(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】差込プラグ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/46 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
H01R13/46 302B
(21)【出願番号】P 2018195829
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】貝原 啓之
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152198(JP,A)
【文献】特開2012-209180(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179905(JP,U)
【文献】特開2002-329546(JP,A)
【文献】特開2012-48820(JP,A)
【文献】特開2009-37879(JP,A)
【文献】米国特許第5628641(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板と、
前記支持板に形成された軸受部と、
前記軸受部に接続される回転軸が形成され、前記支持板に対して回転可能に取り付けられた回転ベースと、
前記回転ベースに取り付けられたピンと、
前記回転軸の一端に形成され、その外周に複数の突起を有するカムと、
その内周に前記突起と係り合う溝を有し、前記支持板に固定された弾性フレームと、
前記回転軸の他端に形成され、その外周の一箇所を突出させてなる突出部と、
前記回転ベースが所定の向きにある場合に、前記突出部と接触する弾性凸部と、
を含む差込プラグ。
【請求項2】
請求項1に記載の差込プラグであって、
前記支持板の一部をドーム状に突出させて形成されたピン収容部と、
前記ピン収容部に接続されたカバーを含み、
前記弾性凸部は、
前記カバーに形成される
差込プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差込プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
ピンの向きを0°~180°まで自在に回転できるスイングプラグ方式を採用した電子機器(ACアダプタ)の従来技術が開示されている(例えば特許文献1)。特許文献1の電子機器(ACアダプタ)は、外装ケースの第1の表面からプラグを突出させる第1の姿勢と、第1の表面に直交する外装ケースの第2の表面からプラグを突出させる第2の姿勢と、第1の表面の内側に電源プラグを収納する収納位置とで収納するように、電源プラグを外装ケースに回転できるように収納して、電源プラグの回転ベースには、第1の姿勢で第2の表面に向かって突出する突出部を設けてその突出端を第2の表面から突出する位置として、第1の姿勢における絶縁距離を延長し、収納位置においてプラグを第1の表面に対して内側に傾斜する姿勢で収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば
図1(A)に示すように、ケーブル53が下向きに延伸する向きでアダプタ52を使用した場合、家庭用コンセントが床の近くに設置されている場合が多いために、ケーブル53引き回し時にケーブル53の一箇所(例えば図中の点x)に屈曲負荷が集中してしまい、ケーブル53が破損する場合がある。これを避けるために
図1(B)に示すように、ピン51を180°開いた状態で使用しようとしても、スイングプラグの保持力が弱いために、アダプタ52が自重により図中のy方向に回転してしまい、
図1(A)の状態に戻ってしまう。また
図1(C)に示すように、ケーブル53が上向きに延伸する向きでアダプタ52を使用した場合、スイングプラグの保持力が弱いために、アダプタ52が自重により図中のz方向に回転してしまい、これによりケーブル53に接続された電子機器(例えば携帯端末)が転倒したり、机上から落下したりする場合があった。
【0005】
そこで本発明では、所定の開き角度において保持力を高めることができる差込プラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の差込プラグは、支持板と、支持板に形成された軸受部と、軸受部に接続される回転軸が形成され、支持板に対して回転可能に取り付けられた回転ベースと、回転ベースに取り付けられたピンと、回転軸の一端に形成され、その外周に複数の突起を有するカムと、その内周に突起と係り合う溝を有し、支持板に固定された弾性フレームと、回転軸の他端に形成され、その外周の一箇所を突出させてなる突出部と、回転ベースが所定の向きにある場合に、突出部と接触する弾性凸部を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の差込プラグによれば、所定の開き角度において保持力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】従来のスイングプラグ方式のACアダプタの問題点を示す概念図。
【
図3】実施例1の差込プラグの支持板への回転ベースの取付を説明する斜視図。
【
図4】実施例1の差込プラグのカムと弾性フレームの接続を説明する斜視図。
【
図5】実施例1の差込プラグの突出部と弾性凸部の接触を説明する斜視図。
