(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/015 20060101AFI20220225BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B60R21/015 311
B60R21/207
B60R21/015 312
(21)【出願番号】P 2018060992
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 将太
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-105023(JP,A)
【文献】特開2011-162098(JP,A)
【文献】特開2016-43813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が衝突する衝突情報を検出する衝突検出部と、
前記車両のシートに着座する乗員の姿勢および体格のうち少なくとも1つを含む乗員情報を検出する乗員情報検出部と、
前記乗員より前側の展開位置において前記シートの一方の側部側から他方の側部側に向かって展開するように形成され、衝突に伴って前方に移動する前記乗員を受け止める保護エアバッグと、
前記保護エアバッグの先端部近傍に係合するように形成された係合部を有し、前記シートの他方の側部に沿って前後方向に移動可能に前記シートに配置された係合用移動体と、
前記保護エアバッグの前記展開位置および前記乗員情報検出部で検出された前記乗員情報に基づいて、前記係合部が前記保護エアバッグの先端部近傍に係合する係合位置を算出する係合位置算出部と、
前記衝突検出部で検出された衝突情報に基づいて、前記係合位置算出部で算出された前記係合位置に前記係合用移動体を移動させると共に前記保護エアバッグを展開させる展開制御部とを備えることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記保護エアバッグが配置され、前記シートの一方の側部に沿って前後方向に移動可能に前記シートに配置されたエアバッグ用移動体と、
前記乗員情報検出部で検出された前記乗員情報に基づいて、前記乗員より前側に前記保護エアバッグを展開させる前記展開位置を算出する展開位置算出部とをさらに有し、
前記係合位置算出部は、前記展開位置算出部で算出された前記展開位置に基づいて前記係合位置を算出し、
前記展開制御部は、前記展開位置算出部で算出された前記展開位置に前記エアバッグ用移動体を移動して前記保護エアバッグを展開させる請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記シート側に突出して前記保護エアバッグを前方から支持するように前記係合用移動体に設けられ、
前記係合用移動体は、前記係合部の後方に配置されて前記係合部との間で前記保護エアバッグの先端部近傍を挟持する固定部を有する請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記固定部は、前記係合部に向かって前記保護エアバッグを押圧するように前方に展開する固定エアバッグを有する請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記係合位置算出部は、さらに、前記衝突検出部で検出された前記衝突情報に基づいて前記係合位置を算出する請求項1~4のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアバッグ装置に係り、特に、自動車等の車両のシートに着座する乗員の前側にエアバッグを展開させるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のシートに着座する乗員の前側にエアバッグを展開して、自動車の衝突に伴って前方に移動する乗員を受け止めるエアバッグ装置が用いられている。例えば、インストルメントパネルにエアバッグを配置し、衝突時にインストルメントパネルから乗員に向かって展開するエアバッグ装置が提案されている。しかしながら、乗員の前側には広い空間が形成されているため、展開したエアバッグを確実に支持することが困難であった。
【0003】
