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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20220225BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220225BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20220225BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220225BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20220225BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220225BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H01L29/78 616S
H01L29/78 616V
H01L29/78 616U
H01L29/78 619A
H01L29/78 618B
H01L21/90 A
G09F9/30 338
G09F9/30 365
G02F1/1368
H01L27/32
H05B33/14 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017171935
(22)【出願日】2017-09-07
(65)【公開番号】P2019047077
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 学
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209613(JP,A)
【文献】特開2011-199272(JP,A)
【文献】特開2010-170108(JP,A)
【文献】特開2015-130488(JP,A)
【文献】特開2001-196371(JP,A)
【文献】特開2014-220493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/768
G09F 9/30
G02F 1/1368
H01L 27/32
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が存在する表示領域を有する表示装置であって、
前記画素はアクティブ素子としての半導体層を有する薄膜トランジスタを有し、
前記薄膜トランジスタを構成するゲート電極を覆って第1の絶縁膜が形成され、
前記ゲート電極は前記第1の絶縁膜の上に形成されている電極または配線と第1のスルーホールを介して接続し、
前記ゲート電極と前記第1の絶縁膜の間には、酸化物半導体が存在しており、
前記第1のスルーホールの底部には前記酸化物半導体は存在していないことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記酸化物半導体の厚さは3nm乃至10nmであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化物半導体あるいは多結晶シリコン(poly-Si)を用いた薄膜トランジスタ(TFT、Thin Film Transistor)を有する表示装置において、スルーホールを介した電極間あるいは配線間の接続の信頼性を向上させる構成に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極およびTFT等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている構成となっている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。一方、有機EL表示装置は、各画素に自発光する有機EL層とTFTを配置することによってカラー画像を形成する。有機EL表示装置はバックライトを必要としないので、フレキシブル表示装置等に有利である。
【0003】
表示装置において、TFTは画素におけるスイッチング素子、周辺駆動回路等に使用される。poly-Siを半導体層に用いたTFTは移動度が大きいので、周辺駆動回路に使用される。一方、酸化物半導体を用いたTFTはOFF抵抗が高いので、スイッチングトランジスタとしては好適である。また、酸化物半導体を用いたTFTは、poly-Siを用いたTFTに比べて、比較的低温で形成することが出来る。
