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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ワークの乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 25/12 20060101AFI20220225BHJP
   F26B 3/04 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F26B25/12 Z
F26B3/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017194437
(22)【出願日】2017-10-04
(65)【公開番号】P2019066139
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591282711
【氏名又は名称】アクア化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】原口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 清誠
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-075779(JP,A)
【文献】特開2000-091413(JP,A)
【文献】特開平10-242113(JP,A)
【文献】実開昭48-017652(JP,U)
【文献】特開平06-260474(JP,A)
【文献】米国特許第05351415(US,A)
【文献】特開2001-244230(JP,A)
【文献】特開平09-069556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 25/12
F26B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックに収納された複数枚の薄板状のワークを乾燥槽内において乾燥させる装置であって、
前記ワークは、燃料電池のセパレータを構成するものであり、
前記ラックは、前記ワークの各々をそれらの厚さ方向に互いに間隔をおいて収納可能なものであり、対向する一対の側板、前記一対の側板の各々の内側に設けられ、前記ワークの各々の両端を支持する複数対の支持溝、及び前記支持溝の各々の延在方向一端側において前記支持溝の各々に対応して設けられ、前記ワークの各々における前記延在方向一端側の縁の一部を互いに間隔をおいて支持する複数の支持部を有する支持部材を備えており、
前記乾燥槽の内部には、前記支持部材の側から、互いに隣り合う前記ワーク同士の間に向けてエアを間欠的に噴射する噴射装置と、前記乾燥槽内の温度を高めるための加熱装置と、が設けられている、
ワークの乾燥装置。
【請求項2】
前記ラックは、前記支持部材を下側にした状態で前記乾燥槽内に収容されるものであり、
前記噴射装置は、前記ラックの下方に位置し、前記複数対の支持溝の並び方向全体にわたって延在するとともにエアを供給する供給パイプを備え、
前記供給パイプの上部には、エアを噴射する噴射孔が開口している、
請求項1に記載のワークの乾燥装置。
【請求項3】
前記噴射孔は、前記複数対の支持溝の並び方向全体にわたって連続してスリット状に延在している、
請求項2に記載のワークの乾燥装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記複数対の支持溝の並び方向において間隔をおいて設けられた複数の小径部、互いに隣り合う前記小径部の間に設けられ、前記小径部よりも外径の大きい複数の大径部、及び前記小径部と前記大径部との間に設けられ、前記小径部から前記大径部にかけて外径が連続的に大きくされた傾斜部を有しており、
前記支持部の各々は、前記小径部及び前記小径部と隣り合う一対の前記傾斜部とにより構成される、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のワークの乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パレットに収納された多数枚の板状部品をパレットごと洗浄槽内の洗浄液に浸漬させて超音波洗浄し、洗浄後に、洗浄槽からパレットごと引き上げて乾燥室に移して乾燥させる装置が開示されている。
【0003】
同文献におけるパレットは、底板のない枠と、枠の内側に設けられ、互いに平行をなす複数の保持板とを有している。各保持板には多数の保持溝が設けられている。多数枚の板状部品の中央部に設けられた貫通孔に保持シャフトを挿通し、保持シャフトの両端を互いに対向する一対の保持溝に載置することにより、多数枚の板状部品がパレットに収納される。
【0004】
