(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】レーザチャンバにおける背景赤外線の光フィードバック信号補正
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20220225BHJP
B23K 26/324 20140101ALI20220225BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/324
G01J1/42 D
G01J1/42 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018043015
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2021-01-26
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501410126
【氏名又は名称】ブランソン・ウルトラソニックス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スコット・コールドウェル
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-012590(JP,A)
【文献】特表2016-540109(JP,A)
【文献】特開2000-230899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/324
G01J 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードバック信号を有する閉ループフィードバック制御を使用するコントローラを持つレーザ溶接システムのレーザチャンバ内に位置している赤外レーザ光源を制御する方法にして、レーザ溶接システムがレーザチャンバ内の赤外線を感知するように位置している光学センサを含む方法であって、
赤外レーザ光源がオンにされるより前に、コントローラに、レーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知させるステップと、
いったんレーザ光源がオンになれば、コントローラに、レーザチャンバ内の赤外線の強度を光学センサで感知させるステップと、
レーザ光源がオンである時の赤外線の感知された強度から、赤外レーザ光源がオフであった時のレーザチャンバ内の背景赤外線の感知された強度を減算することによって、補正フィードバック信号をコントローラで計算するステップと、
閉ループフィードバック制御のフィードバック信号として補正フィードバック信号を用いて閉ループフィードバック制御によって、赤外レーザ光源がオンである場合に、コントローラで赤外レーザ光源の強度を制御するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
赤外レーザ光源がオンにされることになるたびに、コントローラに、赤外レーザ光源がオンにされる直前のレーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
赤外レーザ光源がオンにされることになるたびに、コントローラに、赤外レーザ光源がオンにされる前の時間期間内にレーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知させ、ここに、時間期間が、レーザ溶接システムが連続生産を実行している場合に赤外レーザ光源が溶接サイクル時にオフにされる時と赤外レーザ光源が次の溶接サイクル時にオンにされる時との間で赤外レーザ光源がオフである時間期間に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
赤外線レーザ溶接システムであって、
赤外レーザ光源が位置しているレーザチャンバと、
レーザチャンバ内の赤外線の強度を感知するように位置している光学センサと、
赤外レーザ光源および光学センサに連結されるコントローラであって、
赤外レーザ光源がオンである時に、コントローラが計算するように構成される補正フィードバック信号による閉ループフィードバック制御を使ってレーザ光源の出力強度を制御するように構成され、
赤外レーザ光源がオフであった時にレーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知していることによって補正フィードバック信号を計算するように構成され、赤外レーザ光源がオンである時にレーザチャンバ内の赤外線の強度を光学センサで感知し、かつ、レーザ光源がオンである時のレーザチャンバ内の赤外線の感知された強度から、赤外レーザ光源がオフであった時のレーザチャンバ内の背景赤外線の感知された強度を減算することによって補正フィードバック信号を計算する、コントローラと、
を備える、赤外線レーザ溶接システム。
【請求項5】
赤外レーザ光源がオンにされるたびに、コントローラが、赤外レーザ光源がオンにされる直前にレーザチャンバ内の背景赤外線の強度を感知するように構成される、請求項4に記載のレーザ溶接システム。
