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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】発光装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20220225BHJP
【FI】
H01L33/50
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017565447
(86)(22)【出願日】2017-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2017000661
(87)【国際公開番号】W WO2017134994
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2019-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2016017986
(32)【優先日】2016-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100161089
【氏名又は名称】萩原 良一
(72)【発明者】
【氏名】今井 貞人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正博
(72)【発明者】
【氏名】松村 一輝
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001735(JP,A)
【文献】特開2006-135300(JP,A)
【文献】特開2013-062320(JP,A)
【文献】特開2003-179269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0027971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に実装された複数の発光素子と、
前記複数の発光素子を一体的に封止し、前記複数の発光素子からの光により励起される第1の蛍光体を、前記基板から遠い側である上端から前記基板に近い側である下端に向かうほど高い濃度で含有する第1の樹脂層と、
前記第1の樹脂層よりも上に配置され、前記第1の樹脂層を通過した前記複数の発光素子からの光により励起される第2の蛍光体を均一な濃度で含有する第2の樹脂層と、を有し、
前記第1の蛍光体は各発光素子の上面と前記複数の発光素子同士の間における前記基板の上面に沈殿し、
前記第2の樹脂層における前記第2の蛍光体の均一な濃度は、前記第1の樹脂層の前記下端における前記第1の蛍光体の濃度よりも低くする、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第2の樹脂層における前記第2の蛍光体の濃度は、前記第1の樹脂層の前記上端における前記第1の蛍光体の濃度よりも高い、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1の樹脂層の前記上端は、前記第1の蛍光体を含有しない透明樹脂層である、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
基板上に複数の発光素子を実装する工程と、
前記複数の発光素子からの光により励起される第1の蛍光体を含有する未硬化の樹脂で前記複数の発光素子を一体的に封止して、第1の樹脂層を形成する工程と、
前記第1の樹脂層を未硬化の状態に保ったままで、前記第1の蛍光体を前記基板側に沈殿させる工程と、
前記第1の樹脂層を硬化させる工程と、
前記第1の樹脂層を通過した前記複数の発光素子からの光により励起される第2の蛍光体を均一な濃度で含有する第2の樹脂層を前記第1の樹脂層よりも上に配置する工程と、
を有し、
前記第2の樹脂層における前記第2の蛍光体の均一な濃度は、前記第1の樹脂層の前記下端における前記第1の蛍光体の濃度よりも低くする、
