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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】建設機械の駆動システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20220225BHJP
   F15B 21/14 20060101ALI20220225BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
E02F9/22 M
F15B21/14 A
F15B11/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017221659
(22)【出願日】2017-11-17
(65)【公開番号】P2019090293
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武久
(72)【発明者】
【氏名】村岡 英泰
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-017602(JP,A)
【文献】特許第4024120(JP,B2)
【文献】特開2013-170406(JP,A)
【文献】特開2004-011168(JP,A)
【文献】特開2011-149473(JP,A)
【文献】特開2013-170596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0098019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20-9/22
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
F15B 11/00-11/22
F15B 21/14
B60W 10/00-10/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの実回転数が設定回転数となるように前記エンジンに設けられた燃料噴射弁を制御する制御装置と、
前記エンジンにより駆動されるポンプ、および前記ポンプから作動油が供給されるブームシリンダ、を含み、ブーム下げ時に前記ブームシリンダから排出される圧油により前記ポンプが駆動されることによってエネルギが動力として回生されるように構成された油圧回路と、
ブーム操作レバーを含むブーム操作装置と、を備え、
前記制御装置は、ブーム下げ時に前記ブーム操作レバーの操作量が第1閾値以上であることを含むブーム下げ時カット条件を満たしたときに前記エンジンへの燃料供給をカットし、前記ブーム下げ時カット条件を満たさなくなったとき、または前記エンジンの実回転数が第2閾値を下回ったときに、前記エンジンへの燃料供給を再開する、建設機械の駆動システム。
【請求項2】
前記ポンプは、逆止弁が設けられた吸入ラインによりタンクと接続されており、
前記油圧回路は、ブーム下げ時に前記吸入ラインにおける前記逆止弁よりも下流側部分へ前記ブームシリンダから排出される圧油を導く回生ラインを含む、請求項1に記載の建設機械の駆動システム。
【請求項3】
前記油圧回路は、トルク伝達可能に前記ポンプと連結された、ブーム下げ時に前記ブームシリンダから排出される圧油によって回転される回生モータを含む、請求項1に記載の建設機械の駆動システム。
【請求項4】
前記油圧回路は、前記ポンプから作動油が供給される旋回モータを含み、旋回減速時に前記旋回モータから排出される圧油により前記ポンプが駆動されることによってエネルギが動力として回生されるように構成されており、
旋回操作レバーを含む旋回操作装置をさらに備え、
前記制御装置は、旋回減速時に前記旋回操作レバーの操作量が第3閾値以下であることを含む旋回減速時カット条件を満たしたときに前記エンジンへの燃料供給をカットし、前記旋回減速時カット条件を満たさなくなったとき、または前記エンジンの実回転数が前記第2閾値を下回ったときに、前記エンジンへの燃料供給を再開する、請求項1~3の何れか一項に記載の建設機械の駆動システム。
【請求項5】
エンジンの実回転数が設定回転数となるように前記エンジンに設けられた燃料噴射弁を制御する制御装置と、
前記エンジンにより駆動されるポンプ、および前記ポンプから作動油が供給される旋回モータを含み、旋回減速時に前記旋回モータから排出される圧油により前記ポンプが駆動されることによってエネルギが動力として回生されるように構成された油圧回路と、
旋回操作レバーを含む旋回操作装置と、を備え、
前記制御装置は、旋回減速時に前記旋回操作レバーの操作量が第1閾値以下であることを含む旋回減速時カット条件を満たしたときに前記エンジンへの燃料供給をカットし、前記旋回減速時カット条件を満たさなくなったとき、または前記エンジンの実回転数が第2閾値を下回ったときに、前記エンジンへの燃料供給を再開する、建設機械の駆動システム。
【請求項6】
前記旋回減速時カット条件は、旋回速度が設定値を超えていることも含む、請求項4または5に記載の建設機械の駆動システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記燃料噴射弁を制御するエンジン制御ユニットと、前記油圧回路に含まれる少なくとも1つの機器を制御するポンプ制御ユニットであって、前記エンジン制御ユニットから前記エンジンの実回転数信号が送信されるポンプ制御ユニットを含み、
