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特許7030097立体像結像装置の製造方法及び立体像結像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】立体像結像装置の製造方法及び立体像結像装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 11/00 20060101AFI20220225BHJP
   G02B 30/60 20200101ALI20220225BHJP
   G03B 35/18 20210101ALI20220225BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20220225BHJP
   G02B 5/09 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B29D11/00
G02B30/60
G03B35/18
G02B5/08 C
G02B5/09
G02B5/08 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019219631
(22)【出願日】2019-12-04
(62)【分割の表示】P 2019521940の分割
【原出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2020062885
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2017109195
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-090117(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033645(WO,A1)
【文献】特開2006-184678(JP,A)
【文献】特開2016-151685(JP,A)
【文献】特開2012-247459(JP,A)
【文献】国際公開第2017/051598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 11/00
G02B 5/08
G02B 27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ立設状態で隙間を有して平行配置された多数の帯状光反射面を備える第1、第2の光制御パネルを、それぞれの前記帯状光反射面を平面視して直交させ、重ね合わせて配置する立体像結像装置の製造方法であって、
透明板材の一側に、傾斜面と垂直面とを有し底部が水平面aとなった多数の溝、及び隣り合う前記溝によって多数の凸条が形成され、それぞれの前記凸条を形成する前記傾斜面の上端と前記垂直面の上端との間には水平面bが形成され、前記多数の凸条が平行配置された前記第1、第2の光制御パネルの成型母材を、第1の透明樹脂からプレス成型、インジェクション成型及びロール成型のいずれか1によって製造する第1工程と、
前記各成型母材の前記溝の前記垂直面のみに選択的に鏡面を形成して、前記第1、第2の光制御パネルの中間母材を製造する第2工程と、
前記各中間母材を、前記溝の前記垂直面同士が平面視して直交するように向かい合わせた状態で、前記第1の透明樹脂と屈折率が同一又は近似する第2の透明樹脂を前記溝に充填して接合し、一体化する第3工程とを有し、
前記第2の透明樹脂の屈折率η2は、前記第1の透明樹脂の屈折率η1の0.9~1.1倍の範囲にあり、前記水平面aの幅は前記凸条のピッチの0.01~0.1倍、前記水平面bの幅は前記凸条のピッチの0.01~0.1倍であることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項2】
それぞれ立設状態で隙間を有して平行配置された多数の帯状光反射面を備える第1、第2の光制御パネルを、それぞれの前記帯状光反射面を平面視して直交させ、重ね合わせて接合した立体像結像装置であって、
前記第1、第2の光制御パネルには、それぞれ第1の透明樹脂で形成された透明板材の一側に平行配置され傾斜面と垂直面を有し底部が水平面aとなった多数の溝、及び隣り合う前記溝によって多数の凸条が形成され、それぞれの前記凸条を形成する前記傾斜面の上端と前記垂直面の上端との間には水平面bが形成され、前記溝の前記垂直面に鏡面が形成され、前記第1、第2の光制御パネルは、前記溝の前記垂直面同士が平面視して直交するように向かい合わせて配置され、前記第1の透明樹脂と同一又は近似する屈折率を有して前記溝に充填された第2の透明樹脂で接合され一体化されて、