【
図6】実施例1の差込プラグの弾性凸部を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
以下、
図2を参照して実施例1の差込プラグの外形を説明する。同図に示すように本実施例の差込プラグ1は、ケース105と、可動式の回転ベース110と、回転ベース110に取り付けられたピン115を含む。
【0011】
以下、
図3を参照して、ケース105の底板に該当する支持板120と、支持板120に取り付けられる回転ベース110について詳細に説明する。同図に示すように、支持板120には、その長手方向一端側(同図における手前側)に、後述する回転軸135を支持する断面半円形の溝である一対の軸受部121と、ピン115を折りたたんで収容するためのピン収容部125であって、支持板120の一部をドーム状に上方向に突出させて形成されたピン収容部125と、支持板120の板面かつ一方の(同図における向かって右側の)軸受部121近傍に形成された枠140と、枠140の一方の(同図における向かって右側の)一部を切り欠いてなる切欠き141を含む。
【0012】
回転ベース110は、略直方体形状であって、支持板120に対して回転可能に取り付けられる。具体的には、回転ベース110には、支持板120短手方向に延伸され、一対の軸受部121に接続される回転軸135が形成される。回転軸135は、支持板120短手方向一端側(同図における向かって右側)および支持板120短手方向他端側(同図における向かって左側)に、回転ベース110から突出して形成されている。回転軸135の一端(同図における向かって右端)に、回転軸135の延伸方向と垂直な方向に突出する複数の突起を有し、断面星形形状のカム136が形成される。例えば、突起は、カム136の外周上に45°間隔で配置される。回転軸135の他端(同図における向かって左端)に、その外周の一箇所を回転軸135の延伸方向と垂直な方向に突出させてなる突出部155が形成される。
【0013】
以下、
図4を参照して、本実施例の差込プラグ1のカム136と弾性フレーム145の接続を説明する。同図に示すように、カバー150がピン収容部125に被せられ、接続される。カバー150の一端(同図における向かって右手前側)には、下方向に開口するケースであるフレーム収容部151が設けられる。同図の左上の破線で囲んだ領域内に示すように、本実施例の差込プラグ1は、弾性変形する枠型の弾性フレーム145を含む。弾性フレーム145は、その内周の一部に互いに向き合い、カム136の突起と係り合う一対の溝146と、その周の一部を一方(同図における向かって右手前側)に突出させてなる凸部147を含む。
【0014】
同図の中央および右下の破線で囲んだ領域内に示すように、弾性フレーム145の上端はフレーム収容部151に収容され、弾性フレーム145の下端は枠140に収容され、支持板120に固定される。このとき、枠140の切欠き141に弾性フレーム145の凸部147が嵌め合わされる。同図の右下の破線で囲んだ領域内に示すように、弾性フレーム145にカム136が挿通され、カム136の何れかの突起およびこれに対向する位置にある突起が、弾性フレーム145の一対の溝146にそれぞれ嵌め合わされる。
【0015】
以下、
図5、
図6を参照して、本実施例の差込プラグ1の突出部155と弾性凸部152の接触を説明する。
図5に示すように、カバー150には、下方に延伸する細長い棒状の弾性凸部152が形成される。弾性凸部152は、
図6に示すようにピン収容部125には固定されず、ピン収容部125との間に空隙160を介している。従って弾性凸部152は、支持板120の長手方向に弾性変形しやすい形状と言える。カバー150、弾性凸部152は例えば樹脂製とすることができる。
図5に示すように、回転ベース110が所定の向きにあり、すなわち、ピン115が支持板120に対して90°(180°)の角度をなす場合、突出部155は、弾性凸部152と接触するものとする。なお、弾性凸部152は、回転ベース110と基板を接続する端子に設けても同様の効果を奏する。
【0016】
本実施例の差込プラグ1について以下のように各状態を定義し、各状態間の遷移について説明する。
【0017】
<状態0°>
ピン115は、折りたたまれ、ピン収容部125に完全に収容されている。
【0018】
<状態90°>
ピン115は、支持板120に対して90°の角度をなしている。
【0019】
<状態180°>
ピン115は、ピン収容部125の外部にあり支持板120の長手方向と平行な方向を向いている。
【0020】
<状態0°→状態90°>
状態0°から状態90°まで回転ベース110およびピン115を手動で回転させようとする場合、回転軸135の一端については、
図4に示すように、カム136が回転することにより、カム136の突起に押されて、弾性フレーム145の内周が拡大する方向に弾性変形する。これにより、溝146に嵌りこんでいたカム136の突起は溝146から抜け出し、回転ベース110が回転しはじめる。このとき
図4の向きからみて、カム136は時計回りに回転することになる。これにより、直前まで溝146と係合していた突起と反時計回りにみて隣り合う位置にある突起が次に溝146と係り合うこととなる。さらにピン115を手動で回転させようとする場合、同様に弾性フレーム145の内周が拡大する方向に弾性変形し、溝146に嵌りこんでいたカム136の突起は溝146から抜け出し、反時計回りにみて隣り合う位置にある突起が次に溝146に落ち込んで係り合う動作が繰り返される。一方、回転軸135の他端については、状態90°になるまでは突出部155は何れの部品とも接触せず、
