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特許7029992眼科装置の操作端末、眼科検査の方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】眼科装置の操作端末、眼科検査の方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/00 20060101AFI20220225BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A61B3/00
A61B3/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018055793
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019165991
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将行
【審査官】宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-131205(JP,U)
【文献】特開2017-029369(JP,A)
【文献】特開平11-070072(JP,A)
【文献】特開2007-061508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科装置の遠隔操作を行う操作インターフェースと、
前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定部と、
前記判定に基づき、検者への報知を行う報知部と
を備え、
前記報知が前記被検者の過去における前記報知の記録に基づいて行われる眼科装置の操作端末。
【請求項2】
眼科装置の遠隔操作を行う操作インターフェースと、
前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定部と、
前記判定に基づき、検者への報知を行う報知部と、
前記被検者のあごを載せるあご載せ台への前記あごの接触を検出する第1のセンサの出力と、前記被検者の額を当てる額当てへの前記額の接触を検出する第2のセンサの出力とを受け付ける通信部と
を備え、
前記判定は、前記第1のセンサの出力および前記第2のセンサの出力の有無に基づいて行われ、
前記判定部は、前記第1のセンサと前記第2のセンサの出力に基づき、前記被検者の前記頭部の位置が適正であると判定された場合であっても、前記眼科装置の光学系の一部である対物レンズを介して撮影した画像中における前記被検眼の瞳の位置が予め定めた位置にない場合に、検眼を行うのに適正でないと判定する眼科装置の操作端末。
【請求項3】
眼科装置の遠隔操作を行う操作インターフェースと、
前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定部と、
前記判定に基づき、検者への報知を行う報知部と、
前記被検者のあごを載せるあご載せ台への前記あごの接触を検出する第1のセンサの出力と、前記被検者の額を当てる額当てへの前記額の接触を検出する第2のセンサの出力とを受け付ける通信部と
を備え、
前記判定は、前記第1のセンサの出力および前記第2のセンサの出力の有無に基づいて行われ、
遠隔操作の対象となる眼科装置が複数あり、
前記通信部は、前記第1のセンサの出力と前記第2のセンサの出力と共に前記第1のセンサおよび前記第2のセンサを備える特定の眼科装置の識別データを受け付け、
前記識別データに基づき、前記特定の眼科装置が前記遠隔操作の対象として自動設定される眼科装置の操作端末。
【請求項4】
眼科装置に対する被検者の顔の位置を検出するセンサの出力を受け付けるステップと、
前記センサの出力に基づき、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップに基づき、検者への報知を行う報知ステップと
を備え、
前記報知が前記被検者の過去における前記報知の記録に基づいて行われる眼科検査の方法。
【請求項5】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータに
眼科装置に対する被検者の顔の位置を検出するセンサの出力を受け付けるステップと、
前記センサの出力に基づき、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップに基づき、検者への報知を行う報知ステップと
を実行させ、
前記報知が前記被検者の過去における前記報知の記録に基づいて行われるプログラム。
【請求項6】