前記第2の透明樹脂の屈折率η2は、前記第1の透明樹脂の屈折率η1の0.9~1.1倍の範囲にあり、前記水平面aの幅は前記凸条のピッチの0.01~0.1倍、前記水平面bの幅は前記凸条のピッチの0.01~0.1倍であることを特徴とする立体像結像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の光反射面(鏡面)が平行に並べて配置された第1、第2の光制御パネルを、それぞれの光反射面が平面視して直交した状態で、隙間を有して又は隙間なく重ね合わせて形成する立体像結像装置の製造方法及び立体像結像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体表面から発する光(散乱光)を用いて立体像を形成する装置として、例えば、特許文献1に記載の立体像結像装置(光学結像装置)がある。
この結像装置は、2枚の透明平板の内部に、この透明平板の厚み方向に渡って垂直に多数かつ帯状で、金属反射面(鏡面)からなる光反射面を一定のピッチで並べて形成した第1、第2の光制御パネルを有し、この第1、第2の光制御パネルのそれぞれの光反射面が平面視して直交するように、第1、第2の光制御パネルの一面側を向い合わせて密着させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/131128号公報
【文献】国際公開第2015/033645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した第1、第2の光制御パネルの製造に際しては、金属反射面が一面側に形成された一定厚みの板状の透明合成樹脂板やガラス板(以下、「透明板」ともいう)を、金属反射面が一方側に配置されるように多数枚積層して積層体を作製し、この積層体から各金属反射面に対して垂直な切り出し面が形成されるように切り出している。
このため、透明板に金属反射面を形成する作業において大型の蒸着炉を必要とし、しかも、1枚又は少数枚の透明板を蒸着炉に入れて脱気して高真空にした後、蒸着処理を行い、大気圧に開放して蒸着した透明板を取り出すという作業を百回以上繰り返す必要があり、極めて手間と時間のかかる作業であった。また、金属蒸着された透明板を積層して積層体を形成し、極めて薄い所定厚で切断する作業を行って、この積層体から第1、第2の光制御パネルを切り出し、更にこれら第1、第2の光制御パネルの切り出し面(両面)の研磨作業等を行う必要があるため、作業性や製造効率が悪かった。
更に、特許文献1には、断面直角三角形の溝を有する第1、第2の光制御パネルを透明樹脂から作り、第1、第2の光制御パネルをその反射面を直交させて向かい合わせて密着して光学結像装置を提供することも記載されているが、反射面として全反射を利用するので、溝のアスペクト比も小さく、明るい結像を得ることが困難であるという問題があった。
【0005】
また、特許文献2のように、平行な土手によって形成される断面四角形の溝が一面に形成され、この溝の対向する平行な側面に光反射部が形成された凹凸板材を備えた光制御パネルを2つ用意し、この2つの光制御パネルを、それぞれの光反射部を直交又は交差させた状態で向い合わせる方法が提案されている。
しかしながら、インジェクション成型時に、凹凸板材の土手の高さを高くすると(即ち、溝の深さを深くすると)脱型が極めて困難となるという問題があった。更に、平行溝の側面のみを均一に鏡面化するのは難しく、製品にバラツキが多いという問題があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、製造が比較的容易で明るく鮮明な立体像を得ることが可能な立体像結像装置の製造方法及び立体像結像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、それぞれ立設状態で隙間を有して平行配置された多数の帯状光反射面を備える第1、第2の光制御パネルを、それぞれの前記帯状光反射面を平面視して直交させ、重ね合わせて配置する立体像結像装置の製造方法であって、
透明板材の一側に、傾斜面と垂直面とを有し底部が水平面aとなった多数の溝、及び隣り合う前記溝によって多数の凸条が形成され、それぞれの前記凸条を形成する前記傾斜面の上端と前記垂直面の上端との間には水平面bが形成され、前記多数の凸条が平行配置された前記第1、第2の光制御パネルの成型母材を、第1の透明樹脂からプレス成型、インジェクション成型及びロール成型のいずれか1によって製造する第1工程と、
