(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ウェットスーツ
(51)【国際特許分類】
A41D 7/00 20060101AFI20220225BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20220225BHJP
A41D 13/012 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A41D7/00 C
A41D31/00 504H
A41D31/00 502C
A41D13/012
(21)【出願番号】P 2017218420
(22)【出願日】2017-11-13
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】白本 愛
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓之
(72)【発明者】
【氏名】吉井 宏見
(72)【発明者】
【氏名】亀井 美予子
(72)【発明者】
【氏名】富村 真司
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3067617(JP,U)
【文献】実公昭38-019934(JP,Y1)
【文献】特開平03-197295(JP,A)
【文献】特開2003-239113(JP,A)
【文献】特開平06-312692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/012
A41D 7/00
A41D 31/00 - 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用時に少なくとも着用者の膝上からウエスト部より上までを覆うウェットスーツであって、
前記ウェットスーツは、発泡ゴム弾性体と、前記発泡ゴム弾性体の裏面、又は、前記発泡ゴム弾性体の裏面及び表面に配置されている繊維層を含む弾性素材で構成されており、
前記ウェットスーツの身体の外側面を覆う領域には、裾部からウエスト部まで延びている帯状の外側面伸縮部が配置されており、前記外側面伸縮部は、前記弾性素材より、身幅方向の伸長率が高い伸縮性素材で構成されて
おり、
前記ウェットスーツにおいて、前記外側面伸縮部及び前身頃の首部以外は、前記弾性素材で構成されている、ことを特徴とするウェットスーツ。
【請求項2】
前記外側面伸縮部は、裾部における幅がウエスト部における幅より小さい請求項1に記載のウェットスーツ。
【請求項3】
股下長5cmにおいて、前記外側面伸縮部の幅は、前記ウェットスーツの幅の10~15%である請求項1又は2に記載のウェットスーツ。
【請求項4】
前記伸縮性素材の身幅方向の伸長率が、前記弾性素材の身幅方向の伸長率の1.1倍以上である請求項1~3のいずれか1項に記載のウェットスーツ。
【請求項5】
前記伸縮性素材は、編物である請求項1~4のいずれか1項に記載のウェットスーツ。
【請求項6】
前記伸縮性素材は、ポリエステル繊維で構成されている請求項1~5のいずれか1項に記載のウェットスーツ。
【請求項7】
前記弾性素材の繊維層は、編物である請求項1~6のいずれか1項に記載のウェットスーツ。
【請求項8】
前記
外側面伸縮部のウエスト部は、背面に延びている請求項1~7のいずれか1項に記載のウェットスーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットスーツに関する。詳細には、水中歩行等の水中運動時に着用するウェットスーツに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットスーツは、従来、スキューバダイビング、ウインドサーフィン等のマリンスポーツを行う際に主に着用されていた。最近では、水泳を必須項目とするトライアスロン等の水中スポーツを行う際にも着用するようになっている。ウェットスーツは、一般的に、ネオプレン、クロロプレン等の発泡性ゴム材料の裏面、又は、ネオプレン、クロロプレン等の発泡性ゴム材料の裏面及び表面に織編物が貼り付けられた、或いは繊維を貼り付けられた素材で構成されている。例えば、特許文献1には、ネオプレンゴム等の発泡性ゴム薄板からなる基材の内面に、編生地を貼着してパイル状起毛面を設けてなる素材を用いたウェットスーツが記載されている。特許文献2には、クロロプレン等の発泡性ゴムからなる弾性体のいずれか片面に、短繊維を起立した状態で貼着した伸縮性植毛シート材を用いたウェットスーツが記載されている。
【0003】
