(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】低温性能及びウェットトラクションのためのトレッドを有するタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20220225BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220225BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220225BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20220225BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20220225BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20220225BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 A
C08K3/36
C08K5/101
C08K5/548
C08L9/06
C08L91/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017236678
(22)【出願日】2017-12-11
【審査請求日】2020-11-13
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ローレン・エリザベス・ブレイス
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/152398(WO,A1)
【文献】米国特許第07671132(US,B1)
【文献】特開2013-231177(JP,A)
【文献】特表2016-515661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
C08K 3/36
C08K 5/101
C08K 5/548
C08L 9/00
C08L 9/06
C08L 91/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物の周方向ゴムトレッドを有する空気入りタイヤであって、前記ゴム組成物が、100
質量部のエラストマーあたりの
質量部(phr)を基にして:
(A)100
質量部の共役ジエン系エラストマーの組合せ、ここで前記組合せは、
(1)10~50phrの有機溶媒重合調製高Tgスチレン/ブタジエンエラストマーであって、-40℃~-30℃の範囲のTg及び30~35
質量パーセントの範囲のスチレン含量を有する有機溶媒重合調製高Tgスチレン/ブタジエンエラストマー
、ここで前記有機溶媒重合調製高Tgスチレン/ブタジエンエラストマーは、前記有機溶媒重合調製高Tgスチレン/ブタジエンエラストマー100質量部あたり10~38質量部のトリグリセリド植物油で伸展されている、
(2)10~50phrの水性乳化重合調製スチレン/ブタジエンエラストマーであって、-65℃~-45℃の範囲のTg及び15~30
質量パーセントの範囲のスチレン含量を有する水性乳化重合調製スチレン/ブタジエンエラストマー、
及び
(3)20~60phrのシス1,4-ポリブタジエンゴムであって、少なくとも95
質量パーセントのシス1,4-異性体含量及び-100℃~-108℃の範囲のTgを有するシス1,4-ポリブタジエンゴム
を含む、
(B)50~250phrのゴム補強フィラー、ここで前記ゴム補強フィラーは沈降シリカと2~10phrのゴム補強カーボンブラックを含み、そして前記沈降シリカは、
(1)予備疎水化沈降シリカであって、アルコキシ有機メルカプトシラン又はポリスルフィド橋中に平均2~4個の連結硫黄原子を含有するビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドで予備疎水化され、それらの複合体を形成している沈降シリカを含む予備疎水化沈降シリカ、
(2)140~220m
2/gの範囲の窒素表面積を有する沈降シリカ、及びこの沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応する部分と前記ジエン系エラストマーと相互作用する別の異なる部分とを有するシリカカップラー、及び
(3)90~130m
2/gの範囲の窒素表面積を有する沈降シリカ、及びこの沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応する部分と前記ジエン系エラストマーと相互作用する別の異なる部分とを有するシリカカップラー
の少なくとも一つを含む、
並びに
(C)5~45phrのトラクション促進樹脂、ここで前記トラクション促進樹脂は、テルペン、クマロンインデン及びスチレン-アルファメチルスチレン樹脂の少なくとも一つを含み、かつ60℃~150℃の範囲内の軟化点を有する
を含むことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ゴム組成物が、5~50phrの自由に添加された植物トリグリセリド油を含有することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記沈降シリカが、アルコキシ有機メルカプトシラン又はポリスルフィド橋中に平均2~4個の連結硫黄原子を含有するビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドで予備疎水化され、それらの複合体を形成している沈降シリカを含む予備疎水化沈降シリカであることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記沈降シリカが、アルコキシ有機メルカプトシランで予備疎水化され、それらの複合体を形成している沈降シリカを含む予備疎水化沈降シリカであることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記沈降シリカが、140~220m
2/gの範囲の窒素表面積を有する沈降シリカ、及び前記沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応する部分と前記ジエン系エラストマーと相互作用する別の異なる部分とを有し、かつアルコキシ有機メルカプタン及びビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドの少なくとも1つを含むシリカカップラーであることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記沈降シリカが、90~130m
