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特許7029805グラム陰性菌に対して活性を有する溶解素ポリペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】グラム陰性菌に対して活性を有する溶解素ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20220225BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220225BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A61K38/16 ZNA
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K45/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018513835
(86)(22)【出願日】2016-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 US2016052338
(87)【国際公開番号】W WO2017049233
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-09-11
(31)【優先権主張番号】62/220,212
(32)【優先日】2015-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/247,619
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514284475
【氏名又は名称】コントラフェクト コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュッフ,レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ホッフェンバーグ,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ウィッテキンド,ミカエル
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0094401(US,A1)
【文献】L-alanyl-D-glutamate peptidase [Micavibrio aeruginosavorus ARL-13]. [online]. 2014-JAN-31 uploaded. NCBI GenBank, ACCESSION No.AEP08879 (GI:347589837) [Retrieved on 2020-JUL-06]. Retrieved from the internet:<URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AEP08879.1/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 41/00-45/08
A61K 48/00
A61K 50/00-51/12
C12N 1/00-7/08
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により一つまたは複数の追加のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させるための医薬組成物であって、配列番号1のポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離された溶解素ポリペプチド及び薬剤的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により一つまたは複数の追加のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させるのに有効な量で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
液剤、懸濁剤、乳濁剤、吸入可能な散剤、エアロゾル剤、または噴霧剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
グラム陰性菌治療に適した一つまたは複数の抗生物質をさらに含む、請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
細菌感染と診断された、その危険性がある、またはその症状を示している対象において、緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により一つまたは複数の追加のグラム陰性菌種によって引き起こされる細菌感染を治療するための医薬組成物である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
一つまたは複数の追加のグラム陰性菌種が、クレブシエラ属種(Klebsiella spp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ペスト菌(Yersinia pestis)、および野兎病菌(Franciscella tulerensis)からなる群から選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
溶解素ポリペプチドが、配列番号1の配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
対象において緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により一つまたは複数の追加のグラム陰性菌種によって引き起こされる局所的または全身的な病原性細菌感染を治療するための医薬組成物である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
細菌感染と診断された、その危険性がある、またはその症状を示している対象において、グラム陰性菌感染を予防または治療するための医薬組成物であり、グラム陰性菌感染の治療に適した有効量の抗生物質と組み合わせて同時投与される、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗生物質が、セフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、セフトビプロール、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド系抗生物質、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ピペラシリン、チカルシリン、ペニシリン、リファンピシン、ポリミキシンB、およびコリスチンのうちの一つまたは複数から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
グラム陰性菌感染の治療に適した抗生物質の有効性を増強するための医薬組成物であり、前記抗生物質と組み合わせて同時投与され、前記組み合わせの投与が、抗生物質または溶解素ポリペプチドを個々に投与するよりも、前記グラム陰性菌を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させるのにより有効である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
溶解素ポリペプチドが、配列番号1の配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗生物質が、セフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、セフトビプロール、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド系抗生物質、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ピペラシリン、チカルシリン、ペニシリン、リファンピシン、ポリミキシンB、およびコリスチンのうちの一つまたは複数から選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、米国2015年9月17日に出願された仮特許出願第62/220,212号、および2015年10月28日に出願された同第62/247,619号に基づく優先権を主張するものであり;これら仮特許出願の内容はその全体が参照によって本明細書に援用されるものとする。
技術分野
本開示は全体として、グラム陰性菌によって引き起こされる感染の予防および治療に関する。より具体的には、本開示は、グラム陰性菌の増殖を予防および/または阻止することが可能な薬剤および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グラム陰性病原菌は、耐性が進化していくことにより、以前は処置が考慮されていたほぼ全ての薬剤にとっての大きな脅威となる。特に懸念されるのは、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ゲンタマイシン、セフェピム、イミペネム、メロペネムを含むがこれらに限定はされない、抗生物質等の多数の抗菌剤に対する耐性を発達し得る、グラム陰性病原菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が関与する医療関連感染である(Lister et al. Clin Microbiol Rev. 4: 582-610 (2009))。個々の薬剤への耐性に加えて、多剤耐性株の出現と罹患率の増加も、新規抗生物質の不足と合わさって、警戒の原因となっている。多剤耐性がもたらす脅威に対処するために、新規且つ有効なグラム陰性菌感染治療が明確に求められている。1つの非常に有望なアプローチは、細菌細胞壁の主要な構造成分(すなわち、ペプチドグリカン)を分解するための、溶解素、自己溶菌酵素、およびいくつかのバクテリオシンを含む、細菌性ペプチドグリカンヒドロラーゼ、またはPGH、の使用に基づくものである。PGHには、ペプチドグリカンの糖骨格を切断するグルコサミニダーゼおよびムラミダーゼ(すなわち、リゾチーム)、ステムペプチド(stem-peptide)もしくは架橋を切断するエンドペプチダーゼ、または糖およびペプチド部分を連結しているアミド結合を切断するL-アラニンアミダーゼが包含される(Bush K., Rec Sci Tech. (1):43-56 (2012); Reith J. et al. Appl Microbiol Biotechnol. (1):1-11 (2011))。
【0003】
過去14年間に亘る研究によって、PGHが、組換え発現可能であり、精製可能であり、感受性菌に外因的に加えることで迅速な溶菌が可能であることが示された。この「外因性溶菌」現象が、いくつかのグラム陽性病原性微生物に対する、現在開発中の有効な抗菌戦略の基盤となっている。しかし、グラム陽性菌と比較して、グラム陰性菌感染の治療のための溶解素の使用は、細菌細胞壁内の追加の膜層の存在が原因で限定されたものとなっている。外膜(OM)として知られている、この追加の層は、細胞壁内のペプチドグリカン基質への溶解素のアクセスを妨害する。ところが最近になって、グラム陰性菌を死滅させるいくつかの固有の能力を有する、グラム陰性菌および関連バクテリオファージ由来のいくつかのPGHが報告された(Lood et al., Antimicrob Agents Chemother, 4: 1983-91, (2015))。殺菌性のグラム陰性菌溶解素について、その活性は、アニオン性のOMへの結合を可能にし、下にあるペプチドグリカンへの移行をもたらす、天然配列内の、正電荷を持つ(且つ両親媒性の)N末端およびC末端のαヘリックスドメインに依るものであり得る(Lai et al. Microbiol Biotechnol, 90:529-539 (2011))。近年、この知識を利用して、グラム陰性の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびアシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)に対する抗菌活性を求めてカチオン性ペプチドが付加された、操作された溶解素である、「Artilysin」がつくり出された(Briers et al., Antimicrob Agents Chemother. 58(7): 3774-84 (2014))。これらのArtilysinは、溶解素と関連していない、または溶解素に由来しない、外来性のカチオン性ペプチドと融合した(グラム陽性菌に対して活性を有する)正荷電PGHからなる(Briers et al., Antimicrob Agents Chemother. 58(7): 3774-84 (2014); Briers et al. MBio. 4:e01379-14 (2014);米国特許第8,846,865号)。
【0004】
本明細書における参照文献の引用は、それらの参照文献が本開示に関連していること、またはそれらの参照文献が本開示に対する従来技術を構成するものであることの承認と解釈されないものとする。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、本開示は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離された溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有するその断片、の有効量;並びに薬剤的に許容できる担体、を含む医薬組成物であって、前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる、前記医薬組成物を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態において、溶解素ポリペプチドまたは断片は、緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させるのに有効な量で存在する。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、液剤、懸濁剤、乳濁剤、吸入可能な散剤、エアロゾル剤、または噴霧剤である。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、グラム陰性菌の処理に適した一つまたは複数の抗生物質をさらに含む。
【0009】
別の態様において、本開示は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、もしくは溶解素活性を有するその断片、をコードする核酸分子を含む単離ポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドの相補的配列、を含むベクターであって、コードされた溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる、前記ベクターを提供する。
【0010】
別の態様において、本開示は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有するその断片、をコードする核酸を含む、組み換え発現ベクターであって、コードされた溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる特性を有し、前記核酸が異種プロモーターに機能的に連結されている、前記組み換え発現ベクターを提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記核酸配列はcDNA配列である。
【0012】
さらに別の態様において、本開示は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有するその断片、をコードする核酸分子を含む単離ポリヌクレオチドであって、コードされた溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる、前記単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドはcDNAである。
【0014】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる方法であって、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、またはその活性断片の有効量を含有し、前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる特性を有する、組成物と、前記細菌を接触させることを含む、前記方法を提供する。
【0015】
関連の態様において、本開示は、緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により一つまたは複数の追加のグラム陰性菌種からなる群から選択されるグラム陰性菌によって引き起こされる細菌感染を治療する方法であって、細菌感染と診断された、その危険性がある、またはその症状を示している対象に、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、またはその活性断片の有効量を含有し、前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる特性を有する、組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0016】
別の態様において、本開示は、緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により一つまたは複数の追加のグラム陰性菌種からなる群から選択されるグラム陰性菌によって引き起こされる局所的または全身的な病原性細菌感染を治療する方法であって、対象に、配列番号1~配列番号15からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチドの有効量を含有する組成物を投与することを含み、前記ポリペプチドまたはペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる特性を有する、前記方法を提供する。
【0017】
さらに別の態様において、本開示は、細菌感染を予防または治療する方法であって、細菌感染と診断された、その危険性がある、またはその症状を示している対象に、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、またはその断片、の有効量を含有する、第一の有効量の組成物、および、グラム陰性菌感染の治療に適した第二の有効量の抗生物質、の組合せを同時投与することを含む、前記方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの他のグラム陰性菌種は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ属種(Klebsiella spp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ペスト菌(Yersinia pestis)、および野兎病菌(Franciscella tulerensis)からなる群から選択される
【0019】
いくつかの実施形態において、溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも90%同一である、または溶解素活性を有するその断片である。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%同一である、または溶解素活性を有するその断片である。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記グラム陰性菌感染は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる感染である。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記抗生物質は、セフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、セフトビプロール、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド系抗生物質、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ピペラシリン、チカルシリン、ペニシリン、リファンピシン、ポリミキシンB、およびコリスチンのうちの一つまたは複数から選択される。
【0023】
別の態様において、本開示は、グラム陰性菌感染の治療に適した抗生物質の有効性を増強するための方法であって、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む一つもしくは複数の溶解素ポリペプチド、またはその活性断片、と併せて、抗生物質を同時投与することを含み、前記組み合わせの投与が、抗生物質または溶解素ポリペプチドまたはその活性断片を個々に投与するよりも、前記グラム陰性菌を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させるのにより有効である、前記方法を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%同一である、または溶解素活性を有するその断片である。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%同一である、または溶解素活性を有するその断片である。
【0026】
別の態様における、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有するその断片であって、緑膿菌(P. aeruginosa)および、所望により、少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる、前記単離溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有するその断片。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本開示において報告される溶解素ポリペプチドGN37のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示している。図1A(左)はGN37のアミノ酸配列である。図1A(右)はGN37のヌクレオチド配列である。図1BはGN37の模式図であり、GN37が、(VanYスーパーファミリーのメンバーを含む)DD-カルボキシペプチダーゼ活性およびDL-カルボキシペプチダーゼ活性を有するPGHのPeptidase_M15_4ファミリーのメンバーであることを示している。図1Cは、GN37を、グラム陽性の部分相同体(ストレプトマイセス、GenBank配列AGJ50592.1)と、並びに、大腸菌(GenBank WP_001117823.1およびNP_543082.1、共に推定エンドリシン)、エルシニア属種(Yersinia spp.)(GenBank CAJ28446.1、確認されたエンドリシン)、およびアシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)(GenBank WP_034684053.1、推定溶解素)を含む他のグラム陰性病原菌由来の推定上または確認されたエンドリシンと、比較している多重配列アラインメントを示している。
