(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】鉄筋のマーキング装置及び鉄筋
(51)【国際特許分類】
B21C 51/00 20060101AFI20220225BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B21C51/00 B
C21D9/00 H
(21)【出願番号】P 2018043952
(22)【出願日】2018-03-12
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿子生 悟
(72)【発明者】
【氏名】釣 雄一
(72)【発明者】
【氏名】牛来 雄喜
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030277(JP,A)
【文献】特開2016-072094(JP,A)
【文献】特開2005-074448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 51/00
C21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
普通強度部分を有する鉄筋の一部に前記普通強度部分より高強度の高強度部分を形成するために焼入れする焼入れ機構と、
前記焼入れ機構で焼入れられた鉄筋のうち前記高強度部分を示すために塗料を塗布する塗布機構と、
前記鉄筋の配筋向きを示す配筋情報を前記鉄筋に表示する配筋情報付与機構と、
前記塗布機構で塗料が塗布された鉄筋を焼き戻す焼戻し機構と、
前記焼入れ機構、前記塗布機構、前記配筋情報付与機構及び前記焼戻し機構と、前記鉄筋とを相対的に移動させる移動機構と、を備えた
ことを特徴とする鉄筋のマーキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄筋のマーキング装置において、
前記配筋情報付与機構は、前記鉄筋に塗料を塗布する塗布部を有し、
前記焼戻し機構は、前記塗布部で塗料が塗布された鉄筋を焼き戻す
ことを特徴とする鉄筋のマーキング装置。
【請求項3】
普通強度部分を有する鉄筋の一部に前記普通強度部分より高強度の高強度部分を形成するための焼入れする焼入れ機構と、
前記焼入れ機構で焼入れられた鉄筋を焼き戻す焼戻し機構と、
前記焼戻し機構で焼き戻された際の残熱がある前記鉄筋のうち前記高強度部分を示すために塗料を塗布する塗布機構と、
前記鉄筋の配筋向きを示す配筋情報を前記鉄筋に表示する配筋情報付与機構と、
前記焼入れ機構、前記焼戻し機構、前記塗布機構及び前記配筋情報付与機構と、前記鉄筋とを相対的に移動させる移動機構と、を備えた
ことを特徴とする鉄筋のマーキング装置。
【請求項4】
請求項3に記載された鉄筋のマーキング装置において、
前記配筋情報付与機構は、前記焼戻し機構で焼き戻された際の残熱がある前記鉄筋に塗料を塗布する塗布部を有する
ことを特徴とする鉄筋のマーキング装置。
【請求項5】
普通強度部分と前記普通強度部分より高強度の高強度部分とを備え、
前記高強度部分を示す第一マーキング部と鉄筋の配筋向きを示す第二マーキング部とを有し、
前記第一マーキング部は鉄筋周面に軸方向に沿って形成され、
前記第二マーキング部は鉄筋端部に形成されている
ことを特徴とする鉄筋。
【請求項6】
請求項5に記載された鉄筋において、
前記第二マーキング部は、鉄筋の径を表示する径表示部と鉄筋の種類を表示する鋼種表示部とを有し、
前記径表示部と前記鋼種表示部との一方が前記鉄筋周面に形成され、前記径表示部と鋼種表示部との他方
が鉄筋端面に形成されている
ことを特徴とする鉄筋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄筋のマーキング装置及び鉄筋に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造では鉄筋が用いられる。鉄筋を管理するため、現場で鉄筋を施工するため、その他の用途のため、鉄筋の所定箇所に色を塗り、あるいは記号を印字する等のマーキングが施される。
鉄筋へのマーキングは、通常、スプレー缶に収納されたペンキを鉄筋へ塗布したり、インクジェット式プリンタを用いて鉄筋に印字したりすることで行われることが多い。
スプレー缶タイプの従来例では、速乾性のペンキが用いられる。ペンキは、速乾性であっても、直ぐに乾かないため、マーキングをした直後に、他の部分へ転写してしまうことがある。
【0003】
従来例として、異形棒鋼の外周表面にインクジェットプリンタで異形棒鋼の種別、強度、鉄筋径、鉄筋長等の異形鉄筋の属性を印字するものや(特許文献1)、異形棒鋼の周面に、鉄筋の径を示す径識別マークと、鉄筋の鋼種を示す鋼種識別マークとを軸方向に沿って交互に等間隔に形成するものがある(特許文献2)。特許文献2の従来例では、径識別マークと鋼種別マークとは、異なる塗料を鉄筋の周囲に沿って塗ることで形成される。
【0004】
また、鉄筋には、普通強度部分と、普通強度部分より高強度の高強度部分とが一体に形成された部分高強度鉄筋がある(特許文献3)。
特許文献3で示される従来例では、柱又は梁に沿って直線上に配置された複数本の鉄筋が継手を介して互いに接続されている。1本の鉄筋には高強度鉄筋と高強度部分とが隣接して設けられており、高強度部分は柱と梁とが接合する柱梁接合部に配置され、普通強度部分は継手部分側に配置されている。高強度部分と普通強度部分との境界は柱梁接合部より所定寸法離れている。高強度部分は、普通鉄筋の一部を焼き入れて形成されるが、焼き入れた部分と焼き入れていない部分との判別はしにくい。この場合、鉄筋を建物に配筋する場合や、鉄筋を管理する場合に、高強度部分にマーキングされることが望ましい。
また、部分高強度鉄筋同士あるいは部分高強度鉄筋と普通強度鉄筋を接続する場合には、部分高強度鉄筋の配筋向きが重要となるが、この配筋向きがマーキングされることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-65414号公報
【文献】特開2011-104616号公報
【文献】実用新案登録第3147699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の従来例では、インクジェットプリンタを用いて異形鉄筋の属性を印字する構成であるため、速乾性のインクを用いても、印字された後に、誤って他の部材、例えば、異形棒鋼を保管する容器や、他の異形棒鋼に転写することもある。特に、鉄筋に高強度部分を示すために、異形棒鋼の所定長さに渡って印字範囲を長くすると、インクがより乾燥しにくいため、転写しやすくなる。
