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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】害虫駆除装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/00 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
A01M1/00 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018010270
(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公開番号】P2019126306
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】浅野 英樹
【審査官】佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-186236(JP,A)
【文献】特開2007-289053(JP,A)
【文献】特開平06-276906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0345569(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴキブリを駆除するための害虫駆除装置であって、
ゴキブリが進入するための開口部を有する筐体と、
前記筐体の内部空間に紫外線を照射する光源部と、
を備え、
前記筐体には、前記光源部からの紫外線を反射する反射部材が設けられ
前記筐体は、ゴキブリ誘引用の誘引物を出し入れするための上面開口が形成された上面部を有する箱体と、前記上面開口を覆うキャップ状の部材である蓋と、を含み、
前記光源部は、前記蓋の天井面に設けられ、前記上面部よりも高い位置から下向に前記紫外線を発することを特徴とする害虫駆除装置。
【請求項2】
前記蓋の内面は、前記光源部からの紫外線を反射する反射材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の害虫駆除装置。
【請求項3】
前記反射部材はアルミニウムで形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の害虫駆除装置。
【請求項4】
前記反射部材の反射面は、粗面加工されていることを特徴とする請求項に記載の害虫駆除装置。
【請求項5】
前記反射部材は前記開口部を避けた位置に設けられることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の害虫駆除装置。
【請求項6】
本害虫駆除装置から漏れる紫外線量を低減するための遮光部材を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の害虫駆除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を用いた害虫駆除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴキブリなどの害虫を駆除する装置が知られている。例えば、特許文献1には、暗室箱に設けた紫外光ランプを点灯する事により、この暗室箱内に侵入したゴキブリに紫外光をあびさせて駆除するゴキブリ駆除機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-276906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、害虫駆除装置について以下の認識を得た。
害虫駆除に対するニーズは強い。例えば、オゾンを用いて小動物を排除することが考えられる。この場合、小動物がオゾンを感知し、オゾンの作用で回避行動させることにより、小動物を排除することができる。このような装置を設置することにより、その周辺で小動物の出現を防止することが可能と考える。しかし、小動物を駆除するわけではないので、広範囲で効果を出すためには多数の装置を設置することになる。換言すれば、広範囲で害虫対策するためには、排除では足りず効果的に駆除することが望ましい。
【0005】
また、特許文献1に記載の技術は、単に暗室箱内に侵入したゴキブリに紫外光をあびさせることに止まり、害虫を効果的に駆除するには十分とはいえない。
このことから、本発明者は、特許文献1に記載の害虫駆除装置には、害虫に効果的に紫外線を照射する観点で改善すべき課題があることを認識した。
