(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】包被食品成形方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A21C 9/06 20060101AFI20220225BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220225BHJP
A23P 20/20 20160101ALI20220225BHJP
【FI】
A21C9/06 A
A23L5/00 A
A23P20/20
(21)【出願番号】P 2020100513
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2020-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390013941
【氏名又は名称】株式会社コバード
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】特許業務法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 博紀
(72)【発明者】
【氏名】吹上 透
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071858(JP,A)
【文献】特開2002-335933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
A23P 20/00-20/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の外皮材に内材を配置する配置工程と、シャッタ手段により前記内材を包み込むように前記外皮材の周縁部を寄せ集めてシャッタ手段を閉じ切らずに形成された隙間にこぶ状の突起を形成して周縁部を前記内材が露出しない程度に緩く封着する封着工程と、前記外皮材を支持手段により下方から支持しながら封着部分の前記突起を前記シャッタ手段に対して相対的に下方に移動させ
た後前記シャッタ手段を閉じ切るように動作させて封着部分の前記突起を横方向から押し均すように整形する整形工程とを備えている包被食品成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン生地、饅頭生地等の外皮材により餡、総菜等の内材を包み込むように成形する包被食品成形方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の外皮材上に内材を配置して、外皮材の周縁部をシャッタ手段により寄せ集めて内材を包み込むように封着成形する成形方法が実用化されており、多数の包被食品を安定して成形することが行われている。
【0003】
こうした成形方法では、外皮材の周縁部を封着する際に寄せ集めた周縁部が封着部分において盛り上がるようにこぶ状の突起に形成されるようになる。こぶ状の突起が形成された成形品は見栄えの点で劣るため、こぶ状の突起のない形状に成形する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、外皮材の周縁部をシャッタ手段により寄せ集める際に、シャッタ片の側面の前縁部よりも遅れて閉鎖する後縁部で内材を包み込むように外皮材を封着することで、封着時に外皮材がシャッタ手段の上方にはみ出ないように成形することができる点が記載されている。また、特許文献2では、こぶ状の突起が形成された封着部分を上方の閉鎖されたシャッタの下面に押し当てることで、こぶ状の突起を没入するように押しつぶして成形する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4276800号公報
【文献】特許第5281276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、シャッタ片の封着面の形状を工夫することでシャッタ手段の上方からはみ出さないように成形しているが、閉鎖するシャッタ片が突き当たる部分の隙間には生地が残留して突起が形成されるようになる場合がある。また、特許文献2では、こぶ状の突起を没入するように押しつぶしており、外観上突起がなくなるものの内部に押し込まれた生地により成形品の生地の厚みが不均一となり、押しつぶした部分に突起の痕跡が残るため外観が悪くなることは避けられない。
【0007】