ことを特徴とする発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック基板または金属基板などの汎用基板の上にLED(発光ダイオード)素子などの発光素子が実装されたCOB(Chip On Board)の発光装置が知られている。こうした発光装置では、蛍光体を含有する透光性の樹脂によりLED素子を封止し、LED素子からの光と、LED素子からの光により蛍光体を励起させて得られる光とを混合させることにより、用途に応じて白色光などが得られる。
【0003】
こうした発光装置については、放熱性の向上および色度のバラつきの抑制などを目的として、蛍光体を分散させた未硬化の樹脂でLED素子を封止し、その蛍光体を沈殿(沈降)させてから樹脂を硬化させる製造方法が知られている。例えば、特許文献1には、支持体上に配置されたLEDチップと、LEDチップからの発光の少なくとも一部を吸収し波長変換して発光する蛍光体を含み、LEDチップ上およびLEDチップ上以外の支持体上に形成されたコーティング部とを有する発光ダイオードが記載されている。このコーティング部は、蛍光体を気相又は液相中に分散させて、その蛍光体を沈降させることにより形成される。
【0004】
また、特許文献2には、蛍光体を含まない透光性樹脂にて基板上のLEDチップを封止し、蛍光体を含有する樹脂層をその上に均一な厚みで形成することにより、透光性樹脂内に蛍光体を分散させた場合よりも色むらを生じにくくした発光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-040858号公報
【文献】特開2003-101074号公報
【発明の概要】
【0006】
蛍光体を分散させた未硬化の樹脂で発光素子を封止し、その蛍光体を沈殿させる際には、樹脂の粘度が低下していく過程で樹脂中に流れが発生して、蛍光体も流動する。特に、1つの基板上に複数の発光素子が実装されている場合には、この樹脂の流動が場所によって変化し得るので、蛍光体の沈殿状態(濃度)にバラつきが生じやすい。このため、1つの基板上に複数の発光素子が実装されている場合には、1つの基板上に1つの発光素子だけを実装した場合とは異なり、発光素子間で蛍光体の濃度にバラつきが生じ、これに起因して発光のバラつき(色ムラ)が目立つ。
【0007】
そこで、本発明は、複数の発光素子を封止する樹脂中で沈殿している蛍光体の濃度に発光素子間でバラつきがあっても発光時に色ムラが目立たない発光装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
基板と、基板上に実装された複数の発光素子と、複数の発光素子を一体的に封止し、複数の発光素子からの光により励起される第1の蛍光体を、基板から遠い側である上端から基板に近い側である下端に向かうほど高い濃度で含有する第1の樹脂層と、第1の樹脂層よりも上に配置され、複数の発光素子からの光により励起される第2の蛍光体を一様な濃度で含有する第2の樹脂層とを有することを特徴とする発光装置が提供される。
【0009】
上記の発光装置では、第2の樹脂層における第2の蛍光体の濃度は、第1の樹脂層の下端における第1の蛍光体の濃度よりも低く、第2の樹脂層における第2の蛍光体の濃度は、第1の樹脂層の上端における第1の蛍光体の濃度よりも高いことが好ましい。
【0010】
上記の発光装置では、第1の樹脂層の上端は、第1の蛍光体を含有しない透明樹脂層であることが好ましい。
【0011】
また、基板上に複数の発光素子を実装する工程と、複数の発光素子からの光により励起される第1の蛍光体を含有する未硬化の樹脂で複数の発光素子を一体的に封止して、第1の樹脂層を形成する工程と、第1の樹脂層を未硬化の状態に保ったままで、第1の蛍光体を基板側に沈殿させる工程と、第1の樹脂層を硬化させる工程と、複数の発光素子からの光により励起される第2の蛍光体を一様な濃度で含有する第2の樹脂層を第1の樹脂層よりも上に配置する工程とを有することを特徴とする発光装置の製造方法が提供される。
【0012】
上記の発光装置およびその製造方法によれば、複数の発光素子を封止する樹脂中で沈殿している蛍光体の濃度に発光素子間でバラつきがあっても発光時に色ムラが目立たない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】発光装置1の斜視図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】回路基板20およびLED素子30の配置を説明するための斜視図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】(A)~(D)は、沈殿蛍光体層50と分散蛍光体層60における蛍光体の濃度分布の例を示す図である。
