IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特許-排水栓 図1
  • 特許-排水栓 図2
  • 特許-排水栓 図3
  • 特許-排水栓 図4
  • 特許-排水栓 図5
  • 特許-排水栓 図6
  • 特許-排水栓 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】排水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
E03C1/22 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018030159
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019143412
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】堀江 直也
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 和典
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0121385(KR,A)
【文献】特開平07-255626(JP,A)
【文献】特開平11-256650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の底面に形成された排水口に配設されており、前記底面に交差する軸線のまわりに回動することによって上下に動いて開栓および閉栓する栓蓋部を有する排水栓であって、
前記軸線を中心とする円周上において、前記軸線の軸方向に傾斜するように設けられたカム面と、前記カム面に接触する接触部とを備え、
前記カム面の勾配が閉栓状態から開栓方向に向かうにつれて急となるように形成されていることを特徴とする排水栓。
【請求項2】
前記栓蓋部は、一方向への回動により開栓し、他方向への回動により閉栓することを特徴とする請求項1に記載の排水栓。
【請求項3】
前記栓蓋部の表面に指掛部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の排水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
湯を溜める浴槽の底部に設けられる排水栓には、排水口を塞ぐゴム栓や、プッシュ式の栓が用いられている。例えば、特許文献1には、浴槽の底面に形成された排水口を覆う栓蓋部、栓蓋部を操作する操作部、および操作部の押操作を栓蓋部に伝達する伝達部を備えた排水栓が開示されている。栓蓋部は、操作部により遠隔操作されて排水口に対して上下動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2012-202083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、浴槽に泡を溜めて入浴する場合を考慮して、使用した泡の排出性能を高める、または単純に浴槽内の水の排水時間を短縮するために排水栓のサイズを大きくすると、浴槽に湯水を溜めて入浴する場合には、排水栓にかかる湯水の水圧が大きくなる。特許文献1に記載の排水栓は、排水栓のサイズを大きくすると、操作部における押操作が重くなってしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水圧負荷に対して操作性が良い排水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る排水栓は、浴槽の底面に形成された排水口に配設される栓蓋部を有する排水栓であって、前記栓蓋部は、前記底面に交差する軸線のまわりに回動することによって上下に動いて開栓および閉栓することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排水栓は、水圧負荷に対して操作性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る排水栓を含む浴槽の外観を示す斜視図である。
図2】排水栓部分の縦断面図である。
図3】排水栓の分解斜視図である。
図4】栓蓋部の下方側から見た斜視図である。
図5】栓蓋部の側面図である。
図6図6(a)から図6(c)は、排水栓の動きを説明するための模式図である。
図7】変形例に係る栓蓋部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図7を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0010】
(実施形態)
図1は本発明の実施形態に係る排水栓1を含む浴槽8の外観を示す斜視図であり、図2は排水栓1部分の縦断面図である。浴槽8は、底面81に排水口82が設けられており、排水口82の下部に排水部9が接続されている。排水口82は、底面81から一段下がった底部81aを貫通する貫通孔として形成されている。排水栓1は、浴槽8の排水口82を覆うように配設されている。排水栓1は、開栓状態で浴槽8内の湯水を排水管側へ排出し、閉栓状態で排水口82を塞ぎ浴槽8に湯水を溜める。
【0011】
排水部9は、トラップ部91、排水管92およびオーバーフロー配管93等を備える。浴槽8の下方には浴槽8の湯水が外部に漏れないよう浴槽パン83が設けられており、排水部9は、浴槽パン83の内部であって、浴槽8と浴槽パン83との間の空間に配設されている。トラップ部91は、トラップ本体91aの内部に封水筒体91bが配置され、トラップ本体91aの側方へ排水する。封水筒体91bは、排水口82からの排水をトラップ本体91aに流下させて、トラップ本体91aに水が溜まった状態に保つ。トラップ部91は、排水口82との取付箇所において漏水しないようにパッキン等で水密に封止されている。
