(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 11/22 20060101AFI20220225BHJP
F16K 31/365 20060101ALI20220225BHJP
E03C 1/02 20060101ALI20220225BHJP
F16K 11/04 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F16K11/22 B
F16K31/365
E03C1/02
F16K11/04 B
(21)【出願番号】P 2017193841
(22)【出願日】2017-10-03
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小里 尚史
(72)【発明者】
【氏名】清水 晃治
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-049701(JP,U)
【文献】特開平05-333943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00 - 11/24
F16K 31/365
E03C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動操作によって吐水温度を調節する温調操作部と、回動操作によって吐水流量を調節する流量操作部と、を備える弁装置において、
湯および水がそれぞれ供給される湯側通流路および水側通流路と、
前記温調操作部による操作を受けて、前記湯側通流路および前記水側通流路それぞれにおける第1開口部の開口面積を変化させて温度を調節する温度調節部と、
前記流量操作部による操作を受けて、前記湯側通流路および前記水側通流路それぞれにおける第2開口部の開口面積を変化させることによって流量を調節する流量調節部と、を備え、
前記温度調節部により前記第1開口部の開口面積を変化させる方向と前記流量調節部により前記第2開口部の開口面積を変化させる方向とが交差しており、
前記湯側通流路および前記水側通流路それぞれにおける前記第1開口部と前記第2開口部とが投影されて重なり合う重複部分の開口面積によって、湯および水の流量が設定され
ており、
前記流量調節部は、前記流量操作部による操作を受けて作動する弁部を有し、
前記弁部は、前記湯側通流路および前記水側通流路を吐水路へ連通する主弁孔を開閉する主弁、前記主弁の背面側に画成された背圧室、前記背圧室と前記吐水路を連通させるパイロット流路を開閉する制御軸、並びに前記湯側通流路および前記水側通流路のうち少なくとも一方または両方を前記背圧室へ連通する小孔を有することを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記流量調節部によって前記第2開口部の開口面積が変化したときに、前記湯側通流路における前記重複部分の開口面積と、前記水側通流路における前記重複部分の開口面積との比率が一定であることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記主弁は、前記第2開口部を開閉する流調部材を有し、
前記流調部材と前記流調部材が摺動する対向面との間にシール部材を配設したことを特徴とする請求項
1または2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記第1開口部と前記第2開口部は、前記流量操作部における回動操作の中心軸に対して交差する方向を臨むことを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、押圧操作によって吐水と止水を切り替え、回転操作によって吐水流量および吐水温度を調整する弁装置が記載されている。この弁装置は、回動弁体の回転量によって水と湯の混合比を変化させて吐水温度を変化させる温調弁部と、回動弁体の回転軸方向に移動する摺動弁体の位置によって吐水流量を変化させる流調弁部と、を備える。
【0003】
