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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】カバー部材および扉用蝶番
(51)【国際特許分類】
   E05D 11/00 20060101AFI20220225BHJP
   E05D 3/02 20060101ALI20220225BHJP
   E05D 7/04 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
E05D11/00
E05D3/02
E05D7/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018008199
(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公開番号】P2019127699
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】横山 辰朗
(72)【発明者】
【氏名】高山 正史
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-032657(JP,U)
【文献】特開2006-028811(JP,A)
【文献】特開平08-193453(JP,A)
【文献】特開2010-019053(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2636832(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 3/00- 7/14
E05D 11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖速度を減速させながら扉体を閉じる扉体閉鎖装置が取り付けられた枠体および前記扉体のそれぞれに取り付けられ、互いに連結されて扉用蝶番を構成する2つの蝶番構成部材のうち、前記枠体に対する前記扉体の所定方向における位置の調整を行う一方の蝶番構成部材を覆うカバー部材であって、
前記扉体または前記枠体に対する前記一方の蝶番構成部材の固定部分を覆う第1カバー部と、
前記第1カバー部に少なくとも部分的に連結されていて、前記固定部分と前記2つの蝶番構成部材の連結部分との間の前記一方の蝶番構成部材の中間部分を少なくとも部分的に覆う第2カバー部と、
を備え、
前記第2カバー部の長手方向における両側の端部には、前記枠体または前記扉体に当該第2カバー部を固定する固定部材が挿通される固定孔が形成されており、
前記第2カバー部は、前記両側の端部において前記扉体または前記枠体に直接固定され、かつ、前記中間部分で前記一方の蝶番構成部材に当接し、前記扉体の前記閉鎖速度を加速させる力が前記扉体閉鎖装置に加わって前記一方の蝶番構成部材が前記枠体または前記扉体から離間する移動を抑制する
ことを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記第2カバー部は、前記中間部分に当接する少なくとも1つの当接部材を有することを特徴とする請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記当接部材は、前記中間部分に当接する方向の厚さが連続的に変化するように形成された断面テーパ状部材であることを特徴とする請求項2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記第2カバー部には、内周面に雌ネジ部が形成された少なくとも1つの螺合孔が形成されており、
前記当接部材は、前記一方の蝶番構成部材を臨む側とは反対側に、前記螺合孔の前記雌ネジ部と螺合する雄ネジ部を有することを特徴とする請求項2または3に記載のカバー部材。
【請求項5】
前記当接部材の前記雄ネジ部は、前記当接部材の軸心に対して偏心して設けられていることを特徴とする請求項4に記載のカバー部材。
【請求項6】
記螺合孔及び前記固定孔の軸心はそれぞれ、前記第2カバー部の長手方向において同一仮想線上に位置することを特徴とする請求項4または5に記載のカバー部材。
【請求項7】
閉鎖速度を減速させながら扉体を閉じる扉体閉鎖装置が取り付けられた枠体および前記扉体のそれぞれに取り付けられ、互いに連結されて扉用蝶番を構成する2つの蝶番構成部材のうち、前記枠体に対する前記扉体の所定方向における位置の調整を行う一方の蝶番構成部材を覆うカバー部材であって、
長手方向における両側の端部に、前記枠体または前記扉体へ固定する固定部材が挿通される固定孔が形成されており、
前記扉体または前記枠体に直接固定され、かつ、前記扉体または前記枠体に対する前記一方の蝶番構成部材の固定部分と前記2つの蝶番構成部材の連結部分との間で前記一方の蝶番構成部材に当接し、
前記扉体の前記閉鎖速度を加速させる力が前記扉体閉鎖装置に加わって前記一方の蝶番構成部材が前記枠体または前記扉体から離間する移動を抑制する
ことを特徴とするカバー部材。
【請求項8】
閉鎖速度を減速させながら扉体を閉じる扉体閉鎖装置が取り付けられた枠体および前記扉体のそれぞれに取り付けられ、互いに連結される2つの蝶番構成部材と、
前記2つの蝶番構成部材のうち、前記枠体に対する前記扉体の所定方向における位置の調整を行う一方の蝶番構成部材を覆うカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
前記扉体または前記枠体に固定される前記一方の蝶番構成部材の固定部分を覆う第1カバー部と、
前記第1カバー部に少なくとも部分的に連結されていて、前記固定部分と他方の蝶番構成部材との連結箇所との間の前記一方の蝶番構成部材の中間部分に当接し、かつ当該中間部分を少なくとも部分的に覆う第2カバー部と、