そこで、展開したエアバッグを確実に支持する技術として、例えば、特許文献1には、サブバッグによるメインバッグのブレを防ぐことでエアバッグの乗員保護性能を高める助手席用エアバッグ装置が提案されている。この助手席用エアバッグ装置は、メインバッグと一体化したサブバッグがウインドシールドへ向かって展開することで、メインバッグをウインドシールドに対して確実に支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の助手席用エアバッグ装置は、乗員の姿勢、乗員の体格およびシート位置などに関わらず、所定の位置にエアバッグを展開させるため、乗員を確実に受け止めることが困難であった。例えば、近年、自動車のシートは、向きを大きく変えられるものが提案されており、そのシートの向きによっては乗員を確実に受け止めることができないおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、乗員をエアバッグで確実に受け止めるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエアバッグ装置は、車両が衝突する衝突情報を検出する衝突検出部と、車両のシートに着座する乗員の姿勢および体格のうち少なくとも1つを含む乗員情報を検出する乗員情報検出部と、乗員より前側の展開位置においてシートの一方の側部側から他方の側部側に向かって展開するように形成され、衝突に伴って前方に移動する乗員を受け止める保護エアバッグと、保護エアバッグの先端部近傍に係合するように形成された係合部を有し、シートの他方の側部に沿って前後方向に移動可能にシートに配置された係合用移動体と、保護エアバッグの展開位置および乗員情報検出部で検出された乗員情報に基づいて、係合部が保護エアバッグの先端部近傍に係合する係合位置を算出する係合位置算出部と、衝突検出部で検出された衝突情報に基づいて、係合位置算出部で算出された係合位置に係合用移動体を移動させると共に保護エアバッグを展開させる展開制御部とを備えるものである。
【0008】
ここで、保護エアバッグが配置され、シートの一方の側部に沿って前後方向に移動可能にシートに配置されたエアバッグ用移動体と、乗員情報検出部で検出された乗員情報に基づいて、乗員より前側に保護エアバッグを展開させる展開位置を算出する展開位置算出部とをさらに有し、係合位置算出部は、展開位置算出部で算出された展開位置に基づいて係合位置を算出し、展開制御部は、展開位置算出部で算出された展開位置にエアバッグ用移動体を移動して保護エアバッグを展開させることが好ましい。
【0009】
また、係合部は、シート側に突出して保護エアバッグを前方から支持するように係合用移動体に設けられ、係合用移動体は、係合部の後方に配置されて係合部との間で保護エアバッグの先端部近傍を挟持する固定部を有することが好ましい。
また、固定部は、係合部に向かって保護エアバッグを押圧するように前方に展開する固定エアバッグを有することが好ましい。
【0010】
また、係合位置算出部は、さらに、衝突検出部で検出された衝突情報に基づいて係合位置を算出することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、展開制御部が係合位置算出部で算出された係合位置に係合用移動体を移動させると共に保護エアバッグを展開させることにより、乗員より前側の展開位置においてシートの一方の側部側から他方の側部側に向かって展開した保護エアバッグの先端部近傍に係合部を係合させるので、乗員を保護エアバッグで確実に受け止めるエアバッグ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るエアバッグ装置の構成を示す図である。
【
図2】乗員を保護エアバッグで受け止める様子を示す図である。
【
図3】体格が小さい乗員を保護エアバッグで受け止める様子を示す図である。
【
図4】体格が大きい乗員を保護エアバッグで受け止める様子を示す図である。
【
図5】実施の形態2に係るエアバッグ装置の構成を示す図である。
【
図6】固定エアバッグが係合部との間で保護エアバッグの先端部近傍を挟持する様子を示す図である。
【