前記ポンプ制御ユニットは、前記旋回減速時カット条件または前記ブーム下げ時カット条件を満たしたときに前記エンジン制御ユニットへ燃料供給カット可能信号を送信し、前記旋回減速時カット条件または前記ブーム下げ時カット条件を満たさなくなったとき、または前記エンジンの実回転数が前記第2閾値を下回ったときに、前記燃料供給カット可能信号の送信を停止する、請求項1~6の何れか一項に記載の建設機械の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルや油圧クレーンのような建設機械には、油圧回路およびこれに含まれるポンプを駆動するエンジンを含む駆動システムが搭載されている。例えば、油圧回路は、旋回体を旋回させる旋回モータと、旋回体に設けられたブームを揺動させるブームシリンダを含む。
【0003】
例えば、特許文献1には、旋回減速時およびブーム下げ時にエネルギの回生が行われるように構成された油圧回路を含む建設機械の駆動システムが開示されている。エネルギの回生は、旋回モータまたはブームシリンダから排出される圧油によりポンプが駆動されることによって行われ、エネルギが動力として回生される。より詳しくは、油圧回路は、トルク伝達可能にポンプと連結された回生モータを含み、この回生モータが旋回減速時またはブーム下げ時に旋回モータまたはブームシリンダから排出される圧油によって回転される。
【0004】
また、特許文献2には、ブームシリンダを含む複数の油圧アクチュエータのそれぞれが両傾転ポンプと閉回路を形成するように接続された駆動システムが開示されている。この駆動システムでも、ブーム下げ時にブームシリンダから排出される圧油によりポンプが駆動されることによってエネルギの回生が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-118221号公報
【文献】特開2016-17602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に開示された駆動システムのように、油圧回路が旋回減速時および/またはブーム下げ時にエネルギの回生が行われるように構成されていれば、エンジンの燃費を改善することができるが、エンジンの燃費をさらに改善することが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、エンジンの燃費をさらに改善することができる建設機械の駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の発明者らは、エネルギの回生が行われている間も、通常は、エンジンではエンジンの回転数を設定回転数に維持するために燃料噴射が行われることに着目し、エネルギの回生中にエンジンへの燃料供給をカットすることを思い付いた。ただし、電子制御エンジン、即ち、燃料噴射量が制御装置により制御されるエンジンにおいては、負荷の大きさに応じた微少なエンジン回転数の変化から負荷の大小を推定し、エンジン回転数が予め設定した一定回転数となるように制御されるため、エンジン回転数の変化から負荷の大小を判定することが困難である。また、エンジンへの燃料供給をカットしたとしても、燃料供給を再開するタイミングについては、エンジン回転がかなりの程度に低下して初めて再開するしかない。この場合、燃料供給のカット後に建設機械の操縦者が何らかの操作をしたときに、大幅にエンジン回転数がストールしたり、エンジンが停止してしまう恐れがある。そこで、負荷状態が、エンジンへの燃料供給をカットしてもエンジンを継続的に駆動できる状態であるか否かをエンジンの外部で判定する必要がある。本発明は、このような観点からなされたものである。
【0009】
なお、特許文献2には、ブーム下げ時にエンジン負荷動力がゼロとなった場合にエンジンでの燃料噴射量をカットすることが記載されているが、これはエンジンの回転数が上昇して許容回転数を超えることを防止するためである。すなわち、特許文献2に記載された燃料カットの目的は、エンジンの燃費のさらなる改善という本発明の目的とは異なる。
【0010】
すなわち、本発明の1つの側面からの建設機械の駆動システムは、エンジンの実回転数が設定回転数となるように前記エンジンに設けられた燃料噴射弁を制御する制御装置と、前記エンジンにより駆動されるポンプ、および前記ポンプから作動油が供給されるブームシリンダ、を含み、ブーム下げ時に前記ブームシリンダから排出される圧油により前記ポンプが駆動されることによってエネルギが動力として回生されるように構成された油圧回路と、ブーム操作レバーを含むブーム操作装置と、を備え、前記制御装置は、ブーム下げ時に前記ブーム操作レバーの操作量が第1閾値以上であることを含むブーム下げ時カット条件を満たしたときに前記エンジンへの燃料供給をカットし、前記ブーム下げ時カット条件を満たさなくなったとき、または前記エンジンの実回転数が第2閾値を下回ったときに、前記エンジンへの燃料供給を再開する、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、ブーム下げ時カット条件を満たせば、エネルギの回生中にエンジンへの燃料供給がカットされるので、エンジンの燃費を従来よりもさらに改善することができる。しかも、エンジンへの燃料供給は、ブーム下げ時カット条件を満たさなくなったとき、またはエンジンの実回転数が第2閾値を下回ったときに直ちに再開されるので、エンジンの回転数の低下を最小限にとどめることができる。これにより、エンジンの回転数を直ぐに設定回転数まで戻すことが可能な範囲内に維持することが容易となる。しかも、ブーム下げ時カット条件を満たすか否かは、ブーム操作レバーの操作量に基づいて、簡単かつ正確に判断することができる。