を有し、
前記第2カバー部の長手方向における両側の端部には、前記枠体または前記扉体に当該第2カバー部を固定する固定部材が挿通される固定孔が形成されており、
前記第2カバー部は、前記両側の端部において前記扉体または前記枠体に直接固定され、かつ、前記中間部分で前記一方の蝶番構成部材に当接し、前記扉体の前記閉鎖速度を加速させる力が前記扉体閉鎖装置に加わって前記一方の蝶番構成部材が前記枠体または前記扉体から離間する移動を抑制する
ことを特徴とする扉用蝶番。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体および扉体に設けられた扉用蝶番の蝶番構成部材を覆うカバー部材、および、当該カバー部材を備えた扉用蝶番に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠体または扉体に取り付けられるケース体および調整プレートと、扉体または枠体に取り付けられる取付プレートとを備える扉用蝶番が知られている。調整プレートおよび取付プレートのうち調整プレートは、前後方向および左右方向の少なくとも一方向における扉体の位置調整を行う(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、扉体の閉鎖速度を低速に抑えて、つまり、扉体がゆっくり閉じるようにする扉体閉鎖装置(以下、「ドアクローザ」ともいう。)が知られている。ドアクローザは、その本体が扉体の上端に取り付けられていると共に、扉体によって閉鎖される建物の開口部を画成する枠体にもリンク機構を介して取り付けられている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
特許文献1に記載された扉用蝶番のケース体は、枠体または扉体に加工された凹部に取り付けられており、調整プレートは、複数のネジによりケース体に前後方向および左右方向に移動自在に保持されている。つまり、調整プレートは、所定のネジを締め付ける方向または緩める方向に回すことでケース本体に対して前後方向および左右方向に移動するようになっている。ケース体は、調整プレートをその幅方向における両側面側から保持する爪部を有しており、調整プレートは、所定のネジを所定の方向に回して扉体の位置を左右方向に調節する場合、爪部を支点にして回転しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-118785号公報
【文献】特開2010-19053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12に示すように、扉体Dpおよび枠体DfにドアクローザDcが取り付けられている場合、ドアクローザDcがゆっくりと(閉鎖速度を減速させながら)扉体Dpを閉じている途中、ユーザによって扉体Dpを強制的に閉じようとする外力Ofが付与されることがある。扉体Dpが強制的に閉じられようとした場合、扉体Dpと枠体Dfとを連結している扉用蝶番100の調整プレートCpに左右方向LRにおける想定外の荷重Pが作用し、調整プレートCpが枠体Dfから浮き上がろうとして爪部Nに接触する。このような荷重Pが繰り返し調整プレートCpに作用すると、当該調整プレートCpが曲がって(変形して)扉用蝶番100の機能(動作)に支障をきたすことがある。
【0007】
想定外の外力Ofが閉方向に扉体Dpに対して作用してドアクローザDcの内部抵抗が上昇した場合であっても、例えば、特許文献2に記載されたドアクローザによれば、リリーフ弁の開閉作動のタイミングを内部圧力に応じて自在に変更することで、ドアクローザDcの内部抵抗の増大を回避して、想定外の(強制的な)外力Ofにより扉用蝶番100に作用する荷重Pの発生を防いでいる。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載のドアクローザDcにおいては、想定外の外力Ofが閉方向に扉体Dpへ作用した際に調整プレートCpが変形等しないようにするためにドアクローザDc自体の構造を変更している。さらに、既設のドアクローザDcを、内部抵抗を調整することができる新たなドアクローザDcに交換しなければならない。ドアクローザDcの交換は、扉用蝶番100を構成する調整プレートCpの変形等を回避するための対策としては、作業面および費用面の両方の負担が大きかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ドアクローザに想定外の外力がかかって扉体が強制的に閉じられるような場合であっても、蝶番構成部材の変形等を防ぐことができるカバー部材、および当該カバー部材を備えた扉用蝶番を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るカバー部材は、閉鎖速度を減速させながら扉体を閉じる扉体閉鎖装置が取り付けられた枠体および前記扉体のそれぞれに取り付けられ、互いに連結されて扉用蝶番を構成する2つの蝶番構成部材のうち、前記枠体に対する前記扉体の所定方向における位置の調整を行う一方の蝶番構成部材を覆うカバー部材であって、前記扉体または前記枠体に対する前記一方の蝶番構成部材の固定部分を覆う第1カバー部と、前記第1カバー部に少なくとも部分的に連結されていて、前記固定部分と前記2つの蝶番構成部材の連結部分との間の前記一方の蝶番構成部材の中間部分を少なくとも部分的に覆う第2カバー部と、を備え、前記第2カバー部は、前記扉体または前記枠体に固定され、かつ、前記中間部分で前記一方の蝶番構成部材に当接し、前記扉体の前記閉鎖速度を加速させる力が前記扉体閉鎖装置に加わって前記一方の蝶番構成部材が前記枠体または前記扉体から離間する移動を抑制することを特徴とする。
【0011】
