(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】電子写真機器用導電性ロール
(51)【国際特許分類】
G03G 15/02 20060101AFI20220225BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20220225BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220225BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20220225BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20220225BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20220225BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220225BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20220225BHJP
C08K 5/36 20060101ALI20220225BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220225BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20220225BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
G03G15/02 101
G03G15/16 103
G03G15/00 551
G03G15/08 235
G03G15/08 221
F16C13/00 B
C08L9/00
C08K5/14
C08K3/06
C08K5/36
C08K3/04
C08K5/00
C08L7/00
(21)【出願番号】P 2018105750
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏原 伸吉
(72)【発明者】
【氏名】堀内 健
(72)【発明者】
【氏名】明楽 直樹
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-058322(JP,A)
【文献】特開2010-230824(JP,A)
【文献】特開平11-024390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0018182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
G03G 15/16
G03G 15/00
G03G 15/08
F16C 13/00
C08L 9/00
C08K 5/14
C08K 3/06
C08K 5/36
C08K 3/04
C08K 5/00
C08L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、を備え、
前記弾性体層が、
(a)ジエン系ポリマー、
(b)架橋剤、
(c)カーボンブラック、
(d)カップリング剤、
を含有する組成物の架橋体であり、
前記(b)が、硫黄架橋剤または過酸化物架橋剤であり、
前記(c)の比表面積が、40~300m
2/gの範囲内であり、
前記(d)が、下記の(d1)または(d2)であることを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
(d1)NHR
1基およびSSO
3H基を有するカップリング剤
(d2)NHR
1基およびエン構造を有するカップリング剤
ただし、R
1は、Hまたは炭素数1~8の炭化水素基である。
【請求項2】
前記組成物における前記(d)の含有量が、前記(a)100質量部に対し0.5~20質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項3】
前記組成物における前記(c)の含有量が、前記(a)100質量部に対し10~45質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項4】
帯電ロールであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる電子写真機器用導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において、感光ドラムの周囲には、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールが配設されている。導電性ロールとしては、芯金からなる軸体の外周に導電性の弾性体層を有するものが知られている。弾性体層には、導電性のための導電剤が配合されている。導電剤には、イオン導電剤と電子導電剤がある。導電形態の一つであるイオン導電は、通電時の電荷分極により導電剤が徐々に消費され、抵抗上昇を引き起こす。また、環境による抵抗変動が大きい。したがって、抵抗安定性のためには、電子導電の形態が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子写真機器の導電性ロールは、相手部材と接触した状態で回転する。導電性ロールの弾性体層に回転負荷がかかると、電子導電の形態においても抵抗上昇が発生し、安定した抵抗が確保されないことがある。特許文献1には、帯電体の半導電性弾性体層において、導電物質であるカーボンブラックと、この導電物質の分散安定剤であるカップリング剤と、を配合し、帯電体の電気抵抗バラツキを小さくすることが記載されているが、特許文献1の構成では、電子導電の弾性体層に回転負荷がかかった場合に、長期にわたって抵抗安定性を確保することができない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電子導電の弾性体層に回転負荷がかかった場合において、長期にわたって抵抗安定性に優れる電子写真機器用導電性ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、を備え、前記弾性体層が、(a)ジエン系ポリマー、(b)架橋剤、(c)カーボンブラック、(d)カップリング剤、を含有する組成物の架橋体であり、前記(b)が、硫黄架橋剤または過酸化物架橋剤であり、前記(c)の比表面積が、40~300m2/gの範囲内であり、前記(d)が、下記の(d1)または(d2)であることを要旨とするものである。
