(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】オキサチアジン様化合物を作製する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 291/06 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
C07D291/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019206621
(22)【出願日】2019-11-15
(62)【分割の表示】P 2017551388の分割
【原出願日】2015-12-17
【審査請求日】2019-11-18
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517215814
【氏名又は名称】ガイストリッヒ・ファルマ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】GEISTLICH PHARMA AG
【住所又は居所原語表記】Bahnhofstrasse 40, CH-6110 Wolhusen, Swizerland
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】フィルマン、ロルフ・ヴェー
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-502909(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190355(WO,A1)
【文献】米国特許第03202657(US,A)
【文献】特開昭62-195362(JP,A)
【文献】特開2008-222659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0275032(US,A1)
【文献】ODA, R. et al.,Bulletin of the Institute for Chemical Research, Kyoto University ,1955年,Vol. 33,pp. 117-125
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物2250又は化合物2250と化合物2255の混合物を以下の反応:
【化1】
により調製する方法。
【請求項2】
化合物2250を以下の反応:
【化2】
により調製する方法。
【請求項3】
化合物2244が、以下の通り:
【化3】
化合物2264を反応させて製造される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
化合物2264が、以下の通り:
【化4】
化合物2261を反応させて製造される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
化合物2260
【化5】
をDMF中の塩化チオニル又はオキシ塩化リンで塩素化して化合物2261を製造することを更に含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
ビニルスルホンアミドを用いて、以下の反応:
【化6】
により、化合物2250を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな化合物、新たな化合物を作製する方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オキサチアジン様化合物は、特許文献1、及び特許文献2から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第3,202,657号明細書
【文献】米国特許第3,394,109号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より強力な抗腫瘍活性及び抗菌活性を有し、毒性及び副作用が少なく、腫瘍細胞又は細菌細胞の治療に対する耐性が少ない化合物を提供するため、新たな化合物及びかかる化合物を作製する方法が当該技術分野において現在も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、新たなオキサチアジン様化合物、新たなオキサチアジン様化合物を作製する方法、オキサチアジン様化合物の作製に有用な化合物、及びそれらの使用が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】LN-229細胞での細胞毒性アッセイにおける本発明の一実施形態の抗腫瘍活性をグラフで示す図である。
【
図2】SW480(ヒト大腸腺癌)細胞での細胞毒性アッセイにおける本発明の一実施形態の抗腫瘍活性をグラフで示す図である。
【
図3】(
図3A~
図3C) タウロリジン及びタウルルタム(TT)による処理の後、ネズミのSMA560バルク神経膠腫細胞において誘導された細胞毒性を示す図である。細胞毒性を処理の24時間後(
図3A)及び48時間後(
図3B)に判断した。タウロリジン(34.6μg/ml)及びタウルルタム(19.3μg/ml)に対するEC
50値を下のパネルに示す(
図3C)。データを3回の独立した実験の平均値±SDとして表す。
【
図4】ネズミのSMA560神経膠腫癌幹細胞(CSC)においてタウロリジン及びタウルルタム(TT)により誘導された細胞毒性の図である。データを平均値±SDとして表す。
【
図5】(
図5A~
図5C) タウロリジン(
図5A)、タウルルタム(TT)(
図5B)又はテモゾラミド(
図5C)で24時間処理した後の4名の多形性膠芽腫(GBM)の患者(GBM3番、4番、5番、及び6番)から単離した癌幹細胞において誘導された細胞毒性の図である。データを平均値±SDとして表す。
【
図6】本発明に従って作製された化合物2244のFTIRスペクトルである。
【
図7】本発明に従って作製された化合物2250のFTIRスペクトルである。
【
図8】対照、タウロリジン処理(500μM)、又は化合物2250処理(1000μM)の試料を48時間(Aと標識される欄)処理し、残留する凝集物(Bと標識される欄)を安定性について試験するため濾した、多細胞性膵腫瘍(Panc TuI又はBxPC-3)スフェロイドに対するスフェロイド毒性アッセイの結果を示す図である。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、Panc TuI多細胞性スフェロイド培養物CD133含量のFACS分析の結果を示す図である。
【
図10】
図10Aは、対照又はタウロリジンによる処理に対するMiaPaca2腫瘍体積を示す図である。10Bは、対照又は化合物2250による処理に対するMiaPaca2腫瘍体積を示す図である。
図10Cは、対照又はタウロリジンによる処理に対するPancTu I腫瘍体積を示す図である。
図10Dは、対照又は化合物2250による処理に対するPancTu I腫瘍体積を示す図である。
【
図11】
図11Aは、対照、タウロリジン、又は化合物2250で処理した場合の15日間に亘って観察された原発性膵腫瘍(Bo73)の異種移植片モデルである。
図11Bは、対照、タウロリジン、又は化合物2250で処理した場合の23日間に亘って観察された原発性膵腫瘍(Bo70)の異種移植片モデルである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
或る特定の実施形態によれば、本発明は、オキサチアジン様化合物、また同様にその誘導体、並びにオキサチアジン様化合物及びその誘導体を調製する方法、及びそのための化合物に関する。
【0008】
本発明の或る特定の実施形態によるオキサチアジン様化合物及びその誘導体は、抗腫瘍活性、抗菌活性、及び/又は他の活性を有する。
【0009】
本発明の或る特定の実施形態によるオキサチアジン様化合物及びその誘導体を作製する方法は、抗腫瘍活性、抗菌活性、及び/又は他の活性を有する化合物の作製に対して有利な方法を提供する。或る特定の実施形態では、オキサチアジン様化合物及びその誘導体は、ヒト患者等の被験体の癌及び腫瘍の治療において特に有用である。したがって、或る特定の実施形態ではまた、本発明は、本明細書に記載される化合物を使用する癌及び腫瘍の治療に関する。例えば、膠芽腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫及び脳軟膜転移癌を含む中枢神経系癌、大腸癌、直腸癌及び結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、黒色腫、腎臓癌、肝臓癌、膵癌、胃癌、食道癌、膀胱癌、子宮頸癌、噴門癌、胆嚢癌、皮膚癌、骨癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、リンパ肉腫、腺癌、線維肉腫等の癌、及びそれらの転移が、本発明の或る特定の実施形態による治療に対して考慮される疾患である。薬剤耐性腫瘍、例えば、固形腫瘍、非固形腫瘍及びリンパ腫である薬剤耐性腫瘍を含む多剤耐性(MDR)腫瘍もまた、本発明の化合物を使用する或る特定の実施形態において有用である。現在、本明細書に記載された方法を使用して、あらゆる腫瘍細胞も治療することができると考えられている。
【0010】
腫瘍幹細胞(癌幹細胞(CSC)とも呼ばれる)は、切除の後に転移の形成及び腫瘍の再増殖に対する主な制御因子(drivers)であると考えられる。
【0011】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物は、被験体の腫瘍幹細胞の治療において特に有用である。
【0012】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物は、被験体の膠芽腫腫瘍幹細胞の治療において特に有用である。
【0013】