一方、トライアスロン、水中歩行等の水中スポーツを行う際に着用する水着として、保温性を付与する水着が提案されている。例えば、特許文献3には、前身頃又は後身頃の少なくとも一部に、クロロプレンゴム等の防水性シートを間に挟んだ3層構造からなる防水性生地を用い、体側部、内股部、肩ひも部、殿部周辺には、編地等の伸縮性生地を用いた水着が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平7-21499号公報
【文献】特開2001-270019号公報
【文献】実用新案登録第3067617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2に記載の発泡性ゴムと繊維素材の複合体を用いたウェットスーツの場合、剛性が高く、例えば、水中において、歩行等の運動を行った場合、裾に位置する開口部を構成するウェットスーツ素材が人体(肌)から離れてしまい、開口部から水が進入し、保温性が低下するという問題があった。一方、裾に位置する開口部等の開口部を構成するウェットスーツ素材が肌から離れないように、開口部の周囲サイズを小さめにすると、締め付けがきつく着脱性やフィット感が悪いという問題があった。
【0006】
また、特許文献3に記載の水着の場合は、伸縮性生地に接する位置でウェットスーツ素材が肌から離れてしまうと、そこから水が進入し、保温性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、前記問題を解決するため、着脱性及びフィット感が良好であるとともに、開口部からの水の進入が抑制され、保温性を有するウェットスーツを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、着用時に少なくとも着用者の膝上からウエスト部より上までを覆うウェットスーツであって、前記ウェットスーツは、発泡ゴム弾性体と、前記発泡ゴム弾性体の裏面、又は、前記発泡ゴム弾性体の裏面及び表面に配置されている繊維層を含む弾性素材で構成されており、前記ウェットスーツの身体の外側面を覆う領域には、裾部からウエスト部まで延びている帯状の外側面伸縮部が配置されており、前記外側面伸縮部は、前記弾性素材より、身幅方向の伸長率が高い伸縮性素材で構成されていることを特徴とするウェットスーツに関する。
【0009】
前記ウェットスーツにおいて、前記外側面伸縮部は、裾部における幅がウエスト部における幅より小さいことが好ましい。前記ウェットスーツの股下長5cmにおいて、前記外側面伸縮部の幅は、前記ウェットスーツの幅の10~15%であることが好ましい。前記伸縮性素材の身幅方向の伸長率が、前記弾性素材の身幅方向の伸長率の1.1倍以上であることが好ましい。前記伸縮性素材は、編物であることが好ましい。前記伸縮性素材は、ポリエステル繊維で構成されていることが好ましい。前記弾性素材の繊維層は、編物であることが好ましい。前記側面伸縮部のウエスト部は、背面に延びていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、着脱性及びフィット感が良好であるとともに、開口部からの水の進入が抑制され、保温性を有するウェットスーツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは本発明の一実施形態のウェットスーツの模式的正面図であり、
図1Bは同左側面図であり、
図1Cは同背面図である。
【
図2】
図2は水中歩行時の下半身における皮膚の伸縮度合いを示す説明図である。
【
図3】
図3はウエスト部に関する模式的説明図である。
【
図4】
図4は本発明のウェットスーツに用いる一例の伸縮性素材の標準状態及び湿潤状態における荷重と伸長率に関するグラフである。
【
図5】
図5は本発明のウェットスーツに用いる一例の弾性素材の標準状態及び湿潤状態における荷重と伸長率に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発明者らは、水中歩行等の水中運動時にウェットスーツを着用した場合、着脱性及びフィット感を高めるとともに、開口部からの水の進入を抑制し、保温性を高めることについて検討を重ねた。通常、ウェットスーツは、発泡ゴム弾性体と、前記発泡ゴム弾性体の裏面、又は、前記発泡ゴム弾性体の裏面及び表面に配置されている繊維層を含む弾性素材で構成されている。ウェットスーツの身体の外側面を覆う領域において、前記弾性素材より身幅方向の伸長率が高い伸縮性素材で構成されている外側面伸縮部を裾部からウエスト部にかけて帯状に延びるように配置することにより、水中歩行等の水中運動時にウェットスーツを着用した場合、着脱性及びフィット感を高めるとともに、開口部からの水の進入を抑制し、保温性を高められることを見出した。
【0013】