眼科装置に対する被検者の顔の位置を検出するセンサの出力を受け付けるステップと、
記センサの出力に基づき、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定ステップと、
前記判定に基づき、検者への報知を行う報知ステップと
を備え、
前記被検者のあごを載せるあご載せ台への前記あごの接触を検出する第1のセンサの出力と、前記被検者の額を当てる額当てへの前記額の接触を検出する第2のセンサの出力とを受け付け、
前記判定ステップは、前記第1のセンサの出力および前記第2のセンサの出力の有無に基づいて行われ、
遠隔操作の対象となる眼科装置が複数あり、
前記第1のセンサの出力と前記第2のセンサの出力と共に前記第1のセンサおよび前記第2のセンサを備える特定の眼科装置の識別データを受け付け、
前記識別データに基づき、前記特定の眼科装置が前記遠隔操作の対象として自動設定される眼科検査の方法。
【請求項7】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータに
眼科装置に対する被検者の顔の位置を検出するセンサの出力を受け付けるステップと、
前記センサの出力に基づき、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定ステップと、
前記判定に基づき、検者への報知を行う報知ステップと
を実行させ、
前記被検者のあごを載せるあご載せ台への前記あごの接触を検出する第1のセンサの出力と、前記被検者の額を当てる額当てへの前記額の接触を検出する第2のセンサの出力とを受け付け、
前記判定ステップは、前記第1のセンサの出力および前記第2のセンサの出力の有無に基づいて行われ、
遠隔操作の対象となる眼科装置が複数あり、
前記第1のセンサの出力と前記第2のセンサの出力と共に前記第1のセンサおよび前記第2のセンサを備える特定の眼科装置の識別データを受け付け、
前記識別データに基づき、前記特定の眼科装置が前記遠隔操作の対象として自動設定されるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動による検眼が可能な眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、眼底画像から動脈硬化に関する診断が可能である。これを利用すると、動脈硬化に係る症状が懸念される患者が定期的に眼底の撮影を行い、その画像を見て医師が経過観察を行う形態が可能となる。
【0003】
ここで、眼科装置の遠隔操作が可能であると、一人の検者による複数人の同時検査が可能となる。特許文献1には、眼科装置をタブレットで遠隔する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-29369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
眼科装置の遠隔操作においても、被検者が決められた椅子に座る、顔や体を特定の方向に向ける、台にあごを載せる、特定のタイミングでスタートボタンを押す、といった作業は被検者自身が行う必要がある。これらのことが適切に行われていないと、遠隔操作による検眼に支障が発生し、検査の効率が低下する。
【0006】
ここで、一人の検者による複数人の被検者に対する同時検査を行う場合、眼科装置の自動化できる操作や被検者自身が自ら行う操作は極力行い、検者の負担を極力少なくすることが望まれる。しかしながら、上述した被検者自身が行なわなくてはならない作業の出来不出来は個人差が大きく、結果が安定しない。これが眼科装置の遠隔操作による検眼の普及を阻む要因となっていた。
【0007】
このような背景において、本発明は、眼科装置の遠隔操作による検眼の効率を高める技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、眼科装置の遠隔操作を行う操作インターフェースと、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定部と、前記判定に基づき、検者への報知を行う報知部とを備え、前記報知が前記被検者の過去における前記報知の記録に基づいて行われる眼科装置の操作端末である。
【0009】
