(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】切欠き模様付加飾成形体およびその製法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220225BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20220225BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20220225BHJP
B65D 25/20 20060101ALN20220225BHJP
【FI】
B32B15/08 H
B44C1/17 L
B23K26/00 B
B65D25/20 N
(21)【出願番号】P 2017245036
(22)【出願日】2017-12-21
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】小松 冨士夫
(72)【発明者】
【氏名】片山 就介
(72)【発明者】
【氏名】平塚 卓
(72)【発明者】
【氏名】岡田 親典
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-052161(JP,A)
【文献】実開平06-034887(JP,U)
【文献】特開昭63-130223(JP,A)
【文献】特開2013-035057(JP,A)
【文献】特開2011-212904(JP,A)
【文献】特開2009-028986(JP,A)
【文献】特開2011-147969(JP,A)
【文献】特開2015-213953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B23K 26/00-26/70
B65D 23/00-25/56
B29C 45/00-45/24
45/46-45/63
45/70-45/72
45/74-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面部もしくは底面部からなる第1の面と、上記第1の面
の端縁から垂直方向に延設される第2の面とを備えた
凹状のベース体と、少なくとも上記ベース体の第1の面および第2の面に、直接もしくは他の層を介して形成された金属薄膜層とを備え、上記金属薄膜層が部分的に切欠かれて切欠き開口を有し、その切欠き開口からベース体もしくは他の層の表面が露出することによって切欠き模様Rが形成された加飾成形体であって、
上記切欠き模様Rの少なくとも一部が、
特定の回転中心軸Pを中心として上記ベース体を回転させたときの回転移動方向に沿う方向において、
上記ベース体の第1の面と第2の面とにまたがる配置で連続的な模様として形成されていることを特徴とする切欠き模様付加飾成形体。
【請求項2】
上記ベース体の第1の面と第2の面にまたがる配置で凹凸模様Qが形成されており、上記凹凸模様Qの少なくとも一部と重なり上記第1の面と第2の面にまたがる配置で、上記切欠き模様Rの少なくとも一部が形成されている請求項1記載の切欠き模様付加飾成形体。
【請求項3】
天面部もしくは底面部からなる第1の面と、上記第1の面
から垂直方向に延設される第2の面とを備え、少なくとも上
記第1の面および第2の面に、直接もしくは他の層を介して金属薄膜層が形成された
凹状のベース体を準備する工程と、上記金属薄膜層の所定部分にレーザ照射を行い、金属薄膜層を部分的に除去して金属薄膜層に切欠き開口を形成し、その切欠き開口からベース体もしくは他の層の表面を露出させることにより切欠き模様Rを得る工程とを備えた切欠き模様付加飾成形体の製法であって、
上記切欠き模様Rを得る工程において、
上記金属薄膜層が形成されたベース体を、
特定の回転中心軸Pを中心として回転自在に保持し、上記金属薄膜層が形成されたベース体を連続的もしくは断続的に回転させながらレーザ照射を行うことにより、少なくともその一部が
、上記回転中心軸Pを中心として上記ベース体を回転させたときの回転移動方向に沿う方向において上記ベース体の第1の面と第2の面にまたがる配置で連続的な模様となる切欠き模様Rを形成することを特徴とする切欠き模様付加飾成形体の製法。
【請求項4】
上記ベース体を準備する工程において、上記ベース体の第1の面と第2の面にまたがる配置で凹凸模様Qが形成され、少なくとも上記ベース体の第1の面および第2の面に、直接もしくは他の層を介して金属薄膜層が形成されたベース体を準備し、上記切欠き模様Rを得る工程において、上記凹凸模様Qの少なくとも一部と重なる配置で、上記切欠き模様Rの少なくとも一部を形成する請求項3記載の切欠き模様付加飾成形体の製法。
【請求項5】
