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特許7029750有機マイクロディスクアレイおよびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】有機マイクロディスクアレイおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/23 20060101AFI20220225BHJP
   B32B 3/14 20060101ALI20220225BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220225BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20220225BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220225BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220225BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
G02B5/23
B32B3/14
B05D7/00 K
B05D3/04 Z
G02B5/20
G09F9/30 379
G09F9/00 338
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018016723
(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公開番号】P2019133070
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】北山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大地
(72)【発明者】
【氏名】三成 剛生
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044273(JP,A)
【文献】国際公開第2005/091070(WO,A1)
【文献】特開2013-041202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/23
B32B 3/14
B05D 7/00
B05D 3/04
G02B 5/20
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の一面に等間隔かつ交互に形成された親液性領域と疎液性領域を有する自己組織化単分子膜と、該自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に形成された少なくとも結晶性が低いパイ共役系高分子らなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備え
前記パイ共役系高分子は、poly[(9,9-dioctylfluorenyl-5-octylthieno[3,4-c]pyrrole-4,6-dione)、Poly[2-methoxy-5-(3′,7′-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylenevinylene]であることを特徴とする有機マイクロディスクアレイ。
【請求項2】
前記複数の球状構造体または半球状構造体は、前記結晶性が低いパイ共役系高分子およびフォトクロミック分子からなることを特徴とする請求項1に記載の有機マイクロディスクアレイ。
【請求項3】
基板と、該基板の一面に等間隔かつ交互に形成された親液性領域と疎液性領域を有する自己組織化単分子膜と、該自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に形成された、少なくとも結晶性が低いパイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備えた有機マイクロディスクアレイの製造方法であって、
前記基板の一面に、前記自己組織化単分子膜を形成する工程と、
前記基板の一面に形成された前記自己組織化単分子膜に、前記親液性領域と前記疎液性領域を等間隔かつ交互に形成する工程と、
前記自己組織化単分子膜の一面に、少なくとも前記パイ共役系高分子を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて、少なくとも前記パイ共役系高分子からなる薄膜を形成する工程と、
前記薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させることにより、前記自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に、少なくとも前記パイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体を形成する工程と、を有し、
前記パイ共役系高分子は、poly[(9,9-dioctylfluorenyl-5-octylthieno[3,4-c]pyrrole-4,6-dione)、Poly[2-methoxy-5-(3′,7′-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylenevinylene]であることを特徴とする有機マイクロディスクアレイの製造方法。
【請求項4】
前記溶液は、フォトクロミック分子を含むことを特徴とする請求項に記載の有機マイクロディスクアレイの製造方法。
【請求項5】
前記混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比は、体積比で1:0.5~1:1であることを特徴とする請求項またはに記載の有機マイクロディスクアレイの製造方法。
【請求項6】
前記薄膜を、前記混合溶媒の蒸気に接触させるとき、前記蒸気の温度は、30℃以上40℃以下であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の有機マイクロディスクアレイの製造方法。
【請求項7】
前記薄膜を、前記混合溶媒の蒸気に接触させる時間は、1.5時間以上であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の有機マイクロディスクアレイの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機マイクロディスクアレイおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルからマイクロメートルスケールのポリマー粒子を集積化してなる構造体は、新しい電子・光機能を発現することから注目されている。特に、紫外域から可視域の波長に近い大きさの構造体を集積化すると、新しい光電子機能を示すフォトニック材料の実現が期待できる。
このようなフォトニック材料としては、例えば、テトラメチルジチオフェン構造要素を有するパイ共役交互共重合体が知られ、そのパイ共役交互共重合体の製造方法も知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、パイ共役共重合体からなる微粒子およびナノ粒子の形成方法も知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
このようなフォトニック材料の球状構造体を形成し、その球状構造体を、例えば、シリコン製の基板上に配列してアレイを形成することにより、発光デバイス等に応用することができる。
本発明者等は、球状構造体を形成するための高分子の構造要素としては、テトラメチルビチオフェンを一方のコンポーネントとして有するパイ共役共重合体が、蒸気拡散法で球状構造体を形成しやすいことを開示している(例えば、非特許文献2参照)。また、本発明者等は、基板の一面に、直接形成された、パイ共役高分子からなる球体や半球体から構成される高分子球状アレイおよびその製造方法を開示している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-044273号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】テトラメチルジチオフェン構造要素を有するパイ共役交互共重合体の合成、Polym.Chem.2013,4,947;doi:10.1039/c2py20917a
