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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/02 20060101AFI20220225BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20220225BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H04R19/02
H01L29/84 Z
H04R19/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017229920
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019102913
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】中野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】那須 将樹
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-089496(JP,A)
【文献】特開2014-027756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01L 1/00- 1/26
G01L 25/00
H01L 29/84
H01L 49/00-49/02
H04R 1/00- 1/02
H04R 1/06
H04R 1/20- 1/34
H04R 1/40
H04R 1/44
H04R 3/00
H04R 9/00
H04R 11/00-11/06
H04R 11/14
H04R 13/00-15/02
H04R 17/00
H04R 17/10
H04R 19/00-19/04
H04R 21/00-21/02
H04R 23/00-23/02
H04R 29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体シートと、
複数の第一貫通孔を備え、前記誘電体シートの第一面側に配置される第一電極シートと、
前記第一電極シートにおける前記誘電体シートと反対側の面に配置される第一リード線と、
前記第一電極シートにおける前記誘電体シートと反対側の面に配置され、前記第一リード線の先端部を保護する第一保護シートと、
融着材料により形成されており、前記第一電極シートの前記第一貫通孔を介することにより形成される部位であって前記誘電体シートと前記第一保護シートとの境界部位、又は、前記第一電極シートの前記第一貫通孔の内周面を含む前記第一電極シートと前記第一保護シートとの境界部位を、前記融着材料の融着により接合する第一保護融着層と、
を備える、トランスデューサ。
【請求項2】
前記誘電体シートは、熱可塑性材料により形成され、
前記第一保護融着層は、前記誘電体シートの一部分を前記融着材料として適用し、前記第一電極シートの前記第一貫通孔を介することにより形成される部位であって前記誘電体シートと前記第一保護シートとの境界部位、又は、前記第一電極シートの前記第一貫通孔の内周面を含む前記第一電極シートと前記第一保護シートとの境界部位を、前記誘電体シートの一部分の融着により接合する、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項3】
前記第一保護シートは、熱可塑性材料により形成され、
前記第一保護融着層は、前記誘電体シートの一部分及び前記第一保護シートの一部分を前記融着材料として適用し、前記第一電極シートの前記第一貫通孔を介することにより形成される部位であって前記誘電体シートと前記第一保護シートとの境界部位、又は、前記第一電極シートの前記第一貫通孔の内周面を含む前記第一電極シートと前記第一保護シートとの境界部位を、前記誘電体シートの一部分及び前記誘電体シートの一部分の融着により接合する、請求項2に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
前記第一保護シートは、熱可塑性材料により形成され、
前記第一保護融着層は、前記第一保護シートの一部分を前記融着材料として適用し、前記第一電極シートの前記第一貫通孔を介することにより形成される部位であって前記誘電体シートと前記第一保護シートとの境界部位、又は、前記第一電極シートの前記第一貫通孔の内周面を含む前記第一電極シートと前記第一保護シートとの境界部位を、前記第一保護シートの一部分の融着により接合する、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
前記誘電体シートは、非熱可塑性材料により形成され、積層方向に孔を有する、請求項4に記載のトランスデューサ。
【請求項6】
前記誘電体シート及び前記第一保護シートは、非熱可塑性材料により形成され、
前記第一保護融着層は、前記誘電体シート及び前記第一保護シートとは別材料であり、且つ、熱可塑性材料である前記融着材料により形成される、請求項に記載のトランスデューサ。
【請求項7】
前記第一電極シートは、織物又は不織布である、請求項1-6の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項8】
前記第一リード線は、前記第一電極シートに絡められている、請求項7に記載のトランスデューサ。
【請求項9】
前記トランスデューサは、さらに、前記第一リード線の先端部を前記第一電極シートに電気的に接続した状態で固着させる第一固着層を備え、
前記第一保護シートは、前記第一リード線の先端部及び前記第一固着層を保護する、請求項1-8の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項10】
前記トランスデューサは、さらに、前記誘電体シートと前記第一電極シートとの間に配置され、前記第一電極シートの前記第一貫通孔を介して前記第一固着層に固着される第一補強層を備える、請求項9に記載のトランスデューサ。
【請求項11】
前記第一補強層は、前記第一電極シートの前記第一貫通孔よりも小さな貫通孔を有する、請求項10に記載のトランスデューサ。
【請求項12】
前記トランスデューサは、さらに、融着材料により形成されており、前記誘電体シートと前記第一電極シートの内面との境界部位、及び、前記誘電体シートと前記複数の第一貫通孔の少なくとも一部の内周面との境界部位を、融着材料の融着により接合する第一主融着層を備える、請求項1-11の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項13】
前記トランスデューサは、さらに、
複数の第二貫通孔を備え、前記誘電体シートの第二面側に配置される第二電極シートと、
前記第二電極シートにおける前記誘電体シートと反対側の面に配置される第二リード線と、
前記第二電極シートにおける前記誘電体シートと反対側の面に配置され、前記第二リード線の先端部を保護する第二保護シートと、
