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特許7029794ペット用開口部開閉構造、及びペット用ケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ペット用開口部開閉構造、及びペット用ケージ
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/035 20060101AFI20220225BHJP
   A01K 1/03 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A01K1/035 A
A01K1/03 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018013569
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019129738
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137188
【氏名又は名称】株式会社凡美社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】米田 太一
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0225663(US,A1)
【文献】特開2017-158535(JP,A)
【文献】特開2008-035815(JP,A)
【文献】特開2003-250375(JP,A)
【文献】特開平09-322670(JP,A)
【文献】特開平10-059665(JP,A)
【文献】特開平08-270305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0295748(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00 - 1/12
A01K 31/00 - 31/24
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットが出入りする開口部を開閉するペット用開口部開閉構造であって、
前記開口部の上下に備えられ左右方向に延びるガイドバーと、
前記開口部の左右方向の一方を外側から覆う外側ドアと、
前記開口部の左右方向の他方を内側から覆う内側ドアと、
前記外側ドアの上下に備えられて前記ガイドバーを前記ガイドバーに沿って移動可能に外側から抱え込むスライドフックと、
前記内側ドアの上下に備えられて前記ガイドバーを前記ガイドバーに沿って移動可能に内側から抱え込むスライドフックを備え、
前記スライドフックが、前記外側ドア及び前記内側ドアの左右方向の端部に備えられるとともに、
前記外側ドアと前記内側ドアの前記スライドフックのうち左右方向の内方に位置する前記スライドフックを、対向する相手方のドアにおける左右に並ぶ前記スライドフック同士の間に位置させた
ペット用開口部開閉構造。
【請求項2】
前記スライドフックが、前記外側ドア及び前記内側ドアを構成して上下方向に延びる縦杆と、
前記縦杆に被着されて前記縦杆との間に前記ガイドバーを入れる懐部を隔てて前記縦杆と並ぶ抜け止め片を有する被着部材で構成された
請求項に記載のペット用開口部開閉構造。
【請求項3】
前記縦杆に、左右方向と直交する奥行方向に延びる横杆が形成され、
前記被着部材が前記縦杆と前記横杆に固定された
請求項に記載のペット用開口部開閉構造。
【請求項4】
正面フェンス、側面フェンス及び背面フェンスを有し、前記正面フェンスにペットが出入りする開口部を備えたペット用ケージであって、
前記正面フェンスの前記開口部に、請求項から請求項のうちいずれか一項に記載のペット用開口部開閉構造が形成された
ペット用ケージ。
【請求項5】
前記背面フェンスに背面の全体を塞ぐ背面パネルを備えた
請求項に記載のペット用ケージ。
【請求項6】
前記正面フェンス、前記側面フェンス及び前記背面フェンスで囲まれる内部空間の底に置かれる底トレーを備え、
前記正面フェンスの下端部に、前記底トレーを引き出し入れ可能にする下端開口が形成され、
前記正面フェンスと前記側面フェンスの下端部同士を連結する連結部材に、左右方向の内方に張り出して前記内部空間の底に置かれた前記底トレーにおける前記正面フェンス側の部位と干渉する張り出し部が形成された
