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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】トリオキソプロパン化合物の製造法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/313 20060101AFI20220225BHJP
   C07C 69/716 20060101ALI20220225BHJP
   C07C 69/738 20060101ALI20220225BHJP
   C07C 49/497 20060101ALI20220225BHJP
   C07C 45/64 20060101ALI20220225BHJP
   C07D 319/06 20060101ALI20220225BHJP
   C07C 45/30 20060101ALN20220225BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220225BHJP
【FI】
C07C67/313
C07C69/716 Z
C07C69/738 Z
C07C49/497
C07C45/64
C07D319/06
C07C45/30
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018554847
(86)(22)【出願日】2017-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2017037351
(87)【国際公開番号】W WO2018105237
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2016236100
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000169
【氏名又は名称】クミアイ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100158872
【氏名又は名称】牛山 直子
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】北之園 拓
(72)【発明者】
【氏名】谷 真樹
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/150548(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/122361(WO,A1)
【文献】特開2015-020975(JP,A)
【文献】特開平08-151346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/313
C07C 69/716
C07C 69/738
C07C 49/497
C07C 45/64
C07D 319/06
C07C 45/30
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、R及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cシクロアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいアリール基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいヘテロアリール基、ヒドロキシル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルコキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cシクロアルコキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいアリールオキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいヘテロアリールオキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキレン基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-基、及び、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-O-基、からなる群より選ばれる2価の基を形成することにより5~8員環を形成し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基を示し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基を示す。)
で表されるトリオキソプロパン化合物の製造方法であって、次の一般式(2):
【化2】
(式中、R1及びRは前記と同じ意味である。)
で表されるジオキソプロパン化合物を、ルイス酸触媒の存在下、亜塩素酸化合物と反応させることを特徴とするトリオキソプロパン化合物の製造方法であり、
ルイス酸触媒が、次の一般式(4)
MZ (4)
(式中、Mは遷移金属、アルミニウム、ガリウム、タリウム、亜鉛及びビスマスからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のイオンであり、
Zはハロゲン化物イオン、酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン(CF SO )、パーフルオロオクタンスルホナートイオン(C 17 SO )又はアセチルアセトナートイオン(acac)アニオンを示し、
nは1~4の整数である)
で表されるルイス酸である、トリオキソプロパン化合物の製造方法
【請求項2】
水の存在下で反応を行うことにより、前記一般式(1)の化合物を次の一般式(3):
【化3】
(式中、R1及びRは前記と同じ意味である。)
で表されるトリオキソプロパン化合物の抱水体として得ることを包含する、請求項1に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)、(2)及び(3)において、
及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cシクロアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいアリール基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいヘテロアリール基、ヒドロキシル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルコキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cシクロアルコキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキレン基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-基、及び、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-O-基、からなる群より選ばれる2価の基を形成することにより5~8員環を形成し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示す、請求項1又は2に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)、(2)及び(3)において、
及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいフェニル、ヒドロキシル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルコキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキレン基、及び、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-O-基、からなる群より選ばれる2価の基を形成することにより5~8員環を形成し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示す、請求項1又は2に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項5】
亜塩素酸化合物が、亜塩素酸塩である、請求項1から4のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項6】
亜塩素酸化合物が、亜塩素酸アルカリ金属塩又は亜塩素酸アルカリ土類金属塩である、請求項1から4のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項7】
亜塩素酸化合物が、亜塩素酸ナトリウムである、請求項1から4のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項8】
前記一般式(4)において、
Mが、スカンジウム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、ハフニウム、セリウム及びビスマスからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のイオンである、
求項1から7のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項9】
前記一般式(4)において、
Mが、スカンジウム、バナジウム、鉄、コバルト、ロジウム及びハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のイオンである、
求項1から7のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項10】
ルイス酸触媒が、スカンジウム(III)トリフラート、酸化バナジウム(V)、酸化硫酸バナジウム(IV)、硫酸マンガン(II)、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、コバルト(II)アセチルアセトナート、塩化ニッケル(II)、ハフニウム(IV)トリフラート、ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナート、セリウム(IV)トリフラート、ビスマス(III)トリフラート又はそれらの混合物である、請求項1からのいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項11】
ルイス酸触媒が、スカンジウム(III)トリフラート、酸化バナジウム(V)、酸化硫酸バナジウム(IV)、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、ハフニウム(IV)トリフラート、ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナート又はそれらの混合物である、請求項1からのいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項12】
前記一般式(2)で表される化合物1.0モルに対して0.01モル以上0.5モル未満の範囲のルイス酸触媒を使用する、請求項1から11のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【請求項13】
前記一般式(2)で表される化合物1.0モルに対して0.03モル以上0.3モル以下の範囲のルイス酸触媒を使用する、請求項1から11のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はルイス酸触媒の存在下、ジオキソプロパン化合物に対して亜塩素酸化合物を反応させて、従来よりもはるかに効率的に、トリオキソプロパン化合物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリオキソプロパン化合物は、プロピレン鎖上に三個のケト基を連続して有する、有機合成の重要な中間体となる化合物類である。特に、ケトマロン酸ジエステルは、ジアミンと反応させてピラジン-2-オン-3-カルボン酸エステル誘導体を製造するときの原料として有用な化合物である(特許文献1-4、及び非特許文献1-2参照)。この反応は、特に芳香族ジアミンから、キノキサリノン誘導体を製造する方法として、医薬や農薬などの製造に利用されている。
【0003】
従来、マロン酸ジエステルからケトマロン酸ジエステルの合成法としては、直接的方法及び間接的方法の報告がなされている。しかし、その何れも試薬の毒性や扱い難さなどから工業化が行われていない。ケトマロン酸ジエステルのマロン酸ジエステルからの合成法として、例えば、マロン酸ジエステルを、二酸化セレン(例えば、非特許文献3参照、収率は使用した二酸化セレンを基準とした理論収量の32.3%)、三酸化二窒素(例えば、非特許文献4参照)、三酸化クロム(例えば、非特許文献6参照)等の酸化剤で酸化してケトマロン酸ジエステルを生成する方法が知られている。しかし、これらの方法では試薬の毒性、試薬の安全性、操作性が悪い、収率が低い及び/又は特別な反応装置を用いるなどの問題点がある。
【0004】
また、マロン酸ジエステルの活性メチレン部分が、臭素に置換された化合物を硝酸銀で反応させる方法(例えば、非特許文献7参照)、アゾ基に置換された化合物をジメチルジオキシランで反応させる方法(例えば、非特許文献8参照)、メチレン基に置換された化合物をオゾンで反応させる方法(例えば、非特許文献5及び9参照)、水酸基に置換された化合物を貴金属触媒で反応させる方法(例えば、特許文献5参照)などでケトマロン酸ジエステルを生成する方法も知られている。しかし、これらの方法ではマロン酸ジエステルよりはるかに高価なタルトロン酸を原料として用いるという難点や、マロン酸ジエステルの活性メチレン部分をあらかじめ修飾する必要があり、経済的、操作的に問題点がある。また、高価な試薬を用いる、特殊な反応剤を用いる、特別な反応装置を用いるなどの問題点がある。
【0005】
さらに、マロン酸ジエステルを亜塩素酸塩と反応させる方法が報告されている(特許文献6参照)。特許文献6に記載された方法は、特許文献6以前に知られていた従来技術よりも優れているが、工業的な規模での実施には改善の余地があることが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6329389号明細書
【文献】米国特許第6348461号明細書
【文献】米国特許第4296114号明細書
【文献】WO 2005/21547号公報
【文献】特開平8-151346号公報
【文献】WO 2010/150548号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】J. W. Clark-Lewis, et al., J. Chem. Soc., 1957, 430-439 .
【文献】Fumio Yoneda, et al., J. Chem. Soc. Perkin Transactions 1, 1987, 75-83.
【文献】S. Astin et al., J. Chem. Soc., 1933, 391-394.
【文献】A. W. Dox, Organic Syntheses, 4, 1925, 27-28.
【文献】Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, 3711 (2001).
【文献】Liang Xian liu et al., Chinese Chemical Letters, 3, 1992, 585-588.
【文献】Chem. Abstr. 123:256144.
【文献】Antonio Saba, Synthetic Communications, 24 , 695-699 (1994).