また、乾燥室内には、パレットを上下から挟むとともに板状部材の幅よりも大きい幅を有する一対のエアブローノズルが配置されている。一対のエアブローノズルは、保持シャフトの軸線方向に沿って互いに対向した状態で移動可能に構成されている。そして、一対のエアブローノズルからエアを噴射すること、及び一対のエアブローノズルを軸線方向に沿って移動させることを交互に繰り返すことにより、多数枚の板状部品が端から順に1枚ずつエア圧により切り離される。これにより、互いに隣り合う板状部品の間に入り込んだ洗浄液が蒸発される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2988118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の装置において、板状部品として例えば厚さ数百μmの薄板状のワークの乾燥を行う場合には、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、ワークが薄くて軽く、反りやすいことから、互いに隣り合うワークの間に入り込んだ洗浄液の表面張力によりワーク同士が密着して離れにくい。そのため、互いに密着しているワーク同士の間にエアブローノズルからのエアを到達させることが難しく、複数枚のワークが密着したまま保持シャフトの軸線方向に沿って移動することとなり、密着したワーク同士を離間させることができず、乾燥不良が生じやすい。
【0007】
本発明の目的は、ワークの乾燥不良を抑制できるワークの乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのワークの乾燥装置は、ラックに収納された複数枚の薄板状のワークを乾燥槽内において乾燥させる装置であって、前記ラックは、前記ワークの各々をそれらの厚さ方向に互いに間隔をおいて収納可能なものであり、対向する一対の側板、前記一対の側板の各々の内側に設けられ、前記ワークの各々の両端を支持する複数対の支持溝、及び前記支持溝の各々の延在方向一端側において前記支持溝の各々に対応して設けられ、前記ワークの各々における前記延在方向一端側の縁の一部を互いに間隔をおいて支持する複数の支持部を有する支持部材を備えており、前記乾燥槽の内部には、前記支持部材の側から、互いに隣り合う前記ワーク同士の間に向けてエアを噴射する噴射装置が設けられている。
【0009】
同構成によれば、乾燥槽の内部にラックが収容されている状態において、各ワークのうち上記延在方向一端側の縁については支持部材の各支持部により互いに離間した状態で支持される。このため、支持部材の側から、互いに隣り合うワーク同士の間に噴射装置からエアを噴射することにより、互いに隣り合うワークのうち離間している縁同士の間を通じて密着している部分の間にエアを的確に到達させることができる。これにより、互いに隣り合うワークのうちワークの表面に付着した洗浄液を介して密着しているワーク同士をエアの圧力によって離間させて乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ワークの乾燥不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ワークの乾燥装置の一実施形態について、乾燥装置全体を示す斜視図。
図2】同実施形態の乾燥槽の一部を破断して示す乾燥装置の斜視図。
図3】同実施形態のラック全体を示す斜視図。
図4】同実施形態のラックの支持溝を中心とした一部を示す部分断面図。
図5】同実施形態のラックの支持部材を示す部分断面図。
図6図1の6-6線に沿った断面図。
図7】同実施形態の乾燥槽の内部を示す平面図。
図8】(a)は、図1の8-8線に沿った断面図、(b)は同実施形態の作用を説明する図であって、(a)の一部を拡大して示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図8を参照して、ワークの乾燥装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、ワークの乾燥装置は、複数枚の薄板状のワークをそれらの厚さ方向に互いに間隔をおいて収納可能なラック20と、ラック20に収納された複数枚のワークをラック20ごと乾燥させる乾燥槽30とを備えている。
【0013】
図5及び図8(b)に示すように、本実施形態のワーク10は、ステンレス鋼などの金属材料からなり、数百μmの厚さの略長方形板状をなす燃料電池のセパレータである。
まず、ラック20について説明する。
【0014】
図3に示すように、ラック20は、同図の上下方向に長い長方形板状をなし、互いに対向する一対の側板21と、各側板21の対向方向に沿って延在し、各側板21の長手方向の一端同士及び他端同士を連結する一対の連結部材22とを有している。各連結部材22は、各側板21の短手方向の一端に連結されている。各側板21及び各連結部材22は、例えばステンレス鋼からなる。
【0015】
各側板21の短手方向の他端側には、把手21aが突設されている。本実施形態では、側板21及び把手21aが一体に形成されている。各側板21及び各連結部材22により、ラック20の外枠が構成されている。
【0016】
図3及び図4に示すように、各側板21の内面、すなわち互いに対向する面には、硬質樹脂材料により形成された溝部材23が接着により固定されている。
