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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】水生生物用容器
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/02 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
A01K63/02 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018026531
(22)【出願日】2018-02-17
(65)【公開番号】P2019140926
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520002760
【氏名又は名称】株式会社クラハシ
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】緑川 雅之
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-360636(JP,A)
【文献】特開平02-295425(JP,A)
【文献】特開2000-116274(JP,A)
【文献】特開2007-175015(JP,A)
【文献】特開平09-275847(JP,A)
【文献】特開2002-136244(JP,A)
【文献】実開平01-163957(JP,U)
【文献】特開平10-150881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0183431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00-63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と水生生物を収容可能な容器本体部と、
前記容器本体部の開口部を開閉可能な蓋と、
前記容器本体部内部の空気を吸引できる吸引口と、
前記容器本体部へ酸素を含む気体を含有した供給水を供給する供給口と、を備え、
前記蓋は、前記容器本体内部の容積を超える余分水を外部に漏出させ、
前記吸引口を介して、前記容器本体部内部の空気を吸引する吸引装置を更に備え、
前記吸引装置は、前記容器本体部内部の圧力測定結果に基づいて、吸引の動作と停止を切り替える、水生生物用容器。
【請求項2】
前記蓋が閉じられて、前記吸引口から前記容器本体部内部の空気が吸引されることで、前記容器本体部と前記蓋とが密閉状態となる、請求項1記載の水生生物用容器。
【請求項3】
前記水生生物は、イカ類を始めとする魚介類を含む、請求項1または2記載の水生生物用容器。
【請求項4】
前記蓋は、密閉を向上させる第1シーリングと第2シーリングを備え、
前記第1シーリングは、前記容器本体部内部の水を密閉し、
前記第2シーリングは、前記容器本体部と外部との接触部位を密閉する、請求項1から3のいずれか記載の水生生物用容器。
【請求項5】
前記蓋は、前記容器本体部の上部に備わり、
前記蓋は、前記容器本体部の上部からあふれる態様で、前記余分水を外部に漏出させる、請求項1から4のいずれか記載の水生生物用容器。
【請求項6】
前記蓋から漏出される余分水は、前記前記容器本体部内部の気泡を合わせて外部に排出し、
前記容器本体部内部に空気層の形成を防止できる、請求項1から5のいずれか記載の水生生物用容器。
【請求項7】
前記蓋から前記供給口までは、閉循環路が形成される、請求項1から6のいずれか記載の水生生物用容器。
【請求項8】
前記供給水は、空気もしくは酸素を水に溶解させた気液混合水である、請求項1からのいずれか記載の水生生物用容器。
【請求項9】
前記供給口は、前記容器本体部の側面もしくは底面に備わる、請求項1からのいずれか記載の水生生物用容器。
【請求項10】
前記供給口から供給される前記供給水は、前記容器本体部の水層に、前記水生生物の生活様式に適した水流を形成可能である、請求項1からのいずれか記載の水生生物用容器。
【請求項11】
前記蓋の内部に、前記水生生物からの排出物を捕獲できるフィルターを備える、請求項1から10のいずれか記載の水生生物用容器。
【請求項12】
前記水生生物用容器は、輸送機器によって輸送可能である、請求項1から11のいずれか記載の水生生物用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生生物の健康状態を維持しつつ、一定時間の保管あるいは輸送可能な水生生物用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の水生生物を、一定時間において保管し輸送することが求められるようになってきている。例えば、食用に供される水生生物(食用の魚類や魚介類など)を、漁獲地あるいは集積地から、消費地に輸送することが求められるようになっている。例えば、ある種類の魚介類が水揚げされる漁獲地と、この魚介類が消費される消費地とは、遠隔であることが多い。
【0003】
例えば、イカは九州や北海道で漁獲されることが多いが、最大の消費地は関東、近畿、中部の三大都市圏である。すなわち、漁獲地と消費地とが遠隔であることが多い。イカに限らず、他の魚介類も、漁獲地と消費地とが遠隔になっていることが多い。もちろん、消費地の近隣でも水揚げされることがあるが、量の不足、品質の不足などの問題があり、消費地の多くでは、より品質の高い魚介類を食したいとの高い要望をもっている。