請求項または請求項に記載のペット用ケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばペット用ケージやサークル、ゲートなどにおけるペット出入り用の開口部に形成されるペット用開口部開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ペット用ケージなどにおける開口部の開閉構造は、開き戸式、つまり扉の左右方向の一端を回転軸として開閉する方式が従来一般的であった。このほかに、特許文献1に開示されているような引き戸式、つまり開口部の面方向のうち左右方向にスライドする形式の開閉構造も提案されている。
【0003】
後者の引き戸式の場合には、前者の開き戸式の場合と比べて、開口部の手前側に扉の回動を許容する空間がなくても開口部を開閉できる利点があり、利便性が良い。
【0004】
しかし、これまでの引き戸式の開閉構造では、開口部が左右方向の一方のみに形成されており、開口部の左右方向の隣部分は、開口部を開いた時に扉が重なる閉鎖部であった。つまり片開き式であり、予め開口部に設定された左右方向の一方しか開かない構造であった。
【0005】
このため、前述のように開口部の開閉に際して手前側のスペースを必要としないため使いやすい側面があるものの、例えば落ち着きのないペットの場合など、ペットの出し入れに際して不便を感じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6209090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は利便性を高めることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段は、ペットが出入りする開口部を開閉するペット用開口部開閉構造において、前記開口部に、共に左右方向にスライド可能な左右一組のドアを備えることである。
【0009】
この構成では、左右一組のドアがそれぞれ左右にスライドして開口部を開閉して、開口部の左右方向の一方のみを開く態様はもちろん、他方のみを開く態様も、両方を開く態様もとれる左右両開きスライド開閉を可能にする。
【0010】
その一態様として、前記開口部の上下に備えられ左右方向に延びるガイドバーと、前記開口部の左右方向の一方を外側から覆う外側ドアと、前記開口部の左右方向の他方を内側から覆う内側ドアと、前記外側ドアの上下に備えられて前記ガイドバーを前記ガイドバーに沿って移動可能に外側から抱え込むスライドフックと、前記内側ドアの上下に備えられて前記ガイドバーを前記ガイドバーに沿って移動可能に内側から抱え込むスライドフックを備え、前記スライドフックが、前記外側ドア及び前記内側ドアの左右方向の端部に備えられるとともに、前記外側ドアと前記内側ドアの前記スライドフックのうち左右方向の内方に位置する前記スライドフックを、対向する相手方のドアにおける左右に並ぶ前記スライドフック同士の間に位置させた構成を採用するとよい。
【0011】
この構成では、ガイドバーとスライドフックが、外側ドアと内側ドアをそれぞれ、左右方向に延びるガイドバーに沿って移動可能に支持する。外側ドアと内側ドアの移動範囲は、スライドフックを絡めた外側ドアと内側ドアの配置によって規定され、開口部の左右方向の一方のみを開く態様と、他方のみを開く態様と、両方を開く態様をとり得る。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、開口部の左右方向にそれぞれ移動する左右一組のドア(例えば外側ドアと内側ドア)で開口部の開閉がなされ、左右のいずれか一方のみを開放することも、両方を開放することもできるので、状況に応じた使用が可能であり、利便性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ペット用ケージの開口部を開いた状態の正面図。
図2】ペット用ケージの正面図。
図3】ペット用ケージの右側面図。
図4】ペット用ケージの背面図。
図5】ペット用ケージの平面図。
図6】天井を取り除いた状態のペット用ケージの平面図。
図7】正面フェンスの正面図。
図8図7のA-A断面図。
図9】スライドフックの斜視図。
図10】外側ドアと内側ドアを分離した状態の正面フェンスの側面図。
図11】被着部材の分解斜視図。
図12】外側ドアと内側ドアを分離した状態の正面フェンスの要部平面図。
図13】ロック具の斜視図。
図14】ロック具の構造を示す断面図。
図15】内側ドアのロック具の作用を示す断面図。
図16】底トレーの一部と連結部材の正面図。
図17】連結部材の斜視図。
