(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】多軸骨アンカー装置、並びに、器具及び多軸骨アンカー装置のシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/86 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
A61B17/86
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017160564
(22)【出願日】2017-08-23
【審査請求日】2020-06-02
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ビーダーマン
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0149887(US,A1)
【文献】特開2013-078576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0015576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド(6)を骨アンカー要素(1)に結合するための受容部品(5)であって、前記受容部品(5)は、第1の端部(5a)と、第2の端部(5b)と、前記第1の端部(5a)と前記第2の端部(5b)の間に延びる中心軸(C)と、前記第1の端部(5a)に設けられた端面(10)と、
前記ロッド(6)を受容するための、前記第1の端部(5
a)に設けられた凹部(52)と、骨アンカー要素(1)のヘッド(3)を旋回可能に保持するための、前記第2の端部(5b)に設けられた、少なくとも部分的に可撓性であるヘッド受容部(57)と、を備える、受容部品(5)と、
前記ヘッド受容部(57)の周囲に配置されるように構成されたクランプリング(8)であって、前記クランプリング(8)が前記ヘッド受容部の周囲にあるとき、前記クランプリング(8)は、挿入されたヘッド(3)がロックされるように前記クランプリング(8)が前記ヘッド受容部(57)に力を及ぼすロック位置と、挿入されたヘッド(3)が前記受容部
品(5,5’)に対して旋回可能な非ロック位置と、をとることができる、クランプリング(8)と、
を備え、
前記受容部品(5)は、器具の係合部によって係合されるように構成された少なくとも1つの第1の係合構造体(54a,54b)をさらに備え、前記
第1の係合構造体(54a,54b)は、前記第1の端部(5a)で前記端面(10)に直接又は隣接して配置されて
おり、
前記第1の係合構造体(54a,54b)は、前記受容部品(5)の外周面に配置され、前記受容部品(5)の前記外周面よりも半径方向外側に延びており、
前記第1の係合構造体(54a,54b)は、前記受容部品の前記中心軸(C)を通って、且つ、前記ロッド(6)を受容するための前記凹部(52)の長手方向軸(L)を通って、延びる平面に対して非対称に配置される、
骨アンカー装置(100)。
【請求項2】
少なくとも1つの第2の係合構造体(88a,88b)が設けられ、前記第2の係合構造体(88a,88b)は、前記器具のさらなる係合部によって係合されるように構成され、前記受容部品(5)に対して前記クランプリング(8)を軸方向に離脱させることができるように前記クランプリング(8)に配置される、請求項1に記載の骨アンカー装置(100)。
【請求項3】
前記クランプリング(8)は、上方に突出するアーム(83
a,83b)を備え、前記第2の係合構造体(88a,88b)は、前記上方に突出するアーム(83
a,83b)に設けられる、請求項
2に記載の骨アンカー装置(100)。
【請求項4】
前記第2の係合
構造体(8
8a,8
8b)は、前記上方に突出するアーム(83a,83b)の先端領域に配置され、
前記上方に突出するアーム(83a,83b)は、前記第2の係合
構造体(8
8a,8
8b)が前記中心軸に沿った方向のある位置に配置されるような長さを有し、前記
位置は、固定要素
(9)によって前記受容部品(5)内にロックされた挿入された
前記ロッド(6)の位置、又は、
当該ロッド(6)と前記第1の端部(5a)との間の軸方向の位置、に対応する、
請求項3に記載の骨アンカー装置(100)。
【請求項5】
前記第1の係合構造体(54a,54b)及び/又は前記第2の係合構造体(88a,88b)は、前記中心軸の周りの前記器具又は前記器具の一部の円周方向の回転運動によって係合されるように形成され
、円周方向リブとして形成されている、請求項4に記載の骨アンカー装置(100)。
【請求項6】
前記受容部品(5)は、前記中心軸(C)の方向に前記ヘッド受容部(57)に対面する縁部(50a)から、前記受容部品(5)の前記第1の端部(5a)から離れてある距離まで延びる、凹部(56a,56b)をさらに備える、請求項
4に記載の骨アンカー装置(100)。
【請求項7】
前記第2の係合構造体(88a,88b)は、
-ダブテール形状の断面を有し、又は、片側のみのダブテールのような断面を有し、及び/又は、
-前記クランプリング(8
)の外周面に配置され
、前記クランプリング(8)の
前記外周面よりも半径方向外側に延びる、
請求項
2~6のいずれか1項に記載の骨アンカー装置(100)。
【請求項8】
前記第2の端部(5b)から離れて配向された前記
第1の係合構造体(54a,54b)の上面は
、前記第1の端部(5a)で前記端面(10)と同一平面上にある、請求項
1に記載の骨アンカー装置(100)。
【請求項9】
前記端面は
、U字形
の前記凹部(52)によって形成された脚部(52a,52b)の環状セグメント形状の端面として設けられる、請求項
1に記載の骨アンカー装置
(100)。
【請求項10】
延びて、挿入されたヘッド(3)に圧力を加えるように構成された圧力部材(7)をさらに備える、請求項
1に記載の骨アンカー装置(100)。
【請求項11】
前記第2の係合構造体(88a,88b)は
、前記受容部品の前記中心軸(C)を通って、且つ、前記ロッド(6)を受容するための前記凹部(52)の長手方向軸(L)を通って、延びる平面に対して非対称に配置される、請求項2~
6のいずれか1項に記載の骨アンカー装置(100)。
【請求項12】
ロッド(6)を骨アンカー要素(1)に結合するための受容部品(5)であって、前記受容部品(5)は、第1の端部(5a)と、第2の端部(5b)と、前記第1の端部(5a)と前記第2の端部(5b)の間に延びる中心軸(C)と、前記第1の端部(5a)に設けられた端面(10)と、前記ロッド(6)を受容するための、前記第1の端部(5a)に設けられた凹部(52)と、骨アンカー要素(1)のヘッド(3)を旋回可能に保持するための、前記第2の端部(5b)に設けられた、少なくとも部分的に可撓性であるヘッド受容部(57)と、を備える、受容部品(5)と、