【0004】
これは、消費地での飲食店に限らず、流通業者も同じである。
【0005】
このとき、魚介類については、より品質の高い旬の漁獲地で水揚げされたものを、より新鮮な状態で食用としたいとの欲求もある。生食の要望に加えて、加工や調理の場合でも、新鮮な状態の魚介類を使用したいとの欲求があるからである。
【0006】
このような場合には、魚介類を始めとした水生生物を新鮮な状態を維持したまま輸送する必要が生じている。
【0007】
あるいは、食用とするわけではなく、例えば観賞用(一般消費者や水族館など)のための水生生物を、その健康状態を維持したまま輸送する必要も生じている。
【0008】
また、食用や観賞用として一定期間において水生生物を保管することも求められている。食用や観賞用として、必要となる期間の飼育においては、専用の生簀、水槽、水族館などの施設で行われればよい。しかしながら、これらの専用施設に移設されるまでの一定期間において、保管を必要とすることがある。
【0009】
このように、食用の魚介類を始めとした種々の水生生物の一定時間の保管や輸送をすることが求められている。このとき、食用や観賞用のいずれの場合であっても、水生生物の健康状態(新鮮な状態)を維持して、保管や輸送を行うことが求められている。
【0010】
特に、輸送においては、トラックや列車などの輸送機器で輸送される必要がある。この輸送においては、種々の状況が発生し、輸送される水生生物の健康状態を維持することが難しいことが多い。例えば、魚介類であれば、魚介類が必要とする酸素量の維持、魚介類からの排泄物や老廃物の処理、水質の維持などが必要条件となるからである。また、輸送におけるストレスが水生生物に加わる問題もある。
【0011】
また、輸送においては、水生生物を収容している水槽に振動が加わり、この振動が水生生物へのストレスとなってしまう。このストレスにより、水生生物の健康状態が損なわれたりする問題がある。
【0012】
もちろん、一定時間の保管においても、酸素量(水中の溶存酸素)の維持、水生生物の排泄物や老廃物の除去、水質の維持などの必要性がある。これらの維持ができなければ、一定時間の保管であっても、水生生物の健康状態が損なわれるからである。
【0013】
水揚げされる漁獲地から消費地への新鮮な状態を維持した魚介類の輸送が求められる時代においては、これらの問題に対応する必要がある。あるいは、漁獲地や消費地あるいは中継地において、一定時間の保管が求められる時代においては、これらの問題に対応する必要がある。あるいは、水族館や民生用での鑑賞用のために、輸送や一定時間の保管が求められる時代においても、水生生物の健康状態を維持することが求められている。
【0014】
このような状況において、水揚げされた魚介類を生きた状態で輸送する技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開平5-91828号公報
【文献】特開2003-125671号公報
【文献】特開2007-129956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1は、生きイカを、自然環境における酸素供給状態、雰囲気温度、雰囲気圧力下で、個々に相互干渉のない状態で収納することにより、生きイカを安息状態で輸送することを可能とし、もって多数の生きイカを生きの良い状態で輸送することを可能とした。生きイカの収納雰囲気条件に、遮光、海水の新鮮な海水との交換を加えることにより、生きイカの生きの良い状態を保っての輸送を、より安全にかつ確実に達成できるようにした活きイカ輸送方法を開示する。
【0017】
特許文献1は、輸送中に容器の海水を入れ替えることで、イカの鮮度を保つことの技術を提案している。
【0018】
しかしながら、輸送中に容器の海水を入れ替えることは、非常に手間とコストが掛かる。輸送中のいくつかの地点において、海水を得て入れ替える作業が必要となるからである。このような作業場所を確保することは困難であり、輸送時間と輸送コストが増加して、消費地における活きイカの価格が高騰することになってしまう。すなわち、現実的には採用できない問題がある。
【0019】
また、海水を入れ替えることで、海水の鮮度を保つことができるが、水揚げ地と異なる地域の海水になってしまうと、魚介類の種類によっては、鮮度や健康状態を保つことができない問題もありえる。
【0020】
特許文献2は、容器本体10にポンプ収容室13を形成する。ポンプ収容室13を区画する側壁12の上端面と蓋50の裏面との間に、ポンプ収容室に収容されたエアポンプ71と水槽11内に設置されたエア分散機72とをつなぐエアホース73を気密的に嵌め込むことのできる開口17を形成する活魚輸送方法を開示する。
【0021】
しかしながら、特許文献2の技術では、輸送できる魚介類の個体数が少なくなってしまう問題がある。このため、輸送コストと輸送できる量とのバランスが悪くなり、輸送コストが高くなりすぎてしまう問題がある。
【0022】
特許文献3は、魚類Mが収容されたゲ-ジ形生け簀構体3を、輸送船や輸送車等の輸送手段1に設けられた水槽14、15内の水中に浸漬するとともに、フロート手段4により水中内に浮遊させた状態で輸送することを特徴とする魚類輸送方法を、開示する。
【0023】
