(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】防火建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20220225BHJP
E06B 3/38 20060101ALI20220225BHJP
E05F 3/04 20060101ALI20220225BHJP
E05F 5/00 20170101ALI20220225BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/38
E05F3/04
E05F5/00 C
(21)【出願番号】P 2018118322
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】増山 新作
(72)【発明者】
【氏名】草開 常徳
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-74316(JP,A)
【文献】特開2015-48692(JP,A)
【文献】特開2018-35521(JP,A)
【文献】特開2016-142027(JP,A)
【文献】特開2015-48617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00- 5/20
3/04- 3/46
3/50- 3/52
E05F 1/00-13/04
17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の竪枠と障子の竪框との間の空間に
オイルによって緩衝機能を有するダンパーが配置されており、
障子は、竪框と下框のコーナー部における下面を覆う平板状の補強部材が配置されているとともに、補強部材の上面には、竪框の下面の樹脂部分及び/もしくは下框の樹脂部分に対向する加熱発泡材が配置されており、
補強部材に配置された加熱発泡材は空間に露出していない防火建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体の竪枠と障子の竪框との間の空間に、ダンパー等のオイルによる緩衝機能を有する機能部品が配置されている防火建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物開口部に配置される防火建具として、枠体の竪枠と障子の竪框との間に、障子の開閉補助用のダンパーを備える建具において、ダンパーの端部と対向する位置に加熱発泡材を設けて、火災時にダンパーから漏れ出すオイルを加熱発泡材で受け止める建具が公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、建具に樹脂材料が用いられることが多く、火災時には、障子の竪框の端部に配置される樹脂製の端部キャップなどが溶解して、室内外が連通する危険性があった。
また、上記特許文献1に記載された建具は、ダンパーから漏れ出すオイルを加熱発泡材で受け止めることで、オイルへの引火を防止して放火性能を向上させようとしているが、オイルを加熱発泡材で受け止めることで、オイルが建具内にとどまり、温度が上昇することで、障子を構成する樹脂材料とともに引火して延焼する危険性を高める可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑み、障子の樹脂材料部分の耐火性能を向上させるとともに、ダンパーから漏れ出すオイルをすみやかに排出して、建具部分におけるオイルへの引火を防止して防火性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のひとつの実施形態は、枠体の竪枠と障子の竪框との間の空間にオイルによって緩衝機能を有するダンパーが配置されており、障子は、竪框と下框のコーナー部における下面を覆う平板状の補強部材が配置されているとともに、補強部材の上面には、竪框の下面の樹脂部分及び/もしくは下框の樹脂部分に対向する加熱発泡材が配置されており、補強部材に配置された加熱発泡材は空間に露出していない防火建具である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態の防火建具の構成により、火災時に、加熱膨張材が膨張して障子の下角部の樹脂部材が溶解して室内外の連通することを防止するとともに、加熱膨張材が、ダンパーの下方位置における竪枠と竪框との間の空間を閉塞することなく、建具部分からオイルをすみやかに排出し、建具部分におけるオイルへの引火を防止して防火性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の内観図である。
【
図2】本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の下方竪断面図である。
【