(d1)NHR1基およびSSO3H基を有するカップリング剤
(d2)NHR1基およびエン構造を有するカップリング剤
ただし、R1は、Hまたは炭素数1~8の炭化水素基である。
【0007】
前記組成物における前記(d)の含有量は、前記(a)100質量部に対し0.5~20質量部の範囲内であることが好ましい。前記組成物における前記(c)の含有量は、前記(a)100質量部に対し10~45質量部の範囲内であることが好ましい。本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、帯電ロールとして好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電子写真機器用導電性ロールによれば、弾性体層が(c)カーボンブラックを含み導電形態が電子導電であるため、通電による抵抗変動および環境による抵抗変動を小さくすることができる。そして、(c)カーボンブラックが特定の比表面積を有するとともに(d)カップリング剤が上記(d1)または(d2)であることから、電子導電の弾性体層に回転負荷がかかった場合において、長期にわたって抵抗安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールの外観模式図(a)と、そのB-B線断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
図1には、本発明の一実施形態に係る導電性ロールを示す。
図1に示す導電性ロール10は、軸体12の外周に弾性体層14が1層設けられた構成を備える。弾性体層14は、導電性ロール10のベースとなる層である。弾性体層14は、導電性ロール10の表面に現れる層となっている。
【0012】
弾性体層14は、以下の(a)~(d)を含有する組成物の架橋体である。弾性体層14は、導電性ゴム弾性体からなる。
(a)ジエン系ポリマー
(b)架橋剤
(c)カーボンブラック
(d)カップリング剤
【0013】
(a)ジエン系ポリマーは、モノマーとしてジエンを用いたポリマーであり、ポリマー中にエン構造を有し、(b)架橋剤によって架橋可能なポリマーである。ジエン系ポリマーとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。これらは、(a)ジエン系ポリマーとして1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。これらのうちでは、組成物の体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、NBRが好ましい。
【0014】
(b)架橋剤は、(a)ジエン系ポリマーの架橋剤である。(b)架橋剤は、硫黄架橋剤または過酸化物架橋剤からなる。
【0015】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0016】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0017】
上記組成物において、(b)架橋剤の含有量は、弾性体層14の硬さや架橋度などを考慮し、(a)ジエン系ポリマー100質量部に対して0.5~7.0質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.0~5.0質量部の範囲内である。
【0018】
(c)カーボンブラックは、比表面積が40~300m2/gの範囲内のものである。これにより、(c)カーボンブラックは(d)カップリング剤と相互作用しやすくなる。また、この観点から、(c)カーボンブラックの比表面積は、より好ましくは50~200m2/gの範囲内、さらに好ましくは100~180m2/gの範囲内である。(c)カーボンブラックの比表面積は、窒素吸着法により測定することができる。
【0019】
上記組成物において、(c)カーボンブラックの含有量は、(a)ジエン系ポリマー100質量部に対して10~45質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは15~40質量部の範囲内、さらに好ましくは15~30質量部の範囲内である。(c)カーボンブラックの含有量が(a)ジエン系ポリマー100質量部に対して10質量部以上であることで、低抵抗にすることができる。また、(c)カーボンブラックの含有量が(a)ジエン系ポリマー100質量部に対して45質量部以下であることで、硬くなり過ぎず、感光ドラムとのニップを安定させる事ができる。
【0020】
(d)カップリング剤は、下記の(d1)または(d2)である。
(d1)NHR1基およびSSO3H基を有するカップリング剤
(d2)NHR1基およびエン構造を有するカップリング剤
ただし、R1は、Hまたは炭素数1~8の炭化水素基である。
【0021】