前記ヘッド受容部(57)の周囲に配置されるように構成されたクランプリング(8)であって、前記クランプリング(8)が前記ヘッド受容部の周囲にあるとき、前記クランプリング(8)は、挿入されたヘッド(3)がロックされるように前記クランプリング(8)が前記ヘッド受容部(57)に力を及ぼすロック位置と、挿入されたヘッド(3)が前記受容部品(5,5’)に対して旋回可能な非ロック位置と、をとることができる、クランプリング(8)と、
を備え、
前記受容部品(5)は、器具の係合部によって係合されるように構成された少なくとも1つの第1の係合構造体(54a,54b)をさらに備え、前記第1の係合構造体(54a,54b)は、前記第1の端部(5a)で前記端面(10)に直接又は隣接して配置されており、
少なくとも1つの第2の係合構造体(88a,88b)が設けられ、前記第2の係合構造体(88a,88b)は、前記器具のさらなる係合部によって係合されるように構成され、前記受容部品(5)に対して前記クランプリング(8)を軸方向に離脱させることができるように前記クランプリング(8)に配置され、
前記第1の係合構造体(54a,54b)及び前記第2の係合構造体(88a,88b)は、それぞれ、前記受容部品の前記中心軸(C)を通って、且つ、前記ロッド(6)を受容するための前記凹部(52)の長手方向軸(L)を通って、延びる平面に対して非対称に配置される、
骨アンカー装置(100)。
【請求項13】
少なくとも1つの第3の係合構造体(54a’,54b’)が前記受容部品(5)に設けられ、前記受容部品(5)は、前記
中心軸(C)の周りの円周方向に前記第1の係合構造体(54a,54b)と位置合わせされ、且つ、前記中心軸(C)に沿った方向に前記第1の係合
構造体からある距離離れた位置に配置されており、前記第3の係合構造体(54a’,54b’)は、
前記円周方向に対面する当接端部(540a2’,540b2’)を備える、請求項1~
4のいずれか1項に記載の骨アンカー装置(100)。
【請求項14】
ロッド(6)を骨アンカー要素(1)に結合するための受容部品(5)であって、前記受容部品(5)は、第1の端部(5a)と、第2の端部(5b)と、前記第1の端部(5a)と前記第2の端部(5b)の間に延びる中心軸(C)と、前記第1の端部(5a)に設けられた端面(10)と、前記ロッド(6)を受容するための、前記第1の端部(5a)に設けられた凹部(52)と、骨アンカー要素(1)のヘッド(3)を旋回可能に保持するための、前記第2の端部(5b)に設けられた、少なくとも部分的に可撓性であるヘッド受容部(57)と、を備える、受容部品(5)と、
前記ヘッド受容部(57)の周囲に配置されるように構成されたクランプリング(8)であって、前記クランプリング(8)が前記ヘッド受容部の周囲にあるとき、前記クランプリング(8)は、挿入されたヘッド(3)がロックされるように前記クランプリング(8)が前記ヘッド受容部(57)に力を及ぼすロック位置と、挿入されたヘッド(3)が前記受容部品(5,5’)に対して旋回可能な非ロック位置と、をとることができる、クランプリング(8)と、
を備え、
前記受容部品(5)は、器具の係合部によって係合されるように構成された少なくとも1つの第1の係合構造体(54a,54b)をさらに備え、前記第1の係合構造体(54a,54b)は、前記第1の端部(5a)で前記端面(10)に直接又は隣接して配置されており、
少なくとも1つの第3の係合構造体(54a’,54b’)が前記受容部品(5)に設けられ、前記受容部品(5)は、前記中心軸(C)の周りの円周方向に前記第1の係合構造体(54a,54b)と位置合わせされ、且つ、前記中心軸(C)に沿った方向に前記第1の係合構造体からある距離離れた位置に配置されており、前記第3の係合構造体(54a’,54b’)は、前記円周方向に対面する当接端部(540a2’,540b2’)を備える、
骨アンカー装置(100)。
【請求項15】
-器具(200)
と、
-請求項
13又は14に記載の骨アンカー装置(100)
と、
を備えるシステムであって、
前記器具は、少なくとも1つの管状部材(202)を備え、
該管状部材(202)は、
切欠きとして形成され、前記受容部品(5)で前記第1の係合構造体(54a,54b)と係合するように配置された、少なくとも1つの第1の係合部(216a,216b)と、
前記受容部品(5)で前記第3の係合構造体(54a’,54b’)と係合するように配置された少なくとも1つの第2の係合部(218a,218b)であって、前記第2の係合部は、前記第1の係合構造体と前記第2の係合部とが互いに係合するとき、前記第3の係合構造体(54a’,54b’)の前記当接端部(540a2’,540b2’)に対面及び当接する、当接面(220b)を有する、少なくとも1つの第2の係合部(218a,218b)と、を備える、
システム。
【請求項16】
前記第2の係合部(218a,218b)は、円周方向に対する傾斜部を有する前記第2の係合部の案内壁によって設けられる自己ロック機構を備える、請求項
15に記載のシステム。
【請求項17】
少なくとも1つの前記第2の係合部(218a,218b)は、前記器具の先端部(215a,215b)の縁に直接配置される、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸骨アンカー装置、並びに、器具及び多軸骨アンカー装置のシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、多軸骨アンカー装置、並びに、器具及び多軸骨アンカー装置のシステムに関する。多軸骨アンカー装置は、ロッドを骨アンカー要素及びクランプリングに結合するための受容部品を備える。受容部品は、可撓性のヘッド受容部を有し、クランプリングは、ヘッド受容部の周囲に配置されるように構成されている。クランプリングがヘッド受容部の周囲にあるとき、クランプリングは、クランプリングがヘッド受容部に力を加えて挿入されたヘッドがロックされるロック位置と、挿入されたヘッドが受容部品に対して旋回可能である非ロック位置と、をとることができる。
【0003】
特許文献1には、骨アンカー要素のヘッドを導入しクランプするためのロッド受容部及びヘッド受容部を有する受容部品と、ヘッド受容部の周囲に配置されるように構成されたロックリングと、を含む多軸骨固定具が記載されている。ロックリングは、ロックリングがロック位置から外れて、即ちロック機構を解除できるように、工具と係合するための周方向に延びるリブの形態の係合構造体を含む。これにより、外科医又は他の施術者は、骨アンカー要素に対する受容部品の角度位置の修正又はさらなる位置決め又は再位置決めを実行することができる。
【0004】
特許文献2は、内管と外管とを含む経皮アクセス装置を記載しており、また、遠位骨係合部を有する骨アンカーと、脊髄固定要素を受容するための凹部を有する受容部材も記載している。受容部材の近位端は、器具の受容部材への接続を容易にするために、その外面に形成された弧状溝を有してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2013/0085536号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0060374号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、手術中の改善された取扱いを可能にする多軸骨アンカー装置を提供することと、そのような多軸骨アンカー装置と共に使用するための器具を含むシステムを提供することと、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の多軸骨アンカー装置と、請求項15に記載の器具及び多軸骨アンカー装置のシステムと、によって解決される。従属請求項にさらなる発展が示されている。