図18】背面フェンスの分解状態を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0015】
この発明のペット用開口部開閉構造は、例えば檻やキャリーなどとして使用されるペット用ケージ、囲いとして使用されるペット用サークル、仕切りや行動規制装置として使用されるペット用ゲートなどのようにペットが出入りする開口部を備えた装置における開口部を開閉するものであって、前述例のように様々な装置に採用され得る。
【0016】
ここでは、ペット用ケージに採用した例を説明する。
【0017】
図1に、ペット用ケージ11のペット用開口部開閉構造の作用状態を示す。この図に示すように、ペット用開口部開閉構造は、共に左右方向にスライド可能な左右一組のドアを備えた左右両スライド式である。
【0018】
まず、ペット用ケージの概略構造について説明してから、ペット用開口部開閉構造とペット用ケージのその他の構造についてする。
【0019】
図2はペット用ケージ11の正面を示す正面図、図3は右側面を示す側面図、図4は背面を示す背面図、図5は平面を示す平面図、図6は天井を取り除いた状態を示す平面図である。これらの図に示すように、ペット用ケージ11は、正面フェンス12、側面フェンス13、背面フェンス14、天井フェンス15、及びこれらで囲まれる内部空間の底に置かれる底トレー16を主に備えている。
【0020】
正面フェンス12、側面フェンス13、背面フェンス14及び天井フェンス15は、金属製の線材を縦横に組んで複数の隙間を有する方形板状に形成されている。線材の間隔(隙間の大きさ)は、一部の例外(正面フェンス12、背面フェンス14)を除いて、基本的にペットの出入りを不可能なにする大きさに設定されている。これらのフェンスは、フェンスに対して着脱可能な部材によって相互に接合されて箱状に組み立てられる。分離も可能である。
【0021】
正面フェンス12は、ペットが出入りする前述の開口部21を有している。開口部21は、ペットが出入りできる大きさであり、図1図2に示したように、正面フェンス12の左右方向の略全体に対応する大きさの方形状に形成されている。また正面フェンス12の下端部、つまり開口部21よりも下には、正面フェンス12を他のフェエンスとともに組み立てて床等の設置面17に置いた状態で、設置面17に置かれる前述の底トレー16を引き出し入れ可能にする下端開口22が形成されている。設置状態において底トレー16の出し入れができるのは、この下端開口22のみである。
【0022】
下端開口22の幅は、内部空間の略全面を覆う大きさに形成された底トレー16の幅に嵌合対応する幅に設定されている。下端開口22の上端高さは、設置状態において底トレー16の上方に隙間を有する高さであってよいが、この場合の隙間はペットの出入りを不可能にする高さに設定される。
【0023】
正面フェンス12は前述のように開口部21と下端開口22を有する方形板状であるので、図7に示したように正面フェンス12は、上端位置の上縁部23と、左右両側の左縁部24及び右縁部25と、下端位置より上であって開口部21と下端開口22の間に位置する境界部26を有することになる。また上縁部23と境界部26における左右方向の中間位置にはセンター縦杆27が備えられている。センター縦杆27は主として上縁部23と境界部26の間隔を保持する機能を果たすものである。
【0024】
このような開口部21に備えられる開閉構造は、前述したように共に左右方向にスライド可能な左右一組のドアを備えた左右両開き開閉構造である。この開閉構造は、好ましくは、開口部21の上下に備えられ左右方向に延びるガイドバー31と、開口部21の左右方向の一方を外側から覆う外側ドア32と、開口部21の左右方向の他方を内側から覆う内側ドア33と、外側ドア32の上下に備えられてガイドバー31をガイドバー31に沿って移動可能に外側から抱え込むスライドフック34と、内側ドア33の上下に備えられてガイドバー31をガイドバー31に沿って移動可能に内側から抱え込むスライドフック34を備える。
【0025】
具体的にはガイドバー31は、前述の上縁部23と境界部26の全体又は一部に形成される。図示例では、上縁部23が相互間にスライドフック34を通す間隔をあけて平行に並ぶ複数本の線材で構成され、これらの線材のうちの最も下の線材が上のガイドバー31である。同様に境界部26も平行に並ぶ複数本の線材で構成されているが、境界部26の場合には線材の間隔が狭く設定されており、境界部26を構成するすべての線材を下のガイドバー31としている。上下のガイドバー31は一直線に延びている。