【文献】Lutz F., et al., Organic Syntheses, 71,214-219 (1993).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、マロン酸ジエステル等のジオキソプロパン化合物の活性メチレン部分をあらかじめ修飾することなく、ジオキソプロパン化合物の活性メチレン部位を一段階で直接酸化する方法を提供することにある。
更に本発明の目的は、工業的に有用なケトマロン酸ジエステル等のトリオキソプロパン化合物を、工業的な規模で製造可能且つ上記の問題点などを解決した、工業的に好ましい方法を提供することにある。
【0009】
前記特許文献6に記載の酢酸等のカルボン酸化合物は、反応触媒としての役割に加えて、溶媒としての役割も兼ねている可能性もあり、スケールアップした工業的規模での実施においては大量の酸性廃液の排出が懸念される。
本発明の他の目的は、工業的に有用なケトマロン酸ジエステル等のトリオキソプロパン化合物を、大量の酸性廃液を排出せずに製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような状況に鑑み、本発明者がケトマロン酸ジエステル等のトリオキソプロパン化合物を効率的に製造する方法について鋭意研究を重ねた結果、マロン酸ジエステル等のジオキソプロパン化合物を、ルイス酸触媒の存在下、亜塩素酸化合物と反応させることで、ジオキソプロパン化合物のメチレン部分を選択的に酸化して対応するトリオキソプロパン化合物を生成させることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記〔1〕から〔45〕項に記載の発明を提供することにより前記課題を解決したものである。
【0012】
〔1〕一般式(1):
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、R及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cシクロアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいアリール基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいヘテロアリール基、ヒドロキシル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルコキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cシクロアルコキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいアリールオキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいヘテロアリールオキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキレン基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-基、及び、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-O-基、からなる群より選ばれる2価の基を形成することにより5~8員環を形成し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基を示し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基を示す。)
で表されるトリオキソプロパン化合物の製造方法であって、次の一般式(2):
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、R1及びRは前記と同じ意味である。)
で表されるジオキソプロパン化合物を、ルイス酸触媒の存在下、亜塩素酸化合物と反応させることを特徴とするトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0017】
〔2〕水の存在下で反応を行うことにより、前記一般式(1)の化合物を次の一般式(3):
【0018】
【化3】
【0019】
(式中、R1及びRは前記と同じ意味である。)
で表されるトリオキソプロパン化合物の抱水体として得ることを包含する、〔1〕に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0020】
〔3〕前記一般式(3)の化合物に、加熱処理及び/又は脱水処理を行い、前記一般式(1)の化合物を製造することを包含する、〔1〕又は〔2〕に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0021】
〔4〕前記一般式(1)、(2)及び(3)において、
及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cシクロアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいアリール基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいヘテロアリール基、ヒドロキシル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルコキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cシクロアルコキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキレン基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-基、及び、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-O-基、からなる群より選ばれる2価の基を形成することにより5~8員環を形成し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示す、〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0022】
〔5〕前記一般式(1)、(2)及び(3)において、
及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいフェニル基、ヒドロキシル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルコキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキレン基、及び、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-O-基、からなる群より選ばれる2価の基を形成することにより5~8員環を形成し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示す、〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0023】
〔6〕前記一般式(1)、(2)及び(3)において、
及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、ヒドロキシル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルコキシ基を示し、又は、R及びRは一緒になって、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-O-基を形成することにより6~8員環を形成し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示す、〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0024】
〔7〕前記一般式(1)、(2)及び(3)において、
及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいフェニル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルコキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキレン基を形成することにより5~8員環を形成し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子を示す、〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0025】
〔8〕前記一般式(1)、(2)及び(3)において、
及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、C~Cアルキル基、フェニル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、-CHCHCH-基、-O-CH-O-基、又は-O-C(CH-O-基を形成することにより6員環を形成してもよい、〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0026】
〔9〕前記一般式(1)、(2)及び(3)において、
及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、C~Cアルキル基、フェニル基、C~Cアルコキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、-CHCHCH-基を形成することにより6員環を形成してもよい、〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0027】
〔10〕前記一般式(1)、(2)及び(3)において、
及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、-O-CH-O-基、又は-O-C(CH-O-基を形成することにより6員環を形成してもよい、〔1〕から〔9〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0028】
〔11〕前記一般式(1)、(2)及び(3)において、
がC~Cアルキル基、フェニル基を示し、
がC~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、-CHCHCH-基を形成することにより6員環を形成してもよい、〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0029】
〔12〕亜塩素酸化合物が、亜塩素酸塩である、〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0030】
〔13〕亜塩素酸化合物が、亜塩素酸アルカリ金属塩又は亜塩素酸アルカリ土類金属塩である、〔1〕から〔12〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0031】
〔14〕亜塩素酸化合物が、亜塩素酸ナトリウムである、〔1〕から〔13〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0032】
〔15〕ルイス酸触媒が、次の一般式(4)
MZ (4)
(式中、Mは金属イオンを示し、Zはアニオンを示し、nは1~4の整数)
で表されるルイス酸である、〔1〕から〔14〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0033】
〔16〕前記一般式(4)において、
Mが遷移金属、アルミニウム、ガリウム、タリウム、亜鉛及びビスマスからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のイオンであり、