【0028】
図2図2は、本開示において報告される溶解素ポリペプチドGN2、GN4、GN14、およびGN43のアミノ酸配列(太字フォント)およびヌクレオチド配列(通常フォント)を示している。
【0029】
図3図3は、種々のGN溶解素ポリペプチドの存在下での、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1による、コントロールに対しての、蛍光シグナルの誘導倍率(fold induction)を示す棒グラフであり、ここで蛍光は外膜の透過化を示す。
【0030】
図4図4は、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対するGN溶解素ポリペプチドの抗菌活性を示す棒グラフである。コロニー形成単位(CFU)の減少が対数スケールで示されている。
【0031】
図5図5は、GN4由来の5種の溶解素ペプチド、すなわち、PGN4、FGN4-1、FGN4-2、FGN4-3、およびFGN4-4の、アミノ酸配列を示している。
【0032】
図6図6は、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対する各GN4由来溶解素ペプチド(PGN4、FGN4-1、FGN4-2、FGN4-3、およびFGN4-4)の抗菌活性を示す棒グラフである。CFU数の減少が対数目盛に沿って示されている。
【0033】
図7図7は、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対する、プールされたGN溶解素ポリペプチドおよび本開示のGN4由来溶解素ペプチドの、ヒト血清中の抗菌活性を示す棒グラフである。CFU数の減少が対数目盛に沿って示されている。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本明細書で使用される場合、以下の用語およびその同族語は、文脈上別の意味であることが明らかでない限り、これらの用語に付与された意味を有するものとする。
【0035】
「グラム陰性菌」とは、一般的に、グラム染色においてクリスタルバイオレット染色が脱色される細菌、すなわち、グラム染色プロトコルにおいてクリスタルバイオレット色素が保持されない細菌を指す。本明細書で使用される場合、用語「グラム陰性菌」は、限定はされないが、以下の細菌種の一つまたは複数(すなわち、1つまたは組み合わせ)を記述するものであってよい:アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、アシネトバクター・ヘモリティカス(Acinetobacter haemolyticus)、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides theataioatamicron)、バクテロイデス・ディスタソニス(Bacteroides distasonis)、バクテロイデス・オバータス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデス・ブルガタス(Bacteroides vulgatus)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ヤギ流産菌(Brucella melitensis)、セパシア菌(Burkholderia cepacia)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、プレボテラ・コーポリス(Prevotella corporis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ・エンドドンタリス(Prevotella endodontalis)、ポルフィロモナス・アサッカロリティカ(Porphyromonas asaccharolytica)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・フィタス(Campylobacter fetus)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、シトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri)、エドワージエラ・タルダ(Edwarsiella tarda)、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、大腸菌(Escherichia coli)、野兎病菌(Francisella tularensis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、鼻硬腫菌(Klebsiella rhinoscleromatis)、臭鼻菌(Klebsiella ozaenae)、在郷軍人病菌(Legionella penumophila)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、モルガン菌(Morganella morganii)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、プロテウス・ペンネリ(Proteus penneri)、プロテウス・ミクソファシエンス(Proteus myxofaciens)、プロビデンシア・スチュアルティ(Providencia stuartii)、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri)、プロビデンシア・アルカリファシエンス(Providencia alcalifaciens)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、チフス菌(Salmonella typhi)、パラチフス菌(Salmonella paratyphi)、霊菌(Serratia marcescens)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ボイディ(Shigella boydii)、ソンネ菌(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、ストレプトバチルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、エンテロコリチカ菌(Yersinia enterocolitica)、ペスト菌(Yersinia pestis)、仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)、肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)、クラミドフィラ・トラコマチス(Chlamydophila trachomatis)、発疹チフスリケッチア(Ricketsia prowazekii)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、またはヘンセラ菌(Bartonella hensenae)。本開示の化合物は、病原菌増殖の予防または阻害、および、一つまたは複数の細菌感染、特に、ただし必ずしも排他的にではなく、グラム陰性菌、特に緑膿菌(P. aeruginosa)の治療に有用となる。
【0036】
薬剤との関連における用語「殺菌性の」とは、従来的には、初期の細菌集団の間で、少なくとも3log(99.9%)程度またはより良好な減少に及ぶ、細菌の死を引き起こす特性、または、細菌を殺傷することが可能な特性を有していることを意味する。
【0037】
用語「静菌性の」とは、従来的には、細菌細胞の増殖阻害を含む、細菌増殖の阻害により、初期細菌集団の間で2log(99%)以上3log未満の減少を引き起こす特性を有することを意味する。
【0038】
薬剤との関連における用語「抗菌性の」は、一般的に、静菌剤および殺菌剤の両方を包含するように使用される。
【0039】
病原体、より具体的には細菌、との関連における用語「薬剤耐性の」は、一般的に、薬剤の抗菌活性に耐性を有する細菌を指す。より具体的には、薬剤耐性は特に抗生物質耐性を指す。場合によっては、特定の抗生物質の影響を通常受け易い細菌が、その抗生物質に対する耐性を生じることで、薬剤耐性の微生物または菌株となることがある。「多剤耐性の」病原体は、単独療法としてそれぞれ使用された、少なくとも2種の抗菌薬に対する耐性を生じた病原体である。例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のある特定の菌株は、アミノグリコシド系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、フルオロキノロン系抗生物質、およびカルバペネム系抗生物質(Antibiotic Resistant Threats in the United States、2013年、アメリカ合衆国保健福祉省、疾病予防管理センター)を含む、ほぼ全てまたは全ての抗生物質に対して耐性を有することが判明している。当業者であれば、薬剤または抗生物質に対する細菌の感受性または耐性を判定する通例の実験技術を用いて、ある細菌が薬剤耐性であるかどうかを容易に判定することができる。
【0040】
用語「薬剤的に許容できる担体」は、生理的に適合性の、あらゆる溶媒、添加剤、賦形剤、分散媒、可溶化剤、被覆剤、保存剤、等張吸収遅延剤(isotonic and absorption delaying agent)、界面活性剤、および噴霧剤等を包含する。担体は、薬剤中で典型的に使用される量において、処置を受ける対象に対して有害でないという意味で、「許容可能」でなければならない。薬剤的に許容できる担体は、組成物をその使用目的に不適切にすること無く、組成物の他の成分に適合する。さらに、薬剤的に許容できる担体は、過度の有害副作用(毒性、過敏、およびアレルギー反応等)を起こさずに、本明細書で提供される主題との使用に適している。副作用は、そのリスクが組成物によって与えられる利益を凌ぐ場合、「過度」とされる。薬剤的に許容できる担体または賦形剤の非限定例には、標準的な医薬担体、例えば、リン酸緩衝食塩水、水、およびエマルジョン、例えば、水中油型乳剤およびマイクロエマルション、のいずれもが含まれる。
【0041】
凍結乾燥された溶解素ポリペプチドを含む固体組成物について、尿素またはメスナ等の賦形剤を含ませることで、安定性を向上させることができる。他の賦形剤としては、増量剤、緩衝剤、張度調整剤(tonicity modifier)、界面活性剤、保存剤および助溶剤が挙げられる。
【0042】
溶解素ポリペプチドを含む固体経口用組成物において、適切な薬剤的に許容できる賦形剤としては、限定はされないが、デンプン、糖類、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤等が挙げられる。
【0043】
液体経口用組成物において、適切な薬剤的に許容できる賦形剤としては、限定はされないが、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、および保存剤等が挙げられる。
【0044】
クリーム剤、ゲル剤、発泡剤、軟膏剤、または噴霧剤等の局所用固体組成物において、適切な賦形剤としては、限定はされないが、クリーム、セルロース系または油性基剤、乳化剤、硬化剤、レオロジー調整剤または増粘剤、界面活性剤、皮膚軟化薬、保存剤、保湿剤、アルカリ化剤または緩衝剤、および溶媒が挙げられる。
【0045】
発泡基剤の製剤に適した賦形剤としては、限定はされないが、プロピレングリコール、乳化ろう、セチルアルコール、およびステアリン酸グリセリルが挙げられる。有望な保存剤としては、メチルパラベンおよびプロピルパラベンが挙げられる。
【0046】
用語「有効量」とは、適切な頻度または投与計画で塗布または投与された場合に、細菌増殖を予防もしくは阻害するのに十分である、または、治療対象の障害(ここでは病原性微生物の増殖もしくは感染)の発症、重症度、持続期間もしくは進行を防止、低減もしくは改善する、治療対象の障害の進行を防止する、治療対象の障害の後退を引き起こす、または、抗生物質療法もしくは静菌剤療法等の別の治療法の予防効果もしくは治療効果を増強もしくは改善する、量を指す。
【0047】
用語「同時投与する」とは、単一混合物/組成物において、または、別々にではあるが、例えば同日内もしくは24時間以内の異なる時点に実質的に同時に対象に投与される用量において等の、溶解素ポリペプチドおよび抗生物質またはあらゆる他の抗菌剤の別々の逐次投与、並びに、これらの薬剤の実質的に同時の投与、を包含することが意図される。このような、溶解素ポリペプチドと一つまたは複数の追加の抗菌剤の同時投与は、最長で数日間、数週間、または数ヵ月間継続する、連続的な処置として提供され得る。さらに、用途によっては、この同時投与は、連続的または同一の時間に亘るものである必要はない。例えば、用途が例えば細菌性潰瘍または感染性糖尿病性潰瘍を治療するための局所用抗菌剤としての用途である場合、最初の抗生物質の使用の24時間以内に溶解素が最初だけ投与され、その後は、溶解素のさらなる投与無しで該抗生物質の使用が継続され得る。
【0048】
用語「対象」とは、治療を受ける対象を指し、特に、哺乳動物、植物、下等動物、単一細胞生物または細胞培養物を包含する。例えば、用語「対象」は、グラム陰性菌感染に罹り易い、またはそれに罹患した、生物、例えば原核生物および真核生物、を包含することが意図される。対象の例としては、哺乳類、例えば、ヒト、イヌ、雌ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、および遺伝子組換え非ヒト動物が挙げられる。ある特定の実施形態では、対象はヒト、例えば、全身性であるか、特定の器官または組織に限定されているかに関わらず、グラム陰性菌感染に罹患した、それに罹患する危険性がある、またはそれに罹患し易い、ヒトである。
【0049】
用語「ポリペプチド」は、用語「タンパク質」および「ペプチド」と同義的に使用され、アミノ酸残基から作られる、且つ少なくとも約30アミノ酸残基を有する、重合体を指す。前記用語は、単離型のポリペプチドだけでなく、その活性断片および誘導体(下記で定義)も包含する。用語「ポリペプチド」は、下記の溶解素ポリペプチドを含み、且つ溶解素機能を維持している、融合タンパク質または融合ポリペプチドも包含する。ポリペプチドは、天然ポリペプチド、または操作された、もしくは合成によって生成されたポリペプチドであり得る。ある特定の溶解素ポリペプチドは、例えば、酵素的もしくは化学的な切断によって未変性タンパク質から派生させる、もしくは取り出すことが可能であり、または、従来のペプチド合成法(例えば、固相合成法)もしくは分子生物学的手法(例えば、Sambrook, J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に開示される手法)を用いて調製することが可能性があり、または、活性断片をもたらしながら戦略的に切断もしくはセグメント化することが可能であり、本明細書では例えば、GN4の両親媒性ドメインを含むGN4の断片、および、同一もしくは少なくとも1つの共通の標的細菌に対する溶解素活性を保持するそのさらなる切断型が例示される。天然溶解素ポリペプチド(上記の通り、天然溶解素タンパク質の活性断片も含む)と、少なくとも80%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する、天然溶解素ポリペプチドのバリアントも包含される。
【0050】
用語「融合ポリペプチド」とは、異なる特性または機能性を有する2つのドメインまたはセグメントを典型的には有する融合型発現産物をもたらす、2つ以上の核酸セグメントの融合から生じた発現産物を指す。より具体的な意味では、用語「融合ポリペプチド」は、直接的に、またはアミノ酸もしくはペプチドリンカーを介して共有結合した2つ以上の異種ポリペプチドまたは異種ペプチドを含むポリペプチドまたはペプチドも指す。融合ポリペプチドを形成するポリペプチドは、C末端からC末端に、N末端からN末端に、またはN末端からC末端に連結されることもあるが、典型的にはC末端からN末端に連結される。用語「融合ポリペプチド」は、用語「融合タンパク質」と同義的に使用され得る。すなわち、ある特定の構造「を含むポリペプチド」というオープンエンドの表現は、融合ポリペプチド等の記載された構造よりも大きな分子を包含する。
【0051】
用語「異種の」とは、生まれが近接していない、ヌクレオチド配列、ペプチド配列、またはポリペプチド配列を指す。例えば、本開示との関連では、用語「異種の」は、例えば、増強された溶解素活性を有し得る、溶解素ポリペプチドまたはその活性断片と、カチオン性および/またはポリカチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、スシペプチド(sushi peptide)(Ding et al. Cell Mol Life Sci., 65(7-8):1202-19 (2008))、デフェンシンペプチド(Ganz, T. Nature Reviews Immunology 3, 710-720 (2003))、疎水性ペプチドおよび/または抗菌ペプチド等の、融合ペプチドまたは融合ポリペプチドが天然に通常は存在しない、2つ以上のペプチドおよび/またはポリペプチドの組み合わせまたは融合を記述するために使用され得る。2つ以上の溶解素ポリペプチドまたはその活性断片も、この定義に包含される。溶解素活性を有する融合ポリペプチドの作製にこれらを使用することができる。
【0052】
用語「活性断片」とは、単離された元のポリペプチドの一つまたは複数の機能または生物活性を保持する、本明細書で開示される完全長ポリペプチドの部分を指す。例えば、図2のGN4および図5のその断片(FGN4-1およびFGN4-2)を参照されたい。本明細書において特に重要な生物活性は、糖骨格切断によるものかペプチド結合切断によるものかに関わらず、外膜に穿入し、グラム陰性菌の被膜を加水分解する活性を有する溶解素の生物活性である。
【0053】
用語「両親媒性ペプチド」とは、親水性官能基および疎水性官能基の両方を有するペプチドを指す。疎水性アミノ酸残基と親水性アミノ酸残基とがペプチドの異なる末端に配置された二次構造が好ましい。これらのペプチドはヘリックス二次構造をとることが多い。
【0054】
用語「カチオン性ペプチド」とは、正電荷を持つアミノ酸残基を有するペプチドを指す。カチオン性ペプチドは9.0以上のpKa値を有することが好ましい。本開示との関連における用語「カチオン性ペプチド」は、ポリカチオン性ペプチドも包含する。
【0055】
用語「ポリカチオン性ペプチド」とは、本明細書で使用される場合、正電荷を持つアミノ酸残基、具体的にはリジン残基および/またはアルギニン残基、から主に構成される、合成によって生成されたペプチドを指す。正に帯電していないアミノ酸残基は、中性電荷を持つアミノ酸残基および/または負の電荷を持つアミノ酸残基および/または疎水性アミノ酸残基であり得る。
【0056】
用語「疎水性基」とは、水分子に対する親和性が低いかまたは無いが、油性分子に対してより高い親和性を有する、アミノ酸側鎖等の化学基を指す。疎水性の物質は、水または水相への溶解性が低いまたは無い傾向があり、典型的には無極性であるが、油相にはより高い溶解性を有する傾向がある。疎水性アミノ酸の例としては、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、プロリン(Pro)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、およびトリプトファン(Trp)が挙げられる。
【0057】
本開示との関連における用語「増強する」は、増強されていない場合よりも、抗菌活性の程度がより高くなることを意味する。「増強する」は、相加効果および相乗効果(超相加効果)を包含する。
【0058】
作用に関連した用語「相乗的な」または「超相加的な」は、各物質が単独で投与または塗布されることによって生じる作用を超える、2つの作用物質によってもたらされる有益な作用を意味する。一方または両方の活性成分が、閾値下(subtreshold)レベルで、すなわち、その作用物質が個々に使用された場合に、作用を生じない、または作用が非常に限定されるレベルで、使用され得る。
【0059】
用語「治療(treatment)」とは、ヒトを含む対象が、直接的または間接的に、障害を治癒する、または病原体を根絶する、または対象の状態を改善することを目的として医療扶助を受ける、あらゆるプロセス、行為、適用、療法等を指す。治療は、発生率の減少、もしくは症状の軽減、再発の排除、再発の予防、発生の予防、症状の改善、予後の改善またはこれらの組合せも指す。「治療」はさらに、対象における細菌の菌数、成長速度または病原性を減少させることで、対象における細菌感染、または器官もしくは組織もしくは環境の細菌汚染を管理または低減することも包含する。すなわち、発生率を減少させる「治療」は、対象であれ環境(environment)であれ、特定の環境(milieu)における少なくとも1つのグラム陰性細菌の増殖を阻害するのに有効である。一方、既に確立した感染の「治療」は、感染もしくは汚染の原因であるグラム陰性菌の菌数を減少させること、または、根絶も含んで、それを死滅させること、を指す。
【0060】
用語「予防する」は、細菌感染等の障害の発生、再発、拡散、発症または確立の予防を包含する。本開示が感染の完全な予防または感染の確立の予防に限定されることは意図されていない。いくつかの実施形態では、発症の遅延、または後に罹患した疾患の重症度の低減によって、予防例が構成される。本開示との関連において、罹患した疾患は、そのような病態に伴う症状がまだ顕在化していない場合、病原性微生物の検出および病原性微生物の増殖の検出のような、臨床症状と共に顕在化している疾患または潜在性症状と共に顕在化している疾患の両方を包含する。
【0061】