【請求項6】
赤外レーザ光源がオンにされることになるたびに、コントローラが、赤外レーザ光源がオンされる前の時間期間内にレーザチャンバ内の背景赤外線の強度を感知するように構成され、ここに、時間期間が、レーザ溶接システムが連続生産を実行している場合に赤外レーザ光源が溶接サイクルの終わりに向かってオフにされる時と赤外レーザ光源が次の溶接サイクルの始めに向かってオンにされる時との間で赤外レーザ光源がオフである時間期間に等しい、請求項4に記載のレーザ溶接システム。
【請求項7】
レーザ溶接システムのレーザチャンバ内に位置している赤外レーザ光源を有するレーザ溶接システムにおけるプラスチック部品の溶接方法にして、赤外レーザ光源が閉ループフィードバック制御を使用するコントローラによって制御され、レーザ溶接システムがレーザチャンバ内の赤外線を感知するように位置している光学センサを含む方法であって、
プラスチック部品をレーザ溶接システムに配置するステップと、
赤外レーザ光源がオンにされるより前に、コントローラに、レーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知さるステップと、
コントローラにレーザ光源をオンにさせるステップと、
レーザ光源がいったんオンになれば、コントローラに、レーザチャンバ内の赤外線の強度を光学センサで感知させるステップと、
レーザ光源がオンである時の赤外線の感知された強度から、赤外レーザ光源がオフであった時のレーザチャンバ内の背景赤外線の感知された強度を減算することによって、補正フィードバック信号をコントローラで計算するステップと、
閉ループフィードバック制御のフィードバック信号として補正フィードバック信号を用いて閉ループフィードバック制御によって、赤外レーザ光源がオンである時に、コントローラで赤外レーザ光源の強度を制御するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
赤外レーザ光源がオンにされることになるたびに、コントローラに、赤外レーザ光源がオンにされる直前のレーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
赤外レーザ光源がオンにされることになるたびに、コントローラに、赤外レーザ光源がオンにされる前の時間期間内にレーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知させ、ここに、時間期間が、レーザ溶接システムが連続生産を実行している場合に赤外レーザ光源が溶接サイクル時にオフにされる時と赤外レーザ光源が次の溶接サイクル時にオンにされる時との間で赤外レーザ光源がオフである時間期間に等しい、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2017年4月7日に出願された米国仮特許出願第62/482,714号の利益を主張するものである。上記の出願の開示全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、レーザ溶接に関する。
【背景技術】
【0003】
この節は、必ずしも従来技術であるとは限らない本開示と関係がある背景情報を提供する。
【0004】
レーザ溶接は、一般に、プラスチック部品を一緒に溶接するために使用される。2つの知られている技術は、追跡レーザ溶接および同時レーザ溶接である。追跡レーザ溶接においては、スポットレーザが、レーザ装置および/またはレーザビーム、ワークピース、またはそれらの組み合わせの移動によって溶接パスを追う。溶接パスは、2つの部品が溶接界面で一緒に溶接される場所であり、たとえば、部品の周囲に隣接して延在する線であってもよい。同時レーザ溶接においては、全溶接パスまたは領域(本明細書においては溶接パスと呼ばれる)が、たとえばレーザダイオードなどの複数のレーザ光源の座標アラインメントを通して、または光導波路を通してのような場合など、同時にレーザ光にさらされる。同時レーザ溶接の一例においては、レーザ光は、レーザダイオードなどの複数のレーザ光源から、溶接パスに沿って接合されている部品の表面の輪郭に一致する1つまたは複数の光導波路を通して溶接されている部品に伝送される。
【0005】
追跡レーザ溶接システムおよび同時レーザ溶接システムの両方において、レーザは、閉ループフィードバックを用いて制御されることが多い。透過赤外線(「TTIr」)レーザ溶接システムのための閉ループフィードバック制御システムは、本出願と同じ人の所有であるレーザプラスチック溶接のための自動部品フィードバック補正(Automatic Part Feedback Compensation for Laser Plastics Welding)について米国特許第7343218号明細書に開示されている。米国特許第7343218号明細書の全開示は、参照により本明細書に組み込まれている。米国特許第7343218号明細書の
図2および
図4は、本明細書において
図1および
図2として含まれている。