温調弁部は、水供給流路および湯供給流路が形成された固定弁体と、水供給流路および湯供給流路の少なくとも一方と連通する連通流路が形成された回動弁体と、を有する。弁装置は、連通流路が水供給流路および湯供給流路の両方に連通した状態において、水側および湯側の連通面積の比が変化し、吐水温度が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の弁装置は、供給される水および湯の圧力が異なる場合、流量を変えると、回動弁体の連通流路における内圧の変化に伴って水および湯の混合比が変化し、吐水温度が変わってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流量調節の際に湯および水の混合比の変化を抑制することができる弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る弁装置は、回動操作によって吐水温度を調節する温調操作部と、回動操作によって吐水流量を調節する流量操作部と、を備える弁装置において、湯および水がそれぞれ供給される湯側通流路および水側通流路と、前記温調操作部による操作を受けて、前記湯側通流路および前記水側通流路それぞれにおける第1開口部の開口面積を変化させて温度を調節する温度調節部と、前記流量操作部による操作を受けて、前記湯側通流路および前記水側通流路それぞれにおける第2開口部の開口面積を変化させることによって流量を調節する流量調節部と、を備え、前記温度調節部により前記第1開口部の開口面積を変化させる方向と前記流量調節部により前記第2開口部の開口面積を変化させる方向とが交差しており、前記湯側通流路および前記水側通流路それぞれにおける前記第1開口部と前記第2開口部とが投影されて重なり合う重複部分の開口面積によって、湯および水の流量が設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弁装置は、流量調節の際に湯および水の混合比の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る弁装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】弁装置の湯側通流路および水側通流路を含む縦断面図である。
【
図3】弁装置の
図2に示す断面に直交する断面を示す縦断面図である。
【
図4】押ボタンを押圧して止水した状態の
図2に相当する弁装置の縦断面図である。
【
図5】湯側通流路および水側通流路の開口部と、湯供給口および水供給口との関係を説明するための模式図である。
【
図6】
図2における制御軸部分を拡大した断面図である。
【
図7】
図7(a)は制御軸が軸方向に移動した状態を示す模式図であり、
図7(b)は主弁が移動した状態を示す模式図であり、
図7(c)は制御軸が更に軸方向に移動した状態を示す模式図である。
【
図8】弁部の開状態における
図2に相当する弁装置の縦断面図である。
【
図9】
図9(a)は、温度調節部による湯側通流路の開口部を説明するための模式図であり、
図9(b)は、温度調節部による水側通流路の開口部を説明するための模式図である。
【
図10】
図10(a)は、流量調節部による調節後の湯側通流路の流量を説明するための模式図であり、
図10(b)は、流量調節部による水側通流路の流量を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに
図1から
図10を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る弁装置100の外観を示す斜視図である。弁装置100は、ハウジング10、温調操作部40、流量操作部50、押ボタン51および固定部60を備える。ハウジング10は、下部における側面に湯側通流路11および水側通流路12を有し、各通流路の開口部11aおよび開口部12aに、固定側に設けられた湯供給口および水供給口(図示略)が接続される。固定側は、例えば水栓本体である。
【0012】
ハウジング10は、固定部60を固定側に固定した状態で、温調操作部40を回動させる操作によって温調操作部40とともに回動する。ハウジング10の回動によって、開口部11aと湯供給口の相対位置が変化して開口部11aの大きさおよび開口面積が変化する。また、ハウジング10の回動によって、開口部12aと水供給口の相対位置が変化して開口部12aの大きさおよび開口面積が変化する。温度調節部7は、固定部60およびハウジング10等によって構成されており、湯供給口および水供給口に対する開口部11aおよび開口部12aの位置を可変し、開口部11aおよび開口部12aの大きさおよび開口面積を変化させることによって吐水温度を調節する。
【0013】
流量操作部50は、ハウジング10に対して相対的に回動する。流量調節部8(
図2参照)は、弁装置100の内部に配設された弁部2および可動部35(
図2参照)等によって構成されており、湯側通流路11および水側通流路12の弁装置100内側における開口面積を変化させることによって流量を調節する。弁装置100は、温度調節部7によって吐水温度を、流量調節部8によって吐水流量を調節し、ハウジング10の底部10aに設けられた吐水口から吐水する。