そこで、本発明は、封着部分を突起のない形状に確実に成形することができる包被食品の成形方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る包被食品成形方法は、シート状の外皮材に内材を配置する配置工程と、シャッタ手段により前記内材を包み込むように前記外皮材の周縁部を寄せ集めてシャッタ手段を閉じ切らずに形成された隙間にこぶ状の突起を形成して周縁部を前記内材が露出しない程度に緩く封着する封着工程と、前記外皮材を支持手段により下方から支持しながら封着部分の前記突起を前記シャッタ手段に対して相対的に下方に移動させた後前記シャッタ手段を閉じ切るように動作させて封着部分の前記突起を横方向から押し均すように整形する整形工程とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のような構成を有することで、封着部分を突起のない形状に確実に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態に関する概略正面図である。
【
図3】包被食品成形装置の成形工程に関する説明図である。
【
図4】包被食品成形装置の成形工程に関する説明図である。
【
図5】包被食品成形装置の成形工程に関する説明図である。
【
図6】包被食品成形装置の成形工程に関する説明図である。
【
図7】包被食品成形装置の成形工程に関する説明図である。
【
図8】包被食品成形装置の成形工程に関する説明図である。
【
図9】包被食品成形装置の成形工程に関する説明図である。
【
図10】包被食品成形装置の成形工程に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る包被食品成形装置に関する概略正面図である。包被食品成形装置1は、筺体2、内材を供給する供給部3、内材を吐出して外皮材に配置する吐出部4、吐出部4を上下動させる移動部5、外皮材の縁部を押える押え部6、外皮材を搬入する搬入部7、外皮材に内材を配置した状態で外皮材の周縁部を寄せ集めて封着する封着部8、及び、外皮材を支持するとともに成形品を搬出する支持部9を備えている。また、図示されていないが、各部の動作を制御して成形動作を行うように制御する制御装置を備えている。
【0014】
成形に用いる内材としては、例えば、粒餡や漉し餡等の豆類の餡、豆腐ペースト、野菜ペースト、カレーペースト、クリームチーズ等のペースト状の食材が挙げられ、こうしたペースト状の食材には固形食材を混ぜ込んで用いることもできる。混ぜ込む固形食材としては、例えば、大栗、アーモンド、マカダミア・ナッツ、ブルーベリー等の果実類、リンゴやオレンジ等の果肉の角切り、甘納豆、乾燥フルーツ、金時豆、ナッツ類の粒状物、ウィンナ、角切り肉、角切りジャガイモ、角切りニンジン等の加工食材といったものが挙げられる。成形に用いる外皮材としては、例えば、パン生地、中華饅頭生地、デニッシュパン生地、ドーナツ生地といった食材が挙げられる。
【0015】
供給部3は、筺体2の上部に設けられており、ペースト状の食材等の内材を収容するホッパ30、ホッパ30内の内材を供給管32に圧送するベーンポンプ31を備えている。供給管32は、吐出部4に接続されており、可撓性を有する管材が用いられ、後述する吐出部4の上下動に対して柔軟に対応することができるようになっている。
【0016】
吐出部4は、供給管32が接続された吐出管40及び吐出管40を支持する支持フレーム41を備えており、吐出管40の内部には円柱状の開閉部材が挿入されている。開閉部材は、駆動ロッドを介してエアアクチュエータ42に接続されており、エアアクチュエータ42を揺動駆動することで、開閉部材を吐出管40内で揺動させることができる。また、支持フレーム41には、開閉部材を上下動させるエアシリンダ43が設けられており、エアシリンダ43を動作させることで、吐出管40内を開閉部材が上下方向に摺動するようになり、開閉手段として機能するようになる。
【0017】
移動部5は、吐出部4の支持フレーム41が固定された作動部材を備えており、作動部材は、筺体2の内面に設けられた駆動機構により上下方向に移動するようになっている。そのため、作動部材が上下動することで、吐出部4全体が上昇及び下降の動作を行うようになる。
【0018】
押え部6は、移動部5の作動部材に取り付けられており、吐出管40の先端部のノズルの周囲に配置されるリング状の押え部材60を備えている。押え部材60は、支持板61に固定されており、支持板61には上面にエアシリンダ62の駆動ロッドが固定されている。エアシリンダ62は、移動部5の作動部材に固定されており、駆動ロッドを上下方向に前進及び後退させるように動作する。そのため、押え部材60は、吐出管40の周囲に配置された状態で上下方向に移動するようになる。
【0019】