2/gの範囲の窒素表面積を有する沈降シリカ、及び前記沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応する部分と前記ジエン系エラストマーと相互作用する別の異なる部分とを有し、かつアルコキシ有機メルカプタン及びビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドの少なくとも一つを含むシリカカップラーであることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ゴム組成物が追加の沈降シリカを含有することを特徴とする、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム組成物が、ポリスルフィド橋中に平均2~4個の連結硫黄原子を有するビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドを含む追加のシリカカップリング剤を含有することを特徴とする、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物が追加の沈降シリカを含有する、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ゴム組成物が、追加の沈降シリカと共に、ポリスルフィド橋中に平均2~4個の連結硫黄原子を有するビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド)を含むシリカカップリング剤を含有することを特徴とする、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記スチレン/ブタジエンエラストマーの油展のための前記植物トリグリセリド油が、飽和及び不飽和エステルの組合せを含み、前記不飽和エステルは、オレイン酸エステル、リノール酸エステル及びリノレン酸エステルの少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記スチレン/ブタジエンエラストマーの油展のための前記植物トリグリセリド油が、大豆油、ヒマワリ油、菜種油及びキャノーラ油の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記スチレン/ブタジエンエラストマーの油展のための前記植物トリグリセリド油が大豆油を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記自由に添加された植物トリグリセリド油が、飽和及び不飽和エステルの組合せを含み、前記不飽和エステルは、オレイン酸エステル、リノール酸エステル及びリノレン酸エステルの少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記自由に添加された植物トリグリセリド油が、大豆油、ヒマワリ油、菜種油及びキャノーラ油の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記自由に添加された植物トリグリセリド油が大豆油を含むことを特徴とする、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項17】
前記高Tgスチレン/ブタジエンエラストマーが、60~120の範囲のムーニー粘度(ML1+4)、100℃を有することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項18】
前記
有機溶媒重合調製高Tgスチレン/ブタジエンエラストマーがスズ又はケイ素結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項19】
前記スチレン/ブタジエンエラストマーが、前記沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応するアミン、シロキシ、チオール及びカルボキシル基の少なくとも一つを含有する官能化エラストマーであることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項20】
前記トラクション促進樹脂が、60℃~125℃の範囲の軟化点及び10~30
質量パーセントのスチレン含量を有するスチレン/アルファメチルスチレン樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温での寒冷気候運転とウェットトラクション(湿潤牽引力)の組合せを促進するためのトレッドを有するタイヤに関する。トレッドは、シス1,4-ポリブタジエン及び二元スチレン/ブタジエンエラストマーと共に、予備疎水化沈降シリカでありうる沈降シリカとゴム補強カーボンブラックを含む補強フィラーを含有するゴム組成物のトレッドである。トレッドゴム組成物はトリグリセリド植物油を含有する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、時に、濡れた(湿潤)表面上でのトラクションを促進するためのトレッドを備えることが求められることもある。そのようなタイヤトレッドのために様々なゴム組成物を提案することができる。
【0003】
例えば、高分子量、高Tg(高いガラス転移温度)ジエン系エラストマーを含有するタイヤトレッドゴム組成物は、そのような目的、特にウェットトラクション(湿潤路面上でのタイヤトレッドのトラクション)にとって望ましいであろう。そのようなタイヤトレッドは、その補強フィラーが主に沈降シリカである場合、従って沈降シリカ豊富と見なせる場合に望ましいであろう。
【0004】
そのようなエラストマーが高い未硬化ゴム粘度(例えば、ムーニー粘度(ML1+4、100℃))を有する場合、石油系ゴムプロセスオイルをエラストマーとブレンドしてゴム組成物の未硬化粘度を下げると、未硬化ゴム組成物のより望ましい加工条件を促進することができる。石油系ゴムプロセスオイルは、密閉式ゴムミキサー(例えば、バンバリーゴムミキサー)に入れる前のエラストマーに添加するか、又はミキサー内のゴム組成物に添加することにより、密閉式ゴムミキサー内のゴム組成物の粘度もその後のゴム押出機などでのゴム加工のためのゴム組成物の粘度も下げることができる。
【0005】
ここで、課題は、トレッドが低温の冬季条件、特に車両の雪道走行にも有用であることを目的とする場合、そのようなトレッドゴム組成物の硬化剛性を低減することである。これは約-20℃で低い貯蔵弾性率G’を有することによって示される。
【0006】
ウェットトラクションを維持しつつ、低温(例えば寒冷気候)性能も促進するようなタイヤトレッドゴム組成物を提供することには大きな課題があると考えられている。
トレッドゴム性能のそのようなバランスを達成するために、すなわち硬化ゴム組成物の剛性の低下を有益に促進してタイヤトレッドの寒冷気候性能を改良しつつ、タイヤトレッドのウェットトラクション能力も実質的に維持するために、高Tg(ガラス転移温度)エラストマーと共により低いTgを有するエラストマーも一緒に含有するトレッドゴム組成物を提供することについて評価することが求められる。
【0007】
このような課題のために、高Tg及びそれより低いTgのスチレン/ブタジエンエラストマーと共に、低Tgのシス1,4-ポリブタジエンゴム(PBd)と、沈降シリカ(予備疎水化沈降シリカでありうる)及びゴム補強カーボンブラックを含む補強フィラーとの組合せを提供することについて評価することが求められる。
【0008】