【0012】
トラップ部91からの排水は、浴槽パン83を貫通して外部に延びる排水管92を通して外部に排出される。浴槽パン83は、排水管92が貫通する箇所において漏水しないようにパッキン等で水密に封止されている。トラップ部91にはオーバーフロー配管93の一端部が接続されている。オーバーフロー配管93は、浴槽8に設けられたオーバーフロー栓(図示略)に他端部で接続されており、該オーバーフロー栓からの湯水をトラップ部91へ通流させ、排水管92を通して排出する。
【0013】
排水栓1は、フランジ部10および栓蓋部20を有しており、フランジ部10にトラップ部91の封水筒体91bが取り付けられる。図3は排水栓1の分解斜視図である。フランジ部10は、円筒状をなし、胴部11の上端部に外向きに張り出す円環板状の上端縁12、および胴部11の下端部に内向きに張り出す円環板状の下端縁13を有する。胴部11の下端部の外周には雄螺子14が形成されている。フランジ部10は、雄螺子14をトラップ部91の対応する孔の内周に形成された雌螺子に螺合させることにより、上端縁12の下面が浴槽8の底部81aに接触し固定される(図2参照)。また、トラップ部91の封水筒体91bは、上方から下端縁13へ挿入するようにして取り付けられる。
【0014】
フランジ部10の胴部11の内周面には、内向きに突起し、後述する栓蓋部20のカム部22に接触する接触部15が形成されている。接触部15は、胴部11の内周面を周方向に4等分する4箇所に設けられており、上面15aにより栓蓋部20におけるカム部22のカム面22aに接触する。
【0015】
栓蓋部20は、円形板状をなす蓋体21、および蓋体21の下面21bに設けたカム部22を有する。蓋体21には、浴槽8の内側に臨む表面21aを穿つようして凹状に形成した指掛部21cが設けられている。指掛部21cは、蓋体21の中心を含み半径方向に延び、周縁部の一部を切り欠くように形成されている。
【0016】
図4は栓蓋部20の下方側から見た斜視図であり、図5は栓蓋部20の側面図である。カム部22は、蓋体21と同軸の円筒を下方側から切欠き、下方に臨むカム面22aを形成している。カム部22の外周面の直径は、フランジ部10の胴部11の内周面の直径よりもやや小さい。カム面22aは、円周方向に4等分した各円弧において同一の形状となっている。カム面22aは、一端部22bから他端部22cへ向かうにつれて栓蓋部20の軸線方向、即ち蓋体21およびカム部22の軸線方向の下方側へ向かうように傾斜している。
【0017】
カム面22aは、一端部22bでの勾配は緩やかであり、一端部22bから他端部22cへ向かうにつれて勾配が急となる。カム面22aの一端部22bにおける勾配は、ほぼ水平に等しい。排水栓1は、カム面22aの一端部22bにフランジ部10の接触部15が接触しているときに閉栓状態となり、カム面22aの他端部22cに接触部15が接触しているときに開栓状態となる。接触部15が接触するカム面22aの勾配は、閉栓状態においては緩やかであり、閉栓状態から開栓方向に向かうにつれて急となっている。栓蓋部20は、その軸線が浴槽8の底面81に交差しており、軸線まわりに回動させることによって、接触部15がカム面22aを滑り、上下動するように機能する。
【0018】
カム面22aの他端部22c側の角には下方へ突起する回転規制部22dが設けられており、該回転規制部22dにフランジ部10の接触部15が接触して止まる。他端部22cにおいて、回転規制部22dの手前にはカム面22aが水平となる平坦部分を接触部15の幅寸法分設けてあり、該平坦部分を挟んで回転規制部22dよりも下方への突起の程度が小さい突起部22eが設けられている。
【0019】
カム面22aの一端部22bは、隣り合う他端部22cの基端部22fが下方に延びるように形成されており、該基端部22fにフランジ部10の接触部15が接触して止まる。
【0020】
栓蓋部20の蓋体21におけるカム部22の外側の下面21bは、閉栓状態において、フランジ部10の上端縁12の上面12aに僅かな隙間を空けて対向する。栓蓋部20は、蓋体21の下面21bにおけるカム部22の外側に円環状のパッキン30(図2参照)を設け、上端縁12との間を水密に封じる。
【0021】
次に排水栓1の動作について説明する。上述のように、排水栓1のフランジ部10は、浴槽8の排水口82に固定されている。栓蓋部20は、フランジ部10の胴部11にカム部22を上方から挿入するようにして取り付けられる。フランジ部10の胴部11に形成された接触部15は、栓蓋部20のカム面22aに接触している。栓蓋部20は、その軸線が浴槽8の底面81に交差しており、軸線まわりに回動させることによって、接触部15がカム面22aを滑り、上下動する。
【0022】
図6(a)から図6(c)は、排水栓1の動きを説明するための模式図である。図6(a)に示す状態においては、フランジ部10の胴部11に設けられた接触部15がカム面22aの一端部22bに接触し、栓蓋部20の蓋体21がフランジ部10の上端縁12の上面12aに最も接近し、パッキン30によって閉栓状態となる。
【0023】
栓蓋部20を浴槽8側から見て左回りに回動(半時計方向へ回動)させると、図6(b)に示すように、接触部15のカム面22aにおける接触位置が変わり、栓蓋部20が上昇する。栓蓋部20が上昇し、パッキン30がフランジ部10の上端縁12の上面12aから離れることにより、排水栓1が開き、浴槽8の湯水が排水され始める。排水栓1は、栓蓋部20を水圧負荷に抗して直接持ち上げて上昇させるのではなく、栓蓋部20を回動させることによって、カム動作によって栓蓋部20が持ち上がるので、水圧負荷に対して操作性が良い。
