(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】物質構成モデルリングのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/23 20200101AFI20220225BHJP
【FI】
G06F30/23
(21)【出願番号】P 2018560000
(86)(22)【出願日】2017-05-10
(86)【国際出願番号】 US2017031846
(87)【国際公開番号】W WO2017196908
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-05-11
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520161964
【氏名又は名称】シーメンス インダストリー ソフトウェア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サレス デ カストロ、レアンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスコンセロス デ ソウサ、フラヴィオ
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-141645(JP,A)
【文献】特開2008-197852(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0325417(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0292966(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0191511(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0077927(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0100565(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0299112(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0216894(US,A1)
【文献】国際公開第2015/028998(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモートデータソースからデータを受信することができるアプリケーションを動作させる1つ以上のクライアントシステムを含むネットワーク接続可能システムで使用するための
コンピュータプログラムであって、
該コンピュータプログラムは、
1つ以上のコンピュータプロセッサに、
要求しているアプリケーションに
変更されたデータを供給する方法を
実行させるコンピュータ実行可能命令
を含み、前記方法が、
初期物理モデルを定義するためにシステムに物理モデルデータを入力するステップであって、前記物理モデルデータが物理モデルの複数の物質、要素、および形状を定義するデータを含むステップと、
前記物理モデルデータを、物理モデルデータを定義するためのいくつかの選択された積分点にグループ化するステップと、
各
前記積分点の物質特性を定義し格納するステップと、
各
前記積分点について定義された構成モデルのための駆動変数を選択するステップと、
エラー許容差を選択するステップと、
前記物理モデルの各定義された
前記積分点について前記駆動変数の複数の履歴を計算し、格納するステップと、
各定義された
前記積分点について
前記駆動変数の前記複数の履歴を検索するステップと、
定義された
前記エラー許容差に基づいて前記駆動変数をグループ化し、前記エラー許容差内の前記駆動変数の固有の履歴を定義するステップと、
同じ物質定義で、前記駆動変数の同じ値範囲内で、前記エラー許容差内
の前記積分点を、同じ構成モデルにマッピングするステップと、
を含む、
コンピュータプログラム。
【請求項2】
前記積分点は、前記物理モデルを均等にカバーする、請求項1に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項3】
前記積分点は、前記物理モデルの複数の要素を均等にカバーする、請求項2に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項4】
前記方法は、各
前記積分点を定義し格納するステップをさらに含む、請求項3に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項5】
少なくとも1つの
前記駆動変数は、前記物理モデルの物質の特性から少なくとも部分的に決定される、請求項4に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項6】
少なくとも1つの
前記駆動変数が、前記物理モデルに加えられる力に少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項5に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項7】
3つ未満の