【0006】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、害虫に効果的に紫外線を照射することが可能な害虫駆除装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の害虫駆除装置は、開口部を有する筐体と、筐体の内部空間に紫外線を照射する光源部と、を備える。筐体には、光源部からの紫外線を反射する反射部材が設けられる。
【0008】
この態様によると、光源からの直接光に加えて反射部材で反射させた反射光を害虫に照射することができる。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、害虫に効果的に紫外線を照射することが可能な害虫駆除装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る害虫駆除装置の一例を概略的に示す斜視図である。
図2図1の害虫駆除装置の蓋を開けた状態を概略的に示す斜視図である。
図3図1の害虫駆除装置のA-A線に沿った縦断面を概略的に示す断面図である。
図4図1の害虫駆除装置の電気回路の一例を示す回路図である。
図5】第2実施形態に係る害虫駆除装置の一例を概略的に示す斜視図である。
図6図5の害虫駆除装置を概略的に示す分解斜視図である。
図7図5の害虫駆除装置の断面を概略的に示す断面図である。
図8】第3実施形態に係る害虫駆除装置の一例を概略的に示す斜視図である。
図9】第4実施形態に係る害虫駆除装置の一例を概略的に示す斜視図である。
図10】ゴキブリを概略的に示す図である。
図11図10のゴキブリのD-D線に沿った断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者は、害虫駆除装置について研究し、以下の知見を得た。
以下、害虫としてゴキブリを例に説明する。ゴキブリを254nmの紫外線が当たる環境で2週間飼育し続けると、ほとんどの成虫が死滅することが判った。この間、ゴキブリは、紫外線を忌避するのではなく、自ら紫外線を浴びて死滅している。これは、ゴキブリ自身は紫外線を危険な光と認識していないか、この波長の光が見えない状況にあり、紫外線を長期間浴びることにより体内に異常をきたし、死に至るものと考えられる。この習性を利用してゴキブリを駆除することが考えられる。例えば、餌、フェロモン、温度などによってゴキブリを誘引し、そこに紫外線を照射する場所を提供することによって、そのゴキブリを駆除することが期待できる。
【0013】
さらに、本発明者は、昆虫のホルモン分泌器官であるアラタ体に着目した。図10は、ゴキブリを概略的に示す図である。図11は、ゴキブリのD-D線に沿った断面を概略的に示す図である。これらの図に示すように、アラタ体はゴキブリの脳の後側であって頭部と胴部の間に存在している。本発明者は、アラタ体に紫外線を作用させてその機能を阻害または昂進させることによりゴキブリを死滅させることを検討した。この結果、アラタ体に紫外線を作用させることにより成長ホルモンの異常分泌を促す効果が期待でき、特に、ゴキブリの頭部と胴部との間の間隙に多方向から紫外線を照射することにより高い駆除効果が得られるという知見を得た。また、幼虫の段階で胴部の腹側の柔らかい表皮を紫外線で硬化させ、脱皮を困難にすることにより死滅させる効果も期待できる。これらの場合、ゴキブリは、紫外線を浴びて直ちに死滅するケースより、巣などに戻ってやがて死滅するケースの方が多く観察された。
【0014】
本実施の形態は、このような知見に基づき完成されたものであり、害虫に効果的に紫外線を照射することができ、害虫の効率的な駆除を図ることができる。以下に具体的な構成と特徴を説明する。
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0016】
なお、以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含むものとする。また、「略」は、おおよその範囲で同一であるという意味である。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0017】
[第1実施形態]
図1図3を参照して、第1実施形態に係る害虫駆除装置100の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る害虫駆除装置100を概略的に示す斜視図である。図2は、害虫駆除装置100の蓋10fを開けた状態を概略的に示す斜視図である。図3は、害虫駆除装置100のA-A線に沿った縦断面を概略的に示す断面図である。
【0018】