図6】発光装置1の製造工程の例を示すフローチャートである。
図7】別の発光装置2の斜視図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、発光装置およびその製造方法について説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0015】
図1は、発光装置1の斜視図である。また、図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。発光装置1は、発光素子としてLED素子を含み、例えば各種の照明用のLED光源装置として利用される。発光装置1は、主要な構成要素として、実装基板10、回路基板20、LED素子30、樹脂枠40、沈殿蛍光体層50および分散蛍光体層60を有する。
【0016】
実装基板10は、一例として正方形の形状を有し、その上面の中央にLED素子30が実装される円形の実装領域11(後述する図3を参照)を有する金属基板である。実装基板10は、LED素子30および後述する蛍光体の粒子により発生した熱を放熱させる放熱基板としても機能するため、例えば、耐熱性および放熱性に優れたアルミニウムで構成される。ただし、実装基板10の材質は、耐熱性と放熱性に優れたものであれば、例えば銅など、別の金属でもよい。
【0017】
図3は、回路基板20およびLED素子30の配置を説明するための斜視図である。また、図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【0018】
回路基板20は、一例として、実装基板10と同じ大きさの正方形の形状を有し、その中心部に円形の開口部21を有する。回路基板20は、その下面が例えば接着シートにより実装基板10の上に貼り付けられて固定される。開口部21を取り囲むように、回路基板20の上面における一方の側には配線パターン23Aが、他方の側には配線パターン23Bが、それぞれ形成されている。また、回路基板20の上面で対角に位置する一方の角部には接続電極24Aが、他方の角部には接続電極24Bが、それぞれ形成されている。接続電極24A,24Bは一方がアノード電極で他方がカソード電極となり、これらが外部電源に接続されて電圧が印加されることによって、発光装置1は発光する。
【0019】
LED素子30は、発光素子の一例であり、例えば、紫外域から青色領域にわたる波長の光を出射する窒化ガリウム系化合物半導体などのLED素子である。以下では、LED素子30は、例えば発光波長帯域が450~460nm程度の青色光を発光する青色LEDであるとする。ただし、LED素子30は、紫色光または紫外光といった他の波長の光を発光する素子であってもよい。発光装置1では、複数のLED素子30が、回路基板20の開口部21内で露出している実装基板10の実装領域11上に、格子状に配列して実装されている。図3は、特に21個のLED素子30が実装された場合の例を示す。LED素子30の下面は、例えば透明な絶縁性の接着剤などにより、実装基板10の上面に固定されている。
【0020】
LED素子30は上面に一対の素子電極を有し、図3および図4に示すように、隣接するLED素子30の素子電極は、ボンディングワイヤ31(以下、単にワイヤ31という)により相互に電気的に接続されている。開口部21の外周側に位置するLED素子30から出たワイヤ31は、回路基板20の配線パターン23Aまたは配線パターン23Bに接続されている。これにより、各LED素子30には、ワイヤ31を介して電流が供給される。
【0021】
樹脂枠40は、回路基板20の開口部21の大きさに合わせて例えば白色の樹脂で構成された円形の枠体であり、回路基板20の上面で、開口部21を縁取るように形成された配線パターン23A,23Bと重なる位置に固定される。樹脂枠40は、沈殿蛍光体層50および分散蛍光体層60の樹脂の流出しを防止するためのダム材であり、また、LED素子30から側方に出射された光を、発光装置1の上方(LED素子30から見て実装基板10とは反対側)に向けて反射させる。
