(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造
(51)【国際特許分類】
B62K 25/08 20060101AFI20220225BHJP
B62J 45/412 20200101ALI20220225BHJP
B62J 45/423 20200101ALI20220225BHJP
B62K 19/38 20060101ALI20220225BHJP
B62L 1/00 20060101ALI20220225BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20220225BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20220225BHJP
F16D 121/04 20120101ALN20220225BHJP
F16D 131/00 20120101ALN20220225BHJP
【FI】
B62K25/08 Z
B62J45/412
B62J45/423
B62K19/38
B62L1/00 A
F16D65/18
F16F9/32 T
F16D121:04
F16D131:00
(21)【出願番号】P 2019120402
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2020-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509343149
【氏名又は名称】オーリンス・レイシング・エービー
【氏名又は名称原語表記】OEHLINS RACING AB
【住所又は居所原語表記】Box 722, 194 27 Upplands Vaesby, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】林 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ヨンソン,ミカエル
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/064902(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/220202(WO,A1)
【文献】特開昭60-143193(JP,A)
【文献】特開昭59-026384(JP,A)
【文献】特開2006-022947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 19/38,25/08
B62J 45/40,99/00
B62L 1/00
F16D 65/18
F16F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(2)を懸架するフロントフォーク(12)を備え、前記フロントフォーク(12)が、加圧式フロントフォークであって加圧タンク(66k)を備えるとともに、前記フロントフォーク(12)の下端部に、ディスクブレーキ(67)を構成するキャリパ(69)を支持するキャリパブラケット(66a)と、車輪速センサー(85)が取付けられるセンサー取付け部(66r)とを備える鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造において、
前記キャリパブラケット(66a)は、上下一対のキャリパ支持部(66g,66h)を備え、車両側面視で、上下一対の前記キャリパ支持部(66g,66h)間に前記加圧タンク(66k)が配置され
、
前記キャリパブラケット(66a)は、前記前輪(2)の車軸(2a)を支持する車軸支持部(66c)と、前記加圧タンク(66k)と、前記センサー取付け部(66r)と、一体に形成され、
前記車輪速センサー(85)は、車両側面視で、前記加圧タンク(66k)の下側に配置されている
ことを特徴とする鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造。
【請求項2】
前記キャリパブラケット(66a)は、前記車軸支持部(66c)から延びるベース部(66j)と、前記ベース部(66j)の上端部及び下端部から延びる上下一対の前記キャリパ支持部(66g,66h)とを備え、前記加圧タンク(66k)及び前記センサー取付け部(66r)は、前記ベース部(66j)に一体に設けられることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造。
【請求項3】
前記センサー取付け部(66r)は、前記ベース部(66j)の車幅方向内側の面(66p)に形成されることを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造。