以下、主にXYZ直交座標系をもとに説明する。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの正の方向は、各図における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。また、X軸に沿った方向を「左側」、「右側」と、Y軸に沿った方向を「前側」、「後側」と、Z軸に沿った方向を「上側」、「下側」ということがある。このような方向の表記は害虫駆除装置100の使用姿勢を制限するものではなく、害虫駆除装置100は、用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0019】
第1実施形態に係る害虫駆除装置100は、筐体10と、光源部20と、反射部材30と、遮光部材40と、を主に含む。筐体10は、内部空間10sを包囲する包囲部材として機能する。筐体10は、X軸方向寸法がY軸方向寸法より大きく、Z軸方向寸法がY軸方向寸法より小さい直方体の箱型形状を有する。この例では、X軸方向を「長手方向」ということがある。筐体10を備えることにより、光の漏れにくい限られた空間に集めた害虫に紫外線を効率的に照射することができる。筐体10は、紙や樹脂などの薄板状の素材で形成することができる。この例では、筐体10は、紙より耐久性に優れた樹脂製の薄板で形成されている。
【0020】
筐体10は、それぞれ内部空間10sに面する、正面部10aと、背面部10bと、一対の側面部10cと、上面部10dと、下面部10eと、蓋10fと、を有する。正面部10aと背面部10bとは内部空間10sを挟んでY軸方向に対向する。一対の側面部10cは内部空間10sを挟んでX軸方向に対向する。上面部10dと下面部10eは内部空間10sを挟んでZ軸方向に対向する。
【0021】
筐体10には、害虫が進入するための1または複数の開口部12が設けられる。この例では、開口部12は、X軸方向に対向する各側面部10cの下部に設けられた開口部12a、12bを含む。この例では、開口部12a、12bは、側面視矩形状の開口である。この開口のY軸方向幅は20mmで、Z軸方向高さは3mmである。
【0022】
筐体10の上面部10dには、誘引物42を出し入れするための上面開口10hが設けられる。この例では、上面開口10hは、X軸方向の略中央部に設けられた上面視で略矩形の開口部である。一例として、上面開口10hは、誘引物42を摘まんだ指を出し入れ可能な程度の大きさに形成される。
【0023】
筐体10の上面部10dには、上面開口10hを閉じるための蓋10fが設けられる。蓋10fは、筐体10本体に取り付けられて上面開口10hを開閉可能な扉状の部材であってもよいし、筐体10本体から取り外し可能な部材であってもよい。蓋10fは、上面開口10hの大きさにマージンを加えた大きさに形成される。一例として、蓋10fは、筐体10の内部が見えないように上面開口10hを覆う上面視略矩形の薄板体である。蓋10fのX軸方向に延びる一辺は、筐体10の本体に対して開閉自在に接続されていてもよい。
【0024】
害虫を効率的に駆除するためには、害虫を筐体10の内部に誘引することが望ましい。そこで、第1実施形態は、筐体10の内部に、餌などの誘引物42を載置するための載置部10gが設けられる。載置部10gは、蓋10fを開いた状態で、筐体10内部の誘引物42をセット可能な位置に設けられる。この例では、載置部10gは、下面部10eのX軸方向の略中央部に設けられた平坦な領域である。載置部10gは、誘引物42の大きさに十分なマージンを加えた大きさを備える。
【0025】
誘引物42は、害虫を吸引する効果を備えるものであれば特別な限定はない。一例として、誘引物42は、害虫の餌や吸引性フェロモン材などを含んでもよい。誘引物42は、長期間放置しても劣化が少ないことが望ましい。
【0026】
筐体10には、内部空間10sに紫外線20eを照射する光源部20が設けられる。光源部20は、単一波長の光を出力するようにしてもよいし、複数の波長の光を出力するようにしてもよい。この例では、光源部20は、250nm~320nmの紫外線を出力する。光源部20は、水銀ランプや紫外線LEDなど、様々な原理に基づく発光素子を含んでもよい。この例では、光源部20の発光素子22として紫外線を発光するLED(Light Emitting Diode)を採用している。このようなLEDとして、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系のLEDが知られている。
【0027】
光源部20は、筐体10内部の任意の位置に配置されてもよい。この例では、光源部20は、一方の側面部10cにおいて開口部12の上側に設けられる。光源部20からの紫外線20eは他方の側面部10cに向かって長手方向(X軸方向)に照射される。この場合、筐体10の長手方向に紫外線を出射することにより紫外線の利用効率を高めることができる。利用効率を高めることにより、少数の発光素子でも所望の紫外線量を得られるので、低コスト化、低消費電力化を図ることができる。