【0014】
図2は弁装置100の湯側通流路11および水側通流路12を含む縦断面図であり、
図3は弁装置100の
図2に示す断面に直交する断面を示す縦断面図であり、
図4は押ボタン51を押圧して止水した状態の
図2に相当する弁装置100の縦断面図である。ハウジング10は筒状であり、中央の筒孔部分により吐水路13が形成されており、吐水路13の底部開口が吐水口13aとなっている。湯側通流路11および水側通流路12は、ハウジング10の半径方向に延び、ハウジング10の周側部を内外に貫通している。ハウジング10の外周面における、湯側通流路11の開口部11aおよび水側通流路12の開口部12aは、ハウジング10の外周面における周方向の円弧の寸法が中心角にして80deg程度としてあるが、数十degから90deg程度としてもよい。また、湯側通流路11の開口部11aおよび水側通流路12の開口部12aは、ハウジング10の軸方向の同じ位置に設けられており、開口部12aの軸方向の開口寸法も同一としてある。
【0015】
図5は、湯側通流路11および水側通流路12の開口部と、湯供給口91aおよび水供給口92aとの関係を説明するための模式図である。
図5は、ハウジング10の軸方向に交差し、湯側通流路11および水側通流路12を含む断面を模式的に表している。固定側部品90は、ハウジング10の底部10aを嵌め合わせる嵌合穴90aを有し、軸対象な位置に湯供給路91および水供給路92が設けられている。湯供給路91および水供給路92は、嵌合穴90aの側面に開口した部分に湯供給口91aおよび水供給口92aが形成されている。
【0016】
図5に示す状態において、湯側通流路11の開口部11aが湯供給口91aに対して全開状態となっており、大きさが最も大きい状態となっている。水側通流路12の開口部12aが水供給口92aに対して全閉状態となっており、大きさが最も小さい状態となっている。開口部11aおよび開口部12aの各供給口に対する開度は、ハウジング10を回動させることによって変化させることができる。温度調節部7は、温調操作部40による操作を受けて、固定側部品90に固定された固定部60に対してハウジング10を回動させる。温度調節部7は、ハウジング10の回動によって、湯供給口91aおよび水供給口92aに対する開口部11aおよび開口部12aの大きさおよび開口面積を変化させて吐水温度を調節する。
【0017】
図2に戻り、ハウジング10の筒孔部分は、湯側通流路11および水側通流路12の位置で、内径が大きくなる段差部分が形成されており、該段差部分が後述する弁部2の弁座14となっている。主弁孔14aは、弁座14の内周縁に形成される。弁座14には、環状のゴム製または樹脂製等によるパッキン14bが配設されている。弁座14の外周側であって、湯側通流路11および水側通流路12のハウジング10の内側面15側の端部に、各通流路の開口部11bおよび開口部12bが形成されている。ハウジング10内には弁部2が配設される。各通流路の開口部11bおよび開口部12bは、後述する流調部材23の移動に伴って、大きさおよび開口面積が変化する。
【0018】
弁部2は、主弁20、内蓋24、小孔26および制御軸30を備える。主弁20は、硬質の主弁本体21、主弁本体21に保持されたゴム製のダイアフラム22、および流量を調節する流調部材23を備える。主弁本体21は円板状であり、中央に制御軸30を挿通する貫通孔21aを有する。主弁本体21の底部には、流調部材23を螺合させるべく外周に雄ねじを設けた筒状の取付部21bが設けられている。
【0019】
流調部材23は円筒状であり、一端側を主弁本体21に設けた取付部21bに螺合させて主弁本体21に固定されている。流調部材23は、弁座14に対向する他端側が、弁座14、詳細には弁座14に設けたパッキン14bに接触することで、主弁20が閉状態となり、パッキン14bから離間することで、主弁20が開状態となる。流調部材23の周側部は、対向するハウジング10の内側面15に軸方向に摺動可能に嵌め合わされており、嵌め合い部分を水密に保つべく、内側面15と流調部材23の周側部との間に環状のシール部材25が配設されている。湯および水は、それぞれ湯側通流路11の開口部11aおよび開口部11b、並びに水側通流路12の開口部12aおよび開口部12bを通過した後、吐水路13にて混合される。湯側通流路11の開口部11aおよび開口部11bは、弁装置100の内部において、互いに平行に、近傍した位置に設けられている。同様に、水側通流路12の開口部12aおよび開口部12bは、弁装置100の内部において、互いに平行に、近傍した位置に設けられている。尚、