図7】実施の形態1および2の変形例に係るエアバッグ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係るエアバッグ装置の構成を示す。このエアバッグ装置は、自動車のシートSの一方の側部Sa近傍にエアバッグ用移動体1aが配置されると共にシートSの他方の側部Sb近傍に係合用移動体1bが配置され、エアバッグ用移動体1aに保護エアバッグ2が収納されている。また、エアバッグ装置は、乗員情報検出部3および衝突検出部4を有し、乗員情報検出部3および衝突検出部4に展開位置算出部5aを介して展開制御部6が接続され、この展開制御部にインフレータ7および駆動部8aがそれぞれ接続されている。また、展開位置算出部5aには、係合位置算出部5bが接続されており、この係合位置算出部5bに展開制御部6および駆動部8bが順次接続されている。そして、インフレータ7に保護エアバッグ2が接続されると共に駆動部8aにエアバッグ用移動体1aが接続され、駆動部8bに係合用移動体1bが接続されている。
【0014】
エアバッグ用移動体1aは、シートSに対して上下方向に延びる平板形状を有し、シートSの側部Saに対向して配置されている。シートSの下部には、シートSに対して前後方向D1に延びるレール9aが設けられており、このレール9aに沿ってエアバッグ用移動体1aが前後方向D1に移動可能に取り付けられている。これにより、エアバッグ用移動体1aは、レール9aを介してシートSに取り付けられることになる。ここで、エアバッグ用移動体1aは、シートバックの前側に位置する展開位置P1aに向かって、展開位置P1aの後方に退避した退避位置P2aから移動可能にレール9aに取り付けられている。また、エアバッグ用移動体1aは、展開された保護エアバッグ2の基端部を支持する強度を有し、例えば樹脂などから構成することができる。
保護エアバッグ2は、衝突に伴って前方に移動する乗員Rを受け止めるもので、エアバッグ用移動体1aから係合用移動体1bに向かって、すなわちシートSの側部Sa側から側部Sb側に向かって展開するようにエアバッグ用移動体1aに配置されている。
【0015】
係合用移動体1bは、シートSに対して上下方向に延びる板形状を有し、シートSの側部Sbに対向して配置されている。シートSの下部には、シートSに対して前後方向D1に延びるレール9bが設けられており、このレール9bに沿って係合用移動体1bが前後方向D1に移動可能に取り付けられている。これにより、係合用移動体1bは、レール9bを介してシートSに取り付けられることになる。ここで、係合用移動体1bは、シートバックの前側に位置する係合位置P1bに向かって、係合位置P1bから後方に退避した退避位置P2bから移動可能にレール9bに取り付けられている。
また、係合用移動体1bの前部には、保護エアバッグ2の先端部近傍に係合する係合部12が形成されている。この係合部12は、シートS側に突出する形状を有し、保護エアバッグ2の先端部近傍を前方から支持するように形成されている。係合用移動体1bは、保護エアバッグ2との係合を保つ強度を有し、例えば樹脂などから構成することができる。
【0016】
駆動部8aは、エアバッグ用移動体1aをレール9aに沿って前後方向D1に移動させるものである。また、駆動部8bは、係合用移動体1bをレール9bに沿って前後方向D1に移動させるものである。駆動部8aおよび8bは、例えばモータなどから構成することができる。
インフレータ7は、保護エアバッグ2に展開ガスを注入して保護エアバッグ2を展開させるものである。
【0017】
乗員情報検出部3は、シートSに着座する乗員Rの姿勢および体格などの乗員情報を検出するものである。乗員情報検出部3としては、例えばカメラなどを用いることができる。
衝突検出部4は、自動車が衝突する衝突情報を検出するものである。例えば、衝突検出部4は、衝突物の位置、方向および大きさなどの衝突情報を衝突前に検出すると共に自動車の衝突位置などの衝突情報を衝突時に検出する。衝突検出部4としては、例えばカメラなどを用いることができる。
【0018】
展開位置算出部5aは、乗員情報検出部3で検出された乗員情報および衝突検出部4で検出された衝突情報に基づいて、乗員Rの前側において保護エアバッグ2を展開させる展開位置P1aを算出する。
係合位置算出部5bは、展開位置算出部5aで算出された展開位置P1a、乗員情報検出部3で検出された乗員情報および衝突検出部4で検出された衝突情報に基づいて、係合用移動体1bの係合部12が保護エアバッグ2の先端部近傍に係合する係合位置P1bを算出する。すなわち、係合位置算出部5bは、展開された保護エアバッグ2の先端部より前側において係合部12が保護エアバッグを支持する係合が保たれる係合位置P1bを算出する。
【0019】
