(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】塗料組成物及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220225BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220225BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20220225BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/43
(21)【出願番号】P 2018066847
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 田邉祥子、「メタリック塗料に及ぼす塗料対流の影響に関する考察」、DNTコーティング技報No.17、第12~18頁、大日本塗料株式会社、2017年10月10日(ウェブサイトの掲載日)、インターネット<全ページダウンロード用URL:http://www.dnt.co.jp/technology/technique/pdf/giho17-all.pdf>及び<分割ダウンロード用URL:http://www.dnt.co.jp/technology/technique/pdf/giho17-12.pdf> 田邉祥子、「メタリック塗料に及ぼす塗料対流の影響に関する考察」、色材協会創立90周年記念会議要旨集、一般社団法人色材協会、2017年10月10日(ウェブサイトの掲載日)、インターネット<URL:http://www.shikizai.org/conference/90th_conference/index.html> 田邉祥子、「メタリック塗料に及ぼす塗料対流の影響に関する考察」、色材協会創立90周年記念会議口頭発表資料、一般社団法人色材協会、2017年10月18日(発明を発表した日)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】甲斐上 誠
(72)【発明者】
【氏名】大田 快
(72)【発明者】
【氏名】田邉 祥子
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145361(JP,A)
【文献】特開2017-082072(JP,A)
【文献】特開2016-186021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗片状顔料、樹脂、
レオロジーコントロール剤及び溶媒を含む塗料組成物であって、
前記塗料組成物中における不揮発分の含有量が10~60質量%であり、
前記塗料組成物は、せん断速度0.1/sでの粘度が0.5~100Pa・s、且つせん断速度が1000/sでの粘度が0.01~5Pa・sであり、
前記塗料組成物は、レオロジー測定においてひずみ0.1%でのtanδが0.5以上8以下であり、さらにレオロジー測定においてせん断速度100/sを30sかけた後にせん断速度0.1/sを180sかけた際の粘度回復速度が0.001以上0.5以下であることを特徴とする塗料組成物
(ただし、前記塗料組成物中における不揮発分の含有量が35~60質量%である場合を除く。)。
【請求項2】
前記塗料組成物の不揮発分中における鱗片状顔料の含有量が1~40質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記塗料組成物中における
レオロジーコントロール剤の含有量が
0.001~
10質量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記
レオロジーコントロール剤が、ベントナイト、有機ベントナイト、カオリン、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、変性ウレア、脂肪酸アマイド、酸化ポリエチレン、植物油、脂肪酸、アマニ重合油、水添ヒマシ油、金属石鹸、ベンジリデンソルビトール、硫酸エステル系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、及びポリエーテル系界面活性剤より選ばれる少なくとも1種のレオロジーコントロール剤
であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記塗料組成物が、表面調整剤を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記塗料組成物が、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、及びエーテル系溶媒より選ばれる少なくとも1種の溶媒を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