融着材料により形成されており、前記第二電極シートの前記第二貫通孔を介することにより形成される部位であって前記誘電体シートと前記第二保護シートとの境界部位、又は、前記第二電極シートの前記第二貫通孔の内周面を含む前記第二電極シートと前記第二保護シートとの境界部位を、前記融着材料の融着により接合する第二保護融着層と、
を備える、請求項1-12の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスデューサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多層型ピエゾアクチュエータにおけるワイヤメッシュ形状の外部電極の自由端に、半田付けや溶接によって、リード線を接続する構成が開示されている。特許文献2には、積層型圧電素子における外部電極の端部に、半田や導電性樹脂等の導電性接続材を介して又は溶接によりリード線を接続し、外部電極の端部とリード線との接続部を樹脂で覆う構成が開示されている。
【0003】
特許文献3には、ポリマー圧電体に多孔シート状の電極が埋入された圧電素子が開示されている。この圧電素子は、ポリマー圧電体フィルム又はシートの表面をアセトン等の溶媒で処理し、その後に処理表面に多孔シート状の電極を積層して圧着することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2012-500486号公報
【文献】特許第5465337号公報
【文献】特許第3105645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2においては、リード線は、トランスデューサを機能させるための電極シートではなく、外部へ引き延ばされた外部電極に接続されている。外部電極ではなく、電極シートにリード線を接続することができれば、トランスデューサの低コスト化を図ることができる。
【0006】
トランスデューサ全体の変形に伴って電極シートが変形するが、このような場合であっても、リード線と電極シートとが、電気的に接続された状態を維持する必要がある。特に、特許文献3に記載のように、電極シートが貫通孔を有するような形状である場合には、リード線と電極シートとを半田付けや溶接によって接合しただけでは、十分ではないため、より確実な接合方法を適用することが求められる。
【0007】
また、近年、環境対策として、揮発性有機化合物(VOC)の排出の抑制が求められている。そのため、揮散型接着剤を用いないことはもちろんのこと、溶媒も用いないことが求められる。
【0008】
本発明は、VOCの排出を抑制すると共に、リード線と電極シートとの接合状態を向上させることができるトランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るトランスデューサは、誘電体シートと、複数の第一貫通孔を備え、前記誘電体シートの第一面側に配置される第一電極シートと、前記第一電極シートにおける前記誘電体シートと反対側の面に配置される第一リード線と、前記第一電極シートにおける前記誘電体シートと反対側の面に配置され、前記第一リード線の先端部を保護する第一保護シートと、融着材料により形成されており、前記第一電極シートの前記第一貫通孔を介することにより形成される部位であって前記誘電体シートと前記第一保護シートとの境界部位、又は、前記第一電極シートの前記第一貫通孔の内周面を含む前記第一電極シートと前記第一保護シートとの境界部位を、前記融着材料の融着により接合する第一保護融着層とを備える。
【0010】
上記によれば、第一リード線及び第一保護シートは、第一電極シートにおける誘電体シートの反対側の面に配置されている。従って、外部に引き出された電極ではなく、トランスデューサとして機能する電極シートそのものに、第一リード線及び第一保護シートが接合されている。従って、外部電極が不要となるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
ここで、第一保護融着層は、第一として、誘電体シートと第一保護シートとの境界部位を接合する状態と、第二として、第一電極シートと第一保護シートとの境界部位を接合する状態の何れかである。
【0012】
第一の接合状態として、第一電極シートの第一貫通孔を介することにより形成される部位であって誘電体シートと第一保護シートとの境界部位が、融着材料の融着により接合されている。つまり、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく、両者が接合されている。従って、VOCの排出を抑制できる。
【0013】
さらに、第一保護シートと誘電体シートとが、融着材料によって接合している。この構成は、第一リード線及び第一保護シートが、第一電極シートにおける誘電体シートの反対側の面に配置されることにより実現できる。そして、この場合、第一保護シートと誘電体シートとの間には、第一電極シート及び第一リード線が介在している。ただし、第一電極シートが第一貫通孔を有しているため、第一保護シートと誘電体シートとは、第一電極シート及び第一リード線を介した状態で、接合することが可能となる。つまり、第一電極シートの一部及び第一リード線の先端部は、接合された第一保護シート及び誘電体シートに埋設されたような状態となる。従って、第一電極シートと第一リード線とは、確実に、電気的に接続された状態が維持される。加えて、第一電極シートを誘電体シートに接合した状態を維持することができる。
【0014】
また、第二の接合状態として、第一電極シートと第一保護シートとの境界部位が、融着材料の融着によって接合されている。この場合も、上記同様に、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく、両者が接合されている。従って、VOCの排出を抑制できる。
【0015】
さらに、第一保護シートと第一電極シートとが、融着材料によって接合している。そして、融着される第一電極シートの部位は、第一電極シートの第一貫通孔の内周面を含んでいる。融着材料の融着によって、第一保護シートと、第一電極シートにおける外面及び第一貫通孔の内周面とが接合されている。従って、第一保護シートと第一電極シートとは広範囲に接合している。このようにして接合されている第一保護シートと第一電極シートとの間に、第一リード線の先端部が存在している。つまり、第一リード線の先端部は、接合された第一保護シート及び第一電極シートに埋設されたような状態となる。従って、第一電極シートと第一リード線とは、確実に、電気的に接続された状態が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一実施形態のトランスデューサの構成の概要を示す斜視図である。
図2】第一実施形態のトランスデューサの平面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5図2のV-V断面図である。
図6】第一実施形態のトランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。
図7】第二実施形態のトランスデューサの断面図である。
図8】第三実施形態のトランスデューサの断面図である。
図9】第三実施形態のトランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。
図10】第四実施形態のトランスデューサの断面図である。