しかも、印字する対象は、部分高強度鉄筋ではないので、異形棒鋼に印字で表示される情報は、高強度部分や配筋の向きが含まれない。
【0007】
特許文献2の従来例では、1本の鉄筋に径識別マークと鋼種識別マークとを交互に塗料を塗布する構成であるため、特許文献1と同様に、他の部材に転写しやすくなる。しかも、特許文献2の従来例の技術を用いて高強度部分をマーキングしようとしても、径識別マークと鋼種識別マークとが軸方向に沿って等間隔に形成されているので、高強度部分の長さがこれらのマークの間隔に一致するものとは限らず、高強度部分のマーキングを確実に行えない。
【0008】
また、特許文献3で示される従来例では、鉄筋にはマーキングするための技術思想自体が開示されるものではない。
しかも、鉄筋を用いて建物を施工する際に、1本の鉄筋は、配筋の向きが特定されるが、普通強度鉄筋を部分的に焼き入れて形成される高強度部分は普通強度部分との外見上の差が見当たらず、現場施工する作業員にとって、配筋の向きがわかりにくい、という課題がある。
【0009】
本発明の目的は、高強度部分を示すマーキングのために塗料を塗布した後に、塗料が他の部材に転写することを防止でき、しかも、高強度部分や高強度部分の配筋の向きが容易に判別できる鉄筋のマーキング装置及び鉄筋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の鉄筋のマーキング装置は、普通強度部分を有する鉄筋の一部に前記普通強度部分より高強度の高強度部分を形成するために焼入れする焼入れ機構と、前記焼入れ機構で焼入れられた鉄筋のうち前記高強度部分を示すために塗料を塗布する塗布機構と、前記鉄筋の配筋向きを示す配筋情報を前記鉄筋に表示する配筋情報付与機構と、前記塗布機構で塗料が塗布された鉄筋を焼き戻す焼戻し機構と、前記焼入れ機構、前記塗布機構、前記配筋情報付与機構及び前記焼戻し機構と、前記鉄筋とを相対的に移動させる移動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明では、移動機構を作動させて、焼入れ機構、塗布機構、配筋情報付与機構及び焼戻し機構と、普通強度部分を有する鉄筋とを相対的に移動させる。そして、焼入れ機構によって普通強度部分の一部を焼き入れて高強度部分とした後、塗布機構により、鉄筋の所定箇所に塗料を塗布してマーキングをし、塗料が塗布された鉄筋を焼戻し機構により焼き戻す。これらの一連の工程で、部分高強度鉄筋が製造される。さらに、配筋情報付与機構と鉄筋とを相対的に移動させる際に、配筋情報付与機構により、鉄筋の配筋向きを示す配筋情報が鉄筋に表示される。
ここで、鉄筋において、塗布機構で塗料を塗布する領域は、適宜設定することができる。例えば、高強度部分全体や、普通強度部分と高強度部分との境界領域を塗料塗布領域として設定してもよい。さらに、塗料は、鉄筋の長手方向に沿って線状に塗布するものでもよい。
塗布機構による塗布工程で、鉄筋に塗布された塗料は、焼戻し機構による焼戻し工程で加熱されることになり、塗料自体が焼き付けられる。そのため、鉄筋から塗料が剥がれることがないから、高強度部分を示すために塗装を塗布した部分が他の部材に転写することを防止できる。
さらに、鉄筋に配筋向きを示す配筋情報が表示されているので、普通強度部分と高強度部分とを有する鉄筋を用いて建物を施工する際、作業員は、配筋情報を見ることで、鉄筋の配筋向きを特定することができる。
本発明では、配筋情報付与機構により、鉄筋の配筋向きを示す配筋情報が鉄筋に表示されるから、作業員は、配筋情報で鉄筋の配筋方向を容易に判別することができる。
【0012】
本発明の鉄筋のマーキング装置では、前記配筋情報付与機構は、前記鉄筋に塗料を塗布する塗布部を有し、前記焼戻し機構は、前記塗布部で塗料が塗布された鉄筋を焼き戻す構成が好ましい。
この構成では、配筋情報付与機構の塗布部により、塗料を鉄筋に塗布して配筋向きを示す配筋情報を形成する。その後、焼戻し機構による焼戻し工程で配筋情報が加熱されることになり、配筋情報の塗料自体が焼き付けられる。そのため、鉄筋から塗料が剥がれることがないから、配筋情報は高強度部分を表示する情報とともに他の部材に転写することを防止できる。
【0013】
本発明の異なる鉄筋のマーキング装置は、普通強度部分を有する鉄筋の一部に前記普通強度部分より高強度の高強度部分を形成するための焼入れする焼入れ機構と、前記焼入れ機構で焼入れられた鉄筋を焼き戻す焼戻し機構と、前記焼戻し機構で焼き戻された際の残熱がある前記鉄筋のうち前記高強度部分を示すために塗料を塗布する塗布機構と、前記鉄筋の配筋向きを示す配筋情報を前記鉄筋に表示する配筋情報付与機構と、前記焼入れ機構、前記焼戻し機構、前記塗布機構及び前記配筋情報付与機構と、前記鉄筋とを相対的に移動させる移動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明では、移動機構により、焼入れ機構、塗布機構、配筋情報付与機構及び焼戻し機構と、普通強度部分を有する鉄筋とを相対的に移動させる。そして、焼入れ機構によって普通強度部分の一部を焼き入れて高強度部分とした後、焼戻し機構により焼き戻すことで、部分高強度鉄筋が製造される。焼戻し機構によって焼き戻された鉄筋には残熱があり、残熱がある鉄筋の所定箇所、例えば、高強度部分に塗料を塗布してマーキングをする。鉄筋に塗布された塗料は、焼戻し機構による鉄筋の残熱により加熱されることになり、塗料自体が焼き付けられる。そのため、鉄筋から塗料が剥がれることがないから、マーキングのために塗装を塗布した部分が他に転写することを防止できる。
さらに、配筋情報付与機構により、鉄筋の配筋向きを示す配筋情報が鉄筋に表示されるから、普通強度部分と高強度部分とを有する鉄筋を用いて建物を施工する際に、作業員は、配筋情報で鉄筋の配筋方向を容易に判別することができる。
【0015】
本発明の異なる鉄筋のマーキング装置では、前記配筋情報付与機構は、前記焼戻し機構で焼き戻された際の残熱がある前記鉄筋に塗料を塗布する塗布部を有する構成が好ましい。
この構成では、焼戻し機構によって鉄筋を焼き戻した後、配筋情報付与機構の塗布部により、塗料を鉄筋に塗布して配筋向きを示す配筋情報を形成する。塗布部により塗料を塗布した後でも、焼戻し機構によって焼き戻された鉄筋には残熱があるので、配筋情報の塗料自体が焼き付けられる。そのため、鉄筋から塗料が剥がれることがないから、配筋情報は高強度部分を表示するマーキングとともに他の部材に転写することを防止できる。
【0016】
本発明の鉄筋は、普通強度部分と前記普通強度部分より高強度の高強度部分とを備え、前記高強度部分を示す第一マーキング部と鉄筋の配筋向きを示す第二マーキング部とを有し、前記第一マーキング部は鉄筋周面に軸方向に沿って形成され、前記第二マーキング部は鉄筋端部に形成されていることを特徴とする。