上記金属薄膜層が形成されたベース体を準備する工程において、ベース体成形用の金型を用い、上記金型の、少なくとも第1の面および第2の面を形成するための賦形面に金属薄膜シートを配置した状態でベース体を成形し、上記金属薄膜シートによって金属薄膜層を得る請求項3または4記載の切欠き模様付加飾成形体の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の互いに連なる第1の面と第2の面にまたがって、連続する切欠き模様が形成された切欠き模様付加飾成形体およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料を収容したコンパクト容器や口紅容器等には、単に機能性だけでなく、見栄えがよい、商品イメージを反映したデザインである、といった意匠性も要求される。このような要求に応えるために、例えば、コンパクト容器の蓋部に、アルミニウム蒸着等によって金属薄膜層を形成して金属光沢を与えたものや、複雑な色模様が印刷された転写シートを貼着したもの等、様々な技術を駆使して、容器外観のアイキャッチ効果を高めたものが提案されている。
【0003】
また、最近は、より複雑な模様を付与するために、上記金属薄膜層や転写シートの一部をレーザ照射によって除去し、その除去部から容器の地の部分や地の部分の上に形成された着色層を露出させて文字や図柄模様を形成することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。さらに、成形体の表面に予め凹凸模様を形成し、その上に金属薄膜層等の被覆層を形成した後、その凹凸模様の凹凸に合わせて、レーザ照射により被覆層を部分的に除去して、より印象的な凹凸模様を得ることが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-216417号公報
【文献】特開2006-334122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような表面加飾は、通常、成形体の表面が平面であるか、ごくなだらかな褶曲面であることを前提としている。すなわち、加飾しようとする対象面の反りが大きかったり凹凸面であったりすると、転写シートをきれいに貼着することができず、美麗な加飾を付与することができない。また、蓋部の天面と側面というように、2つ以上の面にまたがって連続的な加飾模様を施すこともできない。
【0006】
そして、レーザ照射によって被覆層を部分的に除去して加飾模様を形成する場合も、加工面が湾曲面や凹凸面、あるいは複数の面にまたがった領域であると、どの向きの面に対してもレーザ照射を正確に行うことは困難なため、模様が部分的にぼやけたり形が崩れたりして、美麗な加飾模様を得ることはできない。仮に、2つの面にまたがる連続模様を形成するために、第1の面にレーザ照射を行い、向きを変えて第2の面にレーザ照射を行ったとしても、そのつなぎ目においてどうしても模様がずれてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、互いに配置の異なる複数の面を有する成形体において、その配置の異なる複数の面にまたがって、美麗な切欠き模様が連続的に形成された切欠き模様付加飾成形体およびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、仮想的に設定された回転中心軸Pに対し特定の配置となる第1の面と、上記第1の面に連なり上記回転中心軸Pに対し第1の面とは異なる配置となる第2の面とを備えたベース体と、少なくとも上記ベース体の第1の面および第2の面に、直接もしくは他の層を介して形成された金属薄膜層とを備え、上記金属薄膜層が部分的に切欠かれて切欠き開口を有し、その切欠き開口からベース体もしくは他の層の表面が露出することによって切欠き模様Rが形成された加飾成形体であって、上記切欠き模様Rの少なくとも一部が、上記回転中心軸Pを中心としてベース体を回転させたときの回転移動方向に沿う方向において、ベース体の第1の面と第2の面とにまたがる配置で連続的な模様として形成されている切欠き模様付加飾成形体を第1の要旨とする。
【0009】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記ベース体の第1の面と第2の面にまたがる配置で凹凸模様Qが形成されており、上記凹凸模様Qの少なくとも一部と重なり上記第1の面と第2の面にまたがる配置で、上記切欠き模様Rの少なくとも一部が形成されている切欠き模様付加飾成形体を第2の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、仮想的に設定された回転中心軸Pに対し特定の配置となる第1の面と、上記第1の面に連なり上記回転中心軸Pに対し第1の面とは異なる配置となる第2の面とを備え、少なくとも上記ベース体の第1の面および第2の面に、直接もしくは他の層を介して金属薄膜層が形成されたベース体を準備する工程と、上記金属薄膜層の所定部分にレーザ照射を行い、金属薄膜層を部分的に除去して金属薄膜層に切欠き開口を形成し、その切欠き開口からベース体もしくは他の層の表面を露出させることにより切欠き模様Rを得る工程とを備えた切欠き模付加飾成形体の製法であって、上記切欠き模様Rを得る工程において、金属薄膜層が形成されたベース体を、上記回転中心軸Pを中心として回転自在に保持し、上記金属薄膜層が形成されたベース体を連続的もしくは断続的に回転させながらレーザ照射を行うことにより、少なくともその一部が上記ベース体の第1の面と第2の面にまたがる配置で連続的な模様となる切欠き模様Rを形成する切欠き模様付加飾成形体の製法を第3の要旨とする。