前記各成型母材の前記溝の前記垂直面のみに選択的に鏡面を形成して、前記第1、第2の光制御パネルの中間母材を製造する第2工程と、
前記各中間母材を、前記溝の前記垂直面同士が平面視して直交するように向かい合わせた状態で、前記第1の透明樹脂と屈折率が同一又は近似する第2の透明樹脂を前記溝に充填して接合し、一体化する第3工程とを有し、
前記第2の透明樹脂の屈折率η2は、前記第1の透明樹脂の屈折率η1の0.9~1.1倍の範囲にあり、前記水平面aの幅は前記凸条のピッチの0.01~0.1倍、前記水平面bの幅は前記凸条のピッチの0.01~0.1倍である。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
前記目的に沿う第2の発明に係る立体像結像装置は、それぞれ立設状態で隙間を有して平行配置された多数の帯状光反射面を備える第1、第2の光制御パネルを、それぞれの前記帯状光反射面を平面視して直交させ、重ね合わせて接合した立体像結像装置であって、
前記第1、第2の光制御パネルには、それぞれ第1の透明樹脂で形成された透明板材の一側に平行配置され傾斜面と垂直面を有し底部が水平面aとなった多数の溝、及び隣り合う前記溝によって多数の凸条が形成され、それぞれの前記凸条を形成する前記傾斜面の上端と前記垂直面の上端との間には水平面bが形成され、前記溝の前記垂直面に鏡面が形成され、前記第1、第2の光制御パネルは、前記溝の前記垂直面同士が平面視して直交するように向かい合わせて配置され、前記第1の透明樹脂と同一又は近似する屈折率を有して前記溝に充填された第2の透明樹脂で接合され一体化されて、
前記第2の透明樹脂の屈折率η2は、前記第1の透明樹脂の屈折率η1の0.9~1.1倍の範囲にあり、前記水平面aの幅は前記凸条のピッチの0.01~0.1倍、前記水平面bの幅は前記凸条のピッチの0.01~0.1倍である。
【0014】
【0015】
【発明の効果】
【0016】
第1の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、プレス成型、インジェクション成型及びロール成型のいずれか1で製造された成型母材が使用され、成型母材には傾斜面と垂直面を有する多数の溝が平行に形成されている。この溝は開放側に広くなるので、押型又は脱型が容易となり、(溝の深さ)/(溝の幅)で定義されるアスペクト比の高い立体像結像装置を比較的安価に製造できる。
【0017】
そして、第1の透明樹脂と第2の透明樹脂の屈折率が同一又は近似していることにより、界面での屈折の影響を極力小さくして、歪みの少ない明るく鮮明な立体像が得られる高品質な立体像結像装置を製造できる。
【0018】
また、第2の発明に係る立体像結像装置は、第1の透明樹脂で成型された成型母材の溝に第1の透明樹脂の屈折率と同一又は近似している屈折率を有して溶融した第2の透明樹脂が充填されることにより、傾斜面での屈折の影響を低減して、鮮明な立体像を得ることができる。そして、より歪みや虹の少ない立体像を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第1の実施例に係る立体像結像装置の製造方法によって製造された立体像結像装置の正断面図及び側断面図である。
図2】(A)、(B)はそれぞれ同製造方法を示す正断面図及び側断面図である。
図3】(A)、(B)は同製造方法の変形例の説明図である。
図4】(A)、(B)は本発明の第1の実施例に係る立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図5】(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ同製造方法の変形例に係る中間母材の溝及び凸条の部分拡大側断面図である。
図6】本発明の第2の実施例に係る立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図7】(A)、(B)はそれぞれ同製造方法によって製造された第1、第2の光制御パネルの説明図である。
図8】同製造方法を一部改良した変形例の説明図である。
