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特許7030106タービンエンジン部品の金属基板上の熱バリアシステムを生成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】タービンエンジン部品の金属基板上の熱バリアシステムを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20220225BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20220225BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C23C28/00 B
F01D5/28
C23C14/08 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019510430
(86)(22)【出願日】2017-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 FR2017052284
(87)【国際公開番号】W WO2018037196
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】1657941
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン・サラ,ニハド
(72)【発明者】
【氏名】バドレディン,ジャワッド
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア,オーレリアン
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05015502(US,A)
【文献】特開2010-043351(JP,A)
【文献】米国特許第05350599(US,A)
【文献】特開2000-192256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 28/00
F01D 5/28
C23C 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タービンブレードなどのタービンエンジン部品の金属基板(1)上に熱バリアシステムを生成するための方法にして、
熱バリアシステムが、上方セラミック層(3n)と、上方セラミック層の下に配置された少なくとも1つの中間セラミック層(31、...、3i)とを有する、複数の柱状のセラミック層(3;31、...、3i、...、3n)のスタックを備え、
前記上方セラミック層が、複数の柱状のセラミック層の前記スタックの頂部を形成しており、
前記上方セラミック層が、前記少なくとも1つの中間セラミック層と接触している下面と、どの層とも接触していない上面とを備え、
前記少なくとも1つの中間セラミック層は、前記金属基板および前記上方セラミック層の間に配置されている、方法であって、
該方法は、以下のステップ、すなわち、
前記金属基板(1)上に、前記複数の柱状の層(3;31、...、3i、...、3n)を連続的に堆積させるステップと、
前記金属基板上に、前記少なくとも1つの中間セラミック層を積層するステップと、
前記少なくとも1つの中間層(31、...、3i)の少なくとも1つを圧縮するステップと、
前記少なくとも1つの中間セラミック層の上に、前記上方セラミック層を積層するステップと
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
圧縮が、ショットピーニング、マイクロビーズピーニング、または、レーザショックピーニングによる圧縮であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの中間セラミック層(31、...、3i)の圧縮が、ショットピーニングであることと、前記ショットピーニングのアルメン強度が、F10AからF42Aの間であることとを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板(1)が、ニッケルまたはコバルトベースの超合金の基板であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の柱状のセラミック層(3;31、...、3i、...、3n)の少なくとも1つが、イットリア化されたジルコニアの層であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の柱状のセラミック層(3;31、...、3i、...、3n)が、物理蒸着法によって得られることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
蒸着法が、電子ビーム物理蒸着法(EBPVD)であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
本方法が、上方セラミック層(3n)の圧縮を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
熱バリアシステムが、前記金属基板(1)と、前記複数の柱状のセラミック層(3;31、...、3i、...、3n)との間に配置されたボンディング層(2)をさらに備えていることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ボンディング層(2)が、表面上にアルミナ層を備えた、アルミニウムを形成する材料の層であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