スチレン/ブタジエンエラストマーの組合せは、ウェットトラクションを促進するために、比較的高Tgの有機溶媒重合調製スチレン/ブタジエンエラストマー(S-SBR)(前記高TgのS-SBRは、寒冷気候(冬季)タイヤ性能を促進するためにトリグリセリド系植物油で伸展されている)と共に、より低いTgの水性乳化重合調製スチレン/ブタジエンエラストマー(E-SBR)を含むものであることを提案する。前記E-SBRは、E-SBRがS-SBRのTgより低いTgを有する場合、より高TgのS-SBRの存在を相殺することにより、約-20℃での硬化ゴム組成物の剛性の低下を有益に促進するために油展されていないので、それによってゴム組成物の寒冷気候(冬季)性能がさらに促進される。
【0009】
タイヤトレッドの良好な寒冷気候(冬季)性能を提供しつつ、ウェットトラクションも維持するという課題に対処するために、S-SBRを石油系ゴムプロセスオイルの代わりに植物油で伸展することによって、高TgのS-SBRを含有する未硬化ゴム組成物の有益な加工性を促進することも望ましい。S-SBRのそのような植物油伸展は、低温でのトレッドゴム組成物の有益に低い硬化剛性をさらに促進するので、それによってタイヤトレッドの寒冷気候性能はさらに促進される。
【0010】
高Tg S-SBRの植物トリグリセリド油伸展は、植物トリグリセリド油を高Tg S-SBR又はゴム組成物に自由に添加するのとは区別される。用語“伸展”とは、重合を促進するために適切な触媒を用いた有機溶媒溶液中でのスチレンと1,3-ブタジエンモノマーの重合の生成物としての高Tg S-SBRの溶媒溶液の複合材料を含むセメントに植物油を添加することを意味する。高TgのS-SBRは、高TgのS-SBRと植物トリグリセリド油の複合材料として、セメントから回収される。
【0011】
従って、この取組の技術革新は、比較的高Tgの植物トリグリセリド油伸展高Tg S-SBRエラストマーを、より低いTgのE-SBR及び低TgのPBdエラストマーの組合せと、予備疎水化沈降シリカでありうる沈降シリカ補強剤と共に使用することに依拠している。
【0012】
一態様において、ゴム組成物は、所望であれば、トレッドゴムの低温でのゴム剛性の低下をさらに促進するために、植物油伸展高Tg SBRに含有されている植物トリグリセリド油以外に、自由に添加された植物トリグリセリド油を含有していてもよい。用語“自由に添加された”とは、上述の高Tg S-SBR自体の“伸展”とは対照的に、S-SBRを含有するゴム組成物に、ゴム及びゴム配合成分の物理的混合中に植物油を添加することを意味する。
【0013】
一態様において、そのような評価のためのウェットトラクションを低温性能を著しく損なうことなく促進するために、、トレッドゴム組成物に少なくとも一つのトラクション樹脂を提供することについてさらに評価することも望ましい。
【0014】
歴史的には、例えば大豆油などのトリグリセリド系植物油は、これまでも、例えば、制限するつもりはないが、米国特許第7,919,553号、8,100,157号、8,022,136号及び8,044,118号などにおいて、様々なゴム組成物への添加が提案されてきたことが分かっている。
【0015】
しかしながら、植物トリグリセリド油は、タイヤ部品用のゴム組成物を含む様々なゴム組成物への使用がこれまでにも記述されているが、植物トリグリセリド油を高Tg S-SBRの伸展油として、低Tg PBd及びE-SBRエラストマーのブレンドと予備疎水化沈降シリカの形態でありうる沈降シリカ補強剤も一緒に組み合わせて使用することは、新規であり、且つ、未硬化ゴム組成物の加工に役立つこと及びウェットトラクションと低温寒冷気候性能の組合せを促進するためのタイヤトレッド用硬化ゴム組成物を提供することの両方で、過去の実践からは著しく脱却していると考えられる。
【0016】
本発明の記載において、用語“配合された”ゴム組成物及び“コンパウンド”は、適切なゴム配合成分と配合又はブレンドされているゴム組成物のことを言うのに使用される。用語“ゴム”及び“エラストマー”は、別途記載のない限り、互換的に使用されうる。材料の量は、通常、ゴム100重量部あたりの材料の部(phr)で表される。
【0017】
固体エラストマーのガラス転移温度(Tg)は、そのような分野の当業者には理解及び周知されている通り、DSC測定(示差走査熱量測定法)により決定できる。樹脂の軟化点は、必要な場合、ASTM E28により決定できる。これは環球式軟化点と呼ばれることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第7,919,553号
【文献】米国特許第8,100,157号
【文献】米国特許第8,022,136号
【文献】米国特許第8,044,118号
【発明の概要】
【0019】
本発明に従って、接地を目的とした周方向ゴムトレッドを有する空気入りタイヤを提供する。前記トレッドは、100重量部のエラストマーあたりの重量部(phr)を基にして:
(A)100phrの共役ジエン系エラストマーの組合せ、すなわち
(1)約10~約50、あるいは約10~約30phrの有機溶媒重合調製高Tgスチレン/ブタジエンエラストマー(高Tg S-SBR)であって、約-40℃~約-30℃の範囲のTg及び約30~約35パーセントの範囲のスチレン含量を有し、前記高Tg S-SBRは、前記高Tg S-SBR100重量部あたり約10~約38重量部のトリグリセリド植物油で伸展されている(望ましくは石油系油展を除く)高Tg S-SBRと、
(2)約10~約50、あるいは約20~約40phrの水性乳化重合調製スチレン/ブタジエンエラストマー(E-SBR)であって、約-65℃~約-45℃の範囲のTg及び約15~約30パーセントの範囲のスチレン含量を有するE-SBRと、そして
(3)約20~約60、あるいは約30~約50phrのシス1,4-ポリブタジエンゴムであって、少なくとも約95パーセントのシス1,4-異性体含量及び約-90℃~約-108℃の範囲のTgを有するシス1,4-ポリブタジエンゴムと
を含む共役ジエン系エラストマーの組合せ、
(B)約50~約250、あるいは約75~約175phrのゴム補強フィラーであって、沈降シリカ(アモルファス合成沈降シリカ)とゴム補強カーボンブラックを含み、約2~約10phrの前記ゴム補強カーボンブラックを含有し、前記沈降シリカは、
(1)予備疎水化沈降シリカ(ゴム組成物への添加前に疎水化されている)であって、アルコキシ有機メルカプトシラン又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(そのポリスルフィド橋中に平均約2~約4個の連結硫黄原子を含有する)、望ましくはアルコキシ有機メルカプトシランで予備疎水化(予備反応)され、それらの複合体を形成している沈降シリカを含む予備疎水化沈降シリカ、
(2)約140~約220m2/gの範囲の窒素表面積を有する沈降シリカ+前記沈降シリカ上のヒドロキシル基(例えばシラノール基)と反応する部分と前記ジエン系エラストマーと相互作用する別の異なる部分とを有するシリカカップラー、及び
(3)約90~約130m2/gの範囲の窒素表面積を有する沈降シリカ+前記沈降シリカ上のヒドロキシル基(例えばシラノール基)と反応する部分と前記ジエン系エラストマーと相互作用する別の異なる部分とを有するシリカカップラー
の少なくとも一つを含むゴム補強フィラー、
(C)約5~約45、あるいは約7~約25phrのトラクション促進樹脂であって、テルペン、クマロンインデン及びスチレン-アルファメチルスチレン樹脂の少なくとも一つを含み、そのような樹脂は望ましくは約60℃~約150℃の範囲内の軟化点(ASTM E28)を有するトラクション促進樹脂