また、前記第2カバー部は、前記中間部分に当接する少なくとも1つの当接部材を有しているとよい。
【0012】
また、前記当接部材は、前記中間部分に当接する方向の厚さが連続的に変化するように形成された断面テーパ状部材であるとよい。
【0013】
また、前記第2カバー部には、内周面に雌ネジ部が形成された少なくとも1つの螺合孔が形成されており、前記当接部材は、前記一方の蝶番構成部材を臨む側とは反対側に、前記螺合孔の前記雌ネジ部と螺合する雄ネジ部を有しているとよい。
【0014】
また、前記当接部材の前記雄ネジ部は、前記当接部材の軸心に対して偏心して設けられているとよい。
【0015】
また、前記第2カバー部の長手方向における両側の端部には、前記枠体または前記扉体に当該第2カバー部を固定する固定部材が挿通される固定孔が形成されており、前記螺合孔及び前記固定孔の軸心はそれぞれ、前記第2カバー部の長手方向において同一仮想線上に位置するとよい。
【0016】
さらに、上記目的を達成するために、本発明に係るカバー部材は、閉鎖速度を減速させながら扉体を閉じる扉体閉鎖装置が取り付けられた枠体および前記扉体のそれぞれに取り付けられ、互いに連結されて扉用蝶番を構成する2つの蝶番構成部材のうち、前記枠体に対する前記扉体の所定方向における位置の調整を行う一方の蝶番構成部材を覆うカバー部材であって、前記扉体または前記枠体に固定され、かつ、前記扉体または前記枠体に対する前記一方の蝶番構成部材の固定部分と前記2つの蝶番構成部材の連結部分との間で前記一方の蝶番構成部材に当接し、前記扉体の前記閉鎖速度を加速させる力が前記扉体閉鎖装置に加わって前記一方の蝶番構成部材が前記枠体または前記扉体から離間する移動を抑制することを特徴とする。
【0017】
さらに、上記目的を達成するために、本発明に係る扉用蝶番は、閉鎖速度を減速させながら扉体を閉じる扉体閉鎖装置が取り付けられた枠体および前記扉体のそれぞれに取り付けられ、互いに連結される2つの蝶番構成部材と、前記2つの蝶番構成部材のうち、前記枠体に対する前記扉体の所定方向における位置の調整を行う一方の蝶番構成部材を覆うカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、前記扉体または前記枠体に固定される前記一方の蝶番構成部材の固定部分を覆う第1カバー部と、前記第1カバー部に少なくとも部分的に連結されていて、前記固定部分と他方の蝶番構成部材との連結箇所との間の前記一方の蝶番構成部材の中間部分に当接し、かつ当該中間部分を少なくとも部分的に覆う第2カバー部と、を有し、前記第2カバー部は、前記扉体または前記枠体に固定され、かつ、前記中間部分で前記一方の蝶番構成部材に当接し、前記扉体の前記閉鎖速度を加速させる力が前記扉体閉鎖装置に加わって前記一方の蝶番構成部材が前記枠体または前記扉体から離間する移動を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ドアクローザに想定外の外力がかかって扉体が強制的に閉じられるような場合であっても蝶番構成部材の変形等を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態に係る扉用蝶番を示す概略的な斜視図である。
図2図1に示す扉用蝶番の枠体側の蝶番構成部材を拡大して示す分解斜視図である。
図3】カバープレートの構成を説明するための図である。
図4】ストッパカバー部の当接部材を取り外した状態で示すカバープレートの分解斜視図である。
図5】カバープレートに取り付けられている当接部材の斜視図である。
図6】調整プレートに対する当接部材の当接状態を示す図である。
図7】調整プレートに対する当接部材の別の当接状態を示す図である。
図8】調整プレートに対する当接部材のさらに別の当接状態を示す図である。
図9】カバープレートを備えていない扉用蝶番における荷重による影響を説明するための図である。
図10】カバープレートを備えた扉用蝶番における荷重による影響を説明するための図である。
図11】扉用蝶番に対する耐久試験について説明するための図である。
図12】ドアクローザを強制的に閉鎖させようとした場合において扉用蝶番に作用する荷重について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0021】
<扉用蝶番の構成>
図1は、本実施の形態に係る扉用蝶番を示す概略的な斜視図であり、(a)は、扉用蝶番が枠体および扉体に取り付けられた状態を示し、(b)は、扉用蝶番を構成する枠体に取り付けられる2つの蝶番構成部材の一方を分解して示す。図2は、図1(b)に示す蝶番構成部材を拡大して示す分解斜視図である。図3は、カバープレートの構成を説明するための図であり、(a)は、カバープレートの平面図であり、(b)は、カバープレートの側面図であり、(c)は、カバープレートをカバー部側から見た図であり、(d)は、カバープレートをストッパカバー部側から見た図である。図4は、ストッパカバー部の当接部材を取り外した状態で示すカバープレートの斜視図である。図5は、カバープレートに取り付けられている当接部材の斜視図であり、(a)は、表面側から見た斜視図であり、(b)は、裏面側から見た斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態に係る扉用蝶番1は、ドアを構成する扉体Dpおよび枠体Dfに取り付けられ枠体Dfに対して扉体Dpを開閉可能にするものである。扉用蝶番1は、2つの蝶番構成部材3,5と、蝶番構成部材3の所定部位を覆うカバープレート(カバー部材)7と、を備える。蝶番構成部材3,5は、図示しない連結ピンを介して互いに連結されている。扉用蝶番1は、ドアのうち、扉体Dpおよび当該扉体Dpにより開閉される開口部を画成する枠体Dfに取り付けられて、扉体Dpを枠体Dfに対して開閉自在に支持している。