図11A】第四実施形態のトランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。
図11B】第四実施形態のトランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。
図12】第五実施形態のトランスデューサの断面図である。
図13】第五実施形態のトランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。
図14】第六実施形態のトランスデューサの断面図である。
図15】第六実施形態のトランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。
図16】第七実施形態のトランスデューサの断面図である。
図17】第七実施形態のトランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。
図18】第八実施形態のトランスデューサの断面図である。
図19】第八実施形態のトランスデューサの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1.第一実施形態)
(1-1.トランスデューサ1の構成)
第一実施形態のトランスデューサ1について、図1図5を参照して説明する。トランスデューサ1は、静電型である。つまり、トランスデューサ1は、電極間の静電容量の変化を利用して、振動や音等を発生させるアクチュエータとして機能させることができる。また、トランスデューサ1は、電極間の静電容量の変化を利用して、外部からの押込力等を検出するセンサ(外力検出センサ)、電位を有する導電体の接触又は接近を検出するセンサ(接触接近センサ)として機能させることができる。
【0018】
トランスデューサ1がアクチュエータとして機能する場合には、電極に電圧が印加されることにより、電極間の電位に応じて誘電体が変形し、誘電体の変形に伴って振動が発生する。トランスデューサ1が外力検出センサとして機能する場合には、外部からの押込力や振動や音などの入力に起因して誘電体が変形することにより電極間の静電容量が変化し、電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、外部からの押込力等を検出する。また、トランスデューサ1が接触接近センサとして機能する場合には、電位を有する導電体の接触又は接近により、電極間の静電容量が変化し、変化した電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、当該導電体の接触又は接近を検出する。
【0019】
図1に示すように、トランスデューサ1は、シート状に形成されている。ただし、トランスデューサ1は、図1に示す基本構成を複数積層するようにしてもよい。トランスデューサ1は、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、第一固着層14(図2に示す)、第一保護シート15、第二電極シート16、第二リード線17、第二固着層18(図2に示す)、第二保護シート19を備える。
【0020】
誘電体シート11は、弾性変形可能な誘電材料により形成される。詳細には、誘電体シート11は、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーにより形成されている。誘電体シート11は、シート状で、例えば矩形等の所望の外形に形成されている。誘電体シート11は、厚み方向に伸縮すると共に、厚み方向の伸縮に伴って面方向に伸縮する構造を有する。
【0021】
第一電極シート12及び第二電極シート16は、導電性を有しつつ、柔軟性及び伸縮性を有する。第一電極シート12及び第二電極シート16は、例えば、導電性布である。導電性布とは、導電性繊維により形成された織物又は不織布である。ここで、導電性繊維は、柔軟性を有する繊維の表面を導電材料により被覆することにより形成される。導電性繊維は、例えば、ポリエチレン等の樹脂繊維の表面に、銅やニッケルなどをメッキすることにより形成される。
【0022】
第一電極シート12は、繊維により布を形成されることで、複数の第一貫通孔12a(図2に示す)を備える。同様に、第二電極シート16は、複数の第二貫通孔16a(図2に示す)を備える。図2においては、第一電極シート12及び第二電極シート16は、導電性織物である場合を例にあげるが、導電性不織布を適用することもできる。第一電極シート12は、例えば、図2に示すように、導電性織物の場合には、導電性繊維を縦糸と横糸として織ることにより形成されている。縦糸と横糸により囲まれる領域が、第一貫通孔12aとなる。第二貫通孔16aも同様である。
【0023】
なお、第一電極シート12及び第二電極シート16は、導電性布の他に、柔軟性及び伸縮性を有する薄膜のパンチングメタルを適用することもできる。この場合、第一貫通孔12a及び第二貫通孔16aは、打ち抜かれた部位となる。
【0024】
第一電極シート12及び第二電極シート16は、同程度の大きさに形成され、且つ、誘電体シート11の外形と同様の外形に形成されている。第一電極シート12は、誘電体シート11の第一面(図1の上面)側に配置される。第二電極シート16は、誘電体シート11の第二面(図1の下面)側に配置される。従って、第一電極シート12及び第二電極シート16は、誘電体シート11を挟んだ状態で、対向して配置されている。
【0025】
ここで、第一電極シート12において、第二電極シート16に対向する側の面を内面12bとし、第二電極シート16と反対側の面を外面12cとする。また、第二電極シート16において、第一電極シート12に対向する側の面を内面16bとし、第一電極シート12と反対側の面を外面16cとする。
【0026】
図3に示すように、第一電極シート12は、誘電体シート11の第一面側(図3の上側)に埋没している。つまり、誘電体シート11の第一面側の一部分が、融着材料として機能しており、当該一部分の融着によって誘電体シート11と第一電極シート12とが接合されている。ここで、誘電体シート11における当該一部分を、第一主融着層11aと称する。
【0027】
つまり、第一主融着層11aは、誘電体シート11と第一電極シート12の内面12bとの境界部位、及び、誘電体シート11と第一電極シート12の複数の第一貫通孔12aの内周面との境界部位を、誘電体シート11の一部分の融着によって接合する。さらに、第一主融着層11aは、誘電体シート11と第一電極シート12の外面12cとの境界部位も、誘電体シート11の一部分の融着によって接合している。つまり、誘電体シート11の一部分が、第一電極シート12の外面の保護シートとして機能する。なお、第一電極シート12は、誘電体シート11から露出するようにしてもよい。
【0028】
また、図3に示すように、第二電極シート16は、同様に、誘電体シート11の第二面側(図3の下側)に埋没している。つまり、誘電体シート11の第二面側の一部分が、融着材料として機能しており、当該一部分の融着によって誘電体シート11と第二電極シート16とが接合されている。ここで、誘電体シート11における当該一部分を、第二主融着層11bと称する。
【0029】