図9】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第3の実施例に係る立体像結像装置の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、本発明の実施例に係る立体像結像装置の製造方法及びそれを用いた立体像結像装置について、図面を参照しながら説明する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の第1の実施例に係る立体像結像装置の製造方法によって製造された立体像結像装置10は、それぞれ立設状態で隙間を有して平行配置された多数の帯状光反射面11、12を備える第1、第2の光制御パネル13、14を、それぞれの帯状光反射面11、12を平面視して直交させて、重ね合わせて形成されている。
【0021】
この立体像結像装置10の製造にあっては、図4(A)に示すように、透明板材16の表側(一側)に、傾斜面17と垂直面18とを有する断面三角形の多数の溝19、及び隣り合う溝19によって形成される断面三角形の多数の凸条20がそれぞれ所定ピッチwで平行配置された第1、第2の光制御パネル13、14の成型母材22を第1の透明樹脂を原料として、インジェクション成型(又はプレス成型若しくはロール成型)によって製造する。この第1の透明樹脂として、比較的融点の高い熱可塑性樹脂(例えば、ゼオネックス(ZEONEX:登録商標、ガラス転移温度:120~160℃、屈折率η1:1.535、シクロオレフィンポリマー))を使用するのが好ましい。その他、透明樹脂としては、ポリメチルメタルクレート(アクリル系樹脂)、非晶質フッ素樹脂、PMMA、光学用ポリカーボネイト、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂を使用することができるが、特に融点、透明度の高いものを使用するのが好ましい。
【0022】
成型母材22は、成型後、アニーリング処理を行って、残留応力等を除去するのが好ましい。また、図4(A)、(B)に示すように、溝19の傾斜面17の下端と垂直面18の下端との間、及び溝19の傾斜面17の上端と垂直面18の上端との間には、それぞれ水平面23、24が形成されている。水平面23、24の幅は、例えば、凸条20のピッチwの0.01~0.1倍程度とするのがよい。このような水平面23、24を形成することにより、溝19、及び凸条20の形状安定性に優れ、寸法管理の信頼性にも優れる(以下の実施例においても同じ)。
なお、溝19の深さdは、(0.8~5)wとするのが好ましい。これによってアスペクト比(鏡面の高さd/鏡面のピッチw)が0.8~5の光反射面が得られる(以上、第1工程)。
【0023】
次に、図4(B)に示すように、成型母材22の溝19の垂直面18のみに選択的に鏡面を形成して、傾斜面17には鏡面を形成せず、透明の状態を保持する処理を行う。この垂直面18への鏡面の選択形成は、傾斜面17に沿った斜め方向から、傾斜面17に平行又は傾斜面17が凸条20の影になるようにして、真空中又は低圧下で、垂直面18に向けてスパッタリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射、その他の方法で金属粒子を照射することにより行う。この場合、金属粒子の照射方向26(角度θ2)は、僅少の範囲(例えば0.2~5度)で傾斜面17の角度θ1より寝かせる(即ち、θ1>θ2)ことが好ましい。このとき、溝19の傾斜面17の下端と垂直面18の下端との間に微小幅(例えば、wの0.05~0.2倍)の水平面23が形成されているので、傾斜面17に金属粒子が付着することを減らし又は無くしながら、垂直面18の下端まで斑なく金属粒子を照射することができる。
以上の処理によって、垂直面18のみが鏡面化されて垂直光反射面27(第1、第2の光制御パネル13、14の帯状光反射面11、12となる)が形成され、第1、第2の光制御パネル13、14の中間母材28が製造される(以上、第2工程)。なお、この選択的鏡面の形成は他の実施例においても同じである。
【0024】