前記駆動変数が選択される、請求項6に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項8】
選択された少なくとも1つの
前記駆動変数は、単一のテンソル変数である、請求項7に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項9】
選択された
前記エラー許容差は、前記物理モデルの各要素ごとに異なる、請求項8に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項10】
選択された
前記エラー許容差は、同じ物質定義を有する前記物理モデルの要素について同じである、請求項9に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項11】
前記駆動変数は、機械的物質構成モデルの変形を表す、請求項10に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項12】
前記駆動変数は、熱物質構成モデルの温度勾配を表す、請求項11に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項13】
前記物理モデルについて対称線が選択され、前記物理モデルの片側のみからの
前記積分点が処理のために選択される、請求項12に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項14】
前記駆動変数として、損傷状態変数が選択される、請求項13に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項15】
構成挙動が、連続損傷手法を使用してモデル化され、
損傷が、選択された物質の構成テンソルを変更するスカラー状態変数によって表される、請求項14に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項16】
前記積分点を含んでいて該積分点の前記駆動関数の履歴を計算するために用いられる有限要素メッシュに挿入されるか解析中に自動的に挿入される明白な亀裂または
結合ゾーン要素によって
、損傷がモデル化される、請求項15に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項17】
前記駆動変数の各固有の履歴に関連する計算は、ローカルマシンまたはローカルサーバまたはリモートサーバにおいて実行される、請求項16に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項18】
物質定義の
前記駆動変数の各固有の履歴に関連する計算が、異なるシミュレーションジョブに対して繰り返し実行される、請求項17に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項19】
特定の物質定義の
前記駆動変数の各固有の履歴に関連する計算が1度だけ実行され、ローカルまたはリモートのデータベースに格納され、同じまたは異なるシミュレーションジョブ中に将来的に検索される、請求項18に記載の
コンピュータプログラム。
【請求項20】
物質定義が与えられると、前記データベースは、前記駆動変数の異なる履歴を適用することによって、周期的に拡張または更新され、これらの履歴は人工知能によって定義される、請求項19に記載の
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年5月10日に出願された米国仮特許出願第62/334,069号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般にコンピュータモデリングに関し、特に、物質構成モデリングの方法に関する。
【背景技術】
【0003】
構成モデルは、所与の物質の物理的特性を記述する。物理学および工学では、構成方程式または構成関係は、ある物質または物体に特有であり、かつ通常は適用されるフィールドまたは力としての外部刺激に対するその物質の応答に近似する、2つの物理量(特に、運動力学量に関連する運動量)間の関係である。近年、コンピュータを用いて設計モデルの物理的運動をシミュレートするために、構成モデルを使用することがますます一般的になってきている。これらのモデルは、熱伝導解析、流体解析、構造解析、電磁界解析、電磁波解析などに幅広く使用されている。
【0004】
コンピュータで物理モデルをシミュレートするには、数値的方法が必要である。常微分方程式の数値的方法は、常微分方程式(ODE:Ordinary Differential Equation(s))の解に対する数値的近似を求める方法である。様々な既存の数値的方法の中でも、有限要素法(FEM:Finite Element Method)と境界要素法(BEM:Boundary Element Method)の2つが最も多用されている。
【0005】
ODEの数値解を求めるために、数値積分がしばしば必要となる。数値的方法において、数値積分は、定積分の数値を計算するための幅広いアルゴリズムのファミリーを構成し、拡張によって、微分方程式の数値解を記述するために使用されることもある。数値積分法は一般に、被積分関数の評価を組み合わせて積分の近似を得るものとして記述することができる。被積分関数は積分点と呼ばれる有限の点集合で評価され、これらの値の加重和が積分に近似するために使用される。積分点および加重は、使用される特定の方法および近似から要求される精度に依存する。