つまり、第二主融着層11bは、誘電体シート11と第二電極シート16の内面16bとの境界部位、及び、誘電体シート11と第二電極シート16の複数の第二貫通孔16aの内周面との境界部位を、誘電体シート11の一部分の融着によって接合する。さらに、第二主融着層11bは、誘電体シート11と第二電極シート16の外面16cとの境界部位も、誘電体シート11の一部分の融着によって接合している。つまり、誘電体シート11の一部分が、第二電極シート16の外面16cの保護シートとして機能する。なお、第二電極シート16は、誘電体シート11から露出するようにしてもよい。
【0030】
ここで、第一主融着層11a及び第二主融着層11bは、熱可塑性エラストマーにより形成されている誘電体シート11の一部分に熱を加えることにより形成されている。そのため、第一主融着層11a及び第二主融着層11bは、誘電体シート11と同一材料成分により構成されている。つまり、誘電体シート11の材料成分が実質的に変化することなく、第一主融着層11a及び第二主融着層11bが形成されている。このことは、第一主融着層11a及び第二主融着層11bに、有機溶剤等の成分が含まれていないことを意味する。
【0031】
第一リード線13は、導線を絶縁材により被覆する本体部13aと、導線を露出する先端部13bとを備える。第一リード線13の本体部13aは、第一電極シート12における誘電体シート11と反対側の面(外面12c)側に配置されている。第一リード線13の先端部13bも、第一電極シート12における誘電体シート11と反対側の面(外面12c)側に配置されている。そして、第一リード線13の先端部13bが、第一電極シート12に電気的に接続されている。
【0032】
第二リード線17は、導線を絶縁材により被覆する本体部17aと、導線を露出する先端部17bとを備える。第二リード線17の本体部17aは、第二電極シート16における誘電体シート11と反対側の面(外面16c)側に配置されている。第二リード線17の先端部17bも、第二電極シート16における誘電体シート11と反対側の面(外面16c)側に配置されている。そして、第二リード線17の先端部17bが、第二電極シート16に電気的に接続されている。
【0033】
第一固着層14は、第一リード線13の先端部13bを第一電極シート12に電気的に接続した状態で、第一リード線13の先端部13bを第一電極シート12に固着させる。第一固着層14は、例えば、半田である。つまり、第一固着層14により、第一リード線13の先端部13bが、第一電極シート12に対して、広範囲に電気的に接続される状態となる。
【0034】
第二固着層18は、第二リード線17の先端部17bを第二電極シート16に電気的に接続した状態で、第二リード線17の先端部17bを第二電極シート16に固着させる。第二固着層18は、例えば、半田である。つまり、第二固着層18により、第二リード線17の先端部17bが、第二電極シート16に対して、広範囲に電気的に接続される状態となる。
【0035】
第一保護シート15は、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーにより、シート状に形成されている。第一保護シート15は、図2に示すように、第一リード線13のうち第一電極シート12上に位置する領域、及び、第一固着層14が存在する領域に対応する形状に形成されている。第一保護シート15は、第一電極シート12における誘電体シート11と反対側の面(第一電極シート12の外面12c)に配置され、第一リード線13の先端部13b及び第一固着層14を保護する。
【0036】
図4及び図5に示すように、第一保護シート15は、第一リード線13、及び、第一電極シート12の少なくとも外面12cに接合される。つまり、第一保護シート15の一部分が、融着材料として適用されており、当該一部分の融着によって、第一保護シート15、第一リード線13、及び、第一電極シート12が接合されている。さらに、第一保護シート15は、誘電体シート11に接合される。この場合には、第一保護シート15の一部分及び誘電体シート11の一部分が、それぞれ融着材料として適用されており、それぞれの当該一部分の融着によって、第一保護シート15と誘電体シート11とが接合されている。ここで、第一保護シート15における当該一部分及び誘電体シート11における当該一部分を、第一保護融着層15aと称する。
【0037】
つまり、第一保護融着層15aは、第一保護シート15と第一リード線13との境界部位を、第一保護シート15の一部分の融着によって接合する。さらに、第一保護融着層15aは、第一保護シート15と第一電極シート12との境界部位を、第一保護シート15の一部分の融着によって接合する。詳細には、第一保護融着層15aは、第一電極シート12の外面12c及び第一貫通孔12aの内周面を含む境界部位を接合する。
【0038】
さらに、第一保護融着層15aは、第一保護シート15と誘電体シート11との境界部位を、第一保護シート15の一部分の融着及び誘電体シート11の一部分の融着によって接合する。特に、第一保護シート15と誘電体シート11との境界部位は、第一電極シート12の第一貫通孔12aを介することにより形成される部位である。つまり、第一貫通孔12aの存在によって、第一保護シート15と誘電体シート11とが接合されることになる。
【0039】
第一保護融着層15aは、熱可塑性エラストマーにより形成されている第一保護シート15の一部分及び誘電体シート11の一部分に熱を加えることにより形成されている。そのため、第一保護融着層15aは、第一保護シート15と同一材料成分又は誘電体シート11と同一材料成分により構成されている。つまり、第一保護シート15の材料成分が実質的に変化することなく、又は、誘電体シート11の材料成分が実質的に変化することなく、第一保護融着層15aが形成されている。このことは、第一保護融着層15aに、有機溶剤等の成分が含まれていないことを意味する。
【0040】
第二保護シート19は、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーにより、シート状に形成されている。第二保護シート19は、図2に示すように、第二リード線17のうち第二電極シート16上に位置する領域、及び、第二固着層18が存在する領域に対応する形状に形成されている。第二保護シート19は、第二電極シート16における誘電体シート11と反対側の面(第二電極シート16の外面16c)に配置され、第二リード線17の先端部17b及び第二固着層18を保護する。
【0041】
図4及び図5に示すように、第二保護シート19は、第二リード線17、及び、第二電極シート16の少なくとも外面16cに接合される。つまり、第二保護シート19の一部分が、融着材料として適用されており、当該一部分の融着によって、第二保護シート19、第二リード線17、及び、第二電極シート16が接合されている。さらに、第二保護シート19は、誘電体シート11に接合される。この場合には、第二保護シート19の一部分及び誘電体シート11の一部分が、それぞれ融着材料として適用されており、それぞれの当該一部分の融着によって、第二保護シート19と誘電体シート11とが接合されている。ここで、第二保護シート19における当該一部分及び誘電体シート11における当該一部分を、第二保護融着層19aと称する。
【0042】