【0011】
さらに、本発明は、そのなかでも、特に、上記ベース体を準備する工程において、上記ベース体の第1の面と第2の面にまたがる配置で凹凸模様Qが形成され、少なくとも上記ベース体の第1の面および第2の面に、直接もしくは他の層を介して金属薄膜層が形成されたベース体を準備し、上記切欠き模様Rを得る工程において、上記凹凸模様Qの少なくとも一部と重なる配置で、上記切欠き模様Rの少なくとも一部を形成する切欠き模様付加飾成形体の製法を第4の要旨とする。
【0012】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記金属薄膜層が形成されたベース体を準備する工程において、ベース体成形用の金型を用い、上記金型の、少なくとも第1の面および第2の面を形成するための賦形面に金属薄膜シートを配置した状態でベース体を成形し、上記金属薄膜シートによって金属薄膜層を得る切欠き模様付加飾成形体の製法を第5の要旨とする。
【0013】
なお、本発明において、「連続的な模様」とは、第1の面と第2の面にまたがる模様が切れ目なくつながった、文字通り連続した模様だけでなく、その途中で途切れる部分があっても、全体として連続的につながっているかのようにみえる一まとまりの模様も含む趣旨である。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明の切欠き模様付加飾成形体は、配置の異なる第1の面と、この第1の面に連なり第1の面とは配置の異なる第2の面とを備えたベース体と、上記ベース体の第1の面と第2の面に、直接もしくは他の層を介して形成された金属薄膜層とを備えている。そして、上記金属薄膜層が部分的に切欠かれてなる切欠き模様Rの少なくとも一部が、ベース体を特定の方向に回転させたときの回転方向に沿う方向において、上記ベース体の第1の面と第2の面にまたがる配置で、連続的な模様として形成されている。
【0015】
この構成によれば、従来、単一面での切欠き模様や、複数の面においてそれぞれ別個に独立した切欠き模様が付与されていたのに対し、少なくとも2つの面にまたがって、一続きの連続的な切欠き模様Rが付与されているため、いままで見たことのないような、全体としての統一感に溢れた、興趣に富む加飾成形体となっている。したがって、本発明の切欠き模様付加飾成形体は、市場において、アイキャッチ効果が高く、この切欠き模様付加飾成形体を用いた商品の付加価値を高めることができる。
【0016】
そして、本発明のなかでも、特に、上記ベース体の第1の面と第2の面にまたがる配置で凹凸模様Qが形成されており、上記凹凸模様Qの少なくとも一部と重なり上記第1の面と第2の面とにまたがる配置で、上記切欠き模様Rの少なくとも一部が形成されている切欠き模様付加飾成形体は、上記切欠き模様Rが形成されている部分の少なくとも一部に凹凸模様が付与されているため、凹凸模様Qと切欠き模様Rとが相俟って、立体的な陰影が生じており、より印象的な外観を有したものとなる。
【0017】
また、本発明の製法は、上記切欠き模様付加飾成形体を得る方法であって、上記切欠き模様Rを形成する工程において、金属薄膜層が形成されたベース体を、回転中心軸Pを中心として回転自在に保持し、上記金属薄膜層が形成されたベース体を連続的もしくは断続的に回転させながらレーザ照射を行うことにより、少なくともその一部が上記ベース体の第1の面と第2の面にまたがる配置で連続的な模様となる切欠き模様Rを形成するものである。
【0018】
この製法によれば、金属薄膜層が形成されたベース体を、仮想的に設定された回転中心軸Pに沿って回転させ、第1の面から第2の面にまたがって、連続的に切欠き模様Rを形成するため、切欠き模様Rを形成しようとする対象面を、常に(もしくは近似的に常に)レーザ照射方向に向けた状態で切欠き加工を行うことができる。したがって、第1の面から第2の面にまたがる連続的な模様を、模様の歪みや欠落を招くことなく形成することができ、美麗な切欠き模様Rを得ることができる。
【0019】
そして、本発明の製法のなかでも、特に、上記ベース体を準備する工程において、上記ベース体の第1の面と第2の面にまたがる配置で凹凸模様Qが形成され、少なくとも上記ベース体の第1の面および第2の面に、直接もしくは他の層を介して金属薄膜層が形成されたベース体を準備し、上記切欠き模様Rを得る工程において、上記凹凸模様Qの少なくとも一部と重なる配置で、上記切欠き模様Rの少なくとも一部を形成するものは、第1の面と第2の面にまたがる配置で連続的に凹凸模様Qと切欠き模様Rとが重なった、より印象深い模様の加飾成形体を簡単に得ることができ、好適である。