刷毛および/またはローラーを用いて、請求項1~6のいずれか一項に記載の塗料組成物で基材を塗装して塗膜を形成させる工程を含むことを特徴とする塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物及び該塗料組成物を用いた塗装方法に関し、特には、刷毛やローラーで塗装を行う際に、色ムラなく均一な塗膜を形成することが可能な塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料には様々な用途が存在するが、このうち、自動車をはじめ電子機器や建築構造物等の被塗物には高級感や高意匠性を付与する目的でメタリック塗料が使用されている。メタリック塗料は、一般的にアルミ等の鱗片状の金属顔料を含むものであり、見る角度により反射光強度の異なる塗膜を形成できるため、メタリック感とも呼ばれる金属調の仕上がりを被塗物に付与することが可能である。メタリック感に優れる塗膜を得るためには、被塗物の表面に沿って塗膜中で平行に鱗片状顔料を配列させ散乱光を抑えることが重要であり、これまでにも種々の検討が行われている。
【0003】
特開平8-89877号公報(特許文献1)は、特定のエアー流量条件によりエアー霧化塗装を行うことを特徴とする配向性顔料含有塗膜の形成方法を記載しており、これによって、塗膜に塗装ムラを生じることなく、常に配向性顔料が均一な配向ならびに分散を呈する正常な塗膜状態を得ることができるとしている。
【0004】
特開平10-298458号公報(特許文献2)は、光輝性顔料としてアルミナフレークおよび粘性制御剤を含有する光輝性顔料含有塗料組成物を2コート1ベーク工程により塗装し、複合塗膜を形成することで、高外観でムラのない塗膜が形成できるとしている。
【0005】
特開平11-181337号公報(特許文献3)は、有機溶剤、ビニル系合成樹脂、着色材料、メタリック顔料、粘性調整剤を含有し、特定の粘度、TI値及び比重となるように調整した有機溶剤系組成物のゲル状粒子が、水系分散媒に対して分散している水中油型のメタリック調塗料組成物を記載しており、これによって、従来のメタリック塗料が抱えていた、メタリック顔料の不十分な分散や、配向がばらつくことによるメタリックむらの問題を解決できるとしている。
【0006】
特開2017-82072号公報(特許文献4)は、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリルシリコーン樹脂や水酸基含有ふっ素樹脂をポリオールとして含む2液型のメタリック塗料組成物中に、鱗片状金属顔料を高含有量で配合することによって、刷毛やローラーを用いて塗装を行う際にもムラなく高輝度な金属調塗膜を形成できることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-89877号公報
【文献】特開平10-298458号公報
【文献】特開平11-181337号公報
【文献】特開2017-82072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3に記載される技術は、いずれも鱗片状顔料の配向制御を意図しているものと考えられるが、いずれの技術も適用可能な範囲が広いとは言えない。特許文献1に記載される方法はスプレー塗装に限定されているし、特許文献2や特許文献3に記載される塗料組成物も具体的にはスプレー塗装が行われている。更に、特許文献2では、メタリック塗料でスプレー塗装した後に焼付けを行うことも必要としているし、特許文献3に記載されるメタリック塗料は、特定の粘度及び比重に調整された有機溶剤系ゲル状粒子を水系分散媒に分散させてなる水中油型の塗料組成物であるように、非常に特殊な形態を取ることを必要としている。
【0009】
鱗片状顔料を含む塗料は、塗装手段が刷毛やローラーである場合、スプレー塗装と異なり塗膜中の顔料を平行に配向させることが困難であることから、色ムラなく均一な塗膜を形成することが一層困難であった。これに対して、特許文献4に記載される技術では、刷毛塗装やローラー塗装であっても、色ムラなく均一な塗膜を形成することができることを特徴としている。しかしながら、特許文献4に記載される技術は、塗膜中での鱗片状金属顔料の自由度を低くする目的で、鱗片状金属顔料を高含有量で配合している。使用者が求めるニーズも多様化してきており、異なる手段によって、色ムラなく均一な塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することは依然として技術的貢献が高いものと考える。
【0010】