【0012】
前記ポンプは、逆止弁が設けられた吸入ラインによりタンクと接続されており、前記油圧回路は、ブーム下げ時に前記吸入ラインにおける前記逆止弁よりも下流側部分へ前記ブームシリンダから排出される圧油を導く回生ラインを含んでもよい。この構成によれば、ブーム下げ時に回生ラインを通じて吸入ラインへ圧油が導かれることで、回生モータを使う場合と比べてさらに簡素な構造でブーム下げ時のエネルギの回生が可能となる。即ち、回生モータを用いる場合に比べて、余分に占有するスペースが小さく、質量が小さく、コストも安く済む。
【0013】
あるいは、前記油圧回路は、トルク伝達可能に前記ポンプと連結された、ブーム下げ時に前記ブームシリンダから排出される圧油によって回転される回生モータを含んでもよい。
【0014】
前記油圧回路は、前記ポンプから作動油が供給される旋回モータを含み、旋回減速時に前記旋回モータから排出される圧油により前記ポンプが駆動されることによってエネルギが動力として回生されるように構成されており、上記の駆動システムは、旋回操作レバーを含む旋回操作装置をさらに備え、前記制御装置は、旋回減速時に前記旋回操作レバーの操作量が第3閾値以下であることを含む旋回減速時カット条件を満たしたときに前記エンジンへの燃料供給をカットし、前記旋回減速時カット条件を満たさなくなったとき、または前記エンジンの実回転数が前記第2閾値を下回ったときに、前記エンジンへの燃料供給を再開してもよい。この構成によれば、旋回減速時カット条件を満たせば、エネルギの回生中にエンジンへの燃料供給がカットされるので、エンジンの燃費を従来よりもさらに改善することができる。しかも、エンジンへの燃料供給は、旋回減速時カット条件を満たさなくなったとき、またはエンジンの実回転数が第2閾値を下回ったときに直ちに再開されるので、エンジンの回転数の低下を最小限にとどめることができる。これにより、エンジンの回転数を直ぐに設定回転数まで戻すことが可能な範囲内に維持することが容易となる。しかも、旋回減速時カット条件を満たすか否かは、旋回操作レバーの操作量に基づいて、簡単かつ正確に判断することができる。
【0015】
また、本発明の別の側面からの建設機械の駆動システムは、エンジンの実回転数が設定回転数となるように前記エンジンに設けられた燃料噴射弁を制御する制御装置と、前記エンジンにより駆動されるポンプ、および前記ポンプから作動油が供給される旋回モータを含み、旋回減速時に前記旋回モータから排出される圧油により前記ポンプが駆動されることによってエネルギが動力として回生されるように構成された油圧回路と、旋回操作レバーを含む旋回操作装置と、を備え、前記制御装置は、旋回減速時に前記旋回操作レバーの操作量が第1閾値以下であることを含む旋回減速時カット条件を満たしたときに前記エンジンへの燃料供給をカットし、前記旋回減速時カット条件を満たさなくなったとき、または前記エンジンの実回転数が第2閾値を下回ったときに、前記エンジンへの燃料供給を再開する、ことを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、旋回減速時カット条件を満たせば、エネルギの回生中にエンジンへの燃料供給がカットされるので、エンジンの燃費を従来よりもさらに改善することができる。しかも、エンジンへの燃料供給は、旋回減速時カット条件を満たさなくなったとき、またはエンジンの実回転数が第2閾値を下回ったときに直ちに再開されるので、エンジンの回転数の低下を最小限にとどめることができる。これにより、エンジンの回転数を直ぐに設定回転数まで戻すことが可能な範囲内に維持することが容易となる。しかも、旋回減速時カット条件を満たすか否かは、旋回操作レバーの操作量に基づいて、簡単かつ正確に判断することができる。
【0017】
例えば、前記旋回減速時カット条件は、旋回速度が設定値を超えていることも含んでもよい。
【0018】
前記制御装置は、前記燃料噴射弁を制御するエンジン制御ユニットと、前記油圧回路に含まれる少なくとも1つの機器を制御するポンプ制御ユニットであって、前記エンジン制御ユニットから前記エンジンの実回転数信号が送信されるポンプ制御ユニットを含み、前記ポンプ制御ユニットは、前記旋回減速時カット条件または前記ブーム下げ時カット条件を満たしたときに前記エンジン制御ユニットへ燃料供給カット可能信号を送信し、前記旋回減速時カット条件または前記ブーム下げ時カット条件を満たさなくなったとき、または前記エンジンの実回転数が前記第2閾値を下回ったときに、前記燃料供給カット可能信号の送信を停止してもよい。この構成によれば、エンジン制御ユニットに関しては、従来のエンジン制御ユニットにおいてソフトウェアの一部を変更するだけの小さな変更しか必要としない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エンジンの燃費を従来よりもさらに改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る建設機械の駆動システムの概略構成図である。
図2】建設機械の一例である油圧ショベルの側面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る建設機械の駆動システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る建設機械の駆動システム1Aを示し、図2に、その駆動システム1Aが搭載された建設機械10を示す。図2に示す建設機械10は油圧ショベルであるが、本発明は、油圧クレーンなどの他の建設機械にも適用可能である。