ペプチドまたはポリペプチドとの関連における用語「誘導体」(本開示に記載されるように、活性断片を含む)は、例えば、溶解素活性に実質的に悪影響を与えないアミノ酸、または溶解素活性を実質的に破壊しないアミノ酸以外の、一つまたは複数の化学的部分を含有するように修飾されたポリペプチドを包含することが意図される。前記化学的部分は、例えば、アミノ末端のアミノ酸残基を介して、カルボキシ末端のアミノ酸残基を介して、または内部のアミノ酸残基において、前記ペプチドに共有結合的に連結され得る。そのような修飾としては、反応性部分における保護基もしくはキャップ形成基の付加、抗体および/もしくは蛍光ラベル等の検出可能な標識の付加、グリコシル化の付加もしくは修飾、またはPEG(ペグ化)等の嵩高基(bulking group)の付加、並びに、溶解素ポリペプチドの活性に実質的に悪影響を与えない、もしくはそれを実質的に破壊しない他の変化が挙げられる。
【0062】
溶解素ポリペプチドに付加され得る一般的に使用される保護基としては、限定はされないが、t-BocおよびFmocが挙げられる。
【0063】
緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)およびmCherryを含むがこれらに限定はされない、一般的に使用される蛍光ラベルタンパク質は、細胞タンパク質の通常の機能に干渉することなく、溶解素ポリペプチドに共有結合的もしくは非共有結合的に結合可能な、または、溶解素ポリペプチドに融合可能な、小型のタンパク質である。典型的には、蛍光タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、溶解素ポリヌクレオチド配列の上流または下流に挿入される。これにより、細胞機能または結合した溶解素ポリペプチドの機能に干渉しない、融合タンパク質(例えば、溶解素ポリペプチド::GFP)が産生されることとなる。
【0064】
タンパク質へのポリエチレングリコール(PEG)の結合は、多くの医薬用タンパク質の循環系内半減期を延長するための方法として使用されている。従って、溶解素ポリペプチド誘導体との関連において、用語「誘導体」は、一つまたは複数のPEG分子の共有結合によって化学修飾された溶解素ポリペプチドを包含する。ペグ化溶解素ポリペプチドは、生物学的活性および治療活性を保持しながら、ペグ化されていない溶解素ポリペプチドと比較して延長された循環系内半減期を示すことが期待される。
【0065】
溶解素ポリペプチド配列に関連した、用語「パーセントアミノ酸配列同一性」は、本明細書においては、配列をアラインメントし、必要であればギャップを導入して最大のパーセント配列同一性を達成した後の、特定の溶解素ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一の候補配列内のアミノ酸残基の割合として定義され、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と見なされない。パーセントアミノ酸配列同一性を決定することを目的としたアラインメントは、当業者の技術の範囲内である様々な方法で、例えば、BLASTまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公的に利用可能なソフトウェアを用いて、達成することができる。2つ以上のポリペプチド配列は、0%から100%の同一性、またはそれらの間のあらゆる整数値の同一性をとり得る。本開示との関連において、2つのポリペプチドは、アミノ酸残基の少なくとも80%(好ましくは少なくとも約85%、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%)が同一である場合に、「実質的に同一」である。本明細書に記載される用語「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、溶解素ペプチドにも当てはまる。すなわち、用語「実質的に同一な」は、本明細書に記載の単離された溶解素ポリペプチドおよび溶解素ペプチドの変異型、切断型、融合型、または他の配列修飾型、並びにその活性断片、並びに、基準ポリペプチドとの比較において実質的な配列同一性(例えば上記の一つまたは複数の方法によって測定された場合に、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性)を有するポリペプチドを包含する。
【0066】
2つのアミノ酸配列は、アミノ酸残基の少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約85%、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%)が同一である、または保存的置換を表す場合に、「実質的に相同」である。本開示の溶解素ポリペプチドの配列は、溶解素ポリペプチドのアミノ酸のうちの一つまたは複数、または数個、または10%以下、または15%以下、または20%以下が、類似または保存的アミノ酸置換で置換されており、得られた溶解素が、本明細書で開示される溶解素ポリペプチドの活性、抗菌作用、および/または細菌特異性の特性を有している場合に、実質的に相同である。本明細書に記載される「実質的に相同な」の意味は、溶解素ペプチドにも当てはまる。
【0067】
用語「吸入可能な組成物」とは、日常呼吸または補助呼吸(例えば、気管気管支内投与、経肺投与、および/または経鼻投与による)中の、またはそれと協同した、気道への直接送達用に製剤化されている本開示の医薬組成物を指し、例えば、限定はされないが、微粒化、噴霧化、乾燥粉末化および/またはエアロゾル化された製剤が挙げられる。
【0068】
用語「生物膜」とは、表面に付着し、それら自身の合成物である水和した重合体マトリックス中に凝集した、細菌を指す。生物膜は、表面上で細胞が互いに接着し合っている、微生物の凝集物である。これらの接着細胞はしばしば、自ら産生した細胞外高分子物質(EPS)のマトリックス中に包埋される。生物膜EPSは、スライム(スライムと記載されたもの全てが生物膜というわけではないが)またはプラークとも称され、細胞外DNA、タンパク質、および多糖類から通常は構成される重合体の集塊である。
【0069】
ある特定の細菌に対する使用に適切である抗生物質という文脈における用語「適切な」は、耐性が後に生じたとしても、それらの細菌に対して有効であることが判明した抗生物質を指す。
【0070】
用語「抗菌ペプチド」(AMP)は、実質的に全ての生物において見つけることができる、広範な、短鎖の(一般に、6~50アミノ酸残基長)、カチオン性の、遺伝子がコードする、ペプチド抗生物質の一員を指す。様々なAMPが様々な特性を示し、このクラスの多くのペプチドが、抗生物質としてだけでなく、細胞透過性ペプチドのテンプレートとしても、集中的に研究されている。少数の共通の特徴(例えば、カチオン性、両親媒性およびサイズの短さ)を共有しているが、AMPの配列は大きく異なっており、少なくとも4つの構造グループ(αヘリックス構造、βシート構造、拡張(extended)構造およびループ構造)が、確認されたAMP高次構造の多様性に対応していると提唱されている。同様に、抗生物質としてのいくつかの作用機序が提唱されており、例えば、これらペプチドの多くは第一標的を細胞膜とするが、一方、他のペプチドについては第一標的が細胞質侵入およびコアとなる代謝機能の破壊であることが示された。AMPは、十分に濃縮されることで、特異的な標的結合が無くとも、例えば、ほとんどのAMPの場合のように膜における細孔の形成によって、協同的な活性を示し得る。しかし、この現象はリン脂質二重層モデルにおいて確認されただけであり、一部の例では、6リン脂質分子当たり1ペプチド分子ほどの膜中のAMP濃度が、これらの事象が起こるために必要とされた。これらの濃度は、完全膜飽和に達してはいないにしろ、それに近い。AMPの最小阻止濃度(MIC)は典型的には低マイクロモルの範囲にあるため、当然ながら、これらの閾値とAMPのインビボにおける重要性との関連性に関しての懐疑が生じた(Melo et al., Nature Reviews Microbiology, 7, 245-250 (2009))。
【0071】
デフェンシンは、低分子の、カチオン性の、高システイン型および高アルギニン型の抗菌ペプチドからなる巨大なファミリーであり、脊椎動物および無脊椎動物の両方に存在する(Wilmes, M. and Sahl, H., Int J Med Microbiol. ;304(1):93-9 (2014))。デフェンシンはシステインの間隔パターンに応じて5つのグループに分類される:植物デフェンシン、無脊椎動物デフェンシン、αデフェンシン、βデフェンシン、およびθデフェンシン。αデフェンシン、βデフェンシン、およびθデフェンシンは主に哺乳類に存在する。αデフェンシンは、好中球および腸管上皮に存在するタンパク質である。βデフェンシンは、最も広く分布しており、多くの種類の白血球および上皮細胞によって分泌されるθデフェンシンは現在のところほとんど見つかっておらず、例えばアカゲザルの白血球で発見された。デフェンシンは細菌、真菌、並びに多くのエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスに対して活性を有する。しかし、細菌の十分な死滅に必要な濃度がたいてい高く、すなわち、マイクロモルの範囲である。生理的な塩条件、二価陽イオンおよび血清の存在下では、多くのペプチドの活性が制限され得る。さらに、デフェンシンは本開示の生成物および方法に望ましくない溶血活性をしばしば有する。
【0072】
スシ(Sushi)ペプチドは、補体制御タンパク質(CCP)モジュールまたはショートコンセンサスリピート(SCR)としても知られている、スシドメインの存在を特徴とする。スシドメインは、様々な補体タンパク質および接着タンパク質に存在しており、これらのタンパク質は、短い連結配列が挟まれたスシドメインの直列配列を含有する。スシドメインは、およそ60残基に及ぶコンセンサス配列を含有しており、このコンセンサス配列は、分子内ジスルフィド結合に関与する4つのインバリアントなシステイン残基、高度に保存されたトリプトファン残基、並びに保存されたグリシン残基、プロリン残基および疎水性残基を含有する(Kirkitadze, M. and Barlow, P., Immunol Rev., 180:146-61 (2001))。スシドメインはタンパク質間相互作用およびタンパク質リガンド相互作用に関与することが知られている。スシドメインを含有するペプチドは抗菌活性を有することが示されている(Ding, JL. and Ho, B. Drug Development Research, 62:317-335 (2004))。
【0073】
カテリシジンは、カチオン性宿主防御ペプチド(cationic host-defence peptide)(CHDP)(抗菌療法として提唱されたペプチドクラス)および感染に対する生得的な宿主防御の重要な構成要素としても知られている、多機能性の抗菌ペプチドである。殺菌性に加えて、これらのペプチドは、炎症および免疫を調節する能力を有する性質を持つ。最近、外来性ヒトカテリシジンLL-37の送達が、マウスの急性緑膿菌肺感染モデルにおいて感染に対する防御的な炎症誘発性反応を増強することが判明し、カテリシジンが介在する生体内細菌排除の増強が示された(Beaumont et al. PLoS One. 2;9(6):e99029 (2014))。すなわち、カテリシジン(cathelidicin)によって、直接的な殺菌活性の非存在下で肺からの細菌排除が効果的に促進され、同時に、感染およびペプチド暴露の両方を必要とし、且つ天然のカテリシジン産生とは無関係である、初期の好中球反応も増強された。さらに、カテリシジン欠損マウスは初期の細胞炎症反応は損なわれなかったが、感染に対する後期の好中球反応がこれらの動物では起こらず、緑膿菌(P. aeruginosa)の排除が著しく損なわれた。これらの知見によって、体内の肺感染におけるカテリシジンの調節特性の重要性が示され、感染性環境に特有の、防御的肺内好中球反応の誘導におけるカテリシジンの重要な役割が明らかにされた。Beaumont, P.E. et al, PLoS One. 2014; 9(6): e99029. Published online 2014 Jun 2. doi: 10.1371/journal.pone.0099029。
実施形態
【0074】
本開示はグラム陰性菌に対する新規抗菌剤に関する。具体的には、本開示は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等のグラム陰性菌に対して活性を有する溶解素ポリペプチド(その活性断片を含む)に関する。そのような溶解素ポリペプチドの例は、配列番号1~配列番号10のセット内のアミノ酸配列を有するものである。天然配列は、以前に配列決定されたが解明が部分的であるファージゲノムから、バイオインフォマティクス技術によって同定された。そのように同定された配列のいくつかは推定エンドリシンと注釈付けされていたが、以前は、これらの配列を有するポリペプチドにはいかなる機能も決定的には帰属させられていなかった。さらに、推定エンドリシン(endolysisn)として注釈付けされたいくつかの配列は、合成後または発現後に、溶解素活性を全く持たなくなるか、または標的病原体に対して不活性になる。単離、発現および試験の後、バイオインフォマティクスによって特定された配列のほんの一握りだけが、実際にグラム陰性菌溶解素機能を有する。さらに、溶解素の活性断片が特定され、グラム陰性菌溶解素活性を有する、配列が改変された活性なペプチドおよびポリペプチドが作製された。さらに、本開示においては、そのような配列改変ペプチド(papetide)としては、溶解素活性を維持する、確認された天然グラム陰性菌溶解素ポリペプチドの断片、並びに、天然溶解素ポリペプチドまたはその活性断片と80%以上(例えば、少なくとも85%、少なくとも(at lestt)90% 少なくとも85%または少なくとも98%)の配列同一性を有するそのバリアントが含まれ、実際には、非同一の部分には、天然アミノ酸残基および非天然(合成)アミノ酸残基の両方による置換が含まれ得る。本発明者らは、これらのポリペプチドのC末端のαヘリックスドメインがグラム陰性菌溶解素活性に重要であると判断し、その活性を正確に定めるための研究を行ったが、本明細書で開示される天然溶解素またはその断片に対して80%以上(例えば、85%、90%、95%または98%または99%)同一の配列を有するいかなるペプチドも、緑膿菌(P. aeruginosa)、並びにクレブシエラ属種(Klebsiella spp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ペスト菌(Yersinia pestis)、および野兎病菌(Franciscella tulerensis)等の他の菌を含む、グラム陰性菌に対する活性について、迅速に試験することが可能である。このような試験は、例えば実施例2、3、4、または仮想例1に示されている教示に従って行うことができる。当然ながら、試験の手順およびプロトコルはそれ自体、これらの実施例における手順およびプロトコルに限定されず、抗細菌剤の、実際には抗微生物(antimicronbial)剤の有効性を評価するための当業者に公知のあらゆる方法であってよい。
【0075】
一実施形態では、本開示は、配列番号1~配列番号10に対して少なくとも80%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する有効量の溶解素ポリペプチドを対象に投与することを含む、グラム陰性菌によって引き起こされた、対象における細菌感染の治療法を提供する。前記細菌は、以下からなる群から選択され得る:アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、アシネトバクター・ヘモリティカス(Acinetobacter haemolyticus)、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides theataioatamicron)、バクテロイデス・ディスタソニス(Bacteroides distasonis)、バクテロイデス・オバータス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデス・ブルガタス(Bacteroides vulgatus)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ヤギ流産菌(Brucella melitensis)、セパシア菌(Burkholderia cepacia)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、鼻疽菌(Burkholderia mallei) フソバクテリウム属(Fusobacterium)、プレボテラ・コーポリス(Prevotella corporis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ・エンドドンタリス(Prevotella endodontalis)、ポルフィロモナス・アサッカロリティカ(Porphyromonas asaccharolytica)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・フィタス(Campylobacter fetus)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、シトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri)、エドワージエラ・タルダ(Edwarsiella tarda)、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、大腸菌(Escherichia coli)、野兎病菌(Francisella tularensis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、鼻硬腫菌(Klebsiella rhinoscleromatis)、臭鼻菌(Klebsiella ozaenae)、在郷軍人病菌(Legionella penumophila)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、モルガン菌(Morganella morganii)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、プロテウス・ペンネリ(Proteus penneri)、プロテウス・ミクソファシエンス(Proteus myxofaciens)、プロビデンシア・スチュアルティ(Providencia stuartii)、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri)、プロビデンシア・アルカリファシエンス(Providencia alcalifaciens)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、チフス菌(Salmonella typhi)、パラチフス菌(Salmonella paratyphi)、霊菌(Serratia marcescens)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ボイディ(Shigella boydii)、ソンネ菌(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、ストレプトバチルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、エンテロコリチカ菌(Yersinia enterocolitica)、ペスト菌(Yersinia pestis)、仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、発疹チフスリケッチア(Ricketsia prowazekii)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chafeensis)、およびヘンセラ菌(Bartonella hensenae)。例えば、特定の実施形態では、前記グラム陰性菌感染は、以下からなる群から選択される細菌 引き起こされる感染である:アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、セパシア菌(Burkholderia cepacia)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogenes)、大腸菌(Escherichia coli)、野兎病菌(Francisella tularensis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、在郷軍人病菌(Legionella penumophila)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、モルガン菌(Morganella morganii)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、チフス菌(Salmonella typhi)、霊菌(Serratia marcescens)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ボイディ(Shigella boydii)、ソンネ菌(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、および肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)。特定の実施形態では、前記グラム陰性菌感染は、以下からなる群から選択される細菌のうちの一つまたは複数によって引き起こされる感染である:ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、チフス菌(Salmonella typhi)、赤痢菌属種(Shigella spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ肺炎、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、セラチア属種(Serratia spp.) プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、モルガン菌(Morganella morganii)、プロビデンシア属種(Providencia spp.)、エドワージエラ属種(Edwardsiella spp.)、エルシニア属種(Yersinia spp.)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、塹壕熱菌(Bartonella quintana)、ブルセラ属種(Brucella spp.)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、バークホルデリア属種(Burkholderia spp.)、モラクセラ属種(Moraxella spp.)、野兎病菌(Francisella tularensis)、在郷軍人病菌(Legionella pneumophila)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)、バクテロイデス属種(Bacteroides spp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)、およびクラミジア属種(Chlamydia spp.)。
