(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】接着剤層を備えたアクリルポリビニルアセタールフィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/24 20180101AFI20220225BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220225BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220225BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220225BHJP
C08F 2/48 20060101ALI20220225BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C09J7/24
C09J201/00
C09J133/00
B32B27/30 102
B32B27/30 A
C08F2/48
C08J5/18
(21)【出願番号】P 2018532550
(86)(22)【出願日】2016-12-16
(86)【国際出願番号】 US2016067122
(87)【国際公開番号】W WO2017112537
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-13
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジャノスキ, ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, カーラ エス.
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ, アンソニー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ホワイティング, ティエン ワイ.エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】レヴァンドフスキ, ケヴィン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ファンスラー, ドゥエイン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リヨン, キース アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウィーケル, アーリーン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ショッキー, エリック ディー.
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン, ドナルド イー.
(72)【発明者】
【氏名】フランク, ジョン ダブリュー.
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/132115(WO,A1)
【文献】特開2007-277050(JP,A)
【文献】特開2009-066896(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050746(WO,A1)
【文献】特開2015-196754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/30
C08F 2/48
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
【化1】
[式中、R
1は水素又はC1~C7アルキル基である。]を有する重合単位を含む、(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物を含
むフィルムであって、
0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、少なくとも10重量%含み、
接着剤組成物の層が、フィルムに隣接して配置され、前記接着剤組成物が、25℃及び1ヘルツで1MPa未満の引張弾性率を有し、
少なくとも30℃のTgを有するか、少なくとも20%のゲル含有量を有するか、25℃及び1ヘルツで少なくとも1MPaの引張弾性率を有するか、又はこれらの組み合わせである、フィルム。
【請求項2】
前記接着剤は25℃未満のTgを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記接着剤組成物は、25℃及び1ヘルツで0.9MPa未満の引張弾性率を有する感圧接着剤である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
接着剤がコーティングされたシート又はテープのバッキングである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フィルムに隣接した第2のバッキングを更に備え、前記第2のバッキングは、ポリマーフィルム、織布又は不織布、金属箔、発泡体、紙及びこれらの組み合わせから選択される基材を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィルム及び/又は前記第2のバッキングは、追従性ポリマーフィルムである、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記接着剤組成物はアクリル接着剤組成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
前記接着剤の層は、凹凸を有する三次元形状を含み、微細構造化されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
山及び谷を含む構造化層を備えた、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムの外側の露出表面上に配置された剥離コーティング、又は前記接着剤の層を被覆する取り外し可能な剥離ライナーを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
少なくとも30℃のTgを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
酸官能性
モノマー、ヒドロキシル官能性モノマー、窒素含有モノマー、及びこれらの組み合わせから選択される極性モノマーの重合単位を、10重量%以上、かつ65重量%以下含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
多官能性架橋剤の重合単位を更に含み、前記架橋剤が、(メタ)アクリレート、アルケニル、及びヒドロキシル反応性基から選択される官能基を含む、請求項1~
12のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項14】
前記フィルムの前記(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物は単一の相を有する、請求項1~
13のいずれか一項に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[概要]
式
【化1】
[式中、R
1は水素又はC1~C7アルキル基である。]を有する重合単位を含む、(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物を含む、フィルムが記載される。接着剤組成物の層は、フィルムに隣接して配置される。接着剤組成物は、25℃及び1ヘルツで1MPa未満の引張弾性率を有する。
【0002】
[詳細な説明]
本明細書では、(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマーを含むフィルムについて記載する。接着剤組成物の層は、フィルム上に配置される。フィルムは、好ましくは、ポリビニルアセタールポリマーをフリーラジカル重合性溶媒モノマー中に溶解することによって調製される。溶媒モノマーは、好ましくは(例えば紫外)放射線に曝露することによって重合する。
【0003】
「ダルキストの粘着性基準(DahlquistCriterion for Tack)」は、感圧接着剤(PSA)の必要条件として広く認識されている。これは、PSAがほぼ室温(25℃)及び1ヘルツの周波数で3×106ダイン/cm20.3MPa)未満の剪断貯蔵弾性率(G’)を有するとしている(Pocius,「Adhesion and Adhesive Technology」3rd Ed.,2012,p.288)。
【0004】
剪断貯蔵弾性率は、以下の式を使用して引張貯蔵弾性率に変換することができる。E’=2G’(r+1)[式中、rは、関連する材料のポアソン比である。]。この式を使用し、かつエラストマー及びPSAのポアソン比が0.5に近いことを所与とすれば、引張貯蔵弾性率(E’)として表されるダルキスト基準は0.9MPa(9×106ダイン/cm2)未満である。
【0005】
本明細書に記載されるフィルムは、概ね、動的機械分析によって計測し得るとおり(実施例に記載する試験方法によって決定するとき)、1ヘルツで9×106ダイン/cm2(0.9MPa)又は1×107ダイン/cm2(1MPa)より大きい25℃での引張貯蔵弾性率(E’)を有する。25℃及び1ヘルツでの引張貯蔵弾性率(E’)は、通常、5×107ダイン/cm2(5MPa)超、一部の実施形態では少なくとも1×108ダイン/cm2(10MPa)、5×108ダイン/cm2(50MPa)である。一部の実施形態では、25℃及び1ヘルツでの引張貯蔵弾性率(E’)は、1ヘルツで少なくとも1×109ダイン/cm2、5×109ダイン/cm2、又は1×1010ダイン/cm2(すなわち1000MPa)である。したがって、フィルムは、ダルキスト基準によるところの感圧接着剤ではない。
【0006】
接着剤層は、1×107ダイン/cm2(1MPa)未満又は9×106ダイン/cm2(0.9MPa)未満の25℃での引張貯蔵弾性率(E’)を有する。
【0007】
フィルムは、シート又はテープなどの接着物品のためのバッキングとして特徴付けることができる。
【0008】
一部の実施形態では、本明細書に記載のフィルムは、第2のバッキング上に配置されるか、又は第2のバッキングに(例えば、接着剤を用いて)付着させ得る。第2のバッキングは、接着剤と、(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマーを含むフィルムとの間に配置されてもよく、並びに/又は第2のバッキングは、反対側の主表面上若しくは(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマーを含むフィルム上に配置されてもよい。
【0009】
第2のバッキングは、様々な可撓性及び非可撓性(例えば予備成形されたウェブ)の基材を含むことができ、それには、ポリマーフィルム、織布又は不織布、金属箔、発泡体、紙、及びこれらの組み合わせ(例えば、金属化ポリマーフィルム)を挙げ得るが、これらに限定されない。ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン(例えば二軸配向)、ポリエチレン(例えば高密度又は低密度)、ポリビニルクロライド、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)、ポリビニルブチラール、ポリイミド、ポリアミド、フルオロポリマー、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、エチルセルロース、及びポリ乳酸(PLA)などのバイオ系材料が挙げられる。織布又は不織布は、セルロース(例えば、ティッシュ)、綿、ナイロン、ポリエチレン、レーヨン、ガラス、セラミック材料などの、合成材料又は天然材料の、繊維又はフィラメントを含んでもよい。