図3】本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の左側横断面図である。
【
図4】本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の補強部材の図である。
【
図5】本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の左側横断面図である。
【
図6】本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の左枠下方部分の外観図である。
【
図7】(a)は、本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の枠体の左下方部分を室外側上方から見た斜視図であり、(b)は、同障子の左下方部分を室内側下方からみた斜視図である。
【
図8】本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の下方竪断面図である。
【
図9】本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の左側横断面図及び補強部材の図である。
【
図10】本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の左枠下方部分の外観図及び補強部材の図である。
【
図11】(a)は、本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の枠体の左下方部分を室外側上方から見た斜視図であり、(b)は、同障子の左下方部分を室内側下方からみた斜視図である。
【
図12】発明のひとつの実施形態に係る防火建具の補強部材の図である。
【
図13】発明のひとつの実施形態に係る防火建具の補強部材の図である。
【
図14】(a)は、本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の左側横断面図であり、(b)は、同下方竪断面図である。
【
図15】(a)は、本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の枠体の左下方部分を室外側上方から見た斜視図であり、(b)は、同障子の左下方部分を室内側下方からみた斜視図である。
【
図16】(a)(b)は、本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の補強部材の図であり、(c)は、左側横断面図であり、(d)は、同下方竪断面図である。
【
図17】(a)(b)は、本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の補強部材の図であり、(c)は、左側横断面図であり、(d)は、同下方竪断面図である。
【
図18】(a)(b)は、本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の障子の左下方部分を室内側下方からみた斜視図である。
【
図19】(a)は、本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の左側横断面図であり、(b)は、同下方竪断面図であり、(c)(d)は、補強部材の図である。
【
図20】本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の補強部材の図である。
【
図21】(a)は、本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の枠体の左下方部分を室外側上方から見た斜視図であり、(b)は、同障子の左下方部分を室内側下方からみた斜視図である。
【
図22】(a)は、本発明のひとつの実施形態に係る防火建具の障子の左下方部分を室内側下方からみた斜視図であり、(b)は、比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、竪枠と竪框との間にダンパーを配置してなる外倒し窓の例を用い、図面を参考にして説明する。
(全体の構成)
本発明の実施形態の外倒し窓は、
図1に示すように、建物の躯体開口部に配置される枠体1と、枠体1の内周に対して下辺を軸にして上辺が外側へ開放するように支持される障子2とを備える外倒し窓として構成されている。
【0010】
枠体1は、上枠11、下枠12及び左、右竪枠13,14を四周組して形成されている。一方、障子2は、上框21、下框22及び左、右竪框23,24を四周組し内周にガラス等のパネル体25を配置して形成されている。
障子2は、下框22がヒンジ15により枠体1の下枠12に取付けられることで回動自在に支持されており、障子2の閉鎖時においては、上框21が上枠11にロック装置16等により係合されることで、障子2の閉鎖状態が維持される。