【0026】
外側ドア32と内側ドア33は、上縁部23と左縁部24と右縁部25と境界部26で囲まれる開口部21を、図8に示したように開口部21の面方向に対して直交する奥行方向の、それぞれ外側と内側から挟むごとく取り付けられる。このために、外側ドア32には前述のようにガイドバー31を外側から抱え込むスライドフック34が備えられ、内側ドア33にはガイドバー31を内側から抱え込むスライドフック34が備えられる。
【0027】
図示例では、外側ドア32を右側に、内側ドア33を左側に備えた例を示す。外側ドア32と内側ドア33の大きさ、ここでは正面視の大きさは同一であり、開口部21におけるセンター縦杆27で区切られる開口部21の半分の幅よりも若干横長に形成されている。このため、外側ドア32と内側ドア33を閉じた状態において、外側ドア32と内側ドア33におけるセンター縦杆27に対応する部分に外側と内側でオーバーラップする部分を有することになる。
【0028】
外側ドア32と内側ドア33をガイドバー31に取り付けるためのスライドフック34は、図9図10に示したようにU字状である。図9では、上のガイドバー31に保持されるスライドフック34を示したが、下のガイドバー31に保持されるスライドフック34も同一の構造である。図9の(a)は、スライドフック34を斜め下から見た斜視図、(b)は斜め上から見た斜視図である。
【0029】
図10に示したようにスライドフック34は、外側ドア32及び内側ドア33を構成して上下方向に延びる縦杆35と、この縦杆35に被着される被着部材36で構成されている。
【0030】
縦杆35には、左右方向と直交する奥行方向に延びる横杆35aが折り曲げによって形成されており、前述の被着部材36は縦杆35と横杆35aに固定されている。縦杆35に加えて横杆35aを形成するのは、より簡素な構成で被着部材36を相対回転不可に固定するためである。前述のように外側ドア32のスライドフック34はガイドバー31を外側から抱え込むものであり、内側ドア33のスライドフック34はガイドバー31を内側から抱え込むものであるため、外側ドア32の横杆35aは、左右方向と直交する奥行方向を外側から内側に向けて延び、内側ドア33の横杆35aは、奥行き方向を内側から外側に向けて延びる。
【0031】
被着部材36は、縦杆35との間にガイドバー31を入れる懐部36aを隔てて縦杆35と並ぶ抜け止め片36bを有する。この抜け止め片36bと並ぶ縦杆被着部36cの長さは適宜設定されるが、この例では、縦杆被着部36cの方を抜け止め片36bよりも長く設定して、固定状態の安定と固定に際しての向きの判別容易性を確保している。
【0032】
外側ドア32と内側ドア33におけるスライドフック34の形成位置は、図7に示したように、それぞれの上下両縁のうちの左右方向の端部である。スライドフック34の左右方向における形成位置を、上下それぞれ左右方向の両端の2箇所のみとするのは、外側ドア32と内側ドア33のスライド範囲を確保するためである。
【0033】
また、外側ドア32と内側ドア33のスライドフック34のうち左右方向の内方に位置するスライドフック34は、ガイドバー31上において、対向する相手方のドア(内側ドア33または外側ドア32と)における左右に並ぶスライドフック34同士の間に位置させる。換言すれば、外側ドア32の内側ドア33寄りのスライドフック34と、内側ドア33の外側ドア32寄りのスライドフック34を、それぞれ相手方ドアの領域に入り込ませて、それらのスライドフック34をガイドバー31上で絡ませた、あるいは交差させた状態に配置する。
【0034】
このようにスライドフック34をガイドバー31上に配置すると、他の条件を無視するとすれば、外側ドア32の内側ドア33寄りのスライドフック34と、内側ドア33の外側ドア32寄りのスライドフック34はそれぞれ、相手方ドアの左右方向の両端のスライドフック34間を限度として相対移動し得る構成となる。
【0035】
図11に、スライドフック34を構成するための被着部材36の分解斜視図を示す。この図に示すように、被着部材36は互いに組み合わされる雄側部材37と雌側部材38の2個の部材からなる。
【0036】
前述したように被着部材36は、図10に示したごとく縦杆35と横杆35aに被着されて、ガイドバー31を入れる懐部36aと、縦杆35と並ぶ抜け止め片36bを形成するものであり、いわばL字形をなす縦杆35と横杆35aをU字形にする機能を有している。
【0037】