或る特定の実施形態では、本発明は、酸化ストレス、アポトーシス及び/又は腫瘍部位における新たな血管の成長を阻害することによって(抗血管形成及び抗細管形成)、腫瘍細胞及び/又はCSCを死滅させる、又はそれらの増殖を阻害する。腫瘍細胞及び/又はCSCの死滅に対する主な作用機構は、酸化ストレスである。また、腫瘍細胞及び/又はCSCは、本発明によるアポトーシスによって死滅され得る。より低い血中濃度では、本発明による化合物は、それらの抗血管形成作用及びそれらの抗細管形成作用によって腫瘍細胞の増殖を阻害することに有効であり、またこれらの化合物は、したがって緩和治療に有用である。
【0014】
本発明のオキサチアジン様化合物及びその誘導体は、タウロリジン及びタウルルタムよりも血流中ではるかにゆっくりと代謝される。したがって、同様の効果を達成するために、より低用量のかかる化合物を患者に投与することができる。
【0015】
予想外なことに、以下の通り、タウロリジンへの曝露の数分以内に、腫瘍細胞がアポトーシス細胞死のプログラムを開始することによって反応することがわかった:
1.タウロリジンの腫瘍細胞に対する主な損傷は、蛍光定量的に測定される、活性酸素種(ROS)の増加である。
2.最初の工程としてのタウロリジンによる酸化ストレスの誘導は、グルタチオン又はN-アセチルシステイン等の還元剤の添加によってタウロリジンの抗腫瘍作用を妨げることができるという知見により支持される。
3.高いROSによって腫瘍細胞のミトコンドリアにもたらされた傷害は、それらの膜電位の喪失及びアポトーシス誘導因子(AIF)の放出を結果として生じる。
4.AIFは核に移動させられ、アポトーシス促進性遺伝子の発現を開始し、アポトーシスの目印として原形質膜の泡状突起(blebbing)を生じ、染色質凝縮及びDNA切断を生じる。
5.正常細胞とは対照的に、腫瘍細胞は酸化ストレスに非常に敏感である。これは、正常細胞を傷つけない、広範囲の腫瘍細胞に対するタウロリジンの作用を説明する。
【0016】
また、本発明の化合物は、或る特定の実施形態では、ヒト患者等の被験体における微生物感染症の治療に有用である。或る特定の実施形態に従って治療され得る微生物感染症として、細菌感染症、真菌感染症、及び/又は、ウイルス感染症が挙げられる。
【0017】
癌患者は易感染性の傾向があり、特に手術中及び/又は手術後に微生物感染症に、特にかかりやすくなる。
【0018】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物を、被験体の膠芽腫を治療するために利用する。
【0019】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物を、被験体のS.アウレウス(S. aureus:黄色ブドウ球菌)感染症を治療するために利用する。
【0020】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物を、被験体のMRSAを処理するため本発明に従って利用する。
【0021】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物を、被験体のE.コリ(E. coli:大腸菌)を処理するため本発明に従って利用する。
【0022】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物を、被験体のH.ピロリ(H. pylori:ピロリ菌)を処理するため、及び/又は被験体のH.ピロリと関連する癌(複数の場合がある)を治療するため、本発明に従って利用する。
【0023】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物を、被験体のHIVを処理するため本発明に従って利用する。
【0024】
或る特定の実施形態では、式I:
【化1】
(式中、Rは、H、アルキル等、例えばメチル、エチル、プロピル(例えばイソプロピル)、ベンジル等である)による化合物を本発明に従って利用する。
【0025】
或る特定の実施形態では、新たな化合物2250(テトラヒドロ1,4,5-オキサチアジン-4-ジオキシド又は1,4,5-オキサチアザン-4-ジオキシド)は、本発明に従って調製され、及び/又は利用される。本発明に従って作製された化合物2250に対するFTIRスペクトルを
図8に示す。
【0026】
或る特定の実施形態では、新たな化合物2245は、本発明に従って調製され、及び/又は利用される。
【0027】
化合物2250は、H.ピロリによって引き起こされる若しくはそれと関連する腫瘍を含む胃腫瘍、又は胃への転移の結果としての腫瘍を予防及び治療する。
【0028】
必要とされる化合物の量は、腫瘍サイズに依存する。一実施形態では、本発明は、外科的に腫瘍サイズを減少させ、1以上の上記化合物で処理することを含む。上記化合物は、腫瘍を減少させるため手術の前、手術中、又は手術後に投与されてもよい。本発明による化合物は、限定されないが、ゲル剤、カプセル剤、錠剤、静脈内注射(IV)、腹腔内注射(IP)を含む任意の好適な方法によって、及び/又は腫瘍に直接に投与されてもよい。
【0029】
ゲル剤は、例えば2%~4%(例えば3%)の化合物2250等の本発明の活性化合物を単独で含んでもよく、又は単独で投与若しくは存在してもよいタウロリジン/タウルルタムと組み合わされて含んでもよく、また局所投与用であってもよい。かかるゲル剤を、口及び皮膚の扁平上皮細胞腫瘍を含む皮膚及び口の腫瘍を治療するために使用することができる。また、かかるゲル剤を、膣に対して坐剤で、又はシリンジにより投与することによって子宮頸癌又は子宮頚部異形成を治療するために使用することができる。本発明は、活性化合物を保持する坐剤の組み合わせを含んでいてもよい。
【0030】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤が挙げられる。このような固体剤形では、提供される組成物は少なくとも1つの不活性な薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は充填剤又は増量剤(例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸)、結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアカシア)、保湿剤(例えばグリセロール)、崩壊剤(例えばアガー、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、アルギン酸、或る特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウム)、溶解遅延剤(例えばパラフィン)、吸収促進剤(例えば第四級アンモニウム化合物)、湿潤剤(例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール)、吸収剤(例えばカオリン及びベントナイトクレイ)、及び滑沢剤(例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール固体、ラウリル硫酸ナトリウム)、並びにそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、その剤形は緩衝剤を含んでいてもよい。
【0031】
本開示の化合物、特に化合物2250は、非常に水に溶けやすいことがわかった。或る特定の実施形態では、溶解度を増加させるのにPVPは必要ではない。例えば、3.2%の溶液2250は等張である。これはタウロリジンに対する予想外の利点である。
【0032】
化合物2250等の本発明の化合物(タウロリジン及び/又はタウルルタムの有無にかかわらず)は、該化合物が創傷治癒を妨げないことから、外科的腫瘍学に特に有用である。他のかかる抗腫瘍薬が創傷治癒を妨げ、縫合不全を促進することから、他の抗腫瘍薬の投与は、手術後5週間以上まで遅らせなければならない。かかる問題は、創傷治癒の問題又は縫合不全の問題を伴わずに、手術中及び手術直後に投与することができる、化合物2250等の本発明の化合物によって回避され得る。
【0033】
同様のタイプの固体組成物を、高分子量ポリエチレングリコール等と同様にラクトース、すなわち乳糖等の賦形剤を使用する軟ゼラチンカプセル及び/又は硬充填ゼラチンカプセルの充填剤として採用してもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング剤及び薬学的製剤化技術においてよく知られている他のコーティング剤等のコーティング剤及びシェルを用いて作製することができる。上記コーティング剤は任意に乳白剤を含んでもよく、腸管の或る特定の部分において、任意に遅延して提供される組成物(複数の場合がある)のみを放出するか、又は該組成物を優先的に放出する組成物であってもよい。使用可能な包埋組成物の例として高分子物質及びワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物を、高分子量ポリエチレングリコール等と同様にラクトース、すなわち乳糖等の賦形剤を使用する軟ゼラチンカプセル及び硬充填ゼラチンカプセルの充填剤として採用してもよい。
【0034】
或る特定の実施形態では、カプセル剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ゼラチン及び魚ゼラチンの1以上を含む賦形剤処方を含んでいてもよい。或る特定の実施形態では、カプセル剤はタウロリジン及び/又はタウルルタムとともに化合物2250を含有していてもよい。カプセル剤はリコピン、エラグ酸(ポリフェノール)、クルクミン、ピペリン、デルフィニジン、レスベラトロール、イソチオシアン酸塩、例えばスルホラファン、カプサイシン、及びピペルロングミンの1種以上を更に含有することができる。
【0035】
化合物2250等の本発明の活性化合物を、ゲムシタビン等の化合物と組み合わせてもよい。この組み合わせを、膵癌等の癌を治療するために使用することができる。また、タウロリジン及び/又はタウルルタムを、例えば膵癌を治療するためゲムシタビンと組み合わせてもよい。
【0036】