このような状況下、本発明の目的は、従来技術とは異なる手段によって、刷毛やローラーで塗装を行う際に、色ムラなく均一な塗膜を形成することが可能な塗料組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、刷毛やローラーで塗装を行う際に、色ムラなく均一な塗膜を形成することが可能な塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鱗片状顔料、樹脂及び溶媒を含み、特定の粘度を有する塗料組成物のレオロジー特性を制御することで、刷毛やローラーで塗装を行っても、色ムラなく均一な塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明の塗料組成物は、鱗片状顔料、樹脂、及び溶媒を含む塗料組成物であって、
前記塗料組成物は、せん断速度0.1/sでの粘度が0.5~100Pa・s、且つせん断速度が1000/sでの粘度が0.01~5Pa・sであり、
前記塗料組成物は、レオロジー測定においてひずみ0.1%でのtanδが0.5以上8以下であり、さらにレオロジー測定においてせん断速度100/sを30sかけた後にせん断速度0.1/sを180sかけた際の粘度回復速度が0.001以上0.5以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の塗料組成物の好適例においては、前記塗料組成物の不揮発分中における鱗片状顔料の含有量が1~40質量%の範囲内である。
【0014】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、前記塗料組成物中における不揮発分の含有量が10~60質量%である。
【0015】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、前記塗料組成物が、ベントナイト、有機ベントナイト、カオリン、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、変性ウレア、脂肪酸アマイド、酸化ポリエチレン、植物油、脂肪酸、アマニ重合油、水添ヒマシ油、金属石鹸、ベンジリデンソルビトール、硫酸エステル系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、及びポリエーテル系界面活性剤より選ばれる少なくとも1種のレオロジーコントロール剤を含む。
【0016】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、前記塗料組成物が、表面調整剤を含む。
【0017】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、前記塗料組成物が、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、及びエーテル系溶媒より選ばれる少なくとも1種の溶媒を含む。
【0018】
また、本発明の塗装方法は、刷毛および/またはローラーを用いて、上記の塗料組成物で基材を塗装して塗膜を形成させる工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、刷毛やローラーで塗装を行う際に、色ムラなく均一な塗膜を形成することが可能な塗料組成物及び塗装方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の塗料組成物を詳細に説明する。本発明の塗料組成物は、鱗片状顔料、樹脂、及び溶媒を含む塗料組成物であって、前記塗料組成物は、せん断速度0.1/sでの粘度が0.5~100Pa・s、且つせん断速度が1000/sでの粘度が0.01~5Pa・sであり、前記塗料組成物は、レオロジー測定においてひずみ0.1%でのtanδが0.5以上8以下であり、さらにレオロジー測定においてせん断速度100/sを30sかけた後にせん断速度0.1/sを180sかけた際の粘度回復速度が0.001以上0.5以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明の塗料組成物は、以下に示すレオロジー特性を満たすため、刷毛やローラーで塗装を行う場合であっても、色ムラなく均一な塗膜を形成することができる。
【0022】
まず、本発明の塗料組成物は、レオロジー測定においてひずみ0.1%でのtanδが0.5以上8以下である。ひずみ0.1%でのレオロジー測定は、弾性率がひずみの変化に影響を受けず一定である線形領域にある塗料組成物のレオロジー特性を測定することができ、ひずみ0.1%におけるtanδが0.5以上8以下であると、塗料が良好にレベリングするため、刷毛やローラーでの塗装時に凹凸なく均一な塗膜表面を形成でき、塗膜内の鱗片状顔料が表面凹凸に影響されず均一で且つ塗膜表面に対して平行に並びやすい。ひずみ0.1%でのtanδが0.5未満では、レベリング性が劣るために塗装痕や塗り継ぎによる段差が目立つ、一方、ひずみ0.1%でのtanδが8を超えると、タレが生じるため膜厚を確保できず隠蔽性が劣る。
【0023】