【0023】
なお、本実施の形態に係る扉用蝶番1が取り付けられるドアには、以下では、開いた扉体Dpの閉鎖速度を減速させながら閉じるドアクローザDc(図12参照。)が取り付けられていることを前提とする。しかし、扉用蝶番1は、ドアクローザの有無に関わらず、あらゆるドアに適用することができる。
【0024】
以下では、説明の便宜上、扉体Dpが閉じた状態において、当該扉体Dpの厚さ方向を前後方向として「FB」により示す。また、扉体Dpの幅方向を左右方向として「LR」により示す。また、扉体Dpの長さ方向を上下方向として「UD」により示す。
【0025】
[蝶番構成部材]
2つの蝶番構成部材3,5のうち、蝶番構成部材3は、枠体Dfの高さ方向において上側および下側の所定部位の2箇所に加工された凹部K(上側のみ図示。)にはめ込まれて固定されている。蝶番構成部材3は、凹部Kに対して不動に固定されるケース本体31と、当該ケース本体31に前後方向FBおよび左右方向LRに移動自在に取り付けられた調整プレート36と、を有する。
【0026】
図2に示すように、ケース本体31は、長手方向の両端部に凹部Kに固定される固定フランジ部32,33を有する。固定フランジ部32,33は、ケース本体31を凹部Kにおいて枠体Dfに固定するためのネジ(図示せず。)が挿通される2つの貫通孔32a,33aと、カバープレート7を固定フランジ部32,33を介してケース本体31に固定するためのネジ(図示せず。)が挿通される貫通孔32b,33bとを有する。
【0027】
ケース本体31は、固定フランジ部32,33の間に調整プレート36を収容する断面U字状の収容部34を有している。ケース本体31は、収容部34における一方の側に設けられた断面略U字状のガイド部35を有する。ガイド部35は、ケース本体31へ調整プレート36を収容するようにガイドする部分である。
【0028】
ガイド部35は、平板状の底部35aと当該底部35aの両端部から左右方向LRの一方向に向かって立設された一対の側部35bとを有する。蝶番構成部材3が枠体Dfの凹部Kに収容された状態において、ガイド部35の側部35bの端面35btは、固定フランジ部32,33の端面32c,33cよりも凹部Kの開口側において左右方向LRの一方向に突出している。
【0029】
ケース本体31は、固定フランジ部32,33とガイド部35との接続部付近にケース本体31の長手方向に沿って互いに対向するように突き出た爪部35nを有する。爪部35nは、ケース本体31の収容部34に調整プレート36が収容された場合、当該調整プレート36を表面側から押さえ付ける役割を有する。調整プレート36は、略矩形状の板状部37と、円筒部(連結部分)38とを有する。円筒部38は、調整プレート36がケース本体31の収容部34およびガイド部35に収容された場合に、ガイド部35から突き出た板状部37の一端部に設けられている。
【0030】
板状部37の他端部の側には、円筒部38の側に向かって切り込まれて形成されたU字状の切欠き37aが形成されている。切欠き37aには枠体Dfに対する扉体Dpの位置を左右方向LRに、具体的には、ケース本体31に対する調整プレート36の位置を左右方向LRに調整する調整ボルトB1が挿入されて係止されるようになっている。
【0031】
切欠き37aと円筒部38との間で、当該切欠き37aに近接した位置には長円孔37bが調整プレート36の中心線Y-Yに垂直な方向を長軸として設けられている。長円孔37bには、枠体Dfに対する扉体Dpの位置を前後方向FBに、具体的には、ケース本体31に対する調整プレート36の位置を前後方向FBに調整するためのカム付きボルトB2のカム部Cが嵌合される。
【0032】
さらに、板状部37には、長円孔37bから適宜な距離だけ離れた位置に、中心線Y-Y方向に長軸を有する一対の長円孔37cがそれぞれ設けられている。長円孔37cは、調整プレート36をケース本体31に固定するための固定ボルトB3の挿通孔であり、枠体Dfに対する扉体Dpの前後方向FBの調整に際し当該固定ボルトB3による調整プレート36の移動を可能とすべく楕円状に形成されている。
【0033】
ケース本体31の収容部34およびガイド部35への調整プレート36の挿通が完了した際、板状部37においては、爪部35nと対峙する位置に当該爪部35nが収まる窪み部37dが形成されている。ここで、便宜上、窪み部37d同士を結んだ仮想線L1から切欠き37a側の板状部37の部分を「固定部分36a」といい、仮想線L1と円筒部38との間の板状部37の部分を「中間部分36b」という。固定部分36aは、調整プレート36がケース本体31に固定されて、後述するカバープレート7のカバー部71によって覆われる部分であり、中間部分36bは、カバー部71によっては覆われず、ストッパカバー部76が当接しかつ少なくとも部分的に覆われる部分である。
【0034】
2つの蝶番構成部材3,5のうち、蝶番構成部材5は、図1(a)に示すように、扉体Dpの高さ方向において上側および下側の所定部位の2箇所に固定されて、枠体Dfの側に取り付けられた蝶番構成部材3と連結ピン(図示せず。)により連結される。扉体Dpの側の蝶番構成部材5は、枠体Dfの側の蝶番構成部材3に対して連結ピンを介して開閉自在に支持されている。
【0035】
蝶番構成部材5は、扉体Dpに取り付けられる平板状の取付プレート51と、円筒部(連結部分)52とを有する。取付プレート51には、当該取付プレート51を扉体Dpに取り付けるためのビス等の固定部材が挿通される4つの孔51aが形成されている。円筒部52には連結ピンが収容されており、当該連結ピンが蝶番構成部材3の円筒部38に挿通されることにより、蝶番構成部材5は、蝶番構成部材3に連結ピンを介して連結されることになる。
【0036】
[カバープレート]