図2に示す弁装置100は、流調部材23が弁座14に着座し、吐水していない止水状態となっている。
【0020】
ダイアフラム22は、周縁部がハウジング10の肩部16に載せられ、内蓋24の周縁部の底面によって押圧されるようにしてハウジング10の内部に取り付けられる。内蓋24は、皿状であり、底部24aの内側であって、主弁20の背面側に背圧室24bを画成する。内蓋24の底部24aの中央部には、制御軸30を挿通する貫通孔が設けられている。
【0021】
小孔26(
図3参照)は、主弁本体21およびダイアフラム22を貫通するように設けられており、水側通流路12の開口部12aおよび開口部12bの間の中途部から分岐された分岐流路12cと背圧室24bとを連通する。
【0022】
制御軸30は、細長い円柱状であり、上述のように主弁本体21の中央に設けた貫通孔21aに挿入されている。貫通孔21aの内周面に設けた環状溝にシールリング32が保持されている。貫通孔21aに連続するように、取付部21bの内周部にパイロット流路33が形成されている。取付部21bの内周部には、周方向に例えば等間隔に設けられ、軸方向に延び、制御軸30に接触して案内するガイド条が複数条、例えば6条、設けられており、ガイド条間の溝にパイロット流路33が形成されている。
図2に示す断面では、ガイド条間の溝としてのパイロット流路33が表われており、
図3に示す断面では、ガイド条が表われている。パイロット流路33は、背圧室24bと吐水路13とを連通させる。
【0023】
図6は、
図2における制御軸30部分を拡大した断面図である。制御軸30は、シールリング32に接触する外径を有するシール部30aと、シールリング32の内径より小さい外径を有する環状の凹所30bを有する。凹所30bの軸方向における端部は、底部からシール部30aへ拡幅するテーパ面30cとしてある。
図2および
図6に示す制御軸30は、シール部30aがシールリング32に接触しており、パイロット流路33を止水状態としている。このとき、流調部材23は弁座14に着座しており、弁部2が閉状態となって、湯側通流路11および水側通流路12から吐水路13への通流が断たれている。
【0024】
図7(a)は制御軸30が軸方向に移動した状態を示す模式図であり、
図7(b)は主弁20が移動した状態を示す模式図であり、
図7(c)は制御軸30が更に軸方向に移動した状態を示す模式図である。
図7(a)に示す白抜き矢印の方向へ制御軸30が移動して凹所30bとシールリング32との隙間が大きくなると、背圧室24bからパイロット流路33へ多量のパイロット流が生じ、背圧室24bの圧力が減少して主弁20が弁座14から離間する。
【0025】
図7(b)に示すように、主弁20は、シールリング32がテーパ面30cに向かい合って制御軸30との隙間が減少し、水側通流路12、吐水路13側の圧力および背圧室24b側の圧力がバランスする位置で停止する。制御軸30とシールリング32との間の隙間が減少し、パイロット流の流量が制御されることによって、主弁20の位置が決まる。この状態から
図7(c)に示す白抜き矢印の方向へ制御軸30が更に移動すると、主弁20は、制御軸30に追従するように移動し、弁座14から更に離間する。また、制御軸30を逆向きに移動させると、これに追従して主弁20が弁座14に接近するように移動する。
【0026】
このように主弁20は、制御軸30の軸方向への移動位置によって弁座14から離間する距離が定まる。主弁20の流調部材23の位置によって、湯側通流路11の開口部11bおよび水側通流路12の開口部12bの大きさおよび開口面積が定まり、吐水流量が調整される。
【0027】
図2に戻り、温調操作部40は筒状であり、底部が内蓋24に固定されている。温調操作部40とハウジング10との突合せ部分には円弧状にスリット41が設けられており、スリット41から固定部60の接続片60aが突出している(
図3参照)。円弧状のスリット41の中心角に基づいて温調操作部40の回動角度が決まるが、最大で湯側通流路11の開口部11aが全開となる角度から、水側通流路12の開口部12aが全開となる角度まで操作できればよい。
【0028】
固定部60は円板状であり、ハウジング10と温調操作部40の突合せ位置辺りに設けられている。固定部60は、周縁部の軸対象な2箇所に接続片60aを有し、ハウジング10および温調操作部40の中心軸まわりに回動可能に支持されている。換言すれば、固定部60を接続片60aによって固定側に固定すると、ハウジング10および温調操作部40が中心軸まわりに回動可能となる。また固定部60は、中央部の軸対象な位置に、温調操作部40の内側に中心軸方向に延びるガイド板60bを有する。