【0008】
本発明の実施形態によれば、多軸骨アンカー装置の受容部は、器具の対応する係合部によって係合されるように構成された第1の係合構造体を含み、第1の係合構造体は、受容部の外面上に直接配置され、又は、受容部の上端の端面若しくはその近傍に配置されていることを特徴とする。端面は、例えば、ロッド受容チャネルによって形成された受容部の脚部の環状の端面であってもよい。係合構造体を第1の端部に直接又は隣接して配置することにより、人体の組織に形成された切開又は穴内の器具の受容部及び整列した取り付け位置を容易に見つけることができる。
【0009】
第1の係合構造体のこのような配置のために、受容部は、骨内の移植部位から遠く離れてオペレータに近い位置で器具によって係合されてもよい。従って、人体の組織に形成された切開又は穴内の受容部及び器具のための十分な空間の必要性が低減され得る。換言すれば、切開部を形成する際に除去による体組織の影響が少なく、手術中の手術ステップの視覚的制御が改善され得る。係合構造体が、端面に沿って円周方向に延びるリブとして形成されている場合、対応する円周切欠きを有する器具は、容易に発見及び回転プロセスによって受容部に適用され得る。
【0010】
多軸アンカー装置は、軸方向で受容部に対して移動するときに、受容部に受容されたアンカー要素のヘッドをロック又はロック解除する、クランプリングをさらに備えることができる。このような実施形態では、クランプリングに設けられた上方に突出するアームに配置された第2の係合構造体がさらに設けられてもよい。このようなアームのために、第2の係合構造体も、受容部の上端及び第1の係合部に近い位置にあることができる。受容部に受容されたアンカー要素のロック及びロック解除を行うために受容部と協働するように構成された器具には、対応する係合部が設けられてもよい。
【0011】
さらなる実施形態では、受容部の第3の係合構造体が、器具のさらなる係合部と協働する。さらなる係合部は、当接機構(ストッパ)と、任意の機構と、を含む。当接機構は、係合動作の終点となる当接面によって実現される。自己ロック機構は、第3の係合部による係合中により大きい摩擦量を生成する器具のさらなる係合部の案内壁部の傾斜部分によって実現されてもよい。
【0012】
当接機構は、器具と多軸骨アンカー装置との間の正しい位置合わせを確立することを可能にし、自己ロック機構は、ロックされた係合位置を維持及び制御し、意図しない係合を回避することを有益に可能にする。
【0013】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面による実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明による多軸骨アンカー装置の一実施形態の分解斜視図を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の多軸骨アンカー装置を組み立てた状態の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1による多軸骨アンカー装置にそれぞれ係合している本発明の一実施形態による複数の器具の斜視図を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態による器具と、係合状態にある多軸骨アンカー装置と、の斜視図を示す図である。
【
図12】
図12は、器具の前端部の脚部の1つの内壁面の側面図である。
【
図13a】
図13aは、
図7の器具を用いて多軸骨アンカー装置を係合させるステップを示す図である。
【
図13b】
図13bは、
図7の器具を用いて多軸骨アンカー装置を係合させるステップを示す図である。
【
図13c】
図13cは、
図7の器具を用いて多軸骨アンカー装置を係合させるステップを示す図である。
【
図13d】
図13dは、
図7の器具を用いて多軸骨アンカー装置を係合させるステップを示す図である。
【
図14a】
図14aは、係合状態にある器具及び多軸骨アンカー装置の断面図を示す。
【
図14b】
図14bは、係合状態にある器具及び多軸骨アンカー装置の断面図を示す。
【
図15】
図15は、それぞれ係合した状態の器具及び多軸骨アンカー装置の係合部及び構造の拡大図である。
【
図16a】
図16aは、係合した状態の器具及び多軸骨アンカー装置の側面図である。
【
図17a】
図17aは、受容部品における係合構造体の他の実施形態を示す図である。
【
図17b】
図17bは、受容部品における係合構造体の他の実施形態を示す図である。
【
図17c】
図17cは、受容部品における係合構造体の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態による骨アンカー装置は、例えばねじ付き部を有するシャンク2を有する骨ねじの形態の骨アンカー要素1と、球面形状の外面部分を有するヘッド3と、を含む。ヘッド3は、ドライバ即ち工具と係合するための凹部4を有してもよい。骨アンカー装置はまた、骨アンカー要素1に連結されるロッド6を受容するための受容部品5を含む。さらに、受容部品5には、骨アンカー要素1のヘッド3に圧力を加えるための押圧部材7が設けられている。加えて、骨アンカー装置は、受容部品5の一部を圧縮して圧力要素7に圧力を加え、次にヘッド3に圧力を加えるための、受容部品5に取り付け可能なクランプリング8を含む。最後に、骨アンカー要素は、例えば、ロッド6を受容部品5内に固定するための内側ねじ又は止めねじの形態の固定要素9も含む。一方、内側ねじの形態の固定要素9は、脚部52a,52bに設けられた雌ねじ53に対応するねじ山を有する。
【0016】
受容部品5については、
図3a~
図4dをさらに参照してより詳細に説明する。受容部品5は、第1の端部5aと、反対側の第2の端部5bと、第1の端部5a及び第2の端部5bを貫通する中心軸Cと、を含む。第1の端部5aは、以下でより詳細に説明するように、器具の一部のための当接部として働くことができる。通路51は、第1の端部5aから第2の端部5bまで受容部品5を貫通して延びている。通路51は、第1の端部5aから第1の端部5aよりある距離までの領域内の円筒形同軸孔51aとして形成されてもよく、この実施形態では、通路51は、最小直径の領域に達するまで、第2の端部5aに向かって内径が小さくなる収容空間51b内で狭くなっていくことができる。収容空間51bは、
図14a、
図14bにも示されるように、骨アンカー装置1のヘッド3及び押圧部材7の少なくとも一部を収容するように機能する。第2の端部5bに隣接して、テーパ状又はより具体的には円錐形の底部開口部51cが、最小直径を有する領域から広がっている。