【0022】
沈殿蛍光体層50は、第1の樹脂層の一例であり、第1の蛍光体である蛍光体51を含有する透光性の樹脂により構成される。沈殿蛍光体層50は、図2に示すように、樹脂枠40により囲まれた実装基板10上の空間をワイヤ31の上端よりも高い位置まで埋め尽くしており、複数のLED素子30およびワイヤ31を一体に被覆し保護(封止)する。沈殿蛍光体層50には、例えば、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂などの無色かつ透明な熱硬化性樹脂が使用される。
【0023】
蛍光体51は、例えばYAG(Yttrium Aluminum Garnet)などの黄色蛍光体であり、その粒子は、沈殿蛍光体層50内で下方に沈殿している。すなわち、沈殿蛍光体層50は、複数のLED素子30からの光により励起される蛍光体51を、実装基板10から遠い側である上端から実装基板10に近い側である下端に向かうほど高い濃度で含有する。図2では、沈殿蛍光体層50における蛍光体51の粒子の沈殿を、濃淡の模様により表している。なお、実際には、図2に示すように、蛍光体51は、実装基板10の上面だけでなくLED素子30の上面にも沈殿する。
【0024】
発光装置1は、LED素子30からの青色光と、それによって沈殿蛍光体層50内の蛍光体51を励起させて得られる黄色光とを混合させることで得られる白色光を出射する。発光装置1では、LED素子30は放熱性の高い実装基板10上に直接実装されており、沈殿蛍光体層50内の蛍光体51は実装基板10に近い位置に沈殿しているため、LED素子30および蛍光体51で発生した熱は、実装基板10を介して装置外部に逃げやすくなる。したがって、熱によるLED素子30の発光強度の低下を防ぐことができるため、発光強度の向上の点で有利である。
【0025】
分散蛍光体層60は、第2の樹脂層の一例であり、第2の蛍光体である蛍光体61を含有する透光性の樹脂により構成され、沈殿蛍光体層50の上に配置されている。分散蛍光体層60にも、例えば、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂などの無色かつ透明な樹脂が使用されるが、分散蛍光体層60の材質は沈殿蛍光体層50と同じでもよく、異なっていてもよい。また、沈殿蛍光体層50と分散蛍光体層60の間には、別の透明樹脂層があってもよい。
【0026】
蛍光体61は、例えば蛍光体51と同じ黄色蛍光体である。分散蛍光体層60は、複数のLED素子30からの光により励起される蛍光体61を一様な濃度で含有する。すなわち、分散蛍光体層60内では、蛍光体61の粒子は、沈殿蛍光体層50の蛍光体51とは異なり、水平方向および垂直方向の位置によらず、均一に分散している。分散蛍光体層60内でも、LED素子30からの青色光と、それによって蛍光体61を励起させて得られる黄色光とが混合することで、白色光が生成される。
【0027】
発光装置1では、蛍光体61が均一に分散している分散蛍光体層60が沈殿蛍光体層50の上にあることにより、沈殿蛍光体層50からの青色光は、分散蛍光体層60を通過することで白色光に変換される。このため、沈殿蛍光体層50内の蛍光体51の濃度にLED素子30間でバラつきがあり青色光が多く出射する部分があったとしても、そのような発光のバラつきは、出射光が分散蛍光体層60を通過することで緩和される。したがって、分散蛍光体層60があることにより、沈殿蛍光体層50での蛍光体濃度のバラつきに起因する色ムラは目立たなくなる。
【0028】
なお、沈殿蛍光体層50と分散蛍光体層60の一方または両方は、蛍光体51,61として、例えば緑色蛍光体および赤色蛍光体などの複数種類の蛍光体を含有してもよい。この場合、発光装置1は、青色LEDであるLED素子30からの青色光と、それによって緑色蛍光体および赤色蛍光体を励起させて得られる緑色光および赤色光とを混合させることで得られる白色光を出射する。緑色蛍光体は、LED素子30が出射した青色光を吸収して緑色光に波長変換する、例えば(BaSr)SiO:Eu2+などの粒子状の蛍光体材料である。赤色蛍光体は、LED素子30が出射した青色光を吸収して赤色光に波長変換する、例えばCaAlSiN:Eu2+などの粒子状の蛍光体材料である。