しかしながら、特許文献3は、フローとさせている網が輸送中に振動して、この網に衝突することで魚介類の身体が傷んでしまう問題を有している。魚介類の種類によっては、身体表面が傷んでしまうことで、健康や鮮度が大きく損なわれてしまうものもある。あるいは、食用や観賞用においては、その価格価値が大きく減少してしまう問題にもつながる。
【0024】
また、特許文献1~3のいずれも、水槽内に海水と魚介類を収容しているが、収容の密閉度や収容する内容物への言及や開示がない。特許文献1~3の開示から実現される水槽では、内部に空気層が生じてしまう。空気槽が生じると、海水と空気槽との境界である水面が生じてしまう。輸送中においては、この水面が揺れてしまい、海水(水)の内部が揺れてしまうことになる。
【0025】
水中が揺れてしまうと、水中にいる魚介類が相互に衝突したり内部壁面に衝突したりといったことが生じる。この結果、魚介類が傷んでしまい、健康や鮮度、あるいは見た目が大きく損傷してしまう問題を有している。なお、この水の揺れをスロッシングと呼ぶことがある。
【0026】
更に、特許文献1~3のいずれにおいても、水中内の水生生物に酸素を供給する機構を備えている。水生生物が水中に溶け込んだ溶存酸素を必要とするからである。輸送中あるいは保管中において、酸素(空気)を供給し続ける必要がある。特許文献1~3のいずれも、この水中に供給する空気によって、水槽内に空気層を生じさせてしまう。
【0027】
水槽内に空気層が生じると、上述したように水面が揺れて水中も振動してしまう。この振動によって、魚介類に物理的な衝突が加わり、鮮度、健康、外観が損なわれる問題が生じてしまう。また、水中に浮遊していたり水中で回遊していたりする魚介類に対しては、この振動が大きなストレスになる。適切な浮遊や回遊が困難となり得るからである。
【0028】
ここで、鮮度や健康とは、水生生物を食用とする場合に、生食なども含めた食用に適した状態であることであり、水生生物を観賞用や飼育用とする場合に、これに適した状態であることである。
【0029】
このように、従来技術では、水槽内において空気層が生じてしまい、これに基づいて水生生物の健康、鮮度、外観を損なう問題があった。
【0030】
本発明は、上記課題に鑑み、容器内部に空気層を生じさせることなく、空気層によって生じる水生生物への損傷を防止する水生生物用容器を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題に鑑み、本発明の水生生物用容器は、水と水生生物を収容可能な容器本体部と、
容器本体部の開口部を開閉可能な蓋と、
容器本体部内部の空気を吸引できる吸引口と、
容器本体部へ酸素を含む気体を含有した供給水を供給する供給口と、を備え、
蓋は、容器本体内部の容積を超える余分水を外部に漏出させ、
吸引口を介して、容器本体部内部の空気を吸引する吸引装置を更に備え、
吸引装置は、容器本体部内部の圧力測定結果に基づいて、吸引の動作と停止を切り替える

【発明の効果】
【0032】
本発明の水生生物用容器は、容器内部に空気層を生じさせず、輸送中であっても水面や水中が振動することを防止できる。結果として、水面や水中の振動による、水生生物の衝突やストレスを軽減でき、水生生物の健康、鮮度、外観を維持させることができる。
【0033】
また、酸素を含む水を供給する際に生じる気泡や空気層も外部に排出する構成により、空気層を形成させない。
【0034】
更に、密閉度を高める構成により、内部に空気層を生じさせず、水面の揺れによる水中の振動を防止でき、輸送中であっても、水生生物の健康、鮮度、外観を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施の形態1における水生生物用容器の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1における水生生物用容器の斜視図である。
図3】本発明の実施の形態1における測定部を備えた水生生物用容器の模式図である。
図4】本発明の実施の形態1における水生生物用容器の斜視図である。
図5】本発明の実施の形態2における蓋の裏面図である。
図6】蓋の写真である。
図7】本発明の実施の形態3における輸送状態にある水生生物用容器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の第1の発明に係る水生生物用容器は、水と水生生物を収容可能な容器本体部と、
容器本体部の開口部を開閉可能な蓋と、
容器本体部内部の空気を吸引できる吸引口と、
容器本体部へ酸素を含む気体を含有した供給水を供給する供給口と、を備え、
蓋は、容器本体内部の容積を超える余分水を外部に漏出させる。
【0037】
この構成により、容器本体部と蓋とで形成される内部空間(容器本体部の内部空間)には、常に水が充填された状態が実現される。結果として、内部空間に空気層が生じず、空気層による水面や水の揺れを抑制できる。
【0038】
本発明の第2の発明に係る水生生物用容器では、第1の発明に加えて、蓋が閉じられて、吸引口から容器本体部内部の空気が吸引されることで、容器本体部と蓋とが密閉状態となる。
【0039】
この構成により、内部空間に水が充填された状態をより確実に実現できる。また、蓋が外れたりすることも防止できる。
【0040】
本発明の第3の発明に係る水生生物用容器では、第1または第2の発明に加えて、水生生物は、イカ類を始めとする魚介類を含む。
【0041】
この構成により、食用となる魚介類や観賞用となる魚介類などにも適用できる。