【0024】
また、栓蓋部20を閉栓状態から開栓方向へ回動させる際の動き始めにおいて、カム面22aの勾配が一端部22bにおいて緩やかであるため、栓蓋部20の上昇量が小さく、浴槽8に溜められた湯水による水圧負荷の影響を受け難いので、動き出しが滑らかになり、操作性が更に良くなる。
【0025】
栓蓋部20を回動させることによって、排水栓1が開き始めると、浴槽8に溜められた湯水の水圧負荷が排水口82へ逃げるため、栓蓋部20にかかる水圧負荷は軽減される。図6(b)に示す状態から、更に栓蓋部20を浴槽8側から見て左回りに回動させると、接触部15が接触するカム面22aの勾配が徐々に急となっていくが、開栓によって栓蓋部20にかかる水圧負荷は軽減された状態となっているので、回動させ易く操作性が良い。
【0026】
栓蓋部20の回動は、接触部15が突起部22eを乗り越え、図6(c)に示すように回転規制部22dに接触した状態で止まり、排水栓1が完全に開いた開栓状態となる。接触部15は、回転規制部22dおよび突起部22eの間に位置することで、回転規制部22dおよび突起部22eによって両方向への回動が制限される。
【0027】
排水栓1を閉栓状態にするには、栓蓋部20を逆方向、即ち浴槽8側から見て右回りに回動(時計方向へ回動)させる。接触部15が突起部22eを乗り越えるだけの操作力をかけると、接触部15がカム面22aに接触しつつ栓蓋部20が回転し、図6(b)に示す状態を経て、図6(a)に示す閉栓状態に戻る。接触部15は、カム面22aの一端部22bにおいて、隣り合う基端部22fに接触した状態で止まる。
【0028】
排水栓1は、開栓する際に一方向、即ち浴槽8側から見て左回りに栓蓋部20を回動させ、閉栓する際に他方向、即ち浴槽8側から見て右回りに栓蓋部20を回動させるように構成されている。これにより、排水栓1は、栓蓋部20の回動操作が単純で判り易く、ユーザの利便性が向上する。
【0029】
また、排水栓1は、閉栓状態および開栓状態において、栓蓋部20を回転させる操作をしない限り、上下方向には動かないので、栓蓋部20の上下方向の位置が安定する。
【0030】
栓蓋部20の浴槽8の内側を望む表面21aに指掛部21cが設けられているので、排水栓1は、ユーザが指掛部21cに手指を掛けて栓蓋部20を回動操作させることができる。指掛部21cは、上述のように蓋体21の中心を含み半径方向に延び、周縁部の一部を切り欠くように形成されている。ユーザは、例えば、指掛部21cの蓋体21の中心付近と周縁部とに手指を掛け、周縁部を回動操作する方向へ力を与えつつ、中心付近を抑えるように力を与えることで、容易に栓蓋部20を回動させることができる。
【0031】
次に、実施形態の排水栓1の特徴を説明する。
本発明の実施形態の排水栓1は、浴槽8の底面81に形成された排水口82に配設される栓蓋部20を有する。栓蓋部20は、底面81に交差する軸線のまわりに回動することによって上下に動いて開栓および閉栓する。これにより、排水栓1は、栓蓋部20を回動させることによって、カム動作によって栓蓋部20が持ち上がるので、水圧負荷に対して操作性が良い。
【0032】
また栓蓋部20は、一方向への回動により開栓し、他方向への回動により閉栓する。これにより、排水栓1は、栓蓋部20の回動操作が単純で判り易く、ユーザの利便性が向上する。
【0033】
また栓蓋部20は、蓋体21の表面21aに指掛部21cが設けられている。これにより、排水栓1は、ユーザが指掛部21cに手指を掛けて栓蓋部20を回動操作させることができる。
【0034】
また排水栓1は、栓蓋部20の軸線を中心とする円周上において、軸線の軸方向に傾斜するように設けられたカム面22aと、カム面22aに接触する接触部15とを備える。カム面22aの勾配は、閉栓状態から開栓方向に向かうにつれて急となるように形成されている。これにより、排水栓1は、閉栓状態から開栓方向へ回動させる際の動き出しが滑らかになり、操作性が良くなる。
【0035】
(変形例)
図7は、変形例に係る栓蓋部20の側面図である。この変形例における栓蓋部20は、カム面22aの他端部22cに形成した回転規制部22dの先端部を更に一端部22b方向へ屈曲させたものである。栓蓋部20は、開栓状態において、上方へ抜き去るような力が加わっても、接触部15の下側が回転規制部22dの先端部に掛かって上方向へ抜け出さないようになっている。
【0036】
上述の実施形態および変形例では、栓蓋部20にパッキン30を設けているが、フランジ部10側にパッキン30を設けるようにしてもよい。また、栓蓋部20に設けられているカム部22をフランジ部10の胴部11の内周面に設け、フランジ部10の胴部11に設けられている接触部15を栓蓋部20に設けるようにしてもよい。
【0037】
また、上述の実施形態および変形例では、カム面22aの勾配は、一端部22b側で緩やかであり、他端部22c側に向かうにつれて急になるようにしているが、一端部22b側から他端部22c側にかけて勾配が一定であってもよい。
【0038】
また、栓蓋部20の蓋体21の表面21aに設けた指掛部21cは、ユーザが手指を掛けて、栓蓋部20を回動させることができるものであれば、実施形態に示した形態に限られない。指掛部21cは、例えば、凸状に設けてもよいし、大きさや長さを変更し、蓋体21の表面に複数設けるようにしてもよい。
【0039】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0040】
1 排水栓、 15 接触部、 20 栓蓋部、 21c 指掛部、
22a カム面、 8 浴槽、 81 底面、 82 排水口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7