カバープレート7は、ケース本体31が調整プレート36と共に枠体Dfの凹部Kに固定された場合に、ケース本体31および調整プレート36を覆うカバー部材である。図3に示すようにカバープレート7は、長手方向の中心において、短手方向に沿った中心線X-Xに対して線対称に形成されている。
【0037】
図3および図4に示すように、カバープレート7は、平面視略矩形状のカバー部(第1カバー部)71と、当該カバー部71と部分的に連結された、平面視略長円形状のストッパカバー部(第2カバー部)76とを有する。
【0038】
カバー部71は、ケース本体31の固定フランジ部32,33および調整プレート36の固定部分36aを覆う化粧カバーである。カバー部71の長手方向における両端部には、カバープレート7が固定フランジ部32,33に取り付けられた状態においてケース本体31の固定フランジ部32,33の貫通孔32b,33bと連通する座ぐり付きの一対の固定孔71aが形成されている。固定フランジ部32,33の貫通孔32b,33bおよびカバープレート7の固定孔71aをそれぞれ整合させた状態で、ネジの先端を枠体Dfにねじ込むことにより、カバープレート7は、ケース本体31に取り付けられる。
【0039】
カバープレート7が固定フランジ部32,33に取り付けられた状態において、カバー部71の中央部で調整プレート36の切欠き37aに対向する位置には、当該切欠き37aと連通する長円孔71bが形成されている。長円孔71bの長軸は、カバープレート7の中心線X-Xに沿った方向に延びている。したがって、カバープレート7の長円孔71bを通じて所定の工具を挿入すれば、調整プレート36の切欠き37aに挿入されている調整ボルトB1を調整する(回す)ことができる。
【0040】
カバープレート7が固定フランジ部32,33に取り付けられた状態において、カバー部71の中央部で調整プレート36の長円孔37bと対向する位置には、当該長円孔37bと整合する切欠き71cが形成されている。切欠き71cは、ストッパカバー部76がカバー部71に一体に連結されている側の縁から長円孔71bに向かって切り欠かれて形成されている。したがって、カバープレート7の切欠き71cを通じて所定の工具を挿入すれば、調整プレート36の長円孔37bに挿入されているカム付きボルトB2を調整する(回す)ことができる。
【0041】
カバープレート7が固定フランジ部32,33に取り付けられた状態において、調整プレート36の一対の長円孔37cと対向する位置には、当該長円孔37cと整合する一対の丸孔71dが形成されている。したがって、カバープレート7の丸孔71dを通じて所定の工具を挿入して、調整プレート36の長円孔37cに挿入されている固定ボルトB3を調整する(回す)ことができる。
【0042】
カバー部71は、カバープレート7の切欠き71cが形成されている側で切欠き71cを挟んで一対の連結部72を有する。カバー部71およびストッパカバー部76は、一対の連結部72を介して互いに側面視略S字状に連結されている。カバー部71とストッパカバー部76とは、互いに段違でかつ並行となる位置関係にある。カバー部71は、ケース本体31の固定フランジ部32,33および調整プレート36の固定部分36aと対向し、ストッパカバー部76は、ケース本体31のガイド部35および調整プレート36の中間部分36bと対向する。
【0043】
カバー部71において、ストッパカバー部76と連結されている側の連結部72の外側部分には一対の切欠き71eが形成されている。一対の切欠き71eは、切欠き71cを挟んだ位置であって、調整プレート36を抑えるケース本体31の爪部35nと対向する位置に形成されている。すなわち、カバープレート7が固定フランジ部32,33に取り付けられた状態であっても、爪部35nは、切欠き71eによりカバー部71に接触せず、カバープレート7の取り付けを阻害することはない。
【0044】
カバープレート7のストッパカバー部76は、調整プレート36の中間部分36bおよび側部35bを上下方向UDにおいて全て覆うとともに、前後方向FBにおいて少なくとも部分的に覆って、当該中間部分36bと対向するようになっている。ストッパカバー部76は、調整プレート36の中間部分36bが枠体Dfから、より具体的には、ケース本体31から離間する方向へ移動する(浮き上がる)ことを抑制する部位である。カバープレート7が取り付けられた状態において、ストッパカバー部76は、調整プレート36を臨む面に2つの当接部材77を有している。
【0045】
ストッパカバー部76は、連結部72を介してカバー部71と連結されている。ストッパカバー部76は、蝶番構成部材3のケース本体31におけるガイド部35および調整プレート36と交差する方向、つまり、上下方向UDに延在し、当該上下方向UDにおける両端部において枠体Dfに直接固定される(図1(a)参照。)。ストッパカバー部76の両端部には、当該ストッパカバー部76を枠体Dfに固定する固定ボルト(図示せず。)が挿入される座ぐり付きの一対の固定孔76aが形成されている。
【0046】
ストッパカバー部76において一対の固定孔76aの間には、当接部材77を螺合により取り付けるための一対の螺合孔76bが形成されている。螺合孔76bの内周面には雌ネジ部76bsが形成されており、当該雌ネジ部76bsを介して当接部材77がストッパカバー部76に螺合により取り付けられている。一対の固定孔76aおよび一対の螺合孔76bのそれぞれの軸心は、ストッパカバー部76の長手方向に沿って同一仮想線L2上に位置されている。ストッパカバー部76における固定孔76aおよび螺合孔76bは、中心線X-Xを中心に線対称になるように配置されている。
【0047】