展開制御部6は、エアバッグ制御部10および係合制御部11を有する。エアバッグ制御部10は、衝突検出部4で検出される衝突情報に基づいて、エアバッグ用移動体1aを退避位置P2aから展開位置算出部5aで算出された展開位置P1aに駆動部8aを介して移動させる。また、係合制御部11が、衝突検出部4で検出される衝突情報に基づいて、係合用移動体1bを退避位置P2bから係合位置算出部5bで算出された係合位置P1bに駆動部8bを介して移動させる。そして、エアバッグ制御部10が、展開位置P1aに移動されたエアバッグ用移動体1aからインフレータ7を介して保護エアバッグ2を展開させる。
【0020】
次に、この実施の形態の動作について説明する。
まず、
図1に示すように、シートSに乗員Rが着座した状態で自動車が走行される。このとき、エアバッグ用移動体1aおよび係合用移動体1bは、それぞれ退避位置P2aおよびP2bに配置されている。自動車に前方から衝突物が接近すると、衝突検出部4が、衝突物の位置、方向および大きさなどの衝突情報を順次検出する。また、乗員情報検出部3が、シートSに着座する乗員Rの姿勢および体格などの乗員情報を順次検出する。
衝突検出部4により検出された衝突情報と乗員情報検出部3により検出された乗員情報は、展開位置算出部5aに出力される。また、図示しない自動車の制御部が、自動車の走行情報を展開位置算出部5aに順次出力する。走行情報としては、例えば、自動車の走行方向および速度などが挙げられる。
【0021】
衝突情報、乗員情報および走行情報が展開位置算出部5aに入力されると、展開位置算出部5aは、衝突情報、乗員情報および走行情報に基づいて乗員Rの前側に保護エアバッグ2を展開させる展開位置P1aを算出する。そして、展開位置算出部5aは、衝突情報、乗員情報、走行情報および展開位置P1aを展開制御部6と係合位置算出部5bにそれぞれ出力する。
展開位置算出部5aから衝突情報、乗員情報、走行情報および展開位置P1aが係合位置算出部5bに入力されると、係合位置算出部5bは、衝突情報、乗員情報、走行情報および展開位置P1aに基づいて、展開位置P1aより前側で且つ係合部12による保護エアバッグ2の係合が保たれる係合位置P1bを算出する。係合位置算出部5bは、算出された係合位置P1bを展開制御部6に出力する。
【0022】
展開位置算出部5aから衝突情報、乗員情報、走行情報および展開位置P1aが展開制御部6に入力されると、展開制御部6は、衝突情報に基づいて自動車の衝突の可能性を判定する。展開制御部6は、自動車が衝突する可能性が高いと判定すると、エアバッグ制御部10が展開位置P1aに基づいて駆動部8aを駆動すると共に係合制御部11が係合位置P1bに基づいて駆動部8bを駆動して、
図2(a)に示すように、エアバッグ用移動体1aを退避位置P2aから展開位置P1aに移動させ、係合用移動体1bを退避位置P2bから係合位置P1bに移動させる。そして、エアバッグ制御部10が、インフレータ7を制御して乗員Rの前側に保護エアバッグ2を展開させる。
【0023】
続いて、自動車が衝突物に前方から衝突すると、
図2(b)に示すように、衝突に伴って前方に移動する乗員Rが保護エアバッグ2により受け止められる。このとき、係合用移動体1bの係合部12が、保護エアバッグ2の先端部13近傍に係合して、保護エアバッグ2が前方に移動しないように保護エアバッグ2を前側から支持するため、前方に移動する乗員Rを保護エアバッグ2で確実に受け止めることができる。
【0024】
ここで、例えば、
図3に示すように、乗員Rの体格が小さい場合には、その乗員情報が乗員情報検出部3から展開位置算出部5aに入力されており、展開位置P1aおよび係合位置P1bは、展開位置算出部5aおよび係合位置算出部5bによりシートバックから少し前方に離れた位置に算出されている。このため、エアバッグ用移動体1aおよび係合用移動体1bはシートバックから少し前方に離れた展開位置P1aおよび係合位置P1bに移動され、その展開位置P1aで展開された保護エアバッグ2が係合部12により係合される。
【0025】
一方、
図4に示すように乗員の体格が大きい場合には、その乗員情報が乗員情報検出部3から展開位置算出部5aに入力されており、展開位置P1aおよび係合位置P1bは、展開位置算出部5aおよび係合位置算出部5bによりシートバックから大きく前方に離れた位置に算出されている。このため、エアバッグ用移動体1aおよび係合用移動体1bはシートバックから大きく前方に離れた展開位置P1aおよび係合位置P1bに移動され、その展開位置P1aで展開された保護エアバッグ2が係合部12により係合される。
【0026】
このように、展開位置算出部5aが、乗員情報に基づいて展開位置P1aを算出することにより、例えば乗員Rの体格が大きく異なる場合でも乗員Rの前側に保護エアバッグ2を展開して乗員Rを保護エアバッグ2で確実に受け止めることができる。