を含むゴム組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一態様において、前記ゴム組成物は、約5~約50、あるいは約10~約30phrの自由に添加された植物トリグリセリド油(ゴム組成物に自由に添加された)を含有する。
さらに本発明に従って、前記トレッドを有する前記タイヤは硫黄硬化されたものとして提供される。
【0021】
望ましくは、前記沈降シリカは前記予備疎水化シリカである。望ましくは、前記沈降シリカの前記予備疎水化は反応によるものであるので、沈降シリカとアルコキシ有機メルカプトシランとの生成物である。
【0022】
前記沈降シリカが前記予備疎水化沈降シリカの場合、追加の沈降シリカ(非予備疎水化シリカ)及び/又は前記カップリング剤をゴム組成物に任意に添加してもよい。望ましくは、追加の沈降シリカのための前記カップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(そのポリスルフィド橋中に平均約2~約4個の連結硫黄原子を有する)を含む。
【0023】
一態様において、前記植物トリグリセリド油は、飽和及び不飽和エステルの組合せを含み、前記不飽和エステルは、オレイン酸エステル、リノール酸エステル及びリノレン酸エステルの組合せを含む。前記飽和エステルは、例えば、制限するつもりはないが、ステアリン酸エステル及びパルミチン酸エステルの少なくとも一つを含みうる。
【0024】
一態様において、前記植物トリグリセリド油は、大豆油、ヒマワリ油、菜種油、キャノーラ油の少なくとも一つ、望ましくは大豆油を含む。
一態様において、高TgのS-SBRは、望ましくは、高分子量を有することにより、約60~約120の範囲の未硬化ムーニー粘度(ML1+4)、100℃を有する。
【0025】
一態様において、より低いTgのE-SBRは、望ましくは、S-SBRより低い分子量のものであることにより、約35~約50の範囲の未硬化ムーニー粘度(ML1+4)、100℃を有する。
【0026】
一態様において、シス1,4-ポリブタジエンゴムは、少なくとも約95パーセントのシス1,4異性体含量を有する。それは、例えば、約45~約55の範囲の未硬化ムーニー粘度(ML1+4)、100℃を有しうる。
【0027】
一態様において、トレッドゴム組成物は、望ましくは、官能化エラストマー(例えば、官能化スチレン/ブタジエンエラストマー)を除く。
一態様において、トレッドゴム組成物は、官能化エラストマーを含有しうる(例えば、沈降シリカ上に含有されるヒドロキシル基と反応するアミン、シロキシ、チオール及びカルボキシル基の少なくとも一つを含む官能基を含有する高Tg官能化スチレン/ブタジエンエラストマー)。
【0028】
一態様において、前記高TgのS-SBR(又は前記官能化高Tgスチレン/ブタジエンエラストマー)は、所望であれば、スズ又はケイ素結合エラストマーでもよい。そうすることにより、その分子量及び未硬化粘度が増大する。
【0029】
一態様において、前記トラクション促進樹脂は、リモネン、アルファピネン及びベータピネンの少なくとも一つのポリマーを含むテルペン樹脂であり得、約60℃~約140℃の範囲内の軟化点を有する。
【0030】
一態様において、前記トラクション促進樹脂は、約60℃~約150℃の範囲の軟化点を有するクマロンインデン樹脂でありうる。
一態様において、前記トラクション促進樹脂は、約60℃~約125℃、あるいは約80℃~約90℃の範囲の軟化点(ASTM E28)と、例えば約10~約30パーセントのスチレン含量を有するスチレン-アルファメチルスチレン樹脂でありうる。
【0031】
一態様において、沈降シリカは、
(A)無機砂(inorganic sand)由来の沈降シリカ(二酸化ケイ素ベースの砂)、又は
(B)モミ殻由来の沈降シリカ(二酸化ケイ素含有モミ殻)
を含む。
【0032】
一態様において、沈降シリカは天然無機砂由来である(例えば、SiO2、二酸化ケイ素、これは微量の鉱物分を含有しうる)。無機砂は、典型的には、例えば水酸化ナトリウムなどの強塩基で処理してケイ酸塩水溶液を形成させる(例えばケイ酸ナトリウム)。合成沈降シリカは、酸(例えば、鉱酸及び/又は例えば二酸化炭素などの酸性化ガス)によるケイ酸塩の制御された処理により、ケイ酸塩水溶液から形成される。時には、沈降シリカ粒子の形成を促進するために電解質(例えば硫酸ナトリウム)を存在させてもよい。回収された沈降シリカはアモルファス沈降シリカである。
【0033】
一態様において、沈降シリカはモミ殻由来の沈降シリカである。そのような沈降シリカは、SiO2、二酸化ケイ素を含有しているイネのモミ殻(例えばモミ殻の燃焼灰)から誘導され、イネが植えてあった土壌由来の微量の鉱物を含有しうる。同様の方法で、モミ殻(例えばモミ殻灰)は、典型的には、例えば水酸化ナトリウムなどの強塩基で処理してケイ酸塩水溶液を形成させ(例えばケイ酸ナトリウム)、その後、合成沈降シリカが、酸(例えば、鉱酸及び/又は例えば二酸化炭素などの酸性化ガス)によるケイ酸塩の制御された処理により、ケイ酸塩水溶液から形成される。そこには、モミ殻由来の沈降シリカ粒子の形成を促進するために電解質(例えば硫酸ナトリウム)を存在させてもよい。回収された沈降シリカはアモルファス沈降シリカである。例えば、米国特許出願第2003/0096900号参照。
【0034】
沈降シリカは、上述の二酸化ケイ素由来であれモミ殻由来であれ、例えば窒素ガスを用いて測定されたBET表面積が、1グラムあたり例えば約40~約600平方メートルの範囲、より通常的には約50~約300平方メートルの範囲でありうる。表面積を測定するBET法は、例えば、Journal of the American Chemical Society、第60巻、ならびにASTM D3037に記載されている。
【0035】
そのような沈降シリカは、例えば、約100~約400cc/100gの範囲、より通常的には約150~約300cc/100gの範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値も有しうる。
【0036】
そのような予備疎水化沈降シリカの代表は、例えば、PPG社のAgilonTM 400でありうる。
ゴム補強カーボンブラックの代表例は、例えば、制限するつもりはないが、The Vanderbilt Rubber Handbook,第13版、1990年、417及び418ページにそれらのASTM規格と共に参照される。そのようなゴム補強カーボンブラックは、例えば60~240g/kgの範囲のヨウ素吸収値及び34~150cc/100gの範囲のDBP値を有しうる。
【0037】
前記沈降シリカのためのシリカカップラーの代表は、
(A)ビス(3-トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド(その連結橋中に平均約2~約4、あるいは約2~約2.6又は約3.2~約3.8個の範囲の硫黄原子を含有する)、又は
(B)アルコキシ有機メルカプトシラン、又は
(C)それらの組合せ
である。
【0038】