或る実施形態では、栄養学上の癌の予防及び治療の製品は、100mg~500mgの化合物2250を単独で、又は100mg~500mgのタウロリジン及び/又はタウルルタムと、また1以上のリコピン、例えば20mg~200mgのエラグ酸(ポリフェノール)、クルクミン、ピペリン(20mg~200mg)、デルフィニジン、レスベラトロール、イソチオシアネート(スルホラファン、カプサイシン、及びピペルロングミン)と組み合わせて含んでもよい。
【0037】
予想外なことに、上記化合物が他の化学療法剤のように創傷治癒を阻害しないことから、手術中及び手術直後に上記化合物を投与することができる可能性があることがわかった。
【0038】
予想外なことに、タウロリジン、タウルルタム、並びにオキサチアジン様化合物及びその誘導体が腫瘍幹細胞を死滅させることがわかり、それは化学療法剤のなかでも非常にまれであり、おそらく知られていない。典型的な化学療法剤は、腫瘍幹細胞に対して有効である場合、一般的にはヒト患者に極めて有毒である非常に高用量でのみ有効である。
【0039】
予想外なことに、腫瘍細胞を死滅させるため必要とされるよりも低用量のタウロリジン及び/又はタウルルタムが腫瘍幹細胞を死滅させたことがわかった。
【0040】
予想外なことに、オキサチアジン様化合物及びその誘導体が、タウロリジン及びタウルルタムの半減期よりも著しく長いヒト血液中における半減期を有することがわかった。したがって、これらの化合物は、患者の血流からそれほど急速に取り除かれず、その結果として、身体のクリアランス機構によって引き起こされる薬効の喪失を効果的に遅らせる。
【0041】
予想外なことに、或る特定のオキサチアジン様化合物及びその誘導体が、組織へ直接適用された場合、灼熱感を減少し、これはタウロリジンで処理された患者でこの作用が観察されたのとは異なっていることがわかった。
【0042】
予想外なことに、オキサチアジン様化合物及びその誘導体が、高い水溶性、経口及び静脈内注射(i.v.)を含む幅広い投与経路、延長された安定性及び半減期、並びに灼熱感の副作用の減少を含む、特に有利な特性の組み合わせを有することがわかった。
【0043】
このように、化合物2250の半減期は、ヒト血液中で24時間超であり、同じ試験を使用して約30分間であることが分かったタウロリジンの半減期より著しく長い。
【0044】
一実施形態では、本発明は、投与の約5分以内に化合物2250のベースライン血中濃度をもたらす、患者に化合物2250を投与することによって患者を治療することを含む。上記方法は、患者における化合物2250の血中濃度を約20時間に亘ってベースライン血中濃度の約80%に維持することを含む。
【0045】
一実施形態では、本発明は、血中濃度をベースライン血中濃度の80%に維持するため、化合物2250の1日投与量を毎日1回投与することによって、患者における抗腫瘍化合物の血中濃度を約20時間に亘って患者のベースライン血中濃度の約80%に維持することを含む。
【0046】
1日投与量は、約0.1g~約100g、例えば約5g~約30gであってもよい。1日投与量は、経口投与可能な組成物の形態で投与されてもよい。1日投与量は、カプセル剤、錠剤、又は薬学的に許容可能な溶液の形態で投与されてもよい。1日投与量は、約0.01重量/体積%~約3重量/体積%の濃度で化合物2250を含む形態で投与されてもよい。1日投与量は、約0.01μg/ml~約1000μg/mlの濃度で化合物2250を含む形態で投与されてもよい。1日投与量は、1以上の可溶化剤、例えば多価アルコールを含む形態で投与されてもよい。
【0047】
或る実施形態では、上記化合物は、約0.01μg/ml~約1000μg/mlの濃度で組成物において投与される。或る実施形態では、上記化合物は、約1μg/ml~約100μg/mlの濃度で組成物において投与される。或る実施形態では、上記化合物は、約10μg/ml~約50μg/mlの濃度で組成物において投与される。また、上記組成物は、約0.01μg/ml~約1000μg/ml、約1μg/ml~約100μg/ml、又は約10μg/ml~約50μg/mlのタウロリジン及び/又はタウルルタムを含んでもよい。
【0048】
或る実施形態では、上記化合物は約0.01%~約3%の濃度で組成物において投与される。或る実施形態では、上記化合物は約0.1%~約2.5%の濃度で組成物において投与される。或る実施形態では、上記化合物は約1%~約2%の濃度で組成物において投与される。上記組成物は、約0.01%~約3%、約0.1%~約2.5%、又は約1%~約2%のタウロリジン及び/又はタウルルタムを更に含んでもよい。
【0049】
一実施形態では、オキサチアジン様化合物及びその誘導体は、腫瘍幹細胞を死滅させるためタウロリジン及び/又はタウルルタムを用いる併用療法として投与されてもよい。かかる実施形態によれば、予想外なことに、併用療法は、腫瘍幹細胞を死滅させるため、通常の腫瘍細胞を死滅させるのに必要とされるよりも低用量の薬物を必要とすることがわかった。
【0050】
或る特定の実施形態では、オキサチアジン様化合物及びその誘導体は、該化合物の抗腫瘍効果の増加をもたらすビタミンD3と共に投与されてもよい。
【0051】
一実施形態では、上記化合物は、約0.1g~約100g、約1g~約80g、約2g~約50g、又は約5g~約30gの総1日投与量で被験体に投与される。
【0052】
上記化合物の有効量は、約0.1mg/kg~1000mg/kg、好ましくは1日当たり150mg/kg~450mg/kg、最も好ましくは1日当たり300mg/kg~450mg/kgの範囲の投与単位である。
【0053】
本明細書で使用されるように、純粋の用語は、不純物及び汚染物質について少なくとも約80%純粋な物質を指す。或る実施形態では、純粋の用語は、不純物及び汚染物質について少なくとも約90%純粋な物質を指す。或る特定の実施形態では、純粋の用語は、不純物及び汚染物質について少なくとも約95%純粋な物質を指す。或る実施形態では、純粋の用語は、不純物及び汚染物質について少なくとも約99%純粋な物質を指す。或る実施形態では、純粋の用語は、不純物及び汚染物質について少なくとも約99.5%純粋な物質を指す。
【0054】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物、組成物及び方法は、微粒子化された化合物の使用を包含する。或る実施形態では、本明細書で使用される「微粒子化」の用語は、約0.005ミクロン~100ミクロンの範囲の粒子径を指す。或る特定の実施形態では、本明細書で使用される「微粒子化」の用語は、約0.5ミクロン~50ミクロンの範囲の粒子径を指す。或る特定の実施形態では、本明細書で使用される「微粒子化」の用語は、約1ミクロン~25ミクロンの範囲の粒子径を指す。例えば、薬物粒子のサイズは、約1ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、又は25ミクロンであってもよい。
【0055】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物、組成物及び方法は、ナノ粒子の使用を包含する。本明細書で使用される「ナノ粒子」の用語は、1000ナノメートル(nm)未満の直径を有する任意の粒子を指す。或る実施形態では、ナノ粒子は300nm未満の直径を有する。或る実施形態では、ナノ粒子は100nm未満の直径を有する。或る実施形態では、ナノ粒子は50nm未満、例えば約1nm~50nmの直径を有する。注射又は点滴に適した製剤は、化合物濃度が増加した溶液を提供するために、1以上の可溶化剤、例えばグルコース等の多価アルコールを含む等張液を含んでもよい。かかる溶液は、欧州特許第253662号に記載されている。上記溶液は、リンゲル溶液又はリンゲル乳酸塩溶液によって等張性を付与されてもよい。かかる溶液中の化合物の濃度は、1g/リットル~60g/リットルの範囲であってもよい。
【0056】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物の作製に対する例示的な化合物及び方法として、以下が挙げられる。
【化2】
【0057】
上記化合物は、結晶形態、例えば結晶化の後、及び/又は、アルコール、ケトン、エステル又はそれらの組み合わせにおける再結晶の後であってもよい。例えば、本発明の化合物は、結晶化されてもよく及び/又はエタノール等のアルコールから再結晶されてもよい。
【0058】
本発明の例示的な化合物として以下が挙げられる。
【化3】
【0059】
ナノ粒子の形態で使用される場合、本発明の化合物はより高い血液レベルを達成することがわかった。一実施形態では、本発明は、化合物2250を単独で、又はタウロリジン及び/又はタウルルタムと組み合わせて含む。例えば、本発明は、カプセルに封入された本発明の化合物のナノ粒子を含む。
【0060】
或る特定の実施形態では、また本発明は上記化合物の本明細書に記載される活性を、例えば上記活性の少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%以上有する、上記の化合物の誘導体に関する。
【0061】
或る特定の実施形態では、また本発明は、上記化合物の薬学的に許容可能な溶液を含む、本明細書に記載される化合物を含む組成物、及び上記組成物を含むカプセル剤及び錠剤等の経口投与可能な組成物に関する。
【0062】
或る特定の実施形態では、本発明の化合物を、任意の好適な手段により、例えば溶液で、例えば点滴静注等によって、局所的に、全身的に被験体又は患者に投与することができる。
【化4】
【0063】
出発物質:
イセチオン酸、
特に硫酸カルビル(Carbylsulfat)、タウリン、タウリンアミド、
システイン、イセチオン酸
【0064】
合成1
I.
a.硫酸カルビルを介したイセチオン酸
【化5】
【0065】
b.タウリンを介したイセチオン酸
システイン、タウリンを介した生合成
【化6】
【0066】
化学合成
重亜硫酸塩を用いたエチレンオキシド
【0067】
II.イセチオン酸アミド(Isethionic Amide)HO-CH
2-CH
2-SO
2-NH
2
a.