図2は水中歩行時の下半身における皮膚の伸縮度合いを示す説明図であり、+は皮膚が伸びることを意味し、絶対値が大きいほど皮膚伸びが大きく、-は皮膚が縮むことを意味し、絶対値が大きいほど皮膚縮みが大きい。
図2に示されているように、水中歩行等の水中運動時には、鼠径部の皮膚が縮みやすく、特に鼠径部の実線で囲われた領域30(浮きやすい領域)において、ウェットスーツと身体の間に隙間が生じやすく、フィット感が悪くなる上、水がたまりやすく、保温性も低下する。ウェットスーツの身体の外側面を覆う領域の裾部からウエスト部にかけて、前記弾性素材より身幅方向の伸長率が高い伸縮性素材で構成されている帯状の外側面伸縮部を設けることで、鼠径部の皮膚の縮みによるウェットスーツと身体の間に隙間が生じることを防止することができ、それゆえ、フィット感を高めるとともに、保温性を向上させる。また、前記外側面伸縮部により、裾部の開口部を構成する弾性素材が身体から離れることを防ぐことができ、それゆえ、開口部からの水の進入を防ぐことができ、保温性が高まる。また、前記外側面伸縮部を有することにより、全体を弾性素材で構成し、開口部の周囲サイズを小さめにしたウェットスーツより開口部の周囲サイズを大きくすることができ、着用性も良好になる。また、前記外側面伸縮部と接する位置でウェットスーツと身体の間に隙間が生じるとそこから水が進入し保温性が損なわれるおそれがあるので、ウエスト部では前記外側面伸縮部は側面から背面にずらして配置することが望ましい。さらに、歩行動作においては、ウエスト部より上には皮膚の縮みはほとんど生じないので、ウエスト部より上の側面には前記弾性素材を配置することで、さらに保温性が高まる。
【0014】
本発明において、伸長率(伸び率とも称される。)は、JIS L 1096 8.14.1 A法(定速伸長法)に基づいて、荷重は17.6N、引張速度は200mm/minの条件下で測定する。本発明において、「裏面」とは、身体側を意味し、「表面」とは、身体側の反対側を意味する。
【0015】
本発明において、ウエスト部(腰部)は、第十肋骨最下点から股下までの領域の一部又は全部を覆う領域をいう。例えば、
図3に示されている第十肋骨最下点から股部までの領域の一部又は全部を覆う領域をいい、ウエスト部の下端は、股下と一致し、ウエスト部の上端は第十肋骨最下点を超えないことになる。
【0016】
本発明のウェットスーツは、着用時に少なくとも着用者の膝上からウエスト部より上までを覆うものであればよく、そのタイプは特に限定されない。ハーフスパッツ型、ロングスパッツ型(スパッツ型)、ショートジョンワンピース型、ロングジョンワンピース型、フルボディワンピース型のいずれであってもよい。また、袖部を有しても良く、有しなくてもよい。
【0017】
前記弾性素材は、発泡ゴム弾性体と、前記発泡ゴム弾性体の裏面に配置されている繊維層を含むものであってもよく、発泡ゴム弾性体と、前記発泡ゴム弾性体の裏面及び表面に配置されている繊維層を含むものであってもよい。前記発泡ゴム弾性体の裏面に配置されている繊維層を含むことにより、保温性が高まる。前記発泡ゴム弾性体の表面に配置されている繊維層を含むことにより、耐久性が高まる。
【0018】
前記発泡ゴム弾性体は、一般的にウェットスーツに用いるゴム素材を用いることができる。例えば、独立気泡クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、スチレンブタジエンゴム等の発泡性ゴムからなるシートを用いることができる。
【0019】
前記発泡ゴム弾性体は、特に限定されないが、保温性の観点から、厚みが0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。また、着用性やフィット性の観点から、厚みが3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。
【0020】
前記繊維層は、編物であってよく、織物であってもよい。また、短繊維を発泡ゴム弾性体に貼り付けて形成した繊維層であってもよい。前記繊維層は、例えば、接着剤等で発泡ゴム弾性体に貼り付けてもよい。前記繊維層を構成する繊維は、特に限定されず、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、炭素繊維等を用いることができる。
【0021】
前記繊維層は、例えば、簡便であり発泡ゴム弾性体の伸縮性を阻害しない観点から、編物であることが好ましく、タテ及びヨコの両方向に伸縮可能という観点から、ジャージ生地であることがより好ましい。例えば、ポリウレタン繊維と、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維及び炭素繊維からなる一種以上の繊維を交編した編物を用いることができる。