【0022】
図2に示す建設機械10は自走式であり、走行体11と、走行体11に旋回可能に支持された旋回体12を含む。旋回体12には、ブームが揺動可能に設けられている。ブームの先端にはアームが揺動可能に連結され、アームの先端にはバケットが揺動可能に連結されている。ただし、建設機械10は自走式でなくてもよい。
【0023】
駆動システム1Aは、油圧回路2Aとエンジン13を含む。油圧回路2Aは、油圧アクチュエータとして、図2に示すブームシリンダ31、アームシリンダ32およびバケットシリンダ33を含むとともに、図1に示す旋回モータ34ならびに図略の左走行モータおよび右走行モータを含む。旋回モータ34は旋回体12を旋回させ、ブームシリンダ31、アームシリンダ32およびバケットシリンダ33はそれぞれブーム、アームおよびバケットを揺動させる。
【0024】
また、油圧回路2Aは、図1に示すように、上述した油圧アクチュエータへ作動油を供給する第1ポンプ21および第2ポンプ23を含む。なお、図1では、図面の簡略化のために、旋回モータ34およびブームシリンダ31以外の油圧アクチュエータを省略している。
【0025】
エンジン13は、第1ポンプ21および第2ポンプ23を駆動する。図示は省略するが、エンジン13には複数の燃料噴射弁が設けられており、燃料噴射弁はエンジン制御ユニット14により制御される。例えば、エンジン制御ユニット14は、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有するコンピュータであり、ROMに格納されたプログラムがCPUにより実行される。
【0026】
エンジン制御ユニット14は、図略の回転数選択装置および回転数計と電気的に接続されている。回転数選択装置は、操縦者から、複数の設定回転数のうちの1つの選択を受け付ける。回転数計は、エンジン13の実回転数を検出する。そして、エンジン制御ユニット14は、エンジン13の実回転数が選択された設定回転数となるように燃料噴射弁を制御する。
【0027】
第1ポンプ21および第2ポンプ23のそれぞれは、傾転角が変更可能な可変容量型のポンプ(斜板ポンプまたは斜軸ポンプ)である。第1ポンプ21の傾転角は第1レギュレータ22により調整され、第2ポンプ23の傾転角は第2レギュレータ24により調整される。
【0028】
本実施形態では、第1ポンプ21および第2ポンプ23の吐出流量が電気ポジティブコントロール方式で制御される。このため、第1レギュレータ22および第2レギュレータ24のそれぞれは、電気信号により作動する。例えば、レギュレータ(22または24)は、ポンプ(21または23)が斜板ポンプである場合、ポンプの斜板と連結されたサーボピストンに作用する油圧を電気的に変更するものであってもよいし、ポンプの斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。
【0029】
第1ポンプ21は、旋回制御弁44を含む複数の第1制御弁を介して、旋回モータ34およびアームシリンダ32を含む複数の第1油圧アクチュエータへ作動油を供給する(図1では、旋回制御弁44以外の第1制御弁を省略)。第2ポンプ23は、ブーム制御弁74を含む複数の第2制御弁を介して、ブームシリンダ31およびバケットシリンダ33を含む複数の第2油圧アクチュエータへ作動油を供給する(図1では、ブーム制御弁74以外の第2制御弁を省略)。なお、第1油圧アクチュエータの少なくとも1つと第2油圧アクチュエータの少なくとも1つは同じであってもよい。例えば、ブームシリンダ31へは、第1ポンプ21と第2ポンプ23の双方から作動油が供給されてもよい。
【0030】
具体的に、第1ポンプ21は、第1供給ライン41により複数の第1制御弁と接続されている。本実施形態では、全ての第1制御弁の上流側で第1供給ライン41からセンターバイパスライン42が分岐しており、このセンターバイパスライン42が全ての第1制御弁を通過してタンクへつながっている(センターバイパスライン42の下流側部分は省略)。
【0031】
同様に、第2ポンプ23は、第2供給ライン71により複数の第2制御弁と接続されている。本実施形態では、全ての第2制御弁の上流側で第2供給ライン71からセンターバイパスライン72が分岐しており、このセンターバイパスライン72が全ての第2制御弁を通過してタンクへつながっている(センターバイパスライン72の下流側部分は省略)。
【0032】
旋回制御弁44は、旋回モータ34に対する作動油の供給および排出を制御する。具体的に、旋回制御弁44は、左旋回供給ライン51および右旋回供給ライン52により旋回モータ34と接続されている。また、旋回制御弁44には、タンクライン43が接続されている。
【0033】
左旋回供給ライン51および右旋回供給ライン52は、橋架路53によって互いに接続されている。橋架路53には、互いに逆向きに一対のリリーフ弁54が設けられている。橋架路53におけるリリーフ弁54の間の部分は、メークアップライン57によりタンクと接続されている。左旋回供給ライン51および右旋回供給ライン52のそれぞれは、バイパスライン55によってメークアップライン57と接続されている。ただし、各リリーフ弁54をバイパスするように一対のバイパスライン55が橋架路53に設けられてもよい。各バイパスライン55には、逆止弁56が設けられている。
【0034】
本実施形態では、旋回制御弁44が一対のパイロットポートを有する。ただし、旋回制御弁44は電磁パイロット式であってもよい。旋回制御弁44は、旋回操作装置45の旋回操作レバーが左旋回方向または右旋回方向に傾倒されることにより、中立位置から左旋回位置または右旋回位置にシフトする。