また、左、右竪枠13,14と左、右竪框23,24との間にダンパー8,8が配置されており、障子2の開閉時の動きを緩衝するとともに、障子2の開放状態が維持される。
【0011】
-第1の実施形態-
本発明の第1の実施形態の防火建具について、
図2ないし
図7を参考にして説明する。
枠体1を構成する上枠11、下枠12及び左、右竪枠13,14は、それぞれ室外側に配置される金属製の枠材と室内側に配置される樹脂製の枠材を有している。
一方、障子2を構成する上框21、下框22及び左、右竪框23,24は、それぞれ室外側に配置される金属製の框材と室内側に配置される樹脂製の框材を有している。
【0012】
(下枠及び下框)
本実施形態の防火建具の枠体1を構成する下枠12は、
図2に示すように、躯体開口部の内周に配置される金属下枠121と、金属下枠121の室内側内周(上面)に配置される樹脂下枠122を有する。
金属下枠121は、中空部を有し躯体開口部の室外側内周を覆う室外側本体部121aと、室外側本体部121aの室内側に階段状に高くなるように連設される室内側本体部121bを有している。
室外側本体部121aは、室内側上面が平坦面として形成され、室外側上面に上方に開口する凹部が形成されている。また、室内側本体部121bは、室外側上面が平坦面として形成され、室内側上面に樹脂下枠122が取り付けられる被係合部121cが形成されている。
【0013】
また、樹脂下枠122は、中空部を有する室内側立壁部122aと、室内側立壁部122aの上端から障子2の室内側面に近接するように室外側に向かって延設される上壁部122bと、室内側立壁部122aの下方位置から室内側に延設されるアングル部122cを有しており、室内側立壁部122aの下面には、金属下枠121の被係合部121cに係合する係合部122dが形成されている。
なお、本実施形態の樹脂下枠122は、室内側立壁部122aと上壁部122bが別体により形成されており、室内側立壁部122aの上面に上壁部122bが取り付けられて形成されているが、室内側立壁部122aと上壁部122bを一体的に形成してもよい。
【0014】
そして、下枠12と下框22との間の空間Bに対向する金属下枠121の室内側本体部121bの室外側面には、加熱発泡材を保持するホルダー121d及び気密材を保持する気密材ホルダー121eが下枠12の長手方向全長にわたって形成されており、加熱発泡材f2及び気密材s2が、ホルダー121d及び気密材ホルダー121eに下枠12の全長にわたって配置されている。
【0015】
障子2を構成する下框22は、
図2に示すように、下框22の室外側を構成する金属下框221と、金属下框221の室内側に取付けられる樹脂下框222を有する。
金属下框221は、中空部を有する下框本体部221aと、下框本体部221aの室外側端から外周(下)方向に延設される室外側壁部221bと、下框本体部221aの室外側端から内周(上)方向に延設される室外側パネル間口壁221cを有している。
樹脂下框222は、下框本体部221aの室内側に取付けられ中空部を有する樹脂下框本体部222aと、樹脂下框本体部222aの室内側から内周(上)方向に延設される室内側パネル間口壁222bを有している。
【0016】
そして、下枠12と下框22との間の空間Bに対向する金属下框221の室外側壁部221bの室内側面には、加熱発泡材を保持するホルダー221dが下框22の長手方向全長にわたって形成されており、加熱発泡材f4が、ホルダー221dに下框22の全長にわたって配置されている。
【0017】
(竪枠及び竪框)
本実施形態の防火建具の枠体1を構成する竪枠(なお、竪枠及び竪框の構成は、左右でほぼ同じであるので、以下、竪枠及び竪框について左竪枠13及び左竪框23を用いて説明する。)は、
図3に示すように、躯体開口部の内周に配置される金属左竪枠131と、金属左竪枠131の室内側内周に配置される樹脂左竪枠132を有する。
金属左竪枠131は、躯体開口部の内周を覆う左竪枠本体部131aと、左竪枠本体部131aの内周面より内周方向に突設される見付け壁部131bを有しており、左竪枠本体部131aの見付け壁部131bよりも室内側に被係合部131cが形成されている。
【0018】
また、樹脂左竪枠132は、中空部を有する樹脂左竪枠本体部132aと、金属左竪枠131の被係合部131cに係合する係合部132bと、係合部132bの室内側に延設されるアングル部132cを有している。
【0019】
そして、樹脂左竪枠132の係合部132bが金属左竪枠131の被係合部131cに係合されて樹脂左竪枠132が金属左竪枠131に取付けられることで、金属左竪枠131の見付け壁部131bの室外側面と樹脂左竪枠132の樹脂左竪枠本体部132aの室外側面とがほぼ面一となり、室内側壁部を構成している。
【0020】
金属左竪枠131の見付け壁部131bの室外側面には、加熱発泡材を保持するホルダー131dが金属左竪枠131の長手方向全長にわたって形成されており、樹脂左竪枠132の樹脂左竪枠本体部132aの室外側面には、気密材を保持する気密材ホルダー132dが樹脂左竪枠132の長手方向全長にわたって形成されており、加熱発泡材f1及び気密材s1が、ホルダー131d及び気密材ホルダー132dに左竪枠13の全長にわたって配置されている。