【0020】
また、それらのなかでも、特に、上記金属薄膜層が形成されたベース体を準備する工程において、ベース体成形用の金型を用い、上記金型の、少なくとも第1の面および第2の面を形成するための賦形面に金属薄膜シートを配置した状態でベース体を成形し、上記金属薄膜シートによって金属薄膜層を得るものは、ベース体の成形と金属薄膜層の形成とを、金型成形による一工程で同時に行うことができるため、製造工程を簡略化することができ、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態である蓋部を示す斜視図である。
【
図4】上記蓋部の切欠き模様を形成するために用いられる装置の一例を示す説明図である。
【
図5】(a)は上記蓋部に対する切欠き模様の形成方法の説明図、(b)は(a)の右側面図、(c)は上記切欠き模様の形成方法の説明図である。
【
図6】(a)、(b)は、ともに上記切欠き模様の形成方法の説明図である。
【
図7】(a)は本発明の他の実施の形態である蓋部を示す斜視図、(b)は上記蓋部に切欠き模様を形成する際の形態を示す斜視図である。
【
図8】(a)は上記蓋部に対する切欠き模様の形成方法の説明図、(b)は(a)の右側面図、(c)は上記切欠き模様の形成方法の説明図である。
【
図9】(a)、(b)は、ともに上記切欠き模様の形成方法の説明図である。
【
図10】(a)は本発明のさらに他の実施の形態である容器本体部に切欠き模様を形成する際の形態を示す斜視図、(b)は上記容器本体部に対する切欠き模様の形成方法の説明図、(c)は(b)の右側面図である。
【
図11】(a)は本発明の他の実施の形態において、本体部と蓋部とを一体化した状態で切欠き模様を形成する際の形態を示す斜視図、(b)は上記本体部と蓋部の一体化品に対する切欠き模様の形成方法の説明図、(c)は(b)の右側面図である。
【
図12】本発明のさらに他の実施の形態において、凹凸模様付のベース体を用いた蓋部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明をコンパクトタイプの化粧料容器の蓋部1に適用した一実施の形態を示している。この蓋部1は、平面視長方形状の、厚みの薄い凹状体であり、その展開図である
図3に示すように、天面部2と、正面部3と、背面部4と、左側面部5と、右側面部6とを備えている。なお、上記蓋部1の内側には、鏡取り付け用の段差部や化粧料容器の本体部とのヒンジ連結用の凸部等が設けられているが、これらは一般的な特徴であり、本発明の要旨とも関係がないため、説明を省略する。
【0024】
上記蓋部1は、黒色に着色された樹脂成形体[この例ではアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂]からなるベース体10の表面に、無色透明なアンダーコート層11を介して、アルミニウムを蒸着してなる金属薄膜層12が形成され、全体として金属光沢色が付与されている(
図2を参照)。
【0025】
そして、上記金属薄膜層12は部分的に切欠かれて、その切欠き開口から、透明なアンダーコート層11が露出し、その下の黒色のベース体10の表面が透けて、黒く見えている。この切欠き開口による切欠き模様Rは、幅の広いレース状のリボンと幅の狭い紐状のリボンとを組み合わせたような帯状模様からなり、その帯状模様が2筋、天面部2を斜め方向に横切るように形成されている。
【0026】
より詳しく説明すると、上記切欠き模様Rのうち、一方の帯状模様は、蓋部1の左側面部5から天面部2を斜めに横切って正面部3に到達している。また、もう一方の帯状模様は、蓋部1の背面部4から天面部2を斜めに横切って右側面部6に到達している(
図3を参照)。
【0027】
上記切欠き模様Rである2筋の帯状模様は、ともに、3つの面にまたがって延びているが、各面の境界となる角部においても、その模様が途切れることなく連続的に形成されている。したがって、あたかも本当のリボンが蓋部1にかけられているかのような、美麗な外観を呈しており、アイキャッチ効果が高い。これが、本発明の最大の特徴である。
【0028】
なお、この例では、切欠き模様Rが2筋の帯状模様として、それぞれ3つの面(第1の面→第2の面→第3の面)にまたがって延びているが、必ずしも3つの面のまたがる必要はなく、少なくとも2つの面(第1の面→第2の面)にまたがって切欠き模様Rの少なくとも一部が形成していればよい。そして、少なくとも2つの面にまたがって形成される切欠き模様Rの模様部分は、途切れることなくつながった、文字通り連続した模様だけでなく、その途中で途切れる部分があっても、全体として連続的につながっているかのようにみえる一まとまりの模様であれば差し支えない。
【0029】