【文献】パイ共役交互共重合体からなる微粒子およびナノ粒子の形成、J.Am.Chem.Soc.2013,135,870;doi:10.1021/ja3106626
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、基板の一面に、パイ共役高分子からなる球体や半球体から構成されるアレイが等間隔かつ高密度に直接形成されたものについては全く開示されていなかった。また、基板の一面に、パイ共役高分子からなる球体や半球体から構成されるアレイを等間隔かつ高密度に直接形成する方法については全く開示されていなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、基板の一面に、パイ共役高分子およびフォトクロミック分子の少なくとも一方からなる球体や半球体から構成されるアレイが等間隔かつ高密度に形成された有機マイクロディスクアレイおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]基板と、該基板の一面に等間隔かつ交互に形成された親液性領域と疎液性領域を有する自己組織化単分子膜と、該自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に形成された少なくとも結晶性が低いパイ共役系高分子らなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備え、前記パイ共役系高分子は、poly[(9,9-dioctylfluorenyl-5-octylthieno[3,4-c]pyrrole-4,6-dione)、Poly[2-methoxy-5-(3′,7′-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylenevinylene]である有機マイクロディスクアレイ。
[2]前記複数の球状構造体または半球状構造体は、前記結晶性が低いパイ共役系高分子およびフォトクロミック分子からなる[1]に記載の有機マイクロディスクアレイ。
【0009】
]基板と、該基板の一面に等間隔かつ交互に形成された親液性領域と疎液性領域を有する自己組織化単分子膜と、該自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に形成された、少なくとも結晶性が低いパイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備えた有機マイクロディスクアレイの製造方法であって、前記基板の一面に、前記自己組織化単分子膜を形成する工程と、前記基板の一面に形成された前記自己組織化単分子膜に、前記親液性領域と前記疎液性領域を等間隔かつ交互に形成する工程と、前記自己組織化単分子膜の一面に、少なくとも前記パイ共役系高分子を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて、少なくとも前記パイ共役系高分子からなる薄膜を形成する工程と、前記薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させることにより、前記自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に、少なくとも前記パイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体を形成する工程と、を有し、前記パイ共役系高分子は、poly[(9,9-dioctylfluorenyl-5-octylthieno[3,4-c]pyrrole-4,6-dione)、Poly[2-methoxy-5-(3′,7′-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylenevinylene]である有機マイクロディスクアレイの製造方法。
【0010】
]前記溶液は、フォトクロミック分子を含む[]に記載の有機マイクロディスクアレイの製造方法。
【0011】
]前記混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比は、体積比で1:0.5~1:1である[]または[]に記載の有機マイクロディスクアレイの製造方法。
【0012】
]前記薄膜を、前記混合溶媒の蒸気に接触させるとき、前記蒸気の温度は、30℃以上40℃以下である[]~[]のいずれかに記載の有機マイクロディスクアレイの製造方法。
【0013】
]前記薄膜を、前記混合溶媒の蒸気に接触させる時間は、1.5時間以上である[]~[]のいずれかに記載の有機マイクロディスクアレイの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板の一面に、パイ共役高分子およびフォトクロミック分子の少なくとも一方からなる球体や半球体から構成されるアレイが等間隔かつ高密度に形成された有機マイクロディスクアレイおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の有機マイクロディスクアレイの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のA-A線に沿う断面図である。
図3】本発明の有機マイクロディスクアレイの製造方法の第1の実施形態および第2実施形態を示す断面図である。
図4】本発明の有機マイクロディスクアレイの製造方法の第1の実施形態を示す断面図である。
図5】本発明の有機マイクロディスクアレイの製造方法の第2の実施形態を示す断面図である。
図6】実験例1における光学顕微鏡像である。
図7】実験例2における光学顕微鏡像である。
図8】実験例2における走査型電子顕微鏡像である。
図9】実験例3における光学顕微鏡像である。
図10】実験例3における走査型電子顕微鏡像である。
図11】実験例4における光学顕微鏡像である。
図12】実験例5における走査型電子顕微鏡像である。
図13】実験例5における半球状構造体の発光を示す光学顕微鏡像である。
図14】実験例5における半球状構造体の発光スペクトルを測定した結果を示す図である。
図15】実験例6における光学顕微鏡像である。
図16】実験例6における半球状構造体の発光スペクトルを測定した結果を示す図である。
図17】実験例7における半球状構造体の発光を示す光学顕微鏡像である。
図18】実験例7における半球状構造体の発光スペクトルを測定した結果を示す図である。
図19】実験例8における光学顕微鏡像である。
図20】実験例8における半球状構造体の発光スペクトルを測定した結果を示す図である。
図21】実験例9における光学顕微鏡像である。
図22】実験例9における蛍光顕微鏡像である。
図23】実験例9における走査型電子微鏡像である。
図24】実験例9における半球状構造体の吸収スペクトルと発光スペクトルを測定した結果を示す図である。
図25】実験例9における蛍光顕微鏡像である。
図26】実験例9における蛍光顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の有機マイクロディスクアレイおよびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
[有機マイクロディスクアレイ]
本実施形態の有機マイクロディスクアレイは、基板と、該基板の一面に形成された親液性領域と疎液性領域を有する自己組織化単分子膜と、該自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に等間隔かつ交互に形成された結晶性が低いパイ共役系高分子およびフォトクロミック分子の少なくとも一方からなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備える。
【0019】