【0021】
障子2を構成する左竪框23は、
図3に示すように、左竪框23の室外側を構成する金属左竪框231と、金属左竪框231の室内側に取付けられる樹脂左竪框232を有する。
金属左竪框231は、中空部を有する左竪框本体部231aと、左竪框本体部231aの室外側端から外周方向に延設される室外側壁部231bと、左竪框本体部231aの室外側端から内周方向に延設される室外側パネル間口壁231cを有している。
樹脂左竪框232は、金属左竪框231の左竪框本体部231aの室内側に取付けられ中空部を有する樹脂左竪框本体部232aと、樹脂左竪框本体部232aの室内側から内周方向に延設される室内側パネル間口壁232bを有している。
【0022】
金属左竪框231の室外側壁部231bの室内側面には、加熱発泡材を保持するホルダー231d及び気密材を保持する気密材ホルダー231eが金属左竪框231の長手方向全長にわたって形成されており、加熱発泡材f3及び気密材s3が、ホルダー231d及び気密材ホルダー231eに金属左竪框231の全長にわたって配置されている。
【0023】
そして、左竪枠13と左竪框23との間の空間Aには、障子2の開閉動作を補助するダンパー8が配置されており、ダンパー8の下端が左竪枠本体部131aの内周面に取付基台81を介して固定され、ダンパー8の上端が左竪框本体部231aの外周面に取付基台82を介して固定されている。
【0024】
以上のように、下枠12と下框22の間の空間Bに対して、該空間Bに対向する面である下枠12の室内側本体部121bの室外側面及び下框22の室外側壁部221bの室内側面に、加熱により発泡する加熱発泡材f2、f4が配置されており、火災時に発泡して枠体1の下枠12と障子2の下框22との間の空間Bを閉塞することで、室内外の連通を防止して、防火性能を向上させている。
【0025】
また、左竪枠13と左竪框23の間の空間Aに対して、該空間Aに対向する面である左竪枠13の室内側壁部の室外側面及び金属左竪框231の室外側壁部231bの室内側面に、加熱により発泡する加熱発泡材f1,f3が配置されており、火災時に発泡して枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aを閉塞することで、室内外の連通を防止して、防火性能を向上させている。
【0026】
上記のように、枠体1の内周面と障子2の外周面との間の空間に加熱発泡材が配置されていることによって、火災時には、加熱発泡材が枠体1の内周面と障子2の外周面との間の空間に充満して該空間を介して火炎や煙が侵入することを防止することができる。
しかし、枠体1の竪枠と障子2の竪框との間の空間Aにオイルによって緩衝機能を有するダンパーが配置されている建具においては、該空間Aや枠体1の下枠12と障子2の下框22との間の空間Bが膨張した加熱発泡材によって閉塞されることによって、ダンパーから漏れ出したオイルが竪枠と竪框との間の空間Aに留まり、高温となることによってかえって延焼を導く危険があった。
【0027】
本実施形態の防火建具は、火災時に枠体1と障子2との間の空間に配置した加熱発泡材が、火災時の発泡によってダンパー8の下方に位置する部分に充満して閉塞することを防止して、ダンパー8から漏れ出したオイルを速やかに建具外に排出してオイルによる延焼を抑制することを可能にするものである。以下、さらに詳細に説明する。
【0028】
まず、本実施形態において、加熱発泡材によるダンパーの下方部分が閉塞されることを防止するために配置される補強部材について、
図4を参考に説明する。なお、本願発明の説明において、加熱発泡材によるダンパーの下方部分が閉塞されることを防止するとは、加熱発泡材がダンパーの下方部分に全く至らないように閉塞されることを防止することを意味するものではなく、補強部材が無い場合に比べて加熱発泡材による閉塞が抑制できれば良い。
図4(a),(b)に示す補強部材は、左竪枠13に配置される竪枠補強部材51であり、左竪枠13に配置される加熱発泡材f1によるダンパーの下方の閉塞を防止する補強部材である。
竪枠補強部材51は、左竪枠13に配置される加熱発泡材f1の下方部分を覆う見付け部51aと金属左竪枠131の左竪枠本体部131aに固定される固定部51bを有する断面略L字状の部材により形成されている。
【0029】
そして、竪枠補強部材51は、
図5に示すように、固定部51bが金属左竪枠131の下方部分において、左竪枠本体部131aの内周面にビス等の固定手段b1によって固定されることによって、竪枠補強部材51の見付け部51aが左竪枠13の室内側壁部(金属左竪枠131の見付け壁部131b及び樹脂左竪枠132の樹脂左竪枠本体部132a)の室外側面に対向し、
図6,