本発明では、第一マーキング部により、鉄筋周面に軸方向に沿って高強度部分が示され、第二マーキング部により、鉄筋端部に鉄筋の配筋向きが示されるので、普通強度部分と高強度部分とを有する鉄筋を用いて建物を施工する際、高強度部分と配筋向きとを容易に識別することができる。
【0017】
本発明の鉄筋では、前記第二マーキング部は、鉄筋の径を表示する径表示部と鉄筋の種類を表示する鋼種表示部とを有し、前記径表示部と前記鋼種表示部との一方が前記鉄筋周面に形成され、前記径表示部と鋼種表示部との他方が前記鉄筋端面に形成されている構成が好ましい。
この構成では、径表示部と鋼種表示部とにより、鉄筋を識別するのに必要な鉄筋の径の情報と鋼種の情報とを得ることができる。しかも、径表示部と鋼種表示部との一方が鉄筋の周面に形成され、他方が鉄筋の端面に形成されているから、径表示部と鋼種表示部との情報を誤って読み取ることが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態にかかる鉄筋を用いた建物の全体を示す概略図。
【
図2】(A)(B)は、それぞれ前記実施形態にかかる鉄筋の斜視図。
【
図3】第1実施形態にかかるマーキング装置を示す概略構成図。
【
図4】第2実施形態にかかるマーキング装置を示す概略構成図。
【
図5】第3実施形態にかかるマーキング装置を示す概略構成図。
【
図6】第4実施形態にかかるマーキング装置を示す概略構成図。
【
図7】第5実施形態にかかるマーキング装置を示す概略構成図。
【
図8】第6実施形態にかかるマーキング装置を示す概略構成図。
【
図9】第7実施形態にかかるマーキング装置を示す概略構成図。
【
図10】第8実施形態にかかるマーキング装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[鉄筋コンクリート造]
図1には本実施形態にかかる鉄筋を用いた建物の全体構成が示されている。
図1において、建物は、複数の梁2と、梁2と接合する複数の柱3とを備えた複数階建ての鉄筋コンクリート造であり、鉄筋構造1にコンクリート体100が打設されている。
梁2と柱3とが接合された柱梁接合部200の形態としては、十字形接合S1やト形接合S2がある。
梁2の鉄筋構造1は、水平方向に延びて配筋された複数の梁用の鉄筋21A,21Bと、鉄筋21A,21Bの軸方向と交差する平面内において鉄筋21A,21Bを囲んで等間隔に配筋されて梁2のせん断強度を補強する複数の梁用のせん断補強筋22とを備える。
水平方向に隣合う鉄筋21A,21Bは、主筋として機能するものであって、上下一対配置されている。隣合う鉄筋21A,21Bの端部同士、あるいは、隣合う鉄筋21Aの端部同士は、継手4で接合されている。
継手4は、ナットから構成される機械式継手である。
【0020】
柱3の鉄筋構造1は、垂直方向に延びて所定間隔を空けて配筋された複数の柱用の鉄筋材31と、鉄筋材31の軸方向と交差する平面内において鉄筋材31を囲んで等間隔に鉄筋材31の延出方向に配筋されて柱3のせん断強度を補強する複数の柱用のせん断補強筋32とを備える。
鉄筋材31及びせん断補強筋32は、降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定されている普通鉄筋である。普通鉄筋の降伏点又は0.2%耐力は、例えば、295MPa(N/mm2)以上390MPa(N/mm2)以下、例えば、345MPa(N/mm2)の異形鉄筋(SD345)を例示できる。
【0021】
十字形接合S1を含む領域において、鉄筋21Aは、その中央部分に高強度部分211があり、その両端部にそれぞれ普通強度部分212がある。高強度部分211と普通強度部分212との境界部Qが降伏ヒンジの位置である。
高強度部分211は、十字形接合S1と十字形接合S1から梁長さ方向に沿った高強度領域210Aとに配置される。普通強度部分212は、高強度領域210Aを経て十字形接合S1とは反対側に位置する普通強度領域210Bに配置されている。高強度部分211及び普通強度部分212は、1本の鉄筋から一体に形成されている。
【0022】
普通強度部分212は、降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定されている。高強度部分211は、普通強度部分212より高強度である。例えば、高強度部分211の降伏点又は0.2%耐力は、490MPa(N/mm2)以上1000MPa(N/mm2)以下、例えば、685MPa(N/mm2)である。普通強度部分212の降伏点又は0.2%耐力は、295MPa(N/mm2)以上390MPa(N/mm2)以下である。
以上の構成の鉄筋21Aは、普通強度部分212と同じ強度の1本の普通鉄筋の鋼材(SD345)を部分焼入れして高強度部分211にする。
【0023】
ト形接合S2を含む領域において、鉄筋21Bは、柱3の部分に高強度部分211があり、鉄筋21Aに近接して普通強度部分212がある。高強度部分211と普通強度部分212との境界部Qが降伏ヒンジの位置である。
高強度部分211は、ト形接合S2とト形接合S2から梁長さ方向に沿った高強度領域210Aとに配置される。普通強度部分212は、高強度領域210Aを経てト形接合S2とは反対側に位置する普通強度領域210Bに配置されている。
高強度部分211のうちト形接合S2の内部に配置された部分の先端部分には、定着板213が螺合されている。
【0024】
[鉄筋]
本実施形態にかかる鉄筋21A,21Bの構成が
図2に示されている。
図2(A)には、鉄筋21Aの全体構成が示されている。
図2(A)において、鉄筋21Aには、第一マーキング部M1及び第二マーキング部M2と、ロールマークRとが形成されており、その端部には、図示しない雄ねじ部が形成されている。
第一マーキング部M1は、鉄筋21Aの中央部分において高強度部分211に相当する部分に塗料51により形成されている。なお、前述の通り、高強度部分211は、普通強度の鉄筋を部分的に焼き入れて形成するため、高強度部分211と普通強度部分212との間には図示しない強度移行部分が生じることがある。そのため、本実施形態では、高強度部分211だけでなく、高強度部分211の両側であって強度移行部分に相当する箇所まで第一マーキング部M1を形成してもよい。
塗料51は、鉄筋21Aの外周面に軸方向に沿って帯状に塗布される。
【0025】
第二マーキング部M2は、鉄筋21Aの配筋向き、つまり、鉄筋21Bと接続するための継手4側の向きを特定するものであり、鉄筋21Aの径を表示する径表示部M21と鉄筋21Aの種類を表示する鋼種表示部M22とを有する。