Zが、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン(CFSO )、パーフルオロオクタンスルホナートイオン(C17SO )又はアセチルアセトナートイオン(acac)である、〔15〕に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0034】
〔17〕前記一般式(4)において、
Mが、アルミニウム、ガリウム、タリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、ハフニウム、セリウム及びビスマスからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のイオンであり、
Zが、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン、パーフルオロオクタンスルホナートイオン、アセチルアセトナートイオンである、〔15〕又は〔16〕に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0035】
〔18〕前記一般式(4)において、
Mが、スカンジウム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、ハフニウム、セリウム及びビスマスからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のイオンであり、
Zが、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン、パーフルオロオクタンスルホナートイオン、アセチルアセトナートイオンである、〔15〕から〔17〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0036】
〔19〕前記一般式(4)において、
Mが、スカンジウム、バナジウム、鉄、コバルト、ロジウム及びハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のイオンであり、
Zが、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン、パーフルオロオクタンスルホナートイオンである、〔15〕から〔18〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0037】
〔20〕前記一般式(4)において、
Mが、バナジウム、鉄、コバルト、ロジウム及びハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のイオンであり、
Zが、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン、パーフルオロオクタンスルホナートイオンである、〔15〕から〔19〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0038】
〔21〕前記一般式(4)において、
Mが、スカンジウム、ハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属のイオンであり、
Zが、トリフルオロメタンスルホナートイオン、パーフルオロオクタンスルホナートイオンである、〔15〕から〔20〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0039】
〔22〕ルイス酸触媒が、塩化アルミニウム、スカンジウム(III)トリフラート、酸化バナジウム(V)、酸化硫酸バナジウム(IV)、硫酸マンガン(II)、酢酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、コバルト(II)アセチルアセトナート、酢酸ロジウム(II)、塩化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、ハフニウム(IV)トリフラート、ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナート、セリウム(IV)トリフラート、ビスマス(III)トリフラート又はそれらの混合物である、〔15〕から〔21〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0040】
〔23〕ルイス酸触媒が、スカンジウム(III)トリフラート、酸化バナジウム(V)、酸化硫酸バナジウム(IV)、硫酸マンガン(II)、酢酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、コバルト(II)アセチルアセトナート、酢酸ロジウム(II)、塩化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、ハフニウム(IV)トリフラート、ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナート、セリウム(IV)トリフラート、ビスマス(III)トリフラート又はそれらの混合物である、〔15〕から〔22〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0041】
〔24〕ルイス酸触媒が、スカンジウム(III)トリフラート、酸化バナジウム(V)、酸化硫酸バナジウム(IV)、酢酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、酢酸ロジウム(II)、ハフニウム(IV)トリフラート、ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナート又はそれらの混合物である、〔15〕から〔23〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0042】
〔25〕ルイス酸触媒が、酸化バナジウム(V)、酸化硫酸バナジウム(IV)、酢酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、酢酸ロジウム(II)、ハフニウム(IV)トリフラート、ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナート又はそれらの混合物である、〔15〕から〔24〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0043】
〔26〕ルイス酸触媒が、スカンジウム(III)トリフラート、ハフニウム(IV)トリフラート、ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナート又はそれらの混合物である、〔15〕から〔25〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0044】
〔27〕前記一般式(2)の化合物1.0モルに対して0.01モル以上0.5モル未満の範囲のルイス酸触媒を使用する、〔1〕から〔26〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0045】
〔28〕前記一般式(2)の化合物1.0モルに対して0.03モル以上0.3モル以下の範囲のルイス酸触媒を使用する、〔1〕から〔27〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0046】
〔29〕前記一般式(2)の化合物1.0モルに対して0.05モル以上0.1モル以下の範囲のルイス酸触媒を使用する、〔1〕から〔28〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0047】
〔30〕反応が溶媒の存在下で行われる、〔1〕から〔29〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0048】
〔31〕溶媒が、極性溶媒である、〔30〕に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0049】
〔32〕溶媒が、水、ニトリル類、ケトン類、アルコール類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、又はスルホン類である、〔30〕又は〔31〕に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0050】
〔33〕溶媒が、水、ニトリル類、ケトン類、アルコール類、エステル類、又はアミド類である、〔30〕から〔32〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0051】
〔34〕溶媒が、水、アセトニトリル、アセトン、イソブチルメチルケトン、メタノール又は酢酸エチルである、〔30〕から〔33〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0052】
〔35〕溶媒が、水、アセトニトリル、メタノール又は酢酸エチルである、〔30〕から〔34〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0053】
〔36〕溶媒が、水又はアセトニトリルである、〔30〕から〔35〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0054】
〔37〕溶媒が、水である、〔30〕から〔36〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0055】
〔38〕反応が緩衝液等の添加剤の存在下で行われる、〔1〕から〔37〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0056】
〔39〕緩衝液が酢酸緩衝液又はリン酸緩衝液である、〔38〕に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0057】
〔40〕緩衝液の酸性度が、pH2からpH7の範囲である、〔38〕又は〔39〕に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0058】
〔41〕緩衝液の酸性度が、pH4からpH7の範囲である、〔38〕から〔40〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0059】
〔42〕緩衝液の酸性度が、pH4からpH6の範囲である、〔38〕から〔41〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0060】
〔43〕反応がpH2~pH7の範囲で行われる、〔1〕から〔42〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0061】
〔44〕反応がpH4~pH7の範囲で行われる、〔1〕から〔43〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【0062】
〔45〕反応がpH4~pH6の範囲で行われる、〔1〕から〔44〕のいずれか1項に記載のトリオキソプロパン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0063】
本発明の方法により、ケトマロン酸ジエステル等のトリオキソプロパン化合物の工業的な製造法が提供される。本発明の方法によれば、マロン酸ジエステル等のジオキソプロパン化合物の活性メチレン部分をあらかじめ修飾することなく、ジオキソプロパン化合物の活性メチレン部位を一段階で直接酸化することができる。
【0064】