本方法が、前記ボンディング層(2)を圧縮するステップを含んでいることを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ボンディング層(2)の圧縮が、ショットピーニングであることと、前記ショットピーニングのアルメン強度が、F9NからF30Aの間であることとを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、タービンエンジンに関し、より詳細には、高圧タービンブレードなどの、高温にさらされるこれらタービンエンジンの部品の分野である。
【背景技術】
【0002】
航空学の分野における推進手段のために使用されるものなどのタービンエンジンは、1つまたは複数のコンプレッサと連通している周囲の空気の流入部を備えている。この1つまたは複数のコンプレッサのファンは、概して、1つの同一の軸周りに回転駆動する。この空気の一次流は、圧縮された後に、この軸周りに環状に配置された燃焼チャンバに供給され、下流で1つまたは複数のタービンに高温のガスを供給するように、燃料と混合される。タービンロータがコンプレッサのロータを駆動している状態で、1つまたは複数のタービンを通して、高温のガスが膨張する。モータは、タービンの流入部における高温ガスの温度で作動する。このタービンの流入部における高温ガスの温度は、できるだけ高温とすることが試みられる。この理由は、この温度がタービンエンジンの性能を調整するためである。この目的により、高温部分の材料は、これら作動条件に耐えるように選択され、ディストリビュータまたは可動タービンブレードなど、高温ガスが吹き付けられる壁には、冷却手段が設けられている。さらに、これらブレードが、ニッケルまたはコバルトをベースとする超合金を基礎とする金属で構築されていることに起因して、これらブレードを、これら温度において、高温ガスの成分によって生じる腐食および浸食から保護する必要もある。
【0003】
これら部品がこれら過度な条件に耐えることを可能にするために設計された保護手段の中には、その外面上に、「熱バリアシステム」を形成するいくつかの材料の堆積がある。熱バリアシステムは、概して、金属層の表面上に堆積される、約百ミクロンのセラミック層を含んでいる。セラミックと金属基板との間に配される、数十ミクロンの、ボンディング層と呼ばれるアルミニウムの副層は、これら2つの構成要素間の接合状態、および下層の金属の酸化からの保護を向上させることにより、熱バリアを完成させている。概して気相アルミナイド法を介して堆積されるこのアルミニウムの副層は、金属の中間拡散を介して基板に固定され、表面上に保護酸化物層を形成する。この技術の実施の例は、仏国特許発明第2928664号明細書の文献に記載されている。
【0004】
セラミックで形成された熱バリア自体に関しては、そのセラミックで形成されるものの用途に応じて、いくつかの方法で生成することができる。熱バリアに関する構造には、おおむね2つのタイプが存在する。柱状のバリアのタイプは、互いに隣接して並置され、基板の表面に対して垂直に延びる柱の構造である。薄板状または等方性のバリアは、一様な層として、基板表面上に延びる。
【0005】
柱状のバリアは概して、EBPVD(電子ビーム物理蒸着法)と呼ばれる方法で生成される。この方法では、高真空状態で、装填されたタングステンフィラメントによって放射された電子ビームにより、ターゲットのアノードに衝撃が与えられる。電子ビームは、ターゲットの分子を気相に変更する。これら分子は次いで、固体の形態で凝結し、アノードの材料の薄い層で保護されることになる部分を回復させる。これら熱バリアは、良好な熱耐性を特徴とするが、比較的高い熱伝導性をも特徴としている。
【0006】
熱バリアシステムは、周期的な酸化、腐食、CMAS(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、およびシリコンの酸化物に関する)と一般に呼ばれる酸化物の粒子のセットが豊富な環境にさらされることの現象の組合せに起因して、老朽化する。老朽化は、システムの性能が迅速に低下をもたらす。
【0007】
複数のメカニズムが生成され、特に、
酸化の増大に起因する、ボンディング層の粗さの増大が、熱バリアの分離に繋がることと、
CMAS酸化物の、セラミックの柱間の空間への浸透により、そのセラミックが弱くなることと、
セラミック材料の粘着性が低いことに起因して、外部の物体の衝撃に対する耐性が低いことと、が生成される。
【0008】
V HAROK ET AL.:“Elastic and inelastic effects in compression in plasma-sprayed ceramic coatings”,JOURNAL OF THERMAL SPRAY TECHNOLOGY,vol.10,no.1,1 March 2001,pages 126-132の文献は、プラズマバーナー溶射によって得られるジルコンコーティングの圧縮の研究である。この文献は、熱バリアシステム内の柱状のセラミック層の圧縮は記載していない。
【0009】
欧州特許出願公開第1531232号明細書の文献には、損傷した熱バリアシステムの修復のための方法が記載されている。この文献は、ガラスビーズを使用した研磨方法によって熱バリアを除去する可能性を述べているが、熱バリアシステム内の柱状のセラミック層の圧縮ショットピーニングは開示していない。
【0010】