この実施例においては、成型母材22の溝19の傾斜面17が平面であるため、僅少の範囲ではあるが、垂直面18の鏡面化中に傾斜面17にも金属粒子が付着することがある。そこで、図5(A)、(B)に示すように、平面より窪んだ位置に形成された多角面や円弧状の凹面を有する傾斜面29、30とすることもできる。また、図5(C)、(D)に示すように、多数の微小な凹凸(疵)からなる凹凸面を有する傾斜面31、32とすることもできる。この場合も、凹凸面は平面より窪んで形成される。このように凸条20の内側に窪む多角面、凹面、凹凸面を有する傾斜面29、30、31、32の成型及び脱型は容易であり、垂直面18の鏡面化中に傾斜面29、30、31、32に金属粒子が付着することを効果的に防止できる。なお、多数の微小な凹凸からなる凹凸面は、成型母材22の成型に用いられる金型の製造時に、傾斜面31、32を形成する金型部分の表面に、予めショットブラスト処理や梨地処理等を行って多数の微小な凸凹を形成しておき、成型時にそれを成型母材22となる第1の透明樹脂の表面に転写することにより、簡単に形成することができる。凹凸の凹部の形状は図5(C)、(D)に示したような多角面状や球面状に限らず、適宜、選択することができる。なお、凹凸(疵)は規則的に形成しても不規則に形成してもよいが、不規則な方がアンカー効果をさらに高めることができる。また、凹凸の凹部の大きさや粗さは、適宜、選択することができるが、その深さは5~50μm、好ましくは10~30μm程度である。なお、この凹凸は平面状の傾斜面の表面だけでなく、図5(A)、(B)に示した多角面や凹面を有する傾斜面29、30の表面にも組み合わせて形成することができる。
以上説明した多角面、凹面、凹凸面を有する傾斜面は、他の実施例においても同様に採用することができる。なお、以下の図面上で、平面として記載した傾斜面においても、平面以外の多角面、凹面、凹凸面を含むものとする。
【0025】
以上の工程によって、図2(A)、(B)に示すように、第1、第2の光制御パネル13、14の中間母材28が形成されるので、対となる中間母材28の垂直面18同士が平面視して直交するように凸条20を向かい合わせた状態で、第1の透明樹脂より融点が低く、かつ第1の透明樹脂と屈折率が同一又は近似する第2の透明樹脂(以下の実施例においても同様)のシート33を挟み込み、真空状態で平行配置された平面を備える平面プレスで加熱かつ押圧して、第2の透明樹脂のみを溶解し、対向する中間母材28のそれぞれの溝19を第2の透明樹脂によって充填して中間母材28を接合し、一体化する(以上、第3工程)。
このとき、溝19の底部に水平面23を有するので、気泡が抜け易く、溶解した第2の透明樹脂を溝19の隅々まで充填することができる。また、凸条20の頂部に水平面24を有することにより、頂部の欠けや変形を防止し、水平面24に第2の透明樹脂のシート33を当接させて確実に加圧し、水平面24に対して第2の透明樹脂を密着させることができる。
【0026】
なお、ここで、溝19の深さをdとすると、第2の透明樹脂のシート33の厚みt1は、t1>d(更に詳細には、2d>t1>d)となっている。シート33を所定値より厚くすることによって、溝19を第2の透明樹脂によって完全に埋めることができる。このとき、溝19の傾斜面が凹面、凹凸面又は多角面を有する場合、その傾斜面と、溝19に充填される第2の透明樹脂との密着性を高め、溝19を第2の透明樹脂で隙間なく埋めることができる。特に、傾斜面に多数の凹凸が形成されたものはアンカー効果を高めることができる。そして、第2の透明樹脂が第1の透明樹脂と同一又は近似する屈折率を有していることにより、傾斜面が凹面、凹凸面又は多角面を有していても、第2の透明樹脂との界面で乱反射を発生させることなく、光を通過させることができ、屈折も最小限に抑えることができる。なお、溝19内の樹脂の量が不足すると、空間が形成されるので、第2の透明樹脂が溝19から溢れる程度にシート33の厚みt1を設定することが好ましい。
【0027】
ここで、図3(A)、(B)に示すように、平面プレス(金型)58、59と中間母材28との間に、ステンレス板、銅板、チタン板等からなる平面金属シート60、61を配置するのが好ましい。これによって、中間母材28の表面に疵を付けることがなく、熱伝導も均一になる。更に、平面プレス58、59の表面に多少の疵があってもよいので、装置全体の寿命を高めることができる。平面金属シート60、61の厚みは例えば、0.5~5mm程度である。
【0028】
以上の処理によって、図1(A)、(B)に示すように、第1、第2の光制御パネル13、14の凸条20が向かい合った立体像結像装置10が完成する。なお、第1、第2の光制御パネル13、14のベース部(即ち、成型母材22)は、第1の透明樹脂からなって、その露出面34、35は完全平面となっている。
また、第2の透明樹脂は、例えば、ゼオノア(ZEONOR:登録商標、ガラス転移温度:100~102℃のもの、屈折率η2:1.53、シクロオレフィンポリマー)を使用するのが好ましいが、その他の透明樹脂で、融点が第1の透明樹脂より低く、透明度が高く、屈折率が第1の透明樹脂と同一又は近似するものであれば代替可能である。