(d1)または(d2)のNHR1基は、窒素原子に結合する活性水素を有することから、(c)カーボンブラックの表面官能基(カルボン酸基)と反応し、化学結合を形成する。(d1)のSSO3H基は、硫黄ラジカルを発生する。発生した硫黄ラジカルは、(a)ジエン系ポリマーのエン構造部分と反応し、化学結合を形成する。(d2)のエン構造部分は、(b)架橋剤によって(a)ジエン系ポリマーのエン構造部分と化学結合を形成する。そうすると、(a)と(d1)の間および(c)と(d1)の間に化学結合が形成され、また、(a)と(d2)の間および(c)と(d2)の間に化学結合が形成されるため、(a)と(c)の結合が強くなり、弾性体層14に回転負荷がかかった場合にも(a)と(c)の間で界面剥離が抑えられ、(c)による導電経路が維持される。このため、弾性体層14に回転負荷がかかった場合にも抵抗上昇が抑えられ、長期にわたって抵抗安定性に優れるものとなる。
【0022】
(d2)のエン構造は、炭素-炭素二重結合部位であり、末端であっても内部であってもよい。
【0023】
(d1)は、例えば下記の一般式(1)で表すことができる。
(化1)
HR1N-R2-SSO3H (1)
ただし、R1は、Hまたは炭素数1~8の炭化水素基であり、R2は、炭素数1~8の二価の炭化水素鎖である。R1は、より好ましくは、Hまたは炭素数1~4の炭化水素基である。R2は、より好ましくは、炭素数1~4の二価の炭化水素鎖である。
【0024】
(d2)は、例えば下記の一般式(2)で表すことができる。
【化2】
ただし、R
1は、Hまたは炭素数1~8の炭化水素基であり、R
4は、炭素数1~8の二価の炭化水素鎖であり、R
5,R
6は、Hまたは炭素数1~8の炭化水素基である。R
1は、より好ましくは、Hまたは炭素数1~4の炭化水素基である。R
5,R
6は、より好ましくは、Hまたは炭素数1~4の炭化水素基である。R
5,R
6は、互いに同じ構造の基であってもよいし、異なる構造の基であってもよい。
【0025】
(d2)は、上記の一般式(2)で表される化合物の開環物であってもよい。開環物は、上記の一般式(2)で表される化合物をアルカリ下で加水分解することにより得ることができる。
【0026】
(d1)および(d2)において、炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香環を含む炭化水素基、脂環を含む炭化水素基などが挙げられる。二価の炭化水素鎖としては、二価の脂肪族炭化水素鎖、二価の脂環族炭化水素鎖、二価の芳香族炭化水素鎖、二価の芳香環を含む炭化水素鎖、二価の脂環を含む炭化水素鎖などが挙げられる。
【0027】
上記組成物において、(d)カップリング剤の含有量は、(a)ジエン系ポリマー100質量部に対して0.5~20質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは2.0~7.0質量部の範囲内、さらに好ましくは2.0~5.0質量部の範囲内である。(d)カップリング剤の含有量が(a)ジエン系ポリマー100質量部に対して0.5質量部以上であることで、弾性体層14に回転負荷がかかった場合に抵抗上昇を抑える効果が高い。また、(d)カップリング剤の含有量が(a)ジエン系ポリマー100質量部に対して20質量部以下であることで、未反応の(d)カップリング剤のブリードによる画像悪化が抑えられやすい。
【0028】
上記組成物は、必要に応じて、(d)カーボンブラック以外の電子導電剤、イオン導電剤、滑剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、反応助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などの各種添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0029】
弾性体層14の厚さは、特に限定されるものではないが、導電性ロール10としては、好ましくは0.1~10mmの範囲内、より好ましくは0.5~5mmの範囲内、さらに好ましくは1~3mmの範囲内である。
【0030】
弾性体層14の体積抵抗率としては、特に限定されるものではないが、導電性ロール10としては、好ましくは102~1010Ω・cm、より好ましくは103~109Ω・cm、さらに好ましくは104~108Ω・cmの範囲内である。
【0031】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
【0032】
導電性ロール10は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、上記組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に上記組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に弾性体層14を形成する。これにより、導電性ロール10を製造することができる。
【0033】
以上の構成の導電性ロール10によれば、弾性体層14が(c)カーボンブラックを含み導電形態が電子導電であるため、通電による抵抗変動および環境による抵抗変動を小さくすることができる。そして、(c)カーボンブラックが特定の比表面積を有するとともに(d)カップリング剤が上記(d1)または(d2)であることから、電子導電の弾性体層14に回転負荷がかかった場合において、長期にわたって抵抗安定性に優れる。
【0034】
本発明に係る導電性ロールは、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において、感光ドラムの周囲に配設される、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールとして好適に用いることができる。
【0035】
本発明において、導電性ロールは、