【0017】
第1の端部5aから第2の端部9bの方向に実質的にU字形凹部52が延在し、ロッド6が凹部52内に配置されてそこに案内され得るように、凹部52の幅はロッド6の直径よりも僅かに大きい。凹部52は、ロッド6のためのチャネルを形成する。凹部52によって、2本の自由脚52a,52bが形成され、その上に雌ねじ53が設けられ得る。この実施形態では、雌ねじ53は、第1の端部5aによって画定される環状端面10から、孔51の内側の第1の端部5aよりある距離まで、延びている。雌ねじ53は、例えば、メートルねじ山、平らなねじ山、負の角度のねじ山、鋸歯のねじ山、又は他の任意のねじ山の形であり得る。好ましくは、固定要素9がねじ込まれたときに脚部52a,52bの広がりを防止又は低減するために、平らなねじ山又は負の角度のねじ山などのねじ山形態が使用される。アンダーカット59は、
図4aに見られるように、第1の端部5aから離れる方向に雌ねじ53に隣接して形成される。
【0018】
第1の端部5aに隣接する受容部品5の上部50は、例えば2つの平らな凹部56a,56b等を除いて、実質的に円筒形の外面を有しており、これについては以下でより詳細に説明する。また、受容部品5の上部50の外面には、器具と係合するための第1の係合構造体が設けられており、第1の係合構造体は、それぞれ実施形態に示された各脚52a,52bに形成された2つの円周方向リブ54a,54bによって形成され得る。リブ54a,54bは、溝5cと上部50の下端50aとの間に位置している。リブ54a,54bのそれぞれは、例えばおよそ四半円以下だけの、例えば実施形態に示された約60°の角度(
図4c参照)分だけの、上部50の円周の一部にわたり延びている。各リブ54a,54bの一端部540a1,540b1が凹部52に位置付けられ、各リブの他端部540a2,540b2が円周方向に見られる各脚部54a,54bのほぼ中間部まで延びている。従って、円周方向において、リブ54a,54bのそれぞれの他端部540a2,540b2と、U字形凹部52のそれぞれ他の縁部と、の間でその方向に延在する各脚部52a,52bの外面にリブのない表面部55a,55bがある。
【0019】
また、リブ54a,54bは、同軸孔51の中心軸Cと凹部52の長手方向軸Lとを通る平面に対して非対称に配置されている。より具体的には、リブ54a,54bの位置は、中心軸Cに対して測定された180°オフセットされる。脚部52aのリブ54aが受容部品5の一方の側部でロッド受容凹部52まで延び、リブ54bが受容部品5の他方の側部でロッド受容凹部52まで延びるように、リブ54a,54bの位置は中心軸Cに対して回転する。これにより、器具を最初にリブ無し部55a,55bの上に配置し、次に回転させて、以下でより詳細に説明するリブ54a,54bと係合させることができるようになる。
【0020】
リブ54a,54bは、実質的に矩形の断面又は他の任意の形状を有することができるが、
図4a及び
図4dに見られるように、この実施形態では片側ダブテール形状が好ましい。即ち、リブ54a,54bは、中心軸Cに対して実質的に垂直に延びる水平上面141を含み、底面142は傾斜して放射状に下方に、即ち遠位方向に向かって延びる。換言すれば、リブ54a,54bの幅は(中心軸Cから見て)半径方向外側に増加し、対応する補完的な輪郭が器具に設けられているときに、器具とのより安定した信頼性のある連結を可能にする。この実施形態の水平な上面141は、第1の端部5aに設けられた受容部品5の脚部52a,52bの環状端面10と同一平面上にある。それにもかかわらず、
図17aに示す別の実施形態では、修正された受容部品5’のリブ54’もまた、完全な両側ダブテール形状を有することができる。環状端面10は平面である必要はない。内向き又は外向きの傾斜を有してもよく、又は丸みを帯びていてもよい。好ましい実施形態では、第1の係止構造体を形成するリブ54a,54b,54’の上面は、環状端面10と連続している。
【0021】
いずれにしても、これらの実施形態のリブ54a,54b及び54’は、受容部品5,5’の第1の端部5aによって画定され、又は、第1の端部5aでその環状端面10と少なくとも隣接する、脚部52a,52bの環状端面10に直接配置される。環状端面に形成された突起又は凹部は、第1の端部5aの環状端面10が以下に説明するように器具の当接面として機能する限り、除外されない。中心軸Cに平行な方向におけるリブの幅よりも小さい、環状端面10からのリブ54a,54bの上面141の距離が、許容され、「隣接する」という用語によってカバーされる。
【0022】
第1の端部5aで環状端面10に直接又は隣接して受容部品5の頂部でリブ54a,54bを配置する利点は、アンカー要素が骨内に移植され、アンカー要素のヘッドが受容部品の収容空間内に受容されるとき、骨アンカー装置の係合機構が骨表面から離れて位置するということから生じる。これにより、器具が骨表面から離れている装置と係合し、体組織への損傷を回避し、小さな切開部を形成することが可能となる。また、受容部品のこの構造は、係合器具をより安定して持続可能に構成することを可能にし、これは以下の機器に関する説明から明らかになるであろう。
【0023】
なお、リブは、実質的に矩形、台形、菱形、歯形又は丸みを帯びた断面などを有してもよく、又は、さらに修正された受容部品5’’,5’’’について、リブ54’’,54’’’は、それぞれ
図17b又は
図17cに示すような複雑な形状を有することさえできる。リブ54a,54bは、傾斜した又は丸い端部を有することができる。多数のリブは、脚部52a,52b当たりただ1つに限定されないことを理解されたい。第3の係合構造体の例として、ストッパリブ54a’,54b’のような、リブ54a,54bの下に、より多くのリブを設けることができる。
【0024】
ストッパリブ54a’,54b’は、
図3a,3bに見られるように、リブ54a,54bの長さよりも短い長さを有する。それにもかかわらず、リブ54a,54bと同様に、ストッパリブ54a’,54b’は、受容部品5のそれぞれの側でロッド受容凹部52から延び、また、上部5の円筒形の外面の円周方向においてある距離だけリブ54a,54bと平行に延びている。ストッパリブ54a’,54b’の断面は、この実施形態では
図4aに見られるように矩形であるが、リブ54a,54bに対して詳述したものと同様の形状も可能である。ストッパリブ54a’,54b’はまた、丸い端部及び/又は傾斜した端部を含むことができる。幅は、リブ54a,54bの幅以下でもよく、又はより大きくてもよい。この実施形態では、ストッパリブ54a’,54b’の幅は、リブ54a,54bの幅よりも小さい。ストッパリブ54a’,54b’は、凹面部56a,56bの上端壁561に直接又は隣接して配置される。
【0025】
