(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】パイプ修復用組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/163 20060101AFI20220225BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20220225BHJP
B29C 73/02 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F16L55/163
H01B1/22 A
B29C73/02
(21)【出願番号】P 2019513492
(86)(22)【出願日】2017-05-19
(86)【国際出願番号】 GB2017051413
(87)【国際公開番号】W WO2017199049
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-11
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519099911
【氏名又は名称】トーマス ジェームズ マクグラス
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ジェームズ マクグラス
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-155719(JP,A)
【文献】特開2013-181578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0362115(US,A1)
【文献】特表2017-524875(JP,A)
【文献】特表平03-505311(JP,A)
【文献】特開2015-175449(JP,A)
【文献】独国実用新案第202014004489(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/163
H01B 1/22
B29C 73/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプを修復するための方法であって,該方法が,パイプの要修復個所における該パイプの内面に,バインダーと,該バインダーを横切る静電荷生成を低減する導電性/散逸性材料とを施すことを含
み、
前記導電性/散逸性材料が,管状メッシュとして供給される複数の細長素子の形態であり,
前記管状メッシュは,前記パイプに,前記細長素子の幾つかの部分若しくはセクションが前記パイプの内部スペースに露出し,前記管状メッシュにおける露出した前記部分若しくはセクションが,バインダー上の若しくは前記バインダーを横切る静電荷生成を散逸させる,導電性を有する通路を提供できるよう,部分的に前記バインダー内に埋設されるように配置され,又は
前記管状メッシュは,前記パイプに,バインダーの層が前記バインダーの内面と前記管状メッシュとの間に配置されるように,完全に前記バインダー中に埋設されるように配置され,前記管状メッシュは,前記バインダーの前記内面上における静電荷生成を導通させ,前記管状メッシュによって伝導/散逸させることができるのに十分な薄さである,
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって,前記導電性/散逸性材料を導電性材料から形成する,方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって,前記バインダー及び
前記導電性/散逸性材料を共に前記パイプの前記内面に施す,方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の方法であって,該方法が,
a) 前記バインダーを前記パイプにおける要修復箇所で該パイプの前記内面に施すステップと,
b) 前記導電性/散逸性材料を前記パイプにおける要修復箇所で,前記バインダーと接触し,かつ,該バインダーを実質的に横切るように,前記パイプの前記内面に施すステップと,
を含む,方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の方法であって,前記バインダーにより前記パイプにおける円筒部をカバーする,方法。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか一項に記載の方法であって,前記導電性/散逸性材料が銅を含む,方法。
【請求項7】
パイプを修復するためのキットであって,該キットが,
- バインダーと,
-
管状メッシュとして供給される複数の細長素子の形態である導電性/散逸性材料と,
を備える,キット。
【請求項8】
パイプを修復するための組成物であって,該組成物が,
- バインダーと,
- 該バインダーを横切る静電荷生成を低減
し,管状メッシュとして供給される複数の細長素子の形態である導電性/散逸性材料と,
を備える,組成物。
【請求項9】
バインダーと,該バインダーを横切る静電荷生成を低減する導電性/散逸性材料とを備える少なくとも1つの部分を備え
るパイプであり,
前記導電性/散逸性材料が,管状メッシュとして供給される複数の細長素子の形態であり,
前記管状メッシュは,前記パイプに,前記細長素子の幾つかの部分若しくはセクションが前記パイプの内部スペースに露出し,前記管状メッシュにおける露出した前記部分若しくはセクションが,バインダー上の若しくは前記バインダーを横切る静電荷生成を散逸させる,導電性を有する通路を提供できるよう,部分的に前記バインダー内に埋設されるように配置され,又は
前記管状メッシュは,前記パイプに,バインダーの層が前記バインダーの内面と前記管状メッシュとの間に配置されるように,完全に前記バインダー中に埋設されるように配置され,前記管状メッシュは,前記バインダーの前記内面上における静電荷生成を導通させ,前記管状メッシュによって伝導/散逸させることができるのに十分な薄さである,パイプ。
【請求項10】
導電性/散逸性材料を使用してパイプを修復することにより,パイプの修復部を提供する方法であって,前記導電性/散逸性材料により前記パイプの修復部における静電荷生成を低減
し,
前記導電性/散逸性材料が,管状メッシュとして供給される複数の細長素子の形態であり,
前記方法は,
前記管状メッシュを,前記パイプに,前記細長素子の幾つかの部分若しくはセクションが前記パイプの内部スペースに露出し,前記管状メッシュにおける露出した前記部分若しくはセクションが,バインダー上の若しくは前記バインダーを横切る静電荷生成を散逸させる,導電性を有する通路を提供できるよう,部分的に前記バインダー内に埋設されるように配置するステップ,又は
前記管状メッシュを,前記パイプに,バインダーの層が前記バインダーの内面と前記管状メッシュとの間に配置されるように,完全に前記バインダー中に埋設されるように配置するステップであり,前記管状メッシュは,前記バインダーの前記内面上における静電荷生成を導通させ,前記管状メッシュによって伝導/散逸させることができるのに十分な薄さである,ステップ
を含む方法。
【請求項11】
バインダーと,該バインダーを横切る静電荷生成を低減する導電性/散逸性材料とを含む組成物を使用して,パイプを修復する,方法
であり,
前記導電性/散逸性材料が,管状メッシュとして供給される複数の細長素子の形態であり,
前記方法は,
前記管状メッシュを,前記パイプに,前記細長素子の幾つかの部分若しくはセクションが前記パイプの内部スペースに露出し,前記管状メッシュにおける露出した前記部分若しくはセクションが,バインダー上の若しくは前記バインダーを横切る静電荷生成を散逸させる,導電性を有する通路を提供できるよう,部分的に前記バインダー内に埋設されるように配置するステップ,又は
前記管状メッシュを,前記パイプに,バインダーの層が前記バインダーの内面と前記管状メッシュとの間に配置されるように,完全に前記バインダー中に埋設されるように配置するステップであり,前記管状メッシュは,前記バインダーの前記内面上における静電荷生成を導通させ,前記管状メッシュによって伝導/散逸させることができるのに十分な薄さである,ステップ
を含む,方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,パイプを修復するための方法,キット