【0042】
本発明の第4の発明に係る水生生物用容器では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、蓋は、密閉を向上させる第1シーリングと第2シーリングを備え、
第1シーリングは、容器本体部内部の水を密閉し、
第2シーリングは、容器本体部と外部との接触部位を密閉する。
【0043】
この構成により、蓋と容器本体部との密閉度を確実にすることができる。
【0044】
本発明の第5の発明に係る水生生物用容器では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、蓋は、容器本体部の上部に備わり、
蓋は、容器本体部の上部からあふれる態様で、余分水を外部に漏出させる。
【0045】
この構成により、複雑な構造などを必要とせずに、物理的に自然に余分水を漏出させることができる。
【0046】
本発明の第6の発明に係る水生生物用容器では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、蓋から漏出される余分水は、容器本体部内部の気泡を合わせて外部に排出し、容器本体部内部に空気層の形成を防止できる。
【0047】
この構成により、空気層が形成されずに、水面や水の揺れを防止できる。結果として、収容されている水生生物の衝突やストレスを低減できる。
【0048】
本発明の第7の発明に係る水生生物用容器では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、蓋から供給口までは、閉循環路が形成される。
【0049】
この構成により、余分水と供給水とを再利用できる。
【0050】
本発明の第8の発明に係る水生生物用容器では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、吸引口を介して、容器本体部内部の空気を吸引する吸引装置を更に備え、吸引装置は、容器本体部内部の圧力測定結果に基づいて、吸引の動作と停止を切り替える。
【0051】
この構成により、内部の密閉が維持できる。また、輸送中などで状態変化しやすい場合でも、密閉を維持できる。
【0052】
本発明の第9の発明に係る水生生物用容器では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、供給水は、空気もしくは酸素を水に溶解させた気液混合水である。
【0053】
この構成により、水生生物にとって好適である。また、空気層の原因となる気泡の供給を抑えることもできる。
【0054】
本発明の第10の発明に係る水生生物用容器では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、供給口は、容器本体部の側面もしくは底面に備わる。
【0055】
この構成により、容器本体部内部で古くなった水を余分水として漏出させやすい。また、内部に水流を生み出すこともできる。
【0056】
本発明の第11の発明に係る水生生物用容器では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、供給口から供給される供給水は、容器本体部の水層に、水生生物の生活様式に適した水流を形成可能である。
【0057】
この構成により、水生生物の保管期間を延ばすことができる。
【0058】
本発明の第12の発明に係る水生生物用容器では、第1から第11のいずれかの発明に加えて、蓋の内部に、水生生物からの排出物を捕獲できるフィルターを備える。
【0059】
この構成により、水をきれいに保つことができる。
【0060】
本発明の第13の発明に係る水生生物用容器では、第1から第12のいずれかの発明に加えて、水生生物用容器は、輸送機器によって輸送可能である。
【0061】
この構成により、水生生物の健康状態や新鮮さを維持させたまま、遠隔地に輸送することができる。
【0062】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0063】
(全体概要)
(水生生物の保管と輸送)
本発明の水生生物用容器は、水生生物を収容して保管する、あるいは輸送する際に使用される。水生生物とは、魚介類、両生類など水中で生活を行う生物である。この魚介類としては、食用のもの、観賞用のものが含まれる。前者としては、漁獲地域で漁獲された食用の魚介類が含まれる。後者としては、個人宅で観賞される熱帯魚や、水族館で展示される魚介類が含まれる。
【0064】
もちろん、上述の通り両生類のように水中生活を行う生物も対象となり得る。このとき、小型の水生生物から大型の水生生物も含まれる。
【0065】
また、食用として使用される魚介類は、加工用として使用されることもあり、生食用として使用されることもある。これらのいずれの場合の水生生物も、本発明の対象である。
【0066】
ここでの保管とは、一時的な保管や一定期間以上の期間での保管のいずれもありえる。例えば、水生生物が漁獲地域で漁獲された後で、当該漁獲地域において、一時的に保管される場合がある。あるいは、漁獲地域から輸送された後で、別の場所で保管される場合がある。すなわち、保管においても、輸送においても、本発明の水生生物用容器は使用される。
【0067】
また、輸送とは、漁獲地域で漁獲された魚介類が、別の場所に輸送される場合である。例えば、漁獲地域から消費地域へ魚介類が輸送される場合がある。あるいは、消費地域の集積所から、個別の飲食店や販売店に輸送される場合がある。