つまり、第二保護融着層19aは、第二保護シート19と第二リード線17との境界部位を、第二保護シート19の一部分の融着によって接合する。さらに、第二保護融着層19aは、第二保護シート19と第二電極シート16との境界部位を、第二保護シート19の一部分の融着によって接合する。詳細には、第二保護融着層19aは、第二電極シート16の外面16c及び第二貫通孔16aの内周面を含む境界部位を接合する。
【0043】
さらに、第二保護融着層19aは、第二保護シート19と誘電体シート11との境界部位を、第二保護シート19の一部分の融着及び誘電体シート11の一部分の融着によって接合する。特に、第二保護シート19と誘電体シート11との境界部位は、第二電極シート16の第二貫通孔16aを介することにより形成される部位である。つまり、第二貫通孔16aの存在によって、第二保護シート19と誘電体シート11とが接合されることになる。
【0044】
第二保護融着層19aは、熱可塑性エラストマーにより形成されている第二保護シート19の一部分及び誘電体シート11の一部分に熱を加えることにより形成されている。そのため、第二保護融着層19aは、第二保護シート19と同一材料成分又は誘電体シート11と同一材料成分により構成されている。つまり、第二保護シート19の材料成分が実質的に変化することなく、又は、誘電体シート11の材料成分が実質的に変化することなく、第二保護融着層19aが形成されている。このことは、第二保護融着層19aに、有機溶剤等の成分が含まれていないことを意味する。
【0045】
(1-2.トランスデューサ1の製造方法)
トランスデューサ1の製造方法について、図6を参照して説明する。まず、誘電体シート11、第一電極シート12及び第二電極シート16を所定位置に配置する(S1)。具体的には、第一電極シート12を誘電体シート11の第一面側に配置し、第二電極シート16を誘電体シート11の第二面側に配置する。
【0046】
続いて、シート全体に対して、厚み方向に加圧しながら、加熱する(S2)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている誘電体シート11の一部分が溶融し、第一電極シート12が誘電体シート11の第一面側に埋入される。このようにして、誘電体シート11の一部分の融着によって、誘電体シート11と第一電極シート12が接合される。また、熱可塑性エラストマーにより形成されている誘電体シート11の他の一部分が溶融し、第二電極シート16が誘電体シート11の第二面側に埋入される。このようにして、誘電体シート11の他の一部分の融着によって、誘電体シート11と第二電極シート16が接合される。
【0047】
続いて、第一リード線13を第一電極シート12側に配置し、且つ、第二リード線17を第二電極シート16側に配置する(S3)。続いて、第一リード線13の先端部13bと第一電極シート12との接続領域に対して半田付けを行うことにより、第一固着層14を形成する(S4)。さらに、第二リード線17の先端部17bと第二電極シート16との接続領域に対して半田付けを行うことにより、第二固着層18を形成する(S4)。
【0048】
続いて、第一保護シート15を第一リード線13の先端部13b及び第一固着層14を覆うように配置し、且つ、第二保護シート19を第二リード線17の先端部17b及び第二固着層18を覆うように配置する(S5)。
【0049】
続いて、保護シート15,19の部分に対して、厚み方向に加圧し、且つ、加熱する(S6)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている第一保護シート15の一部分及び誘電体シート11の一部分が溶融し、誘電体シート11の一部分及び第一保護シート15の一部分の融着によって、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、第一固着層14、第一保護シート15が、接合される。さらに、熱可塑性エラストマーにより形成されている第二保護シート19の一部分及び誘電体シート11の一部分が溶融し、誘電体シート11の一部分及び第二保護シート19の一部分の融着によって、誘電体シート11、第二電極シート16、第二リード線17、第二固着層18、第二保護シート19が、接合される。
【0050】
(1-3.効果)
上記によれば、第一リード線13及び第一保護シート15は、第一電極シート12における誘電体シート11の反対側の面(外面12c)側に配置されている。従って、外部に引き出された電極ではなく、トランスデューサ1として機能する第一電極シート12そのものに、第一リード線13及び第一保護シート15が接合されている。従って、外部電極が不要となるため、トランスデューサ1の製造コストの低減を図ることができる。
【0051】
ここで、第一電極シート12の第一貫通孔12aを介することにより形成される部位であって誘電体シート11と第一保護シート15との境界部位が、融着材料の融着により接合されている。ここでの融着材料は、誘電体シート11の一部分と第一保護シート15の一部分である。つまり、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく、両者が接合されている。従って、VOCの排出を抑制できる。
【0052】
さらに、第一保護シート15と誘電体シート11とが、融着材料(それぞれの一部分を適用)によって接合している。この構成は、第一リード線13及び第一保護シート15が、第一電極シート12における誘電体シート11の反対側の面(外面12c)側に配置されることにより実現できる。そして、この場合、第一保護シート15と誘電体シート11との間には、第一電極シート12及び第一リード線13が介在している。ただし、第一電極シート12が第一貫通孔12aを有しているため、第一保護シート15と誘電体シート11とは、第一電極シート12及び第一リード線13を介した状態で、接合することが可能となる。つまり、第一電極シート12の一部及び第一リード線13の先端部13bは、接合された第一保護シート15及び誘電体シート11に埋設されたような状態となる。従って、第一電極シート12と第一リード線13とは、確実に、電気的に接続された状態が維持される。加えて、第一電極シート12を誘電体シート11に接合した状態を維持することができる。
【0053】
さらに、第一電極シート12と第一保護シート15との境界部位が、融着材料の融着によって接合されている。ここでの融着材料は、第一保護シート15の一部分である。この場合も、上記同様に、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく、両者が接合されている。従って、VOCの排出を抑制できる。
【0054】
さらに、第一保護シート15と第一電極シート12とが、融着材料によって接合している。ここでの融着材料は、第一保護シート15の一部分である。そして、融着される第一電極シート12の部位は、第一電極シート12の第一貫通孔12aの内周面を含んでいる。融着材料(第一保護シート15の一部分を適用)の融着によって、第一保護シート15と、第一電極シート12における外面12c及び第一貫通孔12aの内周面とが接合されている。従って、第一保護シート15と第一電極シート12とは広範囲に接合している。このようにして接合されている第一保護シート15と第一電極シート12との間に、第一リード線13の先端部13bが存在している。つまり、第一リード線13の先端部13bは、接合された第一保護シート15及び第一電極シート12に埋設されたような状態となる。従って、第一電極シート12と第一リード線13とは、確実に、電気的に接続された状態が維持される。なお、上記は、第一電極シート12側について説明したが、第二電極シート16側について同様である。