本発明は、眼科装置の遠隔操作を行う操作インターフェースと、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定部と、前記判定に基づき、検者への報知を行う報知部と、前記被検者のあごを載せるあご載せ台への前記あごの接触を検出する第1のセンサの出力と、前記被検者の額を当てる額当てへの前記額の接触を検出する第2のセンサの出力とを受け付ける通信部とを備え、前記判定は、前記第1のセンサの出力および前記第2のセンサの出力の有無に基づいて行われ、前記判定部は、前記第1のセンサと前記第2のセンサの出力に基づき、前記被検者の前記頭部の位置が適正であると判定された場合であっても、前記眼科装置の光学系の一部である対物レンズを介して撮影した画像中における前記被検眼の瞳の位置が予め定めた位置にない場合に、検眼を行うのに適正でないと判定する眼科装置の操作端末である。
【0010】
本発明は、眼科装置の遠隔操作を行う操作インターフェースと、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定部と、前記判定に基づき、検者への報知を行う報知部と、前記被検者のあごを載せるあご載せ台への前記あごの接触を検出する第1のセンサの出力と、前記被検者の額を当てる額当てへの前記額の接触を検出する第2のセンサの出力とを受け付ける通信部とを備え、前記判定は、前記第1のセンサの出力および前記第2のセンサの出力の有無に基づいて行われ、遠隔操作の対象となる眼科装置が複数あり、前記通信部は、前記第1のセンサの出力と前記第2のセンサの出力と共に前記第1のセンサおよび前記第2のセンサを備える特定の眼科装置の識別データを受け付け、前記識別データに基づき、前記特定の眼科装置が前記遠隔操作の対象として自動設定される眼科装置の操作端末である。
【0011】
本発明は、 眼科装置に対する被検者の顔の位置を検出するセンサの出力を受け付けるステップと、前記センサの出力に基づき、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップに基づき、検者への報知を行う報知ステップとを備え、前記報知が前記被検者の過去における前記報知の記録に基づいて行われる眼科検査の方法である。
【0012】
本発明は、コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、コンピュータに眼科装置に対する被検者の顔の位置を検出するセンサの出力を受け付けるステップと、前記センサの出力に基づき、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップに基づき、検者への報知を行う報知ステップとを実行させ、前記報知が前記被検者の過去における前記報知の記録に基づいて行われるプログラムである。本発明は、眼科装置に対する被検者の顔の位置を検出するセンサの出力を受け付けるステップと、前記センサの出力に基づき、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定ステップと、前記判定に基づき、検者への報知を行う報知ステップとを備え、前記被検者のあごを載せるあご載せ台への前記あごの接触を検出する第1のセンサの出力と、前記被検者の額を当てる額当てへの前記額の接触を検出する第2のセンサの出力とを受け付け、前記判定ステップは、前記第1のセンサの出力および前記第2のセンサの出力の有無に基づいて行われ、遠隔操作の対象となる眼科装置が複数あり、前記第1のセンサの出力と前記第2のセンサの出力と共に前記第1のセンサおよび前記第2のセンサを備える特定の眼科装置の識別データを受け付け、前記識別データに基づき、前記特定の眼科装置が前記遠隔操作の対象として自動設定される眼科検査の方法である。
【0013】
本発明は、コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、コンピュータに眼科装置に対する被検者の顔の位置を検出するセンサの出力を受け付けるステップと、前記センサの出力に基づき、前記眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適正か否かを判定する判定ステップと、前記判定に基づき、検者への報知を行う報知ステップとを実行させ、前記被検者のあごを載せるあご載せ台への前記あごの接触を検出する第1のセンサの出力と、前記被検者の額を当てる額当てへの前記額の接触を検出する第2のセンサの出力とを受け付け、前記判定ステップは、前記第1のセンサの出力および前記第2のセンサの出力の有無に基づいて行われ、遠隔操作の対象となる眼科装置が複数あり、前記第1のセンサの出力と前記第2のセンサの出力と共に前記第1のセンサおよび前記第2のセンサを備える特定の眼科装置の識別データを受け付け、前記識別データに基づき、前記特定の眼科装置が前記遠隔操作の対象として自動設定されるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の眼科装置の斜視図である。
図2】実施形態のブロック図である。