【請求項4】
前記加圧タンク(66k)は、前記ベース部(66j)から車幅方向外側に突出する円筒形状を成すことを特徴とする請求項2又は3に記載の鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造。
【請求項5】
前記車輪速センサー(85)は、前記車輪速センサー(85)を保護する保護部材(86)と合わせて前記センサー取付け部(66r)に取付けられることを特徴とする請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造。
【請求項6】
前記ベース部(66j)は、前記車軸支持部(66c)から車体後方に延び、前記ベース部(66j)の下端部は、底面視で三角形状を成す左右一対の突出部(66z)を備え、前記車輪速センサー(85)は、底面視で前記突出部(66z)の幅よりも車幅方向内側に突出し、前記保護部材(86)は、前記車輪速センサー(85)の下方で前記突出部(66z)の側縁(66t)の傾斜に沿った下部延出部(86e)を備えることを特徴とする請求項
5に記載の鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造。
【請求項7】
前記車輪速センサー(85)は、車両側面視で、前記前輪(2)の車軸(2a)の後方に配置されていることを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造。
【請求項8】
前記車輪速センサー(85)の検出部(85b)は、前記車輪速センサー(85)を保護する保護部材(86)に設けられる筒状部(86b)によって周囲が覆われることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造。
【請求項9】
前記車輪速センサー(85)の検出部(85b)の前方に、前記車輪速センサー(85)を前記センサー取付け部(66r)に固定する締結部材(87)が配置されていることを特徴とする請求項
8に記載の鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントフォークの下端部にキャリパブラケットを一体に備え、キャリパブラケットの下端に車輪速センサーを配置した車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、車輪速センサーは、キャリパブラケットの下辺から下方に突出する形状であるため、車輪速センサーが外部に露出している。また、加圧式フロントフォークである場合には、加圧タンクをフロントフォークの下端部に備える場合に、キャリパブラケット、車輪速センサー及び加圧タンクをコンパクトに配置することが望まれる。
本発明の目的は、加圧タンク及び車輪速センサーをコンパクトに配置し、外部に露出すること無く外観性を向上させることが可能な鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造は、前輪(2)を懸架するフロントフォーク(12)を備え、前記フロントフォーク(12)が、加圧式フロントフォークであって加圧タンク(66k)を備えるとともに、前記フロントフォーク(12)の下端部に、ディスクブレーキ(67)を構成するキャリパ(69)を支持するキャリパブラケット(66a)と、車輪速センサー(85)が取付けられるセンサー取付け部(66r)とを備える鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造において、前記キャリパブラケット(66a)は、上下一対のキャリパ支持部(66g,66h)を備え、車両側面視で、上下一対の前記キャリパ支持部(66g,66h)間に前記加圧タンク(66k)が配置されるとともに前記センサー取付け部(66r)が前記加圧タンク(66k)の下側若しくは上側に配置されることを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記キャリパブラケット(66a)は、前記前輪(2)の車軸(2a)を支持する車軸支持部(66c)と一体に形成され、前記キャリパブラケット(66a)は、前記車軸支持部(66c)から延びるベース部(66j)と、前記ベース部(66j)の上端部及び下端部から延びる上下一対の前記キャリパ支持部(66g,66h)とを備え、前記加圧タンク(66k)及び前記センサー取付け部(66r)は、前記ベース部(66j)に一体に設けられるようにしても良い。
【0007】
また、上記構成において、前記センサー取付け部(66r)は、前記ベース部(66j)の車幅方向内側の面(66p)に形成されるようにしても良い。
また、上記構成において、前記加圧タンク(66k)は、前記ベース部(66j)から車幅方向外側に突出する円筒形状を成すようにしても良い。