図3に示すように、各溝部材23には、各側板21の短手方向に沿って延在し、各ワーク10の両端を支持する複数対の支持溝23aが各側板21の長手方向に互いに所定の間隔をおいて並設されている。
【0017】
各支持溝23aは、これらの延在方向(各側板21の短手方向)の両端において開口している。ワーク10の両端は、支持溝23aの延在方向における他端側の開口を通じて支持溝23a内に挿入される。すなわち、支持溝23aの延在方向のうち一端側がワーク10の収納方向の前側となり、他端側がワーク10の収納方向の後側となる。
【0018】
図4に示すように、各支持溝23aの幅W1は、各支持溝23aの延在方向において同一とされている。
図3に示すように、一対の連結部材22の間には、各側板21の長手方向(同図の上下方向)に沿って延在し、ワーク10の収納方向の前側及び各側板21の長手方向の双方への変位を規制する2つの柱状の支持部材24が、各側板21の対向方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【0019】
図5に示すように、各支持部材24は、一対の連結部材22に連結された金属材料からなる円柱状の芯部25、及び芯部25の全周を被覆する硬質樹脂材料からなる被覆部26とを有している。
【0020】
被覆部26は、側板21の長手方向(同図の上下方向)において等間隔にて設けられた複数の小径部26a、互いに隣り合う小径部26aの間に1つずつ設けられ、小径部26aよりも外径の大きい複数の大径部26bを有している。また、被覆部26は、小径部26aと大径部26bとの間に1つずつ設けられ、小径部26aから大径部26bにかけて外径が連続的に大きくされた傾斜部26cを有している。1つの小径部26aと、同小径部26aと隣り合う一対の傾斜部26cとによって支持凹部26dが構成されている。小径部26aの上下方向の幅W2は、ワーク10の厚みdよりも大きくされている(W2>d)。
【0021】
ワーク10の収納方向の前縁部が支持凹部26dに当接されることにより、ワーク10の前側及び各側板21の長手方向の双方への変位が規制される。
次に、乾燥槽30について説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、乾燥槽30は、上部に平面視長方形状の開口31aを有する槽本体31と、開口31aの互いに平行な一対の縁部の延在方向に沿ってスライド可能に設けられ、開口31aを開閉する蓋37とを備えている。
【0023】
以降において、蓋37のスライド方向のうち開口31aを閉塞する側を前側とし、開口31aを開放する側を後側とし、上記スライド方向を前後方向として説明する。また、前後方向及び上下方向の双方に直交する方向を幅方向として説明する。
【0024】
槽本体31の開口31aの縁部には、全周にわたって鍔部32が設けられている。
鍔部32における開口31aの後側には、前後方向に沿って張り出された張出部33が設けられている。また、鍔部32の外周縁部には、上方に突出する突壁部34が全周にわたって設けられている。
【0025】
鍔部32の上面のうち幅方向の両側には、前後方向に沿って延在する長方形板状の一対の支持板35が突設されている。一対の支持板35は、互いに平行をなしている。
各支持板35の上端には、前後方向に沿って延在するとともに下方に開口する断面コの字状のレール部材36が固定されている。各レール部材36は、各支持板35の前後方向の全体にわたって設けられている。
【0026】
蓋37は、開口31aに対応した平面視長方形板状をなしている。蓋37の上面には、蓋37をスライドさせるための把手38が設けられている。蓋37の幅方向の両端部には、ベアリング(図示略)が設けられている。蓋37は、支持板35の内側面及びレール部材36の下面上をベアリングを介してスライド可能に設けられている。槽本体31の開口31aを開放する際には、蓋37が張出部33上に配置される。
【0027】
なお、槽本体31の底部には、槽本体31内の洗浄液を外部に排出するための排出部(図示略)が設けられている。
図2図7及び図8(a)に示すように、槽本体31内の下部には、ラック20の支持部材24を下側にし、複数対の支持溝23aの並び方向(各側板21の長手方向)と前後方向とを一致させた状態でラック20を載置する載置部材40が設けられている。
【0028】
載置部材40は、長方形状をなす4枚の板材により構成され、平面視長方形状をなすフレーム41を備えている。
フレーム41の各内側面には、フレーム41の各辺に沿って延在する保持板42が固定されている。各保持板42の上部は、上側ほどフレーム41の外側に位置するように傾斜しており、同上部によりラック20がフレーム41の内側、すなわち各保持板42の内側に案内される。各保持板42により、前後方向及び幅方向の双方におけるラック20の位置決めがされる。
【0029】
載置部材40は、前後方向に沿って延在するとともにラック20を保持する都合4本の保持棒43を備えている。各保持棒43は、フレーム41のうち幅方向に沿って延在する一対の部分に設けられた貫通孔に挿通されている。各保持棒43の両端は、槽本体31の側壁に連結されている。