【0010】
一部の実施形態では、第2のバッキングは、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリ(メタ)アクリルポリマー、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)樹脂などの熱可塑性ポリマーである。
【0011】
一部の実施形態では、第2のバッキングは、少なくとも90%の可視光透過率を有する透明フィルムである。他の実施形態では、第2のバッキングは、不透明(例えば、白色)又は反射性である。
【0012】
別の実施形態では、フィルム又は第2のバッキングは、金属又は金属酸化物層を更に含むことができる。金属の例としては、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、パラジウム、亜鉛、スズ、ニッケル、銀、銅、金、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタンなどが挙げられる。金属酸化物層に用いられる金属酸化物の例としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、酸化ケイ素、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウムなどが挙げられる。これらの金属及び金属酸化物は、単独で、以上2つ以上の組み合わせで使用することができる。これらの金属及び/又は金属酸化物の層は、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、及びCVD(Chemical Vapor Deposition)などの公知の方法により形成することができる。金属及び/又は金属酸化物層の厚さは、典型的には、少なくとも5nm以上、100又は250nm以下の範囲である。
【0013】
フィルム又は第2のバッキングの厚さは、典型的には、10、15、20又は25ミクロン(1ミル)以上、かつ典型的には500ミクロン(20ミル)以下の厚さである。一部の実施形態では、フィルム又は第2のバッキングの厚さは、400、300、200、又は100ミクロン以下である。フィルムは、第2のバッキングと同じ厚さを有することができる。しかしながら、フィルムは、特にバッキングと組み合わせて使用するとき、10ミクロン未満の厚さを有することができる。一部の実施形態では、(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマーを含むフィルムは、典型的には少なくとも250nm、500nm、750nm又は1ミクロンである。フィルム全体及び第2のバッキングは、典型的には、ロール品(roll good)の形態であるが、枚葉の形態であってもよい。
【0014】
一部の実施形態では、フィルム及び/又は第2のバッキングは追従性である。「追従性」とは、フィルムを湾曲部若しくは突起の周りに引き延ばせるよう、又はフィルムを破損若しくは剥離することなく凹みに押し入れられるように、基材表面上の湾曲部、凹み若しくは突起に適応可能であるように、フィルム又はフィルム層が十分に柔軟かつ可撓性であることを意味する。また、適用後にフィルムは、基材表面から剥離又は遊離(ポップアップと呼ばれる)しないことが望ましい。
【0015】
好適な追従性の第2のバッキングとしては、例えば、ポリビニルクロライド(PVC)、可塑化ポリビニルクロライド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フルオロポリマーなどが挙げられる。例えば、熱可塑性ポリウレタン及びセルロースエステルを含め、他のポリマーブレンドも場合により適している。
【0016】
一部の実施形態では、第2のバッキングは、延伸された後に十分な非弾性変形を有するため、延伸されるとフィルムは元の長さに戻らない。好ましくは、フィルムは、それらの元の長さの115%まで一度延伸された後に、少なくとも5%の非弾性変形を有する。他の実施形態では、%引張永久ひずみ(国際公開第2016/094277号に記載)により決定したときの(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマーを含むフィルムの追従性は、少なくとも20、25又は30%である。
【0017】
フィルム又は第2のバッキングは、任意に、その間に配置されるプライマー又は接着促進処理を更に含むことができる。
【0018】
好適なプライマーの例としては、塩素化ポリオレフィン、ポリアミド、米国特許第5,677,376号、同第5,623,010号に開示されている変性ポリマー、並びに国際公開第98/15601号及び国際公開第99/03907号に開示されているもの、並びに他の変性アクリルポリマーが挙げられる。フィルム及び/又は第2のバッキングは更に、空気若しくは窒素コロナ処理、プラズマ、火炎又は化学線などの接着促進処理に供されてもよい。
【0019】
フィルムは、任意に、同時出願された77044US002に記載のとおり構造化層を更に備えてもよく、本明細書に参照により組み込まれる。一部の実施形態では、構造化層は、ベースフィルム層と、ベースフィルム層の主表面上に配置された構造体とを備え、ベースフィルム層及び/又は構造体は、(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物を含むことができる。他の実施形態では、構造化層は、ベースフィルム層と、ベースフィルム層の主表面上に配置された山及び谷を含む構造体と、谷を少なくとも部分的に充填する充填材料と、を備える。本実施形態では、ベースフィルム層及び/又は構造体及び/又は充填材料は、(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物を含む。
【0020】
フィルムは、1~14個の炭素原子、好ましくは平均4~12個の炭素原子を含有する(例えば非第三級)アルコールから誘導された、1つ又は複数の(メタ)アクリレートエステルモノマーの重合単位を含む。
【0021】
モノマーの例としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、イソオクチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、2-プロピルヘプタノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノールなどの非第三級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかとの、エステルが挙げられる。
【0022】
フィルムは、1つ又は複数の低Tg(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を含み、すなわち、反応してホモポリマーを形成したときの(メタ)アクリレートモノマーは、0℃以下のTgを有する。一部の実施形態では、低Tgモノマーは、-5℃以下、又は-10℃以下のTgを有する。これらのホモポリマーのTgは、多くの場合、-80℃以上、-70℃以上、-60℃以上又は-50℃以上である。
【0023】
低Tgモノマーは、次の式
H2C=CR1C(O)OR8
[式中、R1はH又はメチルであり、R8は、1~22個の炭素を有するアルキル、又は2~20個の炭素及び酸素若しくは硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子を有するヘテロアルキルである。]を有し得る。アルキル基又はヘテロアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0024】
例示的な低Tgモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、及びドデシルアクリレートが挙げられる。
【0025】
低Tgヘテロアルキルアクリレートモノマーとしては、2-メトキシエチルアクリレート及び2-エトキシエチルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
一部の実施形態では、フィルムは、6~20個の炭素原子を有する、アルキル基を有する、少なくとも1つの低Tgモノマーの重合単位を含む。一部の実施形態では、低Tgモノマーは、7個又は8個の炭素原子を含む、アルキル基を有する。例示的なモノマーとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、モノマーは、(メタ)アクリル酸と、2-オクチル(メタ)アクリレートなどの再生可能資源から誘導されたアルコールとの、エステルである。
【0027】
フィルムは、典型的には、重合単位の総重量に基づいて(すなわち無機充填剤又は他の添加剤は除く)、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、少なくとも10、15、20、又は25重量%含む。本明細書で使用されるとき、重合単位の重量%とは、(メタ)アクリルポリマーとポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーと存在する場合に架橋剤との総重量に基づく重量%を指す。フィルムは、典型的には、重合単位の総重量に基づいて、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、60、55、50、45、又は40重量%以下含む。
【0028】
他の実施形態では、フィルムは、典型的には(メタ)アクリルポリマーとポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーと存在する場合に架橋剤との重合単位の総重量に基づいて、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、10重量%未満含む。例えば、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の最小濃度は、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8又は9重量%であってよい。
【0029】
フィルムが無機充填剤及び添加剤などの非重合構成成分を含まない場合、特定の重合単位の重量%は、全フィルム組成物中に存在するそのような重合単位の重量%とほぼ同じである。しかしながら、フィルム組成物が無機充填剤又は他の非重合性添加剤などの非重合構成成分を含む場合、全フィルム組成物は実質的により少ない重合単位を含み得る。概ね、非重合性添加剤の総量は25重量%以下の範囲であり得る。したがって、そのような非重合性添加剤を含むフィルムの場合、特定の重合単位の濃度は、そのような添加剤の総濃度に応じての分として、5、10、15、20、25重量%少なくなり得る。例えば、フィルムが20重量%の無機充填剤を含む場合、低Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの濃度は20%低く、すなわち、少なくとも8重量%、12重量%などであり得る。
【0030】