図7(a)に示すように、枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aに配置されるダンパー8の下方位置において加熱発泡材f1の露出面を覆っている。
【0030】
なお、竪枠補強部材51の左竪枠13に対する固定は、ダンパー8を固定するための取付基台81を固定するビス等の固定手段bによって固定されてもよい。
【0031】
図4(c)ないし(e)に示す補強部材は、左竪框23に配置される竪框補強部材52であり、左竪框23に配置される加熱発泡材f3によるダンパーの下方の閉塞を防止する補強部材である。
竪框補強部材52は、左竪框23に配置される加熱発泡材f3の下方部分を覆う見付け壁部52aと、金属左竪框231の左竪框本体部231aに固定される固定部52bを有する断面略L字状の部材により構成されている。
なお、固定部52bの下方部分は、左竪框23と下框22とを連結するタッピングネジ等を通すために切欠き52cが形成されている。
【0032】
そして、竪框補強部材52は、
図3に示すように、固定部52bが金属左竪框231の下方部分において、左竪框本体部231aの外周面に固定手段b2によって固定されることによって、竪框補強部材52の見付け壁部52aが金属左竪框231の室外側壁部231bの室内側面に対向して、
図7(b)に示すように、枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aに配置されるダンパー8の下方位置において加熱発泡材f3の露出面を覆っている。
【0033】
図4(f),(g)に示す補強部材は、下枠12に配置される下枠補強部材53であり、下枠12に配置される加熱発泡材f2によるダンパー下方部分の閉塞を防止する補強部材である。
下枠補強部材53は、下枠12に配置される加熱発泡材f2を覆う見付け壁部53aと下枠12に固定される固定部53bを有する部材により構成されている。なお、固定部53bの外周側であり室外側には切欠き53cが形成されている。
【0034】
そして、下枠補強部材53は、
図2,
図5に示すように、固定部53bが下枠12の端部付近において室外側本体部121aの室内側上面に載置され、ビス等の固定手段b3によって下枠12に固定されることで、下枠補強部材53の見付け壁部53aが下枠12の室内側本体部121bの室外側面に対向して、
図6,
図7(a)に示すように、下枠12に配置される加熱発泡材f2の枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aの下方位置に露出する部分、すなわち端部付近を覆っている。
【0035】
以上のように、本実施形態の防火建具においては、竪枠と竪框との間の空間に対向する部位のダンパーの下方位置に補強部材を配置したので、竪枠及び竪框を補強することができる。
また、補強部材によって枠体の竪枠と障子の竪框との間の空間に対向する加熱発泡材を覆うことで、ダンパーの下方位置において露出させない。
これにより、火災時に加熱発泡材が発泡することによるダンパーの下方部分が閉塞されることを抑制して、オイルをスムーズに排出させ建具内に留まるオイルによる延焼を防止することができる。
また、枠体に対する補強部材が、竪枠補強部材と下枠補強部材とに分割されているので、工場出荷時に両補強部材を竪枠及び下枠に固定してノックダウン出荷させることができ、現場での施工性を向上させることができる。
【0036】
-第2の実施形態-
本発明の他の一番実施形態の防火建具について、
図8ないし
図11を参考にして説明する。
なお、第2の実施形態以降においては、枠体1及び障子2の構成は上記第1の実施形態と同様であるので、特に、ダンパーの下方位置に配置される補強部材についての説明を行い、構成が同一である部分の説明は省略する。
本実施形態の防火建具において、加熱発泡材によるダンパーの下方が閉塞されることを防止する補強部材は、左竪枠13に配置される加熱発泡材f1によるダンパー下方の閉塞を防止する竪枠補強部材54と、下枠12に配置される加熱発泡材f2によるダンパー下方の閉塞を防止する下枠補強部材56と、左竪框23に配置される加熱発泡材f3によるダンパー下方の閉塞を防止する竪框補強部材55とからなる。
【0037】
竪枠補強部材54は、例えばステンレス等の金属材料からなり、
図10(b)(c)に示すように、左竪枠13に配置される加熱発泡材f1の幅寸法よりも若干大きい幅寸法を有する矩形平板状の部材により形成されている。
そして、竪枠補強部材54は、
図8,
図10(a),
図11(a)に示すように、左竪枠13の下方部分において、見付け壁部131bの室外側面に配置した加熱発泡材f1の表面に当接もしくは近接するように配置され、ビス等の固定手段b4によって加熱発泡材f1とともに見付け壁部131bに固定されており、枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aに配置されるダンパー8の下方位置において加熱発泡材f1の露出面を覆っている。