国際公開第2009/127725号の文献には、アクセスが困難である表面を含む金属表面の、超音波によるショットピーニングの方法が記載されている。この文献も、熱バリアシステム内の柱状のセラミック層の圧縮は記載していない。
【0011】
本発明は、システムの老朽化を抑制することを可能にする熱バリアシステムを提供するための方法を提案することにより、これら欠点を克服することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】仏国特許発明第2928664号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1531232号明細書
【文献】国際公開第2009/127725号
【非特許文献】
【0013】
【文献】V HAROK ET AL.:“Elastic and inelastic effects in compression in plasma-sprayed ceramic coatings”,JOURNAL OF THERMAL SPRAY TECHNOLOGY,vol.10,no.1,1 March 2001,pages 126-132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このため、本発明は、目的として、高圧タービンブレードなどのタービンエンジン部品の金属基板上に熱バリアシステムを生成するための方法であって、熱バリアシステムが、少なくとも1つの柱状のセラミック層を備えている、方法を有している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、本方法は、前記少なくとも1つの柱状のセラミック層の少なくとも1つを圧縮するステップを含んでいる。圧縮は、部分的または全体的とすることができる。圧縮されたセラミック層は、このため、少なくとも1つの圧縮された部分を備えている。
【0016】
T.Frey and W.Pfeiffer,“Shot peening of Ceramics:Damage or Benefit?”,International Conference on Shot Peening,2002,pp.1-10の文献には、セラミックのショットピーニングによって圧縮応力を導入することが、セラミックに損傷を与えることなく可能であることが示されている。
【0017】
圧縮ステップは、本発明において、特定のセラミックに使用され、また、最新技術では考慮されていない、非常に特別な目的のために使用される。この目的は、1つまたは複数の柱状のセラミック層の柱間の空間を密にすることであり、CMAS酸化物の浸透を制限すること、熱バリアシステムの耐用年数を増大させること、および、熱バリアシステムの機械的特性を向上させることに関して効果がある。
【0018】
圧縮により、圧縮された柱状のセラミック層または複数の層の柱間の空間を低減することが可能である。圧縮により、圧縮された層(複数の場合もある)の表面における変形効果が誘導され、前記変形により、柱間の空間が低減されることになる。
【0019】
圧縮は、たとえば、ショットピーニング、マイクロビーズピーニング、または、レーザショックピーニングによる圧縮とすることができる。
【0020】
前記柱状のセラミック層の少なくとも1つの圧縮は、ショットピーニングとすることができ、前記ショットピーニングのアルメン強度は、F10AからF42Aの間であることが有利である。
【0021】
このアルメン強度は、アルメン(General Motors,USA)によって開発され、一般的に採用されている技術的基準である(AFNOR NFL 06-832 standard)。焼き入れおよび焼き戻しがされたXC65タイプの炭素鋼で形成されたテストピースが使用され、支持部上にクランプされ、ショットブラストされる部品のすぐ近くで、ショットの流れにさらされる。テストピースがそのクランプから開放されると、ショットブラストされた面が延ばされることから、変形している。特徴的な曲げがこうして観測され、アルメン曲げと呼ばれる。規格により、N、A、Cの3つのタイプのテストピースが規定されている。例として、F15Aのアルメン強度のショットピーニングは、Fがフレンチ規格(French Standard)、15が0.15mmの弧の高さ、AがタイプAのテストピースを意味している。
【0022】
この強度を得るために、以下のパラメータ:すなわち、
-球状のマイクロビーズ(ショットピーニングは、対象の表面構造を変更し、また、圧縮応力を導入するための、ショットピーニングマシンを使用して、マイクロビーズを、対象の表面上に射出することから成る技術である)であること、
-WC、ZrO、SiO、Al、鋼の、マイクロビーズの材料であること、
-ビーズのサイズが、ノズルでのショットピーニングに関しては、300μmから1mmの間であり、超音波でのショットピーニングに関しては0.8mmから3mmの間であり、振動ショットピーニングに関しては1mmから6mmの間であること、
-ノズルでのショットピーニングの入射角が、60度から90度の間であること、
が単独で、または、好ましくは組み合わせて使用され得る。
【0023】
前記基板は、通常は、ニッケルまたはコバルトベースの超合金基板である。
【0024】
前記少なくとも1つの柱状のセラミック層は、イットリア化されたジルコニアの層とすることができる。
【0025】
前記少なくとも1つの柱状のセラミック層は、物理蒸着法によって得ることができる。
【0026】
物理蒸着法は、電子ビーム物理蒸着法(EBPVD)とすることができる。