また、本発明の塗料組成物は、レオロジー測定においてせん断速度100/sを30sかけた後にせん断速度0.1/sを180sかけた際の粘度回復速度が0.001以上0.5以下である。せん断速度100/sでの粘度は、撹拌や塗装作業を行っているときの塗料組成物の状態(塗装状態)のような急激なシェアをかけた状態の塗料組成物の粘度を想定しており、その後、せん断速度を0.1/sに変更することで、塗装作業が完了した後(塗装後)の自重のみがかかる静置状態の塗料組成物を再現している。このときの粘度回復速度が0.001以上0.5以下であると、塗装作業時のシェアにより鱗片状顔料の配向が乱れても急激に粘度上昇せず低粘度であるために塗膜表面に対し平行に配向することができ、また塗装による痕跡については表面が平滑にフローすることができるため、刷毛やローラーでの塗装であっても塗り継ぎによる段差や塗りムラを生じない。上記粘度回復速度が0.001未満では、フロー後も粘度が回復しないことで塗膜にタレが生じ、一方、上記粘度回復速度が0.5を超えると、塗装後すぐに高粘度となるために乱れた鱗片状顔料が塗膜表面に対し平行に配向することができない。
【0024】
本明細書において、レオロジー測定は、動的粘弾性測定装置(例えばAnton-Paar社製MCR-301)でコーンプレートを用いて23℃の塗料組成物に対して行われる。なお、塗料組成物が2液型塗料組成物である場合は、主剤と硬化剤とを混合した直後(例えば混合後1時間以内)の塗料組成物に対してレオロジー測定を行う。
ひずみ0.1%でのレオロジー測定は、動的粘弾性測定装置(例えばAnton-Paar社製MCR-301)でコーンプレートを用い、周波数1Hz、ひずみ0.01%~100%をかけることで測定できる。また、粘度回復速度は、同様の動的粘弾性測定装置でコーンプレートを用い、せん断速度100/sを30sかけた後にせん断速度0.1/sに変更して180sかける条件下で塗料の粘度を測定することで求めることができる。このせん断速度100/sをかける時間(30s)はこの速度で塗料が安定化するまでの時間を想定したものであるため、これよりも長い30sを超える時間であってもよい。せん断速度0.1/sをかける時間(180s)は、塗料の粘度が回復するまでの時間を想定したものであるため、同様に、これよりも長い180sを超える時間であっても問題ない。横軸に時間(s)、縦軸に粘度(Pa・s)としたxy平面に測定値をプロットした場合に、せん断速度0.1/sへの変更後に塗料の粘度が上昇する過程において粘度変化の最大の傾きを粘度回復速度とする。具体的には、せん断速度0.1/sへの変更直後から、上記xy平面にプロットされる粘度変化を表す曲線に対して接線を引いた場合の最大傾きを求める。
【0025】
本発明の塗料組成物中の不揮発分の組成や含有量および塗料組成物の粘度を適宜調整することで、ひずみ0.1%でのtanδを0.5以上8以下に調整することができる。さらに、本発明の塗料組成物中にレオロジーコントロール剤を0.001~10質量%、好ましくは0.01~5質量%配合することにより粘度回復速度を0.001以上0.5以下に調整することができる。例えば、調製した塗料組成物のひずみ0.1%におけるtanδが0.5未満である場合には、有機溶剤を加え塗料組成物中の不揮発分の割合を下げたりすることでtanδの値を上げることができる。逆にひずみ0.1%におけるtanδが8を超えている場合は、塗料組成物中の不揮発分の割合を上げたり、レオロジーコントロール剤の量を増やしたりすることによりtanδの値を下げることができる。また、粘度回復速度が0.001未満である場合には、レオロジーコントロール剤の量を増やしたり、不揮発分中の顔料の割合を増加させたりすることで粘度回復速度を上げることができる。不揮発分中の顔料の割合を増加させることで、顔料粒子間に働く相互作用を強めることができる。また、粘度回復速度が0.5を超えている場合には、有機溶剤の量を増やしたりすることで粘度回復速度を下げることができる。
【0026】
本発明の塗料組成物は、鱗片状顔料を含む。鱗片状顔料は、箔のような薄く平らな形状をした顔料であり、その具体例としては、亜鉛、ニッケル、クロム、錫、銅、銀、白金、金、アルミニウム等の金属顔料や、ガラスフレーク等の金属顔料を除く光輝顔料、更にはタルク、マイカ等が挙げられる。なお、金属顔料には、ステンレス等の合金の顔料も含まれ、また、酸化チタン等の金属酸化物でタルクやマイカを表面処理した顔料も、光輝顔料に含まれる。これらの中でも、金属顔料や他の光輝顔料が好ましく、特にアルミニウム顔料が好適に使用される。鱗片状顔料が金属顔料や他の光輝顔料であれば、色ムラなく均一で高輝度な塗膜を形成できる。なお、これら鱗片状顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記鱗片状顔料は、50%体積平均径が0.1~60μmであることが好ましく、5~50μmであることが更に好ましい。例えば鱗片状金属顔料や他の光輝顔料である場合、その50%体積平均径が60μm以下であれば、光沢の優れる塗膜を形成することができる。一方、鱗片状顔料の50%体積平均径が0.1μm未満では、鱗片状顔料のアスペクト比が小さくなる傾向にあり、鱗片状顔料に特有の高輝感が十分に得られない場合がある。