【0004】
表示装置は多くの層から形成され、配線間の接続は絶縁膜に形成されたスルーホールを介して行われる。スルーホールの形成は、フォトエッチングによって行われるので、種々のドライエッチング用ガスあるいはウェットエッチング用の液が使用される。また、スルーホールでコンタクトする配線あるいは層は色々な材料にわたる。したがって、スルーホールにおける接続の信頼性は問題を生じやすい。
【0005】
特許文献1には、トップゲート方式のTFTのゲート電極をAl等で形成し、Alの表面に陽極酸化によって酸化膜を形成することによってフォトレジストとの密着性を向上させる構成が記載されている。そして、ゲート電極と配線をスルーホールにおいて接続する際、この酸化膜をスルーホール内においてエッチングによって除去する構成が記載されている。
【0006】
特許文献2には、ボトムゲート方式のTFTにおいて、ドレイン電極おおびソース電極を加工する際、半導体層が汚染されることを防止するために半導体層の上に犠牲層を形成し、ドレイン電極およびソース電極を加工し終わってから、チャネル部における犠牲層をウェットエッチングで除去する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-213968号公報
【文献】特開2011-54812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
TFTに酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体から酸素が抜けないようにするために、酸素を多く含む絶縁膜がゲート絶縁膜あるいは層間絶縁膜等に使用される。そうすると、配線や電極に使用される金属の表面に酸化膜が形成されやすい。金属酸化膜は一般には絶縁物なので、スルーホールで他の配線や電極と接続した際、接続不良を生ずる危険がある。
【0009】
また、酸化物半導体を用いたTFTとpoly-Siを用いたTFTの両方を用いた表示装置では、接続のためのスルーホールの形成には、種々の条件が加わる。この時、一方のスルーホールを形成するときに、他方のスルーホールの構成を破壊するような場合もありうる。
【0010】
本発明の課題は、酸化物半導体を用いたTFTあるいは、酸化物半導体のTFTとシリコン半導体のTFTの両方を用いた場合の表示装置において、特にスルーホールにおける接続の信頼性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0012】
(1)複数の画素が存在する表示領域を有する表示装置であって、前記画素はアクティブ素子としての半導体層を有する薄膜トランジスタを有し、前記薄膜トランジスタのドレイン電極を覆って第1の絶縁膜が形成され、前記ドレイン電極は前記第1の絶縁膜の上に形成されている電極または配線と第1のスルーホールを介して接続し、前記ドレイン電極と前記第1の絶縁膜の間には、酸化物半導体が存在しており、前記第1のスルーホールの底部には前記酸化物半導体は存在していないことを特徴とする表示装置。
【0013】
(2)表示領域と周辺駆動回路を有する表示装置であって、前記周辺駆動回路はアクティブ素子としての半導体層を有する複数の薄膜トランジスタを有し、前記複数の前記薄膜トランジスタを接続する回路配線を覆って第1の絶縁膜が形成され、前記回路配線は前記第1の絶縁膜の上に形成されている電極または配線と第1スルーホールを介して接続し、前記回路配線と前記第1の絶縁膜の間には、酸化物半導体が存在しており、前記第1のスルーホールの底部には前記酸化物半導体は存在していないことを特徴とする表示装置。
【0014】
(3)複数の画素が存在する表示領域を有する表示装置であって、前記画素はアクティブ素子としての半導体層を有する薄膜トランジスタを有し、前記薄膜トランジスタを構成するゲート電極を覆って第1の絶縁膜が形成され、前記ゲート電極は前記第1の絶縁膜の上に形成されている電極または配線と第1のスルーホールを介して接続し、前記ゲート電極と前記第1の絶縁膜の間には、酸化物半導体が存在しており、前記スルーホール底部には前記酸化物半導体は存在していないことを特徴とする表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】液晶表示装置の平面図である。
図2】液晶表示装置の画素部の平面図である。
図3】液晶表示装置の断面図である。