図1を参照すると、フィードバック制御システム10は、赤外レーザ光源14から下流のレーザ光の強度を監視するようにTTIrレーザ溶接システム11にフィードバック情報を提供するために使用される。フィードバック制御システム10は、レーザ光源14から下流に、しかし互いに対して当接関係にあるレーザ溶接システム11に受け入れられるプラスチック部品22、24から上流に配置される赤外線を感知する光学センサ16を備える。プラスチック部品22は、例示的には、透過性プラスチック部品22であり、プラスチック部品24は、例示的には、レーザ光が出射されるレーザ光源14およびコントローラ17に対して少なくとも部分的に吸収性の吸収性プラスチック部品である。プラスチック部品24は、レーザ光を少なくとも部分的に吸収する材料で作られることができ、吸収率は、プラスチック部品22、24、またはその両方の間の溶接界面に配置される吸収性の溶接添加剤によって提供されることを理解されたい。一例においては、レーザ光源14は、赤外レーザダイオードであり、光学センサ16は、フォトダイオードである。コントローラ17は、光学センサ16に連結され、レーザ光源14からのレーザ光の強度に起因する光学センサ16による赤外線強度感知をリアルタイムで光学センサ16から受信する。コントローラ17は、レーザ光源14に連結され、レーザ光源14の出力強度を制御する。
【0006】
ある場合には、光学センサ16は、光ファイバ部材18および/または導波路20の上流に配置されることができ、あるいは光ファイバ部材18のうちの1つまたは複数の、および導波路20の下流に配置され得る。換言すれば、光学センサ16は、レーザ光源14と部品22との間の任意の位置に配置され得る。
【0007】
いくつかのレーザ溶接システムにおいては、光学センサ16は、レーザ光源14が位置しているレーザチャンバ内の赤外線の強度を感知するように位置している。
図2に示されるように、レーザ光源14は、レーザチャンバ26内に位置している。光学センサ16は、レーザ光源14によって提供されるレーザ光の強度を感知するようにレーザチャンバ26内の赤外線の強度を感知する。
図2の例においては、レーザ光源14はレーザダイオードであり、光学センサ16はフォトダイオードであり、レーザチャンバ26はレーザダイオードチャンバである。
【0008】
レーザチャンバ内の赤外線の強度を感知することによってレーザ光源14によって提供されるレーザ光の強度をレーザチャンバ内で感知する際の難点は、レーザチャンバ内の背景赤外線に起因する。すなわち、レーザ光を出射するレーザ光源の付随的な効果は、レーザチャンバの本体、その中の空気、およびその中の構成要素が、レーザ光がレーザチャンバの本体に衝突する際にレーザ光によって加熱されることである。レーザチャンバの加熱された本体、レーザチャンバ内の加熱された空気、およびチャンバ内の加熱された構成要素は、背景赤外線を放射する。光学センサによって感知されるレーザチャンバ内の赤外線の強度は、レーザ光源によって出射されるレーザ光からの赤外線の強度と背景赤外線の強度との和であるので、この背景赤外線により、光学センサの読み取り値が高すぎることになり、すなわちレーザ光源14によって出射されるレーザ光の強度よりも高いことになる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、レーザ溶接システムの閉ループフィードバック制御システムにおいて、レーザチャンバ内の背景赤外線を補正することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この節は、開示の一般的な概要を提供するものであり、その全範囲あるいはその特徴のすべてを包括的に開示しているものではない。
【0012】
本開示の一態様によれば、プラスチック部品は、レーザ溶接システムにおいて溶接される。レーザ溶接システムは、レーザ溶接システムのレーザチャンバ内に位置している赤外レーザ光源を有する。赤外レーザ光源は、フィードバック信号を有する閉ループフィードバック制御を使用するコントローラによって制御される。レーザ溶接システムは、レーザチャンバ内の赤外線を感知するように位置している光学センサを含む。赤外レーザ光源がオンにされるより前に、コントローラは、レーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知する。いったんコントローラがレーザ光源をオンにすれば、コントローラは、レーザチャンバ内の赤外線の強度を光学センサで感知し、レーザ光源がオンである時の赤外線の感知された強度から、赤外レーザ光源がオフであった時のレーザチャンバ内の背景赤外線の感知された強度を減算することによって、補正フィードバック信号を計算する。コントローラは、閉ループフィードバック制御のフィードバック信号として補正フィードバック信号を用いて閉ループフィードバック制御によって赤外レーザ光源がオンである時の赤外レーザ光源の強度を制御する。
【0013】
一態様においては、赤外レーザ光源がオンにされることになるたびに、コントローラは、赤外レーザ光源がオンにされる直前のレーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知する。
【0014】