そのようなビス(3-トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドの代表は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドを含む。
前記予備疎水化沈降シリカは、望ましくは、沈降シリカとアルコキシ有機メルカプトシランの生成物である。
【0039】
前記添加された沈降シリカ(非疎水化沈降シリカ)は、望ましくは、ゴム組成物に、ゴム組成物内でのその現場反応のために、前記ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドと組み合わせて添加される。
【0040】
当業者であれば、加硫可能ゴム組成物は、ゴム配合分野で一般的に知られている方法によって配合されるであろうことは容易に分かるはずである。さらに、前記組成物は、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤及びしゃく解剤も含有できる。当業者には公知の通り、硫黄加硫可能(sulfur vulcanizable)材料及び硫黄加硫(sulfur-vulcanized)材料(ゴム)の使用目的に応じて、上記添加剤は選択され、慣用量で一般的に使用される。硫黄供与体の代表例は、元素硫黄(遊離硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマー性ポリスルフィド及び硫黄オレフィン付加物などである。通常、硫黄加硫剤は元素硫黄が望ましい。硫黄加硫剤は、例えば約0.5~8phrの範囲の量で使用できるが、約1~6phrの範囲が時に望ましい。加工助剤の典型的な量は、使用される場合、例えば約1~約10phrを含みうる。
【0041】
抗酸化剤の典型的な量は、例えば約1~約5phrを含みうる。代表的抗酸化剤は、例えばジフェニル-p-フェニレンジアミン及びその他、例えばThe Vanderbilt Rubber Handbook(1978),344~346ページに開示されているものなどでありうる。オゾン劣化防止剤の典型的な量は、例えば約1~5phrを含みうる。脂肪酸の典型的な量は、使用される場合、例えばステアリン酸、パルミチン酸及びオレイン酸、特にそれらを含む混合物などでありうるが、例えば約0.5~約6phrの範囲の量で使用される。酸化亜鉛の典型的な量は、例えば約0.5~約5phrを含みうる。ワックスの典型的な量は、使用される場合、例えば約0.5~約5phrを含みうる。そのようなワックスは微晶質ワックスであることが多い。しゃく解剤の典型的な量は、使用される場合、例えば約0.1~約1phrの量で使用できる。典型的なしゃく解剤は、例えば、ペンタクロロチオフェノール及びジベンズアミドジフェニルジスルフィドであろう。
【0042】
硫黄加硫促進剤は、加硫に要する時間及び/又は温度を制御するため、及び加硫物の性質を改良するために使用される。一態様において、単一促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されうる。一次促進剤(一つ又は複数)は、例えば約0.5~約4、時に望ましくは約0.8~約3phrの範囲の総量で使用されうる。別の態様では、活性化及び加硫物の性質を改良するために、一次及び二次促進剤の組合せが使用されうる。その場合、二次促進剤は、例えば約0.05~約3phrの量で使用される。これらの促進剤の組合せは、最終性質に対して相乗効果をもたらすことが期待され、いずれかの促進剤を単独で使用して製造されたものよりも多少良好である。さらに、標準的な加工温度には影響されないが、通常の加硫温度で満足のいく硬化をもたらす遅延作用促進剤を使用することもできる。加硫遅延剤も使用できる。本発明で使用できる適切なタイプの促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、スルフェンアミド、及びキサンテートである。多くの場合望ましくは、一次促進剤はスルフェンアミドである。二次促進剤を使用する場合、二次促進剤は、多くの場合望ましくは、グアニジン、例えばジフェニルグアニジン又はジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛である。
【0043】
加硫可能ゴム組成物の混合は、ゴム混合分野の当業者に公知の方法によって達成できる。例えば、成分は典型的には少なくとも二つの段階、すなわち、少なくとも一つのノンプロダクティブ段階とそれに続くプロダクティブ混合段階で混合される。硫黄加硫剤を含む最終硬化剤は典型的には最終段階で混合される。この段階は従来、“プロダクティブ”混合段階と呼ばれ、そこでは混合が典型的にはその前のノンプロダクティブ混合段階(一つ又は複数)の混合温度より低い温度、又は極限温度(ultimate temperature)で行われる。“ノンプロダクティブ”及び“プロダクティブ”混合段階という用語は、ゴム混合分野の当業者には周知である。ゴム組成物は、熱機械的混合工程に付されてもよい。熱機械的混合工程は、一般的に、140℃~190℃のゴム温度を生ずるために適切な時間、ミキサー又は押出機内での機械的作業を含む。熱機械的作業の適切な時間は、運転条件、ならびに成分の容量及び性質に応じて変動する。例えば、熱機械的作業は1~20分であろう。
【0044】
本発明のタイヤトレッドを含有する空気入りタイヤの加硫は、一般的に、例えば約140℃~200℃の範囲の慣用温度で実施される。多くの場合、加硫は約150℃~170℃の範囲の温度で実施されるのが望ましい。プレス機又は金型内での加熱、過熱蒸気又は熱風による加熱といった通常の加硫法のいずれが使用されてもよい。そのようなタイヤは、当業者に公知の、そして容易に明らかな様々な方法によって構築、成形(shaped)、成型(molded)及び硬化できる。
【0045】
以下の実施例は、本発明を説明することを目的として提示される。制限を目的としたものではない。部及びパーセンテージは、特に明記されない限り、重量部、通常ゴム100重量部あたりの重量部(phr)である。
【実施例】
【0046】
実施例I
本実施例において、ウェットトラクション及び寒冷気候(冬季)性能を促進するための使用について評価するために、タイヤトレッド用の例示的ゴム組成物を製造した。
【0047】
対照ゴム組成物を対照ゴムサンプルAとして、スチレン/ブタジエンゴムとシス1,4-ポリブタジエンゴムを沈降シリカ補強剤のためのシリカカップラーと共に含有している沈降シリカ補強ゴム組成物を用いて製造した。
【0048】
実験ゴム組成物を実験ゴムサンプルB、C及びDとして、様々なスチレン/ブタジエンエラストマーの組合せ(大豆油伸展高Tg S-SBRを含む高TgのS-SBR、及びより低いTgのE-SBR)と共に低Tgシス1,4-ポリブタジエンゴム、予備疎水化沈降シリカ補強フィラー及び自由に添加された大豆油を用いて製造した。ゴム組成物の概要を以下の表1に示す。
【0049】
【0050】
1有機溶媒重合調製スチレン/ブタジエンゴム(S-SBR-A)(約-23℃のTg及び約21パーセントのスチレン含量を有する)として、Trinseo社製SprintanTM SLR4602
2有機溶媒重合調製スチレン/ブタジエンゴム(S-SBR-B)(約-35℃のTg及び約33パーセントのスチレン含量を有する)、The Goodyear Tire & Rubber Company社製、100重量部のS-SBR-Bあたり約20重量部の大豆油で伸展されている