図4】本発明によるドレイン電極等の断面図である。
図5】本発明を使用しない場合の問題点を説明する断面図である。
図6】本発明を使用しない場合の問題点を説明する他の断面図である。
図7】本発明を使用しない場合の別の問題点を説明する断面図である。
図8】本発明を使用しない場合の別の問題点を説明する他の断面図である。
図9】本発明を使用しない場合の別の問題点を説明するさらに他の断面図である。
図10】本発明の構成を実現するプロセスを説明する最初の断面図であり、第1層間絶縁膜の上にドレイン電極を成膜した断面図である。
図11】ドレイン電極の上に保護膜としての酸化物半導体を成膜した状態を示す断面図である。
図12】ドレイン電極をパターニングするためのフォトレジストをパターニングした状態を示す断面図である。
図13】ドレイン電極をパターニングした状態を示す断面図である。
図14】ドレイン電極の上からフォトレジストを剥離した状態を示す断面図である。
図15】第2層間絶縁膜を成膜した状態を示す断面図である。
図16】スルーホールのためのフォトレジストをパターニングした状態を示す断面図である。
図17】スルーホールを形成した状態を示す断面図である。
図18】第2層間絶縁膜の上からフォトレジストを剥離した状態を示す断面図である。
図19】スルーホールを希釈佛酸(DHF)で洗浄している状態を示す断面図である。
図20】本発明の実施例2を示す液晶表示装置の断面図である。
図21】本発明の実施例3を示す液晶表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施例によって本発明の内容を詳細に説明する。以下の説明では、液晶表示装置を例にとって説明するが、本発明は有機EL表示装置についても適用することが出来る。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明が適用される液晶表示装置の平面図である。図1において、TFTや画素電極が形成されたTFT基板10と対向基板200が周辺においてシール材150で接着し、内部に液晶が封入されている。シール材150で囲まれた領域が表示領域500となっている。表示領域の両側には、TFTで形成された周辺駆動回路600が形成されている。周辺駆動回路600の一部は、平面で視てシール材150とオーバーラップして形成されている。
【0018】
図1において、表示領域500には、周辺駆動回路600から走査線1が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している。また映像信号線2が縦方向に延在し、横方向に配列している。映像信号線2には、端子部170に配置されたドライバIC160から映像信号が送られる。走査線1と映像信号線2で囲まれた領域が画素3となっている。
【0019】
図1において、TFT基板10は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板10と対向基板200が重なっていない部分は端子部170となっており、この部分にドライバIC160が配置している。また、端子部170には、液晶表示装置に電源や信号を供給するフレキシブル配線基板を接続するための端子が形成されている。
【0020】
図1に示す液晶表示装置では、表示領域500には酸化物半導体を用いたTFTが使用され、周辺駆動回路600にはpoly-Siを用いたTFTが使用されている。酸化物半導体を用いたTFTはリーク電流が小さいので画素のスイッチング素子として好適である。また、poly-Siを用いたTFTは移動度が大きいので駆動回路として好適である。このような構成は、ハイブリッド方式と呼ばれる。しかし、以下に述べる本発明は、ハイブリッド方式のみでなく、酸化物半導体を用いたTFT、あるいはpoly-Siを用いたTFTのみの場合にも適用することが出来る。
【0021】
図2は、TFT基板10の表示領域500における画素部分の平面図である。図2において、走査線1が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、映像信号線2が縦方向(y方向)に延在して、横方向(x方向)に配列している。走査線1と映像信号線2で囲まれた領域に画素電極31が存在し、また、TFTが形成されている。図2に示すTFTはボトムゲートタイプである。
【0022】