また、上記構成において、前記車輪速センサー(85)は、車両側面視で、前記加圧タンク(66k)の下側に配置されていても良い。
【0008】
また、上記構成において、前記車輪速センサー(85)は、前記車輪速センサー(85)を保護する保護部材(86)と合わせて前記センサー取付け部(66r)に取付けられるようにしても良い。
また、上記構成において、前記ベース部(66j)は、前記車軸支持部(66c)から車体後方に延び、前記ベース部(66j)の下端部は、底面視で三角形状を成す左右一対の突出部(66z)を備え、前記車輪速センサー(85)は、底面視で前記突出部(66z)の幅よりも車幅方向内側に突出し、前記保護部材(86)は、前記車輪速センサー(85)の下方で前記突出部(66z)の側縁(66t)の傾斜に沿った下部延出部(86e)を備えるようにしても良い。
【0009】
また、上記構成において、前記車輪速センサー(85)は、車両側面視で、前記前輪(2)の車軸(2a)の後方に配置されていても良い。
また、上記構成において、前記車輪速センサー(85)の検出部(85b)は、前記車輪速センサー(85)を保護する保護部材(86)に設けられる筒状部(86b)によって周囲が覆われるようにしても良い。
また、上記構成において、前記車輪速センサー(85)の検出部(85b)の前方に、前記車輪速センサー(85)を前記センサー取付け部(66r)に固定する締結部材(87)が配置されていても良い。
【発明の効果】
【0010】
鞍乗り型車両のフロントフォーク下部構造は、キャリパブラケットが、上下一対のキャリパ支持部を備え、車両側面視で、上下一対のキャリパ支持部間に加圧タンクが配置されるとともにセンサー取付け部が加圧タンクの下側若しくは上側に配置されるので、上下一対のキャリパ支持部間の空間を有効活用して、加圧タンク及び車輪速センサーをコンパクトに配置できるとともに外観性を向上できる。
【0011】
上記構成において、キャリパブラケットは、前輪の車軸を支持する車軸支持部と一体に形成され、キャリパブラケットは、車軸支持部から延びるベース部と、ベース部の上端部及び下端部から延びる上下一対のキャリパ支持部とを備え、加圧タンク及びセンサー取付け部は、ベース部に一体に設けられるので、キャリパブラケットと加圧タンクとを一体にするとともにセンサー取付け部を集約することで、コンパクトなレイアウトにできるとともに、キャリパブラケットと加圧タンクとを別体にする場合に比べてすっきりした外観として外観性を向上できる。
【0012】
また、上記構成において、センサー取付け部は、ベース部の車幅方向内側の面に形成されるので、車輪速センサーが外部に露出しないため、外観性を向上できる。
また、上記構成において、加圧タンクは、ベース部から車幅方向外側に突出する円筒形状を成すので、加圧タンクをベース部から車幅方向内側へ突出しないようにすることで、ベース部内側のスペースを確保でき、車輪速センサーを配置しやすくできる。
また、上記構成において、車輪速センサーは、車両側面視で、加圧タンクの下側に配置されているので、下側のキャリパ支持部の下方から車輪速センサーのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0013】
また、上記構成において、車輪速センサーが、車輪速センサーを保護する保護部材と合わせてセンサー取付け部に取付けられるので、簡単な構造で車輪速センサーの保護が可能であり、また、チッピングなどの外乱から車輪速センサーを保護できる。
【0014】
また、上記構成において、ベース部は、車軸支持部から車体後方に延び、ベース部の下端部は、底面視で三角形状を成す左右一対の突出部を備え、車輪速センサーは、底面視で突出部の幅よりも車幅方向内側に突出し、保護部材は、車輪速センサーの下方で突出部の側縁の傾斜に沿った下部延出部を備えるので、突出部を備えることでベース部の強度を向上させ、突出部を三角形状とすることで突出部の体積を抑えて重量増を少なくでき、また、車輪速センサーが突出する部分を保護部材で覆うことで車輪速センサーの保護も可能になる。
【0015】
また、上記構成において、車輪速センサーは、車両側面視で、前輪の車軸の後方に配置されているので、車軸及び車軸周囲の部品によって車輪速センサーを前方から保護できる。
また、上記構成において、車輪速センサーの検出部は、車輪速センサーを保護する保護部材に設けられる筒状部によって周囲が覆われるので、保護部材の筒状部で車輪速センサーの検出部を保護できる。
また、上記構成において、車輪速センサーの検出部の前方に、車輪速センサーをセンサー取付け部に固定する締結部材が配置されているので、締結部材で車輪速センサーの検出部を前方から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態のフロントフォーク下部構造を備えた自動二輪車を示す左側面図である。