【0035】
旋回操作装置45は、旋回操作レバーの傾倒角に応じた旋回操作信号(左旋回操作信号または右旋回操作信号)を出力する。本実施形態では、旋回操作装置45から出力される旋回操作信号が、旋回操作レバーの傾倒角が大きくなるほど大きくなる。
【0036】
本実施形態では、旋回操作装置45が、旋回操作信号として電気信号を出力する電気ジョイスティックである。このため、旋回制御弁44のパイロットポートにはそれぞれ電磁比例弁(図示せず)が接続されている。これらの電磁比例弁は、後述するポンプ制御ユニット15により制御される。ただし、旋回操作装置45は、旋回操作信号としてパイロット圧を出力するパイロット操作弁であってもよい。この場合、旋回操作装置45は、一対のパイロットライン46,47により旋回制御弁44のパイロットポートと接続される。
【0037】
ブーム制御弁74は、ブームシリンダ31に対する作動油の供給および排出を制御する。具体的に、ブーム制御弁74は、ブーム上げ供給ライン78およびブーム下げ供給ライン79によりブームシリンダ31と接続されている。また、ブーム制御弁74には、タンクライン73が接続されている。
【0038】
本実施形態では、ブーム制御弁74が一対のパイロットポートを有する。ただし、ブーム制御弁74は電磁パイロット式であってもよい。ブーム制御弁74は、ブーム操作装置75のブーム操作レバーがブーム上げ方向またはブーム下げ方向に傾倒されることにより、中立位置からブーム上げ位置またはブーム下げ位置にシフトする。
【0039】
ブーム操作装置75は、ブーム操作レバーの傾倒角に応じたブーム操作信号(ブーム上げ操作信号またはブーム下げ操作信号)を出力する。本実施形態では、ブーム操作装置75から出力されるブーム操作信号が、ブーム操作レバーの傾倒角が大きくなるほど大きくなる。
【0040】
本実施形態では、ブーム操作装置75が、ブーム操作信号として電気信号を出力する電気ジョイスティックである。このため、ブーム制御弁74のパイロットポートにそれぞれ電磁比例弁(図示せず)が接続されている。これらの電磁比例弁は、後述するポンプ制御ユニット15により制御される。ただし、ブーム操作装置75は、ブーム操作信号としてパイロット圧を出力するパイロット操作弁であってもよい。この場合、ブーム操作装置75は、一対のパイロットライン76,77によりブーム制御弁74のパイロットポートと接続される。
【0041】
上述した旋回制御弁44およびブーム制御弁74に接続されたタンクライン43,73の下流側部分とメークアップライン57のタンク側部分は、互いに合流して一本の合流路を構成している。この合流路には、クラッキング圧が少し高く設定された逆止弁67が設けられている。
【0042】
旋回操作装置45から出力される旋回操作信号およびブーム操作装置75から出力されるブーム操作信号は、ポンプ制御ユニット15に入力される。ポンプ制御ユニット15は、上述したエンジン制御ユニット14と共に制御装置16を構成する。例えば、ポンプ制御ユニット15は、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有するコンピュータであり、ROMに格納されたプログラムがCPUにより実行される。
【0043】
ポンプ制御ユニット15は、旋回操作装置45から旋回操作信号(左旋回操作信号または右旋回操作信号)が出力されるときは、旋回制御弁44のパイロットポートと接続された、対応する図略の電磁比例弁を、旋回操作信号が大きくなるにつれて当該電磁比例弁の二次圧が大きくなるように制御する。また、ポンプ制御ユニット15は、ブーム操作装置75からブーム操作信号(ブーム上げ操作信号またはブーム下げ操作信号)が出力されるときは、ブーム制御弁74のパイロットポートと接続された、対応する図略の電磁比例弁を、ブーム操作信号が大きくなるにつれて当該電磁比例弁の二次圧が大きくなるように制御する。
【0044】
また、ポンプ制御ユニット15は、上述した第1レギュレータ22および第2レギュレータ24も制御する。ポンプ制御ユニット15は、旋回操作信号が大きくなるにつれて第1ポンプ21の吐出流量が大きくなるように第1レギュレータ22を制御するとともに、ブーム操作信号が大きくなるにつれて第2ポンプ23の吐出流量が大きくなるように第2レギュレータ24を制御する。
【0045】
さらに、本実施形態では、油圧回路2Aが、旋回減速時およびブーム下げ時にエネルギの回生が行われるように構成されている。エネルギの回生は、旋回モータ34またはブームシリンダ31から排出される圧油により第1ポンプ21および第2ポンプ23が駆動されることによって行われ、エネルギが動力として回生される。
【0046】
そのための構成として、油圧回路2Aは、回生モータ25、旋回用回生切換弁63およびブーム用回生切換弁64を含む。ただし、旋回用回生切換弁63とブーム用回生切換弁64のどちらか一方のみが設けられ、旋回減速時またはブーム下げ時のみにエネルギの回生が行われてもよい。
【0047】
旋回減速時、制御装置16は、旋回減速時カット条件を満たしたときにエンジン13への燃料供給をカットする。その後、制御装置16は、旋回減速時カット条件を満たさなくなったとき、またはエンジン13の実回転数が閾値αを下回ったときに、エンジン13への燃料供給を再開する。例えば、閾値αは、図略の回転数選択装置で選択された設定回転数の50%~100%の範囲内に設定される。
【0048】