【0006】
数値的シナリオでは、構成モデルを、線形および非線形物質の応答および失敗を含むがそれらに限定されない、物質の構成挙動を計算するための定数、変数および方法を定義するデータ構造と呼ぶ。
【0007】
解析されるオブジェクトモデルは、使用の増加に伴い、ますます複雑になってきている。さらに、1つのオブジェクトモデルに複数の種類のシミュレーションを適用する事例も増加している。さらに、現在の数値的方法および既存のコードは、全部の積分点について1つの構成モデルを定義する、つまり、物質挙動を計算および格納するのに必要な全ての変数が、全部の積分点について独立して定義される。大きな問題の場合、メモリ割り当ておよび計算が全部の積分点について固有であるため、多くの計算資源(すなわちメモリ、CPU処理時間)を必要とする。
【0008】
最近では、サブスケールモデルを使用して異種メディアの構成挙動を取得し、フルモデルを積分点にネストするマルチスケール手法の開発により、計算資源の要件がさらに増加した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実質的な計算資源を必要とせずに、大きなモデルにおいて複雑な物質挙動の計算を可能にする方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、物質の挙動をモデル化するために必要な計算の数およびメモリの量を削減するツールおよび方法を提供することによって、従来技術の限界を克服する。以下に詳細に説明するように、本発明の強化された方法は、より効率的な方法でデータセットを定義し、識別し、処理するためのツールを提供する。以下で説明するツールは、様々な計算タスクの処理精度と処理速度に大幅かつ驚異的な改善をもたらした。
【0011】
好ましい実施形態によれば、本発明は、物質挙動を効率的に予測し、正確なシミュレーションを得るために必要な計算資源を最小限に抑えるコンピューティングデバイスおよび方法を提供する。さらに好ましい実施形態によれば、本発明は、数値解が進行するにつれて、モデル化された要素/オブジェクトのセクションについて各物質点または積分点または構成モデルにおける特定の駆動変数の履歴(例えば、構造解析のための負荷または変形履歴)を追跡する。さらに好ましい実施形態によれば、本発明は、決定された境界条件下で、モデル化された要素/オブジェクト全体をモデル化するのに必要なデータの量を最適化するために、実際の積分点および/または構成モデルデータ構造に対して、特定の許容差内の駆動変数の固有の履歴のみをマッピングする。
【0012】
本発明の第1の好ましい態様によれば、物理的問題を満足にモデル化するために必要なデータの量を最小化するように、(特定の許容差内で)駆動変数の同じ履歴を有する物質点、積分点および/または構成モデル要素は、識別され、関連する方法で処理される。さらなる好ましい実施形態によれば、本発明は、その後、駆動変数の各固有の履歴について計算された物質応答を、モデル化された要素/オブジェクトの各積分点および/または構成モデルに動的にリンクする。さらに好ましい実施形態によれば、本発明は、複数のコンピュータおよび/または複数のCPUおよび/または複数のCPUコアおよび/または複数の計算スレッドおよび/またはHPC(High Performance Computing)を含む利用可能な計算資源にわたって解析作業負荷を均衡させ、最大化されたパフォーマンスを提供する。本発明は、限定されるものではないが、有限要素法および境界要素法を含む複数の数値的手法に適用可能である。本発明の他の目的および利点は、以下の説明および添付の図面と併せて考えると、さらに認識および理解されるであろう。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、(特定の許容差内の)駆動変数の各固有の履歴に関する計算は、ローカルマシン、ローカルサーバまたはリモートサーバ、または他の計算資源で実行されてもよい。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、物質定義の(特定の許容差内の)駆動変数の各固有の履歴に関連する計算は、駆動変数の固有の履歴が、参照されるシミュレーションジョブに関連するかまたは関連しない別の別個のシミュレーションジョブの特定の物質定義について予め計算されているかどうかにかかわらず、繰り返し実行することができる。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、所与の物質定義の(特定の許容差内の)駆動変数の各固有の履歴に関連する計算は、1回だけ実行されてもよく、この場合、駆動変数の各固有の履歴に対する物質構成挙動は、データベース(ローカルまたはリモート)内に格納することができ、同じまたは別個のシミュレーションジョブ中に将来的に検索することができ、したがって、(特定の許容差内の)駆動変数の同じ固有の履歴に対する繰り返し計算およびメモリ使用を回避する。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、所与の物質定義の(特定の許容差内の)駆動変数の各固有の履歴に関連する計算から生じる物質の構成挙動は、オブジェクト、パーツまたは物理モデルのシミュレーション中にローカルまたはリモートのデータベースに格納/検索することができる。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、所与の物質定義の(特定の許容差内の)駆動変数の各固有の履歴に関連する計算から生じる物質構成挙動を有するデータベースは、物質定義に駆動変数の異なる履歴を適用することによって周期的にまたは連続的に拡張されてもよく、これらの履歴は、人工知能によってランダムにまたは最適に定義されてもよい。