【0076】
(i)本開示の溶解素ペプチドおよび溶解素ポリペプチドが、グラム陰性菌のOMに穿入してそれらの基質に到達し、係る細菌を死滅させ、細菌コロニーの増殖速度を実質的に減少させることが可能であるという事実、並びに、(ii)緩衝液および培地中でOMに貫入するよう操作された、Artilysin等の他の溶解素ポリペプチドによる同様の観察に基づいて、本開示の溶解素ポリペプチドが一つまたは複数のグラム陰性菌感染の治療に有用であることが期待される。さらに、Artilysinはヒト血清によって阻害されると思われることから、本発明の溶解素ポリペプチドが、(もしあれば)カチオン性ペプチドおよび他の抗菌ペプチドとの融合の前であってさえ、グラム陰性の標的に対して活性を有するという事実は、Artilysinに優る利点となり得る。Deslouches, B. et al, Activity of the De Novo Engineered Antimicrobial Peptide WLBU2 against Pseudomonas aeruginosa in Human Serum and Whole Blood: Implications for Systemic Applications, Antimicrobial Agents & Chemotherapy, Aug. 2005, p. 3208-3216 Vol. 49, No 8; Brogden N. et al, Int J Antimicrob Agents. 2011 September; 38(3): 217-225. doi:10.1016/j.ijantimicag.2011.05.004; Svenson, J. et al, J. Med. Chem., 2007, 50 (14), pp 3334-3339。
【0077】
一実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、とりわけ、気道感染(RTI)、特に、限定はされないが、下気道感染を指し得る。別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、性行為感染を指し得る。さらに別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、尿路感染を指し得る。別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、慢性気管支炎の急性増悪(ACEB)を指し得る。さらなる別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、嚢胞性線維症(CF)患者の気道感染を指し得る。さらなる別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、急性中耳炎または新生児敗血症(neonatal septisemia)を指し得る。さらなる他の実施態様では、用語「感染」および「細菌感染」は、急性副鼻腔炎を指し得る。一実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、薬物耐性菌、さらには多剤耐性菌によって引き起こされる感染を指し得る。別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、カテーテル関連敗血症を指し得る。さらに別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、クラミジアを指し得る。別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、市中肺炎(CAP)または院内気道感染を指し得る。さらなる別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、複雑性皮膚・皮膚組織感染を指し得る。さらなる他の実施態様では、用語「感染」および「細菌感染」は、非複雑性皮膚・皮膚組織感染を指し得る。一実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、心内膜炎を指し得る。別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、発熱性好中球減少症を指し得る。さらなる別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、淋菌性子宮頸管炎を指し得る。さらに別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、淋菌性尿道炎を指し得る。別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、院内感染性肺炎(HAP)を指し得る。さらなる別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、骨髄炎を指し得る。さらなる他の実施態様では、用語「感染」および「細菌感染」は、敗血症を指し得る。一般的なグラム陰性病原菌および関連する感染が本開示の表1に列挙されている。これらの実施形態、並びに表1に列挙された病原体および疾患は、本方法の使用例として働くことが意図されており、限定を意図するものではない。
【0078】
【表1】
【0079】
一実施形態では、本開示は、ヒト疾患において最も重要なグラム陰性菌である、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、並びに、クレブシエラ属種(Klebsiella spp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ペスト菌(Yersinia pestis)、および野兎病菌(Franciscella tulerensis)からなる群から選択されるもの等の、所望により少なくとも1種の追加のグラム陰性菌によって引き起こされる、対象におけるグラム陰性菌感染の治療法を提供する。
【0080】
一実施形態では、本開示は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる、対象におけるグラム陰性菌感染の治療法を提供する。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(P. aeruginosa)は、環境内に遍在する、オキシダーゼ陽性、グラム陰性、桿状の生物である。緑膿菌(P. aeruginosa)は、土壌、水、並びに植物および動物の組織を含むがこれらに限定されない、多数の生息環境で生育可能である。緑膿菌(P. aeruginosa)は、日和見菌であり、嚢胞性線維症、がん、熱傷、糖尿病性潰瘍または免疫系不全を有する者等の、感染し易い個人において局所性疾患または全身性疾患を引き起こすことが可能な、最も問題となる院内病原体の1つである。特に病院では、緑膿菌(P. aeruginosa)は多くの一般に使用される抗生物質に対して耐性となっている。
【0081】
米国疾病予防管理センターおよび米国院内感染サーベイランスシステムからのデータによれば、緑膿菌(P. aeruginosa)は、2番目に多い院内肺炎の原因であり、3番目に多い尿路感染の原因であり、4番目に多い手術部位感染の原因であり、血流から7番目に高頻度で単離される病原体であり、且つ、全体的に全部位から5番目に多く単離されるものである(Solh and Alhajhusain, J Antimicrob Chemother. 64(2):229-38 (2009))。さらに、緑膿菌(P. aeruginosa)は、入院患者に肺炎を引き起こす、最も多い多剤耐性(MDR)グラム陰性病原菌である(Goossens et al., Clin Microbiol Infect. 980-3 (2003))。
【0082】
緑膿菌(P. aeruginosa)によって引き起こされる感染の非限定的な例としては、以下が挙げられる:A)院内感染:1.特に嚢胞性線維症患者および人工呼吸器装着患者における気道感染;2.菌血症および敗血症;3、創傷感染、特に火傷被害者の創傷感染;4.尿路感染;5.侵襲性デバイスにおける術後感染;6.汚染薬液の静脈内投与による心内膜炎;7.後天性免疫不全症候群患者、がん化学療法を受けている患者、ステロイド療法を受けている患者、造血器腫瘍を有する患者、臓器移植患者、腎置換療法を受けている患者、および重度の好中球減少症を伴う他の状態を有する患者における感染、B)市中感染:1.市中気道感染;2.髄膜炎;3.汚染水によって引き起こされる外耳道の毛包炎および感染;4.高齢者および糖尿病患者における悪性外耳道炎;5.小児踵骨(caleaneus)骨髄炎;6.汚染されたコンタクトレンズと一般に関連した眼感染;7.手が頻繁に水に曝される人における爪感染等の皮膚感染;8.胃腸管感染;並びに9.筋骨格(muscoskeletal)系感染。
【0083】
いくつかの実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、緑膿菌(P. aeruginosa)および/または別のグラム陰性菌に感染する危険性がある対象の治療に使用される。緑膿菌(P. aeruginosa)または他のグラム陰性菌に感染する危険性がある対象には、例えば、限定はされないが、嚢胞性線維症患者、好中球減少症患者、壊死性腸炎患者、火傷被害者、創傷感染患者、並びにより一般的には病院内の患者、具体的には、外科患者、並びに、カテーテル、例えば中心静脈カテーテル、ヒックマンデバイス、または電気生理学的心臓用デバイス、例えばペースメーカーおよび埋め込み式除細動器等の埋め込み式医療用デバイスを用いて治療中の患者が含まれる。緑膿菌(P. aeruginosa)を含むグラム陰性菌による感染の危険性がある他の患者群には、限定はされないが、関節全置換(例えば人工膝関節全置換または人工股関節置換)等の埋め込み式プロステーシスを有する患者が含まれる。
【0084】
一実施形態では、前記対象はグラム陰性菌による呼吸器感染を患っている。別の実施形態では、前記対象は嚢胞性線維症を患っており、各活性成分は吸入可能組成物、経口用組成物または頬側用組成物に含まれて独立して投与される。さらに具体的な実施形態では、前記対象は嚢胞性線維症と関連したグラム陰性菌による呼吸器感染を患っており、各活性成分は吸入可能組成物に含まれて同時投与される。一実施形態では、前記対象は緑膿菌(P. aeruginosa)または別のグラム陰性菌に感染した創傷を有している。本開示の方法によって治療可能な創傷の一例は、感染した熱傷または感染の危険性がある熱傷である。そのような熱傷としては、熱傷、低温熱傷、化学熱傷、電気熱傷、または放射線熱傷が挙げられる。
【0085】
さらに、緑膿菌(P. aeruginosa)および他のグラム陰性菌はしばしば、病院内の食物、洗面台、蛇口、モップ、および呼吸用装置にコロニーを形成する。感染が、媒介物との接触を介して、または汚染した食物および水の摂取によって、患者から患者に広がる(Barbara Iglewski, Medical Microbiology, 4th edition, Chapter 27, Pseudomonas, 1996)。
【0086】
一実施形態(emdodiment)において、本開示の溶解素ポリペプチドは、他の治療法と組み合わせた、対象におけるグラム陰性菌感染(または特徴付けされていない感染)の治療に使用される。そのような所望による併用療法は、抗生物質もしくは他の殺菌剤もしくは静菌剤等の追加の治療薬、および/または病原体表面の異なる成分を標的とする(例えば、外膜の異なる成分を標的とする)別の溶解素を、治療を必要とする患者に同時投与することを含み得る。抗生物質に加えて、殺菌剤および静菌剤としては、限定はされないが、溶解素、非生体用消毒剤(disinfectatnt)、生体用消毒剤(antiseptics)、および保存剤が含まれる。これらのいずれも、所望により、本開示の溶解素ポリペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0087】
抗菌性の非生体用消毒剤としては、限定はされないが、次亜塩素酸塩、クロラミン、ジクロロイソシアヌレートおよびトリクロロイソシアヌレート、湿塩素(wet chlorine)、二酸化塩素、過酢酸、過硫酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウムおよび尿素・過酸化水素、ヨードポピドン(iodpovidone)、ヨードチンキ、ヨウ化非イオン性界面活性剤、エタノール、n-プロパノールおよびイソプロパノールおよびその混合物;2-フェノキシエタノールおよび1-フェノキシプロパノールおよび2-フェノキシプロパノール、クレゾール、ヘキサクロロフェン、トリクロサン、トリクロロフェノール、トリブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、Dibromolおよびその塩、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムまたは塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、グルコプロタミン(glucoprotamine)、オクテニジン二塩酸塩、オゾンおよび過マンガン酸溶液、コロイド状銀、硝酸銀、塩化水銀、フェニル水銀塩、銅、硫酸銅、酸化-塩化銅(copper oxide-chloride)、リン酸、硝酸、硫酸、アミド硫酸、トルエンスルホン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化カルシウムが挙げられる。
【0088】
本開示の溶解素ポリペプチドと生体用消毒試薬との組み合わせは、抗生物質との組み合わせよりも、グラム陰性菌に対してより高い有効性を提供し得る。生体用消毒試薬としては、限定はされないが、デーキン液(Daquin's solution)、次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸カリウムの溶液、ナトリウムベンゼンスルホクロラミド(sodium benzenesulfochloramide)溶液、ある種のヨード製剤、例えばヨードポビドン、尿素・過酸化水素溶液およびpH緩衝過酢酸溶液としての過酸化物、消毒性添加剤を含むまたは含まないアルコール、弱有機酸、例えばソルビン酸、安息香酸、乳酸およびサリチル酸、いくつかのフェノール化合物、例えばヘキサクロロフェン、トリクロサンおよびDibromol、並びに陽イオン活性化合物、例えばベンザルコニウム、クロルヘキシジン、メチルイソチアゾロン、α-テルピネオール、チモール、クロロキシレノールオクテニジンの溶液が挙げられる。
【0089】
本開示の溶解素は、標準ケア用抗生物質(standard care antibiotics)と、または最後の手段として抗生物質と、個別に、または当業者の技能の範囲内である種々の組合せにおいて、同時投与することができる。緑膿菌(P. aeruginosa)活性に対して使用される従来の抗生物質としては、アミノグリコシド系抗生物質、チカルシリン、ウレイドペニシリン系抗生物質、セフタジジム、セフェピム、アズトレオナム、カルバペネム系抗生物質、シプロフロキサシン、レボフロキサシン等(表2)が挙げられる。本開示の溶解素ポリペプチドは、緑膿菌(P. aeruginosa)および表2に列挙される他の菌の治療に使用される抗生物質と同時投与され得る。クレブシエラ属種(Klebsiella spp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ペスト菌(Yersinia pestis)、および野兎病菌(Franciscella tulerensis)等の、他のグラム陰性菌に対する抗生物質の列挙は、緑膿菌(P. aeruginosa)に対しての上記のものと同様となり、関連する特定の細菌に対する標準ケア用抗生物質、または最後の手段である抗生物質となる(特定の菌株が標準ケア用抗生物質に耐性を有する場合)。
【0090】
同時投与される追加の所望による治療薬としては、限定はされないが、チカルシリン-クラブラン酸塩の組合せ、ピペラシリン-タゾバクタムの組合せ、セフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ポリミキシンB、およびコリスチン(ポリミキシンE)等の、上記および表2に列挙された抗生物質が挙げられる。創傷の治療用に、同時投与される治療薬として、限定はされないが、プロピレングリコールヒドロゲル(例えば、SOLUGEL(登録商標)(ジョンソン・エンド・ジョンソン社));生体用消毒剤;抗生物質;および副腎皮質ステロイドが挙げられる。
【0091】
【表2】
【0092】
ポリミキシンBおよび近縁のコリスチン(ポリミキシンE)等の抗菌性ペプチドは、緑膿菌(P. aeruginosa)細菌感染の治療のための抗菌剤として使用されている。すなわち、一実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、ポリミキシンBおよび/またはコリスチンと同時投与されることとなる。
【0093】
本開示の溶解素ポリペプチドと抗生物質との組み合わせにより、効果的な新規の抗菌療法が提供される。一実施形態では、本開示の溶解素ポリペプチドと一つまたは複数の抗生物質の同時投与は、溶解素ポリペプチドもしくは抗生物質のいずれかもしくは両方の用量および含量を減らして、並びに/または、増強された殺菌活性および静菌活性によって頻度および/もしくは処置時間を減らして、抗生物質耐性の危険性を減らして、および有害な神経学的副作用もしくは腎臓副作用(例えば、コリスチンもしくはポリミキシンBの使用と関連した副作用)の危険性を減らして、実行され得る。以前の研究により、全累積コリスチン用量が腎障害と関連していることが示されたが、このことは、溶解素ポリペプチド(polypepide)による併用療法を用いた、投与量の減少または治療期間の短縮が、腎毒性の発生率を減少させ得ることを示唆している(Spapen et al. Ann Intensive Care. 1: 14 (2011))。本明細書で使用される場合、用語「減少した用量」とは、同一活性成分による単独療法と比較した、組み合わせにおける1つの活性成分の用量を指す。「処置時間」についても同様である。いくつかの実施形態において、組み合わせにおける溶解素または抗生物質の用量は、各々の単独療法と比較して、最適以下、またはさらには閾値下であり得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、本開示の溶解素ポリペプチドは、薬剤耐性グラム陰性菌によって引き起こされる感染等の細菌感染の治療に使用される。別の実施形態では、本開示の溶解素ポリペプチドは、単独または一つもしくは複数の抗生物質と共に、多剤耐性グラム陰性菌によって引き起こされる感染等の細菌感染の治療に使用される。本開示との関連における薬剤耐性グラム陰性菌または多剤耐性グラム陰性菌には、限定はされないが、緑膿菌(P. aeruginosa)が含まれる。
【0095】
実際には、感染は一般に、グラム陽性菌種とグラム陰性菌種との混合による、多菌性である(Citron et al. J Clin Microbiol. 45(9): 2819-2828 (2007))。いくつかの実施形態において、グラム陰性菌に対して活性を有する本開示の溶解素ポリペプチドは、所与の対象の感染に応じて、グラム陰性菌に対して有効な抗生物質とだけでなく、グラム陽性菌の治療に適した一つもしくは複数の抗生物質および/または一つもしくは複数の他の溶解素と組み合わせても、使用することができる。
【0096】
一実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、グラム陰性菌の細胞壁を破壊または分解することができる。好ましい実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、緑膿菌(P. aeruginosa)の細胞壁を破壊または分解することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、本開示は、一つまたは複数の、本明細書で開示される溶解素ポリペプチドまたはその薬剤的に許容できる組成物を、グラム陰性菌の増殖が阻害されるような量および条件において、対象に投与する、または特定の環境に送達することを含む、一つまたは複数のグラム陰性菌の増殖を阻害する方法を提供する。
【0098】
別の実施形態において、本開示は、一つまたは複数の本明細書で開示される溶解素ポリペプチドを、他の臨床的に意義のある剤と組み合わせて、対象に投与することを含む、緑膿菌(P. aeruginosa)および/または一つもしくは複数の他のグラム陰性菌の増殖を阻害する方法を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態において、本開示は、一つまたは複数の本開示の溶解素ポリペプチドに外膜を接触させる(細菌を暴露する)ことにより、緑膿菌(P. aeruginosa)および/または一つもしくは複数の他のグラム陰性菌の外膜の透過性を増加させるための方法を提供する。
【0100】
別の実施形態において、本開示は、抗生物質、殺菌剤、生体用消毒剤等の他の臨床的に意義のある剤と組み合わせた、本明細書で開示される溶解素ポリペプチドに、外膜を接触させることにより、緑膿菌(P. aeruginosa)および/または一つもしくは複数の他のグラム陰性菌の外膜の透過性を増加させるための方法を提供する。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示は、一つまたは複数の本明細書で開示される溶解素ポリペプチドを目的の抗生物質と併せて対象に投与することにより、グラム陰性菌に対する一つまたは複数の抗生物質の抗生物質活性を、単独で使用された前記抗生物質の活性と比較して、増強する方法を提供する。前記組み合わせは、細菌に対して有効であり、抗生物質に対する耐性の克服および/または抗生物質のより低い用量での使用を可能にすることで、ポリミキシンBの腎毒性作用および神経毒性作用等の望ましくない副作用を低減する。