【0028】
害虫駆除装置100から外部に漏れる紫外線量は少ないことが望ましい。そこで、第1実施形態は、害虫駆除装置100から外部に放出される紫外線を低減するための遮光部材40を備える。遮光部材40を設けることにより、害虫駆除装置100から外部に漏れる紫外線量が低減され、紫外線漏れによる周辺の劣化を抑制することができる。遮光部材40は、筐体10の内部において開口部12に向かう紫外線20eを遮る位置と、開口部12から外部に放出される紫外線を遮る位置との少なくとも一方に設けられてもよい。この例では、遮光部材40は、筐体10の内部において、開口部12a、12bからX軸方向中央側に離れた位置に設けられた2つの遮光部材40a、40bを含む。遮光部材40a、40bは、Y軸方向に延びる長辺と、Z軸方向に延びる短辺と、を有する短冊状の薄板体である。遮光部材40の上端は、開口部12の開口上端よりも高く設定されてもよい。
【0029】
(反射部材)
駆除効果を高めるためには、多方向から害虫に紫外線を照射することが望ましい。そこで、第1実施形態は、筐体10内部に、光源部20からの紫外線20eを反射する高反射材料からなる反射部材30が設けられる。反射部材30を備えることにより、光源部20からの直接光に加えて、反射部材30で反射された反射光を害虫に照射することができる。また、複数の反射部材30の間で反射が繰り返されることによって、より多くの方向から紫外線を害虫に照射することができる。
【0030】
反射部材30は、筐体10の壁部とは別に設けられてもよいが、この例では、筐体10の内壁の一部または全部が反射部材30として機能する。特に、筐体10の内壁の一部または全部は高い紫外線反射率を有する高反射材料で形成されている。一例として、筐体10の内壁の一部または全部はアルミニウムで形成されてもよい。この例では、筐体10の樹脂製の壁の内面にアルミニウム層が積層されている。アルミニウム層は、アルミニウムフィルムを貼り付けて形成してもよいし、アルミニウムを蒸着などによって堆積させて形成されてもよい。アルミニウム層は、好ましくは下面部10eに、より好ましくはこれに加えて各側面部10cに、さらに好ましくはこれらに加えて上面部10dに、一層好ましくはこれらに加えて蓋10fに、備えてもよい。
【0031】
害虫に多方向から紫外線を照射するためには、筐体10内部に紫外線を拡散することが望ましい。そこで、第1実施形態は、反射部材30の反射面は粗面加工されている。粗面加工により、反射部材30の反射面のアルミニウム表面に微細な凹凸形状を形成し、紫外線を乱反射させることができる。紫外線を乱反射させることにより害虫の体表面の全体、特に頭部と胴部の間の隙間にも紫外線を照射することができる。また、滑りやすい鏡面に比べて、害虫の走行性が良くなり、害虫に不快感や警戒感を与えず、害虫が筐体10内部に滞在する時間を長くすることができる。
【0032】
粗面加工は例えば細かい凹凸からなるつや消し面(単に「消し面」と称されることもある)であってもよい。この凹凸は目視で確認できない程度の凹凸であってもよい。粗面加工は、例えば、アルミニウム箔を2枚重ねて圧延する重ね圧延によって箔と箔が接する内面に形成することができる。反射部材30の反射面は、粗面加工に加えて目視可能な大きさの凹凸を含んでもよい。つまり、反射面は複数の大きさの凹凸を含んでもよい。
【0033】
開口部12から漏れる紫外線を低減するために、開口部12およびその周辺を避けた位置に反射部材30を設けてもよい。
【0034】
害虫を効果的に誘引するためには、筐体10を加温することが望ましい。そこで、第1実施形態は、筐体10を加温するヒータ部14を備える。この例では、ヒータ部14は筐体10の下面部10eの下側に設けられている。特に、ヒータ部14は載置部10gの下部に設けられてもよい。ヒータ部14は通電されることにより発熱し、載置部10gとその周辺を加温する。ヒータ部14は、載置部10gを30℃~40℃程度に維持する機能を備えてもよい。ヒータ部14は、通電により発熱する抵抗体であってもよく、この抵抗体は載置部10gに固定されてもよい。
【0035】
次に、図4を参照して害虫駆除装置100の電気回路について説明する。図4は、害虫駆除装置100の電気回路の一例を示す回路図である。発光素子22に通電する回路は、ヒータ部14に通電する回路とは別々に設けられてもよいが、この例では、一体に設けられている。図4に示すように、発光素子22とヒータ部14とは直列接続されており、1つの電流源Giからの電流Idが流れる。この場合、回路が簡素化され、また省電力化を図ることができる。