本発明の方法では、毒性が高い試薬や安全性が低い試薬を必要とせず、特殊な反応剤を必要とせず、特別な反応装置を必要とせず、高価な試薬を必要とせず、ケトマロン酸ジエステル等のトリオキソプロパン化合物を製造できる。本発明の方法における原料のマロン酸ジエステル等のジオキソプロパン化合物は、有機合成において汎用されている化合物であり、安全で入手が容易である。加えて、酸化剤として使用される亜塩素酸塩もパルプや繊維や食品の漂白剤として、また水道水の殺菌剤として使用されている物質であり好ましい化合物である。
【0065】
更に本発明の方法は、酢酸等のカルボン酸化合物を反応触媒としての役割に加えて、溶媒としての効果を期待して使用することがないため、工業的規模での大量の酸性廃液を排出せずに製造することができる。
【0066】
本発明の方法は、穏やかな反応条件を選択することができ、操作性がよく、工業化に適した簡便な条件で、ケトマロン酸ジエステル等のトリオキソプロパン化合物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0068】
本明細書において用いられる用語および記号について以下に説明する。
【0069】
~Cのような元素記号と下付きの数字による表記は、これに続いて表記されている基の元素数が下付きの数字で示される範囲であることを示している。例えば、この場合では炭素数が1~6であることを示している。
【0070】
~Cアルキル基とは、炭素数が1~6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。
~Cアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、イソペンチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、イソヘキシル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
~Cシクロアルキル基とは、炭素数が3~6の環状のアルキル基を示す。C~Cシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
アリール基としては、例えば、フェニル、1-又は2-ナフチル等が挙げられる。
【0073】
ヘテロアリール基とは、炭素原子以外に1個以上の(例えば1~4個の、好ましくは、1又は2個の)窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を有する5~10員環の、好ましくは5から7員環の芳香族複素環基を示す。ヘテロアリール基としては、例えば、フリル、チエニル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ヘテロアリール基のさらに具体的な例としては、例えば、2-又は3-フリル、2-又は3-チエニル、1-,3-,4-又は5-ピラゾリル、2-,3-又は4-ピリジル、2-又は8-キノリル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
~Cアルコキシ基とは、(C~Cアルキル)-O-基を意味する(ここで、C~Cアルキルは前述と同じ意味を有する。)。C~Cアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、3,3-ジメチルブチルオキシ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
~Cシクロアルコキシ基とは、(C~Cシクロアルキル)-O-基を意味する(ここで、C~Cシクロアルキルは前述と同じ意味を有する。)。C~Cシクロアルコキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
アリールオキシ基とは、(アリール)-O-基を意味する(ここで、アリールは前述と同じ意味を有する。)。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、1-又は2-ナフトキシ等が挙げられる。
【0077】
ヘテロアリールオキシ基とは、(ヘテロアリール)-O-基を意味する(ここで、ヘテロアリールは前述と同じ意味を有する。)。ヘテロアリールオキシ基としては、例えば、フリルオキシ、チエニルオキシ、ピラゾリルオキシ、ピリジルオキシ、キノリニルオキシ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ヘテロアリール基のさらに具体的な例としては、例えば、2-又は3-フリルオキシ、2-又は3-チエニルオキシ、3-,4-又は5-ピラゾリルオキシ、2-,3-又は4-ピリジルオキシ、2-又は8-キノリルオキシ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0079】
「R及びRは一緒になって環を形成してもよい」とは、R基とR基が一緒になって2価の基を形成して、環を形成することである。R基とR基が一緒になって形成される2価の基としては、C~Cアルキレン基、-O-(C~Cアルキレン)-基、及び、-O-(C~Cアルキレン)-O-基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。アルキレン基とは、直鎖アルカンから水素を2つ除いた2価の基を意味し、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基などが挙げられる。アルキレン基は前記したような置換基Rにより置換されていてもよい。
【0080】
(原料化合物)
本発明において使用される原料は、
一般式(2):
【0081】
【化4】
【0082】
(式中、R及びRは同一または異なっていてもよく、それぞれ、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cシクロアルキル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいアリール基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいヘテロアリール基、ヒドロキシル基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルコキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cシクロアルコキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいアリールオキシ基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいヘテロアリールオキシ基を示し、
又は、R及びRは一緒になって、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよいC~Cアルキレン基、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-基、及び、1又は2個以上の同一又は異なるRにより置換されていてもよい-O-(C~Cアルキレン)-O-基、からなる群より選ばれる2価の基を形成することにより5~8員環を形成し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基を示し、
はC~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基を示す。)
で表されるジオキソプロパン化合物である。
【0083】
前記一般式(2)で表されるジオキソプロパン化合物としては、具体的に例えば、マロン酸、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸ジn-ペンチル、マロン酸ジn-ヘキシル、マロン酸ジシクロプロピル、マロン酸ジシクロブチル、マロン酸ジシクロペンチル、マロン酸ジシクロヘキシル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ジ(2-ピリジル)、マロン酸ジ(4-ピリジル)、マロン酸ジベンジル、マロン酸エチルメチル、マロン酸メチルn-プロピル、マロン酸エチルn-プロピル、マロン酸メチルフェニル、マロン酸メチル(4-ピリジル)、マロン酸メチル(2-ピリジル)、マロン酸ベンジルメチル、3-オキソブタン酸、3-オキソブタン酸メチル、3-オキソブタン酸エチル、3-オキソペンタン酸、3-オキソペンタン酸メチル、3-オキソペンタン酸エチル、3-オキソヘキサン酸、3-オキソヘキサン酸メチル、3-オキソヘキサン酸エチル、4-メチル-3-オキソペンタン酸、4-メチル-3-オキソペンタン酸メチル、4-メチル-3-オキソペンタン酸エチル、4-メチル-3-オキソヘキサン酸、4-メチル-3-オキソヘキサン酸メチル、4-メチル-3-オキソヘキサン酸エチル、5-メチル-3-オキソヘキサン酸、5-メチル-3-オキソヘキサン酸メチル、5-メチル-3-オキソヘキサン酸エチル、4,4-ジメチル-3-オキソペンタン酸、4,4-ジメチル-3-オキソペンタン酸メチル、4,4-ジメチル-3-オキソペンタン酸エチル、3-シクロプロピル-3-オキソプロピオン酸、3-シクロプロピル-3-オキソプロピオン酸メチル、3-シクロプロピル-3-オキソプロピオン酸エチル、3-シクロブチル-3-オキソプロピオン酸、3-シクロブチル-3-オキソプロピオン酸メチル、3-シクロブチル-3-オキソプロピオン酸エチル、3-シクロペンチル-3-オキソプロピオン酸、3-シクロペンチル-3-オキソプロピオン酸メチル、3-シクロペンチル-3-オキソプロピオン酸エチル、3-シクロヘキシル-3-オキソプロピオン酸、3-シクロヘキシル-3-オキソプロピオン酸メチル、3-シクロヘキシル-3-オキソプロピオン酸エチル、3-オキソ-3-フェニルプロピオン酸、3-オキソ-3-フェニルプロピオン酸メチル、3-オキソ-3-フェニルプロピオン酸エチル、3-オキソ-3-(2-ピリジル)プロピオン酸、3-オキソ-3-(2-ピリジル)プロピオン酸メチル、3-オキソ-3-(2-ピリジル)プロピオン酸エチル、3-オキソ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸、3-オキソ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸メチル、3-オキソ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸エチル、3-オキソ-3-(4-ピリジル)プロピオン酸、3-オキソ-3-(4-ピリジル)プロピオン酸メチル、3-オキソ-3-(4-ピリジル)プロピオン酸エチル、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(メルドラム酸)、1,3-シクロヘキサンジオン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
ジオキソプロパン化合物としては、好ましくは、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ジベンジル、3-オキソブタン酸メチル、3-オキソブタン酸エチル、3-オキソペンタン酸メチル、3-オキソペンタン酸エチル、3-オキソヘキサン酸メチル、3-オキソヘキサン酸エチル、4-メチル-3-オキソペンタン酸メチル、4-メチル-3-オキソペンタン酸エチル、4-メチル-3-オキソヘキサン酸メチル、4-メチル-3-オキソヘキサン酸エチル、5-メチル-3-オキソヘキサン酸メチル、5-メチル-3-オキソヘキサン酸エチル、4,4-ジメチル-3-オキソペンタン酸メチル、4,4-ジメチル-3-オキソペンタン酸エチル、3-シクロプロピル-3-オキソプロピオン酸メチル、3-シクロプロピル-3-オキソプロピオン酸エチル、3-シクロブチル-3-オキソプロピオン酸メチル、3-シクロブチル-3-オキソプロピオン酸エチル、3-シクロペンチル-3-オキソプロピオン酸メチル、3-シクロペンチル-3-オキソプロピオン酸エチル、3-シクロヘキシル-3-オキソプロピオン酸メチル、3-シクロヘキシル-3-オキソプロピオン酸エチル、3-オキソ-3-フェニルプロピオン酸メチル、3-オキソ-3-フェニルプロピオン酸エチル、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(メルドラム酸)、1,3-シクロヘキサンジオン等が挙げられ、より好ましくは、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、3-オキソ-3-フェニルプロピオン酸メチル、3-オキソ-3-フェニルプロピオン酸エチル、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(メルドラム酸)、1,3-シクロヘキサンジオン等が挙げられ、更に好ましくは、マロン酸ジエチル、3-オキソ-3-フェニルプロピオン酸エチル、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(メルドラム酸)、1,3-シクロヘキサンジオン等が挙げられる。