例えば、2つの面の境界に面取りがなされていたり、アールが付いていたりする場合等には、その部分には模様を付さないで、途切れた形で、第1の面と第2の面にまたがる帯状模様を形成する場合もあるが、その場合も、上記帯状模様は、第1の面と第2の面にまたがって連続して延びているように視認されるため、本発明の「連続的な模様」に含まれる。
【0030】
上記蓋部1は、例えばつぎのようにして得ることができる。すなわち、まず、樹脂材料として黒色に着色されたABS樹脂を用い、蓋部1となる形状のベース体10を準備する。ベース体10の成形には、型による射出成形等、適宜の成形方法が用いられる。
【0031】
つぎに、上記ベース体10の外側面(天面部2、正面部3、背面部4、左右側面部5、6の外側を向いた面)に、アンダーコート用の無色透明な樹脂組成物を用いてアンダーコート層11を形成する。そして、上記アンダーコート層11の表面にアルミニウムを蒸着して、金属薄膜層12を形成する。そして、上記金属薄膜層12の所定部分にレーザ照射を行い、
図2に示すように、金属薄膜層12を部分的に除去して、切欠き模様Rを形成する(
図1、
図3を参照)。なお、レーザ照射による金属薄膜層12の除去加工は、レーザ装置に予め加工する位置のデータを入力しておき、それに基づいてレーザ光を断続的に走査させることによって行われる。
【0032】
上記レーザ照射は、例えば
図4に示すような装置を用い、金属薄膜層12が形成されたベース体10を回転させながら行うことが好適である。より詳しく説明すると、この装置は、ベース体10を、特定の回転中心軸Pが回転中心となる配置で保持するワーク保持部21と、上記ワーク保持部21を取り付ける基台22と、この基台22に回転動作を与えるモータ23とを備えている。そして、上記ワーク保持部21には、ベース体10の内側凹部と嵌合してベース体10を保持する支持軸21aが設けられている。
【0033】
また、この例では、レーザ照射による作業効率の点から、2個のベース体10を、回転中心軸Pに対し180°回転対称となる配置でワーク保持部21に保持し、2個連続してレーザ照射加工を行うようになっている。もちろん、ベース体10を1個だけ支持軸21aに取り付けて、1個ずつ加工しても差し支えない。
【0034】
そして、上記装置において、ワーク保持部21の上方には、レーザ装置の出力部24が配置されており、矢印で示すように、ワーク保持部21によって保持されたベース体10に向かって垂直にレーザ光が照射されるようになっている。
【0035】
上記装置を用いたレーザ照射による切欠き模様Rの形成方法について、具体的に説明する。まず、
図5(a)に示すように、金属薄膜層12が形成されたベース体10を2個、ワーク保持部21に、互いに回転中心軸Pに対し180°回転対称となる配置で取り付ける。以下、
図5(a)において奥側に配置されるベース体10と、手前側に配置されるベース体10'とを区別して説明する。加工前の初期状態において、ベース体10、10'は、それぞれの天面部2が垂直となるよう配置される。なお、
図5(b)は
図5(a)の右側面図である。
【0036】
そして、
図5(a)の配置において、奥側のベース体10の背面部4と左側面部5に向かって、レーザ照射を行いながら、ワーク保持部21を矢印Xで示すように手前に回転させ、ベース体10の天面部2が水平になる
図5(c)の配置を経由して、ベース体10の天面部2が手前側において垂直になる
図6(a)の配置まで回転させる。これにより、ベース体10は、回転中心軸Pを中心として180°回転したことになり、ベース体10の背面部4と左側面部5→天面部2→正面部3と右側面部6、という順で、連続的にレーザ照射を受け、2筋の帯状模様からなる切欠き模様Rが、回転方向(矢印Xで示す方向)に沿って連続的に形成される(
図3を参照)。
【0037】
つぎに、
図6(a)の配置において、奥側に位置するベース体10'(未加工)に対し、先のベース体10と同様、その背面部4と左側面部5に向かって、レーザ照射を行いながら、ワーク保持部21を矢印Xで示すように手前に回転させ、
図6(b)の配置を経由して、初期位置から180°回転した位置まで、回転させる。このようにして、ベース体10'に対しても、切欠き模様Rを形成することができる。
【0038】
そして、ベース体10、10'をワーク保持部21から外し、2個の蓋部1を得ることができる。得られた蓋部1は、その表面の金属薄膜層12が部分的に除去され、背面部4から天面部2を経由して右側面部6に至る一続きの帯状模様と、左側面部5から天面部2を経由して正面部3に至る一続きの帯状模様とからなる、切欠き模様Rが形成されている。そして、その切欠き模様Rが2つの面にまたがるどの角部においても、その模様が途切れることなく連続的に形成されているため、切欠き模様Rが全体として、非常に美麗な仕上がりとなっている。
【0039】
特に、上記切欠き模様Rの切欠き開口が、いずれもベース体10の回転方向X(
図3を参照)に対し特定の向きで形成されており、その切欠き模様Rが延びる方向に対して規則的であるため、切欠き模様Rの、レースを思わせる繊細な模様や、緩やかにカーブした紐の先端を思わせる模様が、いずれも鮮明に表現されており、高いアイキャッチ効果を発揮する。