【0018】
以下の説明は、本発明の特定の実施形態を説明する特定の詳細を含むことがあるが、これは本発明の範囲を限定するものではなく、むしろ好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。本発明の各態様について、当業者に知られている本明細書で示唆されるような多くの変形が可能である。本発明の精神から逸脱することなく、本発明の範囲内で種々の変更および改変を行うことができる。
【0019】
図面の要素は、明瞭性を高めるために、また本発明の様々な要素および実施形態の理解を向上させるために、必ずしも縮尺通りに描かれていない。さらに、本発明の様々な実施形態の明瞭な図を提供するために、一般的であることが知られており当業界で周知の要素は描写していない。従って、図面は、明瞭さと簡潔さにおける形式で一般化されていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明で使用するための例示的なコンピューティングシステムを示す図である。
【
図2】本発明の好ましい方法のフローチャートを示す図である。
【
図3A】本発明の一態様によるシステムに入力するための例示的なモデルを示す図である。
【
図3B】本発明の一態様に従ってセグメント化された例示的なモデルを示す図である。
【
図4】本発明のさらなる態様によるさらなる処理であるさらなる例示的なモデルを示す図である。
【
図5】本発明の一態様に従って処理された4点曲げ試験モデルを示す図である。
【
図6】本発明の一態様に従って処理された有限メッシュ要素を示す図である。
【
図7】本発明の一態様による処理された変数間の関係を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、互いに独立して、または他の特徴と組み合わせて使用することができる様々な発明的特徴を説明する。しかしながら、任意の単一の発明的特徴は、上述の問題のいずれにも対処できないか、または上述の問題の1つのみに対処する可能性がある。さらに、上述の1つ以上の問題は、以下に説明する特徴のいずれによっても完全に対処されない可能性がある。本発明のいくつかの実施形態および用途に対処する以下の説明では、本発明の一部を形成する添付の図面を参照し、本発明を実施することができる特定の実施形態を例示として示す。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を利用することができ、変更を行うことができることを理解されたい。
【0022】
本明細書に記載の機能または処理の少なくとも一部は、適切なコンピュータ実行可能命令で実施することができる。コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のコンピュータ可読媒体(不揮発性メモリ、揮発性メモリ、DASDアレイ、磁気テープ、フロッピー(登録商標)ディスケット、ハードドライブ、光学記憶装置など、または任意の他の適切なコンピュータ可読媒体または記憶装置など)にソフトウェアコードコンポーネントまたはモジュールとして格納することができる。一実施形態では、コンピュータ実行可能命令は、準拠したC++、Java(登録商標)、HTML、またはR、Pythonおよび/またはExcelなどの任意の他のプログラミングまたはスクリプトコードを含むことができる。さらに、本発明は、本明細書に記載の機能および処理を実行するプロセッサの使用を示す。したがって、プロセッサとは、特定の動作の実行に必要なコンピュータコードを実行するコンピュータチップまたは処理要素を意味すると理解される。
【0023】
さらに、開示された実施形態の機能は、1つのコンピュータ上に実装されてもよいし、ネットワーク内またはネットワークにわたって2つ以上のコンピュータ間で共有/分散されてもよい。実施形態を実施するコンピュータ間の通信は、任意の電子的、光学的、無線周波数信号、または既知のネットワークプロトコルに従う他の適切な方法および通信ツールを使用して達成することができる。
【0024】
「コンピュータ」、「エンジン」、「モジュール」、「プロセッサ」などの用語は、本開示の目的上同義であると理解されるべきである。さらに、本明細書に与えられた例または図は、それらが利用される任意の用語の制限、限定、または定義として決してみなされるべきではない。代わりに、これらの例または図は、単に例示的なものとみなされるべきである。当業者であれば、これらの実施例または図解が利用される任意の用語は、明細書または他の場所に与えられても与えられなくてもよい他の実施形態を包含し、そのような実施形態は全て、その用語の範囲内に含まれるように意図されていることを理解するであろう。
【0025】