同様に、展開位置算出部5aが、乗員情報、衝突情報および走行情報に基づいて展開位置P1aを算出することで、例えば衝突により乗員Rが前方に大きく移動する場合でも乗員Rの前側に保護エアバッグ2を展開して乗員Rを保護エアバッグ2で確実に受け止めることができる。
【0027】
また、保護エアバッグ2で乗員Rを受け止める際に、小さい体格の乗員Rと比較して大きい体格の乗員Rが保護エアバッグ2に与える圧力は大きくなる。このとき、保護エアバッグ2に加わる圧力の違いによらずに、係合位置P1bを展開位置P1aに対して一定の距離に算出する、すなわち係合部12と保護エアバッグ2の先端部13近傍との距離を一定にすると、例えば圧力が大きい場合に係合部12による保護エアバッグ2の係合を保つことが困難となる。
そこで、係合位置算出部5bは、乗員情報、衝突情報および走行情報に基づいて乗員Rが保護エアバッグ2に与える圧力を求め、係合部12による保護エアバッグ2の係合が保たれるように圧力に応じた係合位置P1bを算出する。これにより、乗員Rの体格などに応じて変動する最適な係合位置P1bを算出することができ、係合部12による保護エアバッグ2の係合を確実に保つことができる。
【0028】
なお、展開制御部6は、保護エアバッグ2で乗員Rを確実に受け止めることができる場合には、自動車が衝突物に衝突した後で、エアバッグ用移動体1aおよび係合用移動体1bを移動させて保護エアバッグ2を展開させてもよい。これにより、係合位置算出部5bは、衝突した直後に検出された衝突情報、乗員情報および走行情報に基づいて係合位置P1bを算出できるため、係合位置P1bをより正確に算出することができる。
【0029】
本実施の形態によれば、係合位置算出部5bが保護エアバッグ2の展開位置P1aおよび乗員情報検出部3で検出された乗員情報に基づいて係合部12が保護エアバッグ2の先端部13近傍に係合する係合位置P1bを算出し、展開制御部6が係合位置算出部5bで算出された係合位置P1bに係合用移動体1bを移動させると共に保護エアバッグ2を展開させるため、係合部12を保護エアバッグ2に強固に係合させることができ、乗員Rを保護エアバッグ2で確実に受け止めることができる。
【0030】
実施の形態2
上記の実施の形態1において、係合用移動体1bは、係合部12との間で保護エアバッグ2の先端部13近傍を挟持する固定部を有することが好ましい。
例えば、
図5に示すように、実施の形態1の係合用移動体1bに固定部21を配置すると共にインフレータ22を新たに配置することができる。
【0031】
固定部21は、係合用移動体1bの後部がシートS側に突出した支持部23と、支持部23に収納された固定エアバッグ24とを有する。支持部23は、展開された固定エアバッグ24の基端部を支持する強度を有し、例えば樹脂などから構成することができる。固定エアバッグ24は、係合部12に向かって前方に展開するように支持部23に配置されている。
インフレータ22は、固定エアバッグ24に展開ガスを注入して固定エアバッグ24を展開させるもので、係合制御部11に接続されると共に固定エアバッグ24に接続されている。
【0032】
このような構成により、実施の形態1と同様に、エアバッグ制御部10がエアバッグ用移動体1aを展開位置P1aに移動させると共に係合制御部11が係合位置P1bに係合用移動体1bを移動させ、エアバッグ制御部10が保護エアバッグ2を展開させる。これにより、保護エアバッグ2の先端部近傍が係合部12により前方から支持されるように係合される。
続いて、係合制御部11が、インフレータ22を介して固定エアバッグ24を係合部12に向かって前方に展開させる。これにより、固定エアバッグ24が、
図6に示すように、保護エアバッグ2を押圧するように展開され、係合部12との間で保護エアバッグ2の先端部13近傍を挟持して保護エアバッグ2の先端部13を固定することができる。
【0033】
本実施の形態によれば、固定部21は、係合部12に向かって保護エアバッグ2を押圧するように前方に展開する固定エアバッグ24を有するため、係合部12と固定エアバッグ24の間で保護エアバッグ2を挟持して保護エアバッグ2を固定することができ、乗員Rを保護エアバッグ2で確実に受け止めることができる。
ここで、本実施の形態では、固定部21は、係合部12と固定エアバッグ24との間で保護エアバッグ2を挟持するように構成されたが、係合部12との間で保護エアバッグ2を挟持することができればよく、固定エアバッグ24に限られるものではない。