【0040】
なお、上記のように、ベース体10(以下、10'も含む)を180°、連続的に回転させながらレーザ照射を行うと、切欠き模様Rのデザインによっては、1回のレーザ照射のために取り扱う加工データの量が膨大になり、1回の処理に比較的長い時間を要する場合がある。
【0041】
そこで、ベース体10を連続的に回転させながらレーザ照射を行って切欠き模様Rを一気に形成するのではなく、ベース体10を(180/n)°ずつ回転させて、n回のレーザ照射を断続的に行う(例えばベース体10を45°ずつ回転させ4回に分けて加工を行う)と、1回のレーザ照射のために取り扱う加工データの量が、180°の連続回転に比べて、その1/nとなり、短時間での加工続処理となる。ただし、レーザ照射が断続的になるため、そのレーザ照射の開始点と終了点において、切欠き模様Rがずれないように注意することが必要である。
【0042】
したがって、切欠き模様Rのデザインや要求される単位時間当たりの処理量に応じて、上記のように、n分割して断続的にレーザ照射を行うか、前述のように1回の回転動作で切欠き模様Rを一続きで連続的に形成するかを使い分けることが望ましい。
【0043】
なお、上記の例において、ベース体10の材質は、ABS樹脂に限るものではなく、成形可能な各種の合成樹脂を用いることができる。なかでも、上記ABS樹脂の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)等を用いることが、成形性、耐久性、軽量性の点で好ましい。そして、上記ベース体10の色は、黒色に限らず、容器全体のデザインに応じて選択され、透明、不透明を問わず、また有色、無色も問わない。
【0044】
また、上記の例では、金属薄膜層12を、アルミニウムの蒸着によって形成したが、金属の種類は、アルミニウムに限らず、ステンレス等、他の金属材料からなる薄膜であってもよい。また、金属薄膜層12の上に、ホログラム形成層やパール調付与層等をさらに形成したものであってもよい。これらの場合、より複雑な金属光沢色調を得ることでき、デザインの幅が広がる。そして、上記金属薄膜層12の上や、その上に形成される他の層の上に、透明なトップコート層を設けてもよい。
【0045】
さらに、上記金属薄膜層12は、必ずしも金属蒸着によって形成しなくてもよく、例えば、金属薄膜層12が形成された転写シートを利用してもよい。また、ベース体を金型成形する場合において、上記金型の賦形面に、予め金属薄膜シートを配置し、その状態でベース体を成形することにより、ベース体表面に金属薄膜層12を一体的に形成することもできる。
【0046】
また、上記の例では、ベース体10と金属薄膜層12の間に設けたアンダーコート層11を無色としたが、このアンダーコート層11を着色してもよい。その場合、切欠き模様Rにおいては、着色されたアンダーコート層11の内が、切欠き模様Rの切欠き開口から見えることになる。また、ベース体10とアンダーコート層11の内に、他の着色層や色模様層が形成され、それらの層が、透明なアンダーコート層11から透けて見える模様になっていてもよい。ベース体10として、2色以上の樹脂材料を組み合わせて色模様が表面に表れるようにしたものを用い、その色模様を切欠き模様Rの切欠き開口から見せてもよい。
【0047】
そして、上記の例において、切欠き模様Rを形成するために用いられるレーザとしては、金属薄膜層12に対し除去作用を有するものであれば、特に限定されるものではなく、各種レーザを用いることができる。例えば、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザ等が好適に用いられる。
【0048】
さらに、上記の例は、本発明を、コンパクトタイプの化粧料容器の蓋部1に適用した例であるが、例えば
図7(a)に示すようなジャータイプの化粧料容器の蓋部31に適用することもできる。この蓋部31は、天面部32と、円筒状の側面部33とで構成されており、
図1に示す蓋部1と同様、ベース体40と、透明なアンダーコート層を介してその表面に形成される金属薄膜層42とを備えている。そして、上記金属薄膜層42が部分的に切欠かれて、側面部33の片側から天面部32を横切って、側面部33の他端側まで延びる帯状の切欠き模様Rが形成されている。
【0049】
この蓋部31も、上述した蓋部1の例と同様、
図4に示す装置を用いて、表面に金属薄膜層42が形成されたベース体40を回転させながらレーザ照射を行うことにより、天面部32と側面部33にまたがる上記切欠き模様Rを形成することができる。
【0050】
より詳しく説明すると、この例では、上記金属薄膜層42が形成されたベース体40を保持するために、例えば