【0068】
このような水生生物の保管や輸送などにおいて、本発明の水生生物用容器が使用される。一般的に食用されるサバや鯛などの食用の魚介類が、輸送や保管などされるに際して、この水生生物用容器が使用される。
【0069】
一例として、近年、イカの活き作りが食される機会が多くなってきている。また、これを好む消費者も多くなってきている。イカを活き作りとして食するには、新鮮で生きた状態のイカを必要とする。しかしながら、イカの漁獲地と、活き作りで食したい消費者の多い地域とは、遠隔であることが多い。
【0070】
このため、イカの活き作りを提供するためには、漁獲地から消費地への輸送が必要となる。従来技術で説明したように、従来の容器では、イカを収容した容器で輸送する際には、イカが容器内部の内壁に衝突してしまったり、イカ同士がぶつかったりして、身体が傷ついたり、場合によっては死んでしまったりしていた。これを防止するために、一度に輸送できるイカの数を減らすと、イカの輸送コストが高くなってしまい、経済的に適していない状況も起こっていた。
【0071】
本発明の水生生物用容器は、このような問題を解決するために、発明された。
【0072】
(全体概要)
図1を用いて全体概要を説明する。図1は、本発明の実施の形態1における水生生物用容器の斜視図である。水生生物用容器1の内部が透視できる状態で、示されている。
【0073】
水生生物用容器1は、容器本体部2、蓋3、吸引口4、供給口5と、を備える。また、蓋3は、排出口6を有する。
【0074】
容器本体部2は、水と水生生物を収容可能である。ここで、水とは、水生生物が生活できる水であり、水生生物の種類や特性に合わせて、淡水や海水である。あるいは、特定の組成に調整された水である。図1においては、水生生物としてイカ10が収容されている状態が示されている。このため、イカ10が生活できる海水が、容器本体部2に収容される。すなわち、図1では、容器本体部2は、海水とイカ10を収容している。
【0075】
もちろん、必要に応じてその他の水生生物とこれに合った水が収容されればよい。すなわち、水生生物は、イカ類を始めとする魚介類を含んでいる。
【0076】
ここで、容器本体部2は、開口部を有している。図1の水生生物用容器1では、容器本体部2は、上方に開口部を有している。この開口部から、水と水生生物が投入される。また、開口部は、容器本体部2の全体に渡っていても、一部であってもよい。
【0077】
蓋3は、容器本体部2の開口部を開閉可能である。図1では、容器本体部2の開口部が上方にあるので、この上方の開口部を塞ぐような位置関係で、蓋3が設けられる。蓋3は、上下方向あるいは水平方向などに動作が可能であり、この動作によって、開口部を開閉する。
【0078】
吸引口4は、容器本体部2内部の空気を吸引できる。容器本体部2に蓋3が嵌められると、容器本体部2の一部、蓋3の内部、容器本体部2と蓋3との間に空間が生じうる。吸引口4は、取り外すこともできる吸引装置7と接続されている。この吸引装置7による吸引動作を受けて、吸引口4は、上述した空間に存在する空気を吸引できる。
【0079】
蓋3が容器本体部2に閉じられてから、吸引口3は、空気を吸引する。この吸引口3からの吸引によって、容器本体部2と蓋3とが密閉状態となる。密閉状態となることで、後述するように、容器本体部2に水が充填される状態となる。
【0080】
吸引装置7は、常時備わっており、容器本体部2内部の状態に応じて吸引動作を行ってもよいし、必要な時だけ取り付けられることでもよい。
【0081】
供給口5は、容器本体部2へ、酸素を含む気体を含有した供給水を供給する。容器本体部2は、水と水生生物を収容する。この収容状態で、水生生物用容器1は、水生生物を保管したり輸送したりする。図1では、イカ10が収容されている。
【0082】
この収容している水生生物の生活を持続させるために、酸素を含有する供給水が供給される必要がある。この供給水を、供給口5が供給する。容器本体部2に水生生物が収容されている限りは、酸素を含んだ供給水の供給が持続される必要がある。供給口5がこれを行うことで、保管や輸送の間において、容器本体部2に収容されている水生生物が生活を維持できる。
【0083】
蓋3は、容器本体部2内部の容積を超える余分水を、外部に漏出させる。例えば、図1では、蓋3に排出口6が設けられている。この排出口6が、余分水を外部に溢れさせることで、漏出させる。
【0084】
上述したように容器本体部2に蓋3が閉じられる。閉じられた後で、吸引口4から内部の空気が吸引される。これにより密閉状態の内部空間(蓋3と容器本体部2とで囲まれて形成される内部空間)が形成される。容器本体部2には水と水生成部が収容されており、供給口5から供給水が供給され続ける。この状態によって、蓋3と容器本体部2とで囲まれて形成される内部空間(結果として、容器本体部2の内部空間と近似していることが多い)には、水が満々に充填された状態が実現される。
【0085】
この充填状態が継続されながらも、供給口5からは供給水が供給され続ける。この結果、内部空間の容積を超える水である余分水が発生する。蓋3の排出口6は、この余分水をあふれさせる。図1のように、蓋3が容器本体部2の上方に設けられている場合には、内部空間の容積を超える水である余分水は、上方に上がってくる。上方に設けられている排出口6(開口領域を有する)は、この上方に上がってくる余分水を、そのままあふれさせる。