径表示部M21は、鉄筋21Aの外周面に沿って塗料51又は塗料52を帯状に塗布することで形成されている。径表示部M21は、鉄筋21Bと接続する側の図示しない雄ねじ部と第一マーキング部M1との間に形成されている。そのため、鉄筋21Bの図示しない雄ねじ部に継手4が取り付けられても、径表示部M21が隠れることがない。
径表示部M21は、塗料51又は塗料52の色によって鉄筋21Aの径を示すもので、例えば、JISにおける呼び名がD19、D25、D32、D38、D51がピンクであり、D22,D29,D35,D41が白である。
鋼種表示部M22は、鉄筋21Aのうち径表示部M21が配置される側の端面に塗料51又は塗料52を塗布することで形成されている。
【0026】
鋼種表示部M22は、塗料51又は塗料52の色によって鋼種を示すもので、例えば、JISG3112で規定するSD345が黄色であり、SD390が緑であり、SD490が青である。また、JIS材ではないSD590とSD685は、一般社団法人日本建設業連合会によると、それぞれピンク、黒が推奨されている。
径表示部M21と鋼種表示部M22とでの色の設定は、1つの施工業者が個別に設定された個別のものでもよく、あるいは、施工業者が複数集まった団体で設定された共通のものでもよい。
塗料51は、水性塗料、その他の液体塗料であって、150℃以上の温度で焼き付けられ、600℃までの耐熱性を有する。水性塗料として、例えば、パイロジンサンヒート(大島工業社製)を例示できる。塗料52は、塗料51と異なり、150℃以上の温度で焼き付けられるものではないが、鉄筋21Aに塗布した後、落ちにくい材料である。
【0027】
ロールマークRは、鉄筋21Aを製造する前の棒状の鋼材の状態に刻印等の手段により形成されている。
ロールマークRは、鉄筋製造メーカを特定する識別記号R1と、鉄筋21Aの鋼種を表示する鋼種記号R2とを有する。
識別記号R1は、鉄筋21Aの長手方向に沿って、互いに等間隔となるように複数が形成されており、
図2(A)では、2箇所が図示されている。識別記号R1は、
図2(A)では、米印として表示されているが、本実施形態では、これに限定されるものではなく、例えば、星印や○印、×印であってもよい。
【0028】
鋼種記号R2は、JISG3112で規定する鋼種、例えば、SD345、SD390、SD490等を表示するものであり、鉄筋21Aの長手方向に沿って、互いに等間隔となるように複数箇所、
図2(A)では、3箇所が形成されている。
図2(A)では、鋼種記号R2が2つの点として表示されているが、本実施形態では、これに限定されるものではなく、例えば、直線等であってもよい。
本実施形態では、記号表示部Nを設けてもよい。
記号表示部Nは、第一マーキング部M1の上に重ねて表示されるものであり、記号、図形、数字、等からなる。記号表示部Nは、例えば、施工対象となる建物の中で建物鉄筋を設置する位置、設置する向き(方向)等が表されている。
図2(A)では、記号表示部Nとして、「ABC」のアルファベットが示されている。本実施形態では、記号表示部Nはスタンプを押印することで表示されてもよい。
【0029】
図2(B)には、鉄筋21Bの全体構成が示されている。
図2(B)において、鉄筋21Bには、第一マーキング部M1及び第二マーキング部M2と、ロールマークRとが形成されており、その端部には、図示しない雄ねじ部が形成されている。
第一マーキング部M1は、鉄筋21Bの一端から中央部分にかけて、高強度部分211に相当する部分に塗料51により形成されている。本実施形態では、高強度部分211だけでなく、普通強度部分212のうち高強度部分211に近接した領域であって強度移行部分(図示せず)に相当する箇所まで第一マーキング部M1を形成してもよい。
【0030】
第二マーキング部M2は、鉄筋21Bの配筋向き、つまり、定着板213側の向きを特定するものであり、径表示部M21と鋼種表示部M22とを有する。
径表示部M21は、鉄筋21Bの外周面に沿って塗料51を帯状に塗布することで形成されている。径表示部M21は第一マーキング部M1と直交して形成されている。
径表示部M21は、高強度部分211であって定着板213を取り付ける図示しない雄ねじ部から離れた位置に形成されている。そのため、鉄筋21Bの図示しない雄ねじ部に定着板213が取り付けられても、径表示部M21が隠れることがない。
鋼種表示部M22は、鉄筋21Bの高強度部分211の端面に塗料51を塗布することで形成されている。
なお、鉄筋21A,21Bは、節部及び底部を有する異形鉄筋でもよく、節部及び底部がない普通鉄筋であってもよい。
【0031】
[第1実施形態のマーキング装置]
図3にはマーキング装置の第1実施形態が示されている。なお、マーキング装置の各実施形態において、同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図3において、第1実施形態のマーキング装置10は、素材としての鉄筋7にマーキングをして鉄筋21Aを製造するものであり、鉄筋7の一部を焼入れする焼入れ機構11と、焼入れ機構11で焼き入れられた鉄筋7を冷却する冷却機構12と、冷却機構12で冷却された鉄筋7に第一マーキング部M1を形成するために塗料を塗布する塗布機構13と、塗布機構13で塗料が塗布された鉄筋7を焼き戻す焼戻し機構14と、焼戻し機構14で焼き戻された鉄筋7に第二マーキング部M2を形成するための配筋情報付与機構15と、鉄筋7を切断する切断機構16と、鉄筋7を軸方向に移動させる移動機構17と、を備えている。
鉄筋7は、降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定されている普通強度鉄筋である。鉄筋7には、予め、ロールマークRが形成されている(
図2(A)参照)。
【0032】
焼入れ機構11は、図示しない加熱コイルを備え、鉄筋7の一部を所定温度、例えば、850℃以上の温度で焼き入れる装置である。焼入れ機構11で加熱された領域が高強度部分211となる。
冷却機構12は、焼入れで高温となった鉄筋7を所定温度、例えば、400℃まで冷却する。冷却する手段としては、加熱された鉄筋7に水、冷却窒素、その他の冷却媒体を噴霧することが挙げられる。
塗布機構13は、塗料51を鉄筋7にその軸方向に沿って帯状に塗布するためのものであり、ノズルからなる塗布部13Aと、塗布部13Aに接続され塗料51が収納されたタンク(図示せず)とを有する。
【0033】
焼戻し機構14は、図示しない加熱コイルを備え、塗布部13Aで塗料が塗布された鉄筋7を、550℃以上700℃以下の温度で焼き戻す装置である。