図7(b)に示すワーク保持部45を用いる。このワーク保持部45は、支持軸45aの先端に、ドラム状のワーク嵌合部46が設けられており、その両側に、ベース体40、40'がそれぞれ嵌合保持されるようになっている。係合ガイド47は、上記ベース体40、40'の脱落を防止するためのものであり、ワーク嵌合部46の側面に沿って2本設けられており、それぞれの先端に、ベース体40、40'の天面部32の周縁部と係合する係合爪47aが設けられている。なお、ベース体40、40'が、ワーク嵌合部46と安定した形で嵌合保持される場合、上記係合ガイド47は、必ずしも必要ではない。
【0051】
上記ワーク保持部45に、
図8(a)に示すように、金属薄膜層42が形成されたベース体40、40'を取り付け、加工前の初期状態において、ベース体40、40'の各天面部32が垂直となるよう配置する。なお、
図8(b)は
図8(a)の右側面図である。
【0052】
そして、
図8(a)の配置において、奥側のベース体40の側面部33に向かって、レーザ照射を行いながら、ワーク保持部45を矢印Xで示すように手前に回転させ、ベース体40の天面部32が水平になる
図8(c)の配置を経由して、ベース体40の天面部32が手前側において垂直になる
図9(a)の配置まで回転させる。これにより、ベース体40は、回転中心軸Pを中心として180°回転したことになり、ベース体40の側面部33の一方側→天面部32→側面部33の他方側、という順で、連続的にレーザ照射を受け、帯状の切欠き模様Rが、回転方向(矢印Xで示す方向)に沿って連続的に形成される。
【0053】
つぎに、
図9(a)の配置において、奥側に位置するベース体40'(未加工)に対し、先のベース体40と同様、その側面部33に向かって、レーザ照射を行いながら、ワーク保持部45を矢印Xで示すように手前に回転させ、
図9(b)の配置を経由して、初期位置から180°回転した位置まで、回転させる。このようにして、ベース体40'に対しても、切欠き模様Rを形成することができる。
【0054】
そして、ベース体40、40'をワーク保持部45から外し、2個の蓋部31〔
図7(a)を参照〕を得ることができる。得られた蓋部31は、その表面の金属薄膜層42が部分的に除去され、側面部33の一方側から天面部32を経由して側面部33の他方側に至る、一続きの帯状の切欠き模様Rが形成されている。そして、その切欠き模様Rが2つの面にまたがるどの角部においても、その模様が途切れることなく連続的に形成されているため、切欠き模様Rが全体として、非常に美麗な仕上がりとなっている。
【0055】
さらに、本発明は、化粧料容器の蓋部1、31に限らず、化粧料容器の本体部にも適用することができる。例えば、
図1に示す蓋部1と同様、平面視長方形状の、厚みの薄い凹状の、コンパクトタイプの化粧料容器の本体部に対しても、例えば
図4に示す装置を用いて、その側面部に、周方向に沿って連続的に延びる切欠き模様Rを形成することができる。
【0056】
より詳しく説明すると、まず、
図10(a)に示すように、上記本体部となる形状が付与され、その表面に透明なアンダーコート層を介して金属薄膜層52が形成されたベース体50を準備する。また、図示のように、略四角柱状のワーク嵌合部61が設けられたワーク保持部60を準備する。このワーク嵌合部61の先端面には、ベース体50の中皿収容用凹部と嵌合する凸部と、上記ベース体50のヒンジとなる切欠き部50aの縁部に係合する係合爪62と、蓋部開閉用の係合部に係合する係合爪63とが設けられている。なお、上記ワーク嵌合部61の先端面とベース体50の嵌合によってベース体50が安定した形で嵌合保持される場合、上記係合爪62、63は、必ずしも必要ではない。
【0057】
上記ワーク嵌合部61の先端面に、ベース体50を嵌合して保持し、その状態で、
図4に示す装置に取り付ける。そして、加工前の初期状態において、
図10(b)に示すように、ベース体50の底面部53が垂直となり、側面部54のうちの一つの面がレーザ照射を受ける面となるよう水平に配置する。なお、
図10(c)は
図10(b)の右側面図である。
【0058】
上記の配置において、側面部54のうちの一つの面に向かって、レーザ照射を行いながら、ワーク保持部60を矢印Xで示すように手前に回転させ、側面部54の配置を順次変えながら360°回転させる。これにより、側面部54の全周にわたって、連続的に延びる切欠き模様R(図示せず)を形成することができる。もちろん、レーザ照射によって形成される切欠き模様Rは、側面部54の全周にわたって延びている必要はなく、少なくとも2つの面にまたがって連続的に延びるものであればよい。
【0059】
また、
図1に示す、蓋部1に切欠き模様Rを形成する場合のように、底面部53を垂直ではなく、傾斜した配置にすることにより、側面部54から底面部53にまたがって切欠き模様Rが形成されるようにしてもよい。
【0060】
さらに、本発明を、例えば、コンパクトタイプの化粧料容器において、本体部と蓋部にまたがる切欠き模様Rが形成されたものに適用することができる。その場合、例えば