フィルムは、概ね、少なくとも1つの(例えば非極性)高Tgモノマーを含み、すなわち、反応してホモポリマーを形成したときの(メタ)アクリレートモノマーは0℃より高いTgを有する。高Tgモノマーは、より典型的には、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、又は40℃より高いTgを有する。
【0031】
典型的な実施形態では、フィルムは、例えば、t-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、及びプロピルメタクリレート又は組み合わせを含め、少なくとも1つの高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む。
【0032】
一部の実施形態では、フィルムは、重合単位の総重量に基づいて(すなわち無機充填剤又は他の添加剤は除く)、40℃、50℃、60℃、70℃、又は80℃より高いTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、1、2、又は3重量%以上、35又は40重量%以下含む。一部の実施形態では、フィルムは、高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、30、25、20、又は10重量%以下含む。更に、一部の実施形態では、フィルムは、高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0033】
他の実施形態では、フィルムは、(メタ)アクリルポリマーとポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーと存在する場合に架橋剤との重合単位の総重量に基づいて、40℃より高いTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、40重量%より多く含む。例えば、40℃より高いTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の最大濃度は、50、60、70、80又は90重量%であり得る。
【0034】
様々なモノマーのホモポリマーのTgは公知であり、様々なハンドブックに報告されている。いくつかの例示的なモノマーのTgは、国際公開第2016/094277号にも報告されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
典型的な実施形態では、フィルムは、極性モノマーの重合単位を、10、15又は20重量%以上、かつ65重量%以下更に含む。そのような極性モノマーは、概ね、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーと高Tg及び低Tgアルキル(メタ)アクリレート(例えば溶媒)モノマーとの相溶化に役立つ。極性モノマーは、典型的には0℃より高いTgを有するが、Tgは高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーより低くてもよい。
【0036】
代表的な極性モノマーとしては、例えば、酸官能性モノマー、ヒドロキシル官能性モノマー、窒素含有モノマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
一部の実施形態では、フィルムは、酸官能性モノマー(高Tgモノマーの一部)の重合単位を含み、ここで酸官能基は、カルボン酸など、酸それ自体であってもよく、又は一部分が、アルカリ金属カルボキシレートなど、その塩であってもよい。有用な酸官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和ホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。そのような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0038】
一部の実施形態では、フィルムは、アクリル酸などの酸官能性モノマーの重合単位を、0.5~20又は25重量%含む。一部の実施形態では、フィルム組成物は、酸官能性モノマーの重合単位を、少なくとも1、2、3、4、又は5重量%含む。他の実施形態では、フィルム組成物は、酸官能性モノマーの重合単位を、1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0039】
一部の実施形態では、フィルムは非酸官能性極性モノマーを含む。
【0040】
非酸官能性極性モノマーの1つの分類としては、窒素含有モノマーが挙げられる。代表的な例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリルアミド、モノ-又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、及びN-オクチルアクリルアミドが挙げられる。一部の実施形態では、フィルムは、窒素含有モノマーの重合単位を、0.5、1、2、3、4又は5重量%以上、かつ典型的には25又は30重量%以下含む。他の実施形態では、フィルムは、窒素含有モノマーの重合単位を、1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0041】
非酸官能性極性モノマーの別の分類としては、アルコキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。代表的な例、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メトキシエトキシ)エチル、2-メトキシエチルメタクリレート、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート。
【0042】
一部の実施形態では、フィルムは、アルコキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、0.5、1、2、3、4又は5重量%以上、かつ典型的には30又は35重量%以下含む。他の実施形態では、フィルムは、アルコキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0043】
好ましい極性モノマーとしては、アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN-ビニルピロリジノンが挙げられる。フィルムは、概ね、極性モノマーの重合単位を、10、15又は20重量%以上、かつ典型的には65、60、55、50又は45重量%以下の量で含む。
【0044】
フィルムは、任意に、ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート及び酸ビニルプロピオネート)、スチレン、置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン)、ビニルハライド、及びこれらの混合物を含め、ビニルモノマーを含み得る。本明細書で使用されるとき、ビニルモノマーには、極性モノマーは含まれない。一部の実施形態では、フィルムは、ビニルモノマーの重合単位を、0.5、1、2、3、4又は5重量%以上、かつ典型的には10重量%以下含む。他の実施形態では、フィルムは、ビニルモノマーの重合単位を、1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0045】
一部の有利な実施形態では、(メタ)アクリルポリマーの重合単位は脂肪族基を含有し、かつ芳香族部分を欠いている。
【0046】
典型的な実施形態では、溶媒モノマー(複数可)が重合して、ランダム(メタ)アクリルポリマーコポリマーを形成する。
【0047】
本発明において利用されるポリビニルアセタールポリマーは、当該技術分野において公知のとおり、国際公開第2016/094277号に更に詳細に記載されているように、例えばポリビニルアルコールをアルデヒドと反応させることによって得られる。ポリアセタール樹脂は、典型的にはランダムコポリマーである。しかしながら、ブロックコポリマー及びテーパードブロックコポリマーもランダムコポリマーと同様の利点をもたらし得る。
【0048】
ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーの含有量は、典型的にはポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーの65重量%~90重量%の範囲である。一部の実施形態では、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)の含有量は、約70又は75~80又は85重量%の範囲である。ポリビニルアルコールの含有量は、典型的にはポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーの約10~30重量%の範囲である。一部の実施形態では、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーのポリビニルアルコールの含有量は、約15~25重量%の範囲である。ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーのポリビニルアセテートの含有量は、0であるか、又はポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーの1~8重量%の範囲であってもよい。一部の実施形態では、ポリビニルアセテートの含有量は、約1~5重量%の範囲である。
【0049】
一部の実施形態では、アルデヒドのアルキル残基は1~7個の炭素原子を含む。他の実施形態では、アルデヒドのアルキル残基は、ブチルアルデヒド(R1=3)、ヘキシルアルデヒド(R1=5)、n-オクチルアルデヒド(R1=7)の場合など、3~7個の炭素原子を含む。これらのうち、ブタナールとしても知られるブチルアルデヒドが、最も一般的に利用される。ポリビニルブチラール(「PVB」)は、Kurarayから商品名「Mowital(登録商標)」で、また、Solutiaから商品名「Butvar(登録商標)」で市販されている。
【0050】
一部の実施形態では、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーは、約60℃~約75又は80重量%の範囲のTgを有する。一部の実施形態では、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーのTgは、少なくとも65又は70℃である。n-オクチルアルデヒドなどの他のアルデヒドがポリビニルアセタールポリマーの調製に使用される場合、Tgは65℃又は60℃未満であり得る。ポリビニルアセタールポリマーのTgは、典型的には少なくとも35、40又は45℃である。ポリビニルアセタールポリマーが60℃未満のTgを有する場合、ポリビニルブチラールポリマーを用いるものと比較して、より高濃度の高Tgモノマーをフィルム組成物に使用することができる。アセトアルデヒドなどの他のアルデヒドがポリビニルアセタールポリマーの調製に使用される場合、Tgは75℃又は80℃より高くなり得る。ポリビニルアセタールポリマーが70℃より高いTgを有する場合、ポリビニルブチラールポリマーを用いるものと比較して、より高濃度の低Tgモノマーをフィルム組成物に使用することができる。
【0051】