【0028】
本発明において、鱗片状顔料の50%体積平均径は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、粒度分布測定装置(例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0029】
本発明の塗料組成物において、不揮発分中における鱗片状顔料の含有量は、1~40質量%の範囲内であることが好ましく、5~38質量%の範囲内であることが更に好ましく、10~35質量の範囲内であることが特に好ましい。不揮発分中鱗片状顔料含有量が上記特定した範囲内にあると、鱗片状顔料が金属顔料である場合に良好なメタリック感が得られる。
【0030】
本発明の塗料組成物は、樹脂を含む。樹脂としては、塗料業界において通常使用されている樹脂を例示することができ、具体的には、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の塗料組成物において、不揮発分中における樹脂の含有量は、例えば1~60質量%であることが好ましい。
【0031】
本発明の塗料組成物は、硬化剤を含むことができる。硬化剤としては、使用する樹脂の種類に応じて適宜選択され、塗料業界において通常使用されている硬化剤を使用できる。これら硬化剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤の含有量は、樹脂に含まれる硬化剤との反応性基の量に応じて適宜調整されるものであるが、本発明の塗料組成物において、不揮発分中における硬化剤の含有量は、例えば1~20質量%であることが好ましい。
例えば、水酸基を含むような樹脂(水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリルシリコーン樹脂及び水酸基含有ふっ素樹脂など)に対しては、イソシアネート系硬化剤が好適に使用できる。具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の他、これらポリイソシアネートの変性体が挙げられる。変性体の具体例としては、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体(例えばトリメチロールプロパン付加物)、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。
また、エポキシ樹脂に対しては、アミン系硬化剤が好適に使用できる。具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、トリアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、及び1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、及びジアミノジフエニルメタン等の芳香族ポリアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、トリエチレングリコールジアミン、及びトリプロピレングリコールジアミン等の他のポリアミン化合物と、これらアミン化合物のアミノ基を変性してなる変性ポリアミン化合物とが挙げられる。なお、上記アミン化合物の変性には、既知の方法が利用でき、変性反応の例としては、アミノ基のアミド化、アミノ基とカルボニル化合物のマンニッヒ反応、アミノ基とエポキシ基の付加反応等が挙げられる。ここで、アミノ基にエポキシ基等が付加したタイプの変性ポリアミン化合物をアダクトタイプの変性ポリアミン化合物といい、アミノ基にエポキシ基が付加したエポキシアダクトタイプの変性ポリアミン化合物が好ましい。
【0032】
本発明の塗料組成物は、溶媒を含む。溶媒としては、有機溶媒、水又はそれらの混合溶媒を使用できる。ここで、有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒等の各種有機溶媒が使用できる。なお、有機溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明の塗料組成物は、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、及びエーテル系溶媒より選ばれる少なくとも1種の溶媒を含むことが好ましい。ここで、炭化水素系溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられ、より具体的には、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、テルペン油等を例示することができる。また、アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられ、ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられ、エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルカルビトール等が挙げられる。なお、エチレングリコールモノエチルエーテルやメチルカルビトールのように水酸基とエーテル結合の両方を有する溶媒は、上記のとおり、エーテル系溶媒に分類される。