雄側部材37と雌側部材38は、被着部材36を縦杆35と横杆35aの長手方向で割った半割り形状であり、組み合わされたときに縦杆被着部36cとなる部分37a,38aと、抜け止め片36bとなる部分37b,38bの外側に、それぞれ係止部39と被係止部40を縦に並べて備えている。また、縦杆被着部36cとなる部分37a,38aと抜け止め片36bとなる部分37b,38bを連結する連結部分37c,38cの外側に、雄側部材37では嵌合突起37dを、雌側部材38では嵌合穴38dを備えている。
【0038】
このような構成の被着部材36は、図10に示したように上下左右いずれの向きにしても使用できるものであり、外側ドア32と内側ドア33のいずれにも、上下いずれの位置にも使用できる。このため、それぞれ1種類の雄側部材37と雌側部材38からなる被着部材36のみで、必要なスライドフック34をすべて構成できる。
【0039】
外側ドア32と内側ドア33を開口部21に対して組み付ける際には、縦杆35と横杆35aに被着部材36を固定する。つまり、外側ドア32と内側ドア33の横杆35aをガイドバー31の上方あるいは下方に位置させてから、図12に示したように雄側部材37と雌側部材38を、縦杆35と横杆35aに被せて互いに嵌め合わせる。被着部材36は縦杆35と横杆35aに被せた状態で固定されるので、単に嵌め合わせて固定するだけで、被着部材36は縦杆35の長手方向と周方向において位置決めがなされることになる。
【0040】
ペット用開口部開閉構造の構成要素のひとつとして、外側ドア32と内側ドア33にはそれぞれ、閉鎖状態を保持するためのロック具51が備えられる。ロック具51は、図7に示したように、外側ドア32と内側ドア33の開放先端側、つまり外側ドア32にあっては正面フェンス12の右縁部25側、内側ドア33にあっては正面フェンス12の左縁部24側の上下方向の中間位置に固定されており、右縁部25または左縁部24に形成された被係止部25a,24aに対して係脱する。被係止部25a,24aは線材を正面視コ字形に曲げて形成されている。
【0041】
図13に外側ドア32に備えられるロック具51の斜視図を示す。図13の(a)は係止直前を示し、(b)は係止状態を示している。内側ドア33に備えられるロック具51も外側ドア32のロック具51と同一構造である。この図に示すように、ロック具51は外側ドア32や内側ドア33を構成する縦に延びる2本の線材に固定されている。
【0042】
ロック具51は、図14に示したように、前述の2本の線材を前後に挟んで固定する固定部52と、固定部52の外面側に枢着された係止部53を有する。係止部53は、開放先端側の先端に係止爪53aを有しており、この係止爪53aを固定部52に向けて付勢するばね54を枢着部55に備えて構成されている。
【0043】
固定部52の長手方向における係止爪53aと反対側の端部には、固定部52の肉厚方向の中間部を延ばす延長部56が形成され、延長部56の基部に、外面側、つまり係止部53側に突出する外側段差部57と、内面側、つまり係止部53と反対側に突出する内側段差部58が形成されている。また延長部56の先には正面視円弧状の切欠き56aを有している。
【0044】
外側段差部57と内側段差部58、または延長部56は、外側ドア32と内側ドア33をスライドさせて最大限に開いたときに正面フェンス12のセンター縦杆27に当接する部分である。つまり、外側段差部57と内側段差部58、または延長部56は、外側ドア32と内側ドア33をスライドのスライド範囲に制限を加えて不都合を回避する。
【0045】
回避すべき不都合としては、内側ドア33のロック具51の損傷がある。つまり、内側ドア33のロック具51においては、図15に示したように、係止部53が位置する外面側に外側ドア32が存在するので、外側ドア32の左右方向における内側ドア33寄りの端の縦杆32aが係止部53と干渉することがある。この場合には、縦杆32aと係止部53が衝突して係止部53部分が破損してしまうおそれが生じ得る。このため、外側段差部57または延長部56は、センター縦杆27に当接した時点でロック具51の損傷に至るような衝突が生じない態様(位置・大きさ)で形成される。
【0046】
ペット用開口部開閉構造に関連した構成要素のひとつとして、図1に示したように、開口部21の下方には、前述のように底トレー16を出し入れする下端開口22が形成されている。底トレー16は、前述のように内部空間の略全面を覆う大きさであり、下端開口22は開口部21と同様に正面フェンス12の幅に略対応する幅広に形成されている。
【0047】