3水性乳化重合調製スチレン/ブタジエンゴム(E-SBR)(約-55℃のTg及び約23.5パーセントのスチレン含量を有する)として、The Goodyear Tire & Rubber Company社製PLF1502
4シス1,4-ポリブタジエンエラストマー(約96パーセントのシス1,4-含量及び約-106℃のTgを有する)として、The Goodyear Tire & Rubber Company社製BUD1223TM
5ゴムプロセスオイル、主にナフテン系油を含む
6スチレン/ブタジエンゴムの伸展に使用されないという意味でゴム組成物に自由に添加された大豆油として、Stratus Food Company社製Sterling Oil又はトリグリセリド大豆油としてCargill社製Master Chef Soybean Oil 22393
7トラクション促進樹脂としてのスチレン-アルファメチルスチレンコポリマー(約80℃~90℃の範囲の軟化点(ASTM E28)及び約10~約30パーセントの範囲のスチレン含量を有する)として、Eastman Chemical社製Eastman ImperaTM P1504
8沈降シリカとして、Solvay社製Zeosil 1165MPTM(無機砂由来)
9ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(そのポリスルフィド橋中に平均約2~約2.6個の範囲の連結硫黄原子を含有する)を含むシリカカップラーとして、Evonik社製Si266。カップラーは担体としてのカーボンブラックなしに使用された。
【0051】
10予備疎水化沈降シリカ、アルコキシ有機メルカプトシランで処理された沈降シリカとして、PPG Industries社製Agilon 400TM
11脂肪酸(ステアリン酸、パルミチン酸及びオレイン酸を含む)
12硫黄硬化促進剤としてスルフェンアミド一次促進剤及びジフェニルグアニジン又はジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛
ゴムサンプルは同様の混合手順によって製造した。すなわち、エラストマー及び配合成分を第一のノンプロダクティブ混合段階(NP1)で密閉式ゴムミキサーにて約4分間、約140℃~約160℃の温度になるまで一緒に混合した。得られた混合物をその後、連続した第二のノンプロダクティブ混合段階(NP2)で密閉式ゴムミキサーにて約140℃~約160℃の温度になるまで混合した。任意に、ゴム組成物はその後、連続した第三のノンプロダクティブ混合段階(NP3)で密閉式ゴムミキサーにて約140℃~約160℃の温度になるまで混合した。ゴム組成物はその後、プロダクティブ混合段階(P)で密閉式ゴムミキサーにて、硫黄硬化パッケージ、すなわち硫黄及び硫黄硬化促進剤と約2分間、約115℃の温度になるまで混合した。ゴム組成物は、各混合工程後、その密閉式ミキサーからそれぞれ取り出され、各個々のノンプロダクティブ混合段階の合間及び最終のプロダクティブ混合段階の前に40℃未満に冷却された。
【0052】
以下の表2に、表1の基本的配合に基づくゴム組成物の硬化挙動及び様々な物理的性質を示し、ここに対照ゴムサンプルAならびに実験ゴムサンプルB、C及びDとして報告する。応力-歪、ホットリバウンド及び硬度値など、硬化ゴムサンプルについて報告される場合、ゴムサンプルは約14分間、約160℃の温度で硬化された。
【0053】
ウェットトラクション予測を確立するために、タンジェントデルタ(タンデルタ)試験を0℃で実施した。
低温(寒冷気候)性能予測を確立するために、硬化ゴムの剛性(貯蔵弾性率G’)試験を-20℃で実施し、100℃におけるリバウンド値を転がり抵抗性能予測として使用した。
【0054】
【0055】
表2から、剛性という意味での低温雪道トラクションは、-20℃における剛性値が、対照ゴム組成物Aの15.7という剛性値に比べて、実験ゴム組成物B、C及びDの場合それぞれ14.4、12.8及び13という低い決定剛性値であったという意味で、予測通りに改良され、タンデルタ値という意味でのウェットトラクション予測は、対照ゴム組成物Aの0.42というタンデルタ値に比べて、実験ゴム組成物B、C及びDの場合0.35とわずかな不利益を被っただけであることが分かる。
【0056】
表2から、ヒステリシスは、ホットリバウンド(100℃)値が、対照ゴム組成物Aの61パーセントという値に比べて、実験ゴム組成物B、C及びDの場合それぞれ58、63及び59パーセントであるという意味で、対照ゴム組成物Aと比べて実験ゴム組成物B、C及びDによって有益に維持されていることが分かる。
【0057】
従って、実験ゴム組成物B、C及びDは、大豆油伸展有機溶液重合調製スチレン/ブタジエンゴム、水性乳化重合調製スチレン/ブタジエンゴム及びシス1,4-ポリブタジエンゴムの組合せと共に、予備疎水化沈降シリカで構成される補強フィラー、及びスチレン-アルファメチルスチレン樹脂で構成されるトラクション促進樹脂も一緒に含むものであったが、そのようなゴム組成物のトレッドを有するタイヤの、ウェットトラクションを予測する低温タンデルタ特性及び満足のいく転がり抵抗を予測する満足のいくヒステリシスを維持しながら、低温寒冷気候トラクションを予測する低温剛性(G’)特性の有益な組合せの発見を提供したと結論付けられる。
【0058】
実施例II
サイズ215/60R 16の実験乗用車用空気入りタイヤを、実施例Iの対照ゴム組成物Aならびに実験ゴム組成物B、C及びDを含むトレッドを用いて製造し、それに応じてそれぞれ対照Aトレッド搭載タイヤ、実験B、C及びDトレッド搭載タイヤとして識別した。
【0059】
タイヤを硬質ホイールに取り付け、低温条件下で試験した。タイヤ試験の結果を以下の表3に報告する。対照ゴム組成物Aのトレッドを有するタイヤの結果を100の値に正規化し、ゴム組成物B、C及びDのトレッドを有する実験タイヤの結果を正規化された値に関連付けた。
【0060】
対照Aのタイヤの値を100の値に正規化し、実験B、C及びDのタイヤの値を対照Aのタイヤの正規化値100と比較する。
【0061】
【0062】
表3から、実験ゴム組成物B、C及びDのトレッドを有する空気入りタイヤは、寒冷気候(冬季)トラクション値が106、107及び108を示し、対照ゴム組成物Aのトレッドを有するタイヤの100という正規化値より著しく改良されたことが分かる。
【0063】
表3から、実験ゴム組成物B、C及びDのトレッドを有する空気入りタイヤは、ウェットトラクション値が100、99及び97を示し、対照ゴム組成物Aのトレッドを有するタイヤの100という正規化値と同じか同様であったことが分かる。
【0064】
表3から、実験ゴム組成物B、C及びDのトレッドを有する空気入りタイヤは、転がり抵抗値が97、99及び93を示し、対照ゴム組成物Aのトレッドを有するタイヤの100という正規化値と同様であったことが分かる。
【0065】
従って、実験ゴム組成物B、C及びDのトレッドを有する空気入りタイヤは、大豆油伸展有機溶液重合調製された高Tgスチレン/ブタジエンゴム、水性乳化重合調製されたより低いTgのスチレン/ブタジエンゴム及び低Tgシス1,4-ポリブタジエンゴムの組合せと共に予備疎水化沈降シリカで構成される補強フィラーを含むものであったが、そのようなタイヤのウェットトラクション及び満足のいく転がり抵抗を実質的に維持しながら低温雪道トラクションの有益な組合せの発見を確認したと結論付けられる。