【0022】
前記弾性素材は、特に限定されないが、例えば、フィット性や着用感の観点から、身幅方向(ヨコ方向)の伸長率が50~100%であることが好ましく、60~90%であることがより好ましい。
【0023】
前記弾性素材は、特に限定されないが、例えば、着用感や保温性の観点から、目付が300~700g/m2であることが好ましく、400~600g/m2であることがより好ましい。
【0024】
前記伸縮性素材は、身幅方向の伸長率が弾性素材より高ければ良く特に限定されない。水中歩行等の水中運動時のフィット性を高めるとともに、裾部の開口部からの水の進入を防ぐ観点から、前記伸縮性素材の身幅方向の伸長率が、前記弾性素材の身幅伸長率の1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。
【0025】
前記伸縮性素材は、特に限定されないが、例えば、水中歩行等の水中運動時のフィット性を高めるとともに、裾部の開口部からの水の進入を防ぐ観点から、身幅方向の伸長率は、55~
250%であることが好ましく、80~160%であることがより好ましい。前記伸縮性素材は、特に限定されないが、例えば、水中歩行等の水中運動時のフィット性を高めるとともに、裾部の開口部からの水の進入を防ぐ観点から、身長方向の伸長率は、0~250%であることが好ましい。また、伸縮性素材は、身長方向の伸長率は身幅方向の伸長率の同等以下であることが望ましい。
【0026】
前記伸縮性素材は、着用感や水中歩行等の水中運動時のフィット性を高める観点から、発泡ゴム弾性体を含まないことが好ましく、編物及び/又は織物であることが好ましく、編物であることが好ましく、ジャージ生地、2wayトリコット生地等のタテ及びヨコの両方向に伸縮可能な編物であることが好ましい。前記伸縮性素材がゴム弾性体を含まないと、前記伸縮性素材の乾燥状態に対する湿潤状態のヨコ方向の残留ひずみ量の比(湿潤状態の残留ひずみ量/乾燥状態の残留ひずみ量×100%)が、前記弾性素材の乾燥状態に対する湿潤状態のヨコ方向の残留ひずみ量の比(湿潤状態の残留ひずみ量/乾燥状態の残留ひずみ量×100%)より大きくなりやすく、水中歩行等の水中運動時に、鼠径部におけるウェットスーツと身体との密着性が高まる。
【0027】
前記伸縮性素材を構成する繊維は、特に限定されず、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、炭素繊維等を用いることができ、耐久性に優れる観点から、ポリエステル繊維であることが好ましい。また、伸縮性素材を構成する繊維は撥水処理されたものであってもよい。
【0028】
前記伸縮性素材は、特に限定されないが、例えば、厚みが0.3~1.5mmであることが好ましく、0.4~1.0mmであることがより好ましい。また、前記伸縮性素材は、特に限定されないが、例えば、目付が100~280g/m2であることが好ましく、160~220g/m2であることがより好ましい。
【0029】
前記外側面伸縮部は、裾部からウエスト部まで延びている帯状である。前記外側面伸縮部の幅は、例えば、帯状の全長にわたって一定であってもよく、異なっていてもよい。前記外側面伸縮部の幅は、例えば、裾部からウエスト部に沿って徐々に大きくなってもよい。前記外側面伸縮部の幅は、例えば、水中歩行等の水中運動時のフィット性を高めるとともに、裾部の開口部からの水の進入を防ぐ観点から、裾部における幅がウエスト部における幅より小さいことが好ましく、前記側面伸縮部のウエスト部は、背面に延びていることがより好ましい。
【0030】
前記外側面伸縮部の幅は、前記ウェットスーツの股下長5cmにおいて、前記ウェットスーツの幅(周囲サイズ)の10~15%であることが好ましく、11~14%であることがより好ましい。前記外側面伸縮部において、最大幅は、前記ウェットスーツの股下長5cmにおける幅の20%以下であることが好ましい。前記外側面伸縮部において、最小幅は、前記ウェットスーツの股下長5cmにおける幅の5%以下であることが好ましい。本発明において、ウェットスーツの幅及び外側面伸縮部の幅は、ウェットスーツを平置きにした状態で測定する。
【0031】
以下図面を用いて説明する。
図1Aは本発明の一実施形態におけるウェットスーツの正面図、
図1Bは同左側面図であり、
図1Cは同背面図である。