【化7】
【0068】
【0069】
2250の代替可能な化学合成工程
a)スルファミン酸
【化9】
【0070】
b)パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン、ホルミン、ウロトロピン)
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
2250及び2255の幾つかの代わりの合成工程
I.出発物質2250/2255
a.
【化16】
【0078】
b.硫酸カルビル+H
2O
【化17】
エチレンオキシド+亜硫酸水素ナトリウムからのイセチオン酸ナトリウムの合成
【0079】
【0080】
【0081】
例示的な合成プロトコル
I.2244の合成
【化20】
【0082】
2.15gの純粋な1907を100mlの酢酸エチルエステルに溶解し、0.5gのパラジウム/活性炭を使用して触媒した。その溶液を、室温及び大気圧で水素化した。水素化を約15時間後に完了し、水素の吸収量は450mlであった。
【0083】
水素化を各回窒素で3回排気した後、濾過助剤(ケイ藻土)を通して反応混合物を濾過した。無色透明の酢酸エチル溶液をロータリーエバポレータで濃縮乾固させた。
収量:1.25g、結晶化した2244により接種した(innoculated)。
融点:42℃~44℃
IR:2244に対応し、99.3%純粋。
【0084】
【0085】
5g(0.023mol)の2264/1907を、還流下で3時間に亘って50mlの濃HCl中で沸騰させた後、室温まで冷却させて、分液漏斗において30mlのジクロロメタンで分離した。水相をロータリーエバポレータで蒸発させ、乾燥させた。黄色の油が残り、2244結晶を用いて接種した後、ゆっくりと結晶化した。
IRは物質2244に相当する。
酢酸エチルから再結晶化した。
0.7gを得た(24%)。
融点:44℃~45℃
IRは参照物質に相当する。
【0086】
III.2244の合成
【化22】
(式中、Phはフェニル基である)
【0087】
230mgの2269を2mlのNaOH(1N)に溶解し、15分間還流凝縮器で沸騰させて還流させた。透明な溶液を20℃に冷却し、塩酸で酸性化した。得られた沈殿を真空下で濾過し、乾燥させた。
収量:110mg
融点:114℃~116℃。
IRは、副生成物として99%の安息香酸を示した。
【0088】
酸性溶液をロータリーエバポレータ上で濃縮乾固し、固体を酢酸エステルと共に沸騰させた。酢酸エチル溶液を濾過し、真空下で濃縮乾固した。
重量:110mg。油は油で汚染され、2244(イセチオン酸アミド)に対するIRピークは不明瞭であった。
110mgを酢酸エステルから再結晶化した。
収量:65mg、融点:43℃~45℃
IRは52%の2244に相当した。
【0089】
IV.2244の合成
【化23】
(式中、Phはフェニル基である)
【0090】
1.15gの2269を、10mlのNaOH(1N)に溶解し、15分間沸騰させて還流させた。透明な溶液を20℃に冷却し、塩酸で酸性化した。得られた沈殿を真空下で濾過し、乾燥させた。
収量:0.5mg
融点:114℃~116℃
IRは、対照物質としての82%の安息香酸副生成物を示した。加水分解は完了していない。
【0091】
酸性溶液をロータリーエバポレータ上で濃縮乾固し、固体を酢酸エステルと共に沸騰させた。酢酸エチル溶液を濾過し、真空下で濃縮乾固した。
重量:0.8g。油は油で汚染され、2244(イセチオン酸アミド)に対するIRピークは不明瞭であった。
0.8gを酢酸エステルから再結晶化した。
収量:160mg、融点:43℃~45℃
IRは26%の2244に相当した。
【0092】
【0093】
215gの0.1mol 2264及び1000mlの濃塩酸(約36%)を還流下で30分間、共に沸騰させた。2264は溶解し、油層が存在した。反応混合物を冷却し、分液漏斗に移し、そこで水相から油を分離した。イセチオン酸アミド(2244)を溶解させる酸性水溶液を、ほぼ乾燥するまでロータリーエバポレータで50℃にて濃縮した。黄色の油性残渣を一晩冷蔵庫に入れ、32.3gの透明な結晶を真空下で濾過した。融点43℃~45℃。
IR:酸素中、
図7に示されるように次の波数、655.82cm
-1、729.12cm
-1、844.85cm
-1、898.86cm
-1、947.08cm
-1、1003.02cm
-1、1060.88cm
-1、1134.18cm
-1、1236.41cm
-1、1288.49cm
-1、1317.43cm
-1、1408.08cm
-1、1572.04cm
-1、3105.5cm
-1、3209.66cm
-1、3313.82cm
-1、及び3427.62cm
-1にピークを有する。
【0094】
母液を完全に乾燥するまで濃縮した。
【0095】
【0096】
21.5gの0.1mol 2264及び100mlの濃塩酸(約36%)を、還流下で30分間、共に沸騰させた。油層が形成され、分液漏斗において反応混合物を冷却し、そこで水相から油を分離した。イセチオン酸アミド(2244)が溶解された酸性水溶液を塩化メチレンと共に2回振蕩し、塩化メチレンを分離し、酸性水溶液を50℃にてロータリーエバポレータで濃縮乾固した。黄色の油性残渣を一晩冷蔵庫に入れ、12.3gの油を得た。融点:41℃~43℃。生成物の分析は、IRによって2244に99.8%相当することを示した。
【0097】
蒸留実験:
12.3gを高真空下で蒸留した。
外部温度 内部温度 真空
190℃~210℃ 183℃~186℃ 0.1mm
重量:室温で固体であった9.3gの油。融点:43℃~45℃。
【0098】
【0099】
2.0gの純粋な化合物1907を200mlの酢酸エステルに溶解し、0.5gのパラジウム/活性炭を添加し、該混合物を100℃でオートクレーブして、50℃で水素化した。6時間の実行時間の後、反応混合物を一晩冷却し、その後、濾過して真空下で濃縮乾固した。
【0100】
重量:1.7gの油-CH2Cl2の添加及び振蕩の後、放置し、-その後、吸引濾過して重量:0.6g、融点約40℃を有する結晶性固体を得た。
分析のため、0.2gの酢酸エステルを2回添加して結晶化させた。融点 43℃~44℃。
【0101】
【0102】
2.15gの純粋な1907を100mlの酢酸-エチルエステルに溶解した後、0.5gのパラジウム/活性炭に添加した。その後、該混合物を室温及び大気圧で水素化した。水素化をおよそ15時間後に終了した。水素の吸収量はおよそ450mlであった。その後、水素を窒素で3回排気し、流した(flushed)後、各反応混合物をケイ藻土(セライト)を通して濾過した。無色透明の溶液である酢酸エチルを、ロータリーエバポレータで蒸発乾固させた。
【0103】
重量:2244の結晶を用いて接種した後、結晶化した1.25gの油。
融点:42℃~44℃
IR:99.3%の2244に相当する。
【0104】
【0105】
1.2gの純粋な2245を、60℃で完全に溶解する150mlの酢酸に溶解した。0.3gのパラジウム/活性炭を添加し、75℃で撹拌し、該混合物を大気圧で水素化した。
【0106】
水素化を7日後に停止した。水素の吸着量はおよそ480mlであった。
【0107】
水素を窒素で3回排気してパージした。その後、70℃で濾過助剤(ケイ藻土)を通して反応混合物を濾過した。透明で温かい氷酢酸溶液を室温まで冷却し、白色結晶を吸引濾過した。
重量:0.74g、融点:225℃~227℃
IR:2245は出発原料に相当する。
【0108】
母液をロータリーエバポレータで濃縮乾固した。
重量:0.38gの不純な材料を酢酸エチルで抽出した。該溶液を濃縮した。
【0109】
酢酸エチル可溶性部分:昇華によって得られた半固体物質;数滴の水から再結晶して得られた0.15gの半固体物質
収量:70mg、融点:95℃~98℃
IRは98%の2250に相当した。
【0110】
X.高収率の2-ベンジルエーテルエタンスルホン酸ナトリウムの1段階合成
【化29】
【0111】