【0036】
害虫駆除装置100の電源は、蓄電池や乾電池などの電池であってもよいし、商用AC電源であってもよい。
【0037】
以上のように構成された害虫駆除装置100は、少ない消費電力で使用することができる。一例として、発光素子22の消費電力を2Wとし、ヒータ部14の消費電力を1~2Wとし、全体の消費電力を4Wとすることができる。この場合、24時間使用しても1日当たりの電力量は96Whで、電力料金を抑えることができる。発光素子22としてLEDを採用することで長寿命駆動が可能である。また、モータなどの可動部品がないため、メンテナンスフリーの装置となり、長期間使用することが可能である。また、害虫駆除装置100は、紙製の筐体と粘着剤でゴキブリを捕獲する装置とは異なり、消耗品ではなく繰り返し使用することが可能であり、長い目で見た際には経済的である。また粘着剤で装置周辺を汚すこともないので、クリーンな環境を維持できる。
【0038】
また、毒餌を用いた駆除装置では一旦薬剤耐性をつけてしまうと、その子孫を含めて効果がなくなるのに対し、害虫駆除装置100では効果が継続的に維持される利点もある。害虫駆除装置100をゴキブリの通り道となる場所に設置した実験では、1ヶ月の使用によりゴキブリの視認回数は大幅に減少した。
【0039】
[第2実施形態]
図5図7を参照して、第2実施形態に係る害虫駆除装置200の構成について説明する。図5は、第2実施形態に係る害虫駆除装置200を概略的に示す斜視図である。図6は、害虫駆除装置200を概略的に示す分解斜視図である。図7は、害虫駆除装置200の縦断面を概略的に示す断面図である。害虫駆除装置200は、第1実施形態に係る害虫駆除装置100に対して、筐体210および蓋210fの構成が異なり、光源部20が蓋210fに設けられ、筐体210の内部に仕切部材46を備える点で相違し、その他の構成は同様である。したがって、重複する説明を省き、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0040】
筐体210は、X軸方向寸法がY軸方向寸法より大きく、Z軸方向寸法がY軸方向寸法より小さい箱型形状を有する。筐体210は、上面視において、長方形の各角に斜辺が形成された八角形の外周輪郭(以下、八角形Sという)を呈する。この八角形SはX軸方向に伸びる2つの長辺とY軸方向に伸びる2つの短辺と、長辺と短辺とを繋ぐ4つの斜辺とを有する。
【0041】
筐体210は、それぞれ内部空間10sに面する、正面部210aと、背面部210bと、一対の側面部210cと、上面部210dと、下面部210eと、蓋210fと、4つの斜面11c~11fと、を有する。正面部210aおよび背面部210bは、八角形Sの2つの長辺からZ軸方向に延在し、一対の側面部210cは、八角形Sの2つの短辺からZ軸方向に延在する。4つの斜面11c~11fは、八角形Sの4つの斜辺からZ軸方向に延在する。正面部210aと背面部210bとは内部空間10sを挟んでY軸方向に対向する。一対の側面部210cは内部空間10sを挟んでX軸方向に対向する。上面部210dと下面部210eは内部空間10sを挟んでZ軸方向に対向する。
【0042】
開口部12は、4つの開口部12c、12d、12e、12fを含む点で第1実施形態と相違する。4つの開口部12c~12fは、筐体210の4つの斜面11c~11fの下部に設けられる。この場合、害虫が筐体210内に入り込みやすく、駆除効果が高まることが期待される。
【0043】
筐体210の上面部210dには、誘引物42を出し入れするための上面開口210hが設けられる。この例では、上面開口210hは、上面視の筐体210の八角形Sと相似する八角形を呈する。
【0044】
蓋210fは、筐体210本体に対して着脱可能に設けられ、上面開口210hを覆うキャップ状の部材である。この例では、蓋210fは、上面開口210hの大きさに十分なマージンを加えた大きさに形成される。一例として、蓋210fは、上面視八角形の八角錐台形状を有する。蓋210fは、ドーム形状であってもよい。
【0045】
第2実施形態において、光源部20は、蓋210fの内側に設けられ、上面部210dよりも高い位置から下向(Z軸方向)に紫外線20eを発する。この場合、紫外線20eが低い位置から出射される場合より、下面部210eに届く光が広がり強度分布が平坦になる。この例では、光源部20は、蓋210fのX軸方向およびY軸方向の中央部分またはその近傍に配置されている。蓋210fの内面を高反射材料で形成することにより、凹面鏡のように作用させて強度分布を一層平坦にすることができる。また、本実施形態では紫外線20eが上方から放出され、下面部210eで反射されるので、より高い照度で害虫の胴体腹部側に紫外線が照射される。これにより、害虫の胴体腹部側の硬化作用を高め、脱皮を困難にすることができる。また、場所によっては、光源部20からの紫外線20eを害虫の頭部と胴体部の間の隙間に直接照射することができる。