そして底トレー16は、正面フェンス12等の周囲の部材に対して固定されずに設置面17に置いただけの状態で使用される。このため、底トレー16と周囲の部材との間で位置関係を規定可能にすべく、正面フェンス12と側面フェンス13の下端部同士を連結する連結部材61(前述したフェンスに対して着脱可能な部材のうちのひとつ)に、左右方向の内方に張り出して内部空間の底に置かれた底トレー16における正面フェンス12側の部位と干渉する張り出し部62を形成している。
【0048】
図16に、図1における正面フェンス12と側面フェンス13の正面視左下角部の該当部分の要部を拡大して示す。この図に示すように、連結部材61の下端に適宜厚の板状をなす底板部63が形成され、この底板部63に、底トレー16の底の前方にせり出して、底トレー16を設置面17に面接触させた状態のままでは引き出せないようにする前述の張り出し部62が形成されている。
【0049】
張り出し部62は水平方向に延びる板状である。張り出し部62の張り出し方向の長さは、下端開口22の幅と底トレー16の幅を考慮して、前述したように底トレー16を設置面17に面接触させた状態のままでは引き出せないように設定される。
【0050】
図17は左右一対の連結部材61のうちの正面視左側に使用される連結部材61の斜視図であり、底板部63には張り出し部62のほかに、底トレー16の底の角部分に嵌合対応する形状の切欠き部64も形成されている。切欠き部64は張り出し部62に並んで形成されており、底トレー16の底の形状に合わせた平面視円弧状である。切欠き部64は、設置面17に置かれた底トレー16の位置を規制し、使用時において正面フェンス12等との位置関係を保持する。
【0051】
ペット用開口部開閉構造に関連した構成要素のひとつとして、正面フェンス12に対向する背面フェンス14には、図4に示したように、背面の全体を塞ぐ背面パネル71を備えている。
【0052】
背面フェンス14は、図18に示したように線材からなる長方形枠状の外枠部72と、外枠部72の内方に縦横に掛け渡される線材からなる橋渡し部73を有する。外枠部72と橋渡し部73の間隔は、背面パネル71を備えるので、前述のようにペットが出入りできない隙間を形成するものとする必要はなく、必要な剛性を得られるように適宜備えられる。
【0053】
また、外枠部72における外周部の少なくとも一部、例えば上縁部と下縁部には、板材からなる支持板部74が形成されている。支持板部74は、背面パネル71を固定する部分であり、複数の貫通穴74aを適宜位置に有している。
【0054】
背面パネル71は、例えば合成樹脂や木、紙などからなる隙間のない板状に形成されている。背面パネル71の大きさは、背面フェンス14の外枠部72の内側に嵌る大きさであり、フェンスを組むためのフェンスに対し着脱可能な部材と干渉する部位には、干渉を防止するための適宜形状の切欠き75が形成されている。
【0055】
また、背面パネル71における前述の支持板部74の貫通穴74aに対応する部位には、固定のための貫通穴76が形成される。背面パネル71と支持板部74の固定には、例えばリベットやねじなどの適宜の固定手段77(図4参照)が用いられる。背面パネル71は、設置する場所の壁面の色柄に対応する外観を有するものとしてもよい。
【0056】
以上のように構成されたペット用開口部開閉構造およびペット用ケージ11は、次のように使用される。
【0057】
開口部21の開閉は、開けたい側に位置するドア、つまり外側ドア32又は内側ドア33を左右方向にスライドさせて行う。外側ドア32と内側ドア33は同一のガイドバー31上をそれぞれガイドバー31の長手方向に沿って移動可能であり、それぞれの左右方向内方のスライドフック34を相手方ドアの範囲内に存在させているので、外側ドア32と内側ドア33の一方はもちろんのこと、両方同時にスライドさせることもできる。つまり、開口部21の左右いずれか一方のみの開放はもちろんのこと、左右両方を同時に開放することもできる。
【0058】
このため、ペットの出し入れがペットの性格やしつけ状態などの様々な状況に応じて臨機応変に行え、至便である。
【0059】
しかも、外側ドア32と内側ドア33は左右方向にスライドして開け閉めされるものであるので、開口部21の手前側に開き戸の場合のような開閉のためのスペースは不要であるので、狭い空間でもペットの出し入れが行え、この点でも利便性が高い。
【0060】