【0029】
また、沈殿蛍光体層50と分散蛍光体層60の一方または両方は、蛍光体51,61として、例えば緑色蛍光体と赤色蛍光体に加えて黄色蛍光体をさらに含有してもよいし、黄色蛍光体と赤色蛍光体などの上記とは異なる組合せの蛍光体を含有してもよい。ただし、蛍光体の種類を増やし過ぎると、蛍光体の総量が増え、発熱量も多くなるため、放熱の点では不利になる。特に、実装基板10から遠い分散蛍光体層60内の蛍光体61には、沈殿蛍光体層50内の蛍光体51よりも発熱量が少ないものを使用することが好ましい。
【0030】
図5(A)~図5(D)は、沈殿蛍光体層50と分散蛍光体層60における蛍光体の濃度分布の例を示す図である。各図の左側では、濃淡の模様により、沈殿蛍光体層50(沈殿蛍光体層50A~50D)における蛍光体51の粒子の分布を表している。また、各図の右側では、高さ方向(Z方向)における蛍光体の濃度分布f(Z)をグラフで示している。以下では、実装基板10の上面を高さの基準(Z=0)とする。図5(A)~図5(D)では、分散蛍光体層60はいずれも同じであるが、沈殿蛍光体層50における蛍光体51の濃度分布が互いに異なっている。沈殿蛍光体層50と分散蛍光体層60における蛍光体濃度の関係は、図5(A)~図5(D)に示した4通りのいずれであってもよい。
【0031】
図5(A)の例では、沈殿蛍光体層50Aは、上端における高さZ~Z(Z>Z)の範囲の透明樹脂層53と、蛍光体51を含有する高さZ~0の範囲の中間濃度層52とを有する。すなわち、分散蛍光体層60の直下は、蛍光体51を含有しない透明樹脂層53である。分散蛍光体層60の蛍光体濃度はfであり、透明樹脂層53の蛍光体濃度は0である。また、中間濃度層52の蛍光体濃度は、高さがZから0に近付くにつれて0から徐々に増加し、特に高さ0の付近で急激に増加して、下端付近ではfよりも大きいfになる。
【0032】
図5(B)の例では、沈殿蛍光体層50Bは、図5(A)の場合と同様に、上端における高さZ~Zの範囲の透明樹脂層53と、蛍光体51を含有する高さZ~0の範囲の中間濃度層52’とを有する。中間濃度層52’の蛍光体濃度は、高さがZから0に近付くにつれて0から直線上に増加して、下端付近では分散蛍光体層60の蛍光体濃度fよりも大きいfになる。
【0033】
図5(C)の例では、沈殿蛍光体層50Cは、上端のごくわずかな範囲を除いて透明樹脂層を有さず、沈殿蛍光体層50Cの全体が蛍光体51を含有している。沈殿蛍光体層50Cの蛍光体濃度は、高さがZから0に近付くにつれて0から直線上に増加して、下端付近では分散蛍光体層60の蛍光体濃度fよりも大きいfになる。
【0034】
図5(D)の例では、沈殿蛍光体層50Dは透明樹脂層を全く有さず、沈殿蛍光体層50Dの全体が蛍光体51を含有している。沈殿蛍光体層50Dの蛍光体濃度は、高さがZの上端では分散蛍光体層60の蛍光体濃度fよりも小さいfであり、高さがZから0に近付くにつれてfから直線上に増加して、下端付近ではfよりも大きいfになる。
【0035】
図5(A)~図5(D)のいずれの例でも、分散蛍光体層60の蛍光体濃度fは、沈殿蛍光体層50内で最も濃度が高い部分の蛍光体濃度fよりも低い。すなわち、分散蛍光体層60における蛍光体61の濃度は、沈殿蛍光体層50の下端における蛍光体51の濃度よりも低いことが好ましい。分散蛍光体層60は沈殿蛍光体層50での蛍光体濃度のバラつきに起因する色ムラを緩和するための補助的なものであるから、分散蛍光体層60の蛍光体濃度は、分散蛍光体層60を通した出射光の輝度が低下しないように、高過ぎないことが好ましい。また、放熱の観点からも、分散蛍光体層60の蛍光体濃度は高過ぎないことが好ましい。
【0036】
また、図5(A)~図5(D)のいずれの例でも、分散蛍光体層60の蛍光体濃度fは、沈殿蛍光体層50内で最も濃度が低い部分の蛍光体濃度0またはfよりも高い。すなわち、分散蛍光体層60における蛍光体61の濃度は、沈殿蛍光体層50の上端(分散蛍光体層60の直下)における蛍光体51の濃度よりも高いことが好ましい。分散蛍光体層60の蛍光体濃度は、低過ぎても色ムラの緩和効果が得られないため、ある程度の高さが必要になる。
【0037】