【0086】
このあふれさせる状態によって、排出口6(蓋3)は、余分水を外部に漏出できる。
【0087】
蓋3の排出口6から余分水が漏出されることで、蓋3が閉じられて形成される容器本体部2と蓋3との内部空間には、常に水が充填された状態が維持される。水が充填された状態が維持されることで、内部空間(容器本体部2の内部空間と把握されてもよいし、蓋3と容器本体部3とで形成される内部空間として把握されてもよい。蓋3と容器本体部2との形状によって定まる。いずれにしても、蓋3が閉じられて容器本体部2と共に形成されて、水が充填可能な空間として把握されればよい)には、空気層が形成されにくくなる。
【0088】
この空気層が形成されることが抑制された内部空間の水中で、水生生物は生活できる。空気層が無ければ、水面が揺れたり、水中そのものが揺れたりすることが抑えられる。この抑制によって、保管中はいうに及ばず、輸送中であっても水の揺れが無いことで、水生生物が内壁に衝突したり、お互いに衝突したりして傷つくことが軽減できる。もちろん、ストレスも低減できる。
【0089】
供給口5は、酸素を含有する供給水を供給する。基本的には、連続的あるいは断続的に供給口5は、供給水を供給し続ける。この供給水の供給に伴って、気体成分も容器本体部2に供給される。図1では、気体成分51が供給されている状態が示されている。
【0090】
酸素は、供給水に溶存されているが、どうしても気体成分51が発生して、これが容器本体部2に供給されることは回避できないことが多い。この気体成分51が、内部空間の空気層を形成することになる。
【0091】
このとき、供給水が継続的に供給されると共に、余分水が排出口6から排出される構成であることで、内部空間は常に水で充填される状態が維持される。気体成分51は、余分水と共に排出口6から外部に漏出されるからである。気泡などの気体成分51は、余分水があふれる状態によって、常に外部に排出される。
【0092】
すなわち、余分水は、気体成分51を合わせて外部に排出できる。この結果、内部空間に空気層が形成されるのを防止できる。空気層の原因となる気体成分51は、余分水と合わせて常に排出されるからである。
【0093】
言い換えれば、余分水が生じるということは、内部空間に空気層ができない状態であり、この余分水が発生すれば常に、この余分水が漏出される構成であるので、内部空間に水が充填された状態が維持される。結果として、空気層が形成されることが抑制される。
【0094】
図1では、イカ10が収容されている。空気層が形成されないことで、例えば水生生物用容器1が輸送に用いられる場合でも、水面や水が揺れることが抑えられる。この揺れが抑えられることにより、イカ10は、お互いに衝突したり、内壁に衝突したりすることが少なくなる。また、揺れによるストレスも感じにくくなる。
【0095】
これらの結果、イカ10を保管したり輸送したりする際に、イカ10の新鮮さや健康状態を維持でき、活き作りなどの食用にも適した状態を提供できる。
【0096】
次に各部の詳細やバリエーションについて説明する。
【0097】
(蓋の位置)
蓋3は、容器本体部2に対していずれの位置に設けられてもよいが、容器本体部2の上方に備わることが好適である。図1図2は、蓋3が容器本体部2の上方に備わっている状態を示している。図2は、本発明の実施の形態1における水生生物用容器の斜視図である。
【0098】
蓋3が容器本体部2の上部に備わることで、供給水の供給によって、余分水が生じると、上方に向かって生じる余分水が蓋3から外部に漏出される。図2では、供給口5から水が上方に移動しつつ、最後には余分水が蓋3からあふれる状態を示している。図2の矢印は、この水の移動経路を示している。矢印のように供給水が移動していきつつ、最後には余分水として、蓋3から外部に漏出する。
【0099】
ここで、供給口5が容器本体部2の側面もしくは底面、あるいは側面でも下方に備わっており、蓋3が上方に備わっていることも好適である。この場合には、供給水が下方から次第に上昇しながら余分水となって、外部に漏出するからである。
【0100】
次第に移動して漏出することで、古い水が外部に漏出して水の入れ替え効果も生じるからである。また、容器本体部2の内部での水の循環や水流が生まれやすくなり、イカ10などの水生生物の回遊を補助できて、イカ10などの水生生物を疲れさせにくくできるメリットもある。
【0101】
また、下方から上方への移動によって、余分水の漏出がより確実に行われると共に、余分水以上の水を漏出させる問題も生じにくい。結果として、内部空間に空気層を生じさせずに、水を充填させた状態を維持できる。
【0102】
(吸引装置)
図1図2に示されるように、吸引口4を介して内部空間の空気を吸引する吸引装置7が更に備わることも好適である。吸引装置7は、内部空間の空気を吸引することで、蓋3と容器本体部2との密閉状態を創り上げる。密閉状態であることで、水生生物用容器1は、内部に収容する水や水生生物を不要にこぼすことが無くなる。
【0103】
あるいは、密閉状態となることで、余分水があふれることによる空気層の形成帽子を更に確実にできる。密閉状態である内部空間に、水が充填されて余分水が気体成分1と共に漏出されることで、常に水が充填した状態となるからである。この結果、空気層ができにくい。
【0104】