説明したように、受容部品5の外面はまた、実質的に平らな又は平面の凹部56a,56bを含む。凹部56a,56bは、円周方向に延びるリブ54a,54bに対応して円周方向の上部50に位置し、中心軸Cに平行な近位方向において、上部50の下端の縁部50aから、リブ14a,14bからの所定の距離まで、延びている。凹部56a,56bは、本実施形態のように受容部品5の円筒状の外形から凹んだ平面状の平坦面である必要はなく、丸みを帯びていてもよいし、及び/又は、側壁を備えていてもよい。凹部56a,56bは、以下に詳述するように、クランプリング8の上方に突出するアーム83a,83bの案内面としての役割を果たす。
【0026】
受容部品5の上部50と第2の端部5bとの間には、収容空間51bを含む受容部品5のヘッド受容部57が設けられている。ヘッド受容部57は、受容部品5の上部50の直径よりも小さい直径を有する実質的に円筒形の外面も有する。第2の端部5bに隣接して、外面の一部57aが外側にわずかにテーパ状となっている。ヘッド受容部57は、収容空間51bを有する。ヘッド3が挿入できるようにするために、ヘッド受容部57は可撓性である。図示された実施形態では、ヘッド受容部57は、長手方向に延び第2の端部5bに向かって開いているスリット58によって分離された、複数の可撓性の壁部分57bからなる。実施形態によれば、スリット58は、
図3a及び
図3bに見られるように、受容部品5の上部50内にまで延びていてもよく又は延びていなくてもよい。スリット58の数及び大きさは、ヘッド受容部57の所望の可撓性に応じて定められる。
【0027】
第2の端部5bにおける通路51の内径は、アンカー要素1のヘッド3の直径よりも小さい。ヘッド受容部57の可撓性のために、ヘッド3は第2の端部5bから挿入されることができるが、ヘッド受容部57を含む所定の位置にクランプリング8を配置すると、下端からの挿入を可能にするための可撓性壁部分57bの伸びが十分ではない。使用時には、この実施形態のアンカー要素1は、むしろ第1の端部5aを介して受容部品5に挿入される(即ち、上部装填)。
【0028】
クランプリング8については、
図5a~
図5dをさらに参照してより詳細に説明する。クランプリング8は、上端又は第1の端部8aと、反対側の下端部又は第2の端部8bとを備え、第2の端部8bに向かって狭くなる実質的に球形の外面81を有することができる。第1の端部8aにある又はそれに隣接している球面81の外径は、クランプリング8が受容部品5のヘッド受容部57の周囲に取り付けられたときに、クランプリングの外側球面81と受容部品5の上部50の外側の円筒形の表面とが、例えば
図2に示されているように、互いに同一平面上にあるようになっていてもよい。クランプリング8の内径は、クランプリング8がヘッド受容部57の周囲に取り付けられ、上端部8aが受容部品5の上部50の下端又は縁部50aに対面するようになっている。平坦部82の形態の位置合わせ機構は、クランプリング8の外面81に設けられている。平坦部82は、180°オフセットしている。位置合わせ機構は、クランプリング8を受容部品5に対して、特に、
図3aのように、U字形凹部52の真下の上部50の円筒形の外面から窪んださらなる平坦面50bに対して、正確に位置合わせするのを助けることができる。しかしながら、クランプリング8の外面の形状は、他の実施形態では異なってもよいことに留意すべきである。例えば、外面81は、円筒形状等であってもよい。
【0029】
図5aに特に見られるように、クランプリング8はさらに、上端部8aに隣接する又は実質的に隣接する、第1の内側円筒面部86を有する。取付けを容易にするために、上端部8aに隣接して設けられた小さな傾斜面又は面取りされた面(図示せず)があってもよい。下端部8bに隣接して又は実質的に隣接して、クランプリング8の第2の内面部87は、内径が下端部8bに向かって円錐状に広がるようにテーパ状となってもよい。クランプリング8がヘッド受容部57の最下位置に向かって動かされるときに、クランプリング8のヘッド受容部57及び87の協働面57aがヘッド3に向かって内向きに増大していく半径方向の力を加えるように、第2の内面部87はヘッド受容部の外面部57aと協働するように構成される。さらに、
図14a及び
図14bに見られるように、クランプリング8の(端部8a,8bの間、即ちアーム83a,83bが無い)リング状ベース部の軸方向の高さは、受容部5のヘッド受容部57の高さに実質的に対応する。
【0030】
クランプリング8は、第1の端部8aに形成された肩部85から延びる2つの上方に突出するアーム83a,83bを含む。特に
図2、
図14a及び
図14bに見られるように、アーム83a,83bの長さは、中心軸Cに平行な方向の(上部50の下端部の縁部50aから測定された)凹部56a,56bの長さに実質的に対応する。凹部56a,56bは、ロックリング8が受容部に取り付けられたときに、アーム83a,83bを摺動可能に受容するように配置される。アーム83a,83bのそれぞれは、凹部56a,56bの上端壁561に当接するか、又は少なくとも近づくことができる端面89を有する。同様に、アーム83a,83bの幅は、凹部56a,56bの幅に実質的に対応する。2つのアーム83a,83bは、互いに直径方向に対向して配置され、平坦部82に対して非対称に配置される。より具体的には、両アーム83a,83bの位置が、円周方向の平坦部82に対して、例えばこの非限定的な実施形態では約60°だけ同じ方向に回転され、
図5cにおいて、組み立てられた状態でU字形凹部52の長手方向軸Lと整列される一点鎖線の軸Rによって示されている。
【0031】
上方に突出する2つのアーム83a,83bのそれぞれは、それぞれのアームの先端部内にある又はそれに隣接する外面上で器具と係合する係合構造体を含む。それぞれのアームは、この実施形態では、切欠き88a,88bとして形成されたダブテール形状の円周方向に延びる係合構造体として設けられている。上述したように、アーム83a,83bの先端部におけるこのような位置決めの結果として、ロックリング8の係合構造体と受容部品の係合構造体とは、(i)互いに近接して、(ii)受容部品5の第1の端部5aに最も近く、ヘッド受容部18から離れた、即ち多軸骨アンカー装置がその場で組み立てられた状態にあるときに骨の表面から離れたそれぞれの部品の部分に、配置される。これにより、例えば、単一の椎骨の再配置、又はロック解除ロッドによる受容部品の再調整の間に、断続的なロック/ロック解除のステップを実行するための器具が要する体組織内のスペースをより少なくすることが可能になり、クランプリング8は、受容部5に係合するロック/ロック解除器具の内管に対して、例えばロック/ロック解除器具の外管によって、係合され軸方向に移動される。
【0032】
本発明の実施形態によれば、ロッドがU字形凹部52内に受容され、押圧部材7に押し付けられたとき(即ち、骨アンカー装置のロック状態において)、好ましくは本開示に示す実施形態のようなロッド6の最大直径の軸方向位置
以上であっても(
図14a、14bを参照)、アーム83a,83bは、切欠き88a,88bなどのアームに設けられた係合構造体が、ロッド6の方向に対応する中心軸Cの方向で軸方向位置に配置されるのに十分な長さを有する
。
【0033】