【0034】
本発明の塗料組成物において、溶媒の含有量は、40~90質量%の範囲内であることが好ましく、45~85質量%の範囲内であることがより好ましく、50~80質量%であることが更に好ましい。
【0035】
本発明の塗料組成物において、不揮発分の含有量は、10~60質量%の範囲内であることが好ましく、15~55質量%の範囲内であることがより好ましく、20~50質量%であることが更に好ましい。不揮発分の含有量が上記特定した範囲内であると、刷毛やローラーで塗装を行う場合に良好な作業性が得られる。
【0036】
本発明の塗料組成物は、レオロジーコントロール剤を含むことが好ましく、ベントナイト、有機ベントナイト、カオリン、フュームドシリカ、炭酸カルシウム、変性ウレア、脂肪酸アマイド、酸化ポリエチレン、植物油、脂肪酸、アマニ重合油、水添ヒマシ油、金属石鹸、ベンジリデンソルビトール、硫酸エステル系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、及びポリエーテル系界面活性剤より選ばれる少なくとも1種のレオロジーコントロール剤を含むことが特に好ましい。レオロジーコントロール剤を配合することで、良好な塗装作業性が得られると共に、塗料が適度にレベリングして塗膜表面の平滑性が向上し、塗膜内の鱗片状顔料を均一に且つ塗膜表面に対して平行に配向させる効果が得られる。本発明の塗料組成物中において、レオロジーコントロール剤の含有量は、0.001~10質量%の範囲内が好ましい。
【0037】
本発明の塗料組成物は、表面調整剤を更に含むことが好ましく、シリコーン系表面調整剤を含むことが特に好ましい。表面調整剤を配合することで、塗装後、基材上の塗膜の粘度がまだ低粘度である間に、鱗片状顔料を塗膜表面に対し均一に且つ平行に配向させる効果が得られる。本発明の塗料組成物中において、表面調整剤の含有量は、0.001~5質量%の範囲内が好ましい。
【0038】
本発明の塗料組成物には、その他の成分として、湿潤剤、分散剤、乳化剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、顔料、染料、レベリング剤、乾燥剤、硬化触媒、可塑剤、成膜助剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び導電性付与剤、親水化剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら成分は、市販品を好適に使用することができる。
【0039】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。また、本発明の塗料組成物が、2液型の塗料組成物である場合は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって、主剤や硬化剤を予め用意しておき、塗装時に主剤と硬化剤とを混合することで使用される。なお、硬化剤は、硬化剤そのままでもよいし、他の成分との混合物であってもよい。
【0040】
本発明の塗料組成物は、せん断速度0.1/sでの粘度が0.5~100Pa・s、且つせん断速度が1000/sでの粘度が0.01~5Pa・sであり、好ましくはせん断速度0.1/sでの粘度が0.5~95Pa・s、且つせん断速度が1000/sでの粘度が0.03~3Pa・sであり、より好ましくはせん断速度0.1/sでの粘度が1~90Pa・s、且つせん断速度が1000/sでの粘度が0.05~1Pa・sの範囲内である。本明細書において上記粘度は、23℃の塗料組成物に対して動的粘弾性測定装置(例えばAnton-Paar社製MCR-301)を用いて測定した値である。また、本明細書において上記粘度は、塗装直前の塗料組成物の粘度を想定しており、例えば塗装のために希釈を必要とする塗料組成物の粘度は含まれない。なお、塗料組成物が2液型塗料組成物である場合は、主剤と硬化剤とを混合した直後(例えば混合後1時間以内)の塗料組成物に対して粘度の測定を行う。
【0041】
本発明の塗料組成物の塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、スプレー塗装(例えばエアースプレー塗装、エアレススプレー塗装など)等が利用できるが、本発明の塗料組成物は、刷毛塗装やローラー塗装での使用に好適である。