【
図2】フロントフォークの下部及びその周囲を示す斜視図である。
【
図3】フロントフォークの下部及びその周囲を示す左側面図である。
【
図4】車軸支持部材を内面側から見たフロントフォーク下端部を示す右側面図である。
【
図6】
図4の状態から保護カバーを外した状態を示す右側面図である。
【
図9】
図6の状態から車輪速センサーを外した状態を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示している。
図1は、本発明の実施形態のフロントフォーク下部構造を備えた自動二輪車1を示す左側面図である。
自動二輪車1は、車体フレーム10にパワーユニットとしてのエンジン11が支持され、前輪2を支持するフロントフォーク12が車体フレーム10の前端に操舵可能に支持され、後輪3を支持するスイングアーム13が車体フレーム10の後部に設けられる車両である。
自動二輪車1は、乗員がシート14に跨るようにして着座する鞍乗り型車両であり、シート14は、車体フレーム10の後部の上方に設けられる。
【0018】
車体フレーム10は、前端部を構成するヘッドパイプ15と、ヘッドパイプ15から後下方に延びる左右一対のメインフレーム16と、メインフレーム16の後端から下方に延びる左右一対のピボットフレーム17と、メインフレーム16及びピボットフレーム17から後上方に延びる左右一対のシートフレーム18とを備える。
メインフレーム16は、メインフレーム16の前部から下方に延びてエンジン11を支持するエンジンハンガー部(不図示)を備える。
【0019】
フロントフォーク12は、ヘッドパイプ15によって左右に操舵自在に軸支される。フロントフォーク12の上端部には、操舵ハンドル21が設けられる。前輪2は、フロントフォーク12の下端部に設けられる車軸2aに軸支される。
スイングアーム13は、左右のピボットフレーム17に支持されるピボット軸22に軸支される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる。スイングアーム13は、前端部がピボット軸22に軸支され、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪3は、スイングアーム13の後端部に設けられる車軸3aに軸支される。
【0020】
車体とスイングアーム13との間には、リアサスペンション24が掛け渡される。リアサスペンション24の上端は、車体に連結される。リアサスペンション24の上端は、例えば、エンジン11の後端部から後方に延出するサスペンション連結部(不図示)を介し、車体としてのエンジン11に連結される。
リアサスペンション24の下端は、リンク機構25を介し、スイングアーム13、及び、ピボットフレーム17の下端部に連結される。
【0021】
エンジン11は、メインフレーム16の下方でピボットフレーム17の前方に配置され、車体フレーム10に固定される。
エンジン11は、車幅方向に水平に延びるクランク軸27を支持するクランクケース28と、クランクケース28の前部から前上方に延びるシリンダー部29とを備える。シリンダー部29には、シリンダー部29内を往復運動するピストン(不図示)が収容される。シリンダー部29のシリンダー軸線29aは鉛直に対し前傾する。
【0022】
クランクケース28の後部は、変速機(不図示)を収納する変速機ケース部28aである。エンジン11の出力は、上記変速機の出力軸と後輪3とを接続する駆動チェーン30を介し、後輪3に伝達される。
エアクリーナーボックス31は、シリンダー部29の後上方に配置される。エアクリーナーボックス31は、スロットルボディ(不図示)を介し、シリンダー部29の後面の吸気ポートに接続される。
エンジン11の排気管32は、シリンダー部29の前面の排気ポートから下方に引き出され、エンジン11の下方を通って後方に延びる。排気管32の後端は、後輪3の側方に配置されるマフラー33に接続される。
燃料タンク35は、メインフレーム16の上方で、シート14とエアクリーナーボックス31との間に配置される。
エンジン11を冷却するラジエータ36は、エンジン11の前方に配置される。
【0023】
自動二輪車1は、車体フレーム10及びエンジン11等の車体を覆う車体カバー37を備える。
車体カバー37は、前部にカウル38を備える。
カウル38は、フロントカウル40、ミドルカウル41及びアンダーカウル42からなる。
フロントカウル40は、フロントフォーク12の上部及びヘッドパイプ15を前方から覆うとともに、左右一対のヘッドライト44の周囲を覆う。ミドルカウル41は、エンジン11の前部を側方から覆う左右一対のメインカウル46と、左右のメインカウル46の車幅方向外側方に配置された左右一対のアウタカウル47とからなる。アンダーカウル42は、エンジン11を下方から覆う。