旋回減速時カット条件は、旋回操作レバーの操作量が閾値β以下であることを含む。例えば、旋回減速時カット条件は、旋回操作レバーの操作量が閾値β以下であることだけでなく、旋回体12の旋回速度が設定値を超えていることをも含んでもよい。あるいは、旋回減速時カット条件は、旋回操作レバーの操作量が閾値β以下であることだけを含んでもよい。
【0049】
旋回操作レバーの操作量が閾値β以下であるか否かは、旋回操作装置45から出力される旋回操作信号と、閾値βに対応する値とを比較することによって判定される。例えば、閾値βは、旋回操作レバーの操作量の最大値の3%~80%である。
【0050】
左旋回供給ライン51と右旋回供給ライン52の間には、それらのどちらかを選択するための切換弁61が設けられている。切換弁61は、本実施形態では電磁弁(ソレノイドバルブ)であるが、単なる高圧選択弁であってもよい。切換弁61は、旋回回生ライン62により回生モータ25と接続されている。そして、旋回回生ライン62の途中に、旋回用回生切換弁63が設けられている。
【0051】
旋回用回生切換弁63は、旋回回生ライン62の上流側部分および下流側部分をブロックする非回生位置と、旋回回生ライン62の上流側部分を下流側部分と連通させる回生位置との間で切り換えられる。切換弁61および旋回用回生切換弁63は、ポンプ制御ユニット15により制御される。ただし、図1では、図面の簡略化のために一部の信号線のみを描いている。
【0052】
ポンプ制御ユニット15は、左旋回操作が行われるとき(すなわち、旋回操作装置45から左旋回操作信号が出力されるとき)には、切換弁61を排出側の右旋回供給ライン52を旋回回生ライン62と連通させる第1位置(図1の左側位置)に切り換え、右旋回操作が行われるとき(すなわち、旋回操作装置45から右旋回操作信号が出力されるとき)には、切換弁61を排出側の左旋回供給ライン51を旋回回生ライン62と連通させる第2位置(図1の右側位置)に切り換える。
【0053】
また、ポンプ制御ユニット15は、左旋回減速時および右旋回減速時(本実施形態では、旋回操作装置45から出力される旋回操作信号が減少するとき)には、旋回用回生切換弁63を回生位置に切り換え、左旋回減速時および右旋回減速時以外は、旋回用回生切換弁63を非回生位置に維持する。すなわち、左旋回減速時および右旋回減速時には、旋回モータ34から排出される圧油が旋回回生ライン62を通じて回生モータ25へ導かれる。
【0054】
なお、旋回減速時には、逆レバー操作が行われてもよい。例えば、左旋回減速時には、旋回操作装置45の旋回操作レバーが左旋回方向から中立状態に戻されるのではなく、中立状態を超えて右旋回方向に傾倒されてもよい。
【0055】
ブーム下げ時、制御装置16は、ブーム下げ時カット条件を満たしたときにエンジン13への燃料供給をカットする。その後、制御装置16は、ブーム下げ時カット条件を満たさなくなったとき、またはエンジン13の実回転数が閾値αを下回ったときに、エンジン13への燃料供給を再開する。
【0056】
ブーム下げ時カット条件は、ブーム操作レバーの操作量が閾値γ以上であることを含む。ブーム下げ時カット条件は、ブーム操作レバーの操作量が閾値γ以上であることだけを含んでもよいし、それ以外の条件を含んでもよい。
【0057】
ブーム操作レバーの操作量が閾値γ以上であるか否かは、ブーム操作装置75から出力されるブーム操作信号と、閾値γに対応する値とを比較することによって判定される。例えば、閾値γは、ブーム操作レバーの操作量の最大値の3%~80%である。
【0058】
ブーム用回生切換弁64は、ブーム上げ供給ライン78の途中に設けられている。ブーム用回生切換弁64は、ブーム回生ライン65により回生モータ25と接続されている。本実施形態では、旋回回生ライン62とブーム回生ライン65の下流側部分同士が合流して一本の合流路を構成している。また、回生モータ25は、タンクライン66によりタンクと接続されている。タンクライン66の下流側部分は、上述した逆止弁67が設けられた合流路に合流している。
【0059】
ブーム用回生切換弁64は、ブーム上げ供給ライン78のシリンダ側部分を制御弁側部分と連通させるとともにブーム回生ライン65をブロックする非回生位置と、ブーム上げ供給ライン78のシリンダ側部分をブーム回生ライン65と連通させるとともにブーム上げ供給ライン78の制御弁側部分をブロックする回生位置との間で切り換えられる。ブーム用回生切換弁64は、ポンプ制御ユニット15により制御される。
【0060】
ポンプ制御ユニット15は、ブーム下げ時(すなわち、ブーム操作装置75からブーム下げ操作信号が出力されるときとき)には、ブーム用回生切換弁64を回生位置に切り換え、ブーム下げ時以外は、ブーム用回生切換弁64を非回生位置に維持する。すなわち、ブーム下げ時には、ブームシリンダ31から排出される圧油がブーム回生ライン65を通じて回生モータ25へ導かれる。
【0061】
回生モータ25は、トルク伝達可能に第1ポンプ21および第2ポンプ23と連結されている。本実施形態では、回生モータ25がワンウェイクラッチ27を介して第1ポンプ21および第2ポンプ23と連結されている。ワンウェイクラッチ27は、回生モータ25の回転速度が第1ポンプ21および第2ポンプ23の回転速度より速いときだけ回生モータ25から第1ポンプ21および第2ポンプ23へトルクを伝達し、逆の場合はトルクを伝達しない。
【0062】