一態様においては、赤外レーザ光源がオンにされることになるたびに、コントローラは、赤外レーザ光源がオンにされる前の時間期間内にレーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知し、ここに、時間期間は、レーザ溶接システムが連続生産を実行している場合に赤外レーザ光源が溶接サイクル時にオフにされる時と赤外レーザ光源が次の溶接サイクル時にオンにされる時との間で赤外レーザ光源がオフである時間期間に等しい。
【0015】
適用性のさらなる領域は、本明細書において提供される説明から明らかになるであろう。この概要における説明および特定の例は、説明のためだけに意図されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0016】
本明細書において説明される図面は、選択された実施形態の例示のみを目的としており、全ての可能な実施形態ではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】閉ループフィードバック制御を用いた従来技術の透過赤外線溶接システムを示す概略図である。
【
図2】フォトダイオードおよび赤外レーザダイオードを有する従来技術のレーザダイオードチャンバを示す斜視図である。
【
図3】本開示の一態様による、レーザチャンバ内の背景赤外線を補償するための補正フィードバック信号の計算を含む制御ルーチンのフローチャートである。
【
図4】
図3の補正フィードバック信号による閉ループフィードバック制御を用いた透過赤外線溶接システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
対応する参照数字は、図面のいくつかの図を通して対応する部品を示している。
【0019】
次に、例示的な実施形態が、添付の図面を参照してより完全に説明されることになる。
【0020】
例示的な実施形態は、この開示が完全であるようになり、その範囲を当業者に完全に伝えることになるように提供される。本開示の実施形態の完全な理解を提供するように、特定の構成要素、デバイス、および方法の例などの、非常に多くの具体的な詳細が示されている。具体的な詳細は用いられる必要はなく、例示的な実施形態は多くの異なる形態で具体化されることができ、どちらも本開示の範囲を限定するものと解釈すべきでないことが、当業者には明らかであろう。いくつかの例示的な実施形態においては、周知のプロセス、周知のデバイス構造、および周知の技術は、詳細には説明されていない。
【0021】
本明細書において使用される専門用語は、特定の例示的な実施形態を説明する目的のためだけであり、限定することを意図するものではない。本明細書において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、前後関係より他の意味であることが明白な場合を除き、複数形も含むことが意図され得る。用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」は、包括的であり、したがって述べられた構成、完全体、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を明示しているが、1つもしくは複数の他の構成、完全体、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在もしくは追加を除外するものではない。本明細書において説明された方法のステップ、プロセス、および操作は、特に実行の順序として認識されない限り、説明されまたは図示された特定の順序でそれらの実行を必然的に要求していると解釈されるべきではない。また、付加的または代替的なステップが用いられ得ることも理解されたい。
【0022】
ある要素または層が、もう1つの要素または層「の上に(on)」あり、これ「に係合される(engaged to)」、これ「に接続される(connected to)」、またはこれ「に連結される(coupled to)」と呼ばれる場合は、これは、直接的に他の要素または層の上にあり、これに係合され、これに接続され、またはこれに連結されてもよく、あるいは介在する要素または層が存在してもよい。対照的に、ある要素がもう1つの要素または層「の上に直接的に」あり、これ「に直接的に係合される」、これ「に直接的に接続される」、またはこれ「に直接的に連結される」と呼ばれる場合は、いかなる介在要素または層も存在しない可能性がある。要素間の関係を説明するために使用される他の単語(たとえば、「の間に(between)」対「の間に直接的に(directly between)」、「隣接した(adjacent)」対「直接的に隣接した(directly adjacent)」、等)は、同じように解釈されるべきである。本明細書において使用される場合、用語「および/または(and/or)」は、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数の任意のおよび全ての組み合わせを含む。
【0023】