【0034】
なお、上記の実施の形態1および2では、保護エアバッグ2は、エアバッグ用移動体1aに配置されてシートSの側部Saに沿って前後方向D1に移動可能に設けられたが、乗員Rより前側の展開位置P1aにおいてシートSの側部Sa側から側部Sb側に向かって展開できればよく、これに限られるものではない。
例えば、
図7に示すように、保護エアバッグ2は、シートSの側部Sa近傍に設けられたアームレストTに配置することもできる。
【0035】
また、上記の実施の形態1および2では、係合部12は、シートS側に突出するように形成されたが、保護エアバッグ2の先端部13近傍を係合するように形成されていればよく、突出した形状に限られるものではない。
【0036】
また、上記の実施の形態1および2では、衝突検出部4は、自動車の衝突前に衝突情報を検出したが、自動車の衝突情報を検出することができればよく、衝突前に衝突情報を検出するものに限られるものではない。
例えば、実施の形態1において、衝突検出部4は、自動車が衝突したか否かの衝突情報のみを検出してもよい。乗員情報検出部3で検出される乗員情報に基づいて、展開位置算出部5aが乗員Rより前側に保護エアバッグ2を展開させる展開位置P1aを算出する。続いて、係合位置算出部5bが、展開位置算出部5aで算出された展開位置P1aおよび乗員情報検出部3で検出された乗員情報に基づいて、係合部12が保護エアバッグ2の先端部13近傍に係合する係合位置P1bを算出する。そして、衝突検出部4で衝突情報が検出されると、エアバッグ制御部10が駆動部8aを介して展開位置算出部5aで算出された展開位置P1aにエアバッグ用移動体1aを移動させると共に、係合制御部11が駆動部8bを介して係合位置算出部5bで算出された係合位置P1bに係合用移動体1bを移動させる。続いて、エアバッグ制御部10が、インフレータ7を介して保護エアバッグ2を展開させる。これにより、乗員Rの前側に保護エアバッグ2が展開し、その保護エアバッグ2の先端部13近傍が係合部12により係合されるため、乗員Rを保護エアバッグ2で確実に受け止めることができる。
【0037】
また、上記の実施の形態1および2では、エアバッグ用移動体1aは、乗員Rの後方の退避位置P2aに退避されたが、展開位置P1aから退避した位置であればよく、乗員Rの後方に限られるものではない。同様に、係合用移動体1bは、乗員Rの後方の退避位置P2bに退避されたが、係合位置P1bから退避した位置であればよく、乗員Rの後方に限られるものではない。例えば、係合用移動体1bは、シートSの下部に設定された退避位置からシートSの側部に沿って上方に移動するように構成することもできる。
また、上記の実施の形態1および2において、エアバッグ用移動体1aは展開位置P1aに位置する形状から変形させた状態で退避位置P2aに配置することができ、係合用移動体1bは係合位置P1bに位置する形状から変形させた状態で退避位置P2bに配置することができる。例えば、係合用移動体1bは、ロール状に変形させた状態で退避位置P2bに配置し、その前縁部を引き出すようにして係合位置P1bに移動させることができる。これにより、係合用移動体1bを退避位置P2bにコンパクトに配置することができる。
【0038】
また、上記の実施の形態1および2では、エアバッグ用移動体1aは、平板状に形成されたが、展開した保護エアバッグ2を支持することができればよく、平板形状に限られるものではない。また、係合用移動体1bは、板状に形成されたが、係合部12で保護エアバッグ2の先端部13近傍を係合できればよく、板形状に限られるものではない。例えば、エアバッグ用移動体1aおよび係合用移動体1bは、湾曲するように形成することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1a エアバッグ用移動体、1b 係合用移動体、2 保護エアバッグ、3 乗員情報検出部、4 衝突検出部、5a 展開位置算出部、5b 係合位置算出部、6 展開制御部、7,22 インフレータ、8a,8b 駆動部、9a,9b レール、10 エアバッグ制御部、11 係合制御部、12 係合部、13 保護エアバッグの先端部、21 固定部、23 支持部、24 固定エアバッグ、
S シート、Sa,Sb シートの側部、D1 前後方向、R 乗員、P1a 展開位置、P1b 係合位置、P2a,P2b 退避位置、T アームレスト。