図2において、TFTのアクティブ素子(半導体層)は酸化物半導体19で形成されている。酸化物半導体19によるTFTは、リーク電流を小さくすることが出来る。酸化物半導体19のうち光学的に透明でかつ結晶質でないものをTAOS(Transparent Amorphous Oxide Semiconductor)と呼ぶ。TAOSには、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)、ZnON(Zinc Oxide Nitride)、IGO(Indium Gallium Oxide)等がある。本発明では、酸化物半導体16にIGZOを用いた例で説明する。
【0023】
図2において、酸化物半導体19はゲート絶縁膜を介してゲート電極16の上に形成されている。酸化物半導体19の上にドレイン電極20とソース電極21が配置し、ドレイン電極20とソース電極21の間がチャネル部となっている。ドレイン電極20はスルーホール44によって映像信号線2と接続し、ソース電極21はスルーホール45によってコンタクト電極21と接続している。コンタクト電極21はスルーホール60を介して画素電極31と接続している。
【0024】
画素電極31はストライプ状である。画素電極31の下層には、容量絶縁膜を介して平面状にコモン電極28が形成されている。コモン電極28はスルーホール46の部分を避けてほぼ全面に形成されている。画素電極31に映像信号が印加されると、コモン電極28との間に液晶層を通過して電気力線が発生し、液晶分子を回転させて画素毎に透過率を制御する。
【0025】
図2の例は、画素の横方向の径が約30μmと、小さいために、画素電極31は1本のストライプで形成されている。しかし、画素の横径がもっと大きい場合は、画素電極31は例えば、内側にスリットを有する櫛歯状となる。図3はいわゆるIPS(In Plane Switching)方式の液晶表示装置である。
【0026】
図3図1の液晶表示装置の表示領域500と周辺駆動回路600の断面図である。図3の左側にCAで示す領域が周辺駆動回路であり、AAで示す領域が表示領域である。図3において、ガラス等で形成されたTFT基板10の上に下地膜11が形成されている。表示装置をフレキシブル表示装置としたい場合は、TFT基板10はポリイミド等の樹脂で形成される。下地膜11は、一般には、酸化シリコン(SiO)膜および窒化シリコン(SiN)膜の2層構造となっている。下地膜11の役割は、ガラス等で形成されたTFT基板10からの不純物が半導体層を汚染しないようにブロックする役割を有している。
【0027】
図3の周辺駆動回路CA領域において、下地膜11の上にpoly-Si12が形成されている。poly-Si12の厚さは例えば50nmである。poly-Si21は、まず、a-Si(amorphous-Si)をCVDによって被着し、エキシマレーザを照射してpoly-Siに変換し、これをパターニングしたものである。このようなpoly-SiはLTPS(Low Temperature poly-Si)と呼ばれる。a-Siは下地膜11であるSiO、SiN等と連続してCVDによって形成される。
【0028】
poly-Si12を覆って第1ゲート絶縁膜13がSiOによって形成される。第1ゲート絶縁膜13はTEOS(Tetraethyl orthosilicate)を原料としてCVDによって形成されたSiO膜である。第1ゲート絶縁膜13の上に第1ゲート電極14が形成される。また、第1ゲート電極14と同じ層に、第1ゲート電極と同じ材料によって、駆動回路用配線15が形成される。
【0029】
同時に、表示領域AAにおいて、画素におけるスイッチングTFTのための第2ゲート電極16が形成される。第2ゲート電極16は走査線1が分岐したものである。なお、周辺駆動回路CAに形成されたpoly-Si12によるTFTはトップゲートであり、表示領域AAに形成された酸化物半導体19によるTFTはボトムゲートとなっている。表示領域AAにおけるゲート電極16も周辺駆動回路CAにおけるゲート電極14も同時に形成される。第2ゲート電極16は、例えばMoW等で形成されるが、走査線1の抵抗を小さくした場合は、AlをTiあるいはMoW等でサンドイッチした構成が使用される。
【0030】
第1ゲート電極14、第2ゲート電極16等を覆って、第2ゲート絶縁膜17が形成され、これを覆って第3ゲート絶縁膜18が形成される。第3ゲート絶縁膜18の上にスパッタリングによって酸化物半導体19が形成される。酸化物半導体19は例えばIGZOが使用される。酸化物半導体19の厚さは例えば15乃至100nmである。
【0031】