一部の実施形態では、ポリビニルアセタール(例えば、PVB)ポリマーは、典型的には、10,000g/モル又は15,000g/モル以上、かつ150,000g/モル又は100,000g/モル以下の平均分子量(Mw)を有する。一部の有利な実施形態では、ポリアセタール(例えばPVB)ポリマーは、20,000g/モル、25,000、30,000、35,000g/モル以上、かつ典型的には75,000g/モル以下の平均分子量(Mw)を有する。
【0052】
一部の実施形態では、フィルムは、(メタ)アクリレートポリマーとポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーと存在する場合に架橋剤との重合単位の総重量に基づいて、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタールポリマーを、5~30重量%含む。一部の実施形態では、フィルムは、ポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーを、少なくとも10、11、12、13、14又は15重量%含む。一部の実施形態では、フィルムは、ポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーを、25又は20重量%以下含む。フィルムが、50,000g/モル未満の平均分子量(Mw)を有するポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーを含む場合、フィルムは、35又は40重量%など、より高濃度のポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーを含み得る。したがって、フィルム及び組成物は、多量の(メタ)アクリルポリマーとの組み合わせで少量のポリビニルアセタール(例えばPVB)樹脂を含む。(メタ)アクリルポリマーの量は、典型的には、フィルムの少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95重量%である。
【0053】
他の実施形態では、フィルムは、(メタ)アクリルポリマーとポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーと存在する場合に架橋剤との重合単位の総重量に基づいて、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーを、5重量%未満含む。例えば、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーの最小濃度は、0.5、1、1.5、2、1.5、3、3.5、4又は4.5重量%であってもよい。
【0054】
一部の実施形態では、フィルムは重合架橋剤単位を含む。一部の実施形態では、架橋剤は、(メタ)アクリレート、ビニル、及びアルケニル(例えばC3~C20オレフィン基)から選択される官能基を含む架橋剤、並びに塩素化トリアジン架橋性化合物の場合など、(メタ)アクリルポリマーの重合単位の架橋能を有する多官能性架橋剤である。
【0055】
有用な(例えば脂肪族)多官能性(メタ)アクリレートの例としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、及びプロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物など、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、及びテトラ(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
一実施形態では、架橋性モノマーは(メタ)アクリレート基及びオレフィン基を含む。オレフィン基は少なくとも1個の炭化水素不飽和を含む。架橋性モノマーは、以下の式
【化2】
[式中、R1はH又はCH
3であり、
Lは任意による結合基であり、かつ、
R2はオレフィン基であって、任意に置換されている。]を有し得る。
【0057】
ジハイドロシクロペンタジエニルアクリレートは、この分類の架橋性モノマーの一例である。C6~C20オレフィンを含むこのタイプの他の架橋性モノマーが、国際公開第2014/172185号に記載されている。
【0058】
他の実施形態では、架橋性モノマーは、アリル、メタリル、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも2つの末端基を含む。アリル基は構造式H2C=CH-CH2-を有する。これは、ビニル基(-CH=CH2)に結合したメチレン架橋(-CH2-)からなる。同様に、メタリル基は、構造式H2C=C(CH3)-CH2-を有する置換基である。用語の(メタ)アリルには、アリル基及びメタリル基の両方が含まれる。このタイプの架橋性モノマーは、国際公開第2015/157350号に記載されている。
【0059】
一部の実施形態では、フィルムは、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンの場合など、ビニル基を含む多官能性架橋剤を更に含み得る。
【0060】
トリアジン架橋性化合物は、以下の式
【化3】
[式中、このトリアジン架橋剤のR
1、R
2、R
3及びR
4は独立して、水素又はアルコキシ基であり、R
1、R
2、R
3及びR
4のうちの1~3個は水素である。]を有し得る。アルコキシ基は、典型的には、12個以下の炭素原子を有する。有利な実施形態では、アルコキシ基は独立して、メトキシ又はエトキシである。1つの代表的な種は、2,4,-ビス(トリクロロメチル)-6-(3,4-ビス(メトキシ)フェニル)-トリアジンである。そのようなトリアジン架橋性化合物は、米国特許第4,330,590号に更に記載されている。
【0061】
他の実施形態では、架橋剤は、(メタ)アクリルポリマー(例えばHEA)のアルコキシ基又はポリビニルアセタール(PVB)のポリビニルアルコール基の架橋能を有するイソシアネート基などの、ヒドロキシル反応性基を含む。有用な(例えば脂肪族)多官能性イソシアネート架橋剤の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、並びにこれらの誘導体及びプレポリマーが挙げられる。
【0062】
架橋剤の2つ以上の様々な組み合わせが用いられてもよい。
【0063】
存在する場合、架橋剤は、典型的には、(メタ)アクリレートポリマーとポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーと架橋剤との重合単位の総重量に基づいて、0.5、1.0、1.5、又は2重量%以上、5又は10重量%以下の量で存在する。したがって、フィルムはそのような量の重合架橋剤単位を含む。
【0064】
他の実施形態では、フィルムは、(メタ)アクリルポリマーとポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーと存在する場合に架橋剤との重合単位の総重量に基づいて、重合架橋剤単位を10重量%より多く含む。例えば、重合架橋剤単位の最大濃度は、50、55、60、65、70、75又は80重量%以下の範囲であり得る。
【0065】
フィルムは、様々な技法によって重合させることができるが、好ましくは、電子線、ガンマ線、特に紫外線照射を使用したプロセスを含め、無溶媒放射線重合によって重合させることができる。この(例えば紫外線照射の)実施形態では、概ねメタクリレートモノマーは、ほとんど又は全く用いられない。したがって、フィルムは、メタクリレート基を有するモノマーの重合単位を含まないか、又は10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1重量%以下含む。本明細書に記載されるフィルムの1つの調製方法は、ポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーを(メタ)アクリルポリマーの未重合溶媒モノマー(複数可)中に溶解させて、十分な粘度のコーティング可能組成物を形成すること、を含む。
【0066】
別の方法は、溶媒モノマー(複数可)を部分的に重合させて、未重合の溶媒モノマー(複数可)中に溶解した溶質(メタ)アクリルポリマーを含むシロップ組成物を製造すること、を含む。
【0067】
ポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーは、(メタ)アクリルポリマーのモノマー(複数可)の部分重合の前、及び/又はその後に添加することができる。本実施形態では、コーティング可能組成物は、部分的に重合した(例えばアルキル(メタ)アクリレート)溶媒モノマーとポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーとを含む。次に、このコーティング可能組成物を好適な基材上にコーティングし、更に重合させる。
【0068】
コーティング可能組成物の粘度は、典型的には25℃で1,000又は2,000cps以上、100,000cps以下の範囲である。一部の実施形態では、粘度は、75,000、50,000又は25,000cps以下である。コーティング可能組成物は、剥離ライナーなどの好適な基材上にコーティングされ、放射線曝露によって重合させる。
【0069】
本方法は、予重合した(メタ)アクリルポリマーと、ポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーとの溶媒ブレンドによって用いられ得るものと比べて、より高分子量の(メタ)アクリルポリマーを形成することができる。より高分子量の(メタ)アクリルポリマーによって鎖の絡み合い量が増加し、ひいては凝集力が増加し得る。また、架橋間の距離も高分子(メタ)アクリルポリマーでは大きくなり得、これが隣接する(例えばフィルム)層の表面上のウェットアウトを増加させる。
【0070】
フィルム組成物の分子量は、架橋剤を含めることによって更になお増加させることができる。
【0071】
本高分子量(メタ)アクリルポリマー及びにフィルムは、典型的には少なくとも20、25、30、35、又は40%のゲル含有量(テトラヒドロフラン(THF)を利用する実施例に記載されるゲル含有量試験方法に従い計測したとき)を有する。一部の実施形態では、ゲル含有量は、少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95%である。ゲル含有量は、典型的には100%、99%、又は98%未満である。(メタ)アクリルポリマーが高いゲル含有量を有するとき、これは、典型的には、熱可塑性ではない。
【0072】
重合は、好ましくは、溶媒モノマー及びポリビニル(例えばPVB)アセタールの官能基と非反応性の、エチルアセテート、トルエン及びテトラヒドロフランなどの、非重合性有機溶媒の非存在下で実施される。溶媒は、ポリマー鎖への様々なモノマーの組み込み速度に影響を及ぼし、ポリマーが溶液からゲル化又は沈殿するため、一般に低分子量をもたらす。したがって、フィルム組成物は、非重合性有機溶媒を含まないものであり得る。
【0073】
有用な光開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル、商品名IRGACURE651又はESACURE KB-1光開始剤(Sartomer Co.(West Chester,PA))で入手可能な2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン光開始剤及びジメチルヒドロキシアセトフェノンなどの置換アセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α-ケトール、2-ナフタレン-スルホニルクロライドなどの芳香族スルホニルクロライド、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシ-カルボニル)オキシムなどの光活性オキシム、並びにIRGANOX819又はLUCIRIN TPOなどのモノ-又はビス-アクリルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0074】