回生モータ25には、上述したように、旋回減速時に旋回モータ34から排出される圧油が導かれるとともに、ブーム下げ時にブームシリンダ31から排出される圧油が導かれる。換言すれば、回生モータ25は、旋回減速時に旋回モータ34から排出される圧油によって回転され、ブーム下げ時にブームシリンダ31から排出される圧油によって回転される。これにより、第1ポンプ21および第2ポンプ23が駆動される。
【0063】
回生モータ25は、本実施形態では、傾転角が変更可能な可変容量型のモータ(斜板モータまたは斜軸モータ)である。ただし、回生モータ25は、固定容量型のモータであってもよい。回生モータ25の傾転角は、第3レギュレータ26により調整される。
【0064】
本実施形態では、第3レギュレータ26が電気信号により作動する。例えば、回生モータ25が斜板モータである場合、第3レギュレータ26は、モータの斜板と連結されたサーボピストンに作用する油圧を電気的に変更するものであってもよいし、モータの斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。
【0065】
第3レギュレータ26は、ポンプ制御ユニット15により制御される。例えば、ポンプ制御ユニット15は、旋回減速時には、旋回体12の旋回速度が遅くなるほど回生モータ25の傾転角が小さくなるように第3レギュレータ26を制御する。また、ポンプ制御ユニット15は、ブーム下げ時には、ブーム操作装置75から出力されるブーム操作信号が大きくなるほど(換言すれば、操縦者がブーム下げ速度を速くしようとするほど)回生モータ25の傾転角が大きくなるように第3レギュレータ26を制御する。
【0066】
制御装置16を構成するポンプ制御ユニット15とエンジン制御ユニット14との間では信号の送受信が行われる。具体的に、エンジン制御ユニット14からポンプ制御ユニット15へは、エンジン13の実回転数の情報を含む実回転数信号が送信される。逆に、ポンプ制御ユニット15からエンジン制御ユニット14へは、旋回減速時カット条件またはブーム下げ時カット条件を満たしたときに、燃料供給カット可能信号が送信される。エンジン制御ユニット14は、燃料供給カット可能信号を受信すると、燃料噴射が停止されるように燃料噴射弁を制御する。
【0067】
ポンプ制御ユニット15は、エンジン制御ユニット14へ燃料供給カット可能信号を送信した後は、旋回減速時カット条件またはブーム下げ時カット条件を満たさなくなったとき、またはエンジン13の実回転数が閾値αを下回ったときに、燃料供給カット可能信号の送信を停止する。エンジン制御ユニット14は、燃料供給カット可能信号の送信が停止されると、燃料噴射が再開されるように燃料噴射弁を制御する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の駆動システム1Aでは、旋回減速時カット条件またはブーム下げ時カット条件を満たせば、エネルギの回生中にエンジン13への燃料供給がカットされるので、エンジン13の燃費を従来よりもさらに改善することができる。しかも、エンジン13への燃料供給は、旋回減速時カット条件またはブーム下げ時カット条件を満たさなくなったとき、またはエンジン13の実回転数が閾値αを下回ったときに直ちに再開されるので、エンジン13の回転数の低下を最小限にとどめることができる。これにより、エンジン13の回転数を直ぐに設定回転数まで戻すことが可能な範囲内に維持することが容易となる。しかも、旋回減速時カット条件またはブーム下げ時カット条件を満たすか否かは、旋回操作レバーまたはブーム操作レバーの操作量に基づいて、簡単かつ正確に判断することができる。
【0069】
また、本実施形態では、エンジン制御ユニット14とポンプ制御ユニット15との間で信号の送受信が行われるので、エンジン制御ユニット14に関しては、従来のエンジン制御ユニットにおいてソフトウェアの一部を変更するだけの小さな変更しか必要としない。
【0070】
(第2実施形態)
図3に、本発明の第2実施形態に係る建設機械の駆動システム1Bを示す。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0071】
本実施形態の駆動システム1Bは、ブーム下げ時にブームシリンダ31から排出される圧油により第1ポンプ21および第2ポンプ23が駆動されることによってエネルギが動力として回生されるように構成された油圧回路2Bを含む。
【0072】
具体的に、本実施形態では、第1ポンプ21が逆止弁82が設けられた第1吸入ライン81によりタンクと接続されているとともに、第2ポンプ23が逆止弁84が設けられた第2吸入ライン83によりタンクと接続されている。また、本実施形態では、タンクライン73(図1参照)の代わりに、回生ライン85がブーム制御弁74に接続されている。
【0073】
回生ライン85は、ブーム制御弁74がブーム上げ位置に位置したときはブーム下げ供給ライン79と連通し、ブーム制御弁74がブーム下げ位置に位置したときはブーム上げ供給ライン78と連通する。すなわち、回生ライン85には、ブーム上げ時にもブーム下げ時にもブームシリンダ31から排出される作動油(ブーム下げ時には圧油)が流れる。
【0074】
回生ライン85は、第1吸入ライン81における逆止弁82よりも下流側部分および第2吸入ライン83における逆止弁84よりも下流側部分に接続されている。つまり、回生ライン85は、ブーム上げ時およびブーム下げ時に第1吸入ライン81における逆止弁82よりも下流側部分および第2吸入ライン83における逆止弁よりも下流側部分へブームシリンダ31から排出される作動油を導く。ただし、回生ライン85は、第1吸入ライン81における逆止弁82よりも下流側部分と第2吸入ライン83における逆止弁84よりも下流側部分のどちらか一方のみに接続されてもよい。回生ライン85は、リリーフ弁87が設けられたリリーフライン86によりタンクと接続されている。