【0038】
下枠補強部材56は、例えばステンレス等の金属材料からなり、
図10(d)(e)に示すように、加熱発泡材f2の幅寸法よりも若干大きい幅寸法を有する矩形平板状の部材により形成されている。
そして、下枠補強部材56は、
図8,
図10(a),
図11(a)に示すように、下枠12の室内側本体部(室内側壁部)121bの室外側面に配置した加熱発泡材f2の表面に当接もしくは近接するように配置され、ビス等の固定手段b6によって加熱発泡材f2とともに室内側本体部(室内側壁部)121bに固定されており、枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aに配置されるダンパー8の下方位置において加熱発泡材f2の露出面を覆っている。
【0039】
竪框補強部材55は、例えばアルミニウム合金等の金属材料からなり、
図9(a),(b)に示すように、肉厚の矩形平板状の目板部材により形成されている。
そして、左竪框23の室外側壁部231bの室内側面には、加熱発泡材f3を配置するホルダー231dの室内側に竪框補強部材55を保持する補強部材ホルダー231fが見込み方向に並設されており、補強部材ホルダー231fに竪框補強部材55が配置されている。
補強部材ホルダー231fに配置された竪框補強部材55は、枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aに配置されるダンパー8の下方付近において左竪框23の室外側壁部231bのホルダー231dの開口部を塞ぎ、加熱発泡材f3の露出面を覆っている。
【0040】
以上のように、本実施形態の防火建具においては、上記第1の実施形態の防火建具の効果に加えて、加熱発泡材f1、f2及びf3の露出面を覆う部分以外の不必要な部分を削除することができるので、材料の削減ができてコストダウンを図ることができる。
【0041】
-第3の実施形態-
本発明の他の一実施形態の防火建具について、
図12ないし
図15を参考にして説明する。
本実施形態の防火建具において、加熱発泡材によるダンパーの下方部分が閉塞されることを防止する補強部材は、左竪枠13に配置された加熱発泡材f1と下枠12に配置された加熱発泡材f2によるダンパー下方の閉塞を防止する枠補強部材57と、左竪框23に配置された加熱発泡材f3と下框22に配置された加熱発泡材f4によるダンパー下方の閉塞を防止する框補強部材58とからなる。
【0042】
枠補強部材57は、
図12(a)ないし(c)に示すように、左竪枠13に配置される加熱発泡材f1の下方部分を覆う見付け面部57aと、見付け面部57aの下方に一体的に連続して形成され下枠12に配置される加熱発泡材f2の外周側部分を覆う見付け面部57bと、見付け面部57aの上方部分および下方部分からそれぞれ直角に延設される上、下固定部57c,57dを有する。
なお、上、下固定部57c,57dは、ダンパー8を固定するための基盤を避けるように上下で分かれているが、第1の実施形態の補強部材のように、固定部を一体的に形成してダンパーの基盤とともに共締めするように構成してもよい。
【0043】
そして、枠補強部材57は、
図14(a),(b)、
図15(a)に示すように、枠補強部材57の上、下固定部57c、57dが左竪枠13の左竪枠本体部131aに固定されることで、見付け面部57aによって左竪枠13の見付け壁部131bの室外側面に配置される加熱発泡材f1の下方部分を覆うとともに、見付け面部57bによって下枠12の室内側本体部121bの室外側面に配置される加熱発泡材f2のダンパー8が配置された空間の下方に位置する露出面を覆っている。
【0044】
框補強部材58は、
図12(d)ないし(f)に示すように、左竪框23に配置される加熱発泡材f3を覆う見付け面部58aと、見付け面部58aの下方に一体的に連続して形成され下框22に配置される加熱発泡材f4の外周側部分を覆う見付け面部58bと、見付け面部58aの上方部分の内周側辺から直角に延設される固定部58cを有する。
【0045】
そして、框補強部材58は、
図14(a),(b)、
図15(b)に示すように、框補強部材58の固定部58cが左竪框23の左竪框本体部231aに固定されており、見付け面部58aによって左竪框23の室外側壁部231bの室内側面に配置される加熱発泡材f3の下方部分を覆うとともに、見付け面部58bによって下框22の室外側壁部221bの室外側面に配置される加熱発泡材f4のダンパー側の部分(端部)を覆っている。
【0046】
なお、本実施形態における枠補強部材57及び框補強部材58の各部の寸法等は限定されるものではない。
例えば
図13(a)ないし(c)に示す框補強部材58のように、固定部58cを見付け面部58aの室内側辺の全長にわたって直角に延設させて形成してもよく、また、見付け面部58a、見付け面部58bの幅寸法及び固定部58cの幅寸法は、必要に応じて適宜変更できる。