10.5gの2-ブロモエタンスルホン酸ナトリウムを、110mlのベンジルアルコール及び1.15gのナトリウムベンジルオキシドの溶液に添加した。
【0112】
その後、混合物を還流下で4回沸騰させた。その後、該混合物を真空下で濃縮乾固した後、エチルアルコールと共に3回沸騰させた。アルコールを濾過し、濃縮乾固した。
【0113】
収量は9.8gであり、UV及びIRによって確認された。
【0114】
得られたエチルアルコール中の2-ベンジルエーテルエタンスルホン酸ナトリウムを沸騰させ、濾過した後、該溶液を冷却して溶液から純粋な2-ベンジルエーテルエタンスルホン酸ナトリウム結晶を結晶化させることによって純結晶を得た。
【0115】
【0116】
6.3gのビニルスルホンアミド(2258由来)、50mlの濃ギ酸、及び1.1gのパラホルムアルデヒドを、還流しながら2時間に亘って化合させて化合物2250を産生した。その後、透明な酸性溶液をロータリーエバポレータで濃縮乾固した。
【0117】
残渣は、5.9gの淡黄色のハチミツ様のシロップである。
IR:ビニルスルホンアミドと2250との混合物
2グラムを昇華させ、僅かな結晶を得た。
半固体物質の昇華:IR:98%の2250に対応する。
【0118】
【0119】
ホルミルイセチオン酸塩化物を50mlのクロロホルムに入れ、350mlのスルホン化フラスコに入れて-10℃まで冷却した。その後、25%のアンモニアガスを導入した。アンモニアガスの導入後、クロロホルム/NH3の重量は5gであることがわかった。-3℃から2℃まで、上記混合物をゆっくり撹拌した。
【0120】
9.0gの蒸留した2249に20mlのクロロホルムを滴加した。NH4Clが直ちに沈殿した。その後、塩化アンモニウムを真空下で濾過し、透明なクロロホルム溶液を乾燥するまでロータリーエバポレータで濃縮した。
収量:6.3gの透明で薄い油。
IR:96%のCH2=CH-SO2-NH2(ビニルスルホンアミド)に対応する。
【0121】
【0122】
300g(1.26mol)の2260を、KPG撹拌機を備える750mlの多頸フラスコに計量した。415mlのトリクロロエチレン+オキシ塩化リン(密度は10%のPOCl3中約1.47に相当する)、並びに150mlのオキシ塩化リン及び5.7mlのDMFを撹拌しながら105℃まで温めた。該混合物を5時間反応させた。
【0123】
固体を真空によって濾過し、液体を水ポンプ真空下で蒸留した。濾過ケーキを酢酸エチルで洗浄した。トリクロロエチレン及びオキシ塩化リンを蒸留して取り除いた後、洗浄-アセテートをフラスコへ移し、再度蒸留した。
【0124】
250g(1.07mol-85%)の黄色の液体を収集した。IRは2261に相当する。
【0125】
【0126】
XV.化合物2250及び関連の化合物の新たな合成スキーム:
出発物質:
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【0127】
化合物(テトラヒドロ-オキサチアジン-ジオキシド):
【化38】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
合成:
83.9gのビニルスルホン酸ナトリウムを400mlのベンジルアルコールの溶液に添加し、0.5gのナトリウム(触媒量)を添加した。該混合物を撹拌しながら150℃まで温め、大半のビニルスルホン酸ナトリウムが溶液に溶解した。3時間後、上記混合物を一晩冷却し、厚い固体(thick solid)が結晶化した。この固体を真空濾過した後、エチルアルコール中に懸濁し、真空濾過して乾燥させた。
収量:94.0g、IR:所望の化合物(61.2%純粋)に相当する。
【0132】
【0133】
60グラムのビニルスルホン酸ナトリウムを、1000mlのベンジルアルコール及び0.5gのナトリウムの溶液に添加した。その後、全混合物を還流下で撹拌し、加熱した。およそ3時間後、過剰量のベンジルアルコールを真空によって蒸留して除去し、残りをアルコールと共に沸騰させた。アルコール溶液を濾過し、濃縮し、約1/2まで結晶化した。37.3gの黄色の綿花様物質が得られた。
【0134】
また、上記手順を250gのビニルスルホン酸ナトリウム及び2リットルのベンジルアルコールを用いて繰り返し、上記の通り処理し、約208gを結晶化した。
【0135】
また、上記手順を100gのビニルスルホン酸ナトリウム及び1リットルのベンジルアルコールを用いて繰り返し、上記の通り処理し、約105gを結晶化した。
【0136】
また、上記手順を200gのビニルスルホン酸ナトリウムを用いて繰り返し、上記の通り処理し、約130gを結晶化した。
【0137】
【0138】
6.7gの1905(再結晶化)を50mlの塩化チオニル及び1mlのジメチルホルムアミドに添加した。ナトリウム塩は直ちに溶解し、該混合物を40℃~50℃に加熱し、20℃で一晩放置し、濃縮されるまで真空にした(vacuumed)。収量:9.8g、それを50mlのNaOH 2Nに添加して、十分撹拌した。NaOH溶液をCHCl3で洗浄した後、濃HClと共に振蕩して沈殿させ、Na2SO4で捕捉した後、乾燥して蒸留した。
【0139】
上記プロセスを、1000mlの塩化チオニル及び10mlのジメチルホルムアミドと混合した208gの1905を用いて繰り返した。上記混合物を還流し、過剰量の塩化チオニルを乾燥するまで蒸留して取り除いた。収量は250gであり、上記のように処理した。
【0140】
【0141】
9.8gの1906をクロロホルム(CHCl3)(混濁)に溶解し、150mlの濃アンモニア水の一部に濃縮して、撹拌した。撹拌を40℃~50℃に加熱しながら、3時間継続した。その後、該混合物を真空下で乾燥し、濃縮した。
収量:3.1gの黒っぽい油
【0142】
3.1gの黒っぽい油を50mlのNaOH 2Nに添加し、十分撹拌した。NaOH溶液をCHCl3で洗浄した後、濃HClと共に振蕩して沈殿させ、Na2SO4で捕捉した後、乾燥し、蒸留した。収量:2.5gの油
【0143】
分析のため、0.5gの試料を160℃の温度で濃縮して固体とし、酢酸エチル/ベンゼンから3回結晶化した。
融点:75℃~76℃
分子式:C9H13NO3S
MW:215.2
算出値:C=50.23%、H=6.09%、N=6.51%、S=14.86%
実測値:C=50.14%、H=6.15%、N=6.35%、S=14.79%
【0144】
【0145】
1.2gの1907を200mlの酢酸エチルに溶解し、0.4gのPd活性炭を添加した。該混合物を4時間に亘って100℃及び50℃で水素化オートクレーブ(hydrogenated autoclave)において水素化した。該混合物を室温にて週末の間、圧力下で放置した。その後、酢酸エチル溶液を濾過し、真空下で乾燥させた。
収量:1.1gの油。
【0146】
【0147】
2グラムの1907を200mlの酢酸エチルに溶解し、0.5gのPd/パラジウム/活性炭を添加した。該混合物を100℃及び50℃で高圧オートクレーブにおいて水素化した。6時間後に、該反応混合物を一晩冷ました後、濾過して、残油に乾燥するまで真空下で蒸留させた。
収量:1.7gの油。
CH2Cl2を添加し、撹拌して放置し、結晶化させ、真空下で吸引により分離した。
重量:0.6g、融点約40℃。
分析:
酢酸エチルから0.2gを2回再結晶化した。
融点:43℃~44℃
分子式:C2H7NO3S
MW:125
算出値:C=19.22%、H=5.65%、N=11.21%、S=25.65%
実測値:C=19.20%、H=5.67%、N=11.07%、S=25.73%
【0148】
XXII.1909の合成
19.9グラムの1906を100mlのクロロホルムに溶解し、23グラムの純粋なベンジルアミン及び200mlの純粋なクロロホルムの溶液に添加した。直ちに、ベンジルアミン塩酸塩が沈殿し、反応混合物は温かくなった。その後、該混合物を還流し、塩酸塩化合物を吸引によって分離して、透明なCHCl3母液を乾燥のため真空に置いた。
【0149】