ダブテール形状の断面輪郭に従うと、切欠き88a,88bの幅は、アーム83bの外面に向かって半径方向外向きの方向に減少する。切り欠き88a,88bは、中心軸Cと同軸の円筒形のベース面880と、対応する傾斜底面881と、
図4aでより詳細に見ることができる上面882と、を含む。アーム83a,83bに設けられた係合構造体は、切欠き88a,88bである必要はなく、リブ54a,54bの場合のように突出リブとして設けられてもよいことに留意されたい。また、切欠き88a,88b又はリブとして形成された係合構造体の断面輪郭は、ダブテール形状ではなく、実質的に矩形、台形、菱形、歯形又は丸みを帯びた形状であってもよい。
【0034】
例えば切欠き88a,88bである係合構造体の長さは、アーム83a,83bの幅に制限されており、受容部品の係合構造体、即ち周方向リブ54a,54bの長さに実質的に対応している。凹部56a,56bの深さ及び半径方向に測定されたアームの厚さは、ロックリングが受容部品に組み立てられる際に、切欠き88a,88bの円筒形ベース面880が受容部品5の円筒形の外面と実質的に同一平面上にあるように画定される。その結果、ロック/ロック解除器具の外管内の係合部の一例としてのダブテール形状の円周方向に延びるリブが、ロックリング8の対応する切欠き88a,88b内へ円滑に摺動することができる。しかしながら、受容部品5の円筒形の外面と切り欠き88a,88bのベース面880との間の小さな段差は除外されない。さらに、さらなる切欠き又はリブがアーム83a,83bに設けられていることも除外されない。
【0035】
図1及び
図14a、
図14bに示された圧力部材7は、円筒形の同軸孔51aの内径に等しいか又はそれよりわずかに小さい直径を有する実質的に円筒形の外面71を備え、その中への収容の際のすべりを容易にする。また、押圧部材7は、ロッド受容部72を有する。ロッド受容部72は、その内部にロッド6を受容する円筒セグメント形状であり、互いに対向する2つの脚部を形成し、2つの脚部は、圧力部材7が同軸孔51a内に挿入されるときに受容部品の第1の端部に対面する。また、球状の中空部73は、押圧部材7の下端部に形成される。押圧部材7は、例えば固定要素9が締め付けられるときに、アンカー要素1のヘッド3と接触し、挿入されたロッド6からヘッド3に伝達されてヘッド3をロックする圧力を加えることができる。圧力部材は、アンカー要素1のヘッド3に設けられた凹部4へのアクセスを可能にする同軸の穴をさらに備えることができる。
【0036】
受容部品5、クランプリング8、押圧部材7、固定要素9及び骨アンカー要素1は、例えばチタン若しくはステンレススチールである生体適合性材料から、例えばニチノール、マグネシウム若しくはマグネシウム合金であるNiTi合金等の生体適合性合金から、又は、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)若しくはポリ-1-ラクチド酸(PLLA)等の生体適合性プラスチック材料から、製造することができる。部品は、同一又は異なる材料から作ることができる。
【0037】
手術中、多軸骨アンカー装置100は、第2の端部5bを介して可撓性ヘッド受容部57にクランプリング8を取り付けることによってまず組み立てられ、可撓壁部57bは、クランプリング8の第1及び第2の内面部86,87によってわずかに圧縮される。また、骨アンカー要素1は、第1の端部5aを介して受容部品5に挿入される。次に、押圧部材7は、受容部品5の同軸孔51a内に摺動して入ることもでき、アンカー要素1は、例えばドライバ即ち工具を用いて骨に適用される。続いて、ロッド6が受容部品5のU字形凹部52に案内され、ロック/ロック解除器具を使用して、ヘッド3をクランプするために、クランプリングは第1の端部5aから離れてヘッド受容部57の最下位置に向かう遠位方向に軸方向移動する。クランプリング8の円錐形の第2の内面部87は、半径方向内向きに増大していく力がヘッド3に向かって、ヘッド3に加えられるように、ヘッド受容部の外面部57aと協働する。
【0038】
これにより、固定要素9を締め付ける必要はまだない。むしろ、ロック/ロック解除器具は、作動即ちクランプリングをクランプ位置とプレロック位置との間で移動させることにより、一時的なクランプ及び/又はクランプ解除を可能にする。この機能により、オペレータは、挿入されたロッドがなくても、アンカー要素に対して受容部の角度位置を再調整して固定することができ、又は、取り付けられた器具を介して個々の椎骨を再配置することができる。それにもかかわらず、最終的な固定は、固定要素9を締め付けて、加圧部材7をヘッド3に押し付けてヘット3を固定することによって行われる。
【0039】
次に、
図6~
図12を参照して、多軸骨アンカー装置100と共に使用するための器具200を説明する。器具200は、ヘッド延長装置として機能する。ヘッド延長装置は、受容部品5にその場で取り付けるように構成され、それによって受容部品5を操作すること、又は、さらなる器具及び/若しくは部品を受容部品5に供給することを可能にする。このような複数の器具200は、
図6に示すように、それぞれの多軸骨アンカー装置100にその場で取り付けることができ、多軸骨アンカー装置100はそれぞれ椎骨内に配置される。受容部品5に加えてクランプリング8にも係合させる、クランプリング8をロック/ロック解除するための上述の器具とは異なり、器具200は、受容部でリブ54a,54bのみと係合するように配置される。それにもかかわらず、本開示の多軸骨アンカー装置100の受容部品5と係合するように構成された上述のロック/ロック解除器具のような器具の実施形態は、添付の特許請求の範囲に包含される。
【0040】
器具200は、
図7に見られるように、受容部の係合構造体と係合するための係合部を備える前端部204と、後端部206と、を有する管状部材202を含む。
【0041】
図8a~
図9bに示すように、管状部材212は、後端部206から前端部204に延びる内孔212を含み、前端部204は、実質的に矩形の凹部214を備え、前端部204内へは、孔212が開口し2つの自由脚部214a、214bを形成する、実質的に矩形の凹部214が設けられている。内孔212の直径は、受容部品5の直径よりも小さい。内孔212は、係合中に受容部品5の環状端面10に当接するように働く環状当接面217で終結している。管状部材212はさらに、後端部204の領域内の反対側に、さらなる器具を取り付けるために又は器具を把持するために働く、凹部210を有する。
【0042】
図10に見られるように、脚部214a,214bはそれぞれ、器具の組織中の切開部又は穴の中への器具の挿入を容易にし、受容部5のその場の位置に案内する丸い先端部215a,215bを含む。器具の中心軸Tの方向における丸い先端部215a,215bの長さは、自由脚部の部分に比べて短い。自由脚部は、実質的に円筒形の輪郭を有し、中央孔212から半径方向に測定された一定の幅を有する。
【0043】