以下、図1および図2を参照しながら、本実施形態の有機マイクロディスクアレイを説明する。
図1は、本実施形態の有機マイクロディスクアレイの一例を示す斜視図である。図2は、図1のA-A線に沿う断面図である。
本実施形態の有機マイクロディスクアレイ10は、基板20と、基板20の一方の面20aに等間隔かつ交互に形成された親液性領域31と疎液性領域32を有する自己組織化単分子膜30と、自己組織化単分子膜30の親液性領域31の一面31aに形成された結晶性が低いパイ共役系高分子およびフォトクロミック分子の少なくとも一方からなり、自己組織化単分子膜30よりも基板20の一方の面20aとは反対側(基板20の厚さ方向)に突出した複数の半球状構造体40とから概略構成されている。
【0020】
自己組織化単分子膜30は、次のようにして形成されたものである。
基板20を、後述する有機化合物を含む溶液に浸漬すると、その有機化合物が、基板20の一方の面20aに化学吸着する。すると、その化学吸着の過程で、分子間相互作用により、有機化合物がさらに基板20の一方の面20aに高密度に集積し、有機化合物の配向性が揃って自己組織化単分子膜30が形成される。
【0021】
自己組織化単分子膜30を形成する有機化合物は、自己組織化単分子膜30を形成した場合に、基板20の一面20aとは反対側の末端(基板20の一面20aと結合していない末端)に疎液性(疎水性)の官能基を有する分子である。疎液性(疎水性)の官能基としては、アルキル基、フェニル基、フッ素基等が挙げられる。
【0022】
自己組織化単分子膜30の親液性領域31は、後述する親液化処理により、上記の有機化合物の疎液性の官能基を除去することにより、後述する親液化処理が施されていない(すなわち、上記の有機化合物の疎液性の官能基が除去されていない)疎液性領域32に対して、相対的に親液性(親水性)とした領域である。このような親液性領域31は、後述する、パイ共役系高分子およびフォトクロミック分子の少なくとも一方を含む溶液の濡れ性に優れる。したがって、後述する有機マイクロディスクアレイの製造方法によって、親液性領域31の一面31aに、パイ共役系高分子およびフォトクロミック分子の少なくとも一方からなる半球状構造体40が形成される。
【0023】
親液性領域31と疎液性領域32は、図1に示すように、基板20の一方の面20aに、基板20の幅方向(図1に示すX方向)と基板20の長さ方向(図1に示すY方向)に沿って、等間隔かつ交互に形成されている。言い換えれば、親液性領域31は、疎水性領域32からなる膜(自己組織化単分子膜30)に等間隔に形成された格子状の領域である。
したがって、複数の半球状構造体40は、図1に示すように、等間隔に形成された親液性領域31の一面31aに形成されることにより、基板20の幅方向(図1に示すX方向)と基板20の長さ方向(図1に示すY方向)に沿って、等間隔に形成されている。
【0024】
親液性領域31の幅(図1に示すX方向の長さ)Wと疎液性領域32の幅(図1に示すX方向の長さ)Wは等しくなっている。親液性領域31の幅Wと疎液性領域32の幅Wは、特に限定されず、有機マイクロディスクアレイ10の用途等に応じて適宜調整されるが、親液性領域31に形成される半球状構造体40が可視から近赤外光領域のフォトニック結晶を構築する観点から、1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0025】
また、親液性領域31の長さ(図1に示すY方向の長さ)Lと疎液性領域32の長さ(図1に示すY方向の長さ)Lは等しくなっている。親液性領域31の長さLと疎液性領域32の長さLは、特に限定されず、有機マイクロディスクアレイ10の用途等に応じて適宜調整されるが、親液性領域31に形成される半球状構造体40が可視から近赤外光領域のフォトニック結晶を構築する観点から、1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0026】
さらに、親液性領域31の幅Wと、疎液性領域32の幅Wと、親液性領域31の長さLと、疎液性領域32の長さLとが等しいことが好ましい。これらの長さを全て等しくすることにより、基板20の一方の面20a上に半球状構造体40を高密度に配置することができる。
【0027】
半球状構造体40の直径、すなわち、半球状構造体40と親液性領域31との界面が形成する円の直径(図2におけるD)は、特に限定されず、有機マイクロディスクアレイ10の用途等に応じて適宜調整されるが、可視から近赤外光領域のフォトニック結晶を構築する観点から、1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上5μm以下であることがより好ましい。なお、半球状構造体40は、親液性領域31内に形成されるため、半球状構造体40の直径Dは、親液性領域31の幅Wと親液性領域31の長さL以下である。
【0028】
半球状構造体40の高さ、すなわち、親液性領域31の一面31aを基準とした半球状構造体40の頂点までの高さ(図2におけるH)は、特に限定されず、有機マイクロディスクアレイ10の用途等に応じて適宜調整されるが、可視~近赤外光の閉じ込めの観点から、0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、1μm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0029】
基板20としては、シリコン基板、石英基板、ガラス基板、サファイア基板、マイカ基板等が挙げられる。
【0030】
自己組織化単分子膜30を形成する有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、石英、ガラス基板を用いる場合には、シランカップリング剤(ヘキサメチルジシラザン、アリールアルキルシラン、フルオロアルキルシラン、フルオロフェニルシラン等)やこれらの酸化物が用いられ、金属基板を用いる場合には、チオールやホスホン酸の結合部位と、アルキル基等が結合したアルキルチオールやアルキルホスホン酸等が用いられる。これらの有機化合物は、アルキル基、フェニル基、フッ素基等の疎液性(疎水性)の官能基を有する。
【0031】
半球状構造体40は、結晶性が低いパイ共役系高分子およびフォトクロミック分子の少なくとも一方からなる。すなわち、半球状構造体40は、結晶性が低いパイ共役系高分子のみで構成されていてもよく、フォトクロミック分子のみで構成されていてもよく、結晶性が低いパイ共役系高分子とフォトクロミック分子で構成されていてもよい。半球状構造体40が、結晶性が低いパイ共役系高分子とフォトクロミック分子で構成される場合、半球状構造体40は、結晶性が低いパイ共役系高分子にフォトクロミック分子が結合した化合物、または、結晶性が低いパイ共役系高分子とフォトクロミック分子の混合物から構成される。また、半球状構造体40が、結晶性が低いパイ共役系高分子とフォトクロミック分子で構成される場合、それぞれの分子の配合比は、目的とする特性に応じて適宜調整される。
【0032】
本実施形態において、結晶性が低いパイ共役系高分子とは、溶媒中で球状構造体を形成するパイ共役系高分子のことである。結晶性の高い高分子は、異方性であるため、結晶も異方的に成長する。そのため、結晶性の高い高分子は、球状構造体を形成しない。一方、結晶性の低い高分子は、異方性でないため、結晶は等方的に成長する。そのため、結晶性の低い高分子は、球状構造(等方的な構造)体を形成する。
パイ共役系高分子が、溶媒中で球状構造体を形成するか否かを確認する方法としては、クロロホルム等にパイ共役系高分子を溶解し、極性の高い貧溶媒であるメタノール等を蒸気拡散法によりゆっくりと加えて析出した構造体を電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察する方法が挙げられる。
また、結晶性が低いパイ共役系高分子は、紫外から近赤外領域の光を吸収し、その吸収した光よりも長波長の光を発光する性質を有する。
【0033】