図1A~1Cに示されているように、ウェットスーツ10は、女性用の袖なし、ワンピース型である。ウェットスーツ10において、身体の外側面を覆う領域には、裾部からウエスト部まで延びている帯状の外側面伸縮部11が配置されている。外側面伸縮部11は、伸縮性素材2で構成されている。伸縮性素材2としては、上述した伸縮性素材を用いることができる。ウェットスーツ10において、前身頃の首部12は、伸縮性素材2で構成されている。ウェットスーツ10において、首部の開口部13、脇部の開口部14及び裾部の開口部15の端部は、伸縮性素材2で覆われている(パイピング)。ウェットスーツ10において、外側面伸縮部11、前身頃の首部12、首部の開口部13、脇部の開口部14及び裾部の開口部15の端部以外の他の部分は、弾性素材1で構成されている。弾性素材1としては、上述した弾性素材を用いることができる。ウェットスーツ10において、後身頃の背中上部16は、肩甲骨を覆わないように配置され、中央においてファスナー等の連結部材20で繋がっている。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
実施例及び比較例において、下記の素材を用いた。
(1)弾性素材として、独立気泡を有するクロロプレンゴム(厚み1.4mm)の裏面にジャージ生地(厚み0.2mm、ポリエステル繊維78質量%、ポリウレタン繊維22質量%)が貼り付けられた複合素材を用いた。弾性素材は、目付が492g/m2であり、タテ伸長率が61.0%であり、ヨコ伸長率が73.0%であった。
(2)伸縮性素材として、ポリエステル繊維100質量%からなる2wayトリコット生地(目付200g/m2)を用いた。伸縮性素材は、タテ伸長率が67.0%であり、ヨコ伸長率が126.2%であった。
【0034】
弾性素材及び伸縮性素材の標準状態(乾燥状態)及び湿潤状態のヨコ方向の荷重―伸長率曲線をJIS L 1096 8.14.1 A法(定速伸長法)に基づいて、引張速度は200mm/minの条件下で測定し、その結果を下記表1、
図4及び
図5に示した。
【0035】
【0036】
(実施例1)
図1に示すように、上述した伸縮性素材を用い、外側面伸縮部11及び前身頃の首部12を構成し、その他の部分を上述した弾性素材で構成するとともに、首部の開口部13、脇部の開口部14及び裾部の開口部15の端部を上述した伸縮性素材で覆うことで、ウェットスーツ10を作製した。ウェットスーツ10において、股下長5cmにおける外側面伸縮部11の幅は
60mmであり、ウェットスーツ10の幅(周囲)の12.8%であった。また、ウェットスーツ10において、外側面伸縮部11の最大幅(ウエスト部の上端)は90mmであり、最小幅(裾部の下端)は30mmであった。実施例1のウェットスーツにおいて、ウエストの周囲サイズ及びヒップの周囲サイズは、下記表2に示す通りであった。
【0037】
(比較例1)
全ての部分を弾性素材で構成することで、
図1に示す形状のウェットスーツを作製した。比較例1のウェットスーツにおいて、ウエストの周囲サイズ、ヒップの周囲サイズ及び裾部の周囲サイズは、下記表2に示す通りであった。
【0038】
【0039】
上記表2に示すように、比較例1では、着脱のため、ウエストサイズが実施例1より大きくなっており、水中歩行等の水中運動時に、鼠径部におけるウェットスーツと身体とのフィット性が悪い。これに対し、実施例1ではフィット感を改善するためウエストを小さくしても着脱を容易にすることができる。
【0040】
実施例1及び比較例1のウェットスーツを着用し、水中歩行を行った際のフィット感、裾部の開口部からの水の進入具合、保温性を確認した。その結果を下記表3に示した。
【0041】
【0042】
表3の結果から分かるように、外側面伸縮部を有する実施例1のウェットスーツを着用して水中歩行を行った際、フィット感が良好であり、裾部の開口部からの水の進入もほぼ感じず、保温性が良好であった。一方、外側面伸縮部を有しない比較例1のウェットスーツを着用して水中歩行を行った際、フィット感が悪く、裾部の開口部からの水の進入を感じ、保温性が悪かった。
【0043】
上記表1、
図4及び
図5に示されているように、実施例1において、伸縮性素材の乾燥状態に対する湿潤状態のヨコ方向の残留ひずみ量の比(湿潤状態の残留ひずみ量/乾燥状態の残留ひずみ量×100%)が、弾性素材の乾燥状態に対する湿潤状態のヨコ方向の残留ひずみ量の比(湿潤状態の残留ひずみ量/乾燥状態の残留ひずみ量×100%)大きいことから、水中歩行等の水中運動時に、鼠径部におけるウェットスーツと身体との密着性がより高まったと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のウェットスーツは、とくに保温用水着として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 弾性素材
2 伸縮性素材
10 ウェットスーツ
11 外側面伸縮部
12 前身頃の首部
13 首部の開口部
14 脇部の開口部
15 裾部の開口部
16 後身頃の背中上部
20 連結部材
30 浮きやすい領域