【0027】
熱バリアシステムは、1つまたは複数の柱状のセラミック層を備えることができ、本方法は、柱状のセラミック層の1つまたはすべてを圧縮することを含むことができる。
【0028】
本方法は、上方セラミック層の圧縮、または、前記上層の真下に位置するセラミック層の圧縮を特に含むことができる。
【0029】
熱バリアシステムは、前記金属基板と、前記少なくとも1つの柱状のセラミック層との間に配置されたボンディング層をさらに備えることができる。
【0030】
前記ボンディング層は、表面上にアルミナ層を備えた、特にアルミニウムを形成する、材料の層とすることができる。
【0031】
本方法は、前記ボンディング層を圧縮するステップを含むことができる。前記ボンディング層の圧縮が、ショットピーニングによるものである場合、ショットピーニングのアルメン強度は、F9NからF30Aの間であることが有利である。
【0032】
本方法は、
金属基板上にボンディング層を形成することであって、このボンディング層が、圧縮され得る、ボンディング層を形成することと、
ボンディング層上に、1つまたは複数のセラミック層を形成することであって、前記セラミック層または複数の層の少なくとも1つが、圧縮され得る、1つまたは複数のセラミック層を形成することと、を連続して含むことができる。
【0033】
本発明は、高圧タービンブレードなどのタービンエンジン部品も、目的として有している。前記タービンエンジン部品は、上述の方法によって生成される熱バリアシステムを備えている。ブレードは、たとえば、高圧タービンの固定ブレードまたは可動ブレードとすることができる。
【0034】
非限定的な例として提供され、添付図面を参照する以下の詳細な説明を読むことにより、本発明がよりよく理解され、本発明の他の詳細、特徴、および利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1従来技術のタービンエンジンブレードの熱バリアシステムの概略断面図である。
図2】第1の実施形態の代替形態に係る、本発明に係る方法に従って生成された熱バリアシステムの概略断面図である。
図3】第1の実施形態の代替形態に係る、本発明に係る方法に従って生成された熱バリアシステムの概略断面図である。
図4】第2の実施形態に係る、本発明に係る方法に従って生成された熱バリアシステムの概略断面図である。
図5】第3の実施形態の代替形態に係る、本発明に係る方法に従って生成された熱バリアシステムの概略断面図である。
図6】第3の実施形態の代替形態に係る、本発明に係る方法に従って生成された熱バリアシステムの概略断面図である。
図7】第4の実施形態に係る、本発明に係る方法に従って生成された熱バリアシステムの概略断面図である。
図8】第5の実施形態に係る、本発明に係る方法に従って生成された熱バリアシステムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、タービンブレードの表面上に配置された熱バリアシステムの構成の断面図であり、このタービンブレードは、図の左に向けられた矢印によって示される高温ガス流に入れられている。通常はニッケルまたはコバルトベースの超合金である、ブレードを形成する金属は、基板1を形成している。この基板1の上に、ボンディング層と呼ばれるアルミニウムで形成された副層2が堆積され、基板1とセラミック層3との間に挟まれている。ボンディング層2の機能は、セラミック層3を保持することと、逆に向いた2つの矢印によって示された、膨張率の高い基板1と膨張率の低いセラミック3との間に存在する、膨張の差を、このボンディング層2が吸収することを可能にするために、全体に一定の弾力性を与えることとである。
【0037】
ボンディング層2は、MCrAlYの組成とすることができる。組成中、Mは、Fe、Ni、Co、およびこれらの組合せを示している。この層は、たとえばAPS(空気プラズマ溶射)のタイプの、従来のプラズマ溶射によって得ることができる。MCrAlYタイプのボンディング層2は、ニッケルアルミナイドで置換され得るか、白金で変更されるか、ガンマ/ガンマ’-MCrAlYタイプの層を有することができる。
【0038】
本明細書に示されているセラミック3は、柱状の構造を有しており、これにより、柱間のクラックが現れることに起因する横方向の移動を可能にし、また、セラミック3に良好な耐用年数を与える。このため、アルミニウムは、タービンエンジンの流れの中で循環するガスによって搬送される酸素と接触させられ、これにより、バリアの熱伝導性が劣ったものとなり、バリアへの損傷が進行することとなる。
【0039】
セラミックコーティングは、たとえば、電子ビーム物理蒸着法(EBPVD)によって生成される、1つまたは複数の層のスタックから形成することができる。第1のセラミック層は、好ましくは、この部分的に安定化された、イットリア化されたジルコニアのベース(YSZ)を含んでいる。他のセラミック層に関し、異なるタイプの層が考慮され得る。
【0040】
たとえば、AlまたはYなどの一酸化物、
1つまたは複数のレアアース酸化物でドープされたジルコニア、
たとえば、GdZr、SmZr、またはYbZr12などの、レアアースのジルコン酸塩、
たとえば、Ba(Mg1/3Ta2/3)O、La(Al1/4Mg1/2Ta1/4)Oなどの灰チタン石、
たとえば、REが周期表のLaからGdまでの範囲の元素を示し、Mが、Mg、MnからZn、Cr、およびSmから選択される元素を示す、REMAl1119の一般式のヘキサアルミン酸塩、
ランタニドオルトリン酸塩である。
【0041】