また、図3のように内部空間(上述の通りの容器本体部2内部を含む内部空間)の圧力を測定する測定部8が更に備わってもよい。測定部8は、内部空間の圧力を測定して、測定結果を、吸引装置に出力する。内部空間の圧力によって、その密閉状態を計算できるからである。図3は、本発明の実施の形態1における測定部を備えた水生生物用容器の模式図である。
【0105】
吸引装置7は、測定部8の圧力測定結果に基づいて、吸引の動作と停止を切り替えることができる。あるいは、吸引動作のレベルを変化させることができる。これらの切り替えや変化によって、内部空間の圧力、すなわち密閉度を最適に維持することができる。
【0106】
なお、吸引装置7および測定部8が水生生物用容器1に常時備わっている場合には、測定部8が内部空間の圧力を常時あるいは断続的に測定し、吸引装置7が、連続的にあるいは断続的に吸引動作を行ってもよい。この結果、保管中あるいは輸送中において、内部空間の圧力と密閉度が最適に維持される。
【0107】
この最適な維持により、空気層の形成されることの抑制が、維持される。
【0108】
(供給口)
供給口5は、上述したように、酸素を含有する供給水を、容器本体部2に供給する。この供給水は、空気もしくは酸素を水に溶存(溶融)させた気液混合水である。空気であっても酸素であっても、最終的に酸素を含有する状態の気液混合水となればよい。
【0109】
このように酸素を含有する気液混合水が、供給水として供給される。供給によって、水生生物に必要な酸素が供給される。供給口5は、連続的に供給水を供給してもよいし、断続的に供給水を供給してもよい。
【0110】
また、供給口5は、供給水の量を調整しながら供給してもよい。このとき、図4のように排出口6の余分水の排出量の測定結果に基づいて、供給水の供給量を調整すればよい。
【0111】
図4は、本発明の実施の形態1における水生生物用容器の斜視図である。漏出測定部9が、排出口6からの余分水の漏出を測定する。例えば、単位時間当たりの漏出量を測定すればよい。測定結果を、供給口5に通知する。供給口5は、この測定結果に基づいて、供給水の供給量を調整すればよい。このようにして、空気層を形成せずに、最適な供給水の供給が実現できる。
【0112】
また、供給口5は、容器本体部2の側面もしくは底面に設けられることが好ましい。図2を用いて説明したように、余分水の漏出は、内部空間の容積を超える水に対して生じることが好適である。物理的かつ自然に余分水が漏出するには、排出口6を備える蓋2が、上部にあることが好ましい。自然に余分水があふれ出るからである。
【0113】
この対応関係から、供給口5は、容器本体部2の側面もしくは底面であることも好適である。
【0114】
側面もしくは底面に設けられることで、供給口5から供給される供給水が、容器本体部2の内部において、水流を作ることが可能となるからである。このとき、容器本体部2の内部に収容されている水生生物に適した水流が形成可能である。
【0115】
例えば、図2のようにイカ10であれば、容器本体部2の内部で回遊しやすい水流が作られる。供給口5が側面もしくは底面にあって供給水が供給されると、このような回遊に適した水流が作られる。
【0116】
このような水流によって、保管される水生生物の健康状態が維持される。例えば、食用であれば、食用に適した新鮮さが維持され、観賞用であれば、生物学的な健康状態が維持される。
【0117】
以上のように、実施の形態1における水生生物用容器1は、内部に空気層を形成することを抑制でき、保管や輸送する水生生物の健康や外観などの維持を実現できる。図1などに示されるイカ10の場合には、活き作りのために、漁獲地から遠く離れた消費地に最適に輸送することもできる。
【0118】
(実施の形態2)
【0119】
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、蓋3における他の工夫について説明する。
【0120】
(蓋のフィルター)
蓋3は、その内部に水生生物からの排出物を捕獲できるフィルターを備えることも好適である。図5は、本発明の実施の形態2における蓋の裏面図である。蓋3の裏面(内側)を示した模式図である。蓋3は、フィルター31を備えることも好適である。
【0121】
蓋3は、排出口6を介して、余分水を排出できる。もちろん、排出口6以外を用いて余分水を排出してもよい。このとき、排出口6から排出される余分水は、廃棄されたり、浄化されて再利用されたりする。このため、排出口6から排出される余分水は、余り汚くないことが好適である。
【0122】
水生生物は、容器本体部2内部で様々な排出物を排出する。糞などもそうであるし、イカ10などの場合には、墨や卵などを排出することがある。あるいは、身体の表面の粘膜などを排出することがある。
【0123】
このような排出物が、上述のように排出口6から余分水と一緒に排出されないほうが良い場合がある。あるいは、排出物が、いつまでも容器本体部2内部に滞留していることも好ましくない。
【0124】
水生生物用容器1は、供給水が次々と供給されながら、余分水が蓋3から漏出される。このため、容器本体部2の内部の水は蓋3に向けて入れ替わりながら、外部に漏出して入れ替わる。このため、蓋3が、これらの排出物を捕獲できれば、排出物が水に滞留し続けることを防止できる。
【0125】
蓋3は、これらの排出物を捕獲できるフィルター31を備える。フィルター31は、排泄物、粘膜、卵、墨、皮膚などの切片、鱗などの水生生物からの排出物を捕獲できる。この捕獲によって、容器本体部2の内部の水の綺麗さを維持でき易くなる。また、排出口6から漏出する余分水にも、排出物が混ざりすぎることを防止できる。