先端部214の自由脚部の先端部215a,215bの領域内の器具の内面には、切欠き216a,216bの形態の2つの係合部216a,216bが設けられている。これらの切欠き216a,216bは、受容部品5に設けられたリブ54a,54bの断面と相補的な、片側ダブテール形状の断面を有する。切欠き216a,216bは、以下に詳述するように、円周方向に回転することによって、係合中にリブ54a,54bを摺動可能に受容するように構成される。切欠き216a,216bは、凹部壁の間に延在し、中心軸Tを中心とする円周方向の両側で凹部214に開口し、例えば45°の角度をカバーするリブ54a,54bの長さに対応する長さを有する。リブ54a,54bに対しては、横断面は(片側)ダブテール形状とは異なっていてもよい。また、長さは変化し、脚部214a,214bの幅に依存する。
【0044】
さらに、ストッパ切欠き218a,218bの形態の第2の係合部は、凹部の1つの開口端220aで凹部から中心軸Tを中心に円周方向に延びる先端部215a,215bの縁に直接設けられている。より具体的には、切欠き218a,218bの長さは、切欠き216a,216bの長さよりも短い。その結果、ストッパ切欠き218a,218bは、円周方向に対向する端面又は当接面220bを含み、この実施形態では両方の場合において反時計回り方向に面している。
【0045】
ストッパ切欠き218a,218bは、以下に詳述するように、円周方向に回転することによって、係合中にストッパリブ54a’,54b’をその中に摺動可能に受容するように構成される。しかし、当接面220bの結果として、受容部品5に対する器具200の回転運動は、これらの当接面220bがストッパとして機能することによって制限される。有利なことに、このようなストッパは、器具200が受容部品5に対して正確に位置合わせされた係合位置に到達し、使用中に意図せずに受容部との接触を失うことがないことを保証する。そうでなければ患者に有害であり、係合機能も損なうだろう。
【0046】
さらに、
図10に見られるように、ストッパ切欠き218a,218bは、下部壁を有する必要はない。むしろ、切欠き218a,218bは、遠位方向、即ち受容部品5の第2の端部5bに向かって開口している。受容部品5に対する器具200の軸方向の位置は、切欠き216a,216bに受容されたリブ54a,54bによって既に画定されているので、下壁を省略することができ、ここでは、ストッパ切欠き218a,218bは単にストッパ機能を提供する。下部壁が省略されているため、器具200の先端縁部は、軸方向に見られるリブ54a,54bにさらに近い。これは、器具が切開部に入るのに必要なある深さをさらに減少させて、受容部と係合する。この特徴はさらに、使用中に必然的に大きなレバー動作を受ける先端及び係合部の近くに配置された繊細な部品を回避する。
【0047】
しかしながら、
図12に見られるように、ストッパ切欠きは上部案内壁を有するが、上部案内壁は、2つの部分、即ち中心軸Tに垂直な平面内に延びる環状水平部221と傾斜部222とを有する。水平部221は、切欠き218a,218bの開放端220aから延在し配置される一方、傾斜部222は、水平部221に隣接して、切欠き218a,218bの他端で当接面220bまで延在する。傾斜は、切欠き218a,218bの幅が当接端部220bに向かって狭くなるようになっている。その結果、当接面220bに向かう回転運動において、開放端220aから、切欠き218a,218bの1つに受容されたリブ54a’,54b’が滑り込むとき、このようなリブ54a’,54b’は最終的に、リブ54a’,54b’と傾斜面220bとの間に摩擦力を発生させる傾斜面との接触をする。
【0048】
有利なことに、この機能は、一方では、器具200の受容部品5との係合状態を維持するのを助け、意図しない緩みを防止する。他方で、オペレータは、ストッパに接近している器具の回転運動中に触覚応答を得る。
【0049】
切欠き54aと54a’との間、及び、切欠き54bと54b’との間に、円筒形内面219が延びており、内孔212の内面と比較して、内面219の直径は、受容部品5の上部50の外側円筒面の直径に対応する、より大きな直径を有する。この円筒形内面219は、以下に説明するように、器具を受容部品5に置きながら器具を案内するように働く。
【0050】
器具200及び多軸骨アンカー装置100の使用は、
図13a~
図13dに示されている。
図13aに示すように、器具200は、中心軸C、Tが互いに一直線になる方向で受容部品5に移動される。これにより、自由脚部214a,214bは、受容部品5のリブ無し部55a,55bと円周方向においてそれぞれ位置合わせされる。
【0051】
図13bにおいて、器具200は受容部品5の上方に案内される。器具200の円筒形内面219は、受容部品5の上部の外側円筒面に摺動可能に接触し、リブ無し部55a,55bを横切る。
【0052】
図13cでは、器具200の下方への動きが止まり、孔212の端部の環状当接面217が、受容部の環状端面10に当接する。内壁に配置された係合部を有する丸い先端部215a,215bは、この状況では係合構造体54a,54b,54a’,54b’の軸方向位置に配置される。
【0053】
図13dにおいて、器具200は、矢印によって示されるように円周方向に回転される。これにより、受容部品5のリブ54a,54bが、先端部540a2,540b2により器具200の切欠き216a,216bのそれぞれに滑り込み、リブ54a’,54b’が、先端部540a2’,540b2’で器具200の切欠き218a,218bそれぞれに滑り込む。最初に、傾斜面222は、リブ54a’,54b’の上面に接触して、リブ54aとリブ54a’との間、並びに、リブ54bとリブ54b’ との間に、増加していく摩擦とわずかな張力を生成する。最後に、各リブ54a’,54b’の先端部540a2’,540b2’は、それぞれの当接面220bに当接する。増加していく摩擦は、受容部品5と器具との間の係合の自己ロックをもたらし、それにより、当接部は、回転運動の位置合わせされた終点を画定する働きをする。
【0054】
図14a及び
図14bにも示されているこの最終係合位置では、オペレータは、多軸骨アンカー装置を組み立てて配向させる所望のステップを実行することができる。
図15は、係合構造体及び部分の拡大詳細図である。
図16b及び16cは、係合位置における水平断面図である。
【0055】
添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。例えば、上述したように、器具は、ヘッド拡張器具とは異なるものであってもよく、例えば、器具をロック/ロック解除するものであってもよい。
【0056】
さらに、多軸骨アンカー装置は、本出願人による例えば欧州特許出願第16 128 818.1号に記載されているような可撓性のヘッド受容部を有する内側キャップ自体として形成された圧力部材を含むことができ、アンカー要素のヘッドを、受容部のヘッド受容部に底部から装填することができる。その場合、例えば
図3に開示されたリブは、他の全ての特徴が維持されていれば、上述したようにリブの配置に置き換えられる。
【0057】
しかしながら、欧州特許出願第16 128 818.1号に開示されているクランプリングに上述したアーム83a,83bを追加して、クランプリングのリブと受容部とを上記の実施形態のようにより接近させることも考えられる。