図3】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4】遠隔操作用端末300と眼科装置100の位置関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(眼科装置)
図1には、眼科装置100が示されている。眼科装置100は、眼底画像の撮影、眼底(後眼部)および前眼部のOCT画像を撮影する機能を有する。この例では、画像の基となる測定データは、遠隔操作用端末300(図2参照)に送られ、そこで眼底撮影画像や眼底のOCT画像といった診断画像が生成される。また、遠隔操作端末300を用いた眼科装置100の遠隔操作が可能である。眼科装置100としては、本実施形態の場合に限定されず、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)やOCTA(OCT angiography)であってもよい。また、複数の機能を複合化した眼科装置、例えば、OCTとSLOを複合化した眼科装置であってよい。
【0016】
眼科装置100は、本体101を備える。本体101には、あご載せ台支持部102が固定されている。あご載せ台支持部102は、被検者のあごを載せるあご載せ台103を備えている。あご載せ台103は、電動による上下動が可能である。あご載せ台103には、被検者のあごがあご載せ台103に載ったか否かを判定するためのセンサであるあご受け検出センサ(図2の符号201)が内蔵されている。この例では、あご受け検出センサ201として圧力センサが利用されている。あご載せ台103にあごが載せられ、上方から圧力が加わると、あご受け検出センサ201から検知信号が出力される。
【0017】
あご載せ台支持部102には、被検者の顔の位置決めに利用される枠構造105が固定されている。枠構造105の上部には、被検者の額を当てる額当て部106が設けられている。額当て部106には、圧力センサにより構成される額当て検出センサ(図2の符号202)が内蔵されている。額当て部106に額が当てられ、額当て部106に水平方向の圧力が加えられると、額当て検出センサ202から検知信号が出力される。
【0018】
あご受け検出センサ201と額当て検出センサ202は、眼科装置に対する被検者の頭(顔)の位置が適正であるか否かに係る情報を検出する手段である。この手段としてカメラを用いることもできる。この場合、撮影した画像を解析することで、眼科装置に対する被検者の頭部の位置を検出する。また、眼科装置に対する被検者の頭部の位置が適切であるか否かに係る情報を検出する手段として、光センサを用いることもできる。この場合、複数の光センサにより、被検者の頭部の位置が眼科装置に対して適正な位置にあるか否かの情報が取得される。
【0019】
あご載せ台支持部102には、あご載せ台103を上下に移動させるモータが内蔵されている。このモータの制御は、自動あるいはマニュアル操作により行われる。マニュアル操作の場合、操作インターフェース部207あるいは遠隔操作用端末300(図2参照)の操作インターフェース部303が操作される。
【0020】
操作インターフェース部207は、タッチパネルディスプレイであり、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)を利用した眼科装置100の操作が可能である。また、操作インターフェース部207のディスプレイには、撮影した眼底画像やOCT画像が表示可能である。これらの点は、遠隔操作用端末300(図2参照)の操作インターフェース部303についても同じである。
【0021】
また、操作インターフェース部207は、音声出力機能(スピーカ)と音声入力機能(マイク)を備え、被検者が遠隔地にいる検者と会話ができるようにされている。操作インターフェース部207は、後述するステップS104,S108,S111の検者への報知を行う報知部として機能する。報知は、画像表示で行なわれる。この報知の際、報知音の出力や点滅表示を併用してもよい
【0022】
本体101は、可動部104を備えている。可動部104は、本体101に対して水平方向(被検眼に対して前後左右方向)に移動する。この移動は、可動部104に内蔵したモータにより行われる。可動部104は、アライメント用の画像を得るカメラ、眼底画像を得るカメラ、OCT画像を得るための光学系、照明光学系、固視票やアライメント光を照射するための光学系を備える。これらの構成は、通常の眼科装置と同じである。
【0023】