【0029】
この立体像結像装置10の動作を、図1(A)、(B)を参照して説明すると、図示しない対象物からの光L1はP1で第2の光制御パネル14に入光し、第2の光制御パネル14の(垂直光反射面27からなる)帯状光反射面12にP2で反射し、第1の光制御パネル13に入光し、第1の光制御パネル13の(垂直光反射面27からなる)帯状光反射面11のP3で反射し、P4の位置で第1の光制御パネル13から空中に出て行き結像する。ここで図1(A)のQ1で第1の透明樹脂から第2の透明樹脂に、Q2で第2の透明樹脂から第1の透明樹脂に入光するが、第1、第2の透明樹脂の屈折率が略同じであるので、全反射等の現象は起こらない。また、図1(B)のS1、S2でも、異なる物質間を通過するが、屈折率が似ているので、全反射等は起こらない。
なお、P1、P4の位置でも屈折を起こすが、P1、P4の屈折は相殺する。
【0030】
続いて、図6を参照しながら、本発明の第2の実施例に係る立体像結像装置の製造方法を説明する。
まず、第1の実施例に係る立体像結像装置の製造方法と同様に、図4(A)、(B)に示す第1工程、第2工程を経て、第1の光制御パネル13の中間母材28を製造する。そして、図6に示すように、この中間母材28と第2の透明樹脂からなるシート36を重ねて、加熱機構を有する平面プレス37の平面の間に配置する。この場合、中間母材28の凸条20がシート36に接するようにする。シート36の厚みt1は溶解した場合、溝19a内を完全に埋める量が必要であるが、このシート36の厚みt1については後述する。
【0031】
次に、真空状態にして、第2の透明樹脂が溶解し第1の透明樹脂が溶解しない温度に加熱かつ押圧して、第2の透明樹脂で溝19aを完全に埋めた後、冷却して図7(A)に示す第1の光制御パネル13が得られる。また、同一方法で図7(B)に示す第2の制御パネル14を製造する(以上、第3工程)。そして、第1の光制御パネル13の帯状光反射面11を形成する垂直光反射面27と、第2の光制御パネル14の帯状光反射面12を形成する垂直光反射面27が平面視して直交(88~92度の範囲)するようにして、第1、第2の光制御パネル13、14を重ね合わせて、透明樹脂(例えば紫外線硬化樹脂)等を用いて密封(例えば、真空状態で)接合する。
第1、第2の光制御パネル13、14を接合する際は、凸条20が形成された表側同士が接するようにして重ねる場合、第1、第2の光制御パネル13、14の表側と裏側が接するようにして重ねる場合、第1、第2の光制御パネル13、14の裏側同士が接するようにして重ねる場合がある。
【0032】
また、図8に示すように、下の平面プレス37と中間母材28との間、及び上の平面プレス37と第2の透明樹脂からなるシート36との間に、ステンレス板、銅板、チタン板等からなる平面金属シート61、60を配置して、第1及び第2の光制御パネル13、14を製造するのが好ましい。これによって、中間母材28の表面に疵を付けることがなく、熱伝導も均一になる。更に、平面プレス37の表面に多少の疵があってもよいので、装置全体の寿命を高めることができる。
【0033】
図7図8に示す方法では、第1、第2の光制御パネル13、14を別々に製造したが、第1、第2の制御パネル13、14の溝19aの上にそれぞれ所定厚の第2の透明樹脂のシート36を重ねた状態で、平板プレス37に載せて、真空状態で加熱かつ押圧することもできる。
【0034】
図9(A)、(B)に示す本発明の第3の実施例に係る立体像結像装置の製造方法を示す。まず、第1の透明樹脂からなる透明板材40の両側に傾斜面41、42と垂直面43、44を有する断面三角形の多数の第1、第2の溝45、46、及び隣り合う第1、第2の溝45、46によって形成される断面三角形の多数の第1、第2の凸条47、48がそれぞれ形成され、かつ透明板材40の両側にそれぞれ形成された第1、第2の溝45、46の垂直面43、44が平面視して直交(交差)して配置される成型母材50を、プレス成型、インジェクション成型、又はロール成型によって製造する(以上、第1工程)。なお、この実施例では第1、第2の溝45、46の傾斜面41、42は第1、第2の凸条47、48の内側に円弧状に窪んだ凹面を有する形状としているが、第1の実施例で説明しように、平面でもよいし、多角面や凹凸面を有する形状であってもよい。
【0035】
次に、垂直面43、44に対してのみ、第1の実施例に係る立体像結像装置の製造方法に記載した手順と同一の方法で鏡面処理を行う(図4(B)参照)。これによって、第1、第2の光制御部の帯状光反射面として機能する垂直光反射面51、52が形成されて、中間母材53となる(以上、第2工程)。