図5に示すように、当接部材77は、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアセタール(POM)等の樹脂や亜鉛等の金属により、平面視円形状に形成されている。当接部材77は、円板部78と、当該円板部78の一方の面に付設された突設部79とを有する。説明の便宜上、突設部79が付設されている円板部78の面を「第1面78a」とし、反対側の面(調整プレート36を臨む面)を「第2面78b」とする。
【0048】
円板部78は、肉厚の厚い厚肉部78dと、肉厚の薄い薄肉部78tとを有し、厚肉部78dから薄肉部78tに向かって連続的に変化するように断面テーパ状に形成されている。突設部79は、第1面78aから突出した円柱状の部位であり、その外周面には部分的に、ストッパカバー部76の螺合孔76bの雌ネジ部76bsと螺合する雄ネジ部79sを有する。なお、突設部79は、円板部78の軸心に対して偏心して設けられている。具体的には、突設部79は、円板部78の軸心に対して薄肉部78t寄りの位置に設けられている。雄ネジ部79sには雄ネジ部79sの軸線方向に沿った十字状のスリット79slが形成されている。
【0049】
当接部材77がストッパカバー部76と一体に取り付けられた場合、円板部78の第1面78aは、ストッパカバー部76と平行に対向配置されるため、第2面78bは、調整プレート36の板状部37に対して傾斜した状態で対向することになる。すなわち、当接部材77は、調整プレート36に対して円板部78の厚肉部78dが最初に接触することになる(例えば、図6参照。)。
【0050】
<カバープレートの取付および当接部材の位置調整>
次に、図6図8を用いてカバープレート7の設置、および、調整プレート36に対する当接部材77の当接位置調整について説明する。図6は、調整プレートとストッパカバー部との間の間隔が広い状態における当接部材の調整について説明するための図である。図7は、調整プレートとストッパカバー部との間の間隔が図6よりも左右方向に狭まった状態における当接部材の調整について説明するための図である。図8は、調整プレートとストッパカバー部との間の間隔が図7よりも狭まった状態における当接部材の調整について説明するための図である。
【0051】
まず、枠体Dfの凹部Kに固定された蝶番構成部材3の固定部分36aにカバープレート7のカバー部71を配設して、固定フランジ部32,33の貫通孔32bとカバー部71の固定孔71aとを対応させて固定ネジによりカバープレート7を固定フランジ部32,33に固定する。次いで、ストッパカバー部76の固定孔76aにネジを挿入して、ストッパカバー部76を介して枠体Dfにカバープレート7を直接固定する。
【0052】
カバープレート7を蝶番構成部材3および枠体Dfに固定した場合、図6に示すように、カバープレート7のストッパカバー部76と、調整プレート36の中間部分36bとの間には、例えば、断面矩形状の空間Sが確保されている。円板部78は、空間S内に収容される程度の肉厚をもって形成されている。
【0053】
カバープレート7を蝶番構成部材3および枠体Dfに取り付けた際、当接部材77が調整プレート36に当接していない場合、突設部79のスリット79slに所定の工具(例えば、プラスドライバー等)を係合させて当接部材77を回転し、円板部78の厚肉部78dが調整プレート36と当接するまで、当接部材77を調整プレート36に向かって近づける。例えば、図6では、厚肉部78dは、円筒部38に最も接近した位置Po1で調整プレート36の板状部37と当接する。具体的には、厚肉部78dは、その円筒部38側の縁部領域(図6(a)参照。)において調整プレート36の中間部分36bと当接する。かくして、調整プレート36は、固定ボルトB3および当接部材77の厚肉部78dの2点において左右方向LRに支持されている。
【0054】
次に、図6に示した状態から、枠体Dfに対する扉体Dpの位置を左右方向LRにおいて調整したい場合、調整ボルトB1を所定の方向に回転させて、調整プレート36の板状部37を円筒部38の側においてカバープレート7に接近するように位置調整をする必要がある。しかし、図6に示した調整プレート36の厚肉部78dの位置Po1では、円筒部38の側における調整プレート36の板状部37の浮き上がりの移動を厚肉部78dが妨害することになり、調整プレート36を左右方向LRにおいて適切に位置調整することができない。
【0055】
したがって、図7に示すように、当接部材77を調整プレート36から離れるように適宜回転させて、厚肉部78dを図6に示した位置Po1から調整ボルトB1の側の位置Po2へ移動させる。これにより、調整プレート36を左右方向LRにおいて適切に位置調整することができる。なお、この状態において、当接部材77の厚肉部78dは、調整プレート36の円筒部38から離れるほうに回転させられていて、縁部領域において調整プレート36と部分的に面接触している(図7(a)参照。)。
【0056】
さらに、図7に示した状態から、枠体Dfに対する扉体Dpの位置を左右方向LRにおいてさらに調整したい場合、調整ボルトB1を所定の方向に回転させて、調整プレート36の板状部37を円筒部38の側においてカバープレート7にさらに接近するように位置調整をする必要がある。しかし、図7に示した調整プレート36の厚肉部78dの位置Po2では、円筒部38の側における調整プレート36の板状部37の浮き上がりの移動を厚肉部78dが妨害することになり、調整プレート36を左右方向LRにおいて適切に位置調整することができない。
【0057】
したがって、図8に示すように、当接部材77を調整プレート36から離れるように適宜回転させて、厚肉部78dを図7に示した位置Po2から調整ボルトB1の側の位置Po3へ移動させる。これにより、調整プレート36を左右方向LRにおいて適切に位置調整することができる。なお、この状態において、当接部材77の厚肉部78dは、調整プレート36の円筒部38から最も離れた位置にあり、第2面78bにおいて厚肉部78dから薄肉部78tにわたって調整プレート36と面接触している(図8(a)参照。)。