【0126】
(蓋のシーリング)
蓋3は、密閉を向上させる第1シーリングと第2シーリングを備えることも好適である。図6は、蓋の写真である。図6の写真に示されるように、蓋の内側にシーリングが設けられている。
【0127】
蓋の内側に2段階以上である第1シーリングと第2シーリングが設けられることで、蓋3と容器本体部との密閉度が高まる。ここで、第1シーリングは、容器本体部2内部の水を密閉する。第2シーリングは、容器本体部2と外部との接触部位を密閉する。更に、第3シーリングが設けられてもよい。
【0128】
このように2段階、あるいは2段階以上のシーリングが設けられることで、蓋3と容器本体部2との密閉度を高めることができる。
【0129】
(実施の形態3)
【0130】
次に実施の形態3について説明する。実施の形態3では、実施の形態1、2で説明した水生生物用容器1が輸送用に用いられる場合および閉循環路が形成される場合について説明する。
【0131】
実施の形態1、2で説明した水生生物用容器1は、輸送機器によって輸送可能である。
【0132】
図7は、本発明の実施の形態3における輸送状態にある水生生物用容器の模式図である。図7には、輸送機器20が、水生生物用容器1を積載して輸送する状態が示されている。
【0133】
輸送機器20は、例えば荷台のあるトラックである。輸送機器20の荷台に水生生物用容器1が積載されている。併せて、浄化装置30が積載されている。浄化装置30と水生生物用容器1とは、閉循環路31で接続されている。
【0134】
積載されている水生生物用容器1は、実施の形態1、2で説明した通りである。供給口5から供給水が供給されつつ、余分水が蓋3の排出口6から漏出される。この供給と漏出とが繰り返されることで、内部空間に空気層が形成されるのを抑制できる。
【0135】
この空気層発生の抑制により、輸送機器20による輸送中であっても、水面が揺れたりせずに、水生生物へのストレスを防止できる。図2図3などを用いて説明したように、吸引装置7や測定部8なども合わせて積載されれば、密閉維持やこれに合わせた空気層の形成防止が更に高まる。
【0136】
このように、空気層が形成されにくいことで、水生生物同士の衝突や内壁への衝突などが抑制される。更には、ストレスも低減できる。結果として、イカ10のようなデリケートな水生生物であっても、新鮮さや健康状態を維持して、漁獲地などから消費地などへ輸送できる。
【0137】
特に、イカ10は、温度変化、水質変化、水流変化、気圧変化、水の物理的態様の変化などの様々な変化に弱いとの特性がある。空気層が形成されないことで、このような特性に対応することができる。
【0138】
また、輸送機器20は、浄化装置30を合わせて積載し、水生生物用容器1と接続させたシステムを構築してもよい。浄化装置30は、閉循環路31で、水生生物用容器1と接続されている。浄化装置30を介して、蓋3(排出口6)と、供給口5とが接続されており、この接続が、閉循環路31となっている。
【0139】
図7においては、この閉循環路31が示されている。
【0140】
閉循環路31は、排出口6から漏出した余分水を浄化装置30に送る。浄化装置30は、送られた余分水を浄化する。浄化方法としては、公知の浄化技術がさまざまに使用されればよい。
【0141】
浄化装置30で浄化された水は、再び空気や酸素を溶解させられて、供給水として、供給口5に送り出される。供給口5から供給水を容器本体部2に再び供給される。
【0142】
このような閉循環路31によって、輸送中においても、新しい水(例えば海水など)を、外部から供給することを抑制できる。加えて、水生生物の生活に必要な酸素を含んだ水であって、品質上において問題のない水が連続的に供給される。加えて、上述の通り、容器本体部2内部では空気層が形成されにくい。
【0143】
これらの結果、新しい水を大量に供給する手間を低減しつつ、長期間の輸送によっても、水生生物の新鮮さや健康状態を維持して、輸送することができる。
【0144】
発明者は、実際に実施の形態1~3に説明した水生生物用容器1を製作して、イカを入れた状態で輸送等を行った。従来技術ではイカが死んだり傷ついたりしていたのが、これらが大きく減少したことを確認できた。これは、空気層が生じにくく、イカがぶつかったりストレスを受けたりすることが大きく軽減されたたからである。
【0145】
また、イカの新鮮さや健康状態が維持されやすくなることで、同じ容積の水生生物用容器で同じ輸送時間であっても、より大量のイカを輸送することができることも確認した。
【0146】
これらの結果、デリケートで新鮮さや健康状態が損なわれやすいイカであっても、活き作りなどの生食に適した状態で、漁獲地から離れた消費地へ輸送できる。しかも、コストを抑えることもできる。結果として、漁獲地および消費地のいずれにとっても高いメリットをもたらすことができる。
【0147】
なお、実施の形態1~3で説明された水生成物用容器は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0148】
1 水生生物用容器
2 容器本体部
3 蓋
4 吸引口
5 供給口
6 排出口
7 吸引装置
8 測定部
9 漏出測定部
10 イカ
20 輸送機器
30 浄化装置
31 閉循環路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7