図5の向きから見て反時計回りに回転する。従って、回転ベース110およびピン115を手動で回転させるユーザは、所定の角度毎に、カム136の突起が溝146に落ち込むことによるクリック感を得ることができ、クリック感を目安にしながら、回転ベース110およびピン115を所望の角度に回転させることができる。また、カム136の突起と溝146が係り合っているため、外力が加えられた場合であっても、その外力が所定の大きさ以下であれば、その開き角度を維持することができる。
【0021】
<状態90°→状態180°>
状態90°から状態180°まで回転ベース110およびピン115を手動で回転させようとする場合、回転軸135の一端については、前述と同様に、弾性フレーム145の内周が拡大する方向に弾性変形し、溝146に嵌りこんでいたカム136の突起は溝146から抜け出し、反時計回りにみて隣り合う位置にある突起が次に溝146に落ち込んで係り合う動作が繰り返される。一方、回転軸135の他端については、状態90°において突出部155と弾性凸部152が接触する(
図5)。ピン115がさらに開くように(状態が90°以上となるように)力を加えると、突出部155が弾性凸部152を押すことにより、弾性凸部152は、支持板120の長手方向(
図5における左奥方向)に弾性変形する。この状態において、ピン115が開くように力を加え続けると弾性凸部152が弾性変形し、突出部155の先端が弾性凸部152と接触したまま、下方向に滑りながら
図5の向きから見て反時計回りに回転する。突出部155の先端が斜め上方を向いている限り、弾性凸部152は、回転軸135の回転を抑制する方向に突出部155を押し続ける。一方、突出部155の先端が斜め下方向を向いたとき、弾性凸部152は、回転軸135の回転を促進する方向に突出部155を押し始める。
【0022】
<状態180°→状態90°>
状態180°から状態90°まで回転ベース110およびピン115を手動で回転させようとする場合(前述と逆向きの回転)、回転軸135の一端については、前述と同様に、弾性フレーム145の内周が拡大する方向に弾性変形し、溝146に嵌りこんでいたカム136の突起は溝146から抜け出し、時計回りにみて隣り合う位置にある突起が次に溝146に落ち込んで係り合う動作が繰り返される。一方、回転軸135の他端については、状態180°において突出部155と弾性凸部152が接触する。ピン115が閉じるように(状態が180°以下となるように)力を加えると、突出部155が弾性凸部152を押すことにより、弾性凸部152は、支持板120の長手方向(
図5における左奥方向)に弾性変形する。この状態において、ピン115が閉じるように力を加え続けると弾性凸部152が弾性変形し、突出部155の先端が弾性凸部152と接触したまま、上方向に滑りながら
図5の向きから見て時計回りに回転する。突出部155の先端が斜め下方を向いている限り、弾性凸部152は、回転軸135の回転を抑制する方向に突出部155を押し続ける。一方、突出部155の先端が斜め上方向を向いたとき、弾性凸部152は、回転軸135の回転を促進する方向に突出部155を押し始める。
【0023】
従ってユーザはピン115を、状態0°→状態90°に立ち上げる場合に、所定の角度毎(例えば45°毎)にクリック感を体感する。カム136のいずれかの突起と溝146が係り合った状態においてピン115の開き角は、所定の保持力で保持される。
【0024】
ユーザは状態90°を超えてピン115を回転させようとする場合に回転を抑制される感覚およびそれを乗り越える感覚を体感する。突出部155と弾性凸部152が接触した状態においてピン115の開き角は、ピン115を開く方向の回転に対して、上述の保持力よりも強い保持力で保持される。
【0025】
ユーザは状態180°からピン115を閉じる方向に回転させようとする場合に回転を抑制される感覚およびそれを乗り越える感覚を体感する。突出部155と弾性凸部152が接触した状態においてピン115の開き角は、ピン115を閉じる方向の回転に対して、状態90°と同程度の強い保持力で保持される。
【0026】
このように、本実施例の差込プラグ1によれば、カム136を回転軸135の一端に形成して弾性フレーム145と係合させたことにより、所定の角度毎にクリック感の体感および角度保持を可能にし、突出部155を回転軸135の他端に形成して弾性凸部152と係合させたことにより、状態90°においてピン115を開く方向の力に対して強い保持力を発揮でき、状態180°においてピン115を閉じる方向の力に対して強い保持力を発揮できる。これにより、差込プラグ1の回転ベース110が予期せぬ回転をすることを防止することができ、差込プラグ1に接続された電子機器の転倒、落下などを防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 差込プラグ
105 ケース
110 回転ベース
115 ピン
120 支持板
121 軸受部
125 ピン収容部
135 回転軸
136 カム
140 枠
141 切欠き
145 弾性フレーム
146 溝
147 凸部
150 カバー
151 フレーム収容部
152 弾性凸部
155 突出部
160 空隙
51 ピン
52 アダプタ
53 ケーブル