【0042】
次に、本発明の塗装方法を詳細に説明する。本発明の塗装方法は、刷毛および/またはローラーを用いて、上述した本発明の塗料組成物で基材を塗装して塗膜を形成させる工程を含むことを特徴とする。本発明の塗装方法においては、刷毛および/またはローラーを用いるものの、上述した本発明の塗料組成物で基材の塗装を行うことから、色ムラなく均一な塗膜を形成でき、特に鱗片状顔料が金属顔料や他の光輝顔料であれば、色ムラなく均一で高輝度な塗膜を基材上に形成できる。
【0043】
本発明の塗装方法において、形成される塗膜の乾燥手段は、特に限定されず、周囲温度での自然乾燥や乾燥機等を用いた強制乾燥のいずれであってもよいものの、特に自然乾燥にて塗膜の乾燥を行う場合、色ムラなく均一な塗膜を形成させる効果がより顕著に得られる。
【0044】
基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄鋼、亜鉛めっき鋼(例えばトタン板)、錫めっき鋼(例えばブリキ板)、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属基材、木材、石膏、珪酸カルシウム、ガラス、セラミック、コンクリート、セメント、モルタル、スレート等の無機系基材、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン等のプラスチック基材が挙げられる。また、他にも、木繊維補強セメント板、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・珪酸カルシウム板等の複合基材も例示できる。金属基材には、各種表面処理、例えば酸化処理が施された基材も含まれる。また、その表面が無機物で被覆されているようなプラスチック基材(例えば、ガラス質で被覆されたプラスチック基材)は、無機系基材に含まれる。なお、基材は、プライマー処理が施されていてもよいし、基材表面の少なくとも一部に旧塗膜(本発明の塗料組成物の塗装を行う前に既に形成されている塗膜)が存在していてもよい。
【0045】
また、基材として上述したように各種材質の基材が挙げられるが、その具体例としては、自動車、電子機器、建築構造物や、それらの部品や材料が好適に挙げられる。
【0046】
また、本発明の塗料組成物により形成される塗膜は、その厚さが5~50μmの範囲内であることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
<実施例1>
混合器に入ったアクリディックA-837(DIC社製水酸基含有アクリル樹脂、不揮発分50質量%、不揮発分の水酸基価25mgKOH/g)100質量部の中に、旭化成アルミペースト66NL-B(旭化成メタルズ社製ノンリーフィングタイプのアルミニウムペースト、不揮発分66質量%、D50=15μm)20質量部とミネラルスピリット50質量部の事前混合物を攪拌環境下で徐々に投入し20分間攪拌を行った。さらに、KF-69(信越シリコーン社製ジメチルシリコーンオイル系表面調整剤、不揮発分75質量%)1質量部、フローレンAC-950(共栄社化学社製消泡剤、不揮発分40質量%)1質量部、ディスパロン 4200-20(楠本化成社製酸化ポリエチレン系レオロジーコントロール剤、不揮発分20質量%)0.01質量部を投入し、10分間撹拌を行い、主剤を調製した。主剤100質量部に、硬化剤としてのデュラネートTSA-100(旭化成ケミカルズ社製ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、不揮発分100質量%)5.5質量部を混合撹拌し、実施例1の塗料組成物を調製した。塗料組成物中における不揮発分の含有量は38.9質量%、不揮発分中における鱗片状顔料の含有量は14.4質量%、塗料組成物中における有機溶剤の含有量は61.1質量%であった。
【0049】
<実施例2~16及び比較例1~6>
上記実施例1の調製方法と同様に、表1~表3に示す配合処方に従って実施例2~16及び比較例1~6の塗料組成物を調製した。硬化剤は実施例1と同一のものを用いた。
【0050】
各塗料組成物について、塗料組成物中における不揮発分含有量、有機溶剤含有量、レオロジーコントロール剤含有量及び表面調整剤含有量、並びに不揮発分中における鱗片状顔料含有量を表1~表3に示す。
【0051】
また、表1~表3に示される各成分について、以下に説明する。
(注1)アクリディックA-837(DIC社製水酸基含有アクリル樹脂、不揮発分50質量%、不揮発分の水酸基価25mgKOH/g)
(注2)コータックスLH649(東レ・ファインケミカル社製水酸基含有アクリル樹脂、不揮発分55質量%、不揮発分の水酸基価31mgKOH/g)