【0046】
第2実施形態では、遮光部材40は、筐体210の内部において、各開口部12c~12fから中央側に離れた位置に設けられた4つの遮光部材40c~40fを含む。遮光部材40c~40fは、各斜面11c~11fに平行に延びる長辺と、Z軸方向に延びる短辺とを有する短冊状の薄板体である。
【0047】
害虫に紫外線を照射する時間を長くするために、害虫が筐体210内に滞在する時間は長いことが望ましい。そこで、害虫駆除装置200の内部には、害虫の目隠しとして機能する仕切部材46が設けられる。例えば、ゴキブリは暗くて狭い空間を好む傾向があり、仕切部材46は、空間を仕切ってゴキブリが好む狭い空間を形成することができる。この場合、ゴキブリにとって好ましい空間を提供し、ゴキブリの滞在時間を長くすることができる。
【0048】
仕切部材46の形状に特別な限定はない。この例では、仕切部材46は、下面部210eから上向に伸びる壁部材であり、壁面に垂直な方向から視て、Z軸方向の短辺を有する略矩形状の薄板状体である。仕切部材46の高さ寸法は、害虫(ゴキブリ)の高さ程度が好ましく、例えば3mmであってもよい。仕切部材46は、害虫が好むコーナ形状を形成するように、上面視でV字状の折り曲げ部が設けられている。図6の例では、仕切部材46は、載置部10gの周囲を囲むように配置された4つの仕切部材46a、46b、46c、46dを含む。仕切部材46a、46bは載置部10gを挟んで対向し、仕切部材46c、46dは載置部10gを挟んで対向している。仕切部材46は、樹脂製であってもよいし、表面にアルミニウム層を備えてもよいし、紙などその他の素材製であってもよい。
【0049】
以上のように構成された害虫駆除装置200は、害虫駆除装置100と同様の作用効果を奏する。
【0050】
[第3実施形態]
以下、図8を参照して、第3実施形態に係る害虫駆除装置300の構成について説明する。図8は、第3実施形態に係る害虫駆除装置300を概略的に示す斜視図である。害虫駆除装置300は、第1実施形態に係る害虫駆除装置100に対して、遮光部材40の構成が異なり、その他の構成は同様である。したがって、重複する説明を省き、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0051】
第3実施形態は、筐体10の外部に設けられた遮光部材40を有する点で第1実施形態と相違する。第3実施形態において、遮光部材40は、筐体10の開口部12a、12bから外側にX軸方向に離れた位置に設けられた遮光部材40h、40jを含む。遮光部材40h、40jは、Z軸方向に延びる短辺を有する短冊状の薄板体で、上面視において、筐体10から離れる方向に膨らんだ円弧状を呈する。遮光部材40hは、開口部12aに対応して設けられ、遮光部材40jは、開口部12bに対応して設けられる。図8の例では、筐体10は、下面部10eの外縁から外向きに張り出す張出部10mを備えており、遮光部材40h、40jは、張出部10m上に設けられている。張出部10mは、下面部10eと一体に形成されてもよいし、下面部10eとは別体の部材であってもよい。
【0052】
以上のように構成された害虫駆除装置300は、害虫駆除装置100と同様の作用効果を奏する。
【0053】
[第4実施形態]
以下、図9を参照して、第4実施形態に係る害虫駆除装置400の構成について説明する。図9は、第4実施形態に係る害虫駆除装置400を概略的に示す斜視図である。害虫駆除装置400は、第1実施形態に係る害虫駆除装置100に対して、開口部12および遮光部材40の構成が異なり、その他の構成は同様である。したがって、重複する説明を省き、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0054】
第4実施形態は、開口部12が筐体10の正面部10aの下部にX軸方向に離間して設けられる2つの開口部12m、12nを含み、遮光部材40が筐体10の外部に設けられる2つの遮光部材40m、40nを含む点で第1実施形態と相違する。図9の例では、開口部12m、12nは、正面部10a下部のX軸方向の両端部近傍に配置されている。
【0055】