搬入部7は、シャトルコンベヤからなり、シート状の外皮材を搬送する搬送ベルト70及び搬送ベルト70を移動させる駆動プーリ71を備えている。シャトル動作を行うための従動プーリ72を搬送方向に移動させることで、搬送ベルト70を吐出部4の下方まで延長させるように動作する。なお、搬入部7の搬送方向上流側には、外皮材を所定の厚さで略円形状に整形する整形機構が配置されており、整形されたシート状の外皮材が搬入部7に移送されるようになっている。
【0020】
封着部8は、シャッタ手段として、上下2段のシャッタ80及び81を備えており、シャッタ80及び81の間には、中心部に円形の開口が形成された平板状の受け部材82が挿入されている。シャッタ80及び81は、吐出管40の下方に配置されており、後述するシャッタ片により形成される開口領域の中心が吐出管40の中心軸とほぼ一致するように筺体2に取り付けられている。また、受け部材82についてもその中心部に形成された開口の中心が吐出管40の中心軸とほぼ一致するように配置されている。
【0021】
シャッタ80及び81は、それぞれ支持基板に複数のシャッタ片が回動可能に取り付けられており、各シャッタ片の回動軸が連結されて一体化している。そして、下段シャッタ81の下側に設けられた支持バーを筐体2に取り付けるようになっている。
【0022】
図2は、上段シャッタ80に関する平面図である。上段シャッタ80は、6枚のシャッタ片80aを備えており、各シャッタ片80aは、中心軸を中心とする円周に等間隔で配置された回動軸に回動可能に取り付けられている。各回動軸には、回動板80bがシャッタ片80aと係合ピン等の係合部材により取り外し可能に連結されて装着されており、回動板80b及びシャッタ片80aが回動軸を中心に一体的に回動するようになっている。回動板80bの回動軸よりも外側の外周縁部には、上面側にリンク部材80cの端部が枢支されており、隣り合う回動板80b同士がリンク部材80cにより連結されている。そのため、6枚の回動板80bは、連動して回動動作を行うようになっており、回動板80bの回動動作によりシャッタ片80aが回動動作を行うようになっている。シャッタ80の筐体2側に配置された回動板80bには、連結ロッド80dの一方の端部が揺動可能に取り付けられており、他方の端部は連結ナットにより駆動ロッド83と着脱可能に連結されるようになっている。駆動ロッド83は、筐体2内に配置された駆動機構に連結されており、駆動機構を往復動作させることで、回動板80bを回動軸を中心に揺動させてシャッタ片80aを開閉動作させている。
【0023】
この例では、6枚のシャッタ片80aを時計回りに回動させることで開く方向に動作し、反時計回りに回動させることで閉じる方向に動作するようになっている。そして、回動する角度を調整することで、シャッタ片80aにより囲まれた開口領域の面積を調整することができる。
【0024】
下段シャッタ81についても上段シャッタ80と同様に構成されており、6枚のシャッタ片を開閉動作させて封着動作を行うようになっている。
【0025】
上述した封着部8の例では、6枚シャッタを用いているが、シャッタのシャッタ片の枚数は6枚に限定されることはなく、2枚以上のシャッタ片を用いたシャッタであれば使用することができる。また、上段シャッタ及び下段シャッタのシャッタ片の枚数が異なるように設定することも可能で、上段シャッタ又は下段シャッタのどちらか一方のシャッタを省略した一段シャッタ及び受け部材で構成することもできる。
【0026】
支持部9は、成形品を搬出する搬送ベルト90を備えており、搬送ベルト90は、従動プーリ91及び92に張架されるとともに駆動機構93の駆動プーリに巻回されて張設されている。そして、搬送ベルト90の従動プーリ91側は、シャッタ81の下方に延設されており、受け部材82の開口のほぼ直下の位置に支持部材94が設けられている。支持部材94は、搬送ベルト90の上側の下面に当接するように配置されている。
【0027】
支持部材94は、筺体2の内部に設けられた作動部材に作動フレームを介して固定されており、作動部材は、筺体2の内部に設けられた駆動機構により上下動するようになっている。作動部材が上下動することで支持部材94が上昇及び下降の動作を行うようになり、後述するように、封着部8において成形動作を行う際に支持部材94が搬送ベルト90とともに上昇して外皮材を支持し、外皮材に内材が包み込まれた成形品を搬送ベルト90上に載置した状態で支持部材94を下降させて搬送ベルト90を駆動することで、成形品を搬出することができる。
【0028】
図3から
図10は、包被食品成形装置1の成形工程に関する説明図である。説明図では、成形動作に関連する吐出部4、押え部6、封着部8及び支持部9の動作を示している。