【0102】
本開示の化合物は、単独で、または、例えばEDTA、TRIS、乳酸、ラクトフェリン、ポリミキシン、クエン酸のような金属キレート剤を含むがこれらに限定はされない、グラム陰性菌の外膜の追加の透過化剤(permeabilizing agent)と組み合わせて、使用することができる(Vaara M. Microbiol Rev. 56(3):395-441 (1992))。
【0103】
一実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは化学修飾されている。化学修飾としては、限定はされないが、化学的部分の付加、新しい結合の生成、および化学的部分の除去が挙げられる。化学修飾は、アミノ末端またはカルボキシル末端だけでなく、アミノ酸側鎖を含む、溶解素ポリペプチドのどの位置においても生じ得る。そのような修飾が溶解素ポリペプチドの2つ以上の部位に存在し得る。さらに、溶解素ポリペプチドの一つまたは複数の側鎖、または末端基が、当業者に公知の保護基によって保護されていてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、溶解素ポリペプチドは、持続時間を延長させる部分の結合を含有する。一実施形態では、前記持続時間延長部分はポリエチレングリコールである。持続時間が延長された治療用ポリペプチドを得るために、ポリエチレングリコール(「PEG」)が使用されている(Zalipsky, S., Bioconjugate Chemistry, 6:150-165 (1995); Mehvar, R., J. Pharm. Pharmaceut. Sci., 3:125-136 (2000))。PEG骨格[(CHCH-O-)、n:単量体の反復数]は可動性且つ両親媒性である。溶解素ポリペプチド等の、別の化学成分に結合された場合、PEG重合鎖は係る溶解素ポリペプチドを免疫応答および他のクリアランス機構から保護し得る。その結果、ペグ化は、薬物動態を最適化し、生物学的利用能を増大し、免疫原性並びに投与量および/または投与頻度を減少させることで、溶解素ポリペプチドの有効性および安全性を向上させ得る。「ペグ化」とは、PEG分子の、別の化合物、例えば溶解素ポリペプチドとの結合を指す。
【0105】
一実施形態において、本開示は、医療用デバイス、病院内および他の健康に関する建物内または公共の建物内の床、階段、壁および調理台等の表面、並びに手術室、救急室、病室、診療所、および浴室等における設備の表面の、グラム陰性菌汚染の予防、低減、治療、または除去に関する。本明細書に記載の組成物を用いて保護できる医療用デバイスの例としては、限定はされないが、管類および他の表面に出ている医療用デバイス(surface medical device)、例えば、導尿カテーテル、粘膜採取用(mucous extraction)カテーテル、吸引カテーテル、臍帯用カニューレ、コンタクトレンズ、子宮内避妊器具、腟内用デバイスおよび小腸内用デバイス、気管内チューブ、気管支鏡、歯科補綴および歯科矯正用デバイス、手術用器具、歯科用器具、管類、歯科用送水管、生地、紙、インジケーターストリップ(例えば、紙製インジケーターストリップまたはプラスチック製インジケーターストリップ)、接着剤(例えば、ヒドロゲル接着剤、ホットメルト接着剤、または溶剤型接着剤)、包帯、組織包帯剤(tissue dressing)または組織治癒デバイス、並びに密封用貼付剤、並びに医療分野で使用されるあらゆる他の表面に出ているデバイスが挙げられる。前記デバイスは、様々な種類の電極、外部プロステーシス、固定用テープ、圧迫包帯、およびモニターを備えていてもよい。医療用デバイスには、挿入部位または埋め込み部位付近の皮膚等の、挿入部位または埋め込み部位に配置され得る、且つ、グラム陰性菌によるコロニー形成が起こり易い少なくとも1つの表面を含み得る、いかなるデバイスも含まれ得る。
【0106】
一実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、溶解素ポリペプチドを含む本開示の組成物を食品に添加することを含む、グラム陰性菌汚染からの食品の保護に使用される。そのような食品の例は、肉製品(貯蔵法の施された肉製品、および/または貯蔵法の施されていない新鮮な肉製品、および/または調理した肉製品)、サラダおよび他の野菜製品、飲料および乳製品、半加工食品、例えばインスタント食品および乾燥食品等の簡便な食品である。
【0107】
ヒトに対して細菌が提起する問題の1つに、生物膜の形成がある。生物膜の形成は、表面上で微生物細胞が互いに付着し合い、細胞外高分子物質(EPS)のマトリックス中に包埋された場合に起こる。生体高分子(例えば、多糖類、核酸およびタンパク質)および栄養分に富んだ、そのような保護された環境においての微生物の増殖は、微生物のクロストーク(cross-talk)の増強および病原性の増大をもたらす。生物膜はいかなる支持環境にも発生し得るため、生物膜形成を予防または除去できる方法または組成物が必要とされている。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、肺嚢胞性線維症の粘液栓子、汚染したカテーテル、コンタクトレンズ等の、種々の生体表面上および非生体表面上で生物膜を形成することが示されている(Sharma et al. Biologicals, 42(1):1-7 (2014))。すなわち、一実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、細菌性生物膜、特に緑膿菌(P. aeruginosa)が形成した、または緑膿菌(P. aeruginosa)の寄与により形成された細菌性生物膜の、予防、防除、破壊、および治療のために使用され得る。
【0108】
本開示の溶解素ポリペプチドは、インビボにおいて、例えば、対象における細菌感染を治療するために、並びに、インビトロにおいて、例えば、培養液中の細胞(例えば、細菌)を処理して細胞培養物の細菌汚染レベルを排除または低減するために、使用され得る。
【0109】
溶解素ポリペプチドの生産法
一実施形態において、本開示は、一つまたは複数の溶解素ポリペプチドをコードする溶解素ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を適切な条件下で培養して前記ポリペプチドを発現させることを含む、一つまたは複数のグラム陰性菌、好ましくは緑膿菌(P. aeruginosa)、を死滅させる、またはその増殖を阻害する本開示の溶解素ポリペプチドの生産法を含む。
【0110】
高レベルの溶解素ポリペプチド発現を得るために、典型的には、溶解素ポリヌクレオチド配列を適切な発現ベクター内の発現制御配列に機能的に連結し、該発現ベクターを用いて適切な宿主細胞を形質転換することによって、溶解素ポリヌクレオチド配列が発現される。そのような、本開示の溶解素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の発現制御配列への機能的な連結には、該ポリヌクレオチド(DNA)配列の上流への、正しい読み枠での、開始コドンATGの提供も含まれる。概して、宿主におけるポリヌクレオチドの維持、増殖もしくは発現、および/またはポリペプチドの発現に適したいかなる系またはベクターも、溶解素ポリペプチドの発現に使用されてよい。適切なDNA/ポリヌクレオチド配列は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manualに記載の手法等、種々の周知且つ常用の手法のいずれによっても発現系内に挿入されてよい。さらに、簡便な単離法を可能にするために、例えば、c-myc、ビオチン、ポリヒスチジン等、タグを溶解素ポリペプチドに付加することもできる。そのような発現系のためのキットは市販されている。
【0111】
種々様々な宿主/発現ベクターの組合せが、本開示の溶解素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(polynucleotude)配列の発現に使用され得る。多数の適切なベクターが当業者に公知であり、市販されている。適切なベクターの例は、Sambrook et al, eds., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd Ed.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory (2001)に記載されている。そのようなベクターとしては、特に、染色体ベクター、エピソーマルベクターおよびウイルス由来ベクター、例えば、細菌プラスミド由来ベクター、バクテリオファージ由来ベクター、トランスポゾン由来ベクター、酵母エピソーム由来ベクター、挿入因子由来ベクター、酵母染色体因子由来ベクター、バキュロウイルス、パポーバウイルス、例えば、SV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルス、等のウイルス由来のベクター、並びに、これらの組合せに由来するベクター、例えばプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝因子に由来するベクター、例えばコスミドおよびファージミド、が挙げられる。さらに、これらのベクターは、本開示の溶解素ポリペプチドの恒常的発現または誘導性発現を可能にし得る。より具体的には、適切なベクターとしては、限定はされないが、SV40および公知の細菌性プラスミドの誘導体、例えば、大腸菌プラスミドcolEl、pCRl、pBR322、pMB9およびこれらの誘導体、RP4、pBAD24およびpBAD-TOPO等のプラスミド;ファージDNA、例えば、ファージλの多数の誘導体、例えば、NM989、並びに他のファージDNA、例えば、M13および糸状一本鎖ファージDNA;2Dプラスミド等の酵母プラスミドまたはその誘導体;真核細胞において有用なベクター、例えば昆虫または哺乳類細胞において有用なベクター;プラスミドおよびファージDNAの組合せに由来するベクター、例えば、ファージDNAまたは他の発現制御配列を使用するように改変されたプラスミド;等が挙げられる。上記のベクターの多くが、ニュー・イングランド・バイオラボ社(New England Biolabs)、アドジーン社(Addgene)、クロンテック社(Clontech)、ライフテクノロジーズ社(Life Technologies)等の販売会社から市販されており、その多くが適切な宿主細胞も提供している。
【0112】
さらに、ベクターは種々の調節エレメント(発現レベルを調節するためのプロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、エンハンサー、種々のシスエレメントを含む)を含む場合があり、宿主細胞に応じて構築される。溶解素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現させるために、種々様々な発現制御配列(機能的に連結したポリヌクレオチド配列の発現を制御する配列)のいずれも、これらのベクター内で使用されてよい。有用な制御配列としては、限定はされないが、SV40ウイルス、CMVウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオーマウイルスまたはアデノウイルスの初期プロモーターまたは後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、LTR系、ファージλの主要なオペレーター領域およびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼ(例えば、Pho5)のプロモーター、酵母接合因子のプロモーター、細菌内発現用の大腸菌(E. coli)プロモーター、並びに原核細胞もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーター配列、並びにこれらの種々の組合せが挙げられる。
【0113】
本開示の溶解素ポリペプチドの発現においては、種々様々な宿主細胞が有用である。本開示の溶解素ポリペプチドの発現に適した宿主細胞の非限定的な例としては、周知の真核生物宿主および原核生物宿主、例えば、大腸菌株、シュードモナス属菌株、バチルス属菌株、ストレプトマイセス属菌株、酵母等の真菌、並びに、動物細胞、例えばCHO細胞、Rl.l細胞、B-W細胞およびL-M細胞、アフリカミドリザル腎細胞(例えば、COS1、COS7、BSC1、BSC40、およびBMT10)、昆虫細胞(例えば、Sf9)、並びに組織培養におけるヒト細胞および植物細胞が挙げられる。発現用宿主はいかなる公知の発現用宿主細胞であってもよいが、好ましい実施形態では、発現用宿主は大腸菌株の1つである。これらには、限定はされないが、Top10(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))、DH5α(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社)、XL1-Blue(アジレント・テクノロジー社(Agilent Technologies))、SCS110(ストラタジーン社(Stratagene))、JM109(プロメガ社(Promega))、LMG194(ATCC社)、およびBL21(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社)等の市販の大腸菌株が含まれる。宿主系として大腸菌(E. coli)を使用するいくつかの利点は以下である:高速の増殖機構(最適な環境条件下での倍加時間が約20分間)(Sezonov et al., J. Bacteriol. 189 8746-8749 (2007))、高密度培養の達成が容易、外来DNAによる形質転換が容易且つ高速、等。プラスミド選択および菌株選択を含む、大腸菌(E. coli)におけるタンパク質発現に関する詳細は、Rosano, G. and Ceccarelli, E., Front Microbiol., 5: 172 (2014)で詳細に論じられている。
【0114】
溶解素ポリペプチドおよびそのベクターの効率的な発現は、最適な発現シグナル(転写レベルおよび翻訳レベルでの両方)、正しいタンパク質フォールディング、および細胞増殖の特徴等、種々の因子に依存している。ベクターを構築するための方法および構築された組換えベクターを宿主細胞に導入するための方法については、当該技術分野において公知の従来法を利用することができる。全てのベクター、発現制御配列、および宿主が、本開示の溶解素ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の発現にとって等しく良好に機能するわけではないと理解されているが、当業者であれば、必要以上の実験を行うことなく適切なベクター、発現制御配列、および宿主を選択して、本開示の範囲から逸脱することなく所望の発現を達成することができる。いくつかの実施形態において、本発明者らは発現レベルと発現されたポリペプチドの活性との間に相関性があることを見出し、すなわち、特に大腸菌(E.coli)発現系において、適度な発現レベル(例えば約1~10mg/リットル)によって、大腸菌(E.coli)においてより高いレベル(例えば約20~約100mg/リットル)で発現された溶解素ポリペプチドよりも、活性レベルがより高い溶解素ポリペプチドが産生され、このより高い発現レベルによって、完全に不活性なポリペプチドが産生される場合があった。
【0115】
本開示の溶解素ポリペプチドは、組換え細胞培養物から、周知の方法によって回収および精製することができ、その周知の方法としては、硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン交換クロマトグラフィーまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーが挙げられる。高速液体クロマトグラフィーも溶解素ポリペプチドの精製に用いることができる。
【0116】
あるいは、本開示の溶解素ポリペプチドの産生に使用されるベクター系は無細胞発現系であってもよい。種々の無細胞発現系が市販されており、例えば、限定はされないが、プロメガ社、ライフテクノロジーズ社、クロンテック社等から入手可能なものが挙げられる。
【0117】
上記のように、タンパク質の産生および精製についても、たくさんの選択肢がある。以下に、本発明者らは、大腸菌(E.coli)における本開示の溶解素ポリペプチドの産生に使用することができる一般的なプロトコルを、非限定的な例として挙げる。タンパク質の産生および精製において考慮されるべき適切な方法および戦略の例は、Structural Genomics Consortium, Nat Methods., 5(2): 135-146 (2008)に詳細に記載されている。
例示的なプロトコル:
1. 溶解素ポリペプチドをコードするDNAを全遺伝子合成によって作製する。
2. 次にDNA断片を、pBAD24(アラビノースにより誘導可能)等の、好ましくは誘導ベクターにライゲーションし、それで大腸菌(E.coli)細胞(例えば、TOP10、インビトロジェン社、カールズバッド、カリフォルニア州CA)を形質転換させる。
3. 形質転換した細菌を、溶原培地(LB)、ベクター誘導剤(例えば、0.2%アラビノース)および選択(selsctable)マーカー(例えば、50μg/mlカルベニシリン)等のブロスを添加した寒天板上に広げ、好ましくは一晩、37℃でインキュベートする。
4. 溶解素プラスミドを含有する大腸菌(E.coli)Top10細胞の単一クロース(single close)培養物を、選択マーカーを添加したブロス(例えば、50μg/mlカルベニシリンを添加したLB)中で好ましくは一晩、37℃で増殖させる。この培養物は、選択マーカーを添加した新鮮培地(例えば、カルベニシリンを添加したLB)で例えば1:200希釈され、例えばさらに3時間インキュベートされる場合がある。誘導剤(inducible agent)(例えば、0.2%L-アラビノース)の添加により溶解素発現を誘導し、細胞を好ましくは一晩、30℃でインキュベートする。
5. 細胞ペレットを緩衝液(例えば、20mM Tris、pH6.8)に再懸濁し、ホモジナイズする。
6. タンパク質の可溶化および精製(一つまたは複数のクロマトグラフ法を使用)を、適切なイオン強度の一価の塩、例えば、300~500mM相当のイオン強度のNaCl、を含有する十分に緩衝化された溶液中で実行する。
7. 固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を最初の精製工程として使用することが好ましい。追加の精製が必要な場合、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)を、さらなる段階において使用することができる。必要であれば、イオン交換クロマトグラフィーを最終工程として使用することができる。
【0118】
溶解素ポリペプチドの同定
本開示は、対数期の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)株PAO1に対して強力な抗菌活性を有する5種の溶解素の同定(実施例1および実施例2)に基づいている。本開示の溶解素ポリペプチドの同定のために、本発明者らは、抗菌性についてのスクリーニングと併せて、バイオインフォマティクスに基づいたアプローチを用いた。そのようにして同定された配列のうち、いくつかは以前に推定エンドリシンと注釈付けされたものであった。しかしながら、それらの実質的過半数(本発明者らは80超のポリペプチドをスクリーニングした)が、いかなる溶解素活性も持たない、すなわち、標的生物である緑膿菌(P. aeruginosa)に対して活性を持たないことを、本発明者らは見出した。活性を有することが認められた前記5種の溶解素を、GN37(配列番号1)、GN2(配列番号2)、GN4(配列番号3)、GN14(配列番号4)、およびGN43(配列番号5)と命名した。まず、本発明者らは、精製された(合成され、発現ベクターpBAD26にクローニングされ、その後精製された)溶解素の、緑膿菌(P. aeruginosa)の外膜(OM)に対する透過性を評価した(実施例1)。
【0119】
ほとんどのグラム陰性菌は、疎水性の化合物を拒み、1-N-フェニルナフチルアミン(NPN)、クリスタルバイオレット、または8-アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸(ANS)等の疎水性剤の取り込みをさせない。疎水性化合物に対するこの強力な抵抗性は外膜(OM)の存在によるものであり、OMは、OMをペプチドグリカンに繋留してOMを安定に維持する結合タンパク質を含む。その疎水的な性質により、NPNは、疎水性条件下では強い蛍光を発し、水性条件下では弱い蛍光を発する(J Sokatch, The biology of pseudomonas, December 2012, Elsevier)。よって、NPN蛍光を外膜透過性の測定値として用いることができる。
【0120】
本開示において、多数の溶解素(GN1、GN2、GN4、GN8、GN14、GN20、GN22、GN26、GN27、GN28、GN30、GN37、およびGN43)の、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1のOMに対する透過性は、上記溶解素の存在下または非存在下で、PAO1細胞と一緒にNPNをインキュベートすることによって試験された。図3に示すように、GN37(配列番号1)、GN2(配列番号2)、GN4(配列番号3)、GN14(配列番号4)、およびGN43(配列番号5)の存在下におけるNPNのインキュベーションは、溶解素の非存在下で放出された蛍光(ネガティブコントロール)と比較して、より多くの蛍光誘導をもたらした。さらに、これら5つの溶解素(GN2、GN4、GN14、GN37、およびGN43)のそれぞれが、確立された透過化剤EDTA(エチレンジアミン四酢酸)によって生じるOM透過性と比較して、有意により強いOM透過性を生じた。さらに、前記5つの溶解素のそれぞれが、緑膿菌(P. aeruginosa)の治療で最終手段として使用される公知の抗生物質、ポリミキシンB(PMB)と同等以上に、OMを透過性にした。本開示の活性な溶解素は、概して、GN14の場合の15アミノ酸残基からGN43の場合の33アミノ酸残基までサイズが異なる、C末端αヘリックス両親媒性ドメインを有する(N末端に有するGN14は除く)。αヘリックス両親媒性ドメインの配列を含む、GN2、GN4、GN14、GN37、およびGN43の共通の特徴を、表3に挙げる。ポリペプチドの二次構造は、Jpred4(http://www.compbio.dundee.ac.uk/jpred/)等の種々のソフトウェアプログラムを用いて決定することができる。両親媒性αヘリックスは、具体的には、Helical Wheel(http://kael.net/helical.htm)を用いて調べられた。GN37(配列番号11)、GN2(配列番号12)、GN4(配列番号13)、GN14(配列番号14)、およびGN43(配列番号15)の核酸配列も示す(図1Aおよび図2)。