収量:ゆっくりと固体になった27gの黄色の透明の油。
【0150】
その27gを約20mlの酢酸エチルに溶解し、該溶液がほぼ混濁するようにN-ヘキサン(適量)を添加した。該混合物を冷却しながら一晩放置すると、結晶化した。
収量:9.2g、融点:50℃~53℃
【0151】
分析のため、n-ヘキサン中1gを3回再結晶化した。融点56℃~57℃。
【0152】
【0153】
0.675molのイセチオン酸ナトリウム塩(100.0g)及び2.02molの塩化ベンジル(233mL)を、KPG撹拌機を備えた750mLの多頸フラスコにおいて混合した。上記混合物を、70℃の内部温度(95℃の外部温度)で加熱した後、トリエチルアミン(120mL)を1時間に亘って滴加して、外部温度を125℃まで上昇させ、維持した。その後、外部温度は140℃まで上昇し、内部温度は130℃まで上昇した。固体が撹拌機に密集したが、懸濁液へと戻った。塩酸の蒸気が発生した。
【0154】
30mLのトリエチルアミンを滴加した後、更に1.5時間反応させた。粘着性の黄色がかった懸濁液を形成した。生成物を内部温度50℃まで冷却した後、300mLの水を添加し、20分間激しく撹拌して、該混合物を2Lの分液漏斗に移した。その後、フラスコを100mLの水で濯いだ。
【0155】
合わせた水相を、280mLのジクロロメタンで2回洗浄した。
【0156】
水相を、該溶液が飽和されるまで、KCl(約130gのKCl)を添加する間、40℃に保持した。襞付き濾紙を通して該混合物を濾過し、冷蔵庫に一晩保存した。
【0157】
残った固体を抽出し、乾燥して30.85g、収率17.9%を得た。
IR:前駆物質に類似するOHバンドが存在する。
【0158】
母液をKClで再び処理し、一晩冷蔵庫(35℃~40℃)に保存した。
【0159】
KClによる2回目の沈澱に由来する固体を濾過して乾燥させ、60.0g=34.9%を生じ、IRは所望の生成物に相当する。
【0160】
固体1:150mLのEtOHと共に沸騰させ、熱い間に濾過した。
【0161】
KClによる沈澱、沸騰及び結晶の繰り返しによって、32gの生成物を19%の収率で得た。
【0162】
【0163】
それ以上気体が生成しなくなるまで、40gの塩酸タウリンアミド、18gの亜硝酸ナトリウム及び300mlの蒸留水を、還流下で共に沸騰させた。その後、透明な黄色の溶液を50℃まで冷却した。
【0164】
30mlの1N NaOHを、10.5gのアセトアルデヒドに添加した。透明な黄色の溶液を週末真空下に放置し乾燥させた。結果は、重さ37.6gの赤さび色のハチミツのような残渣であり、それをエチルアルコールで抽出した。アルコール溶液を濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮乾固させた。得られた濃厚な油の残渣を、酢酸エチルで溶解させた。酢酸エチル溶液を濾過し、濃縮した。
【0165】
これは、30.7gのさびのような色の密度の高い油を生じた。その密度の高い油から白色結晶を単離した。融点は約114℃~116℃である。
【0166】
IRスペクトルは、得られた化合物が化合物2256の構造を有していることを確認した。
【化49】
【0167】
或る特定の実施形態では、当該技術分野で知られている実験用ガラス器具を備える昇華装置を、本発明による化合物を精製するための昇華技術において使用してもよい。或る特定の実施形態では、昇華容器を、真空下、及び減圧下で加熱する。化合物は、揮発し、不揮発性の残留不純物を残して、冷却された表面上に精製された化合物として凝結する。この冷却された表面は、しばしばコールドフィンガの形態をとる。加熱が終わり、真空が解放された後、昇華した化合物を冷却された表面から収集することができる。
【0168】
一実施形態では、化合物2250の置換誘導体を作製してもよい。化合物2250の置換誘導体として、以下が挙げられる。
【化50】
【0169】
上記式中、Rは、H又はアルキル又はアリールであり得る。或る特定の実施形態では、RはC1~C6アルキルである。或る特定の実施形態では、Rはメチルである。
【0170】
或る特定の実施形態では、化合物2250の誘導体は以下の反応機構に従って作製される。
【化51】
【0171】
一実施形態では、本開示は、腫瘍幹細胞を死滅させるのに有効な量のタウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物を、それを必要とする被験体に投与することによって腫瘍幹細胞を死滅させる方法を含む。腫瘍幹細胞を死滅させるのに有効な量のタウロリジン及び/又はタウルルタムは、腫瘍細胞を死滅させるのに必要なタウロリジン及び/又はタウルルタムの量よりも少ない。
【0172】
或る実施形態では、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.01μg/ml~約500μg/mlの濃度で腫瘍幹細胞死滅組成物において投与される。或る実施形態では、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.1μg/ml~約100μg/mlの濃度で腫瘍幹細胞死滅組成物において投与される。或る実施形態では、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約10μg/ml~約50μg/mlの濃度で腫瘍幹細胞死滅有効組成物において投与される。タウロリジンは、0.01μg/mlでin vitroでの組織培養における腫瘍幹細胞の死滅に有効である。
【0173】
或る実施形態では、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.001%~約2%の濃度で腫瘍幹細胞死滅組成物において投与される。或る実施形態では、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.01%~約1.5%の濃度で腫瘍幹細胞死滅組成物において投与される。或る実施形態では、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.1%~約1%の濃度で腫瘍幹細胞死滅有効組成物において投与される。
【0174】
一実施形態では、タウロリジン、タウルルタム、又はそれらの混合物を、腫瘍幹細胞死滅のため、それを必要とする被験体に約0.01g~約50g、約0.1g~約30g、約0.5g~約10g、又は約1g~約5gの合計1日量で投与する。
【0175】
タウロリジン、タウルルタム、又はそれらの混合物の腫瘍幹細胞死滅有効投与量は、約0.01mg/kg~500mg/kg、好ましくは1日当たり1mg/kg~100mg/kg、最も好ましくは1日当たり5mg/kg~50mg/kgの範囲の投与単位である。
【0176】
別の実施形態では、本開示は、タウロリジン及び/又はタウルルタムと組み合わせて使用してもよい、以下の化合物:
【化52】
(式中、Rは各々独立してH、アルキル、又はアリールである)、
【化53】
から選択される化合物を、それを必要とする患者に投与することによる腫瘍幹細胞を死滅させる方法を含む。かかる技術は、異なる半減期を有する少なくとも2つの化合物を使用することで得られる薬物動態の効果の幅を広げることにより、腫瘍幹細胞を死滅させる方法を提供する。一実施形態では、化合物2250をタウロリジン及び/又はタウルルタムと組み合わせて使用してもよい。
【実施例】
【0177】
実施例1:
化合物2250の抗腫瘍活性
緒言
タウロリジンが強力な抗腫瘍剤であるという認識に基づき、Geistlich Pharmaにより類縁体2250が合成された。
【0178】
材料及び方法
化学物質:化合物2250及びタウロリジン2%溶液は、本発明の譲受人であるウォルフーゼンのGeistlich Pharma AGにより提供された。
【0179】
細胞株:ヒト大腸腺癌細胞株SW480と同じく、以前に記載されるように(Rodak et al. 2005)ヒト神経膠腫細胞株LN-229を使用した。