ここで、本発明の例示的な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。可能な限り、同じ参照番号は、図面全体にわたって同じまたは同様の部分を指すために使用される。この開示を通じて、他の方法が論理的に要求されない限り、処理または方法が示されまたは記載される場合、方法のステップは、任意の順序でまたは同時に実行され得ることが理解されるべきである。本出願を通じて使用されるように、「あり得る」という言葉は、強制的な意味(すなわち「でなければならない」)ではなく許容的な意味(すなわち、「可能性を有する」ことを意味する)で使用される。
【0026】
図1は、本発明のステップを解析し、モデル化し、実行するためのシステム100を示す。示されるように、システム100は、コンピューティングデバイス102を含む。1つ以上の実装形態では、コンピューティングデバイス102は、サーバ、デスクトップコンピューティングデバイス、ラップトップコンピューティングデバイスなどであってもよい。
図1に示すように、コンピューティングデバイス102は、プロセッサ104と、データベース116を含むデータを格納するためのメモリ106とを含む。
【0027】
プロセッサ104は、コンピューティングデバイス102に処理機能を提供し、任意の数のプロセッサ、マイクロコントローラ、または他の処理システム、およびコンピューティングデバイス102がアクセスまたは生成したデータおよび他の情報を格納するための常駐メモリまたは外部メモリを含むことができる。プロセッサ104は、本明細書に記載の技術を実装する1つ以上のソフトウェアプログラム(例えば、モジュール)を実行することができる。
【0028】
メモリ106は、有形のコンピュータ可読媒体の一例であり、コンピューティングデバイス102の動作に関連する様々なデータ、例えば上述のソフトウェアプログラムおよびコードセグメント、またはプロセッサ104に命令するための他のデータ、および本明細書で説明されるステップを実行するコンピューティングデバイス102の他の要素などを格納するための記憶機能を提供する。
【0029】
コンピューティングデバイス102はまた、コンピューティングデバイス102のユーザに情報を表示するためのディスプレイデバイス108に通信可能に結合される。実施形態において、ディスプレイデバイス108は、LCD(Liquid Crystal Diode)ディスプレイ、TFT(Thin Film Transistor)LCDディスプレイ、LEP(Light Emitting Polymer)ディスプレイまたはPLED(Polymer Light Emitting Diode)ディスプレイなどを含むことができ、テキストおよび/またはグラフィカルユーザインターフェースなどのグラフィック情報を表示するように構成されている。例えば、ディスプレイ108は、ユーザに視覚的出力を表示する。視覚的出力は、グラフィックス、テキスト、アイコン、ビデオ、ユーザからの入力を受信するように構成されたインタラクティブフィールド、およびそれらの任意の組み合わせ(総称して「グラフィックス」)を含むことができる。
【0030】
図1に示すように、コンピューティングデバイス102はまた、1つ以上の入出力(I/O)デバイス110(例えば、キーボード、ボタン、無線入力デバイス、サムホイール入力デバイス、タッチスクリーンなど)に通信可能に結合されている。I/Oデバイス110はまた、マイクロフォン、スピーカなどの1つ以上のオーディオI/Oデバイスを含むことができる。
【0031】
コンピューティングデバイス102は、通信モジュールを通して通信ネットワーク112を介して1つ以上の他のコンピューティングデバイスと通信するように構成されている。通信モジュール114は、様々な通信コンポーネントおよび機能の表現であり得、限定されるものではないが、1つ以上のアンテナ、ブラウザ、送信機および/または受信機(例えば、無線周波数回路)、無線ラジオ、データポート、ソフトウェアインターフェースおよびドライバ、ネットワークインターフェース、データ処理コンポーネントなどを含む。
【0032】
通信ネットワーク112は、様々な異なるタイプのネットワークおよび接続を含むことができ、限定されるものではないが、インターネット、イントラネット、衛星ネットワーク、セルラーネットワーク、モバイルデータネットワーク、有線および/または無線接続などを含む。
【0033】
無線ネットワークは、複数の通信規格、プロトコルおよび技術のいずれかを含むことができ、限定されるものではないが、グローバル移動通信システム(GSM(登録商標):Global System for Mobile Communications)、拡張データGSM環境(EDGE:Enhanced Data GSM(登録商標) Environment)、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA:High-Speed Downlink Packet Access)、広帯域符号分割多元接続(W-CDMA:Wideband Code Division Muliple Access)、符号分割多元接続(CDMA:Code Division Muliple