【0058】
<カバープレートの特徴>
図12に示したように、ドアクローザDcが取り付けられた枠体Dfおよび扉体Dpにおいて、扉体Dpに強制的な外力Ofを加えて扉体Dpを強制的に閉鎖しようとした場合、図9に示すように、扉体Dpに取り付けられている蝶番構成部材5の連結ピンを介して調整プレート36の円筒部38に、調整プレート36を左右方向LRに沿って枠体Dfから離間させるような局所的な荷重Pがかかる。
【0059】
カバープレート7が取り付けられておらず、調整プレート36に荷重Pが作用した場合、調整プレート36には固定ボルトB3(支点)のまわりに、枠体Dfから離間しようとする(煽りを受ける)方向にモーメントが働く。調整プレート36は、荷重Pによる煽りを受けると、ケース本体31の爪部35nと接触することになり、爪部35nとの接触位置においても支持されることになる。したがって、荷重Pが調整プレート36に繰り返し加えられると、調整プレート36には爪部35nを介して局所的な反力が働くことになり、爪部35nにおいて調整プレート36が屈曲変形してしまい、扉用蝶番1としての機能(扉体Dpの開閉機能)が損なわれることがある。
【0060】
また、調整プレート36と爪部35nとの接触により、爪部35nには局所的に調整プレート36から荷重P′が作用するので、爪部35nが変形したり、破損したりすることになり、やはり、扉用蝶番1の開閉機能が損なわれることがある。
【0061】
これに対して、図10に示すように、カバープレート7を取り付けることにより、当接部材77の、厚肉部78dが調整プレート36の中間部分36bと当接することになる。つまり、調整プレート36は、固定ボルトB3および当接部材77の厚肉部78dの2点において支持されることになる。そして、調整プレート36には、調整プレート36の中間部分36bと厚肉部78dとが当接する位置が荷重Pによるモーメントの支点となる。
【0062】
当接部材77の厚肉部78dが支点になるということは、荷重Pの作用点となる円筒部38から厚肉部78dまでの距離が、爪部35nが支点となる場合よりも近くなる。つまり、荷重Pがかかる作用点とモーメントの支点との距離(モーメントの腕)が、爪部35nを支点とした場合と比べて、当接部材77の厚肉部78dを支点とした方が作用点に近くなり、調整プレート36に働くモーメントを小さくすることができる。かくして、調整プレート36の屈曲変形を抑制することができる。
【0063】
なお、図6に示した状態は、当接部材77の厚肉部78dと調整プレート36の板状部37との当接位置が円筒部38から最も近くなっており、調整プレート36に働くモーメントが最も小さくなるので好ましい。つまり、この状態において荷重Pにより煽りを受けた場合、厚肉部78dと板状部37との当接位置から荷重Pの作用点までの距離が短く、調整プレート36に働くモーメントが最も小さくなっている。
【0064】
また、2つの当接部材77が調整プレート36の中間部分36bの短手方向(上下方向UD)に沿って中央部分に当接している(図1(a)参照。)ので、調整プレート36の板状部37が左右方向LRへ枠体Dfから離間して浮き上がることを効果的に抑制することができる。
【0065】
また、調整プレート36は、爪部35nおよびカバープレート7の当接部材77の複数箇所と接触することもあり、調整プレート36に対する荷重Pを、爪部35nにおける荷重P′および当接部材77における荷重P″に分散して支持することができる。
【0066】
ここで、ドアクローザDcが取り付けられたドアにおいて、カバープレート7を備えた扉用蝶番1およびカバープレート7を備えていない扉用蝶番に実施した扉体Dpの強制開閉による扉用蝶番の耐久試験の結果について説明する。
【0067】
(試験方法)
図11(a)に示すように、ドアクローザ(図示せず。)を有するドアを設置し、図11(b)に示すように、エアシリンダーAcを用いて扉体Dpを強制開閉させた。両試験においては、メーカーおよび型番について同じドアクローザを用いた。下記の表1および表2において扉体Dpを開ける力を「F1」、閉める力を「F2」、扉体Dpとドアの設置面との間隔(垂れ下がり量)を「S」、横方向に延在する枠体Dfから50mmの位置における、扉体Dpと縦方向に延在している枠体Dfとの各チリ寸法を「S1~S4」、扉体Dpの下側に取り付けた扉用蝶番の円筒部38,52間の隙間を「S5」とした。
【0068】
まず、表1に、カバープレート7を備えていない扉用蝶番における試験結果を示す。
(試験条件)
扉体重量:40kg
扉体開閉角度:0~90°
扉体サイズ:高さ1990×幅790×厚さ33[mm]
開閉サイクル:5秒(閉じ込み速度2秒)/1回
(試験結果)
【表1】
【0069】
注1:下側の扉用蝶番から異音発生
注2:閉じ込み速度変更(2秒→1.78秒)
注3:開閉回数100,000回時より閉じ込み速度変更(1.78秒→1.50秒)
固定ボルトが緩み扉体と枠体とが接触
固定ボルトを締め直して試験再開
注4:上側の扉用蝶番の調整プレートが変形して枠体に扉体が接触したので試験終了
【0070】
次に、表2に、カバープレート7を備えた扉用蝶番における試験結果を示す。
(試験条件)
扉体重量:40kg
扉体開閉角度:0~90°
扉体サイズ:高さ1990×幅790×厚さ33[mm]
開閉サイクル:5秒(閉じ込み速度1.79秒)/1回
(試験結果)
【表2】
注1:ドアクローザからの油漏れ確認
閉じ込み時のドアクローザによる抵抗なし
【0071】