好ましい光開始剤は、ノリッシュI開裂を起こして、アクリル二重結合への付加により開始可能なフリーラジカルを生成する、光活性化合物である。光開始剤は、コーティング用の混合物に、ポリマー(例えばシロップ)の形成後に添加することができ、すなわち、光開始剤を添加することができる。そのような重合性光開始剤は、例えば米国特許第5,902,836号及び同第5,506,279号(Gaddamら)に記載されている。
【0075】
そのような光開始剤は、典型的には0.1~1.0重量%の量で存在する。光開始剤の吸光係数が低いとき、比較的厚いコーティングが実現し得る。
【0076】
フィルム組成物は、従来のコーティング技術を用いて、非構造化又は構造化剥離ライナー上にコーティングされ得る。例えば、これらのフィルム組成物は、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティングなどの方法により適用できる。コーティングの厚さは、変更することができる。フィルム組成物は、続くコーティングに望ましい任意の濃度であってよいが、典型的には、(メタ)アクリル溶媒モノマー中、固形分として5~30、35又は40重量%のポリビニルアセタールポリマーである。所望の濃度を、コーティング可能な組成物の更なる希釈によって達成してもよい。コーティング厚さは、(例えば放射線)硬化されたフィルムの所望の厚さに応じて変更することができる。
【0077】
コーティング剥離ライナーは、硬化の前に、前述のように、フィルム又は第2のバッキングと接触させることができる。
【0078】
フィルム組成物及び光開始剤には、モノマー構成成分(複数可)を重合させるために、280~425nmの波長範囲でUVA最大値を有する、活性化紫外線を照射することができる。紫外光源は、様々な種類であり得る。ブラックライトなどの低光度光源は、概ね、0.1又は0.5mW/cm2(ミリワット/平方センチメートル)~10mW/cm2(例えばElectronic Instrumentation&Technology,Inc.(Sterling,VA)によって製造されたUVIMAP UM365L-S放射計を用いて、United States National Institute of Standards and Technologyによって承認された手順に従って計測されるとき)の範囲の強度をもたらす。高光度光源は、概ね、10、15又は20mW/cm2より大きく、最高450mW/cm2又はそれ以上の範囲の強度をもたらす。一部の実施形態では、高強度光源は、最高500、600、700、800、900又は1000mW/cm2の強度をもたらす。モノマー構成成分(複数可)を重合させる紫外線は、発光ダイオード(LED)、ブラックライト、中圧水銀ランプなど又はこれらの組み合わせなどの様々な光源によってもたらされ得る。モノマー構成成分(複数可)はまた、Fusion UV System Inc.から入手可能なより高い光度の光源を用いて重合させることもできる。重合及び硬化のためのUV曝露時間は、使用される光源(複数可)の強度に応じて変更することができる。例えば、低強度光源を用いた完全硬化は、約30~300秒の範囲の曝露時間で達成することができるが、高強度光源による完全硬化は、約5~20秒の範囲のより短い曝露時間で達成することができる。高強度光源による部分硬化は、典型的には、約2秒~約5又は10秒の範囲の曝露時間で達成することができる。
【0079】
一部の実施形態では、第1のフィルム層は、透明であり、少なくとも90%の可視光透過率を有する。一部の実施形態では、フィルム、フィルム層、並びに(メタ)アクリルポリマー、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)及び存在する場合に架橋剤の組成物は透明であり、実施例にて記載した試験方法に従って測定したとき、少なくとも90、91、92、93、94又は95%の可視光透過率を有する。一部の実施形態では、透明度は、少なくとも90、91、92、93、94又は95%である。透過率及び透明度は、典型的には100%未満である。一部の実施形態では、ヘイズは、15%又は10%未満である。一部の実施形態では、ヘイズは、9、8、7、6、5、4、3又は2%未満である。ヘイズは、少なくとも0.5%であり得る。
【0080】
他の実施形態では、第1のフィルム層は、不透明(例えば、白色)又は反射性である。
【0081】
フィルムは、1つ又は複数の従来の添加剤を任意に含有してもよい。添加剤としては、例えば、抗酸化剤、安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、加工助剤、静電気防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、充填剤、艶消剤、難燃剤(例えばホウ酸亜鉛)などが挙げられる。充填剤又は顔料のいくつかの例としては、酸化亜鉛、二酸化チタンなどの無機酸化物、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、金属粉末、雲母、黒鉛、タルク、セラミック微小球、ガラス又はポリマービーズ又は気泡、繊維、デンプンなどが挙げられる。
【0082】
存在する場合、添加剤の量は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5重量%であり得る。一部の実施形態では、添加剤の量は、全フィルム組成物の25、20、15、10又は5重量%以下である。他の実施形態では、添加剤の濃度は、全フィルム組成物の40、45、50、55又は約65重量%以下の範囲であり得る。
【0083】
一部の実施形態では、フィルムは、可塑剤、粘着付与剤及びこれらの組み合わせを含まない。他の実施形態では、フィルムは、可塑剤、粘着付与剤及びこれらの組み合わせを、全フィルム組成物の5、4、3、2又は1重量%以下の量で含む。引張強さの観点から、粘着付与剤又は可塑剤を多量に添加しないことが好ましい。
【0084】
一部の実施形態では、フィルム組成物は、ヒュームドシリカを含む。(例えばヒュームド)シリカの濃度は変更することができる。一部の実施形態では、フィルムは、(例えばヒュームド)シリカを少なくとも0.5又は1.0重量%含む。
【0085】
フィルムは、様々な技術を用いて特徴付けることができる。コポリマーのTgは、構成モノマーのTg及びそれらの重量パーセントに基づきフォックス方程式を使用して推定し得るが、フォックス方程式は、非相溶性などの効果の相互作用を考慮に入れないため、TgがTg計算値から外れ得る。フィルムのTgは、国際公開第2016/094277号で先に引用した試験方法に従い示差走査熱量測定(DSC)によって計測したときのTg中点値を指す。フィルム及び(例えば放射線)硬化された組成物が、150℃より高いTgを有するモノマーを含む場合、DSC試験温度の上限は、最も高いTgのモノマーのTgよりも高くなるように選択される。DSCによって計測したときのTg中点値は、動的機械分析(DMA)によって10Hzの周波数及び3℃/分の速度で計測したときのピーク温度Tgよりも10~12℃低い。したがって、DSCにより計測したときの60℃のTgは、この直前に記載したとおりDMAにより計測したときの70~72℃と等価である。
【0086】
フィルムのTgは、概ね、20、25又は30℃以上、55、56、57、58、59又は60℃以下の範囲である。一部の実施形態では、フィルムのTgは、少なくとも31、32、33、34又は35℃である。他の実施形態では、フィルムのTgは、少なくとも36、37、38、39又は40℃である。更に他の実施形態では、フィルムのTgは、少なくとも41、42、43、44又は45℃である。一部の実施形態では、フィルムは、DSCによって計測したときに単一のTgを示す。したがって、重合(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物は、単独で、又は架橋剤と組み合わせて、単一のTgを示すことができる。
【0087】
単一のTgは、単一の(例えば連続)相形態の指標の1つである。したがって、フィルム、並びに重合(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物は、単独で、又は架橋剤と組み合わせて、単一の(例えば、連続)相として特徴付けられ得る。あるいは、フィルム又は(例えば放射線)硬化された組成物は、実施例に記載されている試験方法に従って透過型電子顕微鏡(TEM)によって試験することができる。低ヘイズ及び高透過率を有するフィルムには、単一の(例えば、連続)相形態が好ましい。
【0088】
他の実施形態では、フィルム、並びに重合(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物は、単独で、又は架橋剤と組み合わせて、(メタ)アクリルポリマーの連続相中にポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)の分散した相を有するものとして特徴付けられ得る。平均分散体サイズは、TEMを利用して、分散相のランダムに選択された粒子(例えば100個の粒子)の直径を平均することによって計算することができる。平均分散体サイズは、0.1~10ミクロンの範囲であり得る。一部の実施形態では、平均分散体サイズは、0.5、0.3、0.4、0.3、0.1ミクロン未満である。0.1ミクロン未満の平均分散体サイズはまた、低ヘイズ及び高透過率を有する、フィルムを提供することができる。
【0089】
フィルムは、先に引用した国際公開第2016/094277号に記載されている試験方法に従って、引張及び伸びによって特徴付けられ得る。引張及び伸び特性は、単独の、又は(例えば、PSA)接着剤と組み合わせたアクリルポリビニルアセタールフィルム層に関連し得る。一部の実施形態では、引張強さは、10、11、12、13、14又は15MPa以上、かつ典型的には50、45、40、又は35MPa以下である。破断点伸びは、2、3、4又は5%~約150%、200%、又は300%及びそれ以上の範囲であり得る。一部の実施形態では、伸びは50、100、150、又は175%以上であり、かつ225、250、275、又は300%以下の範囲であり得る。
【0090】
フィルムは、室温(25℃)で、好ましくは(120°F)50℃以下の範囲の(例えば、保存又は配送)温度では、触れても非粘着性であることが好ましい。一部の実施形態では、本フィルムはガラスに対して低レベルの接着を呈し得る。例えば、180°剥離値は、12インチ/分の剥離速度で約2オンス/インチ以下であり得る。
【0091】
接着剤組成物の層は、第1のフィルム又は第2のバッキングに隣接している。接着剤は、典型的には、第1のフィルム上若しくは第2のバッキング上に直接配置されるか、又は第1のフィルム若しくはバッキングと接着剤層との間にプライマー又は接着促進処理剤を含み得る。プライマーのタイプは、使用されるフィルム及び接着剤のタイプによって変更され、当業者は適切なプライマーを選択することができる。好適なプライマーの例としては、塩素化ポリオレフィン、ポリアミド、米国特許第5,677,376号、同第5,623,010号に開示されている変性ポリマー、並びに国際公開第98/15601号及び国際公開第99/03907号に開示されているもの、並びに他の変性アクリルポリマーが挙げられる。典型的には、プライマーは、非常に低い濃度、例えば、固形分として約5%未満(less that)で溶媒中に分散され、フィルム上にコーティングされ、室温又は高温で乾燥されて、非常に薄い層を形成する。使用される典型的な溶媒としては、水、ヘプタン、トルエン、アセトン、エチルアセテート、イソプロパノールなどを挙げ得、単独、又はそれらのブレンドとして使用し得る。