可動部104には、上述した操作インターフェース部207が固定されている。可動部104は、眼科装置100の光学系の一部である対物レンズ107を備えている。対物レンズ107は、眼科装置100が備える各種の光学系の対物レンズである。なお、眼科装置100は、各種の光学系を備えるが、これらは一部が共用され、最終的に対物レンズを介して、被検眼に各種の光が照射され、また対物レンズを介して眼科装置100内に被検眼からの反射光が取り込まれる。可動部104内の光学系の詳細は、既知の製品と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0024】
(眼科装置側の制御系)
図2には、眼科装置100の制御系200が示されている。制御系200は、CPU、メモリ回路、インターフェース回路等の各種の電子回路を含むコンピュータにより構成されている。制御系の一部または全部を専用のハードウェアで構成してもよい。
【0025】
制御系200には、あご受け検出センサ201と額当て検出センサ202の出力が入力される。あご受け検出センサ201は、圧力センサであり、あご載せ台103上に上方から加わる圧力を検出する。額当て検出センサ202は、圧力センサであり、額当て部106に水平方向から加わる圧力を検出する。あご受け検出センサ201および額当て検出センサ202の出力は、通信部208を介して、遠隔操作端末300に送られる。
【0026】
あご受け検出センサ201および額当て検出センサ202により、対物レンズ107に対する被検者の頭部の位置が適正か否かが検出される。あご受け検出センサ201および額当て検出センサ202としては、圧力センサ以外に接触の状態を検出できるセンサが採用できる。例えば、リミットスイッチを用い、あご載せ台103へのあごの接触、および額当て部106への額の接触を検出する例が挙げられる。
【0027】
動作制御部206は、眼科装置100の動作の制御を行う。眼科装置100の制御は、自動制御、操作インターフェース207が操作されての手動制御、操作インターフェース303が操作されての遠隔手動制御により行われる。
【0028】
操作インターフェース部207は、タッチパネルディスプレイを利用して構成されている。操作インターフェース部207を市販のタブレットやPCを利用して構成することもできる。
【0029】
通信部208は、外部の機器との間で通信を行う。通信相手の機器は特に限定されないが、この例では、通信部208は、遠隔操作用端末300と通信を行う。通信の形態は、特に限定されず、無線または有線のLAN回線、インターネット回線、その他の通信回線が利用される。
【0030】
撮像部209は、被検眼の眼底撮影画像、眼底OCT画像、前眼部OCT画像、アライメント用の前眼部画像の撮影を行う。撮影部の構成は、公知の眼科装置と同じであるので詳しい説明は省略する。
【0031】
(遠隔制御に係る制御系)
検者は、遠隔操作用端末300を操作し、遠隔操作用端末300から離れた場所に設置された眼科装置100の遠隔操作を行う。遠隔操作用端末300は、コンピュータであり、PCやタブレットにより構成される。勿論、遠隔操作用端末300として専用のハードウェアを用意することもできる。
【0032】
遠隔操作用端末300は、眼科装置100から離れた場所で使用される。眼科装置100と遠隔操作用端末300との位置関係は、特に限定されず、同じ部屋内の離れた場所、異なる部屋、異なるフロアや建物、遠隔地等の場合が挙げられる。通信が可能ならば、両者の離間距離に特に限定はない。
【0033】
遠隔操作用端末300は、データ記憶部301、診断画像作成部302、操作インターフェース部303、通信部304、判定部305、報知信号生成部306、操作対象眼科装置選択部307を備える。データ記憶部301は、被検者の識別ID、前回の検査時におけるあご載せ台103の高さ位置等のアライメント情報、過去の報知信号の記録および過去の検眼内容を関連付けたデータを記憶する。
【0034】
また、データ記憶部301には、眼科装置100を用いた眼科検診時のエラー情報が被検者のIDファイルに紐づけて格納される。エラー情報としては、例えば、エラーの要因となる情報である「検査中に眼をつぶる」、「検査中に視線が動く」、「検査中に頭が動く」といったものが挙げられる。
【0035】
上記のエラー情報は、被検者のIDが取得された場合に、検者の端末(例えば、遠隔操作用端末300)に表示される。こうすることで、よりスムーズに検査を進めるのに有用な情報が検者に提供される。
【0036】
診断画像作成部302は、眼科装置100が取得した撮影データ(眼底画像の検出データやOCT画像の基となる干渉光のデータ)に基づき、各種の解析、眼底撮影画像やOCT画像等の診断画像の作成を行う。
【0037】
診断画像の作成は、専用の診断画像作成用のアプリケーションソフトウェアをCPUで実行することにより行われる。なお、FPGA等を用いて診断画像を作成するための専用の電子回路を構成することも可能である。