車体カバー37は、エアクリーナーボックス31及び燃料タンク35の一部を覆うタンクカバー51と、車体の後部を覆うリアカバー52とを備える。
【0024】
前輪2を上方から覆うフロントフェンダー54は、フロントフォーク12に取付けられる。後輪3の前部を上方から覆うインナーフェンダー55は、スイングアーム13に取付けられる。後輪3の後部を上方から覆うリアフェンダー56は、シートフレーム18の後端部から後下方に延びる。
乗員が足を置くステップ58は、ピボットフレーム17に支持され、ピボットフレーム17の後方に配置される。
フロントカウル40の上部には、中央部に配置されたウインドスクリーン61と、ウインドスクリーン61の車幅方向両側方に配置された左右一対のバックミラー62とが設けられている。
【0025】
図2は、フロントフォーク12の下部及びその周囲を示す斜視図である。
図1及び
図2において、フロントフォーク12は、左右一対の緩衝器であるフォークチューブ63を備える。
フォークチューブ63は、上部を構成するアッパーチューブ64と、アッパーチューブ64の内側にスライド可能に嵌合するロアチューブ65と、ロアチューブ65の下端部に固定された車軸支持部材66とから構成される。ロアチューブ65は、フォークチューブ63の下部を構成する。
前輪2を制動するディスクブレーキ67は、前輪2(詳しくは、前輪2を構成するホイール5)に取付けられたブレーキディスク68と、ブレーキディスク68を挟持して制動可能なブレーキキャリパ69とを備える。
【0026】
ブレーキディスク68は、ホイール5に複数のボルト71で取付けられたディスク本体支持部72と、ディスク本体支持部72の外周部に複数の結合部材73で結合された円板状のディスク本体74とからなる。
ブレーキキャリパ69の内側には、ブレーキディスク68を挟持して押え付ける一対のブレーキパッド76が付設されている。一対のブレーキパッド76は、ブレーキキャリパ69に設けられたピストン(不図示)の押圧力によってブレーキディスク68に押し付けられる。
ディスク本体74は、一対のブレーキパッド76に挟持される部分である。
車軸支持部材66は、後部に、ブレーキキャリパ69を支持するキャリパブラケット66aを一体に備える。
ブレーキキャリパ69は、キャリパブラケット66aに一対のボルト78で締結されている。
【0027】
図3は、フロントフォーク12の下部及びその周囲を示す左側面図である。
車軸支持部材66は、キャリパブラケット66a、車軸支持部66c、フェンダ支持部66dを一体に備える。
車軸支持部66cは、筒状に形成されてロアチューブ65の下端部に嵌合するフォーク下端嵌合部66eと、フォーク下端嵌合部66eの下部に一体に形成された軸支持本体部66fとを備える。
フォーク下端嵌合部66eは、上端部及び下端部の外周面に、それぞれ環状に径方向外側に突出することで補強部となる上環状突出部66u、下環状突出部66vを備える。
【0028】
軸支持本体部66fは、車軸2aが挿入される車軸挿通穴66bが開けられ、車軸挿通穴66bの縁部には、環状に車幅方向両側方に突出する一対の環状側方突出部66w(手前側の環状側方突出部66wのみ図示)を備える。軸支持本体部66fの下端部には、前上がりに形成された左右一対のボルト挿通部66xが設けられ、左右のボルト挿通部66xに形成されたボルト穴にボルト77が挿入される。
左右の環状側方突出部66w及び左右のボルト挿通部66xは、それぞれ車軸挿通穴66bから下方斜め前方に延びるスリット66yによって二分される。
【0029】
キャリパブラケット66aは、車軸支持部66cから一体に後方に延びている。キャリパブラケット66aは、上端部に形成された上部キャリパ支持部66gと、下端部に形成された下部キャリパ支持部66hと、上部キャリパ支持部66g及び下部キャリパ支持部66hのそれぞれの間を接続する中間壁部66jとを備える。
上部キャリパ支持部66g及び下部キャリパ支持部66hには、それぞれボルト78でブレーキキャリパ69が取付けられている。
中間壁部66jには、外側方に突出する円筒状の加圧タンク66kが設けられている。加圧タンク66kは、車軸支持部66c側から後方斜め上方に延びている。
【0030】
加圧タンク66kの内部には、シリンダー穴が形成され、シリンダー穴にフリーピストンが移動可能に挿入されて、シリンダー穴内が、ガス室と油室とに区画されている。
閉空間とされたガス室には加圧されたガスが充填され、油室は、フロントフォーク12内の油室に連通している。これにより、フロントフォーク12内の油室に充填された作動油は、ガス室の加圧されたガスの圧力によって常に正圧に保たれる。この結果、フロントフォーク12内の油室の作動油には、キャビテーションが発生しにくくなり、安定した減衰力を発生させることができる。