【0085】
一般式(2)で表されるジオキソプロパン化合物(原料化合物)は公知の化合物であるか、あるいは、例えば公知の方法により製造することができる化合物である。
【0086】
(生成物)
本発明により製造される生成物は、
一般式(1):
【0087】
【化5】
【0088】
(式中、R及びRは上記一般式(2)で定義した通りである。)
で表されるトリオキソプロパン化合物である。
【0089】
前記一般式(1)で表されるトリオキソプロパン化合物としては、具体的に例えば、ケトマロン酸、ケトマロン酸ジメチル、ケトマロン酸ジエチル、ケトマロン酸ジn-プロピル、ケトマロン酸ジイソプロピル、ケトマロン酸ジn-ブチル、ケトマロン酸ジイソブチル、ケトマロン酸ジsec-ブチル、ケトマロン酸ジtert-ブチル、ケトマロン酸ジn-ペンチル、ケトマロン酸ジn-ヘキシル、ケトマロン酸ジシクロプロピル、ケトマロン酸ジシクロブチル、ケトマロン酸ジシクロペンチル、ケトマロン酸ジシクロヘキシル、ケトマロン酸ジフェニル、ケトマロン酸ジ(2-ピリジル)、ケトマロン酸ジ(4-ピリジル)、ケトマロン酸ジベンジル、ケトマロン酸エチルメチル、ケトマロン酸メチルn-プロピル、ケトマロン酸エチルn-プロピル、ケトマロン酸メチルフェニル、ケトマロン酸メチル(4-ピリジル)、ケトマロン酸メチル(2-ピリジル)、ケトマロン酸ベンジルメチル、2,3-ジオキソブタン酸、2,3-ジオキソブタン酸メチル、2,3-ジオキソブタン酸エチル、2,3-ジオキソペンタン酸、2,3-ジオキソペンタン酸メチル、2,3-ジオキソペンタン酸エチル、2,3-ジオキソヘキサン酸、2,3-ジオキソヘキサン酸メチル、2,3-ジオキソヘキサン酸エチル、4-メチル-2,3-ジオキソペンタン酸、4-メチル-2,3-ジオキソペンタン酸メチル、4-メチル-2,3-ジオキソペンタン酸エチル、4-メチル-2,3-ジオキソヘキサン酸、4-メチル-2,3-ジオキソヘキサン酸メチル、4-メチル-2,3-ジオキソヘキサン酸エチル、5-メチル-2,3-ジオキソヘキサン酸、5-メチル-2,3-ジオキソヘキサン酸メチル、5-メチル-2,3-ジオキソヘキサン酸エチル、4,4-ジメチル-2,3-ジオキソペンタン酸、4,4-ジメチル-2,3-ジオキソペンタン酸メチル、4,4-ジメチル-2,3-ジオキソペンタン酸エチル、3-シクロプロピル-2,3-ジオキソプロピオン酸、3-シクロプロピル-2,3-ジオキソプロピオン酸メチル、3-シクロプロピル-2,3-ジオキソプロピオン酸エチル、3-シクロブチル-2,3-ジオキソプロピオン酸、3-シクロブチル-2,3-ジオキソプロピオン酸メチル、3-シクロブチル-2,3-ジオキソプロピオン酸エチル、3-シクロペンチル-2,3-ジオキソプロピオン酸、3-シクロペンチル-2,3-ジオキソプロピオン酸メチル、3-シクロペンチル-2,3-ジオキソプロピオン酸エチル、3-シクロヘキシル-2,3-ジオキソプロピオン酸、3-シクロヘキシル-2,3-ジオキソプロピオン酸メチル、3-シクロヘキシル-2,3-ジオキソプロピオン酸エチル、2,3-ジオキソ-3-フェニルプロピオン酸、2,3-ジオキソ-3-フェニルプロピオン酸メチル、2,3-ジオキソ-3-フェニルプロピオン酸エチル、2,3-ジオキソ-3-(2-ピリジル)プロピオン酸、2,3-ジオキソ-3-(2-ピリジル)プロピオン酸メチル、2,3-ジオキソ-3-(2-ピリジル)プロピオン酸エチル、2,3-ジオキソ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸、2,3-ジオキソ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸メチル、2,3-ジオキソ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸エチル、2,3-ジオキソ-3-(4-ピリジル)プロピオン酸、2,3-ジオキソ-3-(4-ピリジル)プロピオン酸メチル、2,3-ジオキソ-3-(4-ピリジル)プロピオン酸エチル、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,5,6-トリオン、1,2,3-シクロヘキサントリオン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
トリオキソプロパン化合物としては、好ましくは、ケトマロン酸ジメチル、ケトマロン酸ジエチル、ケトマロン酸ジn-プロピル、ケトマロン酸ジイソプロピル、ケトマロン酸ジn-ブチル、ケトマロン酸ジイソブチル、ケトマロン酸ジsec-ブチル、ケトマロン酸ジtert-ブチル、ケトマロン酸ジフェニル、ケトマロン酸ジベンジル、2,3-ジオキソブタン酸メチル、2,3-ジオキソブタン酸エチル、2,3-ジオキソペンタン酸メチル、2,3-ジオキソペンタン酸エチル、2,3-ジオキソヘキサン酸メチル、2,3-ジオキソヘキサン酸エチル、4-メチル-2,3-ジオキソペンタン酸メチル、4-メチル-2,3-ジオキソペンタン酸エチル、4-メチル-2,3-ジオキソヘキサン酸メチル、4-メチル-2,3-ジオキソヘキサン酸エチル、5-メチル-2,3-ジオキソヘキサン酸メチル、5-メチル-2,3-ジオキソヘキサン酸エチル、4,4-ジメチル-2,3-ジオキソペンタン酸メチル、4,4-ジメチル-2,3-ジオキソペンタン酸エチル、3-シクロプロピル-2,3-ジオキソプロピオン酸メチル、3-シクロプロピル-2,3-ジオキソプロピオン酸エチル、3-シクロブチル-2,3-ジオキソプロピオン酸メチル、3-シクロブチル-2,3-ジオキソプロピオン酸エチル、3-シクロペンチル-2,3-ジオキソプロピオン酸メチル、3-シクロペンチル-2,3-ジオキソプロピオン酸エチル、3-シクロヘキシル-2,3-ジオキソプロピオン酸メチル、3-シクロヘキシル-2,3-ジオキソプロピオン酸エチル、2,3-ジオキソ-3-フェニルプロピオン酸メチル、2,3-ジオキソ-3-フェニルプロピオン酸エチル、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,5,6-トリオン、1,2,3-シクロヘキサントリオン等が挙げられ、
より好ましくは、ケトマロン酸ジメチル、ケトマロン酸ジエチル、2,3-ジオキソ-3-フェニルプロピオン酸メチル、2,3-ジオキソ-3-フェニルプロピオン酸エチル、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,5,6-トリオン、1,2,3-シクロヘキサントリオン等が挙げられ、更に好ましくは、ケトマロン酸ジエチル、2,3-ジオキソ-3-フェニルプロピオン酸エチル、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,5,6-トリオン、1,2,3-シクロヘキサントリオン等が挙げられる。
【0091】
(抱水体)
次に、本発明の方法により製造される一般式(3)で表されるトリオキソプロパン化合物の抱水体について説明する。
【0092】
本発明の方法により生成する一般式(1)で表されるトリオキソプロパン化合物は、2個のエステル基又はケト基等の間にケト基を有する化合物であり、言い換えれば、ケト基に隣接する位置に電子吸引基を有する化合物である。したがって、一般式(1)で表されるトリオキソプロパン化合物は、水の存在下においては次の一般式(3):
【0093】
【化6】
【0094】
(式中、R及びRは上記一般式(2)で定義した通りである。)
で表されるトリオキソプロパン化合物の抱水体を形成する。この抱水体は、必要に応じて、例えば加熱処理等の脱水処理を行うことにより、ケト型の一般式(1)で表されるトリオキソプロパン化合物とすることができる。このような可逆反応は、抱水クロラールのような抱水体の一般的な性質と同様である。
【0095】
一般に、本発明の反応を水の存在下で実施すると生成物は一般式(3)で表されるトリオキソプロパン化合物の抱水体の形で得られる。他方で、一般に、本発明の反応を無水条件下で実施すると、生成物は一般式(1)で表されるトリオキソプロパン化合物の形で得られる。
【0096】
さらに、本発明の反応を水の存在下で実施して、かつ一般式(1)で表されるトリオキソプロパン化合物の形で生成物を単離したい場合には、反応後の後処理において、具体的には、例えば、トルエンとの共沸脱水のような脱水処理を行うことにより一般式(1)で表されるトリオキソプロパン化合物の形で生成物を容易に得ることができる。
【0097】
すなわち、本発明の方法においては、反応溶媒又は反応後の後処理の方法を適切に選択することにより、単離される生成物の形態を、前記一般式(1)で表されるトリオキソプロパン化合物の形、又は前記一般式(3)で表されるトリオキソプロパン化合物の抱水体の形のいずれか所望の形とすることができる。
【0098】
(亜塩素酸化合物)
続いて、本発明の方法に用いる亜塩素酸化合物について説明する。本発明の方法には、亜塩素酸又は亜塩素酸塩から選択される1種又は2種以上の亜塩素酸化合物が用いられる。
【0099】
亜塩素酸塩としては、亜塩素酸イオンとカチオンが形成する塩を示すことができるが、これらに限定されるものではない。
カチオンとしては、金属カチオン又はオニウムカチオンを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
金属カチオンとしては、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はセシウムイオン等);アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、又はバリウムイオン等);土類金属イオン(例えば、アルミニウムイオン等);亜鉛族イオン(例えば亜鉛イオン等);遷移金属イオン(例えば、銅イオン、銀イオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、又は鉄イオン等)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
オニウムカチオンとしては、アンモニウムイオン(NH );直鎖若しくは分岐C~Cアルキル基又はフェニル基を有する4級アンモニウムイオン(例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラオクチルアンモニウムイオン、トリメチルブチルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオン等);直鎖若しくは分岐C~Cアルキル基又はフェニル基を有する4級ホスホニウムイオン(例えば、テトラメチルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン等)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
更には、亜塩素酸塩としては、亜塩素酸とアミン類の塩(アミン塩)も例示することができる。