【0121】
【表3】
【0122】
GN2、GN4、GN14、GN37、およびGN43が強力な膜透過化活性を示したことから、これら5つの溶解素の、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対する抗菌活性をそれぞれ評価した(実施例2)。ポジティブコントロールとして使用されたEDTAおよびPMBに加えて、ヒトリゾチームおよびノボビオシンも含めた。ヒトリゾチーム(HuLYS)は、肺感染の病態生理に関与する、種々の組織、細胞、および分泌物に存在する天然抗菌ペプチドである(Callewaert et al. J. Biosci. 35:127-160 (2010))。ヒトリゾチームは、細菌細胞壁のペプチドグリカンの分解によって、グラム陽性菌および緑膿菌(P. aeruginosa)を含むグラム陰性菌の両方に対して有効であることが示されている。ノボビオシン(Albamycin、Cathamycin、Spheromycin)は、ストレプトマイセス・ニーベウス(Streptomyces niveus)から単離されたアミノクマリン系抗生物質である。ノボビオシンの活性は大部分がグラム陽性菌に対してのものであるが、ある特定のグラム陰性菌株も感受性が高い(Lindsey Grayson, Kucers’ The Use of Antibiotics: A Clinical Review of Antibacterial, Antifungal and Antiviral Drugs, CRC Press 6th Edition, 2010)。
【0123】
図4に示すように、5つ全ての溶解素(GN2、GN4、GN14、GN37、およびGN43)が、HuLYS単独またはノボビオシン単独と比較して、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対してより高い抗菌活性を示し、一方で、GN4、GN14、およびGN37は、EDTAおよびPMBの抗菌活性と同等の抗菌活性を示した。
【0124】
GN37は、抗シュードモナスPGH活性の供給源として以前に使用されたことがない、緑膿菌(P. aeruginosa)の捕食者である、ミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Micavibrio aeruginosavorus)から得られたものである。MDR緑膿菌(P. aeruginosa)を防除するための生物ベース薬剤として、生きたミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Micavibrio aeruginosavorus)を使用することが提唱された(Dashiff et al. J Appl., 110(2):431-44 (2011))。しかし、本発明者らが知る限り、この生物を、抗微生物タンパク質、PGH、バクテリオシン、抗生物質等のそれぞれの供給源として使用したという報告は無い。本発明者らは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の表面に付着し内部から栄養分を絞り取る生物体表生の捕食性細菌が、外膜および細胞壁に穴をあける抗シュードモナスPGH活性をコードしているはずだと推論した。これの推論に基づき、ミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Micavibrio aeruginosavorus)株ARL-13のゲノム配列を、PGH様酵素として注釈付けされた遺伝子について調査した。5種のヒドロラーゼを同定、クローニング、および抗シュードモナス活性についてスクリーニングした。現在GN37と命名されている遺伝子座は、寒天重層プレート上にクリアゾーン(ハローゾーン)を形成した唯一のORFであった。よって、GN37の独特な供給源および実施例3に記載される強力な活性の理由から、GN37をさらに詳細に調べた。実施例3に示されるように、GN37を種々の公知または推定上の溶解素と比較する多重配列アラインメントによって、GN37が、ミトレシンA(Mitrecin A)と67%しか同一性を持たないことが明らかになった(Farris and Steinberg, Lett Appl Microbiol., 58(5):493-502 (2014);および米国特許出願公開第20140094401A1号)。GN37と異なり、ミトレシンAは、グラム陽性菌(すなわち、ストレプトマイセス属)のゲノムにおいて同定された。さらに、ミトレシンAについて報告された活性は、(およそ当量濃度の)GN37の活性と比較して非常に弱い。ミトレシンAは、処理のたった1時間後に3log超の減少を達成したGN37と比較して、(仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)に対して)16時間のインキュベーションを通して細菌生存率において1log未満の減少を達成しただけであった。
【0125】
本明細書にて開示される完全長の溶解素に加えて、本開示は、本開示の溶解素のC末端αヘリックス両親媒性ドメインに基づく、ペプチド誘導体を提供する。このドメインを含むポリペプチドのC末端(および/またはN末端)の漸進的切断(アミノ酸欠失)によって、最小長の活性溶解素ペプチドにまで短くした、活性溶解素ペプチド断片を得ることができる。そのようなペプチドは、αヘリックスを破壊しないような、切断されたC(またはN)末端への一つまたは複数のアミノ酸(天然溶解素のアミノ酸以外)の付加によって、さらに修飾することができる。C末端αヘリックス両親媒性ドメインおよびN末端αヘリックス両親媒性ドメインは共に、バイオインフォマティクス的なアプローチを用いて同定可能である。αヘリックスを破壊しないアミノ酸の例は、αヘリックス領域を伸長する、または膜挿入を促進する、疎水性残基または荷電残基である。アミノ酸付加は、溶解素ポリペプチドGN4を用いてさらに説明される(実施例4、図5)。FGN4-1ペプチド(配列番号7)およびFGN4-2ペプチド(配列番号8)は、それぞれ修飾を含む、GN4(配列番号3)、PGN4(配列番号6)、FGN4-3(配列番号9)、およびFGN4-4(配列番号10)のペプチド断片であるが(図5)、PGN4およびFGN4-3は、試験されたその他のGN4ペプチドよりも高い抗菌活性を示すことが生存率アッセイによって示された(図6)。PGN4-4は、39アミノ酸ポリペプチドであり、31アミノ酸ポリペプチドのFGN4-2およびB型肝炎カプシドから単離された8残基の抗菌性ペプチド(SQSRESQC)を含む。すなわち、図6に示されるように、SQSRESQCペプチドの付加はFGN4-2の活性を増強する。天然断片FGN4-1と、付加されたC末端システイン(FGN4-4)を有するFGN4-4との比較は、C末端へのシステインの付加がFGN4-1の活性を増強したことを示している。システイン付加が二量体化を促進し、活性を増強するかどうかを確認するために、システインが付加された。その結果は、末端のシステインは活性を増強することを示している。追加の修飾として、11個のC末端残基が除去されたFGN4-2が挙げられる。これらの残基は(タンパク質二次構造を考慮すると)αヘリックス構造には必要ではなく、本発明者らは、活性が維持されるかどうかを確かめるための精査を行った。11残基全ての除去によって活性は確かに低減されはしたが、本段落の初めに記載された修飾等の他の修飾によって、活性は回復可能であり、実際に向上させることができた。上記に照らし合わせて、当業者であれば、このドメインのC末端から、またはN末端から、または両方から、一つまたは複数のアミノ酸残基を漸進的に欠失させていく溶解素ポリペプチドを作製し、そのようなポリペプチド(polypetide)を、単独で、またはグラム陰性菌に対して活性を有する一つもしくは複数の抗生物質と組み合わせて、緑膿菌(P. aeruginosa)および/または別のグラム陰性菌に対する活性(すなわち、それを阻害する能力、それの菌数を減少させる能力、またはそれを死滅させる能力)について調べることによって、C末端αヘリックス両親媒性ドメインがインタクトである切断型溶解素を容易に作製することができる。このような試験は、例えば実施例2、3、4、または仮想例1に示されている教示に従って行うことができる。当然ながら、試験の手順およびプロトコルはそれ自体、これらの実施例における手順およびプロトコルに限定されず、抗細菌剤の、実際には抗微生物剤の有効性を評価するための当業者に公知のあらゆる方法であってよい。
【0126】
ヒト血清中の抗菌活性の解析のために、GN溶解素ポリペプチドおよびGNペプチドを、MIC未満の濃度のポリミキシンBの存在下および非存在下にそれぞれプールした(実施例5、図7)。PMBは、緑膿菌(P. aeruginosa)に対して活性を有する強力な抗生物質であり、1mcg/mlの濃度において、ヒト血清中での1時間の処理の後に、生存率において2log10未満の減少をもたらした。GN4ペプチドプール(各ペプチドを25mcg/mlで含有、図7では「ペプチドプール」と標識)単独は、生存率の減少をもたらさず、溶解素ポリペプチドプール(各GN溶解素を25mcg/mlの濃度で含有)単独は、2log10未満の生存率の減少をもたらしたのみである(図7)。しかし、PMBと組み合わされた場合、ペプチドプールおよび溶解素プールの両方が、4log10以上の生存率減少をもたらした(図7)。これらの知見は、PMBと本開示のGN溶解素ポリペプチドとの組み合わせの強力な相加効果、またはさらには相乗効果を示している。個々の溶解素ポリペプチドも、プールとしてではなく個別に使用された場合、緑膿菌(P. aeruginosa)等のグラム陰性菌の生存率において実質的減少をもたらすことが予想される。図7に関する知見は、ペプチドプール単独が、図6から予想される活性ほど活性が高くないというものである。これは、多くの抗菌剤の生物活性がヒト血清の存在下では減弱されることが原因である可能性が最も高い(Zhanel et al., Antimicrob Agents Chemother. 42(9): 2427-2430 (1998))。しかし、溶解素プールがPMBと共に同時投与されると、血清の存在にもかかわらず、溶解素プールの抗菌活性は回復する(図7)。すなわち、ヒト血清の存在下での溶解素プールの抗菌活性の減少は、PMBの存在下では阻害性でなくなる、ペプチドプール中のペプチド同士の拮抗する活性によるものであり得る。あるいは、ヒト血清中に存在する一つまたは複数のタンパク質が、PMBの添加によって抑制される拮抗作用を、溶解素プールに対して有しているのかもしれない。これら2つの考えられるシナリオは、個々の溶解素ポリペプチドを用いたアッセイを反復し、PMBの存在下または非存在下において血清中で前記アッセイを実行し、これらの結果を、溶解素プールを用いて得られた結果と比較することで、区別が可能である。さらに、血清中の溶解素プール活性の阻害は、溶解素と外膜との間の静電気的(electrostatinc)相互作用を破壊する、高い塩濃度が原因であった可能性もある。
【0127】
本開示のGN溶解素ポリペプチドは、従来の抗生物質、ワクチン、および抗毒素療法と異なる細菌活性(bacterial activity)を有し、グラム陰性菌によって引き起こされる感染との闘いで有用である。実施例に示されるように、他の処置と異なり、溶解素は、迅速な殺菌作用を、MIC未満の量で使用された場合は静菌作用を示し、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)、炭疽菌(B. anthracis)、およびセレウス菌(B. cereus)を含むグラム陽性菌に対して特定の溶解素を用いて得られた以前の結果を反映して、一連の抗生物質耐性細菌に対して活性を有し、耐性の発達と関連付けられていない(Fischetti, V. Curr Opin Microbiol., 11(5): 393-400 (2008))。本開示に基づけば、臨床背景において、溶解素は、薬剤耐性菌および多剤耐性菌から生じる感染を治療するための強力な代替物となる。グラム陰性菌の既存の耐性機構は、溶解素のPGH活性に対する感受性に影響を与えないはずである。
【0128】
本開示の溶解素ポリペプチドは、グラム陰性菌感染の治療用に開発されている、既存のPGHと異なっている。前述のArtilysinは、外来性のカチオン性ペプチドと融合した正荷電PGHからなる(Briers et al., Antimicrob Agents Chemother. 58(7): 3774-84 (2014); Briers et al. MBio. 4:e01379-14 (2014);米国特許8,846,865号)。さらにArtilysinは、エンドリシン由来ではない、ポリカチオン性ペプチドを使用している。一方、本開示の溶解素ポリペプチド(polypetide)のポリカチオン性領域は、緑膿菌(P. aeruginosa)に対する標的化効率の向上をもたらすと期待される特徴である、緑膿菌(P. aeruginosa)のOMとの天然での相互作用とその不安定化を起こす、溶解素に由来している。
【0129】
本明細書に記載のように単離され組換えによって作製される、溶解素ポリペプチドに付加された抗菌性カチオン性ペプチドを含有する融合ポリペプチドも確かに企図されてはいるが、本開示の溶解素ポリペプチドは、抗菌性カチオン性ペプチドの付加で修飾されていなくてもよい。しかし、付加されたカチオン性ペプチドまたは他の抗微生物性(抗細菌性)ペプチドが存在していなくても、本開示の溶解素ポリペプチドは、静菌活性および殺菌活性の両方を含む、かなりの抗グラム陰性菌活性を有する。上記にかかわらず、本開示は、抗菌ペプチド(AMP、デフェンシン、スシペプチド(sushi peptide)、カチオン性ペプチド、ポリカチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、疎水性ペプチド)に融合された天然のグラム陰性菌抗菌機能を有する溶解素ポリペプチドを含む融合溶解素ポリペプチドも企図しており、米国特許出願第2015/0118731号、並びに国際特許出願国際公開第2014/0120074号、同第2015/070912号;同第2015/071436号;同第2015/070911号;同第2015/071437号;同第2012/085259号;同第2014/001572号、および同第2013/0344055号に記載されるもの等を広げる。追加の殺菌性セグメント、すなわち、融合前からそれ自体が殺菌活性を有するセグメントまたは親溶解素ポリペプチドの殺菌活性に積極的に貢献するセグメントを含有する融合ポリペプチドも企図されている。
【0130】
医薬組成物および調製
本開示の組成物は、水剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体を含有するカプセル剤、散剤、徐放性製剤、坐剤、タンポン塗布用乳剤(tampon applications emulsion)、エアロゾル剤、噴霧剤、懸濁剤、菓子錠剤、トローチ剤、キャンディ、注入剤、チューインガム、軟膏剤、スミア(smear)、徐放性貼付剤、液体を吸収したワイプ(liquid absorbed wipe)、およびこれらの組合せの形態をとることができる。
【0131】
本開示の組成物またはその薬剤的に許容できる形態の投与は、局所投与であってもよいし(すなわち、前記医薬組成物がその作用が所望される場所に直接(例えば創傷に直接)塗布される)、または全身投与であってもよい。全身投与は、経腸投与または経口投与(すなわち、物質が消化管を介して与えられる)、非経口投与(すなわち、物質が注射もしくは吸入等による消化管以外の他の経路によって与えられる)であり得る。すなわち、本開示の溶解素ポリペプチドは、経口的に、非経口的に、吸入によって、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、頬側に、もしくは埋め込み型リザーバーを介して、またはあらゆる他の公知の方法によって、対象に投与することができる。本開示の溶解素ポリペプチドは、持続放出剤形を用いても投与することができる。
【0132】
経口投与用に、本開示の溶解素ポリペプチドは、固形製剤または液状製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、水剤、懸濁剤および分散体に製剤化することができる。前記化合物は、例えば、ラクトース、スクロース、コーンスターチ、ゼラチン、ジャガイモデンプン、アルギン酸および/またはステアリン酸マグネシウム等の賦形剤と一緒に製剤化することができる。
【0133】
錠剤および丸剤等の固体組成物の調製のために、本開示の溶解素ポリペプチドまたはその断片を、医薬用賦形剤と混合して、固体の製剤化前組成物(preformulation composition)を形成させる。所望により、錠剤は標準的な技術によって糖衣錠としてもよいし、腸溶錠としてもよい。持効性作用という利点をもたらす剤形を得るために、錠剤または丸剤を被覆または配合してもよい。例えば、錠剤または丸剤は、内部用量成分(inner dosage component)および外部用量成分(outer dosage component)を含んで、外部用量成分が内部用量成分を包む形態をとってもよい。これら2つの成分は腸溶性層で分離可能であり、腸溶性層は、胃での分解を阻止し、内部成分がインタクトなままで十二指腸へと通過すること、またはその放出が遅延されることを可能にする働きをする。種々の材料をそのような腸溶性の層またはコーティングに使用することができ、そのような材料としては、いくつかの高分子酸、並びに、シェラック、セチルアルコール、およびセルロースアセテート等の材料と高分子酸の混合物が挙げられる。
【0134】
本開示の局所用組成物は、薬剤的に許容される担体または生理学的に許容される担体、例えば、皮膚科学的に許容される担体または耳に(otically)許容される担体、をさらに含んでもよい。そのような担体は、皮膚科学的に許容される担体の場合、皮膚、爪、粘膜、組織および/または毛と適合性であることが好ましく、これらの要件を満たす従来的に使用されているあらゆる皮膚科用担体が含まれ得る。耳に許容される担体の場合、担体は耳の全ての部位と適合性であることが好ましい。そのような担体は当業者により容易に選択可能である。本開示の化合物の局所投与のための担体としては、限定はされないが、ミネラルオイル、流動石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、並びに水が挙げられる。皮膚用軟膏剤の製剤化において、本開示の有効成分は、油性炭化水素基剤、無水吸収性基剤、油中水型吸収性基剤、水中油型水除去性(water-removable)基剤および/または水溶性基剤中で製剤化され得る。耳用組成物の製剤化において、本開示の有効成分は、水性重合体懸濁液、例えば、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖ゲル、Gelrite(登録商標)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース系重合体、およびアクリル酸の重合体または共重合体等のカルボキシ基含有重合体、並びに他の重合体粘滑薬等の担体中で製剤化され得る。本開示による局所用組成物は、局所投与に適したいかなる形態であってもよく、例えば、水性、水性-アルコール性または油性の溶液、ローション剤または血清分散液(serum dispersion)、水性、無水または油性のゲル剤、水相中の脂肪相の分散によって得られる乳剤(OAVもしくは水中油型)または、逆に、(W/Oもしくは油中水型)、マイクロエマルションまたはマイクロカプセル、イオン型および/または非イオン型の微小粒子または脂質小胞分散体、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、発泡剤(通常、加圧されたキャニスター、適切な塗布器 乳化剤および不活性な噴霧剤を必要とする)、エッセンス、乳汁、懸濁剤、または貼付剤の形態であってよい。本開示の局所用組成物は、親水性または親油性のゲル化剤、親水性または親油性の活性薬剤、保存剤、抗酸化剤、溶媒、芳香剤、充填剤、日焼け止め、吸臭剤(odor-absorber)および染料等の補助剤を含有してもよい。さらなる態様において、前記局所的抗菌性組成物は、対象の皮膚または他の組織に接着または付随することが可能な、経皮貼布、包帯材(dressing)、パッド、ラップ、マトリックスおよび絆創膏(bandage)等のデバイスと共同して投与される場合があり、本開示による、治療有効量の一つまたは複数の抗菌性溶解素ポリペプチドを送達可能である。
【0135】
一実施形態において、本開示の局所用組成物は、局所的な熱傷の治療に使用される一つまたは複数の成分をさらに含む。そのような成分としては、典型的には、限定はされないが、プロピレングリコールヒドロゲル;グリコール、セルロース誘導体および水溶性アルミニウム塩の組合せ;消毒剤;抗生物質;並びに副腎皮質ステロイドが挙げられる。保湿剤(例えば、固形または液状のワックスエステル)、吸収促進剤(例えば、親水性の粘土、またはデンプン)、増粘剤(viscocity building agent)、および皮膚保護剤が追加されてもよい。局所製剤はうがい薬等のリンス剤の形態をとってもよい。例えば、国際公開第2004/004650号を参照されたい。
【0136】
本開示の化合物は、適切な量の溶解素ポリペプチドおよび担体を含む治療薬の注射によって投与されてもよい。例えば、前記溶解素ポリペプチドを、筋肉内に、くも膜下腔内に、真皮下に、皮下に、または静脈内に投与することで、グラム陰性菌による感染、より具体的には緑膿菌(P. aeruginosa)によって引き起こされる感染を治療することができる。前記担体は、蒸留水、食塩水、アルブミン、血清、またはこれらのあらゆる組み合わせから構成され得る。さらに、非経口注射の医薬組成物は、以下のうちの一つまたは複数に加えて、溶解素ポリペプチドの薬剤的に許容できる水溶液または非水溶液を含み得る:使用の直前に無菌の注射剤または分散液へ再構成するための、pH緩衝液、補助剤(例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤)、リポソーム製剤、ナノ粒子、分散液、懸濁液またはエマルジョン並びに無菌散剤。
【0137】
非経口注射が選択された投与様式である場合、等張製剤が使用されることが好ましい。一般的に、等張性のための添加剤には、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースが包含され得る。リン酸緩衝食塩水等の等張液が好ましい場合もある。安定剤にはゼラチンおよびアルブミンが包含され得る。血管収縮剤を前記製剤に追加することができる。このタイプの適用による医薬品は、無菌且つ発熱物質を含まずに与えられる。