第2ゲート絶縁膜17は例えばSiNが使用され、第3ゲート絶縁膜18は例えばSiOが使用される。酸化物半導体19は酸素が抜かれると抵抗が小さくなるので、第3ゲート絶縁膜18にSiOを用いて酸化物半導体19から酸素が抜かれることを防止している。
【0032】
酸化物半導体19の一方にはドレイン電極20が形成され、所定の距離をおいて、ドレイン電極20に対向してソース電極21が形成されている。ドレイン電極20及びソース電極21は、後で説明するように、Alを主体とした3層構造となっている。ドレイン電極20とソース電極21の間がチャネル部となっている。
【0033】
本発明の特徴は、後で説明するように、ドレイン電極20およびソース電極21の上に保護膜として第2酸化物半導体50が形成されていることである。本明細書では、保護膜としての酸化物半導体50を第2酸化物半導体と呼ぶ。第2酸化物半導体の厚さは3乃至10nmである。
【0034】
ドレイン電極20およびソース電極21を覆って、第1パッシベーション膜22がSiOによって形成されている。また、第1パッシベーション膜22を覆って第2パッシベーション膜23がSiNによって形成されている。第1パッシベーション膜22は酸化物半導体19と接触するので、酸化物半導体19から酸素を抜かないように、酸素が豊富な膜となっている。また、第2パッシベーション膜23はSiNで形成されているので、上方からの水分の侵入を防止する。
【0035】
第2パッシベーション膜23が形成された後、周辺駆動回路にはスルーホール41が形成されてLTPS12とドレイン配線24を接続し、スルーホール42が形成されてLTPS12とソース配線25を接続し、スルーホール43が形成されて回路配線15とソース配線25を接続する。表示領域AAには、スルーホール44が形成されて映像信号線2とドレイン電極20を接続し、スルーホール45が形成されてコンタクト電極26とソース電極21を接続する。
【0036】
映像信号線2、コンタクト電極26等を覆って、有機パッシベーション膜27が形成される。有機パッシベーション膜27はアクリル樹脂等の透明樹脂で形成される。有機パッシベーション膜27は平坦化膜としての役割を有しているので、2μm乃至40μmと厚く形成される。
【0037】
有機パッシベーション膜27の上にコモン電極28が形成されている。コモン電極28はITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物による透明導電膜によって形成されるが、金属酸化膜は抵抗が大きいので、コモン電極28における電位の低下を防止するために、金属で形成されたコモン配線29がコモン電極28と積層して用いられる。
【0038】
コモン電極28を覆って容量絶縁膜30がSiNによって形成されている。容量絶縁膜30の上には画素電極31がITOによって形成されている。画素電極31の平面形状は、例えば、図2に示すとおりである。容量絶縁膜30を挟んで画素電極31とコモン電極28との間に画素容量が形成されている。
【0039】
画素電極31と容量絶縁膜30を覆って、液晶を初期配向させるための配向膜32が形成されている。配向膜32の配向はラビング処理あるいは偏光紫外線を用いた光配向処理によって行われる。IPS方式では、光配向が有利である。図3において、画素電極31に映像信号が印加されると、矢印のような電気力線が発生し、液晶分子301を回転させて画素における光の透過率を制御する。
【0040】
図3において、液晶層300を挟んで対向基板200が配置している。対向基板200は通常ガラスで形成されるが、フレキシブル表示装置としたい場合は、ポリイミド等の樹脂で形成することが出来る。対向基板200の内側にはカラーフィルタ401とブラックマトリクス402が形成されている。カラーフィルタ401およびブラックマトリクス402を覆ってオーバーコート膜403が形成されている。オーバーコート膜403を覆って配向膜404が形成されている。配向膜404の配向処理は、TFT基板10側の配向膜32と同じである。
【0041】
図3において、対向基板200のオーバーコート膜403の上には柱状スペーサ210が形成され、TFT基板10と対向基板200の間隔、つまり、液晶層300の層厚を一定に保っている。なお、周辺駆動回路CAは、平面で視て、シール材150の下にも形成される場合がある。図3はその例であり、周辺駆動回路領域CAでは、液晶層300に対応する部分にはシール材150が形成されている。
【0042】