【0038】
操作インターフェース部303は、使用するPCやタブレットのユーザーインターフェースを用いて構成されている。操作インターフェース部303の機能は、遠隔操作用端末300を構成するPCに撮影用アプリケーションソフト(操作アプリケーションソフト)をインストールすることで実現されている。操作インターフェース部303が検者により操作されて、眼科装置100の遠隔操作が行なわれる。
【0039】
通信部304は、眼科装置100の通信部208との間で通信を行う。通信部304は、眼科装置100からの動作に係る信号および撮影データを受け付ける。勿論、他のデータや信号を通信部304で受け付けることもできる。また、通信部304は、眼科装置100に眼科装置100の操作に係る信号やデータ、例えば操作インターフェース部303に対して行われた検者の操作内容に関する信号やデータを眼科装置100に送信する。また、被検者と検者は、通信部208と304を利用して双方向通話が可能である。この通話の際、互いの撮影画像のやり取り(所謂テレビ電話)も可能である。
【0040】
判定部305は、遠隔操作用端末300を操作する検者に対する眼科装置100の遠隔操作に係る報知を行うか否かの判定を行う。この判定は、被検者の過去の検眼に係るデータ、あご受け検出センサ201の出力、額受け検出センサ202の出力、撮像部209が撮像した画像データの一または複数に基づき行われる。なお、判定の詳細については後述する。
【0041】
報知信号生成部306は、遠隔操作用端末300を操作して眼科装置100の遠隔操作を行う検者に報知される、遠隔操作および被験者への助力に係る報知信号を生成する。後述するように、報知信号には、第1の報知~第3の報知の3種類がある。各報知の内容に関しては後述する。ここで、検者に対する報知の種類は3種類であるが、3種類に限定されない。
【0042】
操作対象眼科装置選択部307は、遠隔操作用端末300が遠隔操作対象とする眼科装置の選択を行う。遠隔操作対象とする眼科装置の切り替えは、以下のようにして行われる。いま、眼科装置が複数台あり、それらを遠隔操作用端末300が遠隔操作可能であるとする。この場合、各眼科装置は、遠隔操作用端末300との通信時に、遠隔操作用端末300に自身の識別データを送信する。この識別データは、被検者のIDデータでもよい。この識別データに基づき、遠隔操作用端末300は、遠隔操作対象とする眼科装置を選択する。なお、遠隔操作用端末300が遠隔操作対象とする眼科装置の数は限定されない。また、遠隔操作の対象となる複数の眼科装置の中に異なる機種の眼科装置(例えば、OCTとSLO)が含まれていてもよい。
【0043】
(動作例1)
図3は、眼科装置100にいる撮影を行う場合の手順一例を示すフローチャートである。ここでは、被検眼の眼底OCT画像の撮影を行う場合を例に挙げ説明する。図5の処理を実行するためのプログラムは、適当な記憶領域に記憶され、そこから読み出されて実行される。図5の処理を実行するためのプログラムを記録媒体に記憶させ、そこから提供される形態も可能である。なお、図3には、眼科装置100の側で実行される処理と遠隔操作端末300の側で実行される処理の両方が記載されている。
【0044】
図5の処理は、以下の状態を前提としている。
(1)検者は、被検者から離れた場所にいる。
(2)被検者および検者になるべく負担をかけずに眼科撮影に係る処理を実行する。
(3)必要に応じて検者によるサポートや遠隔操作用端末300を用いた眼科装置100の遠隔操作が可能である。
【0045】
まず、被検者の特定を行う(ステップS101)。これは、被検者が自身のID番号を眼科装置100の操作インターフェース部207に入力することで行われる。例えば、通信部208に電子情報の読み取りリーダーを接続し、そこに被検者が所持するIDカードからID情報を読み取らせる等の方法で、ID情報が操作インターフェース部207に入力される。
【0046】
操作インターフェース部207に入力された被検者のID番号(識別番号)は、遠隔操作用端末300に送られる。被検者のID番号を受け付けた遠隔操作用端末300は、データ記憶部301から被検者の過去の検査記録を検索し、それを取得する(ステップS102)。
【0047】
被検者の過去の検査記録を取得したら、この検査記録に基づき、検者の助力が必要であるか否かの判定が行われる(ステップS103)。この判定では、眼科装置100または同等の眼科装置を用いた前回の検査において、後述する第2の報知が行なわれたか否か、が判定される。
【0048】