用語第1の(first)、第2の(second)、第3の(third)、等は、さまざまな要素、構成要素、領域、層および/または部分を説明するために本明細書において使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層および/または部分は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、または部分をもう1つの領域、層または部分と区別するためにのみ使用され得る。「第1の」、「第2の」、および他の数値的な用語のような用語は、本明細書において使用される場合、前後関係によって明白に示されない限り、シーケンスまたは順序を意味しない。したがって、以下で説明される第1の要素、構成要素、領域、層、または部分は、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、または部分と呼ばれることもできる。
【0024】
「内側の(inner)」、「外側の(outer)」、「のすぐ下に(beneath)」、「の下に(below)」、「下方の(lower)」、「の上に(above)」、「上部の(upper)」、等などの空間的に相対的な語は、説明しやすくするために、図に示されるように別の要素(複数の要素)または構成(複数の構成)に対するある要素または構成の関係を説明するために本明細書において使用され得る。空間的に相対的な語は、図に描かれている向きに加えて、使用または操作時の装置の異なる向きを包含するように意図され得る。たとえば、図中の装置がひっくり返されるならば、その場合、他の要素または構成「の下に(below)」または「のすぐ下に(beneath)」として説明される要素は、他の要素または構成「の上に(above)」向けられることになる。したがって、例示的な用語「の下に(below)」は、の上に(above)およびの下に(below)の向きの両方を包含することができる。本装置は、別様に向けられ(90度または他の向きに回転され)てもよく、本明細書において使用される空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈され得る。
【0025】
本開示の一態様によれば、レーザ溶接システムのレーザチャンバ内の背景赤外線に対して補正される補正フィードバック信号による閉ループフィードバック制御は、レーザチャンバ内に位置している赤外レーザ光源を制御するために使用される。一態様においては、レーザ光源は、赤外レーザダイオードである。レーザ溶接システムは、レーザチャンバ内の赤外線の強度を感知し、感知された強度を示すコントローラへの出力信号を提供するように位置している光学センサを有する。出力信号は、使用される光学センサに応じて、アナログ信号またはディジタル化された値であってもよい。一態様においては、光学センサは、フォトダイオードである。とりわけ、コントローラは、赤外レーザ光源を制御する。赤外レーザ光源がオンにされるより前に、コントローラは、レーザチャンバ内の背景赤外線の強度を光学センサで感知する。いったんレーザがオンになれば、コントローラは、レーザチャンバ内の赤外線の強度を光学センサで感知する。赤外レーザ光源がオンであると、コントローラは、レーザチャンバ内の背景赤外線を補償する補正フィードバック信号による閉ループフィードバック制御を用いて赤外レーザ光源を制御する。コントローラは、赤外レーザ光源がオンである時に感知された赤外線の強度から、赤外レーザ光源がオフであった時に感知された背景赤外線の強度を減算することによって、補正フィードバック信号を計算する。レーザ光源がオンである時の赤外線の強度は、レーザ光源がオンである間中にリアルタイムで感知され、補正フィードバック信号は、レーザ光源がオンである時にリアルタイムで更新されることを理解されたい。本明細書で使用される場合、「リアルタイム」は、制御の閉ループが動作するのと同じくらい速い、すなわち制御の閉ループのサイクルタイムを意味する。限定ではなく例示として、レーザ溶接システムの制御に使用される制御の閉ループのサイクルタイムは、1ミリ秒から1マイクロ秒までの範囲にわたることができ、コントローラの処理速度、フィードバックセンサの応答時間、等などのレーザ溶接システムの特性に依存する。この制御方法論は、
図1のフィードバック制御システム10を参照して以下でより詳細に説明されるが、この制御方法論は従来技術には存在しないことを理解されたい。
【0026】
図3は、レーザ光源14が赤外レーザ光源であるレーザチャンバ26内に位置しているレーザ光源14などの、本開示の一態様によるレーザ溶接システム400(