【0092】
接着剤層は、任意の好適な接着剤であってよい。接着剤の非限定的な例としては、感圧接着剤、感熱接着剤、放射線硬化性接着剤などが挙げられる。配合物タイプの例としては、溶媒系溶液、水系ラテックス、マイクロスフェア、ホットメルトコータブル、及びこれらの適当な組み合わせが挙げられる。感圧接着剤(PSA)は、Handbook of Pressure-Sensitive Adhesives,Ed.D.Satas,2nd Edition,Von Nostrand Reinhold,New York,1989に記載されているものなどの任意のタイプのPSAであってよい。有用な感圧接着剤の分類としては、例えば、粘着付与天然ゴム又は合成ゴムベースのものなどのゴム樹脂材料、スチレンブロックコポリマー、ポリビニルエーテル、アクリル(アクリレート及びメタクリレートの両方を含む)、ポリウレタン、ポリ-α-オレフィン、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの接着剤の組み合わせを使用することもできる。更に、更なる有用な接着剤としては、使用温度で適用されるように高温で活性化させることのできるものが挙げられる。これらの接着剤は、一般的に使用温度でダルキスト基準を満たすものである。
【0093】
感圧接着剤は、本質的に粘着性であってよい。望ましい場合には、感圧接着剤を形成するため、粘着付与剤を感圧接着剤ベース材料に添加することができる。有用な粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、混合芳香族/脂肪族炭化水素樹脂、及びテルペン樹脂が挙げられる。例えば、油、可塑剤、抗酸化剤、紫外線(「UV」)安定剤、水素添加ブチルゴム、顔料、充填剤、硬化剤、及び架橋剤を含め、他の材料を特殊な目的で添加することができる。充填剤又は顔料のいくつかの例としては、酸化亜鉛、二酸化チタン、シリカ、カーボンブラック、金属粉末、及び炭酸カルシウムが挙げられる。
【0094】
接着剤層は、当業者に公知の任意の従来的方法を用いて適用することができる。例えば接着剤層は、例えば回転ロッドダイ、スリットダイ若しくはグラビアロールを用いたコーティングによって、又は従来のコーティング重量(例えば0.0004~0.008g/cm2)での押出コーティングによって、フィルム表面上に適用することができる。接着剤層の適用は、接着剤層でフィルムを積層し、任意に剥離ライナーで被覆することによって、達成することもできる。剥離ライナーを使用する場合は、接着剤は、ライナー上にコーティングしてフィルムに積層するか、又は、フィルム上にコーティングしてその後に接着剤層に剥離ライナーが適用されるかの、いずれかである。接着剤層は、連続層として、又はパターン化不連続層として、適用することができる。接着剤層は、典型的には、約5~約50μmの厚さを有する。
【0095】
接着剤の例としては、適用時に感圧性であるPSA、ホットメルト、又は感熱接着剤が挙げられ、これには例えば、米国特許第4,994,322号(Delgadoら)、同第4,968,562号(Delgado)、欧州特許第0570515号及び欧州特許第0617708号に開示されている感圧接着剤、並びに、米国特許第5,296,277号及び同第5,362,516号(両方ともWilsonら)並びに同第5,141,790号(Calhounら)及び国際公開第96/1687号(Kellerら)に開示されている感圧接着剤が挙げられる。PSAの他の例は、米国再発行特許第24,906号(Ulrich)、米国特許第4,833,179号(Youngら)、同第5,209,971号(Babuら)、同第2,736,721号(Dester)及び同第5,461,134号(Leirら)に記載されている。アクリレート系PSAとしては、米国特許第4,181,752号(Clemensら)及び同第4,418,120号(Kealyら)、国際公開第95/13331号に記載されているものが挙げられる。
【0096】
一部の実施形態では、この接着剤層は、再配置可能な接着剤層である。用語「再配置可能」とは、少なくとも初期において、接着能を実質的に損なわずに、基材に繰り返し接着し、取り外すことが可能であることを指す。再配置可能な接着剤は通常、少なくとも初期において、従来の強力な粘着性のPSAよりも低い、基材表面に対する剥離強度を有する。好適な、再配置可能な接着剤としては、CONTROLTAC Plus Filmブランド及びSCOTCHLITE Plus Sheetingブランドで使用されている接着剤タイプが挙げられ、これらは両方とも、Minnesota Mining and Manufacturing Company(St.Paul,Minnesota,USA)で製造されている。
【0097】
接着剤層はまた、構造化接着剤層、又は少なくとも1つの微細構造化表面を有する接着剤層を有し得る。そのような構造化接着剤層を備えた含むフィルム物品を、基材表面に適用すると、チャネル又は同様構造のネットワークがフィルム物品と基材表面との間に存在する。そのようなチャネル又は同様構造の存在により、接着剤層を通って水平方向に空気が通り抜けることができ、これにより、適用中のフィルム物品及び表面基材の下から空気は逃げることができる。
【0098】
トポロジー的構造化接着剤はまた、再配置可能な接着剤を提供するのにも使用され得る。例えば、比較的大規模な接着剤エンボス加工が感圧接着剤/基材接触面積を永続的に低減させ、これにより感圧接着剤の接着強度も低減することが記載されている。様々なトポロジーには、凹面及び凸面のV字溝、ダイヤモンド、カップ、半球、コーン、噴火口形、及びその他の3次元形状で、全て接着剤層の底表面よりも有意に小さな上表面を有するものが挙げられる。一般に、これらのトポロジーは、平滑な表面の接着剤層に比べ、より低い剥離接着値を有する、接着シート、フィルム及びテープを提供する。多くの場合において、このトポロジー的構造化表面の接着剤はまた、接触時間の増加に伴う接着の構築が遅いことも示されている。
【0099】
微細構造化接着表面を有する接着剤層には、接着表面の機能部分全体にわたって均一に分布し、かつ接着表面から外向きに突出した、接着剤又は複合接着剤「ペグ」が含まれ得る。そのような接着剤層を備えたフィルム物品は、基材表面上に配置したときに、再配置可能なシート材料を提供する(米国特許第5,296,277号を参照)。そのような接着剤層は、保管及び加工中に接着ペグを保護するため、一致した微細構造化剥離ライナーも必要とする。微細構造化接着表面の形成は、例えば、対応する微細エンボス加工パターンを有する剥離ライナー上に、接着剤をコーティングすることによって、又は、国際公開第98/29516号に記載されているように、対応する微細エンボス加工パターンを有する剥離ライナーに対して、接着剤(例えばPSA)を圧迫することによって、達成することもできる。
【0100】
所望の場合は、接着剤層は、複数の接着剤サブ層を含み、組み合わせた接着剤層アセンブリを提供することができる。例えば、接着剤層には、PSA又は再配置可能な接着剤の連続的又は不連続な被覆層とともに、ホットメルト接着剤のサブ層を含み得る。
【0101】
この接着剤層は任意に、剥離ライナーで保護することができる。剥離ライナーは、好ましくは接着剤をはじく性質があり、より具体的には、適用される接着剤よりも低い表面エネルギーの化合物でコーティング又は改質された、紙又はフィルムを含む。オルガノシリコーン化合物、フルオロポリマー、ポリウレタン及びポリオレフィンが、この目的にかない得る。この剥離ライナーはまた、接着剤をはじく化合物を添加したか、又は添加していない、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ポリエステルから製造されたポリマーシートであり得る。上述のように、剥離ライナーは、接着剤層に構造を付与するための、微細構造化又は微細エンボス加工パターンを有し得る。
【0102】
あるいは、フィルムの露出表面(例えば、構造化層又は硬化された充填材料)は、当該技術分野において低接着性バックサイズ(LAB)とも呼ばれる好適な剥離剤がコーティングされてもよい。剥離材料は公知であり、例えばシリコーン、ポリエチレン、ポリカルバメート、ポリアクリルなどの材料が挙げられる。一部の実施形態では、接着剤は、アクリル感熱接着剤又はアクリル感圧接着剤である。そのような接着剤は、フィルムの(メタ)アクリルポリマーと同じ一般的構成成分を含むことができる。しかし、接着剤は、概ね、そのような構成成分を様々な濃度で含む。例えば、接着剤は、多くの場合、Tg及び引張弾性率を低下させるために、低Tgアルキル単官能性(メタ)アクリレートモノマーのより高い濃度の重合単位及び/又は十分な濃度の粘着付与剤を含む。一実施形態では、アクリル接着剤は、前述のように、低Tgアルキル単官能性(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、少なくとも65、70、75、80、85又は90重量%含む。一部の実施形態では、アクリル接着剤は、極性モノマー、例えば酸官能性モノマーを、少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10重量%含む。極性モノマーの最大濃度は、フィルムについて前述のものと同じである。一部の実施形態では、アクリル接着剤は、重合架橋剤単位を少なくとも0.4、1、1.5又は2重量%~約10又は15重量%含む。架橋剤は、前述のように、(メタ)アクリレート基及びオレフィン基を含んでいてもよい。あるいは、アクリル接着剤は、低濃度、例えば、1重量%未満のトリアジン架橋剤を含んでいてもよい。一部の実施形態では、アクリル接着剤は、粘着付与剤を5、10又は15重量%より多く、かつ典型的には20、30、40又は50重量%以下含む。典型的な実施形態では、接着剤はポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーを含まない。
【0103】
一部の実施形態では、フィルムは、例えば画像、グラフィック、文章及び/又は情報を、窓、建物、舗道、並びに自動車、バン、バス、トラック、路面電車などの車両の上に、例えば広告又は装飾を目的とするデザインに適用するために使用されるグラフィックフィルムである。この表面(例えば自動車)の多くは不規則形状及び/又は非平坦である。
【0104】
他の実施形態では、フィルムは装飾用のテープである。
【0105】
更に他の実施形態では、フィルムは合成皮革などの合成生地である。
【表1】
【表2】
【0106】
フィルム及び接着剤組成物の硬化
UVA硬化フィルム及び接着剤組成物は全て、350~400nmの範囲のUVA最大値を有する、UVA光源に曝露することにより硬化した。低出力検出ヘッド(EIT Incorporated(Sterling,VA)から入手可能)を備えたPOWERMAP放射計を使用して、総UVAエネルギーを決定した。その後、放射計のウェブ速度及びエネルギーを使用して、総UVAエネルギーを計算した。放射計のウェブ速度を使用して、総曝露時間を計算した。
【0107】
試験方法
角度90度の剥離強度