図4は、本発明による、例えば、表示領域AAにおけるドレイン電極20の断面図の例である。ドレイン電極20は抵抗を小さくするために、Al層202が使用されているが、Alは酸化しやすいこと、ヒロックが出やすいこと等から、例えばベースメタル201、キャップメタル203によってサンドイッチされている。ベースメタル201及びキャップメタル203は例えばTiで形成されている。なお、Al層という場合、Alが主成分であるということで、必ずしも純Alという意味ではない。つまり、多くの場合、Al層202はAlSi、AlCu等の合金となっている。
【0043】
図4において、キャップメタル203の上には保護膜としての第2酸化物半導体50が形成されている。第2酸化物半導体50の役割は、キャップメタル203の酸化防止、スルーホールを形成する時の、スルーホールにおけるキャップメタル203、Al層202等の消失を防止することである。図4において、ベースメタル201の厚さは50nm、Al層の厚さは300nm、キャップメタルの厚さは50nmである。第2酸化物半導体の厚さは3nm乃至10nmである。このように、第2酸化物半導体50はわずかな膜厚で効果を上げることが出来る。
【0044】
図5および図6は本発明を使用しない場合の第1の問題点を説明する図である。図5において、poly-Si半導体層12の上にゲート絶縁膜13が形成され、その上にゲート電極14が形成され、その上に第1層間絶縁膜61が形成され、その上にドレイン電極20が形成されている。本発明はドレイン電極20に限るわけではなく、他の同様な構成の電極あるいは配線に適用することが出来る。ドレイン電極20は説明の例としているだけである。
【0045】
ドレイン電極20を覆って第2層間絶縁膜62が形成されている。第2層間絶縁膜62の上に酸化物半導体が形成されているような場合、第2層間絶縁膜は酸素を豊富に含んだ膜になる。そうすると、ドレイン電極のキャップメタル203の表面が酸化されて酸化膜2031が形成される。
【0046】
図6は、この状態において、第2層間絶縁膜62にスルーホール63を形成した状態を示す断面図である。例えばキャップメタル203がTiで形成されている場合、表面に酸化チタン膜2031が形成される。酸化チタン膜2031は絶縁物であるから、スルーホール63を形成しても導通が取れないことになる。
【0047】
図7乃至図9は本発明を使用しない場合の他の問題点を説明する断面図である。図7は、スルーホールを形成するために、第2層間絶縁膜62の上にフォトレジスト70をパターニングした状態を示す断面図である。この状態でドライエッチングによって例えば、SiOで形成された層間絶縁膜62をエッチングする。
【0048】
SiOはフッ素系のガス、すなわち、六フッ化硫黄(SF6)とArの混合ガスを用いてエッチングすることが出来る。図8は、フッ素系のガスを用いてドライエッチングを行ってスルーホール63、64を形成した状態を示す断面図である。フッ素系のガスはTiもエッチングする。したがって、ドレイン電極20のスルーホール部分ではAlが露出している。
【0049】
ところで、例えば、poly-Si12の上に形成されたスルーホール64においては、ドライエッチング時に形成されたpoly-Siの酸化膜を除去しないと導通を取ることが出来ない。このために、図9に示すように、希釈した佛酸(DHF)によってスルーホールを洗浄する必要がある。しかし、希釈した佛酸(DHF)は、Al層202を溶かすので、ドレイン電極20側のスルーホール63においてAl層202が消失する危険が生ずる。そうするとスルーホール63における接続が不安定になる。
【0050】
本発明は、キャップメタル203の上に第2酸化物半導体50を形成することによって、以上のような問題を解決するものである。図10乃至図19は、本発明の構成を実現するプロセスを示す断面図である。図10乃至図19もドレイン電極20を例にとって説明するが、本発明はドレイン電極29に限らず、同様な断面構成を持つ電極あるいは配線に対して適用することが出来る。
【0051】
図10はpoly-Si12、ゲート絶縁膜13、ゲート電極14の上に形成された第1層間絶縁膜61の表面にドレイン電極20のための成膜を行った状態を示す断面図である。第1層間絶縁膜61の上には、順にベースメタル201、Al層202、キャップメタル203が形成されている。ドレイン電極20の構成は、図4で説明したのと同様である。
【0052】
図11はキャップメタル203の上に保護膜としての第2酸化物半導体50をスパッタリング等によって成膜した状態を示す断面図である。第2酸化物半導体50の厚さは3乃至10nmである。酸化物半導体50は例えばIGZOが使用される。