【0055】
また、第一保護シート15及び第二保護シート19が存在しない領域において、誘電体シート11と第一電極シート12、及び、誘電体シート11と第二電極シート16が、融着材料の融着によって接合されている。ここでの融着材料は、誘電体シート11の一部分である。
【0056】
そして、第一電極シート12との融着部位は、第一電極シート12の内面12b及び第一電極シート12の第一貫通孔12aの内周面を含んでいる。第二電極シート16との融着部位は、第二電極シート16の内面16b及び第二電極シート16の第二貫通孔16aの内周面を含んでいる。この場合も、上記同様に、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく、両者が接合されている。従って、VOCの排出を抑制できる。そして、第一貫通孔12aの内周面及び第二貫通孔16aの内周面を溶着部位とすることにより、両者はより強固な接合となる。
【0057】
(2.第二実施形態)
第二実施形態のトランスデューサ2について、図7を参照して説明する。図7に示すように、トランスデューサ2は、第一実施形態における第一固着層14及び第二固着層18を有しない構造である。つまり、第一保護シート15が、第一リード線13の先端部13bを直接保護し、第二保護シート19が、第二リード線17の先端部17bを直接保護する。第一保護シート15及び第二保護シート19による接合力で十分である場合には、本態様を適用可能である。
【0058】
(3.第三実施形態)
第三実施形態のトランスデューサ3について、図8を参照して説明する。図8に示すように、誘電体シート11は、非熱可塑性材料により形成され、積層方向に連通する孔を有する。誘電体シート11は、例えば、非熱可塑性材料のエラストマーの発泡材料が用いられる。また、誘電体シート11には、エラストマーの他に、非熱可塑性材料の不織布等の通気性のよいものを適用することもできる。誘電体シート11は、非熱可塑性材料であるため、熱が加えられたとしても溶融しない。
【0059】
また、トランスデューサ3は、誘電体シート11と第一電極シート12とを接合するために、誘電体シート11と第一電極シート12との間に、誘電体シート11及び第一電極シート12とは別体の第一主融着層31を備える。第一主融着層31は、第一電極シート12の内面12bの一部分と誘電体シート11とを接合すると共に、第一電極シート12の第一貫通孔12aの内周面の一部分と誘電体シート11とを接合する。従って、第一電極シート12の第一貫通孔12aは、全てを閉塞されることはなく、少なくとも一部分において貫通した状態が維持される。
【0060】
さらに、トランスデューサ3は、誘電体シート11と第二電極シート16とを接合するために、誘電体シート11と第二電極シート16との間に、誘電体シート11及び第二電極シート16とは別体の第二主融着層32を備える。第二主融着層32は、第二電極シート16の内面16bの一部分と誘電体シート11とを接合すると共に、第二電極シート16の第二貫通孔16aの内周面の一部分と誘電体シート11とを接合する。従って、第二電極シート16の第二貫通孔16aは、全てを閉塞されることはなく、少なくとも一部分において貫通した状態が維持される。
【0061】
第一主融着層31及び第二主融着層32は、熱可塑性材料のエラストマー(融着材料)により形成されている。そして、第一主融着層31及び第二主融着層32は、例えば、粒子状の素材により形成されており、熱が加えられることにより溶融し、自身の融着により対象物を接合する。また、第一主融着層31及び第二主融着層32は、誘電体シート11とは別体であるが、固化した状態において誘電体シート11と同程度の弾性率を有するとよい。
【0062】
上記のように、誘電体シート11が積層方向に連通する孔を有すると共に、第一電極シート12の第一貫通孔12aが少なくとも一部は閉塞されずに、且つ、第二電極シート16の第二貫通孔16aが少なくとも一部は閉塞されていない。従って、誘電体シート11、第一電極シート12及び第二電極シート16により構成される積層体は、積層方向に通気性を有する。従って、トランスデューサ3は、通気性を必要とする部位に、好適に適用される。
【0063】
ここで、第一保護シート15及び第二保護シート19は、第一実施形態と同様である。従って、第一保護シート15は、自身の融着によって、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、及び、第一固着層14に接合される。また、第二保護シート19は、自身の融着によって、誘電体シート11、第二電極シート16、第二リード線17、及び、第二固着層18に接合される。本実施形態においては、第一保護融着層15aは、第一保護シート15の一部分のみにより構成されており、第二保護融着層19aは、第二保護シート19の一部分のみにより構成されている。
【0064】
次に、トランスデューサ3の製造方法について、図9を参照して説明する。第一電極シート12及び第一リード線13を所定位置に配置し(S11)、半田付けを行う(S12)。このようにして、第一固着層14が形成される。続いて、第二電極シート16及び第二リード線17を所定位置に配置し(S13)、半田付けを行う(S14)。このようにして、第二固着層18が形成される。
【0065】
続いて、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、第一固着層14、第一主融着層31の融着材料、及び、第一保護シート15を所定位置に配置する(S15)。そして、シート全体に対して、厚み方向に加圧し、加熱する(S16)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている第一主融着層31の融着材料及び第一保護シート15の一部分が溶融し、これらの融着によって、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、第一固着層14、第一主融着層31、及び、第一保護シート15が接合される。
【0066】
続いて、S16において一体化されたシート、第二電極シート16、第二リード線17、第二固着層18、第二主融着層32の融着材料、及び、第二保護シート19を所定位置に配置する(S17)。そして、シート全体に対して、厚み方向に加圧し、加熱する(S18)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている第二主融着層32の融着材料及び第二保護シート19の一部分が溶融し、これらの融着によって、一体化されたシート、第二電極シート16、第二リード線17、第二固着層18、第二主融着層32、及び、第二保護シート19が接合される。
【0067】
(4.第四実施形態)