配筋情報付与機構15は、鉄筋7に径表示部M21を形成する第一機構151と、鋼種表示部M22を形成する第二機構152とを有する。
第一機構151は、鉄筋7の端部に塗料52を周方向に沿って塗布するものであり、ノズルからなる塗布部151Aと、塗布部151Aを鉄筋7の周方向に沿って回転させる図示しない回転機構と、塗布部151Aに塗料52を供給する図示しないタンクと、を有する。なお、塗布部151Aを鉄筋7の周方向に沿って回転させる回転機構に代えて、鉄筋7自体を、軸芯を中心として回転させる回転機構を設けてもよい。
第二機構152は、切断機構16で切断された鉄筋7の端面に塗料52を塗布するものであり、ノズルからなる塗布部152Aと、塗布部152Aを進退させる図示しない進退機構と、塗布部152Aに塗料52を供給する図示しないタンクとを有する。進退機構は、塗布部152Aの先端を、鉄筋7の端面と対向する位置と、この対向する位置から退避する退避位置とに進退させる。
【0034】
切断機構16は、カッタ161と、カッタ受台162とを有する。
移動機構17は、
図3では、鉄筋7を挟持しながら送る一対のローラ171から構成される。本実施形態では、移動機構17の具体的な構成は限定されない。移動機構17による鉄筋7の送り速度は5mm/sec以上1000mm/sec以下である。
切断機構16で切断された鉄筋7は、鉄筋21Aとなり、一対のローラ171を有する移送機構17Aに送られる。
なお、本実施形態では、第一マーキング部M1の上に記号表示部Nを表示する場合には、情報表示機構18を用いる。情報表示機構18は、焼き戻された鉄筋7に記号表示部Nを押印するスタンプ機構である。スタンプ機構は、記号表示部Nが予め設けられ表面にインク等が塗布された印部(図示せず)を押圧する構造である。
【0035】
以上の構成のマーキング装置10を用いて鉄筋7にマーキングする方法を説明する。
図3で示される状態では、素材としての鉄筋7は、全てが普通強度部分212から構成されており、鉄筋7の送り方向の端面が露出している。鉄筋7の端面に、第二機構152により、塗料52を塗布して鋼種表示部M22を形成し、当該端面の位置から所定寸法離れた普通強度部分212の端部周面に、第一機構151により、塗料52を塗布して径表示部M21を形成する。径表示部M21と鋼種表示部M22とが普通強度部分212に形成されたら、第一機構151と第二機構152との作動を中止する。
その後、移動機構17を作動し、焼入れ工程を実施する。焼入れ機構11は、送られてくる鉄筋7の所定領域において作動する。ここで、焼入れ機構11は、焼入れを行うための加熱動作と、焼入れを行わない非加熱動作とを所定のタイミングで繰り返す構成である。焼入れ機構11では、送られてくる鉄筋7に加熱動作が実施されると、その部分に高強度部分211が形成され、非加熱動作が実施されると、その部分が普通強度部分212のままとなる。非加熱状態から加熱動作に切り換える際には、加熱温度が所定温度になるまで時間を要するので、その際に、焼入れ機構11を通過する鉄筋7には、普通強度部分212と高強度部分211との間に図示しない強度移行部分が形成されることもある。
【0036】
次に、冷却工程を実施する。つまり、冷却機構12により、鉄筋7の高強度部分211を中心として400℃まで冷却する。
そして、第一マーキング部M1を鉄筋7に形成する。つまり、塗布機構13により、鉄筋7の高強度部分211に塗料51を帯状に塗布する。
さらに、焼き戻し工程を実施する。つまり、焼戻し機構14により、少なくとも、高強度部分211に、550℃以上700℃以下の温度で焼き戻しを行う。この際、塗料51は鉄筋7に焼き付けられることになり、剥がれることがない。塗料51が加熱されることにより、塗膜に重合反応が起こり、緻密な塗膜が形成される。そのため、塗装後は塗料51が水性塗料だけでなく、有機溶剤等から構成されていても、剥がれにくいものとなる。
【0037】
焼き戻し工程が完了したら、鉄筋7を移動機構17により移動し続け、所定位置となったら、切断機構16で鉄筋7を切断する。これにより、マーキングされた鉄筋21Aが製造されることになる。端部が切断された鉄筋21Aは移送機構17Aにより移送される。
切断機構16で鉄筋21Aが切り離された鉄筋7に対して前述の工程を実施することで、次の鉄筋21Aが製造される。
なお、本実施形態では、情報表示機構18を用いて鉄筋情報表示工程を実施してもよい。焼戻し機構14で焼き戻された鉄筋7の所定位置に記号表示部Nがスタンプされる。なお、焼戻し温度が高いと、塗料51が白色化されるが、塗料51が白色でも、その上から記号表示部Nを表示することは可能である。
【0038】
第1実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)普通強度部分212を有する鉄筋21A,21Bの一部に高強度部分211が形成され、高強度部分211を示す第一マーキング部M1と鉄筋21A,21Bの配筋向きを示す第二マーキング部M2とが鉄筋21Aに形成され、第一マーキング部M1は鉄筋21A,21Bの周面に軸方向に沿って形成され、第二マーキング部M2は鉄筋21A,21Bの端部に形成されている。そのため、普通強度部分212と高強度部分211とを有する鉄筋21A,21Bを用いて建物を施工する際、高強度部分211の領域と配筋向きとを作業者が容易に識別することができる。従って、部分的に高強度とされた鉄筋21A,21Bの施工が容易となる。
【0039】
(2)第二マーキング部M2は、鉄筋21A,21Bの径を表示する径表示部M21と、鉄筋21A,21Bの種類を表示する鋼種表示部M22とを有し、径表示部M21が鉄筋21A,21Bの周面に形成され、鋼種表示部M22が鉄筋21A,21Bの端面に形成されている。そのため、径表示部M21と鋼種表示部M22とにより、鉄筋21A,21Bを識別するのに必要な鉄筋21A,21Bの径の情報と鋼種の情報とを得ることができる他、径表示部M21と鋼種表示部M22とが形成される位置が異なることから、これらの情報を誤って読み取ることが少ない。
【0040】
(3)鉄筋21A,21Bの普通強度部分212に形成された径表示部M21は、継手4が取り付けられる雄ねじ部を避けるように形成されているので、継手4を介して鉄筋21Aと鉄筋21Bとを継手4で接続する作業に際して、径表示部M21が継手4により隠れることがなくなるから、径の情報を確実に得ることができる。
【0041】