左右の軸支持本体部66fからキャリパブラケット66aの下端部の両側面までには、それぞれ側方に突出する左右一対の下端部側方突出部66zが延びている。
【0031】
キャリパブラケット66a及び車軸支持部66cのそれぞれの上端部には、フロントフェンダー54を支持するフェンダ支持部66dが設けられている。
フェンダ支持部66dは、車軸支持部66c(詳しくは、フォーク下端嵌合部66e)の前部上部から上方に延びる前部支持部66mと、キャリパブラケット66a(詳しくは、上部キャリパ支持部66g)から上方に延びる後部支持部66nとからなる。フロントフェンダー54(
図1参照)は、前部支持部66m及び後部支持部66nのそれぞれの上端部にビス81で取付けられている。
【0032】
前輪2の周囲には、前輪2の回転速度を検出する車輪速検出装置83が配置されている。車輪速検出装置83は、前輪2、詳しくはホイール5に取付けられた環状のパルサーローター84と、キャリパブラケット66aの車幅方向内側の面に設けられた車輪速センサー85とを備える。
ここでは、パルサーローター84は、ホイール5の左右一側(左側)に取付けられている。また、車輪速センサー85は、左右一対の車軸支持部材66のうち、左側の車軸支持部材66のキャリパブラケット66aに取付けられている。
パルサーローター84は、ホイール5に複数のボルト71でブレーキディスク68と共締めされた複数のローター取付け部84aと、複数のローター取付け部84aに一体に設けられたドーナツ状で板状の被検知部84bとからなる。
被検知部84bは、周方向に隔てて配置された複数のスリット84cを備える。
車輪速センサー85は、パルサーローター84の回転を検出する。
【0033】
図4は、車軸支持部材66を内面66p側から見たフロントフォーク下端部を示す右側面図、
図5は、
図4のV矢視図である。
図4に示すように、キャリパブラケット66aは、前輪2(
図3参照)、詳しくは、ホイール5(
図3参照)に面する内面66pに平坦部66qを備える。平坦部66pの下部には、センサー取付け部66rが一体に設けられている。センサー取付け部66rは、車幅方向内側(内面66p側)の下端部側方突出部66zの上方に形成されている。
【0034】
図4及び
図5において、センサー取付け部66rには、前輪2(
図3参照)の回転を検出する車輪速センサー85と、車輪速センサー85の一部を覆う保護カバー86とが取付けられている。車輪速センサー85と保護カバー86とは、センサー取付け部66rにボルト87で共締めされている。
車輪速センサー85によって前輪2の回転を検出することで、車輪速センサー85から出力される回転信号が、車体に備えるECU(電子制御ユニット)にて前輪2の回転速度に算出され、自動二輪車1(
図1参照)の各部の制御に利用される。
図3及び
図4において、加圧タンク66k及び車輪速センサー85は、上部キャリパ支持部66gよりも下方で下部キャリパ支持部66hよりも上方の空間90に配置される。
【0035】
図5において、左右の下端部側方突出部66zは、キャリパブラケット66aの底部66sの左右側部を形成する。左右の下端部側方突出部66zの側縁66t,66tは、軸支持本体部66fから車両後方に向かうにつれて次第に間隔が狭くなるように傾斜している。即ち、キャリパブラケット66aの底部66sは、底面視三角形状に形成されている。
このような左右の下端部側方突出部66zを設けることで、
図4において、キャリパブラケット66aと車軸支持部66cとの境界部70aを補強でき、ひいては、車軸支持部材66を補強できる。
車輪速センサー85は、加圧タンク66kよりも下方に配置されている。このように車輪速センサー85を配置することで、キャリパブラケット66aの下端部の下方から車輪速センサー85への作業がし易く、メンテナンスが必要な場合に有利な配置である。
【0036】
図6は、
図4の状態から保護カバー86を外した状態を示す右側面図、
図7は、
図6のVII矢視図である。
図6及び
図7において、車輪速センサー85は、基部85aと、基部85aからパルサーローター84(
図3参照)側に突出する検出部85bと、基部85aから引き出されたケーブル85cとを備える。
基部85aは、長円状の板状部85dと、板状部85dの一端部に一体に設けられた円柱状の基部端部85eとからなり、板状部85dにおいて、車軸支持部材66の車軸挿入穴66b寄りの部分に、ボルト87が通されるボルト挿通穴85fが開けられている。
【0037】
検出部85bは、パルサーローター84(
図3参照)の回転を検出する柱状の部分であり、板状部85dにおいて、ボルト挿通穴85fよりも車軸挿入穴66bから遠い位置に設けられている。
ケーブル85cは、基部85aの基部端部85eからフロントフォーク12、車体フレーム10(
図1参照)に配索されて車体に設けられた上記ECUに接続される。これにより、検出部85bで検出されたパルサーローター84の回転信号が上記ECUに入力される。