本実施形態における結晶性が低いパイ共役系高分子としては、例えば、下記の式(1)で表わされるpoly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl)-alt-(3,3’ ,4,4’-tetramethylbithiophene-2,5’-diyl)](F8TMT2)、下記の式(2)で表わされるpoly[(N-(2-ethylhexyl)phenothiazine-3,7-diyl)-alt-(3,3’ ,4,4’- tetramethylbithiophene-2,5’-diyl)](PTTMT2)、下記の式(3)で表わされるpoly[(9,9-dioctylfluorenyl-5-octylthieno[3,4-c]pyrrole-4,6-dione)(F8TPD)、下記の式(4)で表わされるPoly[2-methoxy-5-(3′,7′-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylenevinylene](MDMOPPV)、下記の式(5)で表わされるpoly[(N-octadecylcarbazol-2,7-diyl)-alt-(3,3’ ,4,4’-tetramethylbithiophene-2,5’-diyl)](2,7-CTMT2)、下記の式(6)で表わされるpoly[(N-octadecylcarbazol-3,6-diyl)-alt-(3,3’ ,4,4’-tetramethylbithiophene-2,5’-diyl)](3,6-CTMT2)、下記の式(7)で表わされるpoly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl)-alt-(3,4-ethylenedioxythiophene-2,5-diyl)](F8EDOT)、下記の式(8)で表わされるpoly[(N-(4-octylphenyl)iminoazobenzene-4,4’-diyl)](AZOANI)、下記の式(9)で表わされるpoly[(1,4-dioctylphenyl-2,5-diyl)-alt-(3,3’ ,4,4’-(tetramethylbithiophene-2,5’-diyl))(DOPTMT2)等が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
【化2】
【0036】
【化3】
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】
【0039】
【化6】
【0040】
【化7】
【0041】
【化8】
【0042】
【化9】
【0043】
本実施形態において、フォトクロミック分子とは、光反応により色が異なる2つの状態を可逆に生成することができる化合物である。フォトクロミック分子は、例えば、ある波長範囲Aの光を照射すると、光を照射する前とは異なる色に変化し、波長範囲Aとは異なる波長範囲Bの光を照射すると、波長範囲Aの光を照射する前の色に戻る性質を有する。2つの状態はともに同じ分子量をもち同じ原子から構成されているが、その結合様式が異なる。
【0044】
本実施形態におけるフォトクロミック分子としては、例えば、下記の式(10)で表わされるジアリールエテン(1,2-ジチエニルエテンの誘導体群)、アゾベンゼン、スピロピラン、ヘキサアリールイミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0045】
【化10】
【0046】
半球状構造体40が、結晶性が低いパイ共役系高分子のみで構成される場合、半球状構造体40が紫外から近赤外領域の光を吸収すると、その吸収した光よりも長波長の光を発光する。したがって、本実施形態の有機マイクロディスクアレイ10を発光デバイスやディスプレイ等として利用することができる。
【0047】
半球状構造体40が、フォトクロミック分子のみで構成される場合、半球状構造体40に、ある波長範囲(A)の光を照射すると、半球状構造体40は波長範囲(A)の光を照射する前とは異なる色に変化する。また、半球状構造体40に、波長範囲(A)とは異なる波長範囲(B)の光を照射すると、半球状構造体40は波長範囲(A)の光を照射する前の色に戻る。したがって、本実施形態の有機マイクロディスクアレイ10を光メモリーデバイスやディスプレイ等として利用することができる。
【0048】
半球状構造体40が、結晶性が低いパイ共役系高分子とフォトクロミック分子で構成される場合、半球状構造体40に、ある波長範囲(C)の光を照射すると、半球状構造体40は波長範囲(C)の光を照射する前とは異なる波長範囲(D)の光(紫外から近赤外領域の光)を吸収し、その吸収した光よりも長波長の光を発光する。また、半球状構造体40に、波長範囲(C)とは異なる波長範囲(E)の光を照射すると、半球状構造体40は波長範囲(C)の光を照射する前と同じ波長範囲(F)の光(紫外から近赤外領域の光)を吸収し、その吸収した光よりも長波長の光を発光する。したがって、本実施形態の有機マイクロディスクアレイ10を発光デバイス、ディスプレイ、光メモリーデバイス等として利用することができる。
【0049】
本実施形態によれば、複数の半球状構造体40が、等間隔に形成された親液性領域31の一面31aに形成されるため、複数の半球状構造体40が、基板20の幅方向(図1に示すX方向)と基板20の長さ方向(図1に示すY方向)に沿って、等間隔かつ高密度に配置された有機マイクロディスクアレイ10が得られる。
【0050】
本実施形態の有機マイクロディスクアレイ10は、結晶性が低いパイ共役系高分子およびフォトクロミック分子の少なくとも一方からなる複数の半球状構造体40が等間隔かつ高密度に配置されているため、有機フォトニック結晶、光メモリーデバイス、発光デバイス、超高解像度ディスプレイ、網膜投影ディスプレイとして好適に用いられる。
【0051】
なお、本実施形態では、基板20の一方の面20aに、複数の半球状構造体40が形成されている場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、基板20の一方の面20aに、複数の球状構造体が形成されていてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、自己組織化単分子膜30の親液性領域31内に、1つの半球状構造体40が形成されている場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、親液性領域31の大きさ(面積)に応じて、親液性領域31内に複数の半球状構造体40が隣接して形成されていてもよい。
【0053】
[有機マイクロディスクアレイの製造方法]
(第1の実施形態)
本実施形態の有機マイクロディスクアレイの製造方法は、基板と、基板の一面に等間隔かつ交互に形成された親液性領域と疎液性領域を有する自己組織化単分子膜と、自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に形成された、少なくとも結晶性が低いパイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備えた有機マイクロディスクアレイの製造方法であって、基板の一面に、自己組織化単分子膜を形成する工程と、基板の一面に形成された自己組織化単分子膜に、親液性領域と疎液性領域を等間隔かつ交互に形成する工程と、自己組織化単分子膜の一面に、少なくともパイ共役系高分子を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥させて、少なくともパイ共役系高分子からなる薄膜を形成する工程と、薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させることにより、自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に、少なくともパイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体を形成する工程と、を有する。
【0054】
以下、図3および図4を参照しながら、本実施形態の有機マイクロディスクアレイの製造方法を説明する。
図3および図4は、本実施形態の有機マイクロディスクアレイの製造方法を示す断面図である。
【0055】
基板20を、自己組織化単分子膜30を形成する有機化合物を含む溶液に浸漬して、図3(a)に示すように、基板20の一面20aに自己組織化単分子膜30を形成する(自己組織化単分子膜形成工程)。