(4)鉄筋7に高強度部分211を形成するために焼入れする焼入れ機構11と、焼入れ機構11で焼入れられた鉄筋7のうち高強度部分211を示す第一マーキング部M1を形成するために塗料を塗布する塗布機構13と、鉄筋7の配筋向きを示す配筋情報である第二マーキング部M2を鉄筋7に表示する配筋情報付与機構15と、塗布機構13で塗料が塗布された鉄筋7を焼き戻す焼戻し機構14と、焼入れ機構11、塗布機構13、配筋情報付与機構15及び焼戻し機構14に対して、鉄筋7を移動させる移動機構17と、を備えてマーキング装置10を構成した。そのため、配筋向きを示す配筋情報が表示される鉄筋21A,21Bを容易に製造することができる。さらに、塗布機構13によるマーキング工程で、鉄筋7に塗布された塗料51は、焼戻し機構14による焼戻し工程で、焼き付けられることになり、塗料51を塗布した部分が他の部材に転写することを防止できる。
【0042】
(5)移動機構17は鉄筋7をその長手方向に沿って移動させる構成としたから、焼入れ機構11、冷却機構12、塗布機構13、焼戻し機構14及び配筋情報付与機構15を、床に固定させることができる。そのため、これらの機構を移動させるための設備が不要となり、装置全体の設置作業が容易となる。
(6)塗布機構13で塗布された塗料51の上に記号表示部Nを情報表示機構18で表示させれば、より複雑な情報が鉄筋21A,21Bに表示できる。
【0043】
(7)焼入れに不可欠な冷却機構12を配置したので、焼入れした鉄筋7を強制的に冷却することで、マーキング工程や焼き戻し工程までの時間を短縮することができる。
(8)塗料51として、水性塗料を用いているので、溶剤系塗料を用いる場合に比べて、臭気がなく、環境上も好ましい。つまり、溶剤系塗料は、キシレンやトルエン等による有機材中毒が懸念され、熱処理と近接すると発火のおそれもあるが、本実施形態では、水性塗料を用いることで、溶剤系塗料を用いることの問題を回避することができる。
【0044】
[第2実施形態のマーキング装置]
図4には第2実施形態のマーキング装置20が示されている。第2実施形態は第1実施形態とは塗布機構13と焼戻し機構14との配置が逆になる点が相違するものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。
図4において、マーキング装置20は、焼入れ機構11と、冷却機構12と、冷却機構12で冷却された鉄筋7を焼き戻す焼戻し機構14と、焼戻し機構14で焼き戻された鉄筋7に塗料51を塗布する塗布機構13と、切断機構16及び配筋情報付与機構15とが並んで配置されている。
配筋情報付与機構15は、鉄筋7のうち普通強度部分212の端部に、第一機構151と第二機構152とで塗料52を塗布して第二マーキング部M2を形成する。なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、情報表示機構18を設けてもよい。
【0045】
塗布機構13は、焼き戻された鉄筋7に塗料51を焼き付ける構成である。ここで、焼戻し機構14による鉄筋7を焼き戻した後、時間が経過すること、あるいは冷却機構(図示せず)を設けることによって、鉄筋7の温度が低下する。鉄筋7の温度が低下し続けると、塗料51が焼き付け可能となる温度を下回ることになるので、塗布機構13の作動は、鉄筋7の温度が塗料51の焼き付けが可能な状態で実施される。そのため、本実施形態では、例えば、焼戻し機構14による鉄筋7の焼戻し工程が終了した時点から、塗料51の焼き付け可能な所定時間を予め求めておき、この所定時間をタイマーで記憶させ、タイマーにより、塗布機構13を作動させる構成としてもよく、あるいは、焼戻し機構14で焼き戻された鉄筋7の温度を測定するセンサ(図示せず)と、このセンサから、塗料51の鉄筋7への焼き付け可能な温度の範囲にある信号を受けて塗布機構13を作動させる制御部(図示せず)と、を備えた構成としてもよい。
【0046】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、まず、鉄筋7の普通強度部分212の端面に塗料52を塗布して鋼種表示部M22を形成し、普通強度部分212の端部周面に、塗料52を塗布して径表示部M21を形成する。
そして、移動機構17により、普通強度の鉄筋7を焼入れ機構11に送り、鉄筋7の端部から所定寸法離れた位置から焼入れ工程を開始し、高強度部分211の長さに渡って実施し、その後、終了する。さらに、鉄筋7が高強度部分211の領域が冷却機構12に到達したなら、冷却機構12を作動して冷却工程を実施する。そして、焼き入れられた部分を、焼戻し機構14によって、加熱して焼き戻す。
焼戻し工程を実施した後、塗布機構13により、第一マーキング部M1を形成する。
焼戻し機構14によって焼き戻された鉄筋7には残熱があり、残熱がある鉄筋7の所定箇所に塗料51を塗布機構13で塗布してマーキングをする。
【0047】
第2実施形態では、第1実施形態の(1)~(3)(5)~(8)の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(9)鉄筋7の一部を焼き入れる焼入れ機構11と、焼戻し機構14と、焼戻し機構14で焼き戻された際の残熱がある鉄筋7に塗料を塗布する塗布機構13と、配筋情報付与機構15と、鉄筋7を移動させる移動機構17と、を備えてマーキング装置20を構成したから、鉄筋7に塗布された塗料51は、焼戻し機構14による鉄筋の残熱により加熱されることになり、製造された鉄筋21Aから塗料51が剥がれることがない。そして、焼戻し後は、高温に鉄筋21Aが晒されることがなく、温度が低下するだけなので、着色した塗装が可能となる。
【0048】
[第3実施形態のマーキング装置]
図5には第3実施形態のマーキング装置30が示されている。第3実施形態のマーキング装置30は、第一マーキング部M1だけでなく、第二マーキング部M2も塗料51を焼き付けて鉄筋21Bを製造する点で、第1実施形態のマーキング装置10とは異なるものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。
マーキング装置30は、素材の鉄筋7を切断する切断機構16と、切断機構16で切断された鉄筋7の一部を焼入れする焼入れ機構11と、焼入れ機構11で焼き入れられた鉄筋7を冷却する冷却機構12と、冷却機構12で冷却された鉄筋7に第一マーキング部M1を形成するために塗料51を塗布する塗布機構13と、鉄筋7に第二マーキング部M2を形成するために塗料51を塗布する配筋情報付与機構15と、塗布機構13と配筋情報付与機構15とで塗料51が塗布された鉄筋7を焼き戻す焼戻し機構14と、鉄筋7を軸方向に移動させる移動機構17と、が並んで配置されている。
塗布機構13と配筋情報付与機構15とは、冷却機構12と焼戻し機構14との間に配置されている。塗布機構13が冷却機構12側に配置され、配筋情報付与機構15が焼戻し機構14側に配置されている。