後述するように、第2の報知は、あご載せ台103にあごを載せ、且つ、額当て部106に額を当てることができない場合に行なわれる。よって、前回の検査で第2の報知信号が生成された事実は、前回の検査で最初の段階で躓いたことを意味する。よって、今回も同様な事態が懸念され、検者の助力が必要であると判定する。この場合、第1の報知が検者に対して行なわれる。なお、過去の検査記録がない場合は、ステップS104の第1の報知処理が行なわれる。
【0049】
ステップS104の第1の報知では、例えば、操作インターフェース部303に「顔の位置合わせのサポートをお願いします」等の表示が行なわれ、検者にそれを認識させる。それを見た検者は、被検者に音声通話を試み、音声によるサポートを行う。ステップS104の第1の報知を行った場合、ステップS107に進む。
【0050】
ステップS103で「サポート必要なし」と判定された場合、眼底のOCT画像の撮影を行うための初期設定を行う(ステップS105)。この場合、遠隔操作用端末300から眼科装置100に上記初期設定を指示する信号が送られる。
【0051】
ステップS105の初期設定では、過去の検査記録に基づき、あご載せ台103の高さ位置の調整と、可動部104の位置の調整が行なわれる。なお、過去の検査記録がない場合は、予め定めた設定値が採用される。
【0052】
次に、被検者に対して、あご載せ台103にあごを載せ、且つ、額当て部106に額を当てることを促す自動音声案内を被検者に対して行う(ステップS106)。この自動音声案内を聞いて、被検者は、あご載せ台103にあごを載せ、また同時に額当て部106に額を当てる所作を行う。
【0053】
ステップS106の後、あご受け検出センサ201および額受け検出センサ202から検知信号が出力されたら、ステップS107の判定がOKとなり、ステップS109に進む。ステップS106の後、予め定めた時間が経過しても、あご受け検出センサ201および額受け検出センサ202からの検知信号が出力されない場合、ステップS107の判定がNOとなり、第2の報知が行なわれる(ステップS108)。
【0054】
第2の報知は、あご載せ台103にあごを載せ、且つ、額当て部106に額を当てることができない状況を検者に知らせる報知である。第2の報知により、対物レンズ107に対する被検者の頭部の位置が適正でない旨が検者に報知される。この報知では、操作インターフェース部303に、例えば「顔の位置合わせのサポートをお願いします」等の表示が行なわれる。ここでは、第2の報知内容と第1の報知内容が同じであるが、第1の報知は、過去の検査履歴に基づくものであり、第2の報知は、現在進行している状況に基づくものであるので、その意味合いは異なる。そこで、上記の違いが検者に認識できる内容の報知とすることも可能である。
【0055】
ステップS108の第2の報知が行なわれた場合、検者は、被検者に音声通話を試み、音声によるサポートを行う。この場合、ステップS107に進む。
【0056】
ステップS109では、前眼部撮影画像を用いた光軸の精密な位置の調整が行なわれる。この処理では、前眼部を捉えた撮影画像の中心に瞳孔がくるように、可動部104の左右の位置の自動調整と、あご載せ台103の上下位置の自動調整が行なわれる。
【0057】
次に、前眼部撮影画像の中心に被検眼の瞳孔を位置させる調整(ステップS109の調整)ができたか否か、が判定され(ステップS110)、当該調整ができた場合は、ステップS112に進み、そうでない場合は、ステップS111に進み、第3の報知を行う。
【0058】
第3の報知では、操作インターフェース部303に、例えば「前眼部のアライメンができません」等の表示が行なわれる。この状態として、例えば、被検者があご載せ台103にあごを載せ、且つ、額当て部106に額を当てることができていても、顔の向きが傾いており、撮影に支障が生じる場合等が挙げられる。
【0059】
第3の報知により、あご受け検出センサ201の出力と額当て検出センサ202の出力からは、被検者の頭部の位置は、適正である旨は判定される(ステップS107の判定)が、より厳密に判定すると、実は適正でなかった旨が検者に知らされる。
【0060】
ステップS111の第3の報知が行なわれた場合、検者は、被検者に音声通話を試み、音声によるサポートを行う。この場合、ステップS109に進む。ここで、検者の遠隔操作により、各種調整をやり直してもよい。
【0061】
ステップS110の判定がOKとなった段階で、撮影位置のアライメント調整とピント調整を行う最適化処理を行う(ステップS112)。例えば、眼底のOCT撮影の位置の調整およびピント調整が行なわれる。
【0062】
その後、OCT撮影が行われ(ステップS113)、撮影データの取得(ステップS114)、更にデータの解析が行なわれ(ステップS115)、眼底OCT画像が作成される。そして、得られた眼底OCT画像の保存が行なわれ(ステップS116)、また、ステップS115で得た眼底OCT画像の操作インターフェース部207への表示が行なわれる(ステップS117)。