【0056】
上記の有機化合物を含む溶液の溶媒、すなわち、有機化合物を溶解するための溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン等が挙げられる。
また、有機化合物を含む溶液における有機化合物の含有量(濃度)は、0.1mg/mL以上10mg/mL以下であることが好ましく、1mg/mL以上2mg/mL以下であることがより好ましい。
【0057】
図3(b)に示すように、自己組織化単分子膜30は、基板20の一面20aとは反対側の末端(基板20の一面20aと結合していない末端)に疎液性の官能基(図3(b)ではメチル基(CH))を有する。
【0058】
次に、図3(c)および図3(d)に示すように、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に、親液性領域31と疎液性領域32を等間隔かつ交互に形成する(親液/疎液パターン形成工程)。
【0059】
親液/疎液パターン形成工程では、図3(c)に示すように、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に対向するように、フォトマスク100を配置した状態で、フォトマスク100を介して、自己組織化単分子膜30に紫外線αを照射し、自己組織化単分子膜30を露光する。
【0060】
フォトマスク100としては、フォトマスク100の厚さ方向に光を透過する透過部100aを有するものが用いられる。透過部100aは、フォトマスク100の幅方向とフォトマスク100の長さ方向に沿って等間隔に形成されている。また、透過部100aは、フォトマスク100の一方の面100bおよび他方の面100cにて開口している。透過部100aの幅Wは、目的とする親液性領域31の幅に応じて適宜調整される。なお、ここでは、説明を簡略化するために、透過部100aの幅Wを、フォトマスク100の幅方向に沿う幅およびフォトマスク100の長さ方向に沿う幅とする。その場合、透過部100aの幅Wは、上記の親液性領域31の幅(図1に示すX方向の長さ)Wと親液性領域31の長さ(図1に示すY方向の長さ)Lに応じて適宜調整される。すなわち、親液性領域31および疎液性領域32の面積や、親液性領域31および疎液性領域32を設ける間隔は、特に限定されず、親液性領域31に形成される半球状構造体40に求められる大きさ(直径)や高さ、半球状構造体40を設ける間隔等に応じて適宜調整される。
【0061】
紫外線αとしては、指向性が高い紫外線を用いる。このような紫外線としては、波長が150nm以上240nm以下の範囲に発光強度を有する光が用いられる。このような指向性が高い紫外線を用いることにより、フォトマスク100を介して、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に紫外線αを照射した際に、図3(c)に示すように、フォトマスク100に設けられた透過部100aの形状に沿って、自己組織化単分子膜30に紫外線αを照射することができる。その結果、図3(d)に示すように、自己組織化単分子膜30における紫外線αを照射した領域の疎液性の官能基を消失させて、自己組織化単分子膜30の目的の位置に、相対的に親液性を示す親液性領域31を形成することができる。また、自己組織化単分子膜30における紫外線αを照射していない領域は、疎液性の官能基が消失していないため相対的に疎液性を示す疎液性領域32となる。このようにして、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に、親液性領域31と疎液性領域32を等間隔かつ交互に形成する。
【0062】
フォトマスク100を介して、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に紫外線αを照射する時間は、100秒以上150秒以下であることが好ましい。
【0063】
基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に指向性が高い紫外線を照射する手段としては、例えば、エキシマランプや真空紫外線ランプを用いる。
【0064】
次に、図4(a)に示すように、親液性領域31の一面31aと疎液性領域32の一面32aに、少なくともパイ共役系高分子を含む溶液を塗布して、少なくともパイ共役系高分子からなる薄膜50を形成する(薄膜形成工程)。
【0065】
少なくともパイ共役系高分子を含む溶液の溶媒、すなわち、少なくともパイ共役系高分子を溶解するための溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン等が挙げられる。
なお、本実施形態では、薄膜50を形成するための溶液が、パイ共役系高分子のみを含む溶液、あるいは、パイ共役系高分子およびフォトクロミック分子を含む溶液である。
【0066】
また、少なくともパイ共役系高分子を含む溶液におけるパイ共役系高分子等の含有量(濃度)は、0.1mg/mL以上10mg/mL以下であることが好ましく、1mg/mL以上2mg/mL以下であることがより好ましい。
【0067】
薄膜形成工程において、まず、親液性領域31の一面31aと疎液性領域32の一面32aに、少なくともパイ共役系高分子を含む溶液を塗布して、この溶液からなる塗膜を形成する。
親液性領域31の一面31aと疎液性領域32の一面32aに、少なくともパイ共役系高分子を含む溶液からなる塗膜を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、バーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、はけ塗り法等、通常のウェットコート法が用いられる。
【0068】
塗膜の厚さは、最終的に得られる有機マイクロディスクアレイ10の用途にて、半球状構造体40や球状構造体に求められる高さに応じて適宜調整される。
【0069】
薄膜形成工程において、次いで、親液性領域31の一面31aと疎液性領域32の一面32aに形成した塗膜を乾燥させることにより、親液性領域31の一面31aと疎液性領域32の一面32aに少なくともパイ共役系高分子からなる薄膜50を形成する。
塗膜を乾燥する温度は、特に限定されず、溶媒の種類に応じて適宜調整されるが、例えば、30℃以上80℃以下であることが好ましい。
また、均一な大きさの半球状構造体40を形成するためには、薄膜50の厚さが均一であることが好ましい。
【0070】
次に、図4(b)に示すように、親液性領域31の一面31aと疎液性領域32の一面32aに形成された薄膜50を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気110に接触させることにより、親液性領域31に、少なくともパイ共役系高分子からなる半球状構造体40を形成する(構造体形成工程)。これにより、図4(c)に示すような有機マイクロディスクアレイ10が得られる。
【0071】
構造体形成工程において、薄膜50を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気110に接触させる方法としては、溶媒蒸気アニーリング(Solvent Vapor Annealing:SVA)法が用いられる。
SVA法によって、薄膜50を蒸気110に接触させる場合、混合溶媒が収容された、試薬瓶等の密閉容器内に、親液性領域31の一面31aと疎液性領域32の一面32aに薄膜50が形成された基板20を配置する。
【0072】
クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比は、体積比で1:0.5~1:1であることが好ましく、1:1であることがより好ましい。
クロロホルムとメタノールの配合比が、体積比で1:0.5未満では、少なくともパイ共役系高分子からなる不定形の突状の構造体が形成されるか、あるいは、薄膜50が全く変化しない。一方、クロロホルムとメタノールの配合比が、体積比で1:1を超えると、クロロホルムに薄膜50が溶解してしまい、薄膜50が破壊してしまう。
【0073】