遮光部材40m、40nは、開口部12m、12nにつながる通路Pを覆うトンネル状の部材である。この例では、遮光部材40m、40nは、下側が開放された角筒状の部材である。開口部12m、12nにつながる通路Pは途中で曲がっていてもよく、この場合、遮光部材40m、40nも通路に沿って曲がっていてもよい。図9の例では、筐体10は、下面部10eからY軸方向外向きに張り出す張出部10nを備えており、遮光部材40m、40nは、張出部10n上に設けられている。張出部10nは、下面部10eと一体に形成されてもよいし、下面部10eとは別体の部材であってもよい。
【0056】
以上のように構成された害虫駆除装置400は、害虫駆除装置100と同様の作用効果を奏する。
【0057】
以上、本発明の各実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0058】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0059】
実施形態の説明では、開口部12の数が2または4である例を示したが、開口部12の数に限定はなく、開口部12の数は1つ、3つまたは5つ以上であってもよい。
実施形態の説明では、誘引物を出し入れする開口を上面部に設ける例を示したが、開口を上面に設けることは必須ではない。例えば、誘引物を出し入れする開口は側面に設けられてもよい。
【0060】
実施形態の説明では、光源部20を側面側または上面側に設ける例を示したが、これに限定されない。例えば、光源部20は下面に設けられてもよい。
実施形態の説明では、一つの光源部20を備える例を示したが、これに限定されない。光源部20の数は2つ以上であってもよい。
実施形態の説明では、光源部20を筐体内に設ける例を示したが、これに限定されない。例えば、筐体とは別に設けた発光部からの紫外線を光ファイバーなどで筐体内に供給するようにしてもよい。この場合、一つの発光部から複数の筐体に紫外線を供給するようにしてもよい。
【0061】
実施形態の説明では誘引物42として餌を用いる例を示したが、餌を含めて誘引物42を用いることは必須ではない。
遮光部材40と仕切部材46の表面の一部または全部は、アルミニウムなどの高い紫外線反射率を有する高反射材料で形成されてもよい。
遮光部材40は、筐体内部に設けられるものと筐体外部に設けられるものの両方を含んでもよい。
【0062】
筐体内において害虫の存在を検知するセンサを備え、このセンサの検知結果に基づいて光源部20の発する紫外線量を制御するようにしてもよい。例えば、害虫の存在を検知していないときは光源部20の発光を停止するようにしてもよい。
【0063】
上述の各変形例は第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0064】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0065】
次に、本発明の一態様の概要について説明する。本発明のある態様の害虫駆除装置は、開口部を有する筐体と、筐体の内部空間に紫外線を照射する光源部と、を備え、筐体には、光源部からの紫外線を反射する反射部材が設けられる。この態様によれば、反射部材で反射させた反射光を害虫に照射することができる。特に、害虫の胴部の腹側の柔らかい表皮に紫外線を照射して表皮を硬化させ、脱皮を困難にして死滅させることができる。
【0066】
反射部材はアルミニウムで形成されてもよい。この場合、アルミニウムは紫外線の反射率が高く、反射時のエネルギーロスが少ないので、害虫の胴部の腹側に当たる紫外線量を増大することができる。
【0067】
反射部材の反射面は、粗面加工されてもよい。この場合、粗面加工された反射面で紫外線を乱反射して、害虫に多方向から紫外線を照射することができる。
【0068】
反射部材は開口部を避けた位置に設けられてもよい。この場合、開口部から外部に漏れる紫外線量を抑制することができる。
【0069】
光源部は、筐体の長手方向に沿って紫外線を出射するように配置されてもよい。この場合、光源部からの紫外線が内部空間の長手方向に沿って進行するため、直接光が当たる範囲が拡がり、紫外線の利用効率を高めることができる。
【0070】
本害虫駆除装置から漏れる紫外線量を低減するための遮光部材を備えてもよい。この場合、漏れた紫外線による周囲への影響を抑制することができる。
【符号の説明】
【0071】
10・・筐体、 10s・・内部空間、 12・・開口部、 14・・ヒータ部、 20・・光源部、 20e・・紫外線、 22・・発光素子、 30・・反射部材、 40・・遮光部材、 42・・誘引物、 46・・仕切部材、 100、200、300、400・・害虫駆除装置。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
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図11