【0038】
図7において、車軸支持部材66の上環状突出部66u及び下環状突出部66vにおいて、側方に最も突出する突出部70jは、軸支持本体部66fの内側面70kから距離L1だけ突出する。また、車輪速センサー85の検出部85bは、上記した突出部70kよりも車幅方向内側に突出している。
【0039】
図4及び
図5において、保護カバー86は、車輪速センサー85の周囲を覆っている。詳しくは、保護カバー86は、車輪速センサー85の基部85aを覆う基部覆い部86aと、基部覆い部86aから車幅方向内側に突出して車輪速センサー85の検出部85bの周囲を覆う筒状の検出部覆い部86bとから一体に構成される。
基部覆い部86aは、横覆い部86c、上覆い部86d、下覆い部86e、前覆い部86fを備える。
【0040】
横覆い部86cは、基部85aを側方(車幅方向内側)から覆う。上覆い部86dは、横覆い部86cの上縁から車幅方向外側(センサー取付け部66r側)に延びて基部85aを上方から覆う。下覆い部86eは、横覆い部86cの下縁から車幅方向外側(センサー取付け部66r側)に延びて基部85aを下方から覆う。前覆い部86fは、横覆い部86cの前縁から車幅方向外側(センサー取付け部66r側)に延びて基部85aを前方から覆う。
図5において、下覆い部86eの外縁86gは、下端部側方突出部66zの側縁66tに沿って形成されている。
このような保護カバー86を設けることで、車輪速センサー85を上方、側方、下方及び前方から覆うことができ、車輪速センサー85を保護できる。
【0041】
図8は、
図6のVIII矢視図である。
加圧タンク66kの内側面70hは、中間壁部66jの内面66pにおける平坦部66qの一部を構成し、内側面70hと、内側面70h以外の平坦部66qの部分とは、面一とされている。
車輪速センサー85のケーブル85cは、車輪速センサー85から、平坦部66qを通る平面91と、環状側方突出部66wを通る平面92との間の空間93を通ってフロントフォーク12の上部へ配索される。
このように、車輪速センサー85のケーブル85cを空間93に配索することで、ケーブル85cを前方から車軸支持部材66で保護できる。
また、加圧タンク66kは、車軸支持部66cの上環状突出部66u及び下環状突出部66vの突出部70jよりも車幅方向内側に配置されている。これにより、車軸支持部66cによって前方から加圧タンク66kを保護できる。
【0042】
図9は、
図6の状態から車輪速センサー85を外した状態を示す右側面図である。
キャリパブラケット66aのセンサー取付け部66rは、台座部70b、ストッパ部70c、ねじ穴70d、凹部70eを備える。
図6及び
図9に示すように、台座部70bは、内面66pに形成された平坦部66qから車幅方向内側に一体に突出した部分であり、車輪速センサー85の板状部85dの底面が当てられる。ストッパ部70cは、台座部70cの上縁に一体に形成された部分であり、車輪速センサー85の板状部85dの周面が当てられるストッパ面70fが下端に形成され、ストッパ面70fによって車輪速センサー85が回転止めされる。
【0043】
ねじ穴70dは、台座部70cの前部に形成され、ボルト87がねじ結合される。凹部70eは、台座部70cの後部に形成され、凹部70eによって、車輪速センサー85の基部端部85eがキャリパブラケット66aへ干渉しない。
センサー取付け部66rの後方の平坦部66qにも、車輪速センサー85の基部端部85eのキャリパブラケット66aへの干渉を防止する後方凹部70gが形成されている。
【0044】
以上の
図1、
図3及び
図4に示したように、鞍乗り型車両としての自動二輪車1は、前輪2を懸架するフロントフォーク12を備え、フロントフォーク12が、加圧式フロントフォークであって下端部に加圧タンク66kを備える。また、フロントフォーク12は、下端部に、ディスクブレーキ67を構成するブレーキキャリパ69を支持するキャリパブラケット66aと、車輪速センサー85が取付けられるセンサー取付け部66rとを備える。
【0045】
キャリパブラケット66aは、上下一対のキャリパ支持部(上部キャリパ支持部66g及び下部キャリパ支持部66h)を備える。車両側面視で、上部キャリパ支持部66g、下部キャリパ支持部66h間に加圧タンク66kが配置されるとともにセンサー取付け部66rが加圧タンク66kの下側若しくは上側に配置される。
この構成によれば、上部キャリパ支持部66g、下部キャリパ支持部66h間の空間90を有効活用して、加圧タンク66k及び車輪速センサー85をコンパクトに配置できるとともに外観性を向上できる。
【0046】
また、
図3及び