熱バリアシステムは、ブレードの耐用年数を延長し、ガスの温度を増大させ、ひいてはエンジンの出力を増大させるように機能する。稼働中は、システムの様々な成分の構造および組成は、セラミック層の焼結、ボンディング層の酸化、および、基板との相互拡散現象の作用の下で変化し、その結果、様々な層の特性が変化し、二面間のゾーンの耐性が変化する。外部の熱機械的応力に関連するこれら変化は、ボンディング層の粗さが原因で、ボンディング/セラミックの層の界面における層間剥離に繋がり、最終的に、熱バリアシステムが剥がれることになる。これら性能低下のプロセスは、外部環境との相互作用によって加速され得る。
【0042】
このことを克服するために、本発明によれば、少なくとも1つの柱状のセラミック層の圧縮が行われる。
【0043】
第1の実施形態では、上方の柱状のセラミック層の圧縮が実施される。図2に示すものなど、セラミックコーティングは、たとえばYSZタイプの、単一のセラミック層3を備えている。セラミック層3は、表面における柱間の空間を密にするように、圧縮操作C3を経る。これには、
CMAS酸化物の浸透の制限、
熱バリアシステムの耐用年数の増大、
表面硬さなどの機械的特性の向上、
腐食に対する耐性の増大、および、
熱バリアシステムのテナシティ(tenacity)の増大の効果がある。
【0044】
セラミック層3の圧縮は、図2では、符号C3が付され、圧縮された層の部分を示している。層3は、部分的または全体的に圧縮され得る。すなわち、層3の高さの全体か一部にわたって圧縮され得る。
【0045】
図3に示す代替形態では、セラミックコーティングは、複数のnのセラミック層を備えている。下層31は、ボンディング層2の上にある。熱バリアシステムの表面の方向には、中間層3iと、上層3nとが存在する。上方のセラミック層3nの圧縮は、図2では、符号C3nが付されている。層3nは、部分的または全体的に圧縮され得る。すなわち、層3nの高さの全体か一部にわたって圧縮され得る。圧縮C3nにより、熱バリアシステムの表面における柱間の空間を密にすること、および、図2に関して述べた利点と同じ利点を達成することが可能になる。
【0046】
図4に示される第2の実施形態では、nの層を備えたセラミックコーティングの各層は、部分的または全体的に圧縮される。このため、たとえばYSZタイプの、第1の層31が、圧縮C31を受け、各中間層3iが、圧縮C3iを受け、上層3nが、圧縮C3nを受ける。
【0047】
タービンブレードの基板1は、あらかじめカバーされるか、MCrAlYタイプのボンディング層2ではカバーされない。ここで、Mは、Fe、Ni、Co、およびこれらの組合せを示している。ボンディング層2は、たとえばAPS(空気プラズマ溶射)のタイプの、従来のプラズマ溶射によって得ることができる。MCrAlYタイプのボンディング層2は、ニッケルアルミナイドで置換され得るか、白金で変更されるか、ガンマ/ガンマ’-MCrAlYタイプの層を有することができる。
【0048】
セラミックコーティングは、電子ビーム物理蒸着法(EBPVD)の方法によって生成される、nの層31、...、3i、...、3nのスタックから形成することができる。第1の層3iは、好ましくは、部分的に安定化された、イットリア化されたジルコニアのベースを含んでいる。
【0049】
EBPVDによって各セラミック層が生成された後に、圧縮操作が行われる。この圧縮操作により、粗さの少ない表面の条件を得ることが可能になる。このことは、より小さい柱の再生成(regermination)の向上、および、上層が形成されるにつれてますます密になる柱間の空間の効果を有する。これら圧縮は、
CMAS酸化物の浸透の制限、
熱バリアシステムの耐用年数の増大、および、
熱バリアシステムのテナシティの増大をもたらす。
【0050】
図5および図6に示す、第3の実施形態では、第1の実施形態の2つの代替形態の熱バリアシステムのボンディング層が、やはり部分的または全体的な圧縮を受けている。このため、熱バリアシステムは、圧縮状態に置かれた、そのボンディング層と、その上方セラミック層との両方を有している。図5は、単一のセラミック層3を有する熱バリアシステムを示しているが、一方、図6は、nのセラミック層31、...、3i、...、3nを有する熱バリアシステムを示している。
【0051】
タービンブレードの基板1は、MCrAlYタイプのボンディング層2であらかじめコーティングされている。ここで、Mは、Fe、Ni、Co、およびこれらの組合せを示している。ボンディング層2は、たとえばAPS(空気プラズマ溶射)のタイプの、従来のプラズマ溶射によって得ることができる。MCrAlYタイプのボンディング層2は、ニッケルアルミナイドで置換され得るか、白金で変更されるか、ガンマ/ガンマ’-MCrAlYタイプの層を有することができる。
【0052】
ボンディング層2の圧縮により、
熱サイクル中のこの層の変形動力学における低下の利益を伴う、ボンディング層2の部分的または全体的な高密度化、および、その粗さの制御、
層2の硬度の増大の効果を有する、残留応力の発生が可能になる。
【0053】
図7に示す、第4の実施形態では、ボンディング層2および、最後から二番目の上方のセラミック層3(n-1)が、部分的または全体的に、圧縮C2と、圧縮C3(n-1)とをそれぞれ受けている。
【0054】
最後に、第5の実施形態では、ボンディング層2および、すべてのセラミック層31、...、3i、...、3nは、圧縮を受けている(図8)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8