第四実施形態のトランスデューサ4について、図10を参照して説明する。図10に示すように、誘電体シート11は、第三実施形態のトランスデューサ3における誘電体シート11と同様に、非熱可塑性材料により形成され、積層方向に連通する孔を有する。さらに、トランスデューサ4は、第三実施形態のトランスデューサ3と同様に、第一主融着層31及び第二主融着層32を備える。
【0068】
また、本実施形態においては、第一保護シート15及び第二保護シート19は、非熱可塑性材料により形成されている。つまり、第一保護シート15及び第二保護シート19は、誘電体シート11と同様に、熱が加えられたとして溶融しない。
【0069】
また、トランスデューサ4は、第一保護シート15と他の部材とを接合するために、誘電体シート11及び第一保護シート15とは別材料である第一保護融着層41を備える。さらに、トランスデューサ4は、第二保護シート19と他の部材とを接合するために、誘電体シート11及び第二保護シート19とは別材料である第二保護融着層42を備える。
【0070】
第一保護融着層41及び第二保護融着層42は、熱可塑性材料のエラストマー(融着材料)により形成されている。そして、第一保護融着層41及び第二保護融着層42は、例えば、粒子状の素材により形成されており、熱が加えられることにより溶融し、自身の融着により対象物と接合する。また、第一保護融着層41及び第二保護融着層42は、誘電体シート11、第一保護シート15及び第二保護シート19とは別体であるが、固化した状態においてこれらと同程度の弾性率を有するとよい。
【0071】
次に、トランスデューサ4の製造方法について、図11A及び図11Bを参照して説明する。第一電極シート12及び第一リード線13を所定位置に配置し(S21)、半田付けを行う(S22)。このようにして、第一固着層14が形成される。続いて、第二電極シート16及び第二リード線17を所定位置に配置し(S23)、半田付けを行う(S24)。このようにして、第二固着層18が形成される。
【0072】
続いて、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、第一固着層14、及び、第一主融着層31の融着材料を所定位置に配置する(S25)。そして、シート全体に対して、厚み方向に加圧し、加熱する(S26)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている第一主融着層31の融着材料が溶融し、第一主融着層31の融着によって、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、第一固着層14及び第一主融着層31が接合される。
【0073】
続いて、S26において一体化されたシート、第一保護シート15、及び、第一保護融着層41の融着材料を配置(S27)。そして、第一保護シート15の部分に対して、厚み方向に加圧し、加熱する(S28)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている第一保護融着層41の融着材料が溶融し、第一保護融着層41の融着によって、各部材が接合される。
【0074】
続いて、S28において一体化されたシート、第二電極シート16、第二リード線17、第二固着層18、及び、第二主融着層32の融着材料を所定位置に配置する(S29)。そして、シート全体に対して、厚み方向に加圧し、加熱する(S30)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている第二主融着層32の融着材料が溶融し、第二主融着層32の融着によって、各部材が接合される。
【0075】
続いて、S30において一体化されたシート、第二保護シート19、及び、第二保護融着層42の融着材料を所定位置に配置する(S31)。そして、第二保護シート19の部分に対して、厚み方向に加圧し、加熱する(S32)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている第二保護融着層42の融着材料が溶融し、第二保護融着層42の融着によって、各部材が接合される。
【0076】
(5.第五実施形態)
第五実施形態のトランスデューサ5について、図12を参照して説明する。図12に示すように、誘電体シート11は、非熱可塑性材料のエラストマーにより形成されている。また、第一保護シート15及び第二保護シート19は、熱可塑性材料のエラストマーにより形成されており、誘電体シート11の外形とほぼ同様の外形に形成されている。
【0077】
第一保護シート15は、自身の融着によって、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、及び、第一固着層14に接合される。つまり、第一保護シート15の一部分が、第一融着層51となる。第一融着層51は、誘電体シート11と第一電極シート12とを接合する第一主融着層として機能すると共に、第一リード線13と第一固着層14とを保護する第一保護融着層として機能する。
【0078】
また、第二保護シート19は、自身の融着によって、誘電体シート11、第二電極シート16、第二リード線17、及び、第二固着層18に接合される。つまり、第二保護シート19の一部分が、第二融着層52となる。第二融着層52は、誘電体シート11と第二電極シート16とを接合する第二主融着層として機能すると共に、第二リード線17と第二固着層18とを保護する第二保護融着層として機能する。
【0079】
次に、トランスデューサ5の製造方法について、図13を参照して説明する。第一電極シート12及び第一リード線13を所定位置に配置し(S41)、半田付けを行う(S42)。このようにして、第一固着層14が形成される。続いて、第二電極シート16及び第二リード線17を所定位置に配置し(S43)、半田付けを行う(S44)。このようにして、第二固着層18が形成される。
【0080】
続いて、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、第一固着層14、第一保護シート15、第二電極シート16、第二リード線17、第二固着層18、第二保護シート19を所定位置に配置する(S45)。そして、シート全体に対して、厚み方向に加圧し、加熱する(S46)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている第一保護シート15の融着材料が溶融し、第一保護シート15の融着によって、各部材が接合される。さらに、熱可塑性エラストマーにより形成されている第二保護シート19の融着材料が溶融し、第二保護シート19の融着によって、各部材が接合される。
【0081】
(6.第六実施形態)
第六実施形態のトランスデューサ6について、図14を参照して説明する。図14に示すように、トランスデューサ6は、第一実施形態のトランスデューサ1に対して、さらに、第一補強層61及び第二補強層62を備える。
【0082】
第一補強層61は、第一電極シート12の内面12b側、すなわち、誘電体シート11と第一電極シート12との間に配置されている。第一補強層61は、第一電極シート12の第一貫通孔12aよりも小さな複数の貫通孔を有する。第一補強層61は、第一電極シート12と同様に、導電性繊維により形成される布、すなわち導電性の織物又は不織布である。第一補強層61は、パンチングメタルを適用することもできる。
【0083】