【0029】
流量操作部50は円筒状であり、温調操作部40に内挿されて温調操作部40と同軸まわりに回動可能に支持されている。流量操作部50は、押ボタン51、駆動部52およびカム部53を有する。押ボタン51は円筒状であり、流量操作部50の内周面に嵌め合わされており、流量操作部50に回転拘束されている。駆動部52は円筒状であり、押ボタン51の内周面に嵌め合わされており、流量操作部50に回転および軸方向への移動が拘束されている。
【0030】
駆動部52の内周面には雌ねじが形成されており、該雌ねじに螺合する雄ねじが形成された可動部35が制御軸30の端部に配設されている。可動部35は、円柱の周面における対向する両側部を平坦状に切除した形状であり、平坦面が固定部60のガイド板60bに接触して回転拘束され、雄ねじ部分が駆動部52の雌ねじに螺合し、駆動部52の回動によって軸方向に直動する。流量調節部8は、流量操作部50の回動操作によって、可動部35が直動して制御軸30が軸方向に移動し、弁部2が開閉する。流量調節部8は、制御軸30の軸方向位置によって、主弁20の流調部材23の位置が決まり、湯側通流路11の開口部11bおよび水側通流路12の開口部12bの大きさおよび開口面積が定まって吐水流量が調整される。
【0031】
上述のように、弁装置100は、
図2に示すように流調部材23が弁座14に着座し、吐水していない状態となっているが、
図4に示すように、押ボタン51が押圧され、押し込まれた状態でも、吐水していない止水状態となる。カム部53は、流量操作部50の内側面に形成されたカム53a、従動カム53bおよび切換カム53cを有する。カム53aは、制御軸30を吐水路13側へ押し込んで止水する止水位置と、止水位置から引き込んで吐水する吐水位置を有する。押ボタン51側に設けた従動カム53bは、スプリング等による復元力によってカム53aに押圧されて接触しており、押ボタン51を押す操作によってカム53aの吐水位置から止水位置に移動する。従動カム53bは、押ボタン51を更に押し込む操作によって、切換カム53cによって位置が切り替わり、止水位置から吐水位置に移動する。尚、実施形態に係る弁装置100は、カム部53が吐水位置にあるときにも、制御軸30の軸方向位置によって弁部2を閉状態にして止水する(
図2参照)。弁装置100は、押ボタン51を設けずに流量操作部50の回転操作のみで止水するようにしても良い。
【0032】
次に、実施形態に係る弁装置100の動作について説明する。
図8は、弁部2の開状態における
図2に相当する弁装置100の縦断面図である。流量操作部50の回動操作や押ボタン51の押圧操作によって、制御軸30が吐水路13から後退する方向に移動する。制御軸30に設けられた凹所30bにおけるテーパ面30cにシールリング32が向かい合って、制御軸30とシールリング32との隙間が減少し、吐水路13側の圧力と背圧室24b側の圧力とがバランスする位置で停止している。
【0033】
流調部材23は、弁座14から離間し、湯側通流路11の開口部11bおよび水側通流路12の開口部12bの開口面積が定まって吐水流量が調節される。湯および水は、それぞれ湯側通流路11の開口部11aおよび開口部11b、並びに水側通流路12の開口部12aおよび開口部12bを通過した後、吐水路13にて混合される。湯側通流路11の開口部11aおよび開口部11bは、弁装置100の内部において、互いに平行に近傍した位置に設けられていることで、湯が各開口部を通流する方向が同じになる。また、水側通流路12の開口部12aおよび開口部12bは、弁装置100の内部において、互いに平行に近傍した位置に設けられていることで、水が各開口部を通流する方向が同じになる。
図2に示す湯側通流路11の開口部11aおよび開口部11bは、やや離隔した位置にあるが、通流路を短くして、互いに重なるように配設されていても良い。同様に、水側通流路12の開口部12aおよび開口部12bは、やや離隔した位置にあるが、通流路を短くして、互いに重なるように配設されていても良い。
図8に示す弁装置100は、湯側通流路11の開口部11bおよび水側通流路12の開口部12bが全開に近い状態である。この状態から、制御軸30を吐水路13側へ移動させるようにすると、制御軸30の移動位置に応じて、開口部11bおよび開口部12bの大きさおよび開口面積が設定され、これに従って吐水流量を調節することができる。
【0034】