上記の試験結果から分かるように、カバープレート7を備えていない扉用蝶番においては、開閉回数が100,000回を超えたあたりから扉体Dpと枠体Dfとが接触した。これは、調整プレート36が曲がり変形したことに起因したものであり、開閉回数113,726回において上側の調整プレート36が変形していることが確認された。これに対して、カバープレート7を備えた扉用蝶番1においては、少なくとも開閉回数が410,000回を超えても不具合は生じず、先にドアクローザDcに不具合が生じた。
【0072】
このように、蝶番構成部材3の中間部分36bにおいて調整プレート36を枠体Dfに向かって押さえ付けるストッパカバー部76を備えるカバープレート7により、調整プレート36の煽り方向の変形を回避することができる。カバープレート7により、扉体Dpを閉めるドアクローザDcの閉鎖運動に対して強制的に扉体Dpを閉める外力Ofが繰り返し加えられた場合であっても、調整プレート36の変形を確実に防いで扉用蝶番1としての機能を長期にわたって維持することができる。
【0073】
また、ストッパカバー部76に取り付けられている当接部材77は、その厚さが連続的に変化するように断面がテーパ状に形成されている。かくして、例えば、図6図8に示すように、調整プレート36が左右方向LRにおいて位置調整されて、調整プレート36とストッパカバー部76との間の空間Sが固定ボルトB3の側から円筒部38の側に向かって狭まる場合であっても、当接部材77を回転させて厚肉部78dが調整プレート36と接触する位置Po1~Po3を調整するだけで空間Sの形状に合わせて、ストッパカバー部76の当接部材77を調整プレート36に簡単に当接させることができる。
【0074】
また、ストッパカバー部76の螺合孔76bの内周面には雌ネジ部76bsが形成され、当接部材77の円板部78は、当該雌ネジ部76bsと螺合する雄ネジ部79sが外周面に形成された突設部79を有している。かくして、ストッパカバー部76と調整プレート36との間での当接部材77の厚肉部78dの位置を、当接部材77の回転によって形成される軌跡(円周)上において自由に調整することができる。
【0075】
また、円板部78の突設部79は、円板部78の軸心に対して偏心して設けられているので、円板部78を、例えば、0~180°の範囲において回動させた場合、突設部79が円板部78に対して偏心していない場合と比べて、円板部78の厚肉部78dの位置を広い範囲において調整する(移動させる)ことができる。
【0076】
また、ストッパカバー部76を枠体Dfに固定する一対の固定孔76aの軸心と、当接部材77を取り付ける一対の螺合孔76bの軸心とは、ストッパカバー部76の長手方向に沿った同一仮想線L2上に配設されている。これにより、円板部78の厚肉部78dが同一仮想線L2からずれた回転位置にあったとしても、突設部79を支持する螺合孔76bと、ストッパカバー部76を枠体Dfに固定する固定ネジが挿通される固定孔76aとは互いに同一仮想線L2上にあるので、ストッパカバー部76は、調整プレート36から当接部材77を介して伝達される荷重を安定的に受け止めることができる。
【0077】
なお、カバープレート7は、既設の扉用蝶番に簡単に取り付けることもできるので、既設の扉用蝶番に対する汎用性が高く、扉用蝶番のメインテナンスコストを抑えることができる。
【0078】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではなく、本発明の範囲を超えない範囲で適宜変更が可能である。例えば、上記の実施の形態においては、当接部材77は、平面視円形状に形成されていたが、円形状に限られず、三角形、四角形、五角形またはそれ以上の多角形状に形成されていてもよい。
【0079】
また、上記の実施の形態においては、ストッパカバー部76に当接部材77を設けることにより調整プレート36の左右方向LRへの浮き上がりを抑制したが、ストッパカバー部76が調整プレート36に直接当接して当該浮き上がりを抑制してもよい。
【0080】
また、上記の実施の形態においては、蝶番構成部材3を枠体Dfに取り付け、蝶番構成部材5を扉体Dpに取り付けたが、蝶番構成部材3を扉体Dpに取り付け、蝶番構成部材5を枠体Dfに取り付けてもよい。
【0081】
また、上記の実施の形態においては、カバープレート7は、調整プレート36の固定部分36aを覆うカバー部71と、中間部分36bを覆うストッパカバー部76とを備えていたが、ストッパカバー部76のみにより形成されていてもよい。これにより、既設の扉用蝶番へのカバープレート7の適用の汎用性が高まる。
【0082】
また、上記の実施の形態においては、爪部35nを有するケース本体31について説明したが、爪部35nは必須の構成ではない。この場合、板状部37には窪み部37dは形成されていなくてもよく、固定部分36aは、固定ボルトB3が調整プレート36を長円孔37cにおいて固定する箇所を基準にすることになる。
【0083】
また、上記の実施の形態においては、調整プレート36を所望の状態に調整する場合に、カバープレート7の長円孔71b、切欠き71cおよび丸孔71dにいずれに工具を挿通させればよいかを示す目印は刻印されていない。しかし、ユーザの利用しやすさを考慮してカバープレート7に、例えば、長円孔71bの近傍に「左右調整」、切欠き71cの近傍に「前後調整」、丸孔71dの近傍に「固定」等の文字を刻印してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 扉用蝶番
3,5 蝶番構成部材
36 調整プレート
36a 固定部分
36b 中間部分
37 板状部
38 円筒部
7 カバープレート(カバー部材)
71 カバー部(第1カバー部)
76 ストッパカバー部(第2カバー部)
76b 螺合孔
76bs 雌ネジ部
77 当接部材
79 突設部
79s 雄ネジ部
Dc ドアクローザ(扉体閉鎖装置)
Dp 扉体
Df 枠体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12