そして、第一補強層61は、第一電極シート12の第一貫通孔12aを介して第一固着層14に固着される。つまり、第一固着層14は、第一リード線13と第一補強層61との間に第一電極シート12を介在させた状態で、これらを固着する。従って、第一リード線13と第一電極シート12との接合が強固となる。
【0084】
第二補強層62は、第二電極シート16の内面16b側、すなわち、誘電体シート11と第二電極シート16との間に配置されている。第二補強層62は、第二電極シート16の第二貫通孔16aよりも小さな複数の貫通孔を有する。第二補強層62は、第二電極シート16と同様に、導電性繊維により形成される布、すなわち導電性の織物又は不織布である。第二補強層62は、パンチングメタルを適用することもできる。
【0085】
そして、第二補強層62は、第二電極シート16の第二貫通孔16aを介して第二固着層18に固着される。つまり、第二固着層18は、第二リード線17と第二補強層62との間に第二電極シート16を介在させた状態で、これらを固着する。従って、第二リード線17と第二電極シート16との接合が強固となる。
【0086】
次に、トランスデューサ6の製造方法について、図15を参照して説明する。第一電極シート12、第一リード線13、及び、第一補強層61を所定位置に配置し(S51)、半田付けを行う(S52)。このようにして、第一固着層14が形成される。つまり、第一固着層14が、第一補強層61を利用することにより、第一リード線13と第一電極シート12とを強固に固着する。
【0087】
続いて、第二電極シート16、第二リード線17、及び、第二補強層62を所定位置に配置し(S53)、半田付けを行う(S54)。このようにして、第二固着層18が形成される。つまり、第二固着層18が、第二補強層62を利用することにより、第二リード線17と第二電極シート16とを強固に固着する。
【0088】
続いて、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、第一補強層61、第一固着層14、第一保護シート15、第二電極シート16、第二リード線17、第二補強層62、第二固着層18、第二保護シート19を所定位置に配置する(S55)。そして、シート全体に対して、厚み方向に加圧し、加熱する(S56)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている誘電体シート11の一部分、第一保護シート15の一部分及び第二保護シート19の一部分が溶融し、当該部分の融着によって、各部材が接合される。
【0089】
(7.第七実施形態)
第七実施形態のトランスデューサ7について、図16を参照して説明する。図16に示すように、トランスデューサ7は、第二実施形態のトランスデューサ2に対して、以下の点が異なる。第一リード線13の先端部13bが、第一電極シート12に絡められており、第二リード線17の先端部17bが、第二電極シート16に絡められている。その他は、両者は、実質的に同様である。これにより、第一リード線13の先端部13bが第一電極シート12に強固に接合された状態となる。また、第二リード線17の先端部17bが第二電極シート16に強固に接合された状態となる。
【0090】
トランスデューサ7の製造方法について、図17を参照して説明する。第一電極シート12に第一リード線13を絡めて配置する(S61)。続いて、第二電極シート16に第二リード線17を絡めて配置(S62)。続いて、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、第一保護シート15、第二電極シート16、第二リード線17、第二保護シート19を所定位置に配置する(S63)。
【0091】
続いて、シート全体に対して、厚み方向に加圧し、加熱する(S64)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている誘電体シート11の一部分、第一保護シート15の一部分及び第二保護シート19の一部分が溶融し、当該部分の融着によって、各部材が接合される。
【0092】
(第八実施形態)
第八実施形態のトランスデューサ8について、図18を参照して説明する。図18に示すように、トランスデューサ8は、第一実施形態のトランスデューサ1に対して、以下の点が異なる。第一リード線13の先端部13bが、第一電極シート12に絡められており、この状態で、第一固着層14が、第一リード線13の先端部13bと第一電極シート12とを固着する。さらに、第二リード線17の先端部17bが、第二電極シート16に絡められており、この状態で、第二固着層18が、第二リード線17の先端部17bと第二電極シート16とを固着する。その他は、両者は、実質的に同様である。これにより、第一リード線13の先端部13bが第一電極シート12に強固に接合された状態となる。また、第二リード線17の先端部17bが第二電極シート16に強固に接合された状態となる。
【0093】
トランスデューサ8の製造方法について、図19を参照して説明する。第一電極シート12に、第一リード線13の先端部13bを絡めて配置し(S71)、半田付けを行う(S72)。このようにして、第一リード線13の先端部13bが第一電極シート12に絡められた状態において、第一固着層14が形成される。続いて、第二電極シート16に、第二リード線17の先端部17bを絡めて配置し(S73)、半田付けを行う(S74)。このようにして、第二リード線17の先端部17bが第二電極シート16に絡められた状態において、第二固着層18が形成される。
【0094】
続いて、誘電体シート11、第一電極シート12、第一リード線13、第一固着層14、第一保護シート15、第二電極シート16、第二リード線17、第二固着層18、第二保護シート19を所定位置に配置する(S75)。そして、シート全体に対して、厚み方向に加圧し、加熱する(S76)。これにより、熱可塑性エラストマーにより形成されている誘電体シート11の一部分、第一保護シート15の一部分及び第二保護シート19の一部分が溶融し、当該部分の融着によって、各部材が接合される。
【0095】
<その他>
なお、上記実施形態の各構成は、適宜相互に置換することが可能である。その場合、置換された構成においては、該当の構成に関する効果を奏することになる。
【符号の説明】
【0096】
1,2,3,4,5,6,7,8:トランスデューサ、11:誘電体シート、11a,31:第一主融着層、11b,32:第二主融着層、12:第一電極シート、12a:第一貫通孔、12b:第一電極シートの内面、12c:第一電極シートの外面、13:第一リード線、13a:第一リード線の本体部、13b:第一リード線の先端部、14:第一固着層、15:第一保護シート、15a,41:第一保護融着層、16:第二電極シート、16a:第二貫通孔、16b:第二電極シートの内面、16c:第二電極シートの外面、17:第二リード線、17a:第二リード線の本体部、17b:第二リード線の先端部、18:第二固着層、19:第二保護シート、19a,42:第二保護融着層、51:第一融着層(第一主融着層、第一保護融着層)、52:第二融着層(第二主融着層、第二保護融着層)、61:第一補強層、62:第二補強層
図1
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