そして、図9(A)、(B)に示すように、この中間母材53の上下に第2の透明樹脂からなるシート54、55を配置し、平面プレス56の間に挟み、周囲を真空にして加熱しながら(具体的には真空加熱炉に入れて)、押圧する。これによって、第1の透明樹脂は溶けないが第2の透明樹脂は溶けて液体化し、第1、第2の溝45、46を埋めつくして、第1、第2の光制御部が形成される(以上、第3工程)。
この結果、上下面が完全平面となって、それぞれの帯状光反射面が平面視して直交する第1、第2の光制御部を表裏に有して一体となった立体像結像装置が完成する。なお、第1の透明樹脂、第2の透明樹脂の素材は、第1の実施例に係る立体像結像装置の製造方法と同様である。
また、この実施例において、上の平面プレス56とシート54との間、下の平面プレス56とシート55との間に、前記した平面金属シートを配置し、光制御パネルの品質をより高めることもできる。
【0036】
以上の実施例に係る立体像結像装置の製造方法において、溝19a、45、46の深さをdとすると、第2の透明樹脂のシート36、54、55の厚みt1は、2×t1>d(更に詳細には、2d>2×t1>d)となっていることが好ましい。これによって、加熱されて液体化した第2の透明樹脂で溝19a、45、46を確実に埋めることができる。
【0037】
そして、第1~第3の実施例に係る立体像結像装置の製造方法において、第2の透明樹脂の屈折率η2は、第1の透明樹脂の屈折率η1の0.9~1.1倍の範囲にある。
なお、第2の実施例で、第1の実施例と同様に、第1、第2の光制御パネル13、14の成型母材を屈折率η1が同一の第1の透明樹脂で成型し、それぞれの溝19aに第1の透明樹脂と近似する屈折率η2を有する第2の透明樹脂を充填して、第1、第2の光制御パネル13、14を形成したが、第1、第2の光制御パネル13、14の成型母材の製造に用いる第1の透明樹脂及びそれぞれの溝19aに充填される第2の透明樹脂は必ずしも同一である必要はない。例えば、第1の光制御パネル13の成型母材を屈折率η1の第1の透明樹脂で製造し、その溝19aに第1の透明樹脂と近似する屈折率η2を有する第2の透明樹脂を充填する場合、第2の光制御パネル14を屈折率η3の第1の透明樹脂で製造し、その溝19aに第1の透明樹脂の屈折率η3と近似する屈折率η4を有する第2の透明樹脂を充填することもできる。このときも、屈折率η3は、屈折率η1の0.8~1.2倍(より好ましくは、0.9~1.1倍)の範囲にあり、屈折率η4は、屈折率η3の0.8~1.2倍(より好ましくは、0.9~1.1倍)の範囲にあることが好ましいが、これらの屈折率に限定されるものではなく、立体像を結像できる範囲で適宜、選択し、組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明は以上の実施例に限定されるものではなく、実施例に係る立体像結像装置の要素、又は製造方法を組み合わせて、立体像結像装置を構成する場合、又は製造する場合も本発明は適用される。なお、以上の実施例では、帯状光反射面となる垂直光反射面(鏡面)は溝の垂直面に鏡面処理によって形成される金属被膜の両側に形成される。
以上の発明において、光の入光面及び出光面は完全平面又は略完全平面にする必要があり、その平面化処理はプレス等で押す場合、金型で成型する場合の他、切削又は研磨により形成する場合も含む。
【産業上の利用可能性】
【0039】
第1、第2の光制御パネルを組み合わせた立体像結像装置が比較的安価に製造可能となり、映像の分野での立体像の鑑賞を更に広めることができる。
【符号の説明】
【0040】
10:立体像結像装置、11、12:帯状光反射面、13:第1の光制御パネル、14:第2の光制御パネル、16:透明板材、17:傾斜面、18:垂直面、19、19a:溝、20:凸条、22:成型母材、23、24:水平面、26:照射方向、27:垂直光反射面(帯状光反射面)、28:中間母材、29、30、31、32:傾斜面、33:シート、34、35:露出面、36:シート、37:平面プレス、40:透明板材、41、42:傾斜面、43、44:垂直面、45、46:溝、47、48:凸条、50:成型母材、51、52:垂直光反射面(帯状光反射面)、53:中間母材、54、55:シート、56:平面プレス、58、59:平面プレス、60、61:平板金属シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9