さらに、
図13(d)ないし(f)に示す框補強部材58のように、框補強部材58を左竪框23に固定した時に固定部58cの樹脂左竪框232に対向する部分に、長手方向に沿って加熱発泡材f5を配置してもよい。
【0047】
本実施形態の防火建具において、障子2は、さらに下面両端部に底補強部材59が配置されていてもよい。
底補強部材59は、
図16(a),(b)に示すように、ビス孔等が形成された矩形平板状の部材により形成されている。そして、
図16(c),(d)に示すように、左竪框23の下端面から下框22の下面にかけて配置され、ビス等の固定手段b9によって下框22に固定されている。
【0048】
底補強部材59は、
図17(a),(b)に示すように、底補強部材59の底板59aの上面に左竪框23の下面に配置された端部キャップ9及び下框22の樹脂下框222に対向するように加熱発泡材f6を配置したものでもよい。
底補強部材59の底板59aの上面に配置された加熱発泡材f6は、両面テープ等の固着手段により取り付けられ、底補強部材59が下框22にネジ止め固定されることにより下框22と底補強部材59の間に保持されて、枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aには露出しない。
【0049】
底板59aの上面に加熱発泡材f6を配置した場合には、底補強部材59は、外周側辺及び室内側辺にそれぞれ立上り壁59b,59cを設けることで、火災時に発泡した加熱発泡材f6が枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aにより浸入しないようにすることが好ましい。
【0050】
なお、底補強部材59は、本実施形態の防火建具に採用されている枠補強部材57及び框補強部材58だけでなく、先の実施形態の防火建具に採用されている補強部材に対しても組み合わせて使用することもできる。また、障子2の両下端部の補強及び火災時の防火性能の向上を目的として、底補強部材59のみを配置することもできる。
【0051】
底補強部材59を配置した防火建具の障子2の例として、
図13(a)ないし(c)に記載された框補強部材に対して、
図16(a),(b)に示す底補強部材59を配置した例を
図18(a)に示し、
図13(d)ないし(f)に記載された框補強部材に対して、
図17(a),(b)に示す底補強部材59を配置した左竪框23及び下框22の例を
図18(b)に示す。
【0052】
また、樹脂サッシに対して、補強部材を配置した防火建具の例を、
図19に示す。
樹脂サッシは、コーナー部において端面が45度に切断されて溶着されていることから、
図19(c)(d)に記載された底補強部材59及び底補強部材59の底板59aに加熱発泡材f6は、下框22の端部下面に配置される。
それによって、障子2のコーナー部は、底補強部材59によって補強されると共に、火災時には、障子2のコーナー部において室内外の連通を抑制することができる。
【0053】
以上のように、第3の実施形態においては、枠体1及び障子2の下方端部が補強部材により補強され、強度が向上するとともに、枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aに対して発泡した加熱発泡材が侵入することを防止することができる。
【0054】
また、障子2の端部下面を底補強部材59で覆うことにより、ダンパーより漏れ出したオイルが障子2の下框22の下面に回り込んでも、端部キャップや樹脂下枠に付着して着火することを抑制でき、障子2の下方コーナー部をカバーして耐火性をさらに向上させることができる。
【0055】
さらに、底補強部材59の上面に加熱発泡材f6を配置することで、火災時に、加熱発泡材f6を障子2の下方両端部分の樹脂部材に対して集中的に発泡させることができる。そして、底補強部材59の辺に設けた立上り壁が形成されているので、加熱発泡材の空間A方向への漏れを抑制して、オイルの排出性を維持することができる。
【0056】
-第4の実施形態-
本発明の第4の実施形態の防火建具について、
図20ないし
図22を参考にして説明する。
本実施形態の防火建具において、加熱発泡材によるダンパーの下方が閉塞されることを防止する補強部材は、左竪枠13に配置された加熱発泡材f1によるダンパー下方の閉塞を防止する竪枠補強部材60と、下枠12に配置された加熱発泡材f2によるダンパー下方の閉塞を防止する下枠補強部材61と、左竪框23に配置された加熱発泡材f3及び下框22に配置された加熱発泡材f4によるダンパー下方部分の閉塞を防止する框補強部材62を備えている。
【0057】
竪枠補強部材60は、
図20(a)ないし(c)に示すように、左竪枠13に配置される加熱発泡材f1の下方部分を覆う見付け面部60aと、見付け面部60aの一辺から直角に延設され左竪枠13に固定される固定部60bを有する。
【0058】
そして、竪枠補強部材60は、