Access)、時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)(例えば、IEEE802,11a、IEEE802.11b、IEEE802.11gおよび/またはIEEE802.11n)、インターネットプロトコル上での音声通信(VoIP)、Wi-MAX(登録商標)、電子メール(例えば、インターネット・メッセージ・アクセス・プロトコル(IMAP)および/またはポスト・オフィス・プロトコル(POP))のためのプロトコル、インスタントメッセージング(例えば、拡張可能メッセージングおよびプレゼンスプロトコル(XMPP)、SIMPLE(Session Initiation Protocol for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions)、および/またはIMPS(Instant Messaging and Presence Service)、および/またはショートメッセージサービス(SMS))、または任意の他の適切な通信プロトコルを含む。
【0034】
次に
図2~
図4を参照して、本発明の態様を組み込んだ例示的な好ましい方法について説明する。これらのステップは特定の順序で提供されるが、ロジックが許す任意の特定の順序で異なるステップが実行されてもよいことを理解されたい。さらに、異なるステップは同時に発生してもよい。
【0035】
図2に示すように、第1の好ましい実施形態による物質をモデル化するための例示的な方法200が提供される。図示のように、例示的な方法200は、システムに物理モデルデータを入力する第1のステップ210を含むことが好ましい。好ましくは、物理モデルデータは、物理モデルの物質、要素および幾何学的形状ならびに初期条件および境界条件を定義するデータを含む。好ましい実施形態によれば、物理モデルデータは、直接的に定義されたかまたは格納された要素を用いて組み立てられた物理データモデルの幾何学的要素を有し、CADシステムなどを介して入力するために定義されてもよい。例示的な単純化したモデル300を
図3Aに示す。
【0036】
物理モデルデータが入力され、初期モデル300が定義された後、物理モデルデータを定義し数値計算を行うために、モデル300をいくつかの積分点に分割することを含む第2のステップ215が実行されることが好ましい。
図3Bに示すように、積分点305は、モデルを均等にカバーすることが好ましく、物理モデルの要素を完全に定義するのに十分な数の積分点を含むことが好ましい。積分点が選択され、定義されると、ステップ220では、各積分点の物質特性が好ましくは定義され、格納される。ステップ223では、駆動変数が選択されることが好ましい。好ましい実施形態によれば、選択された駆動変数は、好ましくは、選択された物質の特性および物質に加えられる力に基づいて決定される。物質の挙動は有限数の変数によって支配されるため、好ましくは、2つまたは3つ未満の駆動変数が選択され得る。さらに好ましい実施形態によれば、駆動変数としての単一のテンソル変数の選択が最適である。
【0037】
ステップ225では、物理モデルの特定の構成モデルに対してエラー許容差が最初に選択される。好ましい実施形態によれば、選択されたエラー許容差は、物理モデルの各セクション、物質または要素ごとに異なることがある。ステップ230では、定義された構成モデルのエラー許容差を用いて、物理モデルの各定義された物質/積分点の駆動変数の履歴が、好ましくは計算され、格納される。その後、ステップ235では、各定義された積分点に対する駆動変数の履歴を検索することが好ましい。ステップ240では、各定義された積分点の駆動変数は次に、好ましくは、定義されたエラー許容差内にグループ化される。ステップ245では、駆動変数の同じ値範囲内の積分点(すなわち、選択されたエラー許容差内の駆動変数の同じ固有の履歴)が、好ましくは同じ構成モデルにマッピングされる。この処理が
図4に示され、選択された領域A1(405および410)内の定義された積分点に対する駆動変数の履歴の各々は、定義されたエラー許容差内にあるそれらの値範囲に基づいてマッピングするために一緒にグループ化されている。同様に、選択領域B1(415および420)内の定義された積分点に対する駆動変数の履歴は、選択領域C1(425)内の積分点と同様に、グループ化されている。本発明によれば、駆動変数の履歴(例えば、変形の履歴)が複数の積分点に対して正確に同じである場合、複数の積分点を同じ構成モデルにマッピングすることによって、解にエラーが導入されることはない。一方、駆動変数の履歴が正確に同じではなく、定義された許容差内である場合、駆動変数の履歴がほぼ同じである全ての積分点を同じ構成モデルにマッピングして、解に許容可能なエラーがもたらされることを犠牲にして、より高い数値的効率を得ることができる。
【0038】
もちろん、この手法は、変数を格納しおよび/またはより多くの計算を実行するためにより多くのメモリを必要とする構成モデルにとって、より効率的である。TRUE Multiscale解析の場合、より短い長さスケール(微細構造)で追加のIB VPを解くことによって物質構成挙動が決定され、すなわち、完全なサブスケールモデルが存在し、それを数値的に解いて物質構成挙動が得られ、この手法による効率性の向上は驚異的で重要なものである。いくつかの場合において、本発明は、そうでなければ扱いにくい大規模なマルチスケールモデルを実行可能かつ実用的なものにするように働く。
【0039】