【0049】
第3実施形態では、切断機構16により、鉄筋7が鉄筋21Bと同じ長さに切断され、切断された鉄筋7が移動機構17により、焼入れ機構11に送られる。
焼入れ機構11では、普通強度の鉄筋7が一端から所定長さに渡って焼入れられて高強度部分211が形成される。高強度部分211は、冷却機構12により冷却された後、塗布機構13により、鉄筋7の端部から所定長さに渡って、塗料51が塗布されて第一マーキング部M1が形成され、さらに、鉄筋7の端部の周面に、配筋情報付与機構15の第一機構151により、塗料51が塗布されて径表示部M21が形成され、鉄筋7の端面に、第二機構152により、塗料51が塗布されて鋼種表示部M22が形成される。
そして、塗料51が塗布された鉄筋7は、焼戻し機構14に送られて、所定の熱が加えられる。
【0050】
第3実施形態では、第1実施形態の(1)~(8)と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(10)配筋情報付与機構15は、鉄筋7に塗料51を塗布する塗布部151A,152Aを有し、焼戻し機構14は、塗布部151A,152Aで塗料51が塗布された鉄筋7を焼き戻す構成であるので、焼戻し機構14による焼戻し工程で配筋情報である第二マーキング部M2が加熱されることになり、配筋情報の塗料自体が焼き付けられる。そのため、鉄筋7から塗料51が剥がれることがないから、配筋情報は高強度部分211を表示する第一マーキング部M1とともに他の部材に転写することがない。
【0051】
[第4実施形態のマーキング装置]
図6には第4実施形態のマーキング装置40が示されている。第4実施形態のマーキング装置40は、素材としての鉄筋7にマーキングをして鉄筋21Bを製造する点で、第2実施形態のマーキング装置20とは異なるものであり、他の構造は第2実施形態と同じである。
マーキング装置40は、鉄筋7を鉄筋21Bの長さに合わせて切断する切断機構16と、切断機構16で切断された鉄筋7の一部を焼入れする焼入れ機構11と、焼入れ機構11で焼き入れられた鉄筋7を冷却する冷却機構12と、冷却機構12で冷却された鉄筋7を焼き戻す焼戻し機構14と、焼戻し機構14で焼き戻された鉄筋7に塗料51で第一マーキング部M1を形成する塗布機構13と、鉄筋7に第二マーキング部M2を形成するために塗料51を塗布する配筋情報付与機構15と、鉄筋7を軸方向に移動させる移動機構17とが並んで配置されている。
【0052】
第4実施形態では、切断機構16により、鉄筋7が鉄筋21Bと同じ長さに切断され、切断された鉄筋7が移動機構17により、焼入れ機構11に送られる。焼入れ機構11では、鉄筋7が一端から所定長さに渡って焼入れられて高強度部分211が形成され、冷却機構12により冷却された後、焼戻し機構14により焼戻し工程が実施される。焼戻し工程が実施された後、塗布機構13により、鉄筋7の端部から所定長さに渡って、塗料51が塗布されて第一マーキング部M1が形成され、さらに、鉄筋7の端部の周面に、配筋情報付与機構15の第一機構151により、塗料51が塗布されて径表示部M21が形成され、鉄筋7の端面に、第二機構152により、塗料51が塗布されて鋼種表示部M22が形成される。
ここで、配筋情報付与機構15は、塗布機構13と同様に、焼き戻された鉄筋7に塗料51を焼き付ける構成である。そのため、本実施形態では、例えば、タイマーを用い、焼戻し機構14による鉄筋7の焼戻し工程が終了した時点から塗料51の焼き付け可能な時間内で、配筋情報付与機構15を作動させる構成としてもよく、あるいは、焼戻し機構14で焼き戻された鉄筋7の温度を測定するセンサと、このセンサから、塗料51の鉄筋7への焼き付け可能な温度の範囲にある信号を受けて配筋情報付与機構15を作動させる制御部(図示せず)と、を備えた構成としてもよい。
【0053】
第4実施形態では、第1実施形態の(1)~(3)(5)~(8)と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(11)配筋情報付与機構15は、焼戻し機構14で焼き戻された際の残熱がある鉄筋7に塗料51を塗布する塗布部151A,152Aを有する構成であるので、塗布部151A,152Aにより塗料51を塗布した後でも、焼戻し機構14によって焼き戻された鉄筋7には残熱があるので、配筋情報である第二マーキング部M2の塗料自体が焼き付けられる。そのため、鉄筋7から塗料が剥がれることがないから、高強度部分211を表示するマーキングとともに他の部材に転写することを防止できる。
【0054】
[第5実施形態のマーキング装置]
図7には第5実施形態のマーキング装置50が示されている。第5実施形態は、焼入れ機構11、冷却機構12、塗布機構13、焼戻し機構14及び配筋情報付与機構15が鉄筋7に対して移動する点が第3実施形態とは異なるもので、他の構成は第3実施形態と同じである。
図7において、マーキング装置50は、焼入れ機構11、冷却機構12、塗布機構13、焼戻し機構14及び配筋情報付与機構15と、これらの機構を移動する移動機構36とを備えている。なお、
図7では、焼入れ機構11と焼戻し機構14とは、模式的にコイルを示した図として、示されている。
焼入れ機構11は取付用筐体11Aに収納され、冷却機構12は取付用筐体12Aに収納されている。
塗布機構13、焼戻し機構14及び配筋情報付与機構15は連結アーム33を介して一体に連結されており、これらの機構は取付用筐体33Aに収納されている。
塗布機構13と配筋情報付与機構15の第一機構151とは、1つのノズル130から構成され、このノズル130は鉄筋7の軸芯を中心として回転可能とされている。
なお、本実施形態では、情報表示機構18を設けてもよい。この場合、情報表示機構18を取付用筐体18Aに収納する。
【0055】
移動機構36は、取付用筐体11A,12A,33Aにそれぞれ連結する連結部361と、これらの連結部361を鉄筋7に軸方向に沿って移動させる駆動部362とを有する。
駆動部362の具体的構成は限定されるものではないが、例えば、チェーン等を駆動輪及び従動輪で回転駆動させる構成を例示できる。
【0056】
第5実施形態では、第3実施形態の(1)~(4)(6)~(8)(10)の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(12)移動機構36は、焼入れ機構11、冷却機構12、塗布機構13、配筋情報付与機構15及び焼戻し機構14を鉄筋7の長手方向に移動させる構成としたから、鉄筋自体を移動させる設備が不要となる。