図21(a),(b)に示すように、竪枠補強部材60の固定部60bが左竪枠13の左竪枠本体部131aに固定されることで、見付け面部60aによって左竪枠13の見付け壁部131bの室外側面に配置される加熱発泡材f1の下方部分のダンパーが配置された空間の下方に位置に対する露出面を覆っている。
【0059】
下枠補強部材61は、
図20(a)ないし(c)に示すように、下枠12に配置される加熱発泡材f2の外周側部分を覆う見付け面部61aと、見付け面部61aの反戸先側の下辺から直角に延設され下枠12の上面に固定される固定部61bを有する。
【0060】
そして、下枠補強部材61は、
図21(a),(b)に示すように、下枠12の室外側本体部12aの上面に固定部61bが固定されることで、見付け面部61aによって下枠12の室内側本体部121bの室外側面に配置される加熱発泡材f2のダンパーが配置された空間の下方に位置する露出面を覆っている。
【0061】
框補強部材62は、
図20(d)ないし(f)に示すように、左竪框23に配置される加熱発泡材f3を覆う見付け面部62aと、見付け面部62aの下方に一体的に連続して形成され下框22に配置される端部キャップ9を覆う見付け面部62bと、見付け面部62aの反戸先側に連続して形成され下框22の室外側壁部221bの室内側を覆う見付け面部62cと、見付け面部62cの上辺から直角に延設されてなり下框22の戸先側下面を覆う底面部62dと、見付け面部62aの上方部分の内周側辺から直角に延設されてなり左竪框23に固定される固定部62eを有する。
【0062】
そして、框補強部材62は、
図21(a),(b)、
図22(a)に示すように、框補強部材62の固定部62eが左竪框23の左竪框本体部231aに固定されることで、見付け面部62aによって左竪框23の室外側壁部231bの室内側面に配置される加熱発泡材f3の下方部分の露出面を覆うとともに、見付け面部62bによって下框22の下端に配置される端部キャップの室内側面を覆っている。
【0063】
さらに、框補強部材62は、底面部62dが下框22の下面に固定されることで、見付け面部62cによって下框22の室外側壁部221bの室内側面に配置される加熱発泡材f4を覆っている。
なお、
図22(b)は、各実施形態の説明の参考のために、補強部材を配置していない障子を示している。
【0064】
以上のように、第4の実施形態の防火建具によれば、枠体1及び障子2の下方端部が補強部材により補強され、強度が向上するとともに、枠体1の左竪枠13と障子2の左竪框23との間の空間Aに対して発泡した加熱発泡材が侵入することを防止することができる。
したがって、火災時に加熱発泡材が発泡することによりダンパーの下方が閉塞されることを抑制して、オイルをスムーズに排出することができる。
また、枠体に対する補強部材が、竪枠補強部材と下枠補強部材とに分割されているので、工場出荷時に両補強部材を竪枠及び下枠に固定してノックダウン出荷させることができ、現場での施工性を向上させることができる。
【0065】
なお、以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
例えば、各実施形態においては、加熱発泡材の枠体もしくは框体に対する配置は、枠体もしくは框体に形成されたホルダーに対して、枠体もしくは框体の端部から通し込むことによって行うことができるが、さらに、ホルダーの一部をカシメ変形させて固定してもよい。また、加熱発泡材の配置は、ホルダーによるものに限らず、例えば接着やネジ等によって固定してもよい。
【0066】
また、補強部材の材料は、ステンレスやアルミ合金、鋼材等の金属材料に限らない。加熱発泡材を覆って空間Aに露出しないようにすることを目的とするのであれば、耐熱性ガラスや不燃性樹脂材料など加熱発泡材の膨張を抑えることができ、ダンパーのオイル等の液体の排出を阻害しない任意の材料を用いることができる。また、加熱発泡材のダンパーの下方位置の部分を切除するなどして、枠体の竪枠と障子の竪框との間の空間に露出しないようにしてもよい。
さらに、補強部材の取付についても、ネジ等の固定手段によるものに限定されず、補強部材の弾性を利用して弾性係合による装着や、接着、溶接等によって固定してもよく、何ら限定されない。
【0067】
さらに、防火建具は、金属部材と樹脂部材とからなる複合サッシに限定されるものではなく、アルミ合金等の金属材料からなるアルミサッシや樹脂材料からなる樹脂サッシなど建具の材料は何ら限定されるものではない。また、窓種についても、枠体の竪枠と障子の竪框との間の空間にダンパーが配置される窓であれば、外倒し窓に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1 :枠体
2 :障子
8 :ダンパー
9 :端部キャップ
12 :下枠
13 :左竪枠(竪枠)
22 :下框
23 :左竪框(竪框)
51~62:補強部材
A :空間
B :空間
f1~f6:加熱発泡材