【0030】
図2図6及び図7に示すように、槽本体31内における載置部材40の下方には、互いに隣り合うワーク10同士の間に向けてエアを噴射する一対の噴射装置50が設けられている。
【0031】
図7に示すように、各噴射装置50は、前後方向に沿って延在するとともに槽本体31の前後の側壁に連結された一対の連結筒部51、及び各連結筒部51の間に設けられ、前後方向に沿って延在するとともに各連結筒部51に連通された供給パイプ52を備えている。各噴射装置50の連結筒部51は、槽本体31の外部に設けられたエア供給源(図示略)に接続されている。
【0032】
供給パイプ52は、断面略正方形筒状をなしており、上記正方形の1つの頂角に対応する部位を上側にして配置されている。供給パイプ52の前端は、フレーム41の前端よりも前側に位置している。また、供給パイプ52の後端は、フレーム41の後端よりも後側に位置している。すなわち、供給パイプ52は、複数対の支持溝23aの並び方向全体にわたって延在している。
【0033】
供給パイプ52における上記1つの頂角に対応する部分には、内外を連通する噴射孔52aが前後方向の全体にわたって連続してスリット状に延在している。
本実施形態では、一対の噴射装置50の噴射孔52aが、4つの保持棒43のうちの内側の2つの保持棒43を幅方向の外側から挟むように配置されている。
【0034】
エア供給源から各噴射装置50の連結筒部51に対して間欠的にエアが供給されることにより、連結筒部51及び供給パイプ52を介して、噴射孔52aから上方に向けてエアが間欠的に噴射される。
【0035】
図2図6及び図7に示すように、槽本体31内における載置部材40の下方には、乾燥槽30内の温度を高めるための一対の加熱装置60が設けられている。本実施形態では、一対の加熱装置60が上記一対の噴射装置50を幅方向の外側から挟むようにして配置されている。
【0036】
図7に示すように、各加熱装置60は、前後方向に沿って延在するとともに槽本体31の前後方向の側壁に連結された一対の連結筒部61、及び各連結筒部61の間に設けられ、前後方向に沿って延在するとともに各連結筒部61に連通された連通パイプ62を備えている。各加熱装置60の連結筒部61には、槽本体31の外部に設けられた熱風供給源(図示略)が接続されている。
【0037】
連通パイプ62の上部には、内外を連通する複数の吹出孔62aが前後方向に間隔をおいて設けられている。
熱風供給源から各加熱装置60の連結筒部61に対して熱風が供給されることにより、連結筒部61及び連通パイプ62を介して、各吹出孔62aから上方に向けて熱風が吹き出される。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ラック20に収納された複数枚のワーク10をラック20ごと洗浄槽(図示略)内の洗浄液に浸漬させて洗浄した後に、洗浄槽からラック20ごと引き上げる。そして、ラック20ごと乾燥槽30内に移動させ、以下のように各ワーク10を乾燥させる。
【0039】
まず、図8(a)に示すように、ラック20は、支持部材24を下側にし、複数対の支持溝23aの並び方向と前後方向とを一致させた状態でフレーム41内の各保持棒43上に載置される。なお、同図では、ワーク10の図示を省略している。
【0040】
続いて、作業者が、蓋37を前側にスライドさせることにより、槽本体31の開口31aが閉塞される。
続いて、各加熱装置60の吹出孔62aから熱風が吹き出されることにより、乾燥槽30内の温度が80℃~100℃程度まで高められる。
【0041】
そして、図8(b)に矢印にて示すように、各噴射装置50の噴射孔52aから、互いに隣り合うワーク10同士の間にエアが噴射される。
ここで、各ワーク10のうち収納方向の前側(同図の下側)の縁については各支持凹部26dにより互いに離間した状態で支持される。このため、支持部材24の側から、互いに隣り合うワーク10同士の間に噴射装置50の噴射孔52aからエアを噴射することにより、互いに隣り合うワーク10のうち離間している前縁同士の間を通じて密着している部分の間にエアを的確に到達させることができる。これにより、互いに隣り合うワーク10のうちワーク10の表面に付着した洗浄液を介して密着しているワーク10同士をエアの圧力によって離間させて乾燥させることができる。
【0042】
また、噴射装置50から噴射されたエアが乾燥槽30内を強制対流することによりワーク10表面の洗浄液が乾燥除去される。
以上説明した本実施形態に係るワークの乾燥装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
【0043】
(1)ラック20は、各ワーク10をそれらの厚さ方向に互いに間隔をおいて収納可能なものであり、対向する一対の側板21、各側板21の内側に設けられ、各ワーク10の両端を支持する複数対の支持溝23aを備えている。また、ラック20は、各支持溝23aの延在方向一端側において各支持溝23aに対応して設けられ、各ワーク10における延在方向一端側(ワーク10の収納方向の前側)の縁の一部を互いに間隔をおいて支持する複数の支持凹部26dを有する支持部材24を備えている。乾燥槽30の内部には、支持部材24の側から、互いに隣り合うワーク10同士の間に向けてエアを噴射する噴射装置50が設けられている。