流量調節部8は、弁部2および可動部35等を備えて構成されており、弁部2におけるパイロット流を利用して流調部材23が可動する。流調部材23は、流量操作部50の手動によって直接的に操作しなくて済み、パイロット流を利用して可動されるので、流量操作部50における摺動抵抗が小さくなり、操作荷重を軽減することができる。
【0035】
小孔26は、水側通流路12から分岐する分岐流路12cと背圧室24bとを連通するように設けているが、湯側通流路11から分岐する分岐流路と背圧室24bとを連通するように設けてもよい。この場合、水側通流路12が断水している場合に、湯側通流路11によって弁部2の機能を確保することができる。
【0036】
また湯側通流路11および水側通流路12のそれぞれから分岐する分岐流路を設け、各分岐流路と背圧室24bとを連通する小孔を設けるようにしてもよい。この場合、湯側通流路11および水側通流路12のいずれか一方が断水している場合にも、他方の通流路によって弁部2の機能を確保することができる。
【0037】
シール部材25は、流調部材23の外周面と、これに対向するハウジング10の内側面15との嵌め合い部分に生じる隙間を水密に封止する。分岐流路12cは、小孔26を通して背圧室24bへ水を通流するために設けられている。シール部材25は、流調部材23の外周面とハウジング10の内側面15との間の隙間から分岐流路12cの水が漏れることを抑制し、背圧室24bへの水の通流を確保することにより、パイロット流による流量制御がより安定化する。
【0038】
図9(a)は、温度調節部7による湯側通流路11の開口部11aを説明するための模式図であり、
図9(b)は、温度調節部7による水側通流路12の開口部12aを説明するための模式図である。温度調節部7は、
図9(a)に示す開口部11aの開口面積と、
図9(b)に示す開口部12aの開口面積との比率を変化させることによって、吐水温度を調節する。温度調節部7は、開口部11aおよび開口部12aをハウジング10の周方向に開閉して、各開口部の大きさおよび開口面積を変化させている。
【0039】
図10(a)は、流量調節部8による調節後の湯側通流路11の流量を説明するための模式図であり、
図10(b)は、流量調節部8による水側通流路12の流量を説明するための模式図である。流量調節部8は、弁部2の流調部材23の移動によって流量を調節しており、
図10(a)に示すように開口部11aと開口部11bとが投影されて重なり合う重複部分A1の開口面積によって、湯の流量が設定される。同様に、
図10(b)に示すように開口部12aと開口部12bとが投影されて重なり合う重複部分A2の開口面積によって、水の流量が設定される。流量調節部8は、開口部11bおよび開口部12bをハウジング10の軸方向に開閉して、各開口部の大きさおよび開口面積を変化させている。温度調節部7および流量調節部8により開口部を開閉する方向が交差(例えば直交)する。
【0040】
弁装置100は、湯と水が混合される前に、湯側通流路11および水側通流路12において湯と水の比率および流量を変化させて温度調節および流量調節を行うので、混合後の圧力変動が抑制され、流量調節の際に湯水の混合比が変化し難い。
【0041】
また、流量調節部8によって湯側通流路11の開口部11bおよび水側通流路12の開口部12bの大きさおよび開口面積が変化したときに、湯側通流路における重複部分A1の開口面積と、水側通流路における重複部分A2の開口面積との比率が一定となっている。流調操作時においても湯水の面積比が変わらないため、操作時の吐水温度の変化を抑制することができる。例えば、湯側通流路11の開口部11aおよび水側通流路12の開口部12aが投影された形状が長方形状である場合、湯側通流路11における重複部分A1の開口面積と、水側通流路12における重複部分A2の開口面積との比率が一定となり、流調操作時における吐水温度の変化を抑制できる。湯側通流路11の開口部11aおよび水側通流路12の開口部12aが投影された形状が円形状または楕円形状の場合であっても、湯側通流路における重複部分A1の開口面積と、水側通流路における重複部分A2の開口面積との比率が略一定となり、流調操作時の吐水温度の変化を抑制する効果をもつ。湯側通流路11の開口部11aおよび水側通流路12の開口部12aが投影された形状は、円形状または楕円形状よりも、長方形状である方が好ましい。湯側通流路11における重複部分の開口面積と、水側通流路における重複部分の開口面積との比率は、流調操作時に一定であることが好ましいが、厳密に一定でなくても、ある程度の幅を有していてもよい。
【0042】