【0075】
ブーム下げ時、ブームシリンダ31から排出される作動油の流量が第1ポンプ21および第2ポンプ23の合計吐出流量よりも多い場合には、第1ポンプ21および第2ポンプ23の吸入圧がリリーフ弁87の設定圧に保たれる。これにより、第1ポンプ21および第2ポンプ23が駆動される。
【0076】
さらに、本実施形態では、ブーム操作装置75が、ブーム操作信号としてパイロット圧を出力するパイロット操作弁である。このため、ブーム操作装置75は、一対のパイロットライン76,77によりブーム制御弁74のパイロットポートと接続されている。ただし、ブーム操作装置75は、ブーム操作信号として電気信号を出力する電気ジョイスティックであってもよい。この場合、ブーム制御弁74のパイロットポートにそれぞれ電磁比例弁が接続されてもよいし、ブーム制御弁74が電磁パイロット式であってもよい。
【0077】
また、本実施形態では、ポンプ制御ユニット15が、ブーム操作信号であるパイロット圧を検出する圧力センサ91,92と電気的に接続されている。ただし、図3では、図面の簡略化のために一部の信号線のみを描いている。ポンプ制御ユニット15は、圧力センサ92で検出される圧力がゼロよりも大きいときにブーム上げが行われたと判定し、圧力センサ91で検出される圧力がゼロよりも大きいときにブーム下げが行われたと判定する。
【0078】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、ブーム下げ時、制御装置16は、ブーム下げ時カット条件を満たしたときにエンジン13への燃料供給をカットする。その後、制御装置16は、ブーム下げ時カット条件を満たさなくなったとき、またはエンジン13の実回転数が閾値αを下回ったときに、エンジン13への燃料供給を再開する。
【0079】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、ブーム下げ時に回生ライン85を通じて第1吸入ライン81および第2吸入ライン83へ圧油が導かれることで、回生モータ25(図1参照)を使う場合と比べてさらに簡素な構造でブーム下げ時のエネルギの回生が可能となる。即ち、回生モータ25を用いる場合に比べて、余分に占有するスペースが小さく、質量が小さく、コストも安く済む。
【0080】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0081】
例えば、第1実施形態において、第1ポンプ21および第2ポンプ23の吐出流量が油圧ネガティブコントロール方式で制御されてもよい。この場合、第1レギュレータ22および第2レギュレータ24のそれぞれは油圧により作動するため、ポンプ制御ユニット15は弁61,63,64のみを制御してもよい(旋回操作装置45およびブーム操作装置75がパイロット操作弁である場合)。すなわち、ポンプ制御ユニット15は、油圧回路2Aに含まれる少なくとも1つの機器を制御すればよい。あるいは、第1実施形態において、第1ポンプ21および第2ポンプ23の吐出流量がロードセンシング方式で制御されてもよい。
【0082】
同様に、第2実施形態においても、第1ポンプ21および第2ポンプ23の吐出流量が油圧ネガティブコントロール方式で制御されてもよいし、ロードセンシング方式で制御されてもよい。
【0083】
また、第2実施形態においては、第1実施形態と同様にブーム制御弁74にタンクラインが接続され、回生ライン85がブーム上げ供給ライン78の途中に設けられた回生切換弁64に接続されてもよい。つまり、回生ライン85は、ブーム下げ時のみに、第1吸入ライン81における逆止弁82よりも下流側部分および第2吸入ライン83における逆止弁よりも下流側部分へブームシリンダ31から排出される圧油を導いてもよい。
【0084】
あるいは、第2実施形態においては、回生ライン85におけるタンクライン86の分岐点の上流側に回生切換弁が設けられ、この回生切換弁にリリーフ弁87をバイパスするバイパスラインが接続されてもよい。回生切換弁は、ブーム上げ時に回生ライン85の上流側部分をバイパスラインと連通させ、ブーム下げ時に回生ライン85の上流側部分を下流側部分と連通させる。これにより、ブーム上げ時には、ブームシリンダ31から排出される作動油が直接的に第1ポンプ21および第2ポンプ23に吸入されるのではなく、バイパスラインを通じてタンクへ戻される。
【0085】
また、第1実施形態または第2実施形態において、センターバイパスライン42,72のそれぞれの代わりに、制御弁を通過しないアンロードラインおよびこのアンロードラインに設けられたアンロード弁が採用されてもよい。
【0086】
また、第1実施形態または第2実施形態において、第2ポンプ23が省略され、全ての油圧アクチュエータへ第1ポンプ21から作動油が供給されてもよい。
【0087】
あるいは、油圧回路(2Aまたは2B)は旋回モータ34専用の両傾転ポンプを含み、この両傾転ポンプと旋回モータ34とが閉回路を形成するように接続されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1A,1B 駆動システム
10 建設機械
13 エンジン
14 エンジン制御ユニット
15 ポンプ制御ユニット
16 制御装置
2A,2B 油圧回路
21,23 ポンプ
25 回生モータ
31 ブームシリンダ
34 旋回モータ
62,65,85 回生ライン
81,83 吸入ライン
82,84 逆止弁
図1
図2
図3