【0066】
実施例III
本実施例では、ウェットトラクション及び寒冷気候(冬季)性能を促進するための使用について評価するために、タイヤトレッド用の追加の例示的ゴム組成物を製造した。
【0067】
対照ゴム組成物を対照ゴムサンプルEとして製造した。これは実施例Iの実験ゴムサンプルBの複製で、予備疎水化沈降シリカ(アルコキシ有機メルカプトシランで前処理された沈降シリカ)としてPPG Industries社製Agilon 400TMを含有していた。
【0068】
実験ゴムサンプルF及びGは、対照ゴムサンプルEと同様であったが、ただし、前処理された沈降シリカの代わりに、沈降シリカとして、実験ゴムサンプルFの場合Solvay社製Zeosil 1165TM MPを、実験ゴムサンプルGの場合Madhu Silica社製MFILTM 125をゴム組成物に加えた。沈降シリカをジエン系エラストマーに結合させるためにシリカカップラーをゴム組成物に加えた。
【0069】
ゴム組成物の概要を以下の表4に示す。
【0070】
【0071】
2有機溶媒重合調製スチレン/ブタジエンゴム(S-SBR-B)(約-35℃のTg及び約33パーセントのスチレン含量を有する)、The Goodyear Tire & Rubber Company社製、100重量部のS-SBR-Bあたり約20重量部の大豆油で伸展されている
3水性乳化重合調製スチレン/ブタジエンゴム(E-SBR)(約-55℃のTg及び約23.5パーセントのスチレン含量を有する)として、The Goodyear Tire & Rubber Company社製PLF1502
4シス1,4-ポリブタジエンエラストマー(約96パーセントのシス1,4-含量及び約-106℃のTgを有する)として、The Goodyear Tire & Rubber Company社製BUD1223TM
6スチレン/ブタジエンゴムの伸展に使用されていないという意味でゴム組成物に自由に添加された大豆油として、Stratus Food Company社製Sterling Oil又はトリグリセリド大豆油としてCargill社製Master Chef Soybean Oil 22393
7トラクション促進樹脂としてのスチレン-アルファメチルスチレンコポリマー(約80℃~90℃の範囲の軟化点(ASTM E28)及び約10~約30パーセントの範囲のスチレン含量を有する)として、Eastman Chemical社製Eastman ImperaTM P1504
9ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(そのポリスルフィド橋中に平均約2~約2.6個の範囲の連結硫黄原子を含有する)を含むシリカカップラーとして、Evonik社製Si266。カップラーは担体としてのカーボンブラックなしに使用された。
【0072】
10予備疎水化沈降シリカ、アルコキシ有機メルカプトシランで処理された沈降シリカとして、PPG Industries社製Agilon 400TM
11脂肪酸(ステアリン酸、パルミチン酸及びオレイン酸を含む)
12硫黄硬化促進剤としてスルフェンアミド一次促進剤及びジフェニルグアニジン又はジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛
13沈降シリカとして、Solvay社製Zeosil 1165MPTM(報告BET窒素表面積約160m2/gを有する)
14沈降シリカとして、Madhu Silica社製MFILTM(報告BET窒素表面積約125m2/gを有する)
ゴムサンプルは同様の混合手順によって製造した。すなわち、エラストマー及び配合成分を第一のノンプロダクティブ混合段階(NP1)で密閉式ゴムミキサーにて約4分間、約140℃~約160℃の温度になるまで一緒に混合した。得られた混合物をその後、連続した第二のノンプロダクティブ混合段階(NP2)で密閉式ゴムミキサーにて約140℃~約160℃の温度になるまで混合した。任意に、ゴム組成物はその後、連続した第三のノンプロダクティブ混合段階(NP3)で密閉式ゴムミキサーにて約140℃~約160℃の温度になるまで混合した。ゴム組成物はその後、プロダクティブ混合段階(P)で密閉式ゴムミキサーにて、硫黄硬化パッケージ、すなわち硫黄及び硫黄硬化促進剤と約2分間、約115℃の温度になるまで混合した。ゴム組成物は、各混合工程後、その密閉式ミキサーからそれぞれ取り出され、各個々のノンプロダクティブ混合段階の合間及び最終のプロダクティブ混合段階の前に40℃未満に冷却された。
【0073】
以下の表5に、表4の基本的配合に基づくゴム組成物の硬化挙動及び様々な物理的性質を示し、ここに対照ゴムサンプルEならびに実験ゴムサンプルF及びGとして報告する。応力-歪、ホットリバウンド及び硬度値など、硬化ゴムサンプルについて報告される場合、ゴムサンプルは約14分間、約160℃の温度で硬化された。
【0074】
ウェットトラクション予測を確立するために、タンジェントデルタ(タンデルタ)試験を0℃で実施した。
低温(寒冷気候)性能予測を確立するために、硬化ゴムの剛性(貯蔵弾性率G’)試験を-20℃で実施し、100℃におけるリバウンド値を転がり抵抗性能予測として使用した。
【0075】
【0076】
表5から、剛性という意味での低温寒冷気候性能指標は、-20℃における剛性値が、実験ゴム組成物F及びGのそれぞれ19.7及び15.9MPaという剛性値に比べて、対照ゴム組成物Eの場合13.8MPaという低い決定剛性値であったという意味で良好であり、タンデルタ値という意味でのウェットトラクション予測は、実験ゴム組成物F及びGの0.4及び0.46というタンデルタ値に比べて、対照ゴム組成物Eの場合0.36で、わずかな不利益を被っただけであることが分かる。
【0077】
表5から、ヒステリシス(リバウンド値によって証明される)は、ホットリバウンド(100℃)値が、実験ゴム組成物F及びGのそれぞれ50.6及び52.3パーセントという値に比べて、対照ゴム組成物Eの場合57.3パーセントであるという意味で、実験ゴム組成物Fと比べて対照ゴム組成物Eによって有益に維持されていることが分かる。
【0078】
従って、110phrの予備疎水化沈降シリカと共に、大豆油伸展有機溶液重合調製された高Tgのスチレン/ブタジエンゴム、水性乳化重合調製されたより低いTgのスチレン/ブタジエンゴム及び低Tgシス1,4-ポリブタジエンゴムを含有する対照ゴム組成物Eは、そのようなゴム組成物のトレッドを有するタイヤの、ウェットトラクションを予測する低温タンデルタ特性及び満足のいく転がり抵抗を予測する満足のいくヒステリシスを維持しながら、低温寒冷気候トラクションを予測する低温剛性(G’)特性の有益な組合せの発見を提供したと結論付けられる。
【0079】
本発明を例示する目的で様々な態様及び詳細を示してきたが、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、その中で多様な変更及び修正が可能であることは当業者には明らかであろう。
【0080】
[発明の態様]