図3は、搬入部7からシート状の外皮材Fが受け部材82上に投入された状態を示している。吐出部4及び押え部6は、予め上昇して待機位置に設定されており、封着部8の上段シャッタ80及び下段シャッタ81は、いずれも開いた状態に設定されている。また、支持部材94は、上昇して成形品を支持可能な位置に設定されている。
【0029】
この場合、投入された外皮材Fに対して、上段シャッタ80を閉じる方向に動作させて外皮材Fの周縁部に接触させ、吐出管40の中心軸に対して位置調整する工程を行うようにしてもよい。
【0030】
図4は、吐出部4が下降して吐出管40の先端のノズルが外皮材Fに当接した状態を示している。吐出部4とともに押え部6も下降して押え部材60が外皮材Fの周縁部に当接し、受け部材82との間で外皮材Fの周縁部を保持するようになる。吐出管40内の開閉部材44は上昇した位置に配置されており、供給部3との連結部分よりも上方に配置されている。そのため、供給部3から供給管32を通して供給された内材Gは、連結部分から吐出管40内に導入されるようになる。
【0031】
図5は、吐出管40内の開閉部材44が下降して内材Gを吐出した状態を示している。開閉部材44が下降することで、吐出管40内に導入された内材Gが外皮材Fに向かって押し出されるように吐出する。外皮材Fは周縁部が押え部材60により保持された状態で中央部分が下方の支持部材94に向かって窪んだ形状となって内材Gを収容するようになる。
【0032】
図6は、吐出部4が上昇して外皮材Fに内材Gを配置した状態を示している。吐出部4を上昇させて先端のノズル及び開閉部材44の先端を内材Gから離すように動作させる。その際に、開閉部材44を中心軸を中心に揺動させながら上昇させることで内材Gの切れをよくすることができ、内材Gの垂れ等を防止することが可能となる。
【0033】
図7は、外皮材Fの周縁部を寄せ集めて内材Gを包み込むようにした状態を示している。上段シャッタ80を閉じる方向に動作させることで、受け部材82上に保持された外皮材Fの周縁部を中心に向かって寄せ集めるようになる。
【0034】
図8は、寄せ集められた外皮材Fの周縁部を封着する状態を示している。外皮材Fの周縁部を寄せ集めた状態で下段シャッタ81を閉じる方向に動作させることで、寄せ集められた周縁部が圧着して封着されるようになる。この場合、下段シャッタ81を閉じ切ることはなく、周縁部が緩く封着されて内材Gが露出しない程度に動作させるとよい。
図11(a)は、緩く封着された封着品hを示している。封着品hの封着部分には、下段シャッタ81が完全に閉じ切らずに形成された隙間にこぶ状の突起tが形成されている。下段シャッタ81を閉じ切った状態では細く縊れた状態の突起に形成されるが、突起tは、全体にほぼ同じ厚みで盛り上がるように形成されている。
【0035】
図9は、封着品hを整形するために位置設定する状態を示している。封着動作した下段シャッタ81を開く方向に動作させて、支持部材94を下降させる。そのため、支持部材94上に載置された封着品hの封着部分は、下段シャッタ81に対して相対的に下方に移動するように位置設定される。この例では、支持部材94をわずかに下降させて下段シャッタ81の封着位置よりも下方にずらすように設定している。支持部材94の下方への移動量は、受け部材の厚さ等に基づいて設定された初期値により試行を行って決定すれば、確実に整形動作を行うことができる。
【0036】
図10は、封着部分の整形を行う状態を示している。支持部材94の位置を固定した状態で下段シャッタ81を閉じ切るように動作させることで、各シャッタ片により封着部分の突起を横方向から押し均すようにする。
図11(b)は、成形品Hを示している。各シャッタ片が封着品hの表面をなでるように均すので、封着部分を押し潰す場合のように外皮材が不均一の厚さにはならず、整形部分Tを凹凸のないきれいな表面に仕上げることができる。
【0037】
そして、整形された成形品Hは、支持部材94に載置された状態で下降し、搬送ベルト90により搬送されて次の工程に搬出されるようになる。
【0038】
以上説明したように、シャッタにより内材Gを包み込むように外皮材Fの周縁部を寄せ集めて封着した後、封着部分に形成された突起をシャッタにより均すように整形しているので、封着部分において外皮材の厚さが不均一とならずに突起のないきれいな表面に仕上げることができる。
【符号の説明】
【0039】
F・・・外皮材、G・・・内材、h・・・封着品、H・・・成形品、1・・・包被食品成形装置、2・・・筺体、3・・・供給部、4・・・吐出部、40・・・吐出管、44・・・開閉部材、5・・・移動部、6・・・押え部、60・・・押え部材、7・・・搬入部、8・・・封着部、80・・・上段シャッタ、81・・・下段シャッタ、82・・・受け部材、9・・・支持部、94・・・支持部材