塩を形成するアミン類としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ヒドラジン、メチルヒドラジン、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、キノリン、アニリン、又はN,N-ジエチルアニリン等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
これらの亜塩素酸塩は無水物であっても水和物であってもよい。
これらの亜塩素酸塩は単塩であっても複塩であってもよい。
【0100】
亜塩素酸化合物としては、具体的には例えば、亜塩素酸;亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム三水和物、又は亜塩素酸カリウム等を包含する亜塩素酸アルカリ金属塩;亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸マグネシウム三水和物、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸カルシウム三水和物、亜塩素酸バリウム、又は亜塩素酸バリウム二水和物等を包含する亜塩素酸アルカリ土類金属塩;亜塩素酸アルミニウム等の亜塩素酸土類金属塩;亜塩素酸亜鉛二水和物等の亜塩素酸亜鉛族塩;亜塩素酸銅(II)、亜塩素酸銅(III)、亜塩素酸銀、亜塩素酸ニッケル二水和物、又は亜塩素酸マンガン等の亜塩素酸遷移金属塩;亜塩素酸アンモニウム;亜塩素酸テトラメチルアンモニウム等の亜塩素酸4級アンモニウム塩;亜塩素酸(2,4-ジニトロフェニル)トリエチルホスホニウム等の亜塩素酸4級ホスホニウム塩;メチルアミン亜塩素酸塩、トリプロピルアミン亜塩素酸塩、ヒドラジン亜塩素酸塩、ピリジン亜塩素酸塩、4-メチルピリジン亜塩素酸塩、2,4-ジメチルピリジン亜塩素酸塩、キノリン亜塩素酸塩等の亜塩素酸アミン塩;KClO・NaClO、Cu(ClO・2KClO・2HO、Cu(ClO・Mg(ClO・8HO、又はCu(ClO・Ba(ClO・4HO等の複塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これらの亜塩素酸化合物は公知化合物である。
これらの亜塩素酸化合物は、単独で、又は2種以上を任意の割合で混用してもよい。
【0101】
入手性や取り扱いの簡便さ、及び反応性等の観点から、亜塩素酸化合物としては、亜塩素酸塩が好ましく、亜塩素酸アルカリ金属塩又は亜塩素酸アルカリ土類金属塩がより好ましく、亜塩素酸アルカリ金属塩が更に好ましく、亜塩素酸ナトリウム又は亜塩素酸カリウムが更に好ましく、亜塩素酸ナトリウムの使用が更に好ましい。
これらの亜塩素酸化合物は、亜塩素酸化合物のみの液体若しくは固体、又は水溶液若しくは水以外の溶媒の溶液等、如何なる形態でも使用することができる。水以外の溶媒としては後述する本発明の方法に用いることができる溶媒を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
入手性や取り扱いの簡便さ、及び反応性等の観点からは、亜塩素酸化合物は水溶液として供給してもよい。水溶液とした場合の亜塩素酸化合物の濃度は特に制限はないが、5質量%~80質量%、5質量%~60質量%、5質量%~50質量%、5質量%~40質量%、5質量%~30質量%、5質量%~25質量%、好ましくは、10質量%~80質量%、10質量%~60質量%、10質量%~50質量%、10質量%~40質量%、10質量%~30質量%、10質量%~25質量%、10質量%~20質量%の範囲を例示できる。
【0102】
本発明に用いられる亜塩素酸化合物の使用量は、反応が充分に進行する量であれば何れでも良いが、収率、副生成物抑制及び経済効率等の観点から、一般式(2)で表されるジオキソプロパン化合物1モルに対して、通常1.0~15.0モル、好ましくは1.5~5.0モル、より好ましくは2.0~3.5モルの範囲を例示できる。
【0103】
(ルイス酸)
続いて、本発明の方法に用いるルイス酸について説明する。本発明の方法には、ルイス酸が用いられる。
【0104】
本発明に用いられるルイス酸として、一般式(4)
MZn (4)
(式中、Mは金属イオンを示し、ZはMの対アニオンを示し、nは1~4の整数)
で表されるルイス酸を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0105】
一般式(4)中のMとしては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウム等);アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム又はバリウム等);土類金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウム又はタリウム等);亜鉛族金属(例えば亜鉛等);遷移金属(例えば、スカンジウム、セリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀又は金等)又はビスマス等のイオンを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
一般式(4)中のMとして好ましくは、遷移金属、アルミニウム、ガリウム、タリウム、亜鉛及びビスマス等のイオンが挙げられ、より好ましくは、遷移金属のイオンを挙げることができる。
【0106】
一般式(4)中のZとしては、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン(CFSO )、パーフルオロオクタンスルホナートイオン(C17SO )、アセチルアセトナートイオン(acac)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
一般式(4)中のZとして好ましくは、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン(CFSO )、パーフルオロオクタンスルホナートイオン(C17SO )、アセチルアセトナートイオン(acac)等が挙げられ、より好ましくは、ハロゲン化物イオン、酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン(CFSO )、パーフルオロオクタンスルホナートイオン(C17SO )を挙げることができる。
【0107】
本発明に用いられるルイス酸の具体的な例としては、塩化アルミニウム、スカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホナート、酸化バナジウム(V)、酸化硫酸バナジウム(IV)、硫酸マンガン(II)、酢酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、コバルト(II)アセチルアセトナート、酢酸ロジウム(II)、塩化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、ハフニウム(IV)トリフルオロメタンスルホナート、ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナート、セリウム(IV)トリフルオロメタンスルホナート、ビスマス(III)トリフルオロメタンスルホナート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
スカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホナートは、例えば、スカンジウム(III)トリフラート、スカンジウムトリフルオロメタンスルホナート又はスカンジウムトリフラートともいう。
ハフニウム(IV)トリフルオロメタンスルホナート、セリウム(IV)トリフルオロメタンスルホナート及びビスマス(III)トリフルオロメタンスルホナートも同様である。
ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナートは、例えば、ハフニウムパーフルオロオクタンスルホナートともいう。
これらのルイス酸は、反応が十分に進行する限りは無水物であっても水和物であってもよく、当業者によって適宜に選択することができる。
【0108】
本発明に用いられるルイス酸として、好ましくは、スカンジウム(III)トリフラート、酸化バナジウム(V)、酸化硫酸バナジウム(IV)、硫酸マンガン(II)、酢酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、コバルト(II)アセチルアセトナート、酢酸ロジウム(II)、塩化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、ハフニウム(IV)トリフラート、ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナート、セリウム(IV)トリフラート、ビスマス(III)トリフラート等が挙げられ、より好ましくは、スカンジウム(III)トリフラート、酸化バナジウム(V)、酸化硫酸バナジウム(IV)、酢酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、酢酸ロジウム(II)、ハフニウム(IV)トリフラート、ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホナート等が挙げられる。
【0109】
本発明に用いられるルイス酸の使用量は、反応が充分に進行する量であれば何れでも良いが、収率、副生成物抑制及び経済効率等の観点から、一般式(2)で表されるジオキソプロパン化合物1モルに対して、通常0.005~1.0モル、好ましくは触媒量、すなわち0.01~0.5モル、より好ましくは0.03~0.3モル、更に好ましくは0.05~0.1モルの範囲を例示できる。
【0110】
(溶媒)
本発明の方法は、無溶媒でも実施できるが、溶媒の存在下に実施することができる。
【0111】
本発明の方法における溶媒としては、例えば水溶媒で実施することができる。前述の亜塩素酸化合物を水溶液として用いる場合は、亜塩素酸化合物の水溶液に由来する水溶媒のみでも充分行うことができる。更に、水以外の他の溶媒を用いて行うこともできる。当反応に用い得る水以外の溶媒としては、反応を阻害しないものであれば良く、カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸等);酸無水物(例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸等);ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等);アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール等);エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等);ケトン類(例えば、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等);アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等);アルキル尿素類(例えば、テトラメチル尿素等);リン酸アミド類(例えば、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)等);スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等);スルホン類(例えば、スルホラン又はジメチルスルホン等);炭酸エステル類(例えば、プロピレンカーボネート等)、;エ-テル類(例えば、ジエチルエ-テル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)等が挙げられ、更には、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等);ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等);脂肪族炭化水素類(例えば、ペンタン、n-ヘキサン等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独で、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いることができる。