【0180】
細胞毒性アッセイ:解離したLN-229細胞を、100μlの培養培地中、1ウェル当たり104細胞の密度で96ウェルプレートに蒔いた。およそ24時間後、細胞が70%~80%の培養密度に達した時、培地を交換し、化合物番号2250(4.0μg/ml~1000μg/ml)、タウロリジン(4.0μg/ml~1000μg/ml)、又は標準培地による処理を開始した。3連の培養物を各試料について用意した。25℃での24時間のインキュベーションの後、残った接着性の生存細胞を、記載されるように(Rodack et al. 2005)クリスタルバイオレットを使用して染色した。細胞生存率を540nmの吸光度を測定することによって特定した。結果を、100%の細胞と生存する細胞のパーセンテージとの差によって与えられる死滅率として表す。EC50値は、50%の細胞死を誘導する濃度に対応する。
【0181】
結果
陽性対照:ヒト膠芽腫細胞(LN-229)を24時間に亘ってタウロリジンと共にインキュベートした後、濃度依存性細胞毒性をEC
50=45μg/mlと決定し(表1、
図1)、この値は、この細胞株を用いて得られた先の結果に対応する(Rodack et al. 2005)。
【0182】
2250の試験:2250をタウロリジンと同じ実験条件下でインキュベートした場合、同様の細胞生存率の濃度依存的な喪失が観察された。細胞死を誘導する半数効果濃度はEC
50=50μg/mlであった。(表1、
図1)。
【0183】
SW480細胞の細胞毒性に関する結果を
図2に示す。
【0184】
考察
化合物2250は、タウロリジン型の新規な抗腫瘍剤の探索において新たな道筋を提示する。生物学的には、該化合物はタウロリジンと同じくらい強力である。化学的には、該化合物は、タウロリジンとは著しく異なる特徴を示す。エーテル-酸素によってNH基を置換することにより、タウロリジンの二環構造が回避される。化合物2250は単環構造であり、タウルルタムの近縁の構造類縁体である。
【0185】
機構的には、上記結果は、2250がメトキシ基を欠くことから、タウロリジンの抗腫瘍活性がメトキシ誘導体の形成によらないと考えられることを示す。上記化合物は、腫瘍細胞の泡状突起を生じる。
【0186】
要約
化合物2250は、ヒト膠芽腫細胞(細胞株LN-229)で決定されるように、in vitroにおいて強力な抗腫瘍活性を示す。その薬効(EC50=45μg/ml)は、同じ細胞株で試験したタウロリジン(EC50=50μg/ml)に匹敵する。
【0187】
【0188】
上記値は3連の実験で測定され、ODは540nm±標準偏差(SD)での吸光度である。高い値は高い細胞生存率に対応する。
【0189】
実施例2:
新たな化合物2250(テトラヒドロ1,4,5-オキサチアジン-4-ジオキシド)を試験すると、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)及びエシェリキア・コリ(Escherichia coli)に対する非常に高レベルの抗菌活性を有することがわかった。スタフィロコッカス・アウレウスに対する抗菌活性は、タウルルタムより約2倍高かった。
【0190】
実施例3:
パンチプレート試験において化合物2250を試験したところ、MRSA株188、189、193、194、及び195に対して非常に活性であることがわかった。
【0191】
抗菌活性と抗腫瘍活性とを併せて示すことにより、化合物2250は外科的腫瘍学に特に適している。
【0192】
実施例4:
本明細書において化合物2250、2255、2245、A1、A3、B1、B2、又はB3と識別される各化合物を本明細書で同定された癌の癌細胞株に対して試験したところ、かかる細胞株に対して活性であることがわかる。
【0193】
実施例5:
本明細書において化合物2250、2255、2245、A1、A3、B1、B2、又はB3と識別される各化合物を、本明細書で同定された癌を有する患者に投与すると、かかる癌の治療に有効であり、患者における使用に安全であることがわかる。これらの化合物の各々をビタミンD3、その誘導体、代謝産物、又は類縁体と共に投与すると、その組み合わせが該化合物の抗腫瘍効果を増すことがわかる。
【0194】
実施例6:
ヒト新鮮血中での化合物2250の半減期を、GC、PYE Unicam Series 204 FIDにより37℃にてin vitroで測定した。
ベースライン値:49.0ppm
1時間後:50.6ppm
2時間後:47.6ppm
20時間後:38.6ppm~39.0ppm
【0195】
したがって、化合物2250の半減期はヒト血液中で24時間超であり、同じ試験を使用して約30分間とわかったタウロリジンの半減期よりも著しく長い。
【0196】
実施例7:
新たに診断された患者(54±10歳の中年)に由来するWHO悪性度IVの高悪性度の神経膠腫の組織試料を機械的に細かく刻み、酵素により消化し、解離した細胞を濾過した。単離した腫瘍細胞をバルク細胞(bulk cells)として培養した。ニューロスフェア条件下(neurobasal培地を使用する)でニューロスフェアの形成によって、ネズミのSMA560神経膠腫細胞株又は新たに単離したヒト膠芽腫細胞から癌幹細胞(CSC)を単離した。
【0197】
細胞毒性アッセイ
バルク神経膠腫細胞を培養し、以前に記載されるように(Rodak et al., J. Neurosurg. 102, 1055-1068, 2005)24時間又は48時間に亘ってタウロリジン又はタウルルタムと共にインキュベートした。CSCを7日間培養した後、タウロリジン、タウルルタム、又はテモゾラミドに24時間曝露した。残った接着性細胞の数を染色し(クリスタルバイオレット又はアラマーブルー)、吸光度測定(540nm)によって定量した。未処理の対照培養物において生存する細胞の数に対する生存細胞のパーセンテージとして細胞生存を表した。結果を%死滅率、又は細胞毒性の半数効果(half-maximal cytotoxicity)に必要とされる用量であるEC50で与える。
【0198】
結果
マウスに由来する癌細胞及び癌幹細胞に対するタウロリジン及びタウルルタムの細胞毒性
マウスSMA560神経膠腫細胞株を使用して腫瘍バルク細胞及びCSCを提供した。SMA560バルク細胞と様々な濃度のタウロリジン及びタウルルタム(6.25μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/ml)とのインキュベーションの後、24時間及び48時間のインキュベーション後に細胞毒性を判定した。タウロリジン及びタウルルタムの両方について、24時間と48時間とのインキュベーション時間の間に薬効の大きな差を伴わず、明らかな用量依存的な細胞毒性が見られた(
図3A、
図3B)。EC
50値は、タウロリジンに対して34.6μg/ml、及びタウルルタムに対して19.3μg/mlであった(
図3C)。
【0199】
マウスCSCをSMA560神経膠腫細胞株から作製し、7日間培養した。上記と同じ濃度のタウロリジン及びタウルルタムでCSCを処理し、24時間後に細胞毒性を判定した。
図4に示されるように、タウロリジン及びタウルルタムはいずれも、ネズミのCSCに対してタウロリジンについて12.5μg/mlのEC
50、及びタウルルタムについて10μg/mlのEC
50で用量依存的な細胞毒性を示した。これらの値は、タウロリジン及びタウルルタムがCSCに対して有効であることを初めて実証する。
【0200】
タウロリジン及びタウルルタムは4名の異なる膠芽腫患者から単離されたヒトCSCにおいて細胞死を誘導する。
CSCを4名の患者から切除された膠芽腫組織から単離した。上記と同じ濃度範囲のタウロリジン及びタウルルタムを適用し、薬物とのインキュベーションの24時間後に細胞毒性を測定した。試験した4つ全ての膠芽腫CSC(GBM3番、4番、5番、及び6番)は、タウロリジン及びタウルルタムに対して同様に感受性であった(
図5A、
図5B)。タウロリジンの平均EC