したがって、本発明では、固有の物質構成モデルを駆動変数の固有の履歴にマッピングすることができる。さらに、本発明によれば、数値的シナリオにおいて、駆動変数の固有の履歴を許容可能な数値的許容差内で定義して、固有の履歴の有限集合を得ることができる。許容差が大きいほど、履歴の有限集合の固有の項目は少なくなる。換言すれば、犠牲になるエラーが大きいほど、より高い効率が得られる。実際的な問題のほとんどにおいて、効率による利得は、履歴の有限集合における近似から生じるエラーよりも桁違いに高い。例えば、機械的/構造的モデルでは、応力は、以下の式によって数学的に記述されるように、変形履歴全体の関数であると仮定される。この場合、歪み尺度e
khは無限小または有限であり、その時間および/または空間派生を使用して、物質点における変形を定義することができる
【数1】
【0040】
好ましい実施形態によれば、変形は、そのような構造物質構成モデルのための駆動変数の好ましい選択である。さらに好ましい実施形態によれば、温度勾配は、そのような熱物質構成モデルのための駆動変数の好ましい選択である。
【0041】
本発明のなおさらに好ましい実施形態によれば、例示的な処理およびアルゴリズムが以下に提供される。
例示的アルゴリズム/ワークフロー
1.初期設定
a.モデル内の各物質に対して、1つの構成モデルのみを作成する。
i.各構成モデルには、ローカル/物質座標系における現在の歪み[Strain]をおそらく分岐/複製された構成モデルにリンクするマップデータ構造が含まれている。このマップを[branchesMap]と呼ぶ。
b.同じ物質の各要素について、前の手順で作成した構成モデルをその積分点の全てに代入する。
2.毎回増分する
a.各積分点について、好ましくは履歴に依存する構成挙動を有し、歪みの固有の履歴にマッピングされる。
i.現在の機械的歪み(駆動変数)、[Strain]をローカル/物質座標系で計算する。
ii.[branchesMap]を更新する
b.各積分点について、好ましくは履歴に依存する構成挙動を有し、歪みの固有の履歴に既にマッピングされているものを除く。
i.マッピングされた固有の歪み履歴、もしあれば所与の[Strain]から逸脱するBranch-off構成モデル
1.[Strain]が積分点の構成モデルにマッピングされている場合
a.[Strain]に対応する構成モデルを使用する。
2.その他
a.現在の構成モデルを複製する。
b.[Strain]を複製された構成モデルにマッピングする。
c.複製された構成モデルを現在の積分点に代入する。
【0042】
当業者にはよく理解されるように、上述のアルゴリズム/ワークフローは、本発明に固有の本発明のステップを主に提供する。したがって、本発明の固有の重要な点をより良く説明するために、いくつかのステップは省略されている。
【0043】
上記の例示的なアルゴリズム/ワークフローの使用により、所与の駆動変数の履歴(すなわち全歪み)が既存のものから逸脱したときに新しい構成モデルが自動的に作成され、それにより固有の構成モデルの数が最小限になる。このように、本発明は、固有の構成モデルにおける計算が繰り返されないため、メモリ要件を最小にし、解の速度を最大にする。
【0044】
ここで
図5および
図6を参照して、本発明の態様を例示するさらなる処理について説明する。
図5に示すように、ビーム500について4点曲げ試験が描写されている。本発明の態様によれば、対称条件のために、対称線505に沿って分割されたモデルを用いて、モデルの半分のみをモデル化する必要がある。この特定の例では、損傷は各固有の構成モデルにおいて開始および成長することが可能であり、物質の構成テンソルを変更するスカラー状態変数によって損傷が表される連続損傷手法によってモデル化されることが好ましい。この特定の例では、損傷状態変数は、歪みテンソルの成分に関して定義される。試験片が破損するまで負荷を徐々に増加させる。本発明の態様によれば、完全な有限要素モデルを使用して、同時マルチスケールシミュレーションにおいて、物質のミクロ構造の構成挙動を抽出することが好ましい。
【0045】
ここで
図6を参照すると、本発明のさらなる態様による処理のために有限要素メッシュが提供されている。図示のように、有限要素メッシュ600は、2567個の三角要素と2567個の積分点を含む。
図6の例によれば、各解/時間ステップ(歪みの履歴)で固有の歪みを区別するための許容差は約10
-4である。本発明によれば、以下に
図7に関して説明する点負荷605に応答して、一組の駆動変数がこれらの積分点から選択され、処理される。
【0046】
ここで
図7を参照すると、積分点705の範囲、駆動変数710および構成変数715の間の関係を示す例示的なチャート700が提供されている。図示のように、構成変数「A」は、積分点「i」、「j」、「k」、...の間で共有され、構成応答「A」のための構成方法/関数は、全ての積分点についてではなく、駆動変数履歴「A」について固有に呼び出される。さらに好ましい実施形態によれば、次にこの処理は、選択された駆動変数の他の履歴について繰り返され、構造全体の単一のモデルを生成する。このようにして、本発明はコンピュータメモリの使用を最小限に抑え、任意の所与の問題を解決するのに必要な時間を短縮する。
【0047】
主題は、構造的特徴および/または処理操作に特有の言語で説明されているが、添付の特許請求の範囲に定義された主題は、必ずしも上記の特定の特徴または動作に限定されないことを理解されたい。むしろ、上記の特定の特徴および動作は、請求項を実施する例示的な形態として開示されている。