【0063】
(優位性)
ステップS103,S107,S110の判定を段階的に行うことで、検者のサポートを被検者それぞれのスキルに応じて行うことができる。すなわち、検者のサポートの必要がない状況では、自動あるいは検者に負担をかけることなく検査が進む。ここで、サポートが必要な段階を3段階で判定することで、被検者へのサポートを適切なタイミングで行なえると共に、検者の負担を抑えることができる。このため、一人の検者で複数の被検者に対応でき、複数の被検者の同時検診が可能となる。また、異なる遠隔地における検診を同時に行なうこと等も可能となる。
【0064】
(動作例2)
遠隔操作用端末300を用いた眼科検査は、複数の眼科装置を同時を可動させた場合にも対応できる。例えば、2台の眼科装置AおよびBがあり、眼科装置Aでは被検者aの検査を行い、眼科装置Bでは被検者bの検査を行う場合を考える。
【0065】
この場合、遠隔操作用端末300は共通で、眼科装置AとBのそれぞれに係り、図3の処理が行なわれる。ここで、眼科装置Aに係り、第2の報知(ステップS108)が行なわれるとする。この場合、ステップS107の判定の基となる情報が眼科装置Aから遠隔操作用端末300に送られ、通信部304で受信される。すなわち、眼科装置Aのあご受け検出センサ201と額当て検出センサ202の出力、更に眼科装置Aの識別データが遠隔操作用端末300の通信部304に送信される。上記の識別データに基づき、操作対象眼科装置選択部307は、眼科装置Aを通話や遠隔操作の対象として自動選択する。
【0066】
その後、眼科装置Aを対象にステップS107の処理を行う。そして、この処理の結果がNOである場合に、遠隔操作用端末300は、眼科装置Aを対象に第2の報知処理(ステップS108)を行う。
【0067】
この第2の報知処理の後、被検者aへの音声サポ―トや眼科装置Aの遠隔操作が行なわれるが、この際、遠隔操作用端末300の遠隔操作の対象は、眼科装置Aが自動選択されているので、音声通話や遠隔操作は、眼科装置Aを対象に行なわれる。よって、被検者は、対象となる眼科装置を選択する操作をしなくてもよく、煩雑な操作が避けられる。これは、ステップS103やS110の判定およびその後の音声サポートや遠隔操作に関しても同じである。
【0068】
以上述べたように、ステップS103,S109,S110の判定の基となる情報に紐付されて眼科装置の識別データが遠隔操作用端末300に送信される。そして、それに基づき遠隔操作用端末300は、音声サポートのための音声通信の対象および遠隔操作の対象となる眼科装置を選択する。このため、本体対象とすべきでない眼科装置に対する音声サポートや遠隔操作が行なわれる不都合が回避される。
【0069】
(具体例)
図4には、同じ室内の離れた位置に遠隔操作用端末300と眼科装置100が配置された状態の一例を示す。図4には、眼科装置100から離れた位置に医師(検者)350の机400があり、その机400の上に電子カルテのソフトウェアがインストールされ、また診断画像の表示、その他作業を行うためのPC(パーソナルコンピュータ)410が置かれている。図4の例では、PC410が遠隔操作用端末300を兼ねている。医師350は、PC410を操作して眼科装置100をコントロール可能である。
【0070】
この場合、例えば、医師350がPC410に向い、電子カルテに被検者から聞いた症状や所見の記入を行いつつ、その状態で図3の手順に従って、眼科装置100を用いた被検者360の眼科検査が行なわれる。この際、第1~第3の報知処理があれば、医師350は適宜眼科装置100の操作や被検者360のサポートを行う。報知処理がなければ、被検者360のセルフ検眼が進み、医師350の負担が大きく軽減され、また診察時間が短縮される。この場合、医師350が眼科装置100を操作する負担が減るので、その分、診察に集中できる。
【0071】
(その他)
眼科装置100とあご載せ台103にあごを載せた被検者が撮影するカメラを用意し、このカメラの撮影画像を、操作インターフェース部303のディスプレイに表示できるようにしてもよい。このカメラの撮影画像を利用することで、第1~第3の報知を受けた後の検者による被検者のサポートがより容易となる。
【符号の説明】
【0072】
100…眼科装置、101…本体、102…あご載せ台支持部、103…あご載せ台、104…可動部、105…枠構造、106…額当て部、107…対物レンズ、207…操作インターフェース部、350…医師(検者)、360…被検者、400…机、410…PC(遠隔操作用端末)。
図1
図2
図3
図4