(注3)ルミフロンLF200(旭硝子社製ふっ素樹脂、不揮発分60質量%、不揮発分の水酸基価31mgKOH/g)
(注4)旭化成アルミペースト66NL-B(旭化成メタルズ社製ノンリーフィングタイプのアルミニウムペースト、不揮発分66質量%、D50=15μm)
(注5)アルペースト1700NL(東洋アルミ社製ノンリーフィングアルミペースト、不揮発分64質量%、D50=19μm)
(注6)KF―69(信越シリコーン社製ジメチルシリコーンオイル系表面調整剤、不揮発分75質量%)
(注7)フローレンAC950(共栄社化学社製消泡剤、不揮発分25質量%)
(注8)ディスパロン 4200-20(楠本化成社製酸化ポリエチレン系レオロジーコントロール剤、不揮発分20質量%)
(注9)BYK411(BYK社製変性ウレア系レオロジーコントロール剤、不揮発分25質量%)
(注10)ターレンM-1020XFS(共栄社化学社製高級脂肪酸アマイド系レオロジーコントロール剤、不揮発分20質量%)
(注11)CLAYTONE AF(BYK社製ベントナイト、不揮発分54質量%)
(注12)MC-K(丸尾カルシウム社製炭酸カルシウム、不揮発分100質量%)
(注13)デュラネートTSA-100(旭化成ケミカルズ社製ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、不揮発分100質量%)
【0052】
実施例1~16及び比較例1~6の塗料組成物について、塗布量、タレ性、ローラー塗装における塗り継ぎ段差、ローラー塗装における仕上がり外観及び輝度、並びに、粘度、レオロジー測定におけるひずみ0.1%でのtanδと粘度回復速度を測定及び評価した。結果を表1~3に示す。
【0053】
<粘度、レオロジー特性>
動的粘弾性測定装置(Anton-Paar社製MCR-301)にてコーンプレートを用いて、粘度及びレオロジー特性を測定した。
粘度の測定は、23℃の塗料組成物に対して、まず、せん断速度1000/sの条件下で行い、次いで、せん断速度0.1/sに変更し、120s後にせん断速度0.1/sでの粘度を測定した。
レオロジー特性に関し、ひずみ0.1%でのtanδは、23℃の塗料組成物に対して、ひずみ0.1%及び周波数1Hzの条件下で測定した。また、粘度回復速度は、23℃の塗料組成物に対し、せん断速度100/sを30s、次いでせん断速度0.1/sを180sの条件下にて粘度(Pa・s)を測定し、この値をx軸が時間(s)でy軸が粘度(Pa・s)のxy平面にプロットし、せん断速度0.1/sへの変更直後から、上記xy平面にプロットされる粘度変化を表す曲線に対して接線を引いた場合の最大傾き(粘度回復速度)を求めた。
なお、測定対象が2液型塗料組成物であるため、調製後1時間以内に粘度及びレオロジー特性の測定を完了させた。
【0054】
<タレ性>
プライマー塗装を施したブリキ板を、短毛ローラーにて塗装後の乾燥膜厚が25μmとなるように、調製した塗料組成物で塗装し、下記の基準に従って評価した。
○:タレが無く表面が平滑かつ均一である。
△:タレに至らないわずかな塗料のたるみが認められる。
×:タレが生じ、部分的に下地の透けが認められる。
【0055】
<ローラー塗装における塗り継ぎ段差>
プライマー塗装を施したブリキ板に対し、まず、その上半分を短毛ローラーにて塗装後の乾燥膜厚が25μmとなるように塗料組成物で塗装し、5分後に重なり部分が生じるように下半分を短毛ローラーにて塗装後の乾燥膜厚が25μmとなるように同一の塗料組成物で塗装し、下記の基準に従って評価した。
〇:塗り継ぎ部分に段差が無く平滑である。
△:塗り継ぎ部分に目立たないわずかな段差がある。
×:塗り継ぎ部分に明らかな段差が認められる。
【0056】
<ローラー塗装における仕上がり外観>
プライマー塗装を施したブリキ板を、短毛ローラーにて塗装後の乾燥膜厚25μmとなるように、調製した塗料組成物で塗装し、常温で24時間乾燥した塗装面について目視で観察を行い、下記の基準に従って評価した。
〇:全体に輝度があり、輝度のムラや色ムラがなく均一に仕上がる。
△:部分的に輝度のムラや色ムラが見られる。
×:輝度がない、または全体的に輝度や色にムラがあり均一に仕上がらない。
【0057】
<輝度(フロップインデックスFI)>
プライマー塗装を施したブリキ板を、短毛ローラーにて塗装後の乾燥膜厚25μmとなるように、調製した塗料組成物で塗装し、常温で24時間乾燥させ、塗装板を作製した。
塗装板の明度を多角度測色計BYK-mac i(BYKガードナー社製)を用いて測定し、L*
110°、L*
45°、L*
15°を求めた。この値を下記式(1)に代入しフロップインデックス(FI)を求めた。測定は1試料につき5箇所の測定を行い、その平均値を用いてフロップインデックスを求めた。FI=8以上を光輝感が良好として評価した。
FI=2.69×(L*
15°-L*
110°)1.11/L*
45°
0.86 ・・・(1)
【0058】
【0059】
【0060】