また、湯側通流路11の開口部11aおよび開口部11b、並びに水側通流路12の開口部12aおよび開口部12bは、ハウジング10の軸、即ち温調操作部40および流量操作部50における回動操作の中心軸に交差(直交)する方向を臨んでいる。これにより、弁装置100は、径方向にハウジング10を貫通する湯側通流路11および水側通流路12を設けることで、シンプルな構成によって湯および水の通流路を配設することができる。尚、湯側通流路11の開口部11aおよび開口部11b、並びに水側通流路12の開口部12aおよび開口部12bは、ハウジング10の軸に平行な方向を臨むようにしてよい。この場合、湯側通流路11および水側通流路12は、ハウジング10の軸方向が通流方向となるように配設される。
【0043】
次に、実施形態に係る弁装置100の特徴を説明する。
本発明の実施形態に係る弁装置100は、回動操作によって吐水温度を調節する温調操作部40と、回動操作によって吐水流量を調節する流量操作部50と、を備える。湯側通流路11および水側通流路12はそれぞれ湯および水が供給される。温度調節部7は、温調操作部40による操作を受けて、湯側通流路11および水側通流路12それぞれにおける開口部11aおよび開口部12a(第1開口部)の開口面積を変化させて温度を調節する。流量調節部8は、流量操作部50による操作を受けて、湯側通流路11および水側通流路12それぞれにおける開口部11bおよび開口部12b(第2開口部)の開口面積を変化させることによって流量を調節する。温度調節部7により開口部11aおよび開口部12aの開口面積を変化させる方向と、流量調節部8により開口部11bおよび開口部12bの開口面積を変化させる方向とが交差している。湯側通流路11における開口部11aと開口部11bとが投影されて重なり合う重複部分A1の開口面積、および水側通流路12における開口部12aと開口部12bとが投影されて重なり合う重複部分A2の開口面積によって、湯および水の流量が設定される。これによって、弁装置100は、湯と水が混合される前に、湯側通流路11および水側通流路12において湯と水の比率および流量を変化させて温度調節および流量調節を行うので、混合後の圧力変動が抑制され、流量調節の際に湯水の混合比が変化し難い。
【0044】
また、流量調節部8によって開口部11bおよび開口部12bの開口面積が変化したときに、湯側通流路11における重複部分の開口面積と、水側通流路における重複部分の開口面積との比率が一定である。これにより、弁装置100は、流調操作時においても湯水の面積比が変わらないため、操作時の吐水温度の変化を抑制することができる。
【0045】
また、流量調節部8は、流量操作部50による操作を受けて作動する弁部2を有する。弁部2は、湯側通流路11および水側通流路12を吐水路13へ連通する主弁孔14aを開閉する主弁20、主弁20の背面側に画成された背圧室24b、背圧室24bと吐水路13を連通させるパイロット流路33を開閉する制御軸30、並びに湯側通流路11および水側通流路12のうち少なくとも一方または両方を背圧室24bへ連通する小孔26を有する。これにより、弁装置100は、流量操作部50における摺動抵抗が小さくなって操作荷重を軽減することができ、湯側通流路11および水側通流路12のいずれか一方が断水した場合に、他方の通流路によって弁部2の機能を確保することができる。
【0046】
また、主弁20は、開口部11bおよび開口部12bを開閉する流調部材23を有し、流調部材23と流調部材23が摺動するハウジング10の内側面15(対向面)との間にシール部材25を配設してある。これにより、弁装置100は、背圧室24bへの水の通流を確保し、パイロット流による流量制御がより安定化することができる。
【0047】
開口部11aおよび開口部12a、並びに開口部11bおよび開口部12bは、流量操作部における回動操作の中心軸に対して交差する方向を臨んでいる。これにより弁装置100は、シンプルな構成で湯および水の通流路を配設することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0049】
11 湯側通流路、 11a 開口部(第1開口部)、
11b 開口部(第2開口部)、 12 水側通流路、
12a 開口部(第1開口部)、 12b 開口部(第2開口部)、
13 吐水路、 14a 主弁孔、 15 内側面(対向面)、 2 弁部、
20 主弁、 23 流調部材、 24b 背圧室、 25 シール部材、
26 小孔、 30 制御軸、 33 パイロット流路、 40 温調操作部、
50 流量操作部、 7 温度調節部、 8 流量調節部、 100 弁装置。