また、外側ドア32と内側ドア33をスライド可能に保持するためのスライドフック34は、外側ドア32と内側ドア33における線材の縦杆35と横杆35aでL字形をなす部分に被着部材36を固定することでU字状にする構成であるので、簡素な構成でありながらも、スライドフック34として有効な構成が得られる。つまり、スライドフック34は、外側ドア32及び内側ドア33を構成して上下方向に延びる縦杆35と、縦杆35と一体の横杆35aに被着部材36を被着させて、ガイドバー31が入る懐部36aと、ガイドバー31からの抜け止めを行う抜け止め片36bを形成する構成であるので、不測に外れることがなく安定したスライドが可能なスライドフック34が得られる。特に、縦杆35に加えて横杆35aを備えたので、被着部材36の被着は、被着部材36を構成する雄側部材37と雌側部材38を組み合わせるだけの簡単な構成と作業のみで、一体性に優れたスライドフック34が得られる。この点でも利便性が高い。
【0061】
このように使用しやすい開口部開閉構造の下方に備えられる下端開口22は、開口部21と同様に幅広に形成されており、置いただけで使用される底トレー16を出し入れ可能にするが、正面フェンス12と側面フェンス13の下端部同士を連結する連結部材61に、左右方向の内方に張り出して底トレー16の正面フェンス12側の部位と干渉する張り出し部62が形成されているので、底トレー16を内部空間に収めた状態を維持できる。
【0062】
このため、例えば正面フェンス12などの底トレー16以外の部分が不測に移動しようとしたり、逆にペットが暴れて底トレー16のみが不測に移動しようとしたりした場合でも、正面フェンス12などと底トレー16との設置状態の一体性を維持できる。この結果、正面フェンス12などと底トレー16の位置ずれによって底トレー16が機能不全に陥ったりするような不都合が生じることを回避できる。この点からもペット用ケージ11は扱いやすく、使用しやすく、利便性が高い。
【0063】
また、張り出し部62は水平方向に延びる板状であるので、底トレー16は少し傾けたり持ち上げたりするだけで出し入れができ、引っ掛かりもないので、出し入れしやすい。
【0064】
そのうえ、開口部開閉構造が左右いずれか一方でも、また両方でも開閉可能であるため、設置時において底トレー16の上に載置したりする部材、例えばシーツやトイレなどの扱いが容易であり、配置の変更なども容易であり、これらの点からも利便性が高い。
【0065】
また、開口部開閉構造を備えた正面フェンス12の対向側の背面フェンス14は、背面の全体を塞ぐ背面パネル71を備えており、背面フェンス14を室内の壁面に沿わせて設置した場合でも、室内の壁面を汚してしまうことを防止できる。このため、室内の壁面を清掃したりする作業を省略できて、結果として使用しやすいペット用ケージ11とすることができて、利便性を高めることができる。
【0066】
しかも、開口部開閉構造が左右いずれか一方でも、また両方でも開閉可能であるため、背面パネル71が汚れた場合には、開口部21を通して容易に清掃ができる。この点からも、扱いやすく、高い利便性が得られる。
【0067】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0068】
例えば、外側ドア32と内側ドア33には、閉鎖状態においてセンター縦杆27に対応する部分でオーバーラップする部分が形成されるように、開口部21の半分の幅よりも幅広に形成した例を示したが、オーバーラップする部分を有しない構造にしてもよい。この場合には、外側ドア32と内側ドア33の左右方向の内方の端に位置する線材に曲げ部分を形成するとよい。
【0069】
また、外側ドア32と内側ドア33を有する開口部開閉構造をひとつのユニットとして、このユニットを正面フェンス12などの開口部を有する部材に複数備えてもよい。
【0070】
連結部材61に形成する張り出し部62は、水平方向に延びる板状ではなく、上方に起立する部分や隆起する部分を有する形状であってもよい。
【0071】
背面フェンス14に備える背面パネル71は着脱可能であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
11…ペット用ケージ
12…正面フェンス
13…側面フェンス
14…背面フェンス
16…底トレー
21…開口部
22…下端開口
31…ガイドバー
32…外側ドア
33…内側ドア
34…スライドフック
35…縦杆
35a…横杆
36…被着部材
36a…懐部
36b…抜け止め片
61…連結部材
62…張り出し部
71…背面パネル
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