【0053】
図12は、ドレイン電極20をパターニングするために、フォトレジスト70をパターニングした状態を示す断面図である。この状態で例えば、塩素系のガスによってドライエッチング行う。塩素系のガスは、塩素Clおよび三塩化ホウ素(BCl)の混合ガスである。塩素系のガスは、Ti、Alと同様に酸化物半導体50に対してもドライエッチングを行うことが出来るので、プロセス負荷は加わらない。
【0054】
図13はドライエッチングを行って、ドレイン電極20をパターニングした状態を示す断面図である。その後図14に示すように、レジスト剥離液によってフォトレジスト70を除去する。
【0055】
図15は、ドレイン電極20を覆って第2層間絶縁膜62を形成した状態を示す断面図である。第2層間絶縁膜62は例えばSiO膜である。第2層間絶縁膜62が酸素リッチな膜構成であっても、ドレイン電極20の表面は第2酸化物半導体50によって覆われているので、キャップメタル203の表面が酸化されることは無い。
【0056】
図16は第2層間絶縁膜62、第1層間絶縁膜61にスルーホールを形成するためのフォトレジスト70を形成し、パターニング行った状態を示す断面図である。図17はドライエッチングによってスルーホール63、64を形成した状態を示す断面図である。ドライエッチングは、フッ素系のガス、すなわち、六フッ化硫黄(SF6)とArの混合ガスを用いて行われる。
【0057】
図17に示すように、ドレイン電極20側のスルーホール63は第2層間絶縁膜62のみに形成されるが、poly-Si12側のスルーホール64は、第2層間絶縁膜62、第1層間絶縁膜61、ゲート絶縁膜13の3層に対して形成される。したがって、ドレイン電極63側では、長くドライエッチングに晒されることになる。第2酸化物半導体50が無ければ、Tiはフッ素系のガスによってエッチングされるので、Tiで形成されたキャップメタル203は消失してしまう。
【0058】
しかし、図17では、フッ素系のガスには侵されない第2酸化物半導体50によってドレイン電極20が覆われているので、キャップメタル203を構成するTiが消失することは無い。つまり、第2酸化物半導体50はエッチングストッパーとしての役割を有している。
【0059】
図18はドライエッチングを終えて、フォトレジスト70を剥離した状態を示す断面図である。図19は、スルーホール63、64を形成した後、poly-Si側のスルーホール64において、poly-Siの表面に形成された酸化膜を希釈佛酸(DHF)によって洗浄している状態を示す断面図である。この希釈佛酸(DHF)はドレイン電極20側のスルーホール63も洗浄する。
【0060】
第2酸化物半導体63は、希釈佛酸(DHF)によって除去可能である。しかし、Tiで形成されるキャップメタル203は希釈佛酸(DHF)によってエッチンングされないので、希釈佛酸(DHF)によってAl層202が溶解することは無い。このように、希釈佛酸(DHF)による洗浄後は、新鮮なTiが露出することになり、良好なコンタクトを取ることが出来る。
【0061】
なお、図17から図18に示すフォトレジスト70の剥離工程において、フォトレジスト70の剥離液として、第2酸化物半導体50を剥離する液を使用する場合は、希釈佛酸(DHF)洗浄前にスルーホール63内の酸化物半導体50が剥離するが、効果は同じである。
【0062】
以上はドレイン電極について説明したが、図3に示すように、ソース電極21についても同様である。
【実施例2】
【0063】
図20は、本発明の実施例2を示す断面図である。図20が実施例1の図3と異なる点は、周辺駆動回路CAにおける回路配線35が第1ゲート電極14と同じ層ではなく、表示領域AAのドレイン電極20あるいはソース電極21と同じ層に形成され、かつ、ドレイン電極20およびソース電極21と同じ3層構造となっていることである。
【0064】
図20において、回路配線35は、ソース配線25とスルーホール43を介して接続している。この接続構造は、以上で説明したドレイン電極20と映像信号線2の接続構造と同じである。すなわち、図10乃至図19で説明した本発明を、周辺駆動回路CAにおいても同様に適用することが出来る。
【実施例3】
【0065】
図21は、本発明の実施例3を示す断面図である。図21が実施例1の図3と異なる点は、第1ゲート電極14、第2ゲート電極16、回路配線15が単層ではなく、実施例1で説明したドレイン電極20あるいはソース電極21と同様に図4で示したような3層構成となっている点である。この場合の3層構成はドレイン電極20等と同様にAl層をTiでサンドイッチした構成でもよいし、Al層をMoWでサンドイッチしたような構成でもよい。
