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  • 特許-ガス管 図1
  • 特許-ガス管 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ガス管
(51)【国際特許分類】
   F16L 25/02 20060101AFI20220225BHJP
   F16L 9/147 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F16L25/02
F16L9/147
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017167418
(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公開番号】P2019044839
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田原 孝一
(72)【発明者】
【氏名】吉巻 賢
(72)【発明者】
【氏名】福澤 和寛
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/137713(WO,A1)
【文献】実開昭58-042481(JP,U)
【文献】実開昭59-004887(JP,U)
【文献】実開昭60-062690(JP,U)
【文献】米国特許第04817993(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 25/02
F16L 9/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管とフランジ部材とが溶接されて形成され、電気的な絶縁性を有するガスケットを介して接続されるガス管であって、
少なくとも、上記ガスケットに当接する端部付近の内面における下方部分に、溶接後に塗膜によって形成された絶縁層が形成されていることを特徴とするガス管。
【請求項2】
請求項1のガス管であって、
上記絶縁層は、上記ガス管内にあらかじめ形成された防錆塗装が除去され、または防錆塗装が損傷した部分に形成されていることを特徴とするガス管。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうち何れか1項のガス管であって、
上記絶縁層は、少なくとも上記ガスケットに当接する端部から15cm以上の領域に形成されていることを特徴とするガス管。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項のガス管であって、
上記絶縁層は、上記ガスケットに当接する端部付近の内面全周に形成されていることを特徴とするガス管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な絶縁性を有するガスケットを介して接続されるガス管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されるガス管は、防食性能を高めるために微弱な電流を流すことがある。その場合、例えば、高圧ガスを中圧ガスに減圧するガバナステーションなどで電気的に接地されるガス管と、上記微弱な電流を流すガス管とは、不用意な漏れ電流を防止するなどのために、電気的な絶縁性を有するガスケットを介した継手を介して接続されることがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第47776600号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本願発明者らは、上記のような絶縁性を有するガスケットを用いても、漏れ電流が生じ得ることを見出し、その原因を精査したところ、配管工事において溶接や管削孔に伴う微細な鋼管の切りくず(ダスト)が清掃後も管内に残留することがあり、そのダストが、ガス管の供用開始後にガス流とともに管内を流下して継手部分に沈積し、絶縁性の低下を招き得ることを見出した。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、絶縁性を有するガスケットを介して接続されるガス管の絶縁性の低下を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
電気的な絶縁性を有するガスケットを介して接続されるガス管であって、
少なくとも、上記ガスケットに当接する端部付近の内面における下方部分に絶縁層が形成されていることを特徴とする。
【0007】
これにより、ガスケット付近に導電性のダストなどが沈積して、ガスケットを介するガス管の内面にまたがったとしても、両者間の絶縁性が低下するのを容易に防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、絶縁性を有するガスケットを介して接続されるガス管の絶縁性の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ガス管の継手部分の構造を示す拡大断面図である。
図2】ガス管の継手部分をさらに拡大した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
ガス管101・102は、図1に示すように、それぞれ端部にフランジ101a・102aが形成されている。フランジ101a・102aには、ボルト穴101b・102bが形成され、ボルト104とナット105・106とによって、ガス管101・102が接合されるようになっている。
【0012】
上記ガス管101・102の間の絶縁は、次のようにして確保されるようになっている。すなわち、ガス管101・102のフランジ101a・102aの間には、電気的な絶縁性を有するガスケット103が介在している。このガスケット103は、例えば、穴あき円板状のステンレスから成る金属リング103aの両面側にガラス繊維強化樹脂から成る絶縁層103b・103cが形成されて成っている。より具体的には、例えばPIKOTEC社製の絶縁ガスケットを用いることができる。フランジ101a・102aとナット105・106との間には、座金107・108および絶縁ワッシャ109・110が設けられている。また、フランジ101a・102aのボルト穴101b・102bとボルト104との間には、絶縁スリーブ111が換装されている。
【0013】
上記ガス管101・102の端部付近、例えば端部から15cm以上程度までの領域の内面の下方部分、例えば下半周部分には、例えば無溶液型エポキシ樹脂系塗料の塗膜などから成る塗膜101c・102cが形成されている。これによって、例えば図2に模式的に示すように、ガスケット103付近に導電性のダスト201が沈積したとしても、ガス管101・102の内面にまたがって両者間の絶縁性が低下することが防止される。
【0014】
ここで、上記導電性のダスト201は、例えば、ガス管101・102が、設置現場で直管とフランジ部材とが溶接されて形成される場合や、管壁にノズル孔が削孔される場合などに生じてガス管101・102内に飛び散り残置等した溶接スパッタや切り屑などであり得る。
【0015】
また、ガス管101・102の内面は、防錆塗装などが施されて絶縁性を有する場合もあるが、そのような場合でも、上記のように溶接加工される場合などには、防錆塗装等が除去されたり、溶接熱により内面塗装が剥離したりして鋼面が露出し、継手部近傍における絶縁性の低下が生じる要因になったりし得る。
【0016】
そのような絶縁性の低下を回避するためには、ガス管101・102の施工、供用開始後やダスト201が堆積した時に、絶縁継手部を分解して管内清掃後に復旧させることも考えられるが、例えば、特に小口径のガス配管や上越し配管形状がある場合などには、ダストの完全な清掃、除去には限界があり、さらに沈積するのを確実に防止することは容易ではないうえ、継手部を分解するためにガス管101・102内のガスをパージすることが一時的なガス供給の停止状態となるとともに、分解前のガスパージ及び復旧時のエアパージに係る作業に費用が掛かるためランニングコストが高くつくことにもなる。また、絶縁部を縦配管としてダストが沈積しない配管形状にして絶縁性を保つことも考えられるが、ガスステーション等の用地の狭小化や、分解整備が可能または容易な配管形状等に伴うコストアップを招きがちである。
【0017】
これに対して、上記のようにガス管101・102の端部付近の内面に塗膜101c・102cが形成されていることによって、導電性のダスト201が沈積したとしても、ガス管101・102間の絶縁性が低下するのを容易に防止できる。しかも、分解清掃する場合などのようにガスパージも不要で、ガス供給の一時的な支障状態を回避することもでき、ランニングコストを低減することも容易にでき、簡便で安価な絶縁性確保が可能となる。
【0018】
なお、上記のような塗膜101c・102cの管軸方向塗装範囲は、端部から15cm以上程度であれば、例えば一般的な切り屑最大長さを5cm程度とすると、これに安全率として3を乗算した寸法に相当し、通常、適切な設定と考えられるが、これに限らず、種々の条件等に応じて適宜設定すればよい。例えば直管とフランジ部材とが溶接される場合には、端部から、その周溶接部を含み、さらに、その周溶接部から15cm以上などの範囲に塗膜101c・102cを形成するなどしてもよい。
【0019】
また、周方向には、下半周部分に限らず、ダスト201の堆積範囲に応じて、より狭い範囲でもよい一方、塗装作業の容易さ等を考慮して内周全周に塗装を施したりしてもよい。
【0020】
また、絶縁層としては、塗膜101c・102cは現場での形成が一般に比較的容易だが、これに限らず、例えば絶縁性スリーブを挿入するなど、絶縁性を確保できる層が形成されればよい。
【符号の説明】
【0021】
101・102 ガス管
101a・102a フランジ
101b・102b ボルト穴
101c・102c 塗膜
103 ガスケット
103a 金属リング
103b・103c 絶縁層
104 ボルト
105・106 ナット
107・108 座金
109・110 絶縁ワッシャ
111 絶縁スリーブ
201 ダスト
図1
図2