図11(a)に示すワーク保持部90を用いることが好適である。すなわち、このワーク保持部90は、蓋部となる蓋部ベース体70であってその表面に金属薄膜層72が形成されたものと、本体部となる本体部ベース体80であってその表面に金属薄膜層82が形成されたものとを閉じ合わせた状態のまま保持することができるようになっており、その状態で、
図4に示す装置に取り付けることができるようになっている。
【0061】
より詳しく説明すると、上記ワーク保持部90は、支持軸90aに、互いに閉じ合わせた蓋部ベース体70と本体部ベース体80を取り付けるための平面部91が設けられており、上記平面部91の取り付け面には、本体部ベース体80の底面部81が取り付けられるようになっている。そして、上記平面部91の対向する2つの角部に、ワーク抜け止め用の係合爪92、93が形成されている。
【0062】
上記ワーク保持部90に、蓋部ベース体70と本体部ベース体80とを閉じ合わせた状態で保持し、加工前の初期状態において、
図11(b)に示すように、2つのベース体70、80の側面部のうちの2つの面がともに垂直となり、側面部のうちの2つの面がレーザ照射を受ける面となるように配置する。なお、
図11(c)は
図11(b)の右側面図である。
【0063】
そして、
図11(b)の配置において、上記ベース体70、80の側面部に向かってレーザ照射を行いながら、ワーク保持部90を矢印Xで示すように手前に回転させ、2つの側面部のつぎに、蓋部ベース体70の天面部71にレーザ照射を行い、さらに、回転して、2つのベース体70、80の反対側の側面部にもレーザ照射を行う。このようにして、蓋部ベース体70と本体部ベース体80とを閉じ合わせた状態で、両方にまたがる切欠き模様R(図示せず)を連続的に形成することができる。もちろん、レーザ照射によって形成される切欠き模様Rは、全体が一続きに連続的に形成される必要はなく、少なくとも2つの面(第1の面と第2の面)にまたがって連続的に延びるものであればよい。
【0064】
そして、上記一連の例は、表面が平坦なベース体10(10'等を含む)に金属薄膜層12(42等を含む)を形成し、その金属薄膜層12を部分的に除去して切欠き模様Rを得るようにしたものであるが、例えば
図12に示すように、ベース体10の表面に凹凸模様Qを付与しておき、その上に、必要に応じてアンダーコート層11を介して金属薄膜層12を形成した後、切欠き模様Rを形成してもよい。
【0065】
上記凹凸模様Qは、射出成形等の成形時に付与することができるが、少なくとも2つの面にまたがって凹凸模様Qを形成し、その凹凸模様Qの少なくとも一部と重なる配置で本発明の切欠き模様Rを形成する場合は、例えば、上記切欠き模様Rを形成する場合に用いたと同様の装置(
図4を参照)を用い、特定の回転中心軸Pを中心として、ベース体10を連続的、もしくは断続的に回転させながらレーザ照射を行って、連続的に凹凸模様Qを形成することが好適である。すなわち、この方法によれば、凹凸模様の凹凸を、正確に形成することができ、微細かつ美麗な凹凸模様Qを得ることができる。
【0066】
とりわけ、上記凹凸模様Qの凹凸が、抜き勾配の関係で鮮明に得られないようなデザインである場合、複雑な金型を用いることなく、簡単にデザイン通りの凹凸模様Qを得ることができ、好適である。しかも、レーザ照射によって凹凸模様Qを形成する場合、その加工データを、切欠き模様Rを形成するときの加工データに利用することができるため、煩雑な調整を行うことなく、凹凸模様Qに対し、的確な配置で切欠き模様Rを形成することができる。
【0067】
なお、上記凹凸模様Qを形成するためのレーザとしては、樹脂に対し溶融除去作用を有するものであれば、特に限定されるものではなく、各種のレーザを用いることができる。例えば、CO2レーザ、エキシマレーザ、半導体レーザ等があげられ、なかでもCO2レーザが、制御性、仕上がり性において好適である。
【0068】
また、本発明において、切欠き模様Rを形成するためにベース体10を回転させる際の回転中心軸Pは、切欠き模様Rのデザインとベース体10の立体形状とを考慮して、その都度、仮想的に設定される。なお、回転動作によって、レーザ光源と、レーザ照射による加工面との距離が変化するが、その距離の変化の幅が、レーザ照射による焦点距離の調整範囲内となるよう設定することが重要である。
【0069】
そして、本発明は、コンパクトタイプやジャータイプの化粧料容器への加飾だけでなく、第1の面から第2の面にまたがる切欠き模様Rによる美麗な加飾が求められる、各種の樹脂成形品に広く適用可能である。例えば、携帯電話、文房具、家電製品、玩具、各種ケース等に応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、美麗な切欠き模様が2つの面にまたがって連続的もしくは断続的に形成された、興趣に富む加飾成形体およびその製法に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 蓋部
2 天面部
3 正面部
4 背面部
5 左側面部
6 右側面部
10 ベース体
12 金属薄膜層
R 切欠き模様