【0058】
(付記)
(付記1)
ロッド(6)を骨アンカー要素(1)に結合するための受容部品(5)であって、前記受容部品(5)は、第1の端部(5a)と、第2の端部(5b)と、前記第1の端部(5a)と前記第2の端部(5b)の間に延びる中心軸(C)と、前記第1の端部(5a)に設けられた端面(10)と、ロッド(6)を受容するための、前記第1の端部(52)に設けられた凹部(52)と、骨アンカー要素(1)のヘッド(3)を旋回可能に保持するための、前記第2の端部(5b)に設けられた、少なくとも部分的に可撓性であるヘッド受容部(57)と、を備える、受容部品(5)と、
前記ヘッド受容部(57)の周囲に配置されるように構成されたクランプリング(8)であって、前記クランプリング(8)が前記ヘッド受容部の周囲にあるとき、前記クランプリング(8)は、挿入されたヘッド(3)がロックされるように前記クランプリング(8)が前記ヘッド受容部(57)に力を及ぼすロック位置と、挿入されたヘッド(3)が前記受容部(5,5’)に対して旋回可能な非ロック位置と、をとることができる、クランプリング(8)と、
を備え、
前記受容部品(5)は、器具の係合部によって係合されるように構成された少なくとも1つの第1の係合構造体(54a,54b)をさらに備え、前記係合構造体(54a,54b)は、前記第1の端部(5a)で前記端面(10)に直接又は隣接して配置されている、
骨アンカー装置(100)。
【0059】
(付記2)
少なくとも1つの第2の係合構造体(88a,88b)が設けられ、前記第2の係合構造体(88a,88b)は、前記器具のさらなる係合部によって係合されるように構成され、前記受容部品(5)に対して前記クランプリング(8)を軸方向に離脱させることができるように前記クランプリング(8)に配置される、付記1に記載の骨アンカー装置(100)。
【0060】
(付記3)
前記クランプリング(8)は、上方に突出するアーム(83,83b)を備え、前記第2の係合構造体(88a,88b)は、前記上方に突出するアーム(83)に設けられる、付記1又は2に記載の骨アンカー装置(100)。
【0061】
(付記4)
第2の係合部(83a,83b)は、前記上方に突出するアーム(83a,83b)の先端領域に配置され、
前記上方に突出するアーム(83a,83b)は、前記第2の係合部(83,83b)が前記中心軸に沿った方向のある位置に配置されるような長さを有し、前記中心軸は、固定要素によって前記受容部品(5)内にロックされた挿入されたロッド(6)の位置、又は、前記ロッド(6)と前記第1の端部(5a)との間の軸方向の位置、に対応する、
付記3に記載の骨アンカー装置(100)。
【0062】
(付記5)
前記第1の係合構造体(54a,54b)及び/又は前記第2の係合構造体(88a,88b)は、前記中心軸の周りの前記器具又は前記器具の一部の円周方向の回転運動によって係合されるように形成され、好ましくは、円周方向リブとして形成されている、付記4に記載の骨アンカー装置(100)。
【0063】
(付記6)
前記受容部品(5)は、前記中心軸(C)の方向に前記ヘッド受容部(57)に対面する縁部(50a)から、前記受容部品(5)の前記第1の端部(5a)から離れてある距離まで延びる、凹部(56a,56b)をさらに備える、付記4又は5に記載の骨アンカー装置(100)。
【0064】
(付記7)
前記第1の係合構造体(54a,54b)及び/又は前記第2の係合構造体(88a,88b)は、
-ダブテール形状の断面を有し、又は、片側のみのダブテールのような断面を有し、及び/又は、
-それぞれ、前記受容部品(5)と前記クランプリング(8)との外周面に配置され、前記受容部品(5)又は前記クランプリング(8)の他の全ての部分よりも半径方向外側に延びる、
付記1~6のいずれか1つに記載の骨アンカー装置(100)。
【0065】
(付記8)
前記係合構造体(54a,54b)の上面は、前記第2の端部(5b)から離れて配向され、前記第1の端部(5a)で前記端面(10)と同一平面上にある、付記1~7のいずれか1つに記載の骨アンカー装置(100)。
【0066】
(付記9)
前記端面は、前記U字形凹部(52)によって形成された脚部(52a,52b)の環状セグメント形状の端面として設けられる、付記1~8のいずれか1つに記載の骨アンカー装置。
【0067】
(付記10)
延びて、挿入されたヘッド(3)に圧力を加えるように構成された圧力部材(7)をさらに備える、付記1~9のいずれか1つに記載の骨アンカー装置(100)。
【0068】
(付記11)
前記第1の係合構造体(54a,54b)及び前記第2の係合構造体(88a,88b)は、それぞれ、前記受容部品の前記中心軸(C)を通って、且つ、前記ロッド(6)を受容するための前記凹部(52)の長手方向軸(L)を通って、延びる平面に対して非対称に配置される、付記2~10のいずれか1つに記載の骨アンカー装置(100)。
【0069】
(付記12)
少なくとも1つの第3の係合構造体(54a’,54b’)が前記受容部品(5)に設けられ、前記受容部品(5)は、前記円周方向に前記第1の係合構造体(54a,54b)と位置合わせされ、且つ、前記中心軸(C)に沿った方向に前記第1の係合部からある距離離れた位置に配置されており、前記第3の係合構造体(54a’,54b’)は、円周方向に対面する当接端部(540a2’,540b2’)を備える、付記1~11のいずれか1つに記載の骨アンカー装置(100)。
【0070】
(付記13)
器具(200)及び付記12に記載の骨アンカー装置(100)を備えるシステムであって、
前記器具は、少なくとも1つの管状部材(202)を備え、
該管状部材(202)は、
切欠きとして形成され、前記受容部品(5)で前記第1の係合構造体(54a,54b)と係合するように配置された、少なくとも1つの第1の係合部(216a,216b)と、
前記受容部品(5)で前記第3の係合構造体(54a’,54b’)と係合するように配置された少なくとも1つの第2の係合部(218a,218b)であって、前記第2の係合部は、前記第1の係合構造体と前記第2の係合部とが互いに係合するとき、前記第3の係合構造体(54a’,54b’)の前記当接端部(540a2’,540b2’)に対面及び当接する、当接面(220b)を有する、少なくとも1つの第2の係合部(218a,218b)と、を備える、
システム。
【0071】
(付記14)
前記第2の係合部(218a,218b)は、円周方向に対する傾斜部を有する前記第2の係合部の案内壁によって設けられる自己ロック機構を備える、付記13に記載のシステム。
【0072】
(付記15)
器具(200)及び付記1~12のいずれか1つに記載の骨アンカー装置(100)を備えるシステムであって、
前記器具は、少なくとも1つの管状部材(202)を備え、
該管状部材(202)は、
切欠きとして形成され、前記受容部品(5)で前記第1の係合構造体(54a,54b)と係合するように配置された、少なくとも1つの第1の係合部(216a,216b)を備える、
システム。