その後、恒温漕中に、薄膜50が形成された基板20を収容した密閉容器を配置して、所定温度にて、所定時間、その密閉容器を静置する。
恒温漕内の温度、すなわち、薄膜50を蒸気110に接触させるときの、蒸気110の温度は、30℃以上40℃以下であることが好ましく、30℃以上35℃以下であることがより好ましい。
蒸気110の温度が30℃未満では、半球状構造体40を形成することができない。一方、蒸気110の温度が40℃を超えても効果に差異がない。
【0074】
薄膜50を蒸気110に接触させる時間は、1.5時間以上であることが好ましい。
薄膜50を蒸気110に接触させる時間が1.5時間未満では、親液性領域31の一面30aに半球状構造体40を形成できない。
【0075】
SVA法により、薄膜50を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気110に接触させると、混合溶媒を構成するクロロホルムに、薄膜50を形成するパイ共役系高分子が少しずつ溶解し、クロロホルム中で、そのパイ共役系高分子が集まる。ここで、パイ共役系高分子は疎水性が高いので、パイ共役系高分子に、極性が高い(親水性)メタノールが近付くと、パイ共役系高分子は、メタノールと接したくないため、表面積を小さくして半球状構造体40を形成する。
薄膜50と蒸気110との接触を停止すれば、上述のような作用が生じなくなるので、半球状構造体40の形成も停止する。
【0076】
本実施形態の有機マイクロディスクアレイの製造方法によれば、基板20の幅方向と基板20の長さ方向に沿って、複数の半球状構造体40が等間隔かつ高密度に配置された有機マイクロディスクアレイ10が得られる。
【0077】
(第2の実施形態)
本実施形態の有機マイクロディスクアレイの製造方法は、基板と、基板の一面に等間隔かつ交互に形成された親液性領域と疎液性領域を有する自己組織化単分子膜と、自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に形成された、フォトクロミック分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備えた有機マイクロディスクアレイの製造方法であって、基板の一面に、自己組織化単分子膜を形成する工程と、基板の一面に形成された自己組織化単分子膜に、親液性領域と疎液性領域を等間隔かつ交互に形成する工程と、自己組織化単分子膜の一面に、フォトクロミック分子を含む溶液を塗布し、溶液からなる塗膜を形成する工程と、塗膜を乾燥させて、自己組織化単分子膜の親液性領域の一面に、フォトクロミック分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体を形成する工程と、を有する。
【0078】
以下、図3および図5を参照しながら、本実施形態の有機マイクロディスクアレイの製造方法を説明する。
図3および図5は、本実施形態の有機マイクロディスクアレイの製造方法を示す断面図である。
【0079】
第1の実施形態と同様にして、図3(a)および図3(b)に示すように、基板20の一面20aに自己組織化単分子膜30を形成する(自己組織化単分子膜形成工程)。
【0080】
次に、第1の実施形態と同様にして、図3(c)および図3(d)に示すように、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に、親液性領域31と疎液性領域32を等間隔かつ交互に形成する(親液/疎液パターン形成工程)。
【0081】
次に、図5(a)に示すように、親液性領域31の一面31aと疎液性領域32の一面32aに、フォトクロミック分子を含む溶液を塗布し、その溶液からなる塗膜60を形成する(塗膜形成工程)。
【0082】
フォトクロミック分子を含む溶液の溶媒、すなわち、フォトクロミック分子を溶解するための溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン等が挙げられる。
【0083】
また、フォトクロミック分子を含む溶液におけるフォトクロミック分子の含有量(濃度)は、0.1mg/mL以上10mg/mL以下であることが好ましく、1.0mg/mL以上2.0mg/mL以下であることがより好ましい。
【0084】
親液性領域31の一面31aと疎液性領域32の一面32aに、フォトクロミック分子を含む溶液からなる塗膜60を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、バーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、はけ塗り法等、通常のウェットコート法が用いられる。
【0085】
塗膜60の厚さは、最終的に得られる有機マイクロディスクアレイ10の用途にて、半球状構造体40や球状構造体に求められる高さに応じて適宜調整される。
【0086】
次に、図5(b)に示すように、親液性領域31の一面31aと疎液性領域32の一面32aに形成した塗膜60を乾燥させることにより、自己組織化単分子膜30の親液性領域31の一面31aに、フォトクロミック分子からなる半球状構造体40を形成する(構造体形成工程)。これにより、図5(c)に示すような有機マイクロディスクアレイ10が得られる。
【0087】
構造体形成工程において、塗膜60を乾燥する温度は、特に限定されず、溶媒の種類に応じて適宜調整されるが、例えば、30℃以上80℃以下であることが好ましい。構造体形成工程において、塗膜60を乾燥することにより、塗膜60を形成するフォトクロミック分子を含む溶液が親液性領域31の一面31aに移動して、最終的にフォトクロミック分子が半球状構造体40を形成する。
また、均一な大きさの半球状構造体40を形成するためには、塗膜60の厚さが均一であることが好ましい。
【0088】
本実施形態の有機マイクロディスクアレイの製造方法によれば、基板20の幅方向と基板20の長さ方向に沿って、複数の半球状構造体40が等間隔かつ高密度に配置された有機マイクロディスクアレイ10が得られる。
【0089】
なお、本実施形態の有機マイクロディスクアレイの製造方法では、親液性領域31の一面31aに半球状構造体40を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明の有機マイクロディスクアレイの製造方法にあっては、フォトクロミック分子を溶解するための溶媒の種類や、フォトクロミック分子を含む溶液におけるフォトクロミック分子の濃度等を調整することにより、フォトクロミック分子が集まる場所を制御して、半球状構造体が形成される位置を制御することができる。
【実施例
【0090】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0091】
[実験例1]
厚さ0.5μmのシリコン基板を、縦10mm×横10mmの大きさに切り出して、試験用基板とした。
この試験用基板を、UVオゾン洗浄により、10分間洗浄した。
次いで、硫酸(HSO)と過酸化水素(H)の混合液中に、試験用基板を、50℃で30分間、静置した。混合液における硫酸と過酸化水素の配合比を、体積比で4:1とした。
その後、試験用基板を純水で洗浄し、試験用基板の洗浄を完了した。
パイ共役系高分子のF8TMT2をクロロホルムに溶解して、F8TMT2溶液を調製した。この溶液におけるF8TMT2の含有量(濃度)を1mg/mLとした。
次いで、試験用基板をスピンコーターに設置し、試験用基板を、1500rpmで10秒間、続いて、3000rpmで40秒間、回転させながら、試験用基板上に、F8TMT2溶液を10μL~50μL滴下して、この溶液からなる塗膜を形成した。
その後、塗膜を室温にて乾燥し、試験用基板の一方の面に、F8TMT2からなる薄膜を形成した。
次いで、薄膜が形成された試験用基板を、縦5mm×横5mmの大きさに切り出した。
次いで、薄膜が形成された試験用基板を、クロロホルムが収容された、50mLの試薬瓶内に配置した。
次いで、恒温漕中に、薄膜が形成された試験用基板を収容した試薬瓶を配置して、30℃で4時間、その試薬瓶を静置した。これにより、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムの蒸気に接触させた。