【0112】
本発明に用いられる溶媒としては、原料化合物と亜塩素酸化合物との親和性、反応性の観点等からは、極性溶媒を用いることが好ましい。
本発明に用いられる極性溶媒として、好ましくは、水、カルボン酸、ニトリル類、ケトン類、アルコール類、エステル類、酸無水物、アミド類、スルホキシド類、又はスルホン類等が挙げられ、より好ましくは、水、ニトリル類、ケトン類、アルコール類、エステル類、又はアミド類等が挙げられ、更に好ましくは、水、ニトリル類、又はアルコール類等が挙げられ、更に好ましくは、水、又はニトリル類等が挙げられ、特に好ましくは水が挙げられる。水が簡便で安価であり好ましい。
【0113】
ここでいう極性溶媒とは、比誘電率が5以上である溶媒とする。ここに、比誘電率は、日本化学会編、「化学便覧」(基礎編)、改訂5版、I-770~777頁、丸善、2004年記載の値とする。当反応に用いる溶媒は比誘電率が5以上の極性溶媒が好ましく、比誘電率が7以上の極性溶媒がより好ましく、比誘電率が17以上の極性溶媒が更に好ましく、比誘電率が20以上の極性溶媒が特に好ましい。
【0114】
本発明に用いられる溶媒の具体的な例として、好ましくは、水、アセトニトリル、アセトン、イソブチルメチルケトン、メタノール、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、及びジメチルスルホン等が挙げられ、より好ましくは、水、アセトニトリル、アセトン、イソブチルメチルケトン、メタノール、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドン等が挙げられ、更に好ましくは、水、アセトニトリル、又はメタノール等が挙げられ、更に好ましくは、水、又はアセトニトリル等が挙げられ、特に好ましくは、水が挙げられる。水は簡便で安価であり好ましい。
【0115】
本発明の反応における溶媒量としては、反応系の流動性が充分に確保できる限りは、如何なる量でもよいが、反応性、副生成物抑制、及び経済効率等の観点から、一般式(2)で表される原料化合物1モルに対して、通常0.01~10L、好ましくは0.05~5L、より好ましくは0.2~3L、さらに好ましくは0.5~2Lの範囲を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
(添加剤)
本発明の方法において、反応中のpHの変動が大きくならないように、酢酸ナトリウム緩衝液又はリン酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液を添加剤として使用することもできる。
【0117】
(反応温度)
本発明における反応温度は、当業者によって適宜に調整することができる。収率、副生成物抑制及び経済効率等の観点から、通常0℃~使用する溶媒の還流温度の範囲、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは0℃~60℃、更に好ましくは5℃~30℃の範囲を例示できるが、これに限定されるものではない。
【0118】
(反応時間)
本発明における反応時間は、当業者によって適宜に調整することができる。収率、副生成物抑制及び経済効率等の観点から、通常0.5時間~48時間、好ましくは0.5時間~36時間、より好ましくは0.5時間~24時間、更に好ましくは1時間~12時間を例示できるが、これに限定されるものではない。
【0119】
当反応は酸化反応であるが、例えば大きなスケールでの実施に際して反応に伴う発熱の大きさが懸念されるような場合には、適宜、原料の分割投入や滴下投入等の手法を採用することにより、反応に伴う発熱を制御してもよい。
【実施例
【0120】
次に、実施例を挙げて本発明の製造方法を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0121】
以下の実施例において、室温とは、通常10℃~35℃の範囲である。
【0122】
本明細書中、実施例及び比較例の各物性の測定には次の機器を用いた。
H核磁気共鳴スペクトル(H-NMR))
(a):JEOL ECX-600又はJEOL ECA-500(日本電子株式会社製)、内部基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
(b):Mercury-300(Varian社製)、内部基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
(ガスクロマトグラフィー(GC)分析方法)
GC-2010(株式会社島津製作所製)、検出方法:FID GC分析方法に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
(a):(社)日本化学会編、「新実験化学講座9 分析化学 II」、第60~86頁(1977年)、発行者 飯泉新吾、丸善株式会社(例えば、カラムに使用可能な固定相液体に関しては、第66頁を参照できる。)
(b):(社)日本化学会編、「実験化学講座20-1 分析化学」第5版、第121~129頁(2007年)、発行者 村田誠四郎、丸善株式会社(例えば、中空キャピラリー分離カラムの具体的な使用方法に関しては、第124~125頁を参照できる。)
(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析方法)
LC20AD(株式会社島津製作所製)
HPLC分析方法に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
(a):(社)日本化学会編、「新実験化学講座9 分析化学 II」、第86~112頁(1977年)、発行者 飯泉新吾、丸善株式会社(例えば、カラムに使用可能な充填剤-移動相の組合せに関しては、第93~96頁を参照できる。)
(b):(社)日本化学会編、「実験化学講座20-1 分析化学」第5版、第130~151頁(2007年)、発行者 村田誠四郎、丸善株式会社(例えば、逆相クロマトグラフィー分析の具体的な使用方法及び条件に関しては、第135~137頁を参照できる。)
(薄層クロマトグラフィー質量(TLC/MS)分析方法)
薄層クロマトグラフィーにはWakogel B-5F(和光純薬株式会社)を使用した。
(pHの測定方法)
pHはガラス電極式水素イオン濃度指示計により測定した。
ガラス電極式水素イオン濃度指示計としては、例えば、HM-20P(東亜ディーケーケー株式会社製)が使用できる。
【0123】
実施例1
酢酸コバルト(II)を用いたケトマロン酸ジエチルの製造方法
(実施例1-1)
【0124】
【化7】
【0125】
マグネティックスターラーを備えた50mLのなす型フラスコに、酢酸コバルト(II)0.055g(0.00031mol)及び水3.4mLを加えた。混合物を溶解させた後、マロン酸ジエチル0.5g(0.00312mol)を加え、室温下で5分間撹拌した。そこに25%亜塩素酸ナトリウム水溶液2.26g(0.0624mol)を加え、反応混合物を室温下で1時間攪拌した。反応系内に酢酸エチル8mLを加えた後、抽出操作を行い、有機層と水層を分離した。上記抽出操作を3回繰り返した後、得られた有機層を合わせて減圧下にて酢酸エチルを留去し、目的化合物であるケトマロン酸ジエチルを得た。ケトマロン酸ジエチルの収率は、GC内部標準法による分析の結果、96.9%であった。
【0126】
H-NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):4.41(q,J=7.2Hz,2H),1.40(t,J=7.2Hz,3H)
【0127】
GC-MS M=174
【0128】
(比較例1-2)
酢酸コバルト(II)を加えないこと及び反応時間(反応混合物の撹拌時間)を3時間としたことを除き実施例1-1と同様にして、ケトマロン酸ジエチルの合成を試みた。目的化合物の収率は、反応混合物の一部をGCにより分析し、面積百分率法により算出した。ケトマロン酸ジエチルの収率は、0.2%であった。
【0129】
実施例1の結果はジオキソプロパン化合物を原料とするトリオキソプロパン化合物の合成において酢酸コバルト(II)が触媒として有用であることを示している。また、ジオキソプロパン化合物に対する当量が0.1当量であっても十分な収率が得られることを示す。
【0130】
実施例2
塩化コバルト(II)を用いたケトマロン酸ジエチルの製造方法
酢酸コバルト(II)に代えて塩化コバルト(II)を加えること及びマロン酸ジエチルに対するルイス酸の当量を次の表1に示した通りに変更した以外は実施例1-1と同様にして、ケトマロン酸ジエチルを得た。目的化合物の収率は、反応混合物の一部をGCにより分析し、面積百分率法により算出した。結果を表1にまとめた。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例2の結果は塩化コバルト(II)も酢酸コバルト(II)と同様にトリオキソプロパン化合物の合成において触媒として有用であることを示している。また、意外にも、ジオキソプロパン化合物に対する当量を増やすことは収率の低下を引き起こすことを明らかにした。
【0133】
実施例3
酢酸コバルト(II)を用いたケトマロン酸ジエチルの製造方法
マロン酸ジエチルに対するルイス酸の当量及び反応時間を次の表2に示した通りに変更した以外は実施例1-1と同様にして、ケトマロン酸ジエチルを得た。目的化合物の収率は、反応混合物の一部をGCにより分析し、面積百分率法により算出した。結果を表2にまとめた。
【0134】
【表2】
【0135】
実施例3の結果より、ルイス酸のジオキソプロパン化合物に対する当量はわずか0.01当量であっても比較的高い収率で目的物が得られることがわかった。
【0136】
実施例4
酢酸鉄(II)を用いたケトマロン酸ジエチルの製造方法
酢酸コバルト(II)に代えて酢酸鉄(II)を加えること及び反応時間を次の表3に示した通りに変更した以外は実施例1-1と同様にして、ケトマロン酸ジエチルを得た。
目的化合物の収率は、反応混合物の一部をGCにより分析し、面積百分率法により算出した。結果を表3にまとめた。
【0137】
【表3】
【0138】
実施例4-1及び4-2においては抽出前の反応混合物の状態はコロイド状であったが、実施例4-3においては黄色透明の均一の液体であった。
実施例4の結果は酢酸鉄(II)も酢酸コバルト(II)と同様にトリオキソプロパン化合物の合成において触媒として有用であることを示している。また、短時間でも高い収率が得られる一方で、反応時間を延ばすことによっても収率を高めることができ、十分な反応時間を設定すれば100%の収率を得ることも可能であるとわかった。
【0139】
実施例5
種々のルイス酸を用いたケトマロン酸ジエチルの製造方法
酢酸コバルト(II)に代えて次の表4に記載のルイス酸を用いること及び反応時間を次の表4に示した通りに変更した以外は実施例1-1と同様にして、ケトマロン酸ジエチルを得た。目的化合物の収率は、反応混合物の一部をGCにより分析し、面積百分率法により算出した。結果を表4にまとめた。
【0140】
【表4】
【0141】
表4のacacはアセチルアセトナートの略称である。nHOは水和数が不明である水和物を意味する。
実施例5の結果は種々のルイス酸がトリオキソプロパン化合物の合成において触媒として有用であることを示している。
【0142】
実施例6
ハフニウム(IV)トリフラートを用いたケトマロン酸ジエチルの製造方法