図4)のレーザチャンバ内に位置している赤外レーザ光源を制御するために実行される例示的な制御ルーチンの制御ロジックのフローチャートである。レーザ溶接システム400は、コントローラ402に例示的に実装されている次の例に説明されるような赤外レーザ光源14を制御するための制御ロジックを除いては、レーザ溶接システム11と同じであることを理解されたい。制御ルーチンは、300で開始する。302において、制御ルーチンは、赤外レーザ光源14がオンにされるべきかどうかをチェックする。もしそうでない場合は、制御ルーチンは、分岐して302に戻る。赤外レーザ光源14がオンにされるべきである場合は、制御ルーチンは304に進み、そこで、レーザ光源14がオンにされる前に、コントローラ17は、レーザチャンバ26内の背景赤外線の強度を光学センサ16で感知し、次いで、赤外レーザ光源14がオンにされる306に進む。次に、制御ルーチンは、コントローラ17がレーザチャンバ26内の赤外線の強度を光学センサ16で感知する308に進み、次いで310に進む。310において、コントローラ17は、赤外レーザ光源がオンである時に感知された赤外線の強度から、赤外レーザ光源がオフであった時に感知された背景赤外線の強度を減算することによって、補正フィードバック信号を計算する。次に、制御ルーチンは、補正フィードバック信号による閉ループフィードバック制御を使って赤外レーザ光源14を制御する312に進む。次に、制御ルーチンは、赤外レーザ光源14がオフにされるべきかどうかをチェックする314に進む。もしそうでない場合は、制御ルーチンは、分岐して308に戻り、308~314を繰り返す。これに関して、補正フィードバック信号は、308、310が繰り返される時に更新される。314において赤外レーザ光源14がオフにされるべきである場合は、制御ルーチンは、赤外レーザ光源14がオフにされる316に進み、この制御ルーチンが終了する318に進む。
【0027】
一態様においては、コントローラ17は、背景放射の感知された強度が、背景放射が感知される時間と赤外レーザ光源がオンにされる時間との間で実質的に変化していないであろうように、赤外レーザ光源がオンにされる時に合わせて大体同じ時間にレーザチャンバ26内の背景放射の強度を感知する。すなわち、背景放射が感知される時間と赤外レーザ光源がオンにされる時間との間の背景放射の感知された強度のいかなる変化も、フィードバック信号の正確さの計算に僅少な効果を有することになる。一態様においては、背景放射の強度は、コントローラ17が赤外レーザ光源をオンにする直前にコントローラ17によって感知される。一態様においては、コントローラ17は、レーザ溶接システム11が連続生産を実行している場合に赤外レーザ光源が溶接サイクル時にオフにされる時と赤外レーザ光源が次の溶接サイクル時にオンにされる時との間で赤外レーザ光源がオフである時間期間に等しいように、赤外レーザ光源がオンにされる前の時間期間内に背景放射の強度を感知する。
【0028】
前述のものは、レーザ溶接システム11などのレーザ溶接システムにおいて、プラスチック部品22、24などのプラスチック部品を溶接する際に使用されることが有利である。プラスチック部品は、レーザ溶接システム11内に配置される。次いで、レーザ光源14は、閉ループフィードバック制御のフィードバック信号として補正フィードバック信号を用いて閉ループフィードバック制御によって上述のように制御される。補正フィードバック制御信号は、上述のように決定される。
【0029】
コントローラ17および402は、デジタルプロセッサ(DSP)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または上述のロジックを実装するソフトウェアでプログラムされる他のプログラマブルデバイスのいずれかであることができるか、またはそれらを含む。あるいは、これはField Programmable Gate Array、(フィールドプログラマブルゲートアレイ)(FPGA)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)、または特定用途向け集積回路(ASIC)などの、他のロジックデバイスであるか、またはこれを含むことを理解されたい。コントローラ17または402が機能を実行するか、または機能を実行するように構成されると述べられる場合には、コントローラ17または402は、(ソフトウェア、ロジックデバイス、またはそれらの組み合わせの場合のような)適切なロジックでそうするように構成されることを理解されたい。コントローラ17または402が機能のためのロジックを有すると述べられる場合には、この種のロジックはハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを含むことができることを理解されたい。
【0030】
実施形態の前述の説明は、例示し説明するために提供されている。これは、網羅的であるように、または本開示を限定するように意図されるものではない。特定の実施形態の個々の要素または構成は、一般にその特定の実施形態に限定されるものではなく、該当する場合は、交換可能であり、たとえ具体的に示されまたは説明されていなくとも、選択された実施形態に使用され得る。また、同様のものが、多くの方法で変更され得る。この種の変形は、本開示からの逸脱とみなされるべきではなく、この種の変更は全て、本開示の範囲内に含まれるように意図されている。
【符号の説明】
【0031】
10 フィードバック制御システム
11、400 レーザ溶接システム
14 赤外レーザ光源
16 光学センサ
17、402 コントローラ
18 光ファイバ部材
20 導波路
22、24 プラスチック部品
26 レーザチャンバ