図4に示したように、キャリパブラケット66aは、前輪2の車軸2aを支持する車軸支持部66cと一体に形成される。また、キャリパブラケット66aは、車軸支持部66cから延びるベース部としての中間壁部66jと、中間壁部66jの上端部及び下端部から延びる上下一対の上部キャリパ支持部66g及び下部キャリパ支持部66hとを備える。加圧タンク66k及びセンサー取付け部66rは、中間壁部66jに一体に設けられる。
この構成によれば、キャリパブラケット66aと加圧タンク66kとを一体にするとともにセンサー取付け部66rを集約することで、コンパクトなレイアウトにできる。また、これとともに、キャリパブラケット66aと加圧タンク66kとを別体にする場合に比べてすっきりした外観として外観性を向上できる。
【0047】
また、
図4に示したように、センサー取付け部66rは、中間壁部66jの車幅方向内側の内面66pに形成される。
この構成によれば、車輪速センサー85が外部に露出しないため、外観性を向上できる。
また、
図2及び
図3に示したように、加圧タンク66kは、中間壁部66jから車幅方向外側に突出する円筒形状を成す。
この構成によれば、加圧タンク66kを中間壁部66jから車幅方向内側へ突出しないようにすることで、中間壁部66jの車幅方向内側の空間90を確保でき、車輪速センサー85を配置しやすくできる。
【0048】
また、
図3に示したように、車輪速センサー85は、車両側面視で、加圧タンク66kの下側に配置されている。
この構成によれば、下部キャリパ支持部66hの下方から車輪速センサー85のメンテナンスを容易に行うことができる。
また、
図4に示したように、車輪速センサー85は、車輪速センサー85を保護する保護部材としての保護カバー86と合わせてセンサー取付け部66rに取付けられる。
この構成によれば、簡単な構造で車輪速センサー85の保護が可能であり、また、チッピングなどの外乱から車輪速センサー85を保護できる。
【0049】
また、
図3及び
図5に示したように、中間壁部66jは、車軸支持部66cから車体後方に延び、中間壁部66jの下端部は、底面視で三角形状を成す左右一対の突出部としての下端部側方突出部66zを備える。車輪速センサー85は、底面視で下端部側方突出部66zの幅よりも車幅方向内側に突出し、保護カバー86は、車輪速センサー85の下方で下端部側方突出部66zの側縁66tの傾斜に沿った下部延出部としての下覆い部86eを備える。
この構成によれば、左右一対の下端部側方突出部66zを備えることで、中間壁部66jの強度を向上できる。また、下端部側方突出部66zを三角形状とすることで下端部側方突出部66zの体積を抑えて重量増を少なくできる。また、車輪速センサー85が突出する部分を保護カバー86で覆うことで車輪速センサー85の保護も可能になる。
【0050】
また、
図3及び
図4に示したように、車輪速センサー85は、車両側面視で、前輪2の車軸2aの後方に配置されている。
この構成によれば、車軸2a及び車軸2aの周囲の部品によって車輪速センサー85を前方から保護できる。
【0051】
また、
図4及び
図5に示したように、車輪速センサー85の検出部85bは、車輪速センサー85を保護する保護カバー86に設けられる筒状部としての検出部覆い部86bによって周囲が覆われる。
この構成によれば、保護カバー86の検出部覆い部86bで車輪速センサー85の検出部85bを保護できる。
【0052】
また、
図5及び
図7に示したように、車輪速センサー85の検出部85bの前方に、車輪速センサー85をセンサー取付け部66rに固定する締結部材としてのボルト87が配置されている。
この構成によれば、ボルト87で車輪速センサー85の検出部85bを前方から保護できる。
【0053】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態において、
図4に示したように、車輪速センサー85を、車両側面視で、加圧タンク66kの下側に配置したが、これに限らず、車輪速センサー85を、車両側面視で、加圧タンク66kの上側に配置しても良い。
また、本発明は、自動二輪車1に適用する場合に限らず、自動二輪車1以外も含む鞍乗り型車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
2 前輪
2a 車軸
12 フロントフォーク
66a キャリパブラケット
66c 車軸支持部
66g 上部キャリパ支持部(キャリパ支持部)
66h 下部キャリパ支持部(キャリパ支持部)
66j 中間壁部(ベース部)
66k 加圧タンク
66p 内面(面)
66r センサー取付け部
66t 下端部側方突出部の側縁
66z 下端部側方突出部(突出部)
67 ディスクブレーキ
69 ブレーキキャリパ(キャリパ)
85 車輪速センサー
85b 検出部
86 保護カバー(保護部材)
86b 検出部覆い部(筒状部)
86e 下覆い部(下部延出部)
87 ボルト(締結部材)