(13)塗布機構13、焼戻し機構14及び配筋情報付与機構15が連結アーム33を介して一体に連結されたから、塗布機構13、焼戻し機構14及び配筋情報付与機構15が一体となって移動することになるので、個別の機構を駆動するための機構をそれぞれ設ける場合に比べて、装置の簡略化を図ることができる。
【0057】
[第6実施形態のマーキング装置]
図8には第6実施形態のマーキング装置60が示されている。
図8において、マーキング装置60は、焼入れ機構11、冷却機構12、塗布機構13、焼戻し機構14及び配筋情報付与機構15が鉄筋7に対して移動する点が第4実施形態とは異なるもので、他の構成は第4実施形態と同じである。また、第6実施形態は、塗布機構13、焼戻し機構14及び配筋情報付与機構15の配置位置が第5実施形態と異なるもので、他の構成は第5実施形態と同じである。
第6実施形態では、第4実施形態の(1)~(3)(5)~(9)(11)の効果と、第5実施形態の(12)(13)の効果と同様の効果を奏することができる。
【0058】
[第7実施形態のマーキング装置]
図9には第7実施形態のマーキング装置70が示されている。
図9において、鉄筋7が第一ラインL1から第三ラインL3に配置されており、マーキング装置70は、第一ラインL1から第三ラインL3に分かれて配置されている。
マーキング装置70は、第一ラインL1に配置された焼入れ機構11及び冷却機構12と、第二ラインL2に配置された焼戻し機構14と、第三ラインL3に配置された塗布機構13及び配筋情報付与機構15とを備えている。
【0059】
焼入れ機構11、冷却機構12及び焼戻し機構14は、それぞれ図示しない移動機構により鉄筋7の軸方向に移動する。
塗布機構13及び配筋情報付与機構15は、連結アーム33を介して焼戻し機構14に連結されている。
焼入れ機構11、冷却機構12、焼戻し機構14及び配筋情報付与機構15は、それぞれ鉄筋7から離脱するために、分割可能な構成となっている。
【0060】
第7実施形態では、まず、第一ラインL1において、焼入れ機構11により焼入れ工程を実施した後、冷却機構12によって冷却工程を実施する。冷却工程が終了したら、鉄筋7を第二ラインL2に移動し、焼戻し機構14により、焼戻し工程を実施する。そして、焼戻し工程が終了したら、鉄筋7を第三ラインL3に移動し、塗布機構13及び配筋情報付与機構15によって、マーキング工程を実施する。塗布機構13及び配筋情報付与機構15は焼戻し機構14に連結されているため、第二ラインL2を移動する焼戻し機構14に伴って第三ラインL3を移動する。
ここで、焼入れ工程、冷却工程、焼戻し工程及びマーキング工程は、並行して実施される。
第7実施形態では、第6実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
[第8実施形態のマーキング装置]
図10には第8実施形態のマーキング装置80が示されている。
第8実施形態は、焼入れ機構11、冷却機構12、塗布機構13、焼戻し機構14及び配筋情報付与機構15の構成が第7実施形態と異なるもので、他の構成は第7実施形態と同じである。
図10において、マーキング装置80は、第一ラインL1に配置された焼入れ機構11と、第二ラインL2に配置された冷却機構12と、第三ラインL3に配置された焼戻し機構14と、第四ラインL4に配置された塗布機構13及び配筋情報付与機構15とを備えている。
焼入れ機構11及び焼戻し機構14は、それぞれ炉から構成されており、これらの炉の中で鉄筋7を矢印T方向に移動させながら、あるいは、鉄筋7をその軸方向に回転させながら焼入れ工程や焼戻し工程を実施する。冷却機構12は、鉄筋7を矢印T方向に移動させながら、あるいは、鉄筋7をその軸方向に回転させながら冷却工程を実施する。
塗布機構13及び配筋情報付与機構15は、焼戻し機構14に対して鉄筋7の軸方向に往復自在に取り付けられている。
【0062】
第8実施形態では、第7実施形態と同様の手順で、焼入れ工程、冷却工程、焼戻し工程及びマーキング工程を実施する。
マーキング工程は、炉を構成する焼戻し機構14に取り付けられた塗布機構13を、鉄筋7の軸方向に沿って移動させることで実施する。
第8実施形態では、第7実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0063】
[変形例]
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、梁用主筋を構成する鉄筋21A,21Bに対してマーキングする構成としたが、本発明では、柱用主筋を構成する鉄筋に対してマーキングする構成としてもよい。
また、本発明では、継手4を機械的継手以外の継手としてもよく、あるいは、端部同士を重ね合わせ、針金等で結線する構成でもよい。さらには、端部同士を突き合わせて溶接等で接合する構成でもよい。
【0064】
情報表示機構18を、スタンプ装置としたが、インクジェットプリンタとしてもよい。インクジェットプリンタを用いる場合では、鉄筋を設置する位置、設置する向き(方向)を示すための記号、図形、コード番号が表示されるものでもよい。また、インクジェットプリンタを用いる場合では、異形棒鋼の外周表面に直接表示するよりも、当該外周表面に下地処理を施した後で記号表示部Nを表示するものでもよい。
さらに、塗布機構13を、塗布部13Aから塗料を塗布する構成としたが、本発明の塗布機構13の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、焼付塗装が行える塗料を鉄筋7に押印するための印部を有するスタンプ機構や、当該塗料を噴射できる塗料供給部を備えたインクジェットプリンタであってもよく、要は、高強度部分211をマーキングするための塗料51を鉄筋7に塗布する機構であれば、その具体的な構成は問わない。
同様に、配筋情報付与機構15の第一機構151と第二機構152とを塗料51,52を鉄筋7に塗布する構成としたが、本発明では、スタンプを押したり、刻印したりする構成としてもよい。
【0065】
前記各実施形態では、冷却機構12を配置したが、本発明では、焼入れした鉄筋7を自然に冷却するために十分な時間があれば、冷却機構12は不要である。
【符号の説明】
【0066】
4…継手、7…素材としての鉄筋、10,20,30,40,50,60,70,80…マーキング装置、12…冷却機構、13…塗布機構、13A…塗布部、14…焼戻し機構、15…配筋情報付与機構、151… 第一機構、151A…塗布部、152…第二機構、152A…塗布部、16…切断機構、17,36…移動機構、18…情報表示機構、211…高強度部分、212…普通強度部分、213…定着板、21A,21B…鉄筋、51,52…塗料、M1…第一マーキング部、M2…第二マーキング部、M21…径表示部、M22…鋼種表示部