図1に示すように、軸体12と1層のゴム弾性体層14のみで構成されていてもよいし、1層のゴム弾性体層14以外の他の層をさらに有する構成であってもよい。他の層としては、表層や中間層などが挙げられる。表層は、導電性ロールの表面に現れる層であり、ロール表面の保護、表面特性の付与などの目的で設けられる。中間層は、軸体12と1層のゴム弾性体層14との間や1層のゴム弾性体層14と表層の間などに1層以上設けられる。中間層は、導電性ロールの電気抵抗の調整、密着性の向上、成分の他への拡散防止などの目的で設けられる。
【0036】
図2には、本発明の他の実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールを示す。
図2に示す導電性ロール20は、軸体12の外周に弾性体層14が1層設けられ、弾性体層14の外周に表層16が1層設けられた構成を備える。弾性体層14は、導電性ロール20のベースとなる層である。導電性ロール20において、弾性体層14は表面(外周表面)に現れておらず、表層16に覆われている。表層16は、導電性ロール20の表面に現れる層となっている。
【0037】
表層16の材料としては、ウレタン樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタアクリル樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンオキサイド(変性ポリフェニレンエーテル)、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリアリルエーテルニトリル、ニトリルゴム、ウレタンゴム、これらを架橋した樹脂などが挙げられる。表層16には、イオン導電剤や電子導電剤、各種添加剤を必要に応じて添加することができる。表層16は、弾性体層14の外周に表層形成用組成物を塗工するなどの方法により形成することができる。表層16には、必要に応じて、架橋処理が施される。
【0038】
表層16には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c-TiO2、c-ZnO、c-SnO2(c-は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。また、表面粗さを確保するため、粗さ形成用粒子を添加してもよい。
【0039】
粗さ形成用粒子は、表層16に表面凹凸を形成する。粗さ形成用粒子としては、樹脂粒子、シリカ粒子などを挙げることができる。樹脂粒子としては、ウレタン粒子、シリコーン粒子、アクリル粒子などを挙げることができる。粗さ形成用粒子の平均粒子径は、3~50μmの範囲内であることが好ましい。粗さ形成用粒子の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用い、メジアン径により算出することができる。
【0040】
表層形成用組成物は、上記主材料、導電剤、必要に応じて含有されるその他の添加剤を含有するものからなる。その他の添加剤としては、ポリマー成分の架橋剤、レベリング剤、表面改質剤などを挙げることができる。表層形成用組成物は、粘度を調整するなどの観点から、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、THF、DMFなどの有機溶剤や、メタノール、エタノールなどの水溶性溶剤などの溶剤を適宜含んでいても良い。塗工方法としては、ロールコーティング法や、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。
【0041】
表層16の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01~100μmの範囲内、より好ましくは0.1~20μmの範囲内、さらに好ましくは0.3~10μmの範囲内である。表層16の体積抵抗率は、好ましくは、107~1012Ω・cm、より好ましくは、108~1011Ω・cm、さらに好ましくは、109~1010Ω・cmの範囲内である。
【0042】
他の層として表層を設けない場合には、ゴム弾性体層14の表面を改質する表面改質処理を施すことにより、表層を設ける場合と同様の機能を付与してもよい。表面改質方法としては、UVや電子線を照射する方法、ゴム弾性体層14の不飽和結合やハロゲンと反応可能な表面改質剤、例えば、イソシアネート基、ヒドロシリル基、アミノ基、ハロゲン基、チオール基などの反応活性基を含む化合物と接触させる方法などを挙げることができる。
【0043】
中間層の材料としては、ヒドリンゴム(CO、ECO、GCO、GECO)、エチレン-プロピレンゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、ウレタン系エラストマー、フッ素ゴム、天然ゴム(NR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(H-NBR)、などが挙げられる。中間層には、イオン導電剤や電子導電剤、各種添加剤を必要に応じて添加することができる。中間層は、射出成形法、押出成形法などの方法により、ゴム弾性体層14の外周などに中間層形成用組成物を成形することにより形成することができる。中間層には、必要に応じて架橋処理が施される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、実施例は、軸体の外周に基層と表層とがこの順に積層された2層構造の帯電ロールを例に挙げるものであるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0045】
弾性体層形成用の組成物の材料として、以下の材料を準備した。
(a)ジエン系ポリマー
・ニトリルゴム:NBR、日本ゼオン社製「NipolDN302」
(b)架橋剤
・過酸化物:日油製「パークミルD40」
(c)カーボンブラック
・カーボン1:東海カーボン製「シーストSO」、比表面積42m2/g
・カーボン2:東海カーボン製「シースト9」、比表面積142m2/g