【0138】
希釈剤は、例えば、エタノール、プロピレングリコール、油または薬剤的に許容できる乳化剤もしくは界面活性剤等の一つまたは複数の他の賦形剤をさらに含み得る。
【0139】
別の実施形態において、本開示の組成物は吸入可能な組成物である。本開示の吸入可能組成物は薬剤的に許容できる担体をさらに含むことができる。一実施形態では、本開示の溶解素ポリペプチドは、乾燥した吸入可能な散剤として製剤化されるのが有利である。特定の実施形態では、溶解素ポリペプチド吸引用溶液が、エアロゾル送達のための噴霧剤と共にさらに製剤化され得る。ある実施形態では、水剤が噴霧され得る。
【0140】
薬剤と噴霧剤との間の表面張力および界面張力を低下させる目的で、界面活性剤を本開示の吸引可能な医薬組成物に添加することができる。薬剤、噴霧剤および賦形剤が懸濁液を形成する場合、界面活性剤は必要である場合もあるし、必要でない場合もある。薬剤、噴霧剤および賦形剤が溶液を形成する場合、界面活性剤は、その特定の薬剤および賦形剤の溶解性に部分的に依存して、必要である場合もあるし、必要でない場合もある。界面活性剤は、薬剤と非反応性であり、且つ、薬剤、賦形剤および噴霧剤の間の表面張力を実質的に減少させ、且つ/または、バルブ滑沢剤として働く、あらゆる好適な無毒の化合物であり得る。
【0141】
適切な界面活性剤の例としては、限定はされないが、オレイン酸;ソルビタントリオレエート;塩化セチルピリジニウム;ソーヤレシチン;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート;ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル;ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル;ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンエチレンジアミンブロックコポリマー;ポリオキシエチレン(20)モノステアリン酸ソルビタン;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート;ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー;エトキシ化ヒマシ油;およびこれらの組み合せが挙げられる。
【0142】
適切な噴霧剤の例としては、限定はされないが、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタンおよび二酸化炭素が挙げられる。
【0143】
吸入可能組成物での使用に適した賦形剤の例としては、限定はされないが、ラクトース、デンプン、中鎖脂肪酸のプロピレングリコールジエステル;中鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸、もしくは長鎖脂肪酸、またはこれらの組み合わせのトリグリセリドエステル;ペルフルオロジメチルシクロブタン;ペルフルオロシクロブタン;ポリエチレングリコール;メントール;Lauroglycol;ジエチレングリコールモノエチルエーテル;ポリグリコール化された中鎖脂肪酸グリセリド;アルコール;ユーカリ油;短鎖脂肪酸;およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0144】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は経鼻適用(nasal application)を含む。経鼻適用としては、例えば、鼻腔用スプレー、点鼻薬、鼻軟膏、鼻洗浄液、鼻内注射、鼻腔タンポン挿入、気管支用スプレーおよび吸入器、またはのど飴、うがい薬もしくは含嗽薬の使用による間接的な適用、または鼻孔もしくは顔に塗布される軟膏剤の使用による適用、またはこれらの組み合わせ、並びに同様の適用法が挙げられる。
【0145】
別の実施形態では、本開示の医薬組成物は補足的な剤を含有し、例えば、一つもしくは複数の抗菌剤および/または一つもしくは複数の従来の抗生物質を含有する。感染治療の促進または抗菌作用の増強を目的として、一つまたは複数の本開示の溶解素ポリペプチドを含有する治療薬は、溶解素ポリペプチドの殺菌活性も増強し得る少なくとも1つの補足的な剤をさらに含んでいてもよい。前記補足的な剤は、グラム陰性菌の処置に使用される一つまたは複数の抗生物質であり得る。好ましい実施形態において、前記補足的な剤は、緑膿菌(P. aeruginosa)によって引き起こされる感染の治療に使用される抗生物質または抗菌剤である。
【0146】
対象への投与量および投与頻度
本開示の組成物は、単位剤形で提供されてもよく、当該技術分野において周知のいかなる方法で調製されてもよい。単一剤形を作製するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、治療対象の宿主、感染性細菌への受容者の暴露期間、対象の大きさおよび体重、並びに特定の投与様式に応じて異なる。単一剤形を作製するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、一般的には、治療効果をもたらす各化合物の量である。一般的には、100%中、活性成分の総量は約1%~約99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%の範囲をとる。
【0147】
投与される投与量は、治療対象の感染の活性、治療対象の対象の年齢、健康および全身健康状態、特定の溶解素ポリペプチドの活性、もしあれば、本開示の溶解素ポリペプチドと組み合わせられる抗生物質の性質および活性、並びにそのような組み合わせの併用効果を含む、いくつかの因子に依存する。概して、投与される本溶解素ポリペプチドの有効量は、最長14日間、1日1~4回投与される、1~50mg/kgの範囲内に含まれると予想される。抗生物質も使用される場合、抗生物質は、標準的な投与計画で、またはより低い量で、投与される。しかし、そのような投与量および投与計画は全て(溶解素ポリペプチドの投与量および投与計画であろうが、溶解素ポリペプチドと併せて投与されるいかなる抗生物質の投与量および投与計画であろうが)、最適化を受ける。最適な投与量は、当業者の技能の範囲内であるが、本開示を念頭に置いた、インビトロおよびインビボでのパイロット有効性実験を行うことにより決定することができる。
【0148】
いくつかの実施形態において、活性溶解素ポリペプチドユニットへの暴露時間は、望ましい活性溶解素ポリペプチドの濃度(ユニット/ml)に影響し得る。「長期」または「遅」放出担体に分類される担体(例えば、ある種の鼻腔用スプレーまたは菓子錠剤等)は、より低い濃度の溶解素ポリペプチド(ユニット/ml)を、ただしより長期間に亘って、保持または提供することができるが、一方、「短期」または「高速」放出担体(例えば、含嗽薬等)は、高濃度の溶解素ポリペプチド(ユニット/ml)を、ただしより短期間に亘って、保持または提供することができる。さらにより高いユニット/mlの投与量またはより低いユニット/mlの投与量を有することが必要となる状況もある。
【0149】
本開示のあらゆる溶解素ポリペプチドに関して、治療的有効量が、細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常はマウス、ウサギ、イヌ、またはブタ)において、最初に見積もられ得る。動物モデルは、望ましい濃度範囲および投与経路の達成にも使用され得る。次に、得られた情報を用いて、ヒトにおける有効量および投与経路が求められ得る。十分なレベルの有効成分(active ingridient)を与えるために、または所望の効果を維持するために、投与量および投与がさらに調整され得る。考慮され得る追加の因子としては、病状の重症度、患者の年齢、体重および性別;食事、所望の処置時間、投与方法、投与の時間および頻度、薬剤の組み合わせ、反応感度、並びに治療法に対する耐性/応答、並びに治療医の判断が挙げられる。
【0150】
治療レジメンは、連日投与(例えば、毎日、1回、2回、3回等)、一日おき(例えば、一日おきに、1回、2回、3回等)、週2回、週1回、2週間に1回、月1回等を伴い得る。一実施形態において、処置は持続点滴として与えられ得る。単位用量が複数回投与され得る。臨床症状の監視により必要とされるように、間隔は不規則であってもよい。あるいは、単位用量は徐放性製剤として投与され得るが、この場合、より少ない頻度の投与が求められる。投与量および頻度は患者に応じて異なり得る。そのような指針は、局所投与(localized administration)、例えば、鼻腔内投与、吸入投与、直腸内投与等、または全身投与、例えば、経口投与、直腸内投与(例えば、浣腸)、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、経尿道投与等のために調整されることは、当業者によって理解される。
【実施例
【0151】
実施例1
グラム陰性菌溶解素の同定
グラム陰性菌を死滅させるのに使用され得る、推定PGH候補を、バイオインフォマティクス検索プロトコルを用いて同定した。まず、本発明者らは、バクテリオファージ溶解素を求めた検索語によりスクリーニングをかけた注釈付けゲノム配列から得られた緑膿菌(P. aeruginosa)PGHの候補リストを作成した。前記候補リストには、「アミダーゼ」、「リゾチーム」、「グルコサミニダーゼ」、「エンドペプチダーゼ」、「ペプチドグリカンヒドロラーゼ」、「溶菌性トランスグリコシラーゼ」、「エンドリシン」、「溶解素」、および「細胞壁ヒドロラーゼ」が含まれた。次に、このように同定されたPGHをBLASTP解析による検索に用いて、GenBank内の全ての緑膿菌(P. aeruginosa)ゲノム配列(緑膿菌(P. aeruginosa)群;Taxid:136841)およびミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Micavibrio aeruginosavorus)株ARL-13のゲノム配列を検索し、より大きな推定PGH群を作成した。次に、46種のPGHから構成される、この群の一部を、さらなる研究のために選び出した。本研究に含める基準は、配列保存に関しての多様性とし、一連の推定上の触媒活性/細胞壁結合活性を有する、高度に保存された酵素および保存性が低い酵素の両方を含めた。これら46種のPGHを合成し、細菌発現ベクターpBAD24(Guzman et al., J Bacteriol. (14):4121-30 (1995))にクローニングし、それで大腸菌(E.coli)株Top10(ライフテクノロジーズ社)を形質転換した。活性評価のため、全ての大腸菌(E.coli)クローン(ベクターコントロールを含む)を、プレートベースのアッセイを用いて、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対する溶菌活性についてスクリーニングした。次いで、陽性クローンをさらに、液体LB培地中の可溶性タンパク質の誘導について、文献(Schuch et al., Nature, 418 (6900):884-9, (2002))の通りに解析した。可溶性且つ活性を有する溶解素について、誘導した培地の大腸菌(E.coli)粗抽出液を次に、疎水性蛍光プローブ1-N-フェニルナフチルアミン(1-N-phenylnaphtthylmine)(NPN)を用いて、緑膿菌(P. aeruguinosa)株PAO1の透過化(permeabilizaton)を誘導する能力について調べた。このNPNアッセイは、細菌外膜を破壊する化合物のスクリーニングのための標準的な方法である(Helander and Mattila-Sandholm, J Appl Microbiol., 88(2):213-9. (2000))。このスクリーニングアプローチによって、最終的に、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)株、および他のグラム陰性菌(例えば、ミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Micavibrio aeruginosavorus))、並びにマリンメタゲノミクスを用いて同定されたもの、のゲノム内の5種の候補PGH(N末端αヘリックスドメインおよびC末端αヘリックスドメインを有する)が導かれた。得られたタンパク質を次に、ペネム系抗生物質に耐性を有する(Okamoto et al. Antimicrob Agents Chemother. 45(7):1964-71 (2001))緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対する抗菌活性について試験した。
【0152】
精製された溶解素の活性を評価するため、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1による疎水性蛍光プローブ1-N-フェニルナフチルアミン(1-N-phenylnaphtthylmine)(NPN)の取り込みを調べた。グラム陰性菌の外膜は溶解素およびNPNを含む疎水性化合物に対する透過障壁の働きをし、GNの透過化活性の評価が可能であるため、疎水性化合物の内部標的への到達能によってGNの透過化活性を評価した。すなわち、NPNは、通常外膜によって排除されるが、外膜の脂質二重層内へのパーティション(partition)の際に、顕著な蛍光強度を示す。
【0153】
緑膿菌(P. aeruginosa)PAO1はアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手した。細菌を、37℃、250rpmの振盪恒温器内で、LB培地(シグマ・アルドリッチ社)中、10CFU/mlの初期濃度で培養した。緑膿菌(P. aeruginosa)培養物を対数期の始めまで増殖させ(A550~0.3)、そこに各候補溶解素(GN)を10mcg/mlの濃度で添加した。NPNの取り込みを測定するため、10μM NPNを、PBS中のGN1、GN2、GN4、GN8、GN14、GN20、GN22、GN26、GN27、GN28、GN30、GN37、およびGN43を含有する対数増殖期細胞に添加し、蛍光分光光度計を用いて1時間の時点の420nmにおける蛍光をモニターした(図3)。抗生物質ポリミキシンB(5mcg/ml)およびEDTA(1mM)をポジティブコントロールとして使用し、一方で、NPNで処理したが溶解素を添加しなかった細胞をネガティブコントロールとして使用した。
【0154】
図3に示されるように、緑膿菌(P. aeruginosa)細胞がNPN存在下でGN2(配列番号2)、GN4(配列番号3)、GN14(配列番号4)、GN37(配列番号1)、またはGN43(配列番号5)で処理された場合に、強い蛍光シグナルが認められた(灰色のバー)。各溶解素の一般的特徴を表4に示す。
【0155】
まとめると、これらの結果により、グラム陰性菌のOMを透過(permeate)する能力を示す一連のGN溶解素が同定され、異種ペプチドセグメントの追加という手段を講じる必要なく、グラム陰性菌に対して活性を有する溶解素を同定する、第一の工程が確立される。
【0156】
【表4】
【0157】
実施例2
GN溶解素はグラム陰性菌に対して強い抗菌活性を示す
精製された溶解素の抗菌活性を評価するため、個々のGN溶解素と一緒にインキュベートした後の生緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1の生存率を評価した。簡潔に説明すると、10個のPAO1細胞を、25mcg/mlの濃度の表示のGN溶解素で、1時間(37℃、撹拌無し)、20mMトリス塩酸(pH7.2)緩衝液の存在下で処理した。ポリミキシンB(PMB、25mcg/ml)、ノボビオシン(Nov、5mcg/ml)、EDTA(1mM)およびヒトリゾチーム(HuLYZ、25mcg/ml)をコントロールとして用いた。検出の閾値は2.0Log10CFU/mlであった。
【0158】
図4が示すように、GN溶解素はHuLYZまたはノボビオシンのいずれよりも高い抗菌活性をそれぞれ示したが、一方で、GN4(配列番号3)、GN14(配列番号4)、およびGN37(配列番号1)は、EDTAとの比較ではより強い抗菌活性を、PMBとの比較では同等の抗菌活性を、それぞれ示した。
【0159】
この実験は、GNがグラム陰性菌に対する従来の抗生物質、ヒトリゾチームまたはキレート化剤EDTAのいずれよりも、同等以上の抗菌活性を示すことが可能であることを明らかにしている。
【0160】
実施例3
GN37は非常に有効な抗グラム陰性菌剤である
GN37溶解素は、ミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Micavibrio aeruginosavorus)の381-bp MICA_542遺伝子座にコードされる、126アミノ酸ポリペプチドである(図1A)。ミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(M. aeruginosavorus)は、緑膿菌(P. aeruginosa)の捕食者であるが、抗シュードモナスPGH活性の供給源として以前に使用されたことがない。GN37溶解素は、9.69の予測pIを持つ、高度正電荷タンパク質である。さらに、GN37は、(VanYスーパーファミリーのメンバーを含む)DD-カルボキシペプチダーゼ活性およびDL-カルボキシペプチダーゼ活性を有するPGHのPeptidase_M15_4ファミリーのメンバーである(図1B)。BLASTP解析によれば、GN37(配列番号1)は、50種超の異なるグラム陰性菌種および1種のグラム陽性菌種由来のタンパク質に対して67%以下の同一性を有する。図1Cには多重配列アラインメントが示されており、GN37が、グラム陽性菌の相同体(ストレプトマイセス属由来、GenBank配列AGJ50592.1)、並びに大腸菌(E.coli)由来のタンパク質(WP_001117823.1およびNP_543082.1)、エルシニア属種(Yersinia spp.)由来のタンパク質(CAJ28446.1)およびアシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)由来のタンパク質(WP_034684053.1)を含むグラム陰性病原菌由来のタンパク質と比較されている。重要なことであるが、GN37に対して67%超の同一性を有する配列は公開データベース内に存在しない。

実施例4
GN4のペプチド誘導体は強力な抗菌活性を示す
完全長の溶解素に加えて、GN4の5種のペプチド誘導体(αベースのヘリックスC末端断片に対応)を作製し、それらについても調べた(図5)。第一のペプチド(FGN4-1、(配列番号7))は42アミノ酸C末端αヘリックスドメインに対応している。この領域がGN4のC末端αヘリックス両親媒性ドメインを作製するために十分であるという、タンパク質二次構造予測の考慮により、これに達した(あるいは、C末端そのもを漸進的に切断し、活性に対する影響を毎回検査することによって、達成できた)。追加の修飾の原理は、本明細書の別の場所に記載されている。
【0161】
単一のC末端システインをFGN4-1(配列番号7)に付加して、FGN4-4(配列番号10)を作製した。3種のさらなるペプチドでは、FGN4-1の11個のC末端残基が、いずれも除去されているか(FGN4-2、(配列番号8))、除去されて1個のリジン(K)残基で置換されているか(FGN4-3、(配列番号9))、B型肝炎カプシドから同定された8残基の抗菌性ペプチドとなっている(PGN4、(配列番号6))。B型肝炎ペプチドは、SQSRESQCであり、Immune Epitope DatabaseによるEpitope ID番号は96916である。10個のPAO1細胞を、10mcg/mlの濃度の表示のペプチド誘導体で、1時間(37℃、撹拌無し)、20mMトリス塩酸(pH7.2)緩衝液の存在下で処理した死滅アッセイ(killing assay)において、各GN4由来ペプチドの抗菌活性を調べた(図6)。検出の閾値は2.0log10CFU/mlであった。図6に示されるように、各試験ペプチドはいくらかの抗菌活性(ネガティブコントロールとして用いた緩衝液と比較して)を示し、一方、FGN4-1およびFGN4-4は、優れた活性を示し、細胞生存率を4log以上減少させた。
【0162】
実施例5
GN溶解素およびGNペプチドはロバストな抗細菌性を示す
次に、GN溶解素およびGN-ペプチド抗細菌性をヒト血清中で評価した。緑膿菌(P. aeruginosa)細胞をヒト血清中、37℃で1時間、撹拌無しでインキュベートし、PAO1の対数期に対する活性を調べた。GN溶解素およびGNペプチド(25mcg/ml)をそれぞれ、MIC未満の濃度のポリミキシンB(PMB)(1mcg/ml)の存在下および非存在下でプールした。検出の閾値は2.0log10CFU/mlであった。図7に示されるように、GN溶解素プール単独は、ポリミキシンB(Polymxin B)が示した抗細菌性と同様の抗細菌性を示した。さらに、PMBと組み合わされた場合、ペプチドプールおよび溶解素プールの両方が、4log10以上の生存率減少をもたらした。
【0163】
まとめると、これらの知見は、ヒト血清中での、PMBと溶解素ポリペプチド(GN)または溶解素ペプチドとの間の強い相加活性または相乗活性を示している。先の研究により、組み合わされた溶解素混合物の個々の成分の強い抗菌活性が示されているため、溶解素プールだけでなく、個々の溶解素成分も、抗生物質との強い相加活性または相乗活性を示すと予想される(Loeffler et al. Antimicrob Agents Chemother. Jan; 47(1): 375-377 (2003))。
【0164】
仮想例1
単離されたGN溶解素の試験
本実施例の目的は、本明細書に記載のGN溶解素ポリペプチドおよびGN4のペプチド誘導体の各々が、緑膿菌(P. aeruginosa)以外のグラム陰性菌株の増殖阻害または死滅が可能であるかを確認することである。このために、単離された本開示のポリペプチド(本明細書に記載され、従来技術によって生成された、と表現される場合がある)を、全て市販の、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)NCTC9633(ATCC13883)、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogenes)NCTC10006(ATCC13048)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)NCT9750(ATCC8090)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)CDC6516-60(ATCC14028)、ペスト菌(Yersinia pestis)(ATCC BAA-1511D-5)、野兎病菌(Francisella tulerensis)(ATCC6223)および大腸菌(Escherichia coli)DSM1103(ATCC25822)等の種々のグラム陰性菌に対する抗菌活性について試験する。この実験の追加の腕において、前記菌株は、一つまたは複数の標準的なケア用抗生物質に対して耐性を示すように選択され得る(例えば、多剤耐性の緑膿菌(P. aeruginosa)Br667株)。