【0066】
図21の周辺駆動回路CAにおける回路配線15部分に形成されたスルーホール43の構成は、表示領域AAにおけるドレイン電極20でのスルーホール44と同様な構成となっている。また、周辺駆動回路CAに形成されたTFTのゲート14は3層構成となっており、映像信号線等と同じ層に形成されたゲート配線37とスルーホール47を介して接続している。この接続構成も実施例1で説明した表示領域AAにおけるドレイン電極20におけるスルーホール44等と同様な構成となっている。
【0067】
また、表示領域AAにおけるTFTのゲート電極16もドレイン電極20等と同じ3層構成となっている。表示領域AAにおけるTFTのゲート電極16及び走査線1は、図21とは異なる部分の断面において、ドレイン電極20等と同じ層に形成された配線あるいは、映像信号線2と同じ層に形成された配線とスルーホールによって接続する。このスルーホールの構成も実施例1で説明したドレイン電極20等を接続するスルーホール44と同じ構成とすることが出来る。
【0068】
実施例1乃至3で説明した本発明は、図11で説明したように、ドレイン電極等の上に第2酸化物半導体を厚さ3乃至10nmスパッタリング等で形成するだけで、他の工程は同じである。また、スパッタリングは、ドレイン電極等をスパッタリングによって成膜した後、続けて短時間スパッタリングするだけで済む。したがって、プロセス負荷を殆ど生ずることなく、大きな効果を得ることが出来る。
【0069】
このように、本発明を用いることによって、ドレイン電極等の表面の酸化を防止し、また、スルーホール形成時の金属の腐食、消失を防止することが出来るので、信頼性の高い表示装置を実現することが出来る。
【0070】
図3および図20は、酸化物半導体を有するTFTはボトムゲートであるが、酸化物半導体を有するTFTがトップゲートの場合、あるいは酸化物半導体の上下にゲート電極が存在するデュアルゲートの場合もある。この場合も本発明を同様に適用することが出来る。また、図3および図20は、poly-Siを有するTFTはトップゲートであるが、poly-Siを有するTFTがボトムゲートの場合、あるいはpoly-Siの上下にゲート電極が存在するデュアルゲートの場合もある。この場合も本発明を同様に適用することが出来る。
【0071】
以上はIPS方式の液晶表示装置について説明したが、本発明は他の液晶表示装置についても適用することが出来る。また、有機EL表示装置もスイッチングTFTを使用すること、周辺駆動回路をTFTによって形成することは液晶表示装置と同じである。さらに、表示領域における断面構造も、基本的には有機パッシベーション膜形成までは殆ど同じと考えてよい。したがって、以上で説明した本発明の構成は、有機EL表示装置についても適用することが出来る。
【符号の説明】
【0072】
1…走査線、 2…映像信号線、 3…画素、 10…TFT基板、 11…下地膜、 12…poly-Si、 13…第1ゲート絶縁膜、 14…第1ゲート電極、 15…回路配線、 16…第2ゲート電極、 17…第2ゲート絶縁膜、 18…第3ゲート絶縁膜、 19…酸化物半導体、 20…ドレイン電極、 21…ソース電極、 22…第1パッシベーション膜、 23…第2パッシベーション膜、 24…ドレイン配線、 25…ソース配線、 26…コンタクト電極、 27…有機パッシベーション膜、 28…コモン電極、 29…コモン配線、 30…容量絶縁膜、 31…画素電極、 32…配向膜、 35…回路配線、 41乃至47…スルーホール、 50…保護膜(第2酸化物半導体)、 61…第1層間絶縁膜、 62…第2層間絶縁膜、 63…スルーホール、 64…スルーホール、 70…フォトレジスト、 150…シール材、 160…ドライバIC、 170…端子部、 200…対向基板、 201…ベースメタル、202…Al層、 203…キャップメタル、 404…配向膜、401…カラーフィルタ、 402…ブラックマトリクス、 403…オーバーコート膜、 404…配向膜、 210…柱状スペーサ、 300…液晶層、 301…液晶分子、 500…表示領域、 600…周辺駆動回路、 2031…酸化膜
図1
図2
図3
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図10
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