50値は13±2μg/mlであり、タウルルタムのEC
50値は11±1.4μg/mlであった(表2)。これらの実験では、タウロリジン及びタウルルタムの細胞毒性能を、5μM~1000μMの濃度範囲で適用されたテモゾラミド(TIM)のものと比較した(
図2C)。TMZの平均EC
50値は68.5±26μg/mlであった(表2)。興味深いことに、この濃度は、患者で測定されたTMZのピーク血漿レベル(13.7μg/ml)よりもはるかに高い(Portnow et al., Clin Cancer Res 15, 7092-7098, 2009)。
【0201】
結果は、タウロリジン及びタウルルタムの両方がCSCに対して有効であることを実証し、この知見が、2つの種、すなわちマウス及びヒトに由来する神経膠腫CSCについて確立された。
【0202】
マウス神経膠腫細胞株(SMA560)からマウスCSCを作製した。注目すべきことに、EC
50値に基づくと、CSCは、対応する神経膠腫バルク細胞よりもタウロリジン及びタウルルタムに対して更に感受性であった(タウロリジンに対して約3倍、及びタウルルタムに対して2倍)(
図3、
図4)。
【0203】
4名のヒト膠芽腫患者から新たに単離されたヒトCSCは、タウロリジン及びタウルルタムの両方に対して同様に非常に化学感受性であった。細胞毒性に対するEC50値は、それぞれ13±2ug/ml及び11±1.4μg/mlであった(表2)。これらの値は、ヒトCSCが、それらのネズミの対応物と同様に、50μg/mlの範囲のEC50値を示すヒト膠芽腫バルク細胞よりも、タウロリジン及びタウルルタムに対してより感受性(約3倍~4倍)であることを実証する(Rodak et al., J. Neurosurg., 102, 1055-68, 2005)。
【0204】
【0205】
実施例8:
ネズミの神経膠腫細胞株に由来する癌幹細胞及びヒト癌幹細胞に対し、タウロリジン及びタウルルタムを試験した。タウロリジン及びタウルルタムは、4名の膠芽腫患者から新たに単離されたヒト癌幹細胞(タウロリジンについてEC50=13±2μg/ml、タウルルタムについてEC50=11±1.4μg/ml)に対するのと同じく、ネズミの神経膠腫細胞株に由来する癌幹細胞に対して強力な抗腫瘍活性(タウロリジンについてEC50=12.5μg/ml、タウルルタムについてEC50=10μg/ml)を付与することが分かった。
【0206】
実施例9
膵臓幹細胞様多細胞性スフェロイド培養物に対する抗腫瘍効果
多細胞性スフェロイドは、成長を刺激する3次元構造で成長する腫瘍細胞、微小環境条件、及び実際の腫瘍の幹細胞様特性で構成される。多細胞性腫瘍スフェロイド(MCTS)モデルは、単層培養物で見られる多くの欠陥を補うものである。200μm~500μmの大きさのスフェロイドは、腫瘍に類似する形態学的及び機能的な特徴を有しつつ、酸素、栄養素、及び分解産物の化学勾配を発生させる。したがって、MCTSモデルを利用するアッセイは、薬物浸透の評価を可能とし、単層培養物と比較してin vivoでの成功をより予測しやすい。MCTSアッセイは、標準的な単層とin vivoの腫瘍との間の中間の複雑さの腫瘍モデル系である。
【0207】
膵腫瘍細胞(Panc Tu-1、BxPC-3、Mia Paca-2、ASPC1)及び原発性膵腫瘍細胞(Bo80)を、特殊な幹細胞培地中、超低接着性プレートに蒔いた。
【0208】
膵腫瘍細胞(ASPC1、Mia Paca-2、Panc TuI、BxPC-3)及び原発性膵腫瘍細胞(Bo80)を単層培養物で成長させた後、特殊な幹細胞培地の条件下にて超低接着性プレートに蒔き、多細胞性スフェロイドを形成させて、セルストレーナーを通して凝集物を排除した。
【0209】
腫瘍細胞株AsPC-1、BxPC-3、及びHCT-116において、750μM~1000μMの化合物2250で細胞生存の半数阻害を達成した。これらの効果は、神経膠腫細胞株LN-229で観察されたものと類似する。細胞死の誘導は、アポトーシス及びネクローシス(おそらくはネクロトーシス)によるものであった。このプログラムされた細胞死の誘導は、還元剤であるN-アセチルシステインの添加によって妨げられ、カスパーゼは関与しないことがわかった。したがって、酸化還元による作用機構(redox-directed mechanism of action)が存在する。
【0210】
膵腫瘍細胞(AsPC-1、BxPC-3、及びHCT-116)の成長は、細胞毒性を誘発するのに必要な濃度よりもはるかに低い、300μMの半数効果濃度の化合物2250によって阻害された。
【0211】
図8に示されるように、多細胞性膵腫瘍(Panc TuI又はBxPC-3)スフェロイドを、対照と、48時間に亘るタウロリジン処理(500μM)試料又は化合物2250処理(1000μM)試料として試験した(Aと標識される欄)。処理の後、全細胞懸濁物を各々、45μmの細胞ストレーナーに再度通し、安定性について残渣凝集物を分析した(Bと標識される欄)。
【0212】
図9A及び
図9Bは、Panc TuI多細胞性スフェロイド培養物のCD133含量のFACS分析の結果を示す。CD133は、既知の、よく確立された幹細胞の目印である。結果は、Panc TuIの多細胞性スフェロイド培養物中のCD133陽性細胞の量は、単層培養物で成長させたPanc TuI(B)と比較して、10倍富化されたことを示す。アイソタイプIgGを陰性対照として使用した(A)。結果は、タウロリジン及び化合物2250が多細胞性スフェロイド培養物のような膵臓幹細胞に対して抗腫瘍活性を有することを実証する。
【0213】
実施例10
悪性膵癌におけるタウロリジン及び化合物2250の抗腫瘍剤としてのin vivo研究
タウロリジン及び化合物2250の効果をヌードマウス(NMRI-Foxn1 nu/nu)で分析した。1×107腫瘍細胞(PancTu-I及びMiaPaca 2)を脇腹に皮下注入した。動物を3つの群、すなわち対照群、タウロリジンによる腹腔内注射治療(TRD)群、及び化合物2250による腹腔内注射治療(NDTRLT)群に無作為化した。
【0214】
治療を開始する前に腫瘍を200mm3の大きさまで成長させた。マウスを500mg/kg*体重(BW)で隔日に処理した。
【0215】
図10Aに示されるように、タウロリジンの投与は、対照と比較してMiaPaca2腫瘍体積を有意に減少した(約2倍)。
【0216】
図10Bに示されるように、化合物2250の投与は、対照と比較してMiaPaca2腫瘍体積を有意に減少した(3倍超)。
【0217】
図10Cに示されるように、タウロリジンの投与は、対照と比較してPancTuI腫瘍体積を有意に減少した(約3倍)。
【0218】
図10Dに示されるように、化合物2250の投与は、対照と比較してPancTuI腫瘍体積を有意に減少した(約2倍)。
【0219】
適用したタウロリジン及び化合物2250の用量は、研究中マウスに対して何ら毒作用を示さなかった。いずれの腫瘍細胞株モデルでも腫瘍成長の有意な減少を得た。
【0220】
腫瘍成長(体積)は、対照に対して9日目以降(PancTuI)及び11日目以降(MiaPaca2)に有意に減少された。500mg/kg腹腔内投与の用量は、明らかな毒性の兆候のない十分な認容性を示した。
【0221】
図11Aに示されるように、原発性膵腫瘍(Bo73)の異種移植片モデルを15日間観察したところ、タウロリジンの投与は対照と比較して相対腫瘍体積を僅かに減少し、化合物2250の投与は対照と比較して相対腫瘍体積を更に減少することがわかった。しかしながら、おそらくは研究期間が短かったこと、また腫瘍の成長速度が遅かったため、腫瘍体積における差は統計学的には関連がなかった。
図11Bでは、原発性膵腫瘍(Bo70)の異種移植片モデルを23日間観察したところ、タウロリジン及び化合物2250の投与が対照と比較して腫瘍体積を有意に減少することが観察された。
【0222】
タウロリジン及び/又は化合物2250の例えば腹腔内の投与は、in vivoでの腫瘍成長を阻害する。