.47 (m, -CH
2C(CH
3)-, -CH
2C(CH
3)-).
【0030】
合成例2
【化21】
100mLの丸底フラスコに、3,5-ジメチルピラゾール1.50gとトリエチルアミン2.0mLを共に添加し、40mLのテトラヒドロフランに完全に溶解した後、混合溶液を1時間撹拌した。20mLのテトラヒドロフランにトリホスゲン0.780gを溶解し、混合溶液に入れた後、12時間撹拌した。反応終了後、減圧フィルターを通して沈殿物が除去された有機溶媒を減圧下で加熱することにより除去した。溶媒を除去し、残った油をペンタンで沈殿させ、白色沈殿物を真空で乾燥して生成物を得た。収率:70%。生成物は、核磁気共鳴分光分析により確認した。
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3): δ(ppm) = 6.01 (s, 2H), 2.50 (s, 6H), 2.30 (s, 6H).
【0031】
合成例3
【化22】
100mLの丸底フラスコに、合成例2で得られた生成物0.22gと4-アミノ安息香酸0.500gを添加し、10mLのアセトニトリルに共に溶解させた。混合溶液を12時間撹拌した後、生成された沈殿物を減圧フィルターをとして除去した。得られた混合溶液を減圧下で加熱することにより溶媒を除去し、真空で乾燥して生成物を得た。収率:80%。生成物は核磁気共鳴分光分析により確認した。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d
6): δ(ppm)= 10.20 (s, 1H), 10.00-8.80 (br, 1H), 7.90 (t, 4H), 6.20 (s, 1H), 2.50 (s, 3H), 2.25 (s, 3H).
【0032】
合成例4
【化23】
100mLの丸底フラスコに、6-メティライソシトシン0.63gとカルボニルジイミダゾール1.30gを添加し、10mLのジメチルスルホキシドに完全に溶解させた後、混合溶液を60℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応物を室温に冷却し、生成した沈殿物を減圧フィルターを通して収集し、真空で乾燥した。
【化24】
前記で得られた材料0.5gをテトラヒドロフランに分散させ、そこにβ-アラニンエチルエステル塩酸塩0.35gとトリエチルアミン0.60mLを添加し、60℃で12時間撹拌した。反応終了後、減圧下で加熱することにより有機溶媒を除去し、シリカゲルクロマトグラフィー(2:98のメタノールとクロロホルム)を用いて精製した。収率:80%。生成物は核磁気共鳴分光分析により確認した。
1H-NMR (300 MHz, CDCl
3): δ(ppm)= 13.01 (s, 1H), 11.90 (s, 1H), 10.32 (s, 1H), 5.80 (s, 1H), 4.10 (q, 2H), 3.56 (q, 2H), 2.63 (t, 2H), 2.22 (s, 3H), 1.24 (s, 3H).
【化25】
前記で得られた材料2gを5mLの蒸溜水に分散させ、分散溶液に水酸化リチウム1.25gを添加し、室温で12時間撹拌した。反応終了後、1N濃度の塩酸水溶液を用いてpH2に調整し、得られた沈殿物を減圧フィルターを用いて回収し、真空乾燥して白色生成物を得た。収率:80%。生成物は核磁気共鳴分光分析に確認した。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d
6): δ(ppm)= 12.01-10.40 (s, 2H), 7.74 (s, 1H), 5.80 (s, 1H), 3.56 (q, 2H), 2.43 (t, 2H), 2.08 (s, 3H).
【0033】
実施例1:自己修復機能性ポリビニル系化合物の製造
【化26】
合成例1で得られた高分子化合物250mgとN-アセチルグリシン117mg、ケイ皮酸148mg、合成例3で得られた化合物240mg、合成例4で得られた化合物240mg、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドヒドロクロリド360mg、4-(ジメチルアミノ)ピリジン180mgを、10mLのジメチルホルムアミドに溶解させた後、50℃で24時間加熱しながら撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、200mLメタノール/蒸溜水で沈殿させ(メタノール=20Vol%:蒸溜水=80Vol%)、沈殿した溶媒を除去した。残った固体物質をジクロロメタンに溶解さし、硫酸マグネシウムで水分を除去した。水分を除去した溶媒を減圧下で加熱することにより除去し、真空で乾燥させた。
【0034】
実施例2:高分子薄膜の製造
前記実施例1で製造された高分子をクロロホルム溶媒に溶解して17wt%溶液を製造した後、0.2ミクロフィルターのシリンジフィルターでろ過した溶液をガラススライド上にスピンコーティング、ドロップコーティング又はバーコーティングして、高分子塗膜を形成させた後、真空下で、50℃で12時間乾燥して、30マイクロメートル厚さの高分子薄膜を製造した。
【0035】
実験例:高分子薄膜の自己修復特性評価
前記で製造した高分子薄膜の自己修復特性を以下の方法で評価した。
【0036】
まず、熱処理とUV照射という2つの条件を使用して、自己修復特性を評価した。ブラシ高分子薄膜表面の微小損傷の修復程度を測定するために、ナノインデンターを使用して表面に微小損傷を与え、前記の熱処理工程において、窒素雰囲気中、100℃で1~5時間、時間を調整して熱処理を行った。UV照射工程では、UV照射装置を使用して、照射時間を1分から1時間の範囲で調整することにより、UV照射時間を制御した。続いて、表面レベル測定装置を使用して、高分子薄膜の表面の厚さ変化を測定した。画像は光学顕微鏡カメラを用いて得られ、熱処理及びUV照射前後の差を比較することにより自己修復特性を評価した。その結果を
図2及び
図3にそれぞれ示した。
【0037】
図2において、高分子薄膜を100℃で熱処理すると、微小損傷の幅と深さが減少することが確認された。特に、深さは約30%に減少し、幅は30分の短時間の熱処理でも90%に減少し、本発明の自己修復高分子の薄膜は優れた自己修復能を示すことが分かる。
【0038】
図3の高分子薄膜へのUV照射の場合(1分、15分、30分、60分)、幅と深さが減少した。UV露光機のUV照射時間に応じて、全体として幅と深さが大幅に減少することが確認された。特に、1時間照射すると、幅が65%に大幅に減少し、深さが約30%に減少し、自己修復高分子は、UV処理により優れた自己修復能を示した。
【0039】
本発明では、ポリビニル系高分子化合物に自己修復機能性分子を導入することにより、優れた特性と自己修復能を併せ持つ高分子素材を提供された。また、前記の自己修復特性評価により、短時間での加熱とUV処理による優れた回復能力が確認された。