・カーボン3:キャボット製「BLACK PEARLS 880」、比表面積240m2/g
(d)カップリング剤
・(d1)カップリング剤1:SIGMA-ALDRICH製「S-(3-アミノプロピル)ハイドロジェンチオサルフェート」
・(d2)カップリング剤2:SIGMA-ALDRICH製「1-(4-アミノフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン」
(e)添加剤
・ステアリン酸(加工助剤)[日本油脂(株)製、「ステアリン酸さくら」]
・酸化亜鉛(反応助剤)[堺化学工業(株)製、「酸化亜鉛2種」]
・ハイドロタルサイト(反応助剤)[協和化学工業製「DHT4A」]
(f)その他
・比較材3:ブチルアミン(試薬)
・比較材4:1-ブタンチオール(試薬)
【0046】
(実施例1)
<弾性体層形成用の組成物の調製>
NBR100質量部に対し、ステアリン酸0.7質量部、酸化亜鉛5質量部、ハイドロタルサイト2質量部、架橋剤3質量部、カーボンブラック(カーボン2)20質量部、カップリング剤(カップリング剤1)2質量部を配合し、これらを攪拌機により撹拌、混合して、実施例1に係る弾性体層形成用の組成物を調製した。
【0047】
<弾性体層の作製>
成形金型に芯金(直径6mm)をセットし、上記組成物を注入し、170℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚さ1.75mmの導電性ゴム弾性体からなる弾性体層を形成した。
【0048】
<表層の作製>
N-メトキシメチル化ナイロン(ナガセケムテックス社製、「EF30T」)100質量部と、導電性酸化スズ(三菱マテリアル社製、「S-2000」)60質量部と、ウレタン粒子(根上工業製「アートパールC600」、平均粒子径10μm)30質量部と、クエン酸(架橋剤)1質量部と、メタノール300質量部とを混合して、表層形成用組成物を調製した。次いで、弾性体層の表面に表層形成用組成物をロールコートし、120℃で50分加熱して、弾性体層の外周に、厚さ10μmの表層を形成した。これにより、実施例1に係る帯電ロールを作製した。
【0049】
(実施例2~4)
弾性体層形成用の組成物の調製において、カップリング剤1の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0050】
(実施例5~6)
弾性体層形成用の組成物の調製において、カーボンブラック(カーボン2)の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0051】
(実施例7~8)
弾性体層形成用の組成物の調製において、カーボンブラックの種類を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0052】
(実施例9)
弾性体層形成用の組成物の調製において、カップリング剤の種類を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0053】
(比較例1)
弾性体層形成用の組成物の調製において、カップリング剤1に代えて比較材3を用いた以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0054】
(比較例2)
弾性体層形成用の組成物の調製において、カップリング剤1に代えて比較材4を用いた以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0055】
(比較例3)
弾性体層形成用の組成物の調製において、カップリング剤を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0056】
作製した各帯電ロールについて、抵抗変化の評価、ブリードの評価を行った。評価結果と弾性層形成用の組成物の配合組成(質量部)を以下の表に示す。
【0057】
<抵抗変化評価方法>
φ30mmの金属ドラム上で、作製した帯電ロールに片端500g荷重(両端の合計1kg荷重)を乗せた状態で金属ドラムを90rpmで2時間回転させた。-200V印加時の試験前後の抵抗値を求め、抵抗変化を桁数で計算した。抵抗変化が0.1桁未満であった場合を抵抗変化が小さい「○」、抵抗変化が0.1桁以上であった場合を抵抗変化が大きい「×」とした。
【0058】
<ブリード>
作製した帯電ロールを所定の湿熱環境下に14日間放置後、帯電ロールの表面上にブリード物があるか観察した。50℃×95%RHの湿熱環境下でもブリード物が観察されなかった場合を「○」、50℃×95%RHの湿熱環境下ではブリード物が観察されたものの、40℃×95%RHの湿熱環境下ではブリード物が観察されなかった場合を「△」とした。
【0059】
【0060】
ジエン系ポリマー、過酸化物架橋剤、所定の比表面積のカーボンブラックを配合する組成物において、比較例1~3は、カップリング剤を配合しないものであり、比較例1はカップリング剤に代えてブチルアミンを配合するものであり、比較例2はカップリング剤に代えて1-ブタンチオールを配合するものである。比較例1~3では、電子導電の弾性体層に回転負荷がかかると、抵抗変化が大きくなり、抵抗上昇が確認された。このため、長期の使用において抵抗安定性に劣ることがわかる。一方、実施例では、ジエン系ポリマー、過酸化物架橋剤、所定の比表面積のカーボンブラックを配合する組成物において、特定のカップリング剤を配合しているため、電子導電の弾性体層に回転負荷がかかっても、抵抗変化が小さく、抵抗上昇が抑えられることがわかる。このため、長期の使用においても抵抗安定性に優れることがわかる。
【0061】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 導電性ロール
12 軸体
14 基層
16 表層
20 導電性ロール