【0044】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、ワーク10の乾燥不良を抑制できる。
(2)ラック20は、複数の支持部材24を下側にした状態で乾燥槽30内に収容されるものである。噴射装置50は、ラック20の下方に位置し、複数対の支持溝23aの並び方向全体にわたって延在するとともにエアを供給する供給パイプ52を備えている。供給パイプ52の上部には、エアを噴射する噴射孔52aが開口している。
【0045】
こうした構成によれば、供給パイプ52が複数対の支持溝23aの並び方向全体にわたって延在しているため、複数対の支持溝23aの並び方向に1つの供給パイプ52を設ければ足りる。したがって、噴射装置50の構成を簡単にすることができる。
【0046】
(3)噴射孔52aが複数対の支持溝23aの並び方向全体にわたって連続してスリット状に延在している。このため、ラック20に収納された複数枚のワーク10の全てについて、互いに隣り合うワーク10同士の間にエアを確実に噴射することができる。
【0047】
(4)支持部材24は、複数対の支持溝23aの並び方向において間隔をおいて設けられた複数の小径部26a、及び互いに隣り合う小径部26aの間に設けられ、小径部26aよりも外径の大きい複数の大径部26bを有している。また、支持部材24は、小径部26aと大径部26bとの間に設けられ、小径部26aから大径部26bにかけて外径が連続的に大きくされた傾斜部26cを有している。各支持凹部26dは、小径部26a及び小径部26aと隣り合う一対の傾斜部26cとにより構成される。
【0048】
こうした構成によれば、支持凹部26dとワーク10との接触面積を小さくすることができる。このため、ワーク10と支持凹部26dとの間に洗浄液が入り込むことを抑制でき、ワーク10の乾燥不良をより一層抑制できる。
【0049】
また、上記構成によれば、ラック20に対して各ワーク10を収納する際に、各ワーク10の収納方向の前縁が、各傾斜部26cを介して各小径部26aに案内される。このため、互いに隣り合うワーク10同士の前縁が傾斜部26c及び大径部26bを隔てて互いに間隔をおいて設けられた小径部26aにより支持される。これにより、互いに隣り合うワーク10同士の前縁を互いに離間した状態で確実に支持することができ、上記効果(2)をより確実に奏することができる。
【0050】
(5)乾燥槽30の内部には、乾燥槽30内の温度を高めるための加熱装置60が設けられている。
こうした構成によれば、加熱装置60により乾燥槽30内の温度が高められた状態において、噴射装置50からエアが噴射される。このため、ワーク10表面に付着した洗浄液が蒸発されやすくなる。したがって、ワーク10の乾燥不良をより一層抑制できる。
【0051】
(6)各噴射装置50が間欠的にエアを噴射するため、常温のエアを噴射することに起因して乾燥槽30内の温度が低下することを好適に抑制できる。
<変形例>
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
【0052】
・噴射装置50から高温且つ高圧のエアを噴射することにより、乾燥槽30内の温度を高めるようにしてもよい。この場合、加熱装置60を省略することもできる。
・支持部材24の被覆部26の傾斜部26cを省略し、互いに隣り合う大径部と、それら大径部の間に位置する小径部とによって支持凹部を構成することもできる。
【0053】
・支持部材24の数や位置を適宜変更することができる。
・溝部材23の数や位置を適宜変更することができる。
・加熱装置60の数や位置を適宜変更することができる。
【0054】
・スリット状の噴射孔52aに代えて、複数の噴射孔を前後方向に互いに間隔をおいて設けるようにしてもよい。この場合、前後方向における各支持凹部26dに対応する部分に少なくとも1つの噴射孔を設ければよい。
【0055】
・噴射装置50の数や位置を適宜変更することができる。
・噴射装置50の噴射孔52aからエアを連続的に噴射するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…ワーク、20…ラック、21…側板、21a…把手、22…連結部材、23…溝部材、23a…支持溝、24…支持部材、25…芯部、26…被覆部、26a…小径部、26b…大径部、26c…傾斜部、26d…支持凹部(支持部)、30…乾燥槽、31…槽本体、31a…開口、32…鍔部、33…張出部、34…突壁部、35…支持板、36…レール、37…蓋、38…把手、40…載置部材、41…フレーム、42…保持板、43…保持棒、50…噴射装置、51…連結筒部、52…供給パイプ、52a…噴射孔、60…加熱装置、61…連結筒部、62…連通パイプ、62a…吹出孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8