1.ゴム組成物の周方向ゴムトレッドを有する空気入りタイヤであって、100重量部のエラストマーあたりの重量部(phr)を基にして:
(A)100重量部の共役ジエン系エラストマーの組合せ、すなわち
(1)約10~約50phrの有機溶媒重合調製高Tgスチレン/ブタジエンエラストマーであって、約-40℃~約-30℃の範囲のTg及び約30~約35パーセントの範囲のスチレン含量を有し、前記高TgのS-SBRは、前記高Tgスチレン/ブタジエンエラストマー100重量部あたり約10~約38重量部のトリグリセリド植物油で伸展されている有機溶媒重合調製高Tgスチレン/ブタジエンエラストマーと、
(2)約10~約50phrの水性乳化重合調製スチレン/ブタジエンエラストマーであって、約-65℃~約-45℃の範囲のTg及び約15~約30パーセントの範囲のスチレン含量を有する水性乳化重合調製スチレン/ブタジエンエラストマーと、そして
(3)約20~約60phrのシス1,4-ポリブタジエンゴムであって、少なくとも約95パーセントのシス1,4-異性体含量及び約-100℃~約-108℃の範囲のTgを有するシス1,4-ポリブタジエンゴムと
を含む共役ジエン系エラストマーの組合せ、
(B)約50~約250phrのゴム補強フィラーであって、沈降シリカとゴム補強カーボンブラックを含み、約2~約10phrの前記ゴム補強カーボンブラックを含有し、前記沈降シリカは、
(1)予備疎水化沈降シリカであって、アルコキシ有機メルカプトシラン又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(そのポリスルフィド橋中に平均約2~約4個の連結硫黄原子を含有する)で予備疎水化され、それらの複合体を形成している沈降シリカを含む予備疎水化沈降シリカ、
(2)約140~約220m2/gの範囲の窒素表面積を有する沈降シリカと共に、前記沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応する部分と前記ジエン系エラストマーと相互作用する別の異なる部分とを有するシリカカップラーも含む沈降シリカ、及び
(3)約90~約130m2/gの範囲の窒素表面積を有する沈降シリカと共に、前記沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応する部分と前記ジエン系エラストマーと相互作用する別の異なる部分とを有するシリカカップラーも含む沈降シリカ
の少なくとも一つを含むゴム補強フィラー、
(C)約5~約45phrのトラクション促進樹脂であって、テルペン、クマロンインデン及びスチレン-アルファメチルスチレン樹脂の少なくとも一つを含み、約60℃~約150℃の範囲内の軟化点を有するトラクション促進樹脂
を含むゴム組成物の周方向ゴムトレッドを有する空気入りタイヤ。
【0081】
2.前記ゴム組成物が、約5~約50phrの自由に添加された植物トリグリセリド油を含有する、1記載のタイヤ。
3.前記沈降シリカが、アルコキシ有機メルカプトシラン又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(そのポリスルフィド橋中に平均約2~約4個の連結硫黄原子を含有する)で予備疎水化され、それらの複合体を形成している沈降シリカを含む予備疎水化沈降シリカである、1記載のタイヤ。
【0082】
4.前記沈降シリカが、アルコキシ有機メルカプトシランで予備疎水化され、それらの複合体を形成している沈降シリカを含む予備疎水化沈降シリカである、1記載のタイヤ。
5.前記沈降シリカが、約140~約220m2/gの範囲の窒素表面積を有する沈降シリカと共に、前記沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応する部分と前記ジエン系エラストマーと相互作用する別の異なる部分とを有し、アルコキシ有機メルカプタン及びビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドの少なくとも一つを含むシリカカップラーも含む沈降シリカである、1記載のタイヤ。
【0083】
6.前記沈降シリカが、約90~約130m2/gの範囲の窒素表面積を有する沈降シリカと共に、前記沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応する部分と前記ジエン系エラストマーと相互作用する別の異なる部分とを有し、アルコキシ有機メルカプタン及びビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドの少なくとも一つを含むシリカカップラーも含む沈降シリカである、1記載のタイヤ。
【0084】
7.前記ゴム組成物が追加の沈降シリカを含有する、3記載のタイヤ。
8.前記ゴム組成物が、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(そのポリスルフィド橋中に平均約2~約4個の連結硫黄原子を有する)を含む追加のシリカカップリング剤を含有する、3記載のタイヤ。
【0085】
9.前記ゴム組成物が追加の沈降シリカを含有する、4記載のタイヤ。
10.前記ゴム組成物が、追加の沈降シリカと共に、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(そのポリスルフィド橋中に平均約2~約4個の連結硫黄原子を有する)を含むシリカカップリング剤を含有する、4記載のタイヤ。
【0086】
11.前記スチレン/ブタジエンエラストマーの油展のための前記植物トリグリセリド油が、飽和及び不飽和エステルの組合せを含み、前記不飽和エステルは、オレイン酸エステル、リノール酸エステル及びリノレン酸エステルの少なくとも一つを含む、1記載のタイヤ。
【0087】
12.前記スチレン/ブタジエンエラストマーの油展のための前記植物トリグリセリド油が、大豆油、ヒマワリ油、菜種油及びキャノーラ油の少なくとも一つを含む、1記載のタイヤ。
【0088】
13.前記スチレン/ブタジエンエラストマーの油展のための前記植物トリグリセリド油が大豆油を含む、1記載のタイヤ。
14.前記自由に添加された植物トリグリセリド油が、飽和及び不飽和エステルの組合せを含み、前記不飽和エステルは、オレイン酸エステル、リノール酸エステル及びリノレン酸エステルの少なくとも一つを含む、2記載のタイヤ。
【0089】
15.前記自由に添加された植物トリグリセリド油が、大豆油、ヒマワリ油、菜種油及びキャノーラ油の少なくとも一つを含む、2記載のタイヤ。
16.前記自由に添加された植物トリグリセリド油が大豆油を含む、2記載のタイヤ。
【0090】
17.前記高Tgスチレン/ブタジエンエラストマーが、約60~約120の範囲のムーニー粘度(ML1+4)、100℃を有する、1記載のタイヤ。
18.前記スチレン/ブタジエンエラストマーがスズ又はケイ素結合されている、1記載のタイヤ。
【0091】
19.前記スチレン/ブタジエンエラストマーが、前記沈降シリカ上のヒドロキシル基と反応するアミン、シロキシ、チオール及びカルボキシル基の少なくとも一つを含有する官能化エラストマーである、1記載のタイヤ。
【0092】
20.前記トラクション促進樹脂が、約60℃~約125℃の範囲の軟化点及び約10~約30パーセントのスチレン含量を有するスチレン/アルファメチルスチレン樹脂である、1記載のタイヤ。