機械方向において、実測0.5インチ(1.27センチメートル)幅×約12インチ(30.5センチメートル)長のテープ試料を、試験前に少なくとも24時間、23℃及び相対湿度50%で調湿した。次いで、テープ試料を未使用の陽極酸化アルミニウムパネル上に置き、4.5ポンド(2kg)のゴムハンドローラを用いて1回、前後にローラ押圧した。試料を毎分90インチ(228.6センチメートル/分)で試験し、5秒間で平均をとった。結果は重量オンス/0.5インチで記録し、重量オンス/0.5インチ(ニュートン/デシメートル)で報告した。破壊モードに留意し記録した。接着剤が付着していた基材から、接着剤が完全に除去された場合は、接着剤破壊モードとした。一部がバッキングに付着し、一部が基材に付着したままの状態で、接着剤層が裂けた場合は、凝集破壊モードとした。接着剤が付着していたフィルムバッキングから、接着剤が完全に除去された場合は、2付着破壊モードとした。
【0108】
剪断強度
試験のために、実測5.1センチメートル(2インチ)長×3.8センチメートル(1.5インチ)幅×0.13センチメートル(0.050インチ)厚のステンレス鋼(SS)プレートを、メチルエチルケトン及び清潔なティッシュ(Kimberly-Clark Corporation(Neenah,WI)から商品名KIMWIPEで入手可能)で3回、最後は試料準備直前に清浄化することによって、準備した。接着テープを、実測1.27センチメートル(0.5インチ)幅及び少なくとも15センチメートル(6インチ)長のストリップに切断し、接触面積が1.27センチメートル×2.54センチメートル長になるようにプレートに付着させた。次いで、2kg(4.5ポンド)のゴムローラを、アセンブリ上で1回、前後に転がした。このアセンブリを23℃及び相対湿度50%で15分間平衡化した後、158°F(70℃)のオーブンに移して、2度の角度をつけて垂直に配置し、付着領域を越えて延びるテープの残りの長さによって、500gの重りをアセンブリに取り付けた。付着が破壊した時間(分)を記録した。破壊がなかった場合、1200分後に試験を中止し、1200という結果を記録した。各試料の3つの試験片を試験し、平均して結果を報告した。
【0109】
角度180度の剥離接着強度
試験のために、実測12.7センチメートル(5インチ)長×5.1センチメートル(2インチ)幅×0.13センチメートル(0.050インチ)厚のステンレス鋼(SS)プレートを、メチルエチルケトン及び清潔なティッシュ(Kimberly-Clark Corporation(Neenah,WI)から商品名KIMWIPEで入手可能)で3回、最後は試料準備直前に清浄化することによって、準備した。接着テープを、実測1.27センチメートル(0.5インチ)幅及び少なくとも20センチメートル(8インチ)長のストリップに切断し、接触面積が1.27センチメートル(0.5インチ)×約15.2センチメートル(6インチ)長になるようにプレートに付着させた。次いで、2kg(4.5ポンド)のゴムローラをアセンブリ上で2回、前後に転がした。アセンブリは、23℃及び相対湿度50%で15分間平衡化し、その後試験した。剥離試験は、剥離試験機(IMASS,Incorporated(Accord,MA)から入手可能なモデルIMASS SP-200滑り/剥離試験機)を使用して、平均時間5秒で180度の角度、305mm/分(12インチ/分)の速度で行った。2つの試料を評価し、結果は重量オンス/0.5インチで記録し、重量オンス/インチ(ニュートン/デシメートル)に換算した。
【0110】
引張貯蔵弾性率(E’)の決定
いくつかのフィルム及び接着剤を、TA InstrumentsのDMAQ800を引張モードで使用した動的機械分析(DMA)によって分析し、各試料について温度の関数としての物理的特性を特徴付けた。6.2mm幅及び0.05~0.07mm厚の矩形試料を、17~19mmの長さで装置のフィルムテンションクランプに固定した。炉を閉め、温度を-50℃に平衡化させて5分間保持した。次に温度を2℃/分で-50℃から50℃に上昇させるとともに、試料を1ヘルツの周波数及び0.1%の一定歪みで振動させた。25℃での引張貯蔵弾性率(E’)をMPa単位で記録した。
【0111】
感圧接着剤を含む着色多層フィルム
ベースシロップ1~2の調製
ベースシロップ1は、以下の通り、諸構成成分を下表1に示す量で混合することにより調製した。アクリルモノマー、架橋剤、紫外線吸収剤(UVA)及び光開始剤を、1ガロン(3.79リットル)ガラスジャー内で組み合わせ、高剪断電気モーターを用いて混合して、均一な混合物を得た。次に、混合しながら、B60Hを約3分間かけて添加した。これに続いて、均一な粘稠溶液が得られるまで、更に高速混合を行った。次いで、これを9.9インチ(252mm)水銀柱の真空下で10分間脱気した。コーティングの直前にXP2617をシロップに添加した。
【0112】
ベースシロップ2は、表1に示す量を用いてベースシロップ1と同じ要領で調製した。
【表3】
【0113】
着色シロップ1~2の調製
着色シロップは、所望の量のベースシロップ2を1クオート(0.95リットル)ガラスジャーに添加し、その後、表2に示すようなベースシロップの百分率(pph)で顔料を添加することによって調製した。次いで、着色シロップを、1.5インチのカウルズ(Cowles)ブレードを用いて5分間、毎分3,000回転(rpm)で混合した。
【表4】
【0114】
実施例1
ベースシロップ1を、1080CF1の表面上(感圧接着剤層を有する面の反対側)に0.0005インチ(13μm)の厚さでノッチバーコーターを用いてコーティングし、PET1と密接に接触させた。総UVAエネルギーが1800ミリジュール/平方センチメートルとなるように、PET1表面をUVAエネルギーに300秒間曝露することによって、シロップを硬化させた。PET1を除去して、一方の外面上に感圧接着剤、他方の外面上にアクリル/PVBフィルム層を有する、可撓性多層物品を得た。この物品は、平滑で光沢のある表面及びテクスチャー化された2色の金属様無煙炭色の外観を有していた。
【0115】
実施例2
ベースシロップ1を、1080BRの表面上(感圧接着剤層を有する面の反対側)に0.0005インチ(13μm)の厚さでノッチバーコーターを用いてコーティングし、PET1と密接に接触させた。シロップは、実施例1に記載のようにUVAエネルギーに曝露した。PET1を除去して、一方の外面上に感圧接着剤、他方の外面上にアクリル/PVBフィルム層を有する、可撓性多層物品を得た。この物品は、平滑で光沢のある表面及び艶消しされた金属様のスチールブルーの外観を有していた。
【0116】
実施例3
黒色顔料シロップ1を、1080CF2の表面上(感圧接着剤層を有する面の反対側)にスキージコーティングし、PET1と密接に接触させた。シロップは、実施例1に記載のようにUVAエネルギーに曝露した。PET1を除去して、一方の外面上に感圧接着剤、他方の外面上にアクリル/PVBフィルム層を有する、可撓性多層物品を得た。この物品は、平滑で光沢のある表面及び中に黒い境界線を有する灰色の格子状の外観を有していた。
【0117】
実施例4
赤色顔料シロップ1を、1080CF1の表面上(感圧接着剤層を有する面の反対側)にスキージコーティングした。次いで、このコーティングされた物品に、0.002インチ(51μm)の厚さで、ノッチバーコーターでベースシロップ1を更にオーバーコーティングし、PET1と密接に接触させた。シロップは、実施例1に記載のようにUVAエネルギーに曝露した。PET1を除去して、一方の外面上に感圧接着剤、他方の外面上にアクリル/PVBフィルム層を有する、可撓性多層物品を得た。この物品は、平滑で光沢のある表面及びテクスチャー化された2色の金属様紫色の外観を有していた。
【0118】
ベースシロップ3~5の調製
ベースシロップ3~5は、表3に示す量を用いてベースシロップ1と同じ要領で調製した。
【表5】
【0119】
着色シロップの調製
着色シロップは、ベースシロップを1クオート(0.95リットル)ガラスジャーに添加し、その後、表4に示すようなベースシロップの百分率(pph)で顔料を添加することによって調製した。次いで、着色シロップを、1.5インチのカウルズブレードを用いて5分間、毎分3,000回転(rpm)で混合した。
【表6】
【0120】
光沢剤シロップの調製
光沢剤シロップは、ベースシロップを1クオート(0.95リットル)ガラスジャーに添加し、その後、表5に示すようなベースシロップの百分率(pph)で光沢剤を添加することによって調製した。次いで、光沢剤シロップを、1.5インチのカウルズブレードを用いて5分間、毎分3,000回転(rpm)で混合した。
【表7】
【0121】
実施例5
黒色顔料シロップ2を、2つのライナーを合わせた厚さよりも大きい、0.002インチ(51μm)のギャップ設定を有する2ロールコーターを用いて、テクスチャー化紙1とBOPP1との間にコーティングした。総UVAエネルギーが912ミリジュール/平方センチメートルとなるように、BOPP1表面をUVAエネルギーに228秒間曝露することによって、シロップを硬化させた。テクスチャー化紙1を除去し、硬化されたアクリル/PVBフィルムの露出表面上にテクスチャー化表面を有する、着色2層物品を得た。次いで、PS90を、ノッチバーコーターを用いて、0.002インチ(51μm)の厚さで露出BOPP1表面上にコーティングし、70℃で15分間乾燥させた。一方の外面上に感圧接着剤、他方の外面上に構造化アクリル/PVBフィルム層を有する、黒色の可撓性多層物品を得た。
【0122】
実施例6
白色顔料シロップ1を、0.002インチ(51μm)の厚さで、ノッチバーコーターを用いてPET2上にコーティングし、青色顔料シロップ2をテクスチャー化紙2上にスキージコーティングした。2つのコーティングライナーを、未コーティングライナーを合わせた厚さよりも大きい、0.002インチ(51μm)のギャップ設定を用いて、2ロールコーティングステーションを用いて密接に接触させた。総UVAエネルギーが1368ミリジュール/平方となるように、PET2表面をUVAエネルギーに228秒間曝露することによって、シロップを硬化させた。テクスチャー化紙2を除去し、2色(白色及び青色)の外観を有し、硬化されたアクリル/PVBフィルムの露出表面上にテクスチャー化表面を有する、3層物品を得た。次いで、PS90を実施例5に記載のように露出PET2表面上にコーティングした。一方の外面上に感圧接着剤、他方の外面上に構造化アクリル/PVBフィルム層を有する、2色の可撓性多層物品を得た。
【0123】
実施例7
黒色顔料シロップ3を、ノッチバーコーターを用いて0.005インチ(127μm)の厚さでBOPP1上にコーティングし、青色光沢剤シロップを、ノッチバーコーターを用いて0.004インチ(102μm)の厚さでPET1上にコーティングした。2つのコーティングライナーを、0.0136インチ(345μm)の全ギャップ設定を有する2ロールコーティングステーションを用いて密接に接触させ、実施例6に記載のように総UVAエネルギーに曝露した。PET1を除去し、光沢のあるきらきらとした外観を有する、3層物品を得た。次いで、PS90を実施例5に記載のように露出BOPP1表面上にコーティングした。一方の面上に光沢のあるきらきらした外観のアクリル/PVBフィルム、他方の面上に感圧接着剤を有する、可撓性多層物品を得た。
【0124】
実施例8