次いで、試験用基板を真空乾燥させた。
次いで、真空乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡で観察した。その光学顕微鏡像を図6に示す。
図6の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていないことが確認された。
【0092】
[実験例2]
実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に、F8TMT2からなる薄膜を形成した。
次いで、薄膜が形成された試験用基板を、縦5mm×横5mmの大きさに切り出した。
次いで、F8TMT2からなる薄膜が形成された試験用基板を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒が収容された、50mLの試薬瓶内に配置した。
クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比を、体積比で1:0.5とした。
次いで、実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
次いで、試験用基板を真空乾燥させた。
次いで、真空乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察した。その光学顕微鏡を図7に示す。また、走査型電子顕微鏡像を図8に示す。
図7の光学顕微鏡および図8の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていることが確認された。また、平面視した場合、半球状構造体は、直径2μm以上6μm以下の円形であった。
【0093】
[実験例3]
実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に、F8TMT2からなる薄膜を形成した。
次いで、薄膜が形成された試験用基板を、縦5mm×横5mmの大きさに切り出した。
次いで、クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比を、体積比で1:1としたこと以外は実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
次いで、試験用基板を真空乾燥させた。
次いで、真空乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察した。その光学顕微鏡を図9に示す。また、走査型電子顕微鏡像を図10に示す。
図9の光学顕微鏡および図10の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていることが確認された。また、平面視した場合、半球状構造体は、直径1μm以上4μm以下の円形であった。
【0094】
[実験例4]
実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に、F8TMT2からなる薄膜を形成した。
次いで、薄膜が形成された試験用基板を、縦5mm×横5mmの大きさに切り出した。
次いで、クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比を、体積比で1:2としたこと以外は実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
次いで、試験用基板を真空乾燥させた。
次いで、真空乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡像で観察した。その光学顕微鏡像像を図11に示す。
図11の光学顕微鏡像像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていないことが確認された。
【0095】
[実験例5]
厚さ0.5μmのシリコン基板を、縦10mm×横10mmの大きさに切り出して、試験用基板とした。
この試験用基板を、UVオゾン洗浄により、10分間洗浄した。
次いで、硫酸(HSO)と過酸化水素(H)の混合液中に、試験用基板を、50℃で30分間、静置した。混合液における硫酸と過酸化水素の配合比を、体積比で4:1とした。
その後、試験用基板を純水で洗浄し、試験用基板の洗浄を完了した。
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)をクロロホルムに溶解して、HMDS液を調製した。この溶液におけるHMDSの含有量(濃度)を2mg/mLとした。
次いで、洗浄後の試験用基板を、HMDS溶液に24時間、浸漬して、試験用基板の一面に自己組織化単分子膜を形成した。
次いで、試験用基板の一面に形成された自己組織化単分子膜に対向するように、フォトマスクを配置し、フォトマスクを介して、自己組織化単分子膜に紫外線を照射し、自己組織化単分子膜を露光した。
フォトマスクとしては、その全面に複数の透過部が等間隔に形成されたものを用いた。透過部におけるフォトマスクの幅方向に沿う幅およびフォトマスクの長さ方向に沿う幅を2μmとした。また、透過部同士の間隔を2μmとした。
自己組織化単分子膜に照射する紫外線は、ピーク発光波長が200nm、ピーク発光波長の半値幅が10nmであった。
また、自己組織化単分子膜に対して、紫外線を照射する時間を130秒、紫外線を照射する周期を151Hzとした。
パイ共役系高分子のF8TMT2をクロロホルムに溶解して、F8TMT2溶液を調製した。この溶液におけるF8TMT2の含有量(濃度)を1mg/mLとした。
次いで、自己組織化単分子膜が形成された試験用基板をスピンコーターに設置し、試験用基板を、1500rpmで10秒間、続いて、3000rpmで40秒間、回転させながら、試験用基板上に、F8TMT2溶液を10μL~50μL滴下して、この溶液からなる塗膜を形成した。
その後、塗膜を室温にて乾燥し、試験用基板の一方の面に形成された自己組織化単分子膜上に、F8TMT2からなる薄膜を形成した。
次いで、薄膜が形成された試験用基板を、縦5mm×横5mmの大きさに切り出した。
次いで、薄膜が形成された試験用基板を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒が収容された、50mLの試薬瓶内に配置した。
クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比を、体積比で1:1とした。
次いで、恒温漕中に、薄膜が形成された試験用基板を収容した試薬瓶を配置して、30℃で4時間、その試薬瓶を静置した。これにより、試験用基板の一方の面上に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
次いで、試験用基板を真空乾燥させた。
次いで、真空乾燥後の試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察し、その走査型電子顕微鏡像を図12に示す。
図12の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板の一方の面に形成された自己組織化単分子膜における紫外線で露光した領域(親液性領域)上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていることが確認された。
また、試験用基板上に形成されたF8TMT2からなる半球状構造体に、波長400nmの光を照射したところ、半球状構造体が発光していることが確認された(図13)。半球状構造体の発光スペクトルを、光学顕微鏡の顕微鏡レンズにより集光されたレーザーにて、半球状構造体を励起することによりにして測定した。半球状構造体の発光スペクトルを図14に示す。
図14の結果から、半球状構造体は、波長400nmの光を吸収し、その吸収した光よりも長波長の波長470nmの光を発光していることが確認された。
【0096】
[実験例6]
パイ共役系高分子として、PTTMT2を用いたこと以外は実験例5と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された自己組織化単分子膜における紫外線で露光した領域(親液性領域)上に、PTTMT2からなる薄膜を形成した。