また、特に図5(A)および図5(B)の例のように、沈殿蛍光体層50の上端(分散蛍光体層60の直下)は、蛍光体51を含有しない透明樹脂層53であることが好ましい。分散蛍光体層60と沈殿蛍光体層50の上端との間における蛍光体濃度の差が大きいほど、色ムラの緩和効果はより顕著に現れる。したがって、図5(C)および図5(D)よりも図5(A)および図5(B)の例の方が好ましく、特に図5(A)の例が最も好ましい。
【0038】
なお、図5(A)~図5(D)の例とは逆に、分散蛍光体層60の蛍光体濃度fが沈殿蛍光体層50の上端(分散蛍光体層60の直下)における蛍光体濃度fよりも低いと、分散蛍光体層60による色ムラの緩和効果はほとんど得られない。
【0039】
分散蛍光体層60の蛍光体濃度の上限は、分散蛍光体層60の蛍光体61による温度上昇量と分散蛍光体層60を構成する樹脂の耐熱温度との関係によって定まる。また、分散蛍光体層60の蛍光体濃度の下限は、沈殿蛍光体層50での蛍光体濃度のバラつき度合いと、分散蛍光体層60による色ムラの緩和度合いと、色ムラの許容範囲との関係によって定まる。分散蛍光体層60の蛍光体濃度が高くなるほど色ムラは目立たなくなるが、上記の通り、その蛍光体濃度には上限があるため、実際に分散蛍光体層60に分散混入させる蛍光体61の量は、実験的に定められる。
【0040】
沈殿蛍光体層50を有する発光装置を実際に製造すると、蛍光体51の濃度分布は製品ごとに異なるため、沈殿蛍光体層50での蛍光体濃度のバラつき度合いに応じて、出射光の色度も製品ごとに異なる。しかしながら、分散蛍光体層60の蛍光体濃度を調整すれば、製品ごとの色度差を打ち消して、出射光の色度を許容範囲内に収めることができる。このため、沈殿蛍光体層50の上に分散蛍光体層60を配置することにより、製品の不良率を低下させることも可能である。
【0041】
なお、明度のムラを緩和させるのであれば、分散蛍光体層に代えて拡散層を配置することも考えられる。しかしながら、例えば局所的に青色光が多い部分がある場合には、拡散層でその青色光を拡散させても、色ムラはなくならない。この場合には、分散蛍光体層によって青色光に黄色光を加えた方が色ムラは目立たなくなるので、色ムラを緩和させるという目的のためには、拡散層ではなく分散蛍光体層を使用する方がよい。
【0042】
図6は、発光装置1の製造工程の例を示すフローチャートである。発光装置1の製造時には、まず、図3に示すように、回路基板20が貼り合わされた実装基板10の実装領域11上に、複数のLED素子30が実装される(S1)。そして、LED素子30同士がワイヤ31で接続され、各LED素子30は、ワイヤ31を介して配線パターン23A,23Bに接続される(S2)。次に、開口部21の縁部に沿って、回路基板20上に樹脂枠40が固定される(S3)。
【0043】
続いて、LED素子30からの光により励起される蛍光体51を含有する未硬化の封止樹脂で、全てのLED素子30が一体的に封止される(S4)。そして、封止樹脂の層を未硬化の状態に保ったままで、封止樹脂内の蛍光体51を実装基板10側に沈殿(沈降)させる(S5)。その後で、封止樹脂を硬化させることにより、沈殿蛍光体層50が形成される(S6)。最後に、LED素子30からの光により励起される蛍光体61を一様な濃度で含有する分散蛍光体層60で、沈殿蛍光体層50(封止樹脂)の上が覆われる(S7)。これにより、図1および図2に示す発光装置1が完成する。
【0044】
図7は、別の発光装置2の斜視図である。図8は、図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。発光装置2は、発光装置1の実装基板10と回路基板20がセラミック基板20’に替わっている点が発光装置1とは異なるが、その他は発光装置1と同じ構成を有する。セラミック基板20’は、その上面に配線パターンおよび接続電極24A,24Bが形成され、かつLED素子30が実装される平坦な基板であり、実装基板と回路基板を兼ねている。開口部がないセラミック基板20’を用いる場合でも、図8に示すように、発光装置1と同じ沈殿蛍光体層50と分散蛍光体層60を用いてもよい。発光装置2でも、発光装置1と同様に、分散蛍光体層60があることにより、沈殿蛍光体層50での蛍光体濃度のバラつきに起因する色ムラは目立たなくなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8