白色顔料シロップ2を、テクスチャー化紙3の表面上にスキージコーティングした。コーティング組成物を60ミリジュール/平方センチメートルの総UVAエネルギーに曝露することにより約5秒間部分的に硬化させた。照射後、アクリル/PVBフィルムの露出表面は、赤色光沢剤シロップでコーティングされ、赤色光沢剤シロップは、BOPP1及びコーティングテクスチャー化紙3を合わせた厚さよりも大きい、0.002インチ(51μm)のギャップ設定を有する2ロールコーティングステーションを用いて、BOPP1で被覆された。次に、BOPP1表面を合計1368ミリジュール/平方センチメートルのUVAエネルギーに曝露することによって、シロップを硬化させた。次いで、PS90を実施例5に記載のように露出BOPP1表面上にコーティングした。2色(赤色及び白色)の構造化表面を備え、一方の外面上に感圧接着剤を有する、可撓性多層物品を得た。
【0125】
感圧接着剤を含むアクリルフィルム
ベースシロップ調製
ベースシロップ7は、表6に示す量を用いてベースシロップ1と同じ要領で調製した。
【表8】
【0126】
接着剤シロップ調製
接着剤シロップ1
接着剤シロップ1は、表7に示す量のIOA、AA及びIrg651を1ガロン(3.8リットル)のジャーに入れ、光開始剤が溶解して均一な混合物が得られるまで、撹拌することによって調製した。ジャーの蓋にある開口部から挿入した管を通して、窒素ガスを導入することによって、混合物を脱気し、少なくとも5分間激しくバブリングした。撹拌しながら、混合物を、コーティングに適していると思われる粘度を有するプレ接着剤シロップが形成されるまで、UVA光に曝露した。UV曝露後、空気をジャー内に導入した。予備重合後、0.1pphのトリアジン1を、一晩ロールで転がすことによってシロップに混合した。
【0127】
接着剤シロップ2
接着剤シロップ2は、1784gのIOA、16.2gのAA、360gのIBOA、54gのDPA及び0.72gの651光開始剤を、1ガロン(3.8リットル)のジャーに入れ、光開始剤が溶解して均一な混合物が得られるまで、撹拌することによって調製した。ジャーの蓋にある開口部から挿入した管を通して、窒素ガスを導入することによって、混合物を脱気し、少なくとも5分間激しくバブリングした。撹拌しながら、混合物を、コーティングに適していると思われる粘度を有するプレ接着剤シロップが形成されるまで、UVA光に曝露した。UV曝露後、空気をジャー内に導入した。次に、360gのIBOA、4.32gのIrg651、518.4gのReg6108及び1.35gのIrg1076をプレ接着剤シロップに添加し、一晩ロールで転がすことによって混合した。
【表9】
【0128】
硬化された接着剤シロップ2の引張弾性率を計測したところ、25℃及び1ヘルツで0.05MPaであった。
【0129】
実施例9
ベースシロップ7を、ノッチバーコーターを用いて、0.002インチ(51μm)の厚さでPET1上にコーティングした。シロップの開放表面を窒素不活性化雰囲気中で合計約90ミリジュール/平方センチメートルのUVAエネルギーに曝露することによって、シロップを部分的に硬化させた。照射後、接着剤シロップ1を有する露出アクリル/PVBフィルム表面上に、ノッチバーコーターを用いて、0.002インチ(51μm)の厚さでアクリル/PVBフィルム/PET1の組み合わせをコーティングし、窒素不活性化環境中で接着剤の開放表面を合計958ミリジュール/平方センチメートルのUVAエネルギーに曝露した。PET1を除去すると、一方の面上にPSAを有する、アクリル/PVBフィルムバッキングを有する物品が得られた。これを、角度90度の剥離強度について評価した。
【0130】
比較例1は、各面に0.0027インチ(69μm)厚の接着剤を有する0.0005インチ(12マイクロメーター)の厚さのポリエステルフィルムと、各接着剤層の上のポリコーティングクラフト紙ライナーとを有する、両面コーティングテープであった。接着剤は、(アクリル/PVBではなく)ポリエステルフィルム上にシロップをコーティングし硬化させることにより調製した実施例9と同じ組成物であった。以下の試験結果から明らかなように、実施例9はポリエステルバッキングと比較してアクリル/PVBフィルムに対するより良好な接着性を示した。
【表10】
【0131】
実施例10
ベースシロップ7を、ノッチバーコーターを用いて、0.002インチ(51μm)の厚さでPET3の第2の試料上にコーティングした。組成物の開放表面を窒素不活性化雰囲気中で合計約90ミリジュール/平方センチメートルのUVAエネルギーに曝露することによって、ベースシロップ7を部分的に硬化させ、PET3上にアクリル/PVBフィルムを得た。接着剤シロップ2を、ノッチバーコーターを用いて、0.002インチ(51μm)の厚さでPET3上にコーティングすることにより、感圧接着剤の第1の層が提供された。照射されたアクリル/PVBフィルム/PET3の組み合わせを、0.008インチ(203μm)の全ギャップ設定を有する2ロールコーティングステーションを用いて、接着剤シロップ2がコーティングされたPET3に密接に接触させ、合計958ミリジュール/平方センチメートルのUVAエネルギーに曝露した。PET3、PSA、アクリル/PVBフィルム及びPET3を順に有する、構成を得た。次に、アクリルフィルムと接触しているPET3を除去した。ノッチバーコーターを用いて、接着剤シロップ2を0.002インチ(51μm)の厚さでPET3上にコーティングすることにより、感圧接着剤の第2の層が提供され、0.010インチ(254μm)の全ギャップ設定を有する2ロールコーティングステーションを用いて、アクリル/PVBフィルムの露出表面に密接に接触させた。第2の接着剤の開放表面を、窒素不活性化雰囲気中で合計約958ミリジュール/平方センチメートルのUVAエネルギーに曝露することによって硬化させた。
【0132】
PET3、アクリルPSA、アクリル/PVBフィルム、アクリルPSA及びPET3を順に有する、5層構成を得た。PET3剥離ライナーを両方とも除去すると、両面上にPSAを有する、アクリル/PVBフィルムバッキングを有する物品が得られた。これを、剪断強度及び角度180度の剥離強度について評価した。両面上の接着剤層を評価した。
【0133】
テープ試料を、試験方法2及び3に従って剪断及び剥離特性について試験した。結果を表9に示す。
【表11】
【0134】
微細構造化感圧接着剤を有するアクリルフィルム
ベースシロップ調製
ベースシロップ8及び9は、表10に示す量を用いてベースシロップ1と同じ要領で調製した。
【表12】
【0135】
接着剤シロップ調製
接着剤シロップ3~8は、表11に示す量のEHA、AA、IBOA、DPA及びIrg651を、1クォート(0.95リットル)のジャー内で組み合わせ、光開始剤が溶解して均一な混合物が得られるまで、撹拌することによって調製した。ジャーの蓋にある開口部から挿入した管を通して、窒素ガスを導入することによって、混合物を脱気し、少なくとも5分間激しくバブリングした。撹拌しながら、混合物を、コーティングに適していると思われる粘度を有するプレ接着剤シロップが形成されるまで、UVA光に曝露した。UV曝露後、空気をジャー内に導入した。次に、0.67gのIrg651をプレ接着剤シロップに添加し、一晩ロールで転がすことにより混合した。
【表13】
【0136】
実施例11
接着剤シロップ3を、ノッチバーコーターを用いて、0.003インチ(76μm)の厚さでテクスチャー化紙4にコーティングした。シロップの開放表面を窒素不活性化雰囲気中で合計約385ミリジュール/平方センチメートルのUVAエネルギーに曝露した。照射後、接着剤シロップ3の露出表面は、ベースシロップ8でコーティングされ、PET3及びコーティングテクスチャー化紙4ライナーを合わせた厚さよりも大きい、0.002インチ(51μm)のギャップ設定を用いた、2ロールコーティングステーションを用いて、PET3で被覆された。次に、PET3表面を合計1824ミリジュール/平方センチメートルのUVAエネルギーに曝露することによって、ベースシロップを硬化させた。PET3、アクリル/PVBフィルム、アクリルPSA及びテクスチャー化紙4を順に有する、4層構成を得た。PET3剥離ライナー及びテクスチャー化紙4を両方とも除去すると、一方の面上にPSAを有する、アクリル/PVBフィルムバッキングを有する物品が得られた。これを、角度180度の剥離強度について評価した。
【0137】
実施例12
以下の変更を行って、実施例11を繰り返した。接着剤シロップ3の代わりに接着剤シロップ4を使用した。
【0138】
実施例13
以下の変更を行って、実施例11を繰り返した。接着剤シロップ3の代わりに接着剤シロップ5を使用した。
【0139】
実施例14
以下の変更を行って、実施例11を繰り返した。接着剤シロップ3の代わりに接着剤シロップ6を使用した。
【0140】
実施例15
以下の変更を行って、実施例11を繰り返した。接着剤シロップ3の代わりに接着剤シロップ7を使用した。
【0141】
実施例16
以下の変更を行って実施例11を繰り返した。接着剤シロップ3の代わりに接着剤シロップ8を使用した。
【0142】
実施例17
以下の変更を行って、実施例11を繰り返した。接着剤シロップ3の代わりに接着剤シロップ8を使用し、ベースシロップ8の代わりにベースシロップ9を使用した。
【表14】
【0143】
代表的なフィルムである、ベースシロップ7から調製された実施例9のアクリル/PVBフィルムの、形態、透過率、ヘイズ及び透明度を、以下の試験方法を用いて評価した。試験結果を下記の表13に報告する。
【0144】
透過率、ヘイズ及び透明度は、BYK Haze-gard plus、CAT #4725を用いて計測した。
【0145】
透過型電子顕微鏡(TEM)による形態特徴評価
試料形態の分析的特性評価を透過型電子顕微鏡(TEM)によって実施した。全てのフィルム試料の断面を画像化した。
【0146】
試料の調製
フィルム試料は、以下のように室温での極薄切片法を用いて調製した。1)メス刃を用いて、フィルム試料からおよそ1/4インチ×1/2インチの切片を切り出した。これらの切片をScotchcast #5電気用樹脂に埋め込んだ。埋め込まれた試料を室温で一晩硬化させた。2)ダイヤモンドナイフを用いて極薄切片法(Leica FC7)により、埋め込まれたフィルムの薄い切片(断面)を切り出した。切片の厚さは、試料に応じて110nmから150nmまで変更した。切断速度は0.15mm/秒であった。3)薄い切片を蒸留/脱イオン水上に浮かべ、次いで標準的なTEM試料グリッド(直径3mm、150メッシュの銅グリッド上に支持されたカーボン/フォルムバールフィルム)上に集めた。
【0147】
画像化
準備した薄い切片をTEM(FEI Osiris、200kv電界放射型TEM)により画像化した。倍率範囲は450×~20,000×(装置倍率)であった。様々な画像化様式を用いて、形態を特徴評価した。それらを以下で簡単に記載する。
【0148】
TEM:従来の透過型電子顕微鏡法は、電子線が極薄の試験片(この場合は110~150nm)を透過し、透過するときに試験片と相互作用する顕微鏡技術である。画像は、電子/試料の相互作用の結果として形成される。ここで使用される低倍率では、TEM画像コントラストは、主に、材料の厚さ、構造及び組成の変化に起因する。
【0149】
STEM:走査透過型電子顕微鏡法。TEMでの画像化の代替様式:この場合、電子線は、SEM画像とほぼ同じ方法でラスタ化されるが、プローブサイズはかなり小さい。この画像化様式のプローブサイズは0.5nm~5nmの範囲である。
【0150】
HAADF:高角度散乱暗視野画像化様式。HAADF画像は、円環状暗視野検出器を用いて散乱(透過に対する)電子を収集することによって形成される。画像を形成する、高角度のインコヒーレントな散乱電子は、平均原子数の変化に対して非常に敏感であるため、これらの画像のコントラストは組成に敏感である。HAADF画像化様式はZコントラスト画像化としても知られている。
【表15】