次いで、実験例5と同様にして、試験用基板の一方の面上に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
次いで、試験用基板を真空乾燥させた。
次いで、真空乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡で観察し、その光学顕微鏡像を図15に示す。
図15の光学顕微鏡像から、試験用基板の一方の面に形成された自己組織化単分子膜における紫外線で露光した領域(親液性領域)上に、PTTMT2からなる半球状構造体が形成されていることが確認された。
また、半球状構造体の発光スペクトルを、実験例5と同様にして測定した。半球状構造体の発光スペクトルを図16に示す。
その結果、半球状構造体は、波長400nmの光を吸収し、その吸収した光よりも長波長の波長470nmの光を発光していることが確認された。
【0097】
[実験例7]
パイ共役系高分子として、F8TPDを用いたこと以外は実験例5と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された自己組織化単分子膜における紫外線で露光した領域(親液性領域)上に、F8TPDからなる薄膜を形成した。
次いで、実験例5と同様にして、試験用基板の一方の面上に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
次いで、試験用基板を真空乾燥させた。
次いで、真空乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡で観察し、その光学顕微鏡像を図17に示す。
図17の光学顕微鏡像から、試験用基板の一方の面に形成された自己組織化単分子膜における紫外線で露光した領域(親液性領域)上に、F8TPDからなる半球状構造体が形成されていることが確認された。
また、半球状構造体の発光スペクトルを、実験例5と同様にして測定した。半球状構造体の発光スペクトルを図18に示す。
その結果、半球状構造体は、波長400nmの光を吸収し、その吸収した光よりも長波長の波長530nmの光を発光していることが確認された。
【0098】
[実験例8]
パイ共役系高分子として、MDMOPPVを用いたこと以外は実験例5と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された自己組織化単分子膜上に、MDMOPPVからなる薄膜を形成した。
次いで、実験例5と同様にして、試験用基板の一方の面上に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
次いで、試験用基板を真空乾燥させた。
次いで、真空乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡で観察し、その光学顕微鏡像を図19に示す。
図19の光学顕微鏡像から、試験用基板の一方の面に形成された自己組織化単分子膜における紫外線で露光した領域(親液性領域)上に、MDMOPPVからなる半球状構造体が形成されていることが確認された。
また、試験用基板上に形成されたMDMOPPVからなる半球状構造体に、波長400nmの光を照射したところ、半球状構造体が発光していることが確認された。
また、半球状構造体の発光スペクトルを、実験例5と同様にして測定した。半球状構造体の発光スペクトルを図20に示す。
図20の結果から、半球状構造体は、波長400nmの光を吸収し、その吸収した光よりも長波長の波長600nmの光を発光していることが確認された。
【0099】
[実験例9]
実験例5と同様にして、試験用基板の一方の面に自己組織化単分子膜を形成し、自己組織化単分子膜を露光した。
フォトクロミック分子のジアリールエテンをクロロホルムに溶解して、ジアリールエテン溶液を調製した。この溶液におけるジアリールエテンの含有量(濃度)を1.5mg/mLとした。
次いで、自己組織化単分子膜が形成された試験用基板上に、ジアリールエテン溶液を10μL~30μL直接滴下して、試験用基板を真空乾燥させた。
次いで、真空乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡で観察し、その光学顕微鏡を図21に示す。また、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる半球状構造体に、波長450nm~490nmの光を照射した際に、蛍光顕微鏡で観察し、その蛍光顕微鏡像を図22に示す。また、真空乾燥後の試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察し、その走査型電子顕微鏡像を図23に示す。
図21の光学顕微鏡像、図22の蛍光顕微鏡像および図23の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板の一方の面に形成された自己組織化単分子膜における紫外線で露光した領域(親液性領域)上に、ジアリールエテンからなる半球状構造体が形成されていることが確認された。
また、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる半球状構造体に、波長450nm~490nmの光を60分間照射したところ、半球状構造体が徐々に暗くなることから消光が確認された。
また、実験例5と同様にして、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる半球状構造体に、波長450nm~490nmの光を照射した際に、半球状構造体の吸収スペクトルと発光スペクトルを測定した結果を図24に示す。図24において、一点鎖線は開環状態のジアリールエテンの吸収スペクトルを示し、破線は閉環状態のジアリールエテンの吸収スペクトルを示し、実線は閉環状態のジアリールエテンの発光スペクトルを示す。
図24の結果から、半球状構造体は、波長450nmの光を吸収し、その吸収した光よりも長波長の波長530nmの光を発光していることが確認された。
さらに、黒くなった半球状構造体に、波長350nm~390nmの光を1分間照射したところ、半球状構造体が発光していることが確認された。
図25に、半球状構造体に波長450nm~490nmの光を照射した際の蛍光顕微鏡像(図25(a))、黒くなった半球状構造体の蛍光顕微鏡像(図25(b))、半球状構造体に波長350nm~390nmの光を照射した際の蛍光顕微鏡像(図25(c))を示す。
また、図26に示すように、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる半球状構造体のうち、所定の位置の半球状構造体に波長355nmの光を照射すると、光を照射した半球状構造体のみを発光させることができる。その後、発光している半球状構造体に波長450nm~490nmの光を照射することにより、消光することができる。なお、図26(a)は光を照射する前の半球状構造体の蛍光顕微鏡像、図26(b)は波長355nmの光を照射した際の半球状構造体の蛍光顕微鏡像、図26(c)は波長450nm~490nmの光を照射した後の半球状構造体の蛍光顕微鏡像である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の有機マイクロディスクアレイは、結晶性が低いパイ共役系高分子およびフォトクロミック分子の少なくとも一方からなる複数の半球状構造体が等間隔かつ高密度に配置されているため、有機フォトニック結晶としての用途、光メモリーデバイスとしての用途、発光デバイスとしての用途、超高解像度ディスプレイとしての用途、網膜投影ディスプレイとしての用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
10・・・有機マイクロディスクアレイ、20・・・基板、30・・・自己組織化単分子膜、31・・・親液性領域、32・・・疎液性領域、40・・・半球状構造体、50・・・薄膜、60・・・塗膜、100・・・フォトマスク、110・・蒸気。
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