【0165】
簡潔に説明すると、GN溶解素ポリペプチドおよびGN4ペプチドを、5~15mcg/mlの濃度で、1時間(37℃、撹拌無し)、20mMトリス塩酸(pH7.2)緩衝液の存在下で、試験する。検出の閾値は2.0Log10CFU/mlとする。溶解素ポリペプチドまたはその断片のそれぞれの活性を、単独で、またはポリミキシンB等のグラム陰性菌に対して活性を有する抗生物質、もしくはゲンタマイシン等のグラム陰性菌に対して活性を有する別の抗生物質と組み合わせて、試験する。溶解素ポリペプチドの抗生物質に対する耐性を克服する能力が試験される、この実験の腕において、前記選択された抗生物質が、前記特定の細菌が耐性を示す抗生物質となる。平板計数法でCFU/mLを求めるために、様々な時点(0、1、4および8時間)で、100μLの一定分量の接種菌液を培地から取り出す。
【0166】
グラム陰性菌の外膜構造の保存、並びに緑膿菌(P. aeruginosa)に対する本開示および実施例のGN4および前述のその誘導体および他の溶解素の有効性に基づけば、本開示の溶解素ポリペプチドは、さらなる(緑膿菌(P. aeruginosa)以外の)グラム陰性菌株に対しても抗菌活性を示すと予想される。

仮想例2
GN溶解素/溶解素ペプチドと追加の抗生物質との間の相乗効果および相加効果の試験
実施例5に記載の実験計画と同様に、本明細書で開示される溶解素ポリペプチドを、追加の(PMB以外の)抗生物質と組み合わせて使用した場合の相乗効果または相加効果について試験する。GN溶解素およびGN-ペプチドの相乗的または相加的な抗細菌性をヒト血清中で評価する。緑膿菌(P. aeruginosa)をヒト血清中、37℃で1時間、撹拌無しでインキュベートし、PAO1の対数期に対する活性を調べる。GN溶解素およびGNペプチド(10~25mcg/ml)をそれぞれ、ノボビオシン、アミノグリコシド、カルバペネム、セフタジジム(第3世代)、セフェピム(第4世代)、セフトビプロール(第5世代)、フルオロキノロン、ピペラシリン、チカルシリン、コリスチン、リファマイシン(例えば、リファンピシン、リファブチン、リファペンチン等)、およびペニシリン等の、MIC未満の濃度の抗生物質の存在下および非存在下でインキュベートする。平板計数法により細菌の生存率をCFU/mL単位で求める。
【0167】
仮想例3
インビボ肺炎モデルを用いる多剤耐性緑膿菌(P. aeruginosa)治療用の溶解素ポリペプチドの試験
成体C57ブラックマウスを、特定の無菌条件下、ケージ内で、管理環境に維持する。マウスを、酸素を送り込んだ(oxygenated)チャンバ内でセボラン(アボット・ラボラトリーズ社(Abbot Laboratories))の吸引により短時間麻酔し、頭を高めて仰臥位に置く。多剤耐性緑膿菌(P. aeruginosa)株Ka02細菌の接種菌液(50μlの乳酸加リンゲル液中10cfu)を、胃管栄養針を用いて各マウスの左肺にゆっくりと注入する。
【0168】
マウスを3つの実験治療群に無作為に分ける。この3つの群は以下からなる:1)感染の1時間後に食塩水を静脈内投与され、その後、感染後5時間の時点で1回のさらなる腹腔内投与を受ける、食塩水処置群(n=5);2)GN4を感染の1時間後に20mg/kgの用量で静脈内投与され、その後、感染後5時間の時点で15mg/kgの用量の1回のさらなる腹腔内投与を受ける、溶解素ポリペプチドGN4群(n=5);並びに、3)「Tienam」(メルク社)](活性成分はカルバペネム系抗生物質のイミペネム)を感染の1時間後に25mg/kgの用量で腹腔内投与され、その後、感染後5時間、24時間、29時間、48時間および53時間の時点で25mg/kgのさらなる腹腔内投与を受ける、ポジティブコントロール-イミペネム処置群(n=5)。
【0169】
感染後9日目まで、12時間毎に3群全ての生存をモニターする。同じ実験計画を用いて、本明細書で開示されるさらなる溶解素ポリペプチドのインビボにおける抗菌活性を試験する。
【0170】
仮想例4
マウス好中球減少症モデルにおける緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)誘導性敗血症に対する溶解素ポリペプチドの防御ポテンシャルの試験
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による侵襲性感染に対する溶解素ポリペプチドの防御的有効性を、文献(Pier et al. Infect. Immun. 57:174-179 (1989); Schreiber et al. J. Immunol. 146:188-193 (1991))に記載の好中球減少症マウスモデルにおいて測定する。成体BALB/c ByJマウス(ジャクソン・ラボラトリーズ社(Jackson Laboratories)、バーハーバー、メーン州)を、無菌の、シュードモナスを含まない環境下で維持する。好中球減少症は、1日目、3日目、および5日目に、各マウスに、3mgのシクロホスファミド(Cytoxan′、ブリストル・マイヤーズスクイブ社(Bristol-Myers Squibb)、プリンストン、ニュージャージー州)を腹腔内投与することによって確立される。5日目は、シクロホスファミドを時点0時間に投与し、2時間後に溶解素(20mg/kg)またはPBSコントロールを腹腔内投与し、その後、10cfuの生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)06ad PAを2時間後に腹腔内投与する。その後毎日マウスをモニターし、死亡率を成績として測定する。さらに、動物の治療用の最適な溶解素濃度を求めるために、追加の濃度の溶解素ポリペプチドを試験する。
【0171】
同じ実験計画を用いて、本明細書で開示されるさらなる溶解素ポリペプチドのインビボにおける防御的抗菌活性を試験する。
【0172】
仮想例5
ヒト対象における全身感染の治療
多剤耐性緑膿菌(P. aeruginosa)による全身性呼吸器感染(systemic respiratory infection)と診断された患者を、一つまたは複数の本明細書で開示される溶解素ポリペプチドと組み合わせた、静脈内ポリミキシンBまたはエアロゾル化ポリミキシンBで処置する。
【0173】
静脈内ポリミキシンBの推奨投与量は1.5~2.5mg/kg/日(1mg=10,000IU)である(Sobieszczyk ME et al., J Antimicrob Chemother., 54(2):566-9 (2004))。ポリミキシンBの静脈内注射は、60~90分間かけて、15日間与える。一つまたは複数の本開示の溶解素ポリペプチド(polypetide)を含む医薬組成物を、所定の濃度で毎日静脈内投与する。あるいは、エアロゾル化ポリミキシンB療法を、毎日(14日間)、2.5mg/kg/日で、一つまたは複数の本開示の溶解素ポリペプチド(polypetide)を含む医薬組成物と組み合わせて、施行する。個々の患者の臨床状態に応じて、治療レジメン(treatment regiment)の期間および/または濃度は変動し得る。さらに、静脈内ポリミキシンBまたはエアロゾル化ポリミキシンBは、1日のうちに複数回に分けて投与可能である。静脈内ポリミキシンおよびエアロゾル化ポリミキシンの使用に関する詳細な情報は、例えば、Falagas et al. Clin Med Res. 4(2): 138-146 (2006)に記載されている。
【0174】
治療終了時に、患者を細菌排除(microbiological clearance)および安全性について評価する。全身性呼吸器感染患者の治療は、患者に置ける、前記感染に伴う症状の低減および/または原因となる細菌集団の減少もしくは根絶をもたらすと期待される。
【0175】
仮想例6
ヒト対象における糖尿病性潰瘍の局所的治療
糖尿病患者の間で、糖尿病性足部潰瘍感染は、真性糖尿病の重症な合併症の1つであり、入院の主な原因の1つである。重要なことであるが、緑膿菌(P. aeruginosa)は糖尿病性足部潰瘍において重篤な組織傷害を頻繁に引き起こす(Sivanmaliappan and Sevanan, Int J Microbiol. article ID: 605195 (2011))。糖尿病性足部潰瘍感染の治療における本開示の溶解素ポリペプチド(polypetide)の有効性を示すために、臨床試験を実施する。
【0176】
まず、個々の患者の創傷培養検体を、緑膿菌(P. aeruginosa)の存在について試験する。次に、一つまたは複数の本開示の(例えば、プール中の)溶解素ポリペプチドに対する緑膿菌(P. aeruginosa)の感受性を、臨床・検査標準協会(CLSI)基準(van der Heijden et al. Ann Clin Microbiol Antimicrob.6:8 (2007))に従って、例えばディスク拡散法を用いて、確認する。あるいは、患者を、溶解素に対する細菌感受性の基準を満たすように前もって選択しておく。並行して、使用される適切な抗生物質(例えば、ポリミキシンB)に対する個々の菌株の感受性をインビトロで決定する(あるいは、患者を、特定の抗生物質に対する細菌感受性の基準を満たすように前もって選択しておく)。感受性菌株、例えば、緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC27853(ポリミキシンに対して感受性)は、品質管理(QC)として使用され得る。さらに、溶解素ポリペプチドおよびポリミキシンB等の最適な抗生物質の両方を含む併用療法に対する、創傷培養検体中に存在する緑膿菌(P. aeruginosa)の感受性を(創傷環境による溶解素阻害の可能性を除外するために:実施例5および図7、並びに上記のそれについての考察を参照)、行う。
【0177】
インビトロ感受性研究の後に、糖尿病性潰瘍感染の治療における本開示の溶解素ポリペプチドのインビボでの有効性が試験される。溶解素は注射(例えば、静脈内注射または皮下注射注射)で投与されてもよいし、あるいは、局所製剤として創傷に直接塗布することもできる。さらに、抗生物質が、特定の抗生物質の標準的な投薬に従って指示される通りに、全身投与(経口投与もしくは非経口投与)されてもよく、あるいは局所投与されてもよい、糖尿病性潰瘍の治療に使用される抗生物質と組み合わせて、溶解素ポリペプチドを試験する。例えば、ポリミキシンBが溶解素ポリペプチドとの組み合わせで使用される場合、静脈内ポリミキシンBの推奨投与量は1.5~2.5mg/kg/日である。
【0178】
糖尿病性足部潰瘍感染は一般的にグラム陽性菌種およびグラム陰性菌種が混合された多菌性であるため(Citron et al. J Clin Microbiol. 45(9): 2819-2828 (2007))、本開示の溶解素ポリペプチドは、所与の患者の足部潰瘍感染に存在するグラム陽性菌の治療に適した、2つ以上の抗生物質および/または一つもしくは複数の他の溶解素と組み合わせて、使用され得る。溶解素処置によって、例えば、細菌集団の対数減少もしくは根絶の観点から、またはあらゆる他の臨床的もしくは実験室的な改善尺度の観点から、高い有効率(response rate)がもたらされると期待される。本開示による溶解素および抗生物質の組み合わせに対する応答は、溶解素と抗生物質が協同すると、さらにより高くなると期待される。実際に、溶解素または抗生物質の一方または両方の投与量を、有効性を犠牲にすることなく減少させることが可能な場合がある。
【0179】
仮想例7
ヒト対象における熱傷の局所的治療
熱傷創感染は、治癒を遅らせ、瘢痕を促進し、菌血症、敗血症または臓器不全をもたらし得ることから、重大な懸念となる。緑膿菌(P. aeruginosa)は最も一般的な熱傷感染源である(Church et al. Clinical Microbiology Reviews, 19 (2), 403 - 434 (2006))。本開示の溶解素ポリペプチドは緑膿菌(P. aeruginosa)に対して活性を有することが示されたため、単独療法として、または有利には一つもしくは複数の抗生物質と組み合わせて、そのような感染の治療に使用できると期待される。
【0180】
本開示の溶解素ポリペプチドを含む、クリーム、ゲル、および/または気泡の形態の局所用組成物は、I度熱傷、II度熱傷、およびIII度熱傷を含む、様々な程度の熱傷を患う患者の患部皮膚領域に塗布される。抗生物質または追加の活性薬剤(異なる標的生物に対して活性を有する溶解素および所望によりこれらの標的生物に対する抗生物質)を含むまたは含まない、溶解素ポリペプチドを含有する局所用組成物は、様々な時間間隔で患部熱傷領域に直接塗布される。
【0181】
溶解素ポリペプチドの局所投与は、原因である細菌集団の減少または根絶だけでなく、患者の症状の低減または消失ももたらすと期待される。

***
【0182】
上記実施例は、本明細書に記載の方法および特徴の例示であり、限定を意図するものではない。さらに、上記実施例は、本開示に対する一般的な適用性の記述を含み、そのような記述は、それらが現れた特定の実施例に限定されず、本明細書に記載される実験結果のより広い意味の結論の記述および表現を構成する。
【0183】
引用された全ての参考文献の内容は、あらゆる目的のために、完全な複写の如く、全体が参照によって本明細書に援用される。

配列番号1:
GN37
ポリペプチド配列
MTYTLSKRSLDNLKGVHPDLVAVVHRAIQLTPVDFAVIEGLRSVSRQKEL VAAGASKTMNSRHLTGHAVDLAAYVNGIRWDWPLYDAIAVAVKAAAKELG VAIVWGGDWTTFKDGPHFELDRSKYR
配列番号2:
GN2
ポリペプチド配列
MKISLEGLSLIKKFEGCKLEAYKCSAGVWTIGYGHTAGVKEGDVCTQEEAEKLLRGDIFKFEEYVQDSVKVDLDQSQFDALVAWTFNLGPGNLRSSTMLKKLNNGEYESVPFEMRRWNKAGGKTLDGLIRRRQAESLLFESKEWHQV
配列番号3
GN4
ポリペプチド配列
MRTSQRGIDLIKSFEGLRLSAYQDSVGVWTIGYGTTRGVTRYMTITVEQAERMLSNDIQRFEPELDRLAKVPLNQNQWDALMSFVYNLGAANLASSTLLKLLNKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRAAERALFLEPLS
配列番号4
GN14
ポリペプチド配列
MNNELPWVAEARKYIGLREDTSKTSHNPKLLAMLDRMGEFSNESRAWWHDDETPWCGLFVGYCLGVAGRYVVREWYRARAWEAPQLTKLDRPAYGALVTFTRSGGGHVGFIVGKDARGNLMVLGGNQSNAVSIAPFAVSRVTGYFWPSFWRNKTAVKSVPFEERYSLPLLKSNGELSTNEA
配列番号5
GN43
ポリペプチド配列
MKRTTLNLELESNTDRLLQEKDDLLPQSVTNSSDEGTPFAQVEGASDDNTAEQDSDKPGASVADADTKPVDPEWKTITVASGDTLSTVFTKAGLSTSAMHDMLTSSKDAKRFTHLKVGQEVKLKLDPKGELQALRVKQSELETIGLDKTDKGYSFKREKAQIDLHTAYAHGRITSSLFVAGRNAGLPYNLVTSLSNIFGYDIDFALDLREGDEFDVIYEQHKVNGKQVATGNILAARFVNRGKTYTAVRYTNKQGNTSYYRADGSSMRKAFIRTPVDFARISSRFSLGRRHPILNKIRAHKGVDYAAPIGTPIKATGDGKILEAGRKGGYGNAVVIQHGQRYRTIYGHMSRFAKGIRAGTSVKQGQIIGYVGMTGLATGPHLHYEFQINGRHVDPLSAKLPMADPLGGADRKRFMAQTQPMIARMDQEKKTLLALNKQR
配列番号6
PGN4
ポリペプチド配列
NKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRASQSRESQC
配列番号7
FGN4-1
ポリペプチド配列
NKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRAAERALFLEPLS
配列番号8
FGN4-2
ポリペプチド配列
NKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRA
配列番号9
FGN4-3
ポリペプチド配列
NKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRK
配列番号10
FGN4-4
ポリペプチド配列
NKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRAAERALFLEPLSC
配列番号11
GN37
ポリヌクレオチド配列
ATGACATACACCCTGAGCAAAAGAAGCCTGGATAACCTAAAAGGCGTTCATCCCGATCTGGTTGCCGTTGTCCATCGCGCCATCCAGCTTACACCGGTTGATTTCGCGGTGATCGAAGGCCTGCGCTCCGTATCCCGCCAAAAGGAACTGGTGGCCGCCGGCGCCAGCAAGACCATGAACAGCCGACACCTGACAGGCCATGCGGTTGATCTAGCCGCTTACGTCAATGGCATCCGCTGGGACTGGCCCCTGTATGACGCCATCGCCGTGGCTGTGAAAGCCGCAGCAAAGGAATTGGGTGTGGCCATCGTGTGGGGCGGTGACTGGACCACGTTTAAGGATGGCCCGCACTTTGAACTGGATCGGAGCAAATACAGATGA
配列番号12
GN2
ポリヌクレオチド配列
ATGAAAATTAGTTTAGAGGGATTATCTCTCATCAAAAAATTTGAGGGTTGTAAACTAGAAGCATACAAATGTTCTGCAGGAGTGTGGACTATAGGTTATGGTCATACTGCAGGTGTAAAAGAAGGTGATGTTTGCACACAAGAGGAAGCTGAAAAATTATTAAGAGGAGATATCTTTAAATTTGAAGAGTATGTGCAAGATAGTGTAAAGGTTGATTTAGACCAAAGTCAATTTGACGCATTAGTTGCATGGACATTTAATTTAGGCCCAGGTAATTTAAGAAGTTCAACCATGTTGAAAAAATTAAATAATGGAGAGTATGAATCTGTTCCTTTCGAAATGAGAAGGTGGAATAAAGCAGGTGGTAAAACCTTAGATGGTTTAATCAGAAGACGCCAAGCAGAATCATTATTATTTGAAAGTAAAGAGTGGCATCAAGTATAA
配列番号13
GN4
ポリヌクレオチド配列
ATGCGTACATCCCAACGAGGCATCGACCTCATCAAATCCTTCGAGGGCCTGCGCCTGTCCGCTTACCAGGACTCGGTGGGTGTCTGGACCATAGGTTACGGCACCACTCGGGGCGTCACCCGCTACATGACGATCACCGTCGAGCAGGCCGAGCGGATGCTGTCGAACGACATTCAGCGCTTCGAGCCAGAGCTAGACAGGCTGGCGAAGGTGCCACTGAACCAGAACCAGTGGGATGCCCTGATGAGCTTCGTGTACAACCTGGGCGCGGCCAATCTGGCGTCGTCCACGCTGCTCAAGCTGCTGAACAAGGGTGACTACCAGGGAGCAGCGGACCAGTTCCCGCGCTGGGTGAATGCGGGCGGTAAGCGCTTGGATGGTCTGGTTAAGCGTCGAGCAGCCGAGCGTGCGCTGTTCCTGGAGCCACTATCGTGA
配列番号14
GN14
ポリヌクレオチド配列
ATGAATAACGAACTTCCTTGGGTAGCCGAAGCCCGAAAGTATATCGGCCTTCGCGAAGACACTTCGAAGACTTCGCATAACCCGAAACTTCTTGCCATGCTTGACCGCATGGGCGAATTTTCCAACGAATCCCGCGCTTGGTGGCACGACGACGAAACGCCTTGGTGCGGACTGTTCGTCGGCTATTGCTTGGGCGTTGCCGGGCGCTACGTCGTCCGCGAATGGTACAGGGCGCGGGCATGGGAAGCCCCGCAGCTTACGAAGCTTGACCGGCCCGCATACGGCGCGCTTGTGACCTTCACGCGAAGCGGCGGCGGCCACGTCGGTTTTATTGTGGGCAAGGATGCGCGCGGAAATCTTATGGTTCTTGGCGGTAATCAGTCGAACGCCGTAAGTATCGCACCGTTCGCAGTATCCCGCGTAACCGGCTATTTCTGGCCGTCGTTCTGGCGAAACAAGACCGCAGTTAAAAGCGTTCCGTTTGAAGAACGTTATTCGCTGCCGCTGTTGAAGTCGAACGGCGAACTTTCGACGAATGAAGCGTAA
配列番号15
GN43
ポリヌクレオチド配列
ATGAATAACGAACTTCCTTGGGTAGCCGAAGCCCGAAAGTATATCGGCCTTCGCGAAGACACTTCGAAGACTTCGCATAACCCGAAACTTCTTGCCATGCTTGACCGCATGGGCGAATTTTCCAACGAATCCCGCGCTTGGTGGCACGACGACGAAACGCCTTGGTGCGGACTGTTCGTCGGCTATTGCTTGGGCGTTGCCGGGCGCTACGTCGTCCGCGAATGGTACAGGGCGCGGGCATGGGAAGCCCCGCAGCTTACGAAGCTTGACCGGCCCGCATACGGCGCGCTTGTGACCTTCACGCGAAGCGGCGGCGGCCACGTCGGTTTTATTGTGGGCAAGGATGCGCGCGGAAATCTTATGGTTCTTGGCGGTAATCAGTCGAACGCCGTAAGTATCGCACCGTTCGCAGTATCCCGCGTAACCGGCTATTTCTGGCCGTCGTTCTGGCGAAACAAGACCGCAGTTAAAAGCGTTCCGTTTGAAGAACGTTATTCGCTGCCGCTGTTGAAGTCGAACGGCGAACTTTCGACGAATGAAGCGTAA
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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