ハフニウム(IV)トリフラート34.8mg(0.045mmol)と亜塩素酸ナトリウム123.6mg(純度換算で1.08mmol)を水3mLに溶解させた後、マロン酸ジエチル144.2mg(0.9mmol)を加え、反応混合物を室温下で12時間攪拌した。反応混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(1mL)にてクエンチし、水(10mL)で希釈した。水層をジクロロメタン(3×25mL)にて抽出した。得られた有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。原料化合物の転化率は、デュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)を内部標準とした粗生成物のH-NMR分析により決定した。粗生成物はカラムクロマトグラフィーに付して精製し、目的化合物であるケトマロン酸ジエチルを89%の収率で得た。
【0143】
実施例7
種々のルイス酸を用いたケトマロン酸ジエチルの製造方法
ハフニウム(IV)トリフラートに代えて次の表5に記載のルイス酸を用いること以外は実施例6と同様にして、ケトマロン酸ジエチルを得た。目的化合物の収率は、デュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)を内部標準とした粗生成物のH-NMR分析により決定した。結果を表5にまとめた。
【0144】
【表5】
【0145】
表5のOTfはトリフルオロメタンスルホナートの略称である。
実施例7の結果は種々のルイス酸がトリオキソプロパン化合物の合成において触媒として有用であることを示している。
【0146】
実施例8
ルイス酸を用いた2,3-ジオキソ-3-フェニルプロパン酸エチルの製造方法
(実施例8-1)
【0147】
【化8】
【0148】
亜塩素酸ナトリウム40.7mg(純度換算で0.36mmol)と3-オキソ-3-フェニルプロパン酸エチル57.7mg(0.3mmol)のアセトニトリル(2mL)懸濁液に、pH5.2に調製した3M酢酸緩衝液(1mL)を加えた。そこへスカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホナート7.4mg(0.015mmol)を加えた後、その混合物を室温にて激しく撹拌したところ、黄色く変色した。変色後、反応混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(1mL)にてクエンチし、水(10mL)で希釈した。水層をジクロロメタン(3×15mL)にて抽出した。得られた有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。粗生成物を分取薄層クロマトグラフィー(preparative thin-layer chromatography(PTLC);ヘキサン/酢酸エチル=4/1)に付して精製し、2,3-ジオキソ-3-フェニルプロパン酸エチル34.3mg(収率51%)を黄色固体(抱水体)として得た。
【0149】
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.08(t,J=6.8Hz,3H),4.22(q,J=6.8Hz,2H),5.33(br,2H),7.47(t,J=7.6Hz,3H),7.63(t,J=7.6Hz,1H),8.08(dd,J=1.2,7.6Hz,2H)
【0150】
GC-MS M=206
【0151】
(実施例8-2)
【0152】
【化9】
【0153】
亜塩素酸ナトリウム51.5mg(純度換算で0.45mmol)と3-オキソ-3-フェニルプロパン酸エチル57.7mg(0.3mmol)のアセトニトリル(2mL)懸濁液に、水(1mL)を加えた。そこへスカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホナート7.4mg(0.015mmol)を加えた後、その混合物を室温にて激しく撹拌したところ、黄色く変色した。変色後、反応混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(1mL)にてクエンチし、水(10mL)で希釈した。水層をジクロロメタン(3×15mL)にて抽出した。得られた有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。原料化合物の転化率及び生成物の収率は、デュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)を内部標準とした粗生成物のH-NMR分析により決定した。その結果、原料化合物の転化率は70%、目的化合物である2,3-ジオキソ-3-フェニルプロパン酸エチルの収率は43%であった。
【0154】
(比較例8-3)
【0155】
【化10】
【0156】
亜塩素酸ナトリウム51.5mg(純度換算で0.45mmol)と3-オキソ-3-フェニルプロパン酸エチル57.7mg(0.3mmol)のアセトニトリル(2mL)懸濁液に、pH5.2に調製した3M酢酸緩衝液(1mL)を加えた。室温で激しく撹拌した後、結果として混合物は黄色に着色した。変色後、反応混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(1mL)にてクエンチし、水(10mL)で希釈した。水層をジクロロメタン(3×15mL)にて抽出した。得られた有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。原料化合物の転化率及び生成物の収率は、デュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)を内部標準とした粗生成物のH-NMR分析により決定した。その結果、原料化合物の転化率は61%、目的化合物である2,3-ジオキソ-3-フェニルプロパン酸エチルの収率は7%であった。
【0157】
実施例8は、本反応がマロン酸ジエチルのようなマロン酸化合物だけでなく、3-オキソ-3-フェニルプロパン酸エチルのようなβ-ケト酢酸化合物に対しても適用可能であることを示している。
更に、ルイス酸を加えない比較例8-3に比べ、ルイス酸を加えた実施例8-1では、副反応が抑えられ、収率が顕著に増大した。また実施例8-2では、酢酸緩衝液の非存在下でも比較的高い収率で目的化合物が得られた。
【0158】
実施例9
ルイス酸を用いた5,5-ジヒドロキシ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンの製造方法
(実施例9-1)
【0159】
【化11】
【0160】
ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホン酸塩97.9mg(0.045mmol)と亜塩素酸ナトリウム154.5mg(純度換算で1.35mmol)を水3mLに溶解させた後、メルドラム酸129.7mg(0.9mmol)を加え、反応混合物を室温下で12時間攪拌した。反応混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(1mL)にてクエンチし、水(10mL)で希釈した。水層をジクロロメタン(3×25mL)にて抽出した。得られた有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下にてジクロロメタンを留去し、目的化合物である抱水体5,5-ジヒドロキシ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンが白色固体として定量的に得られた(収率99%以上)。
【0161】
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):1.80(s,3H),1.83(s,3H),2.13-2.47(brs,2H)
【0162】
(実施例9-2)
ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホン酸塩に代えてハフニウム(IV)トリフラートを加えること及び反応混合物を室温下で24時間攪拌した以外は実施例9-1と同様にして、5,5-ジヒドロキシ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンを得た。目的化合物の収率は、デュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)を内部標準とした粗生成物のH-NMR分析により91%であった。
【0163】
実施例9は、本反応がマロン酸ジエチルのようなマロン酸化合物だけでなく、メルドラム酸のような環状β-ジカルボニル化合物に対しても適用可能であることを示している。
【0164】
実施例10
ルイス酸を用いた2,2-ジヒドロキシ-シクロヘキサン-1,3-ジオンの製造方法(実施例10-1)
【0165】
【化12】
【0166】
ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホン酸塩97.9mg(0.045mmol)と亜塩素酸ナトリウム154.5mg(純度換算で1.35mmol)を水3mLに溶解させた後、1,3-シクロヘキサンジオン100.9mg(0.9mmol)を加え、反応混合物を室温下で18時間攪拌した。反応混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(1mL)にてクエンチし、水(10mL)で希釈した。水層をジクロロメタン(3×25mL)にて抽出した。得られた有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下にてジクロロメタンを留去した。生成物の収率は、デュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)を内部標準とした粗生成物のH-NMR分析により53%であった。
【0167】
H-NMR(600MHz,CDCl)δ(ppm):2.01(dt,J=7.3,14.1Hz,2H),2.58-2.61(m,2H),4.38(dd,J=16.1,25.7Hz,2H),5.83(s,1H)
【0168】
(実施例10-2)
ハフニウム(IV)パーフルオロオクタンスルホン酸塩に代えてハフニウム(IV)トリフラートを加えること以外は実施例10-1と同様にして、5,5-ジヒドロキシ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオンを得た。目的化合物の収率は、デュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)を内部標準とした粗生成物のH-NMR分析により50%であった。
【0169】
実施例10は、本反応がマロン酸ジエチルのようなマロン酸化合物だけでなく、1,3-シクロヘキサンジオンのような環状1,3-ジケトン化合物に対しても適用可能であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の方法によれば、マロン酸ジエステル等のジオキソプロパン化合物の活性メチレン部分をあらかじめ修飾することなく、ジオキソプロパン化合物の活性メチレン部位を一段階で直接酸化し、トリオキソプロパン化合物を工業的に製造することができる。
更に、本発明の方法によれば、毒性が高い試薬や安全性が低い試薬を必要とせず、特殊な反応剤を必要とせず、特別な反応装置を必要とせず、高価な試薬を必要とせず、ケトマロン酸ジエステル等のトリオキソプロパン化合物を製造できる。
更に、本発明の方法によれば、酢酸等のカルボン酸化合物を反応触媒としての役割に加えて、溶媒としての効果を期待して使用することがないため、工業的規模での大量の酸性廃液を排出しないトリオキソプロパン化合物の製造が可能である。
更に、本発明の方法によれば、穏やかな反応条件を選択することができ、操作性がよく、工業化に適した簡便な条件で、ケトマロン酸ジエステル等のトリオキソプロパン化合物を製造できる。
本発明方法により得られる一般式(1)で表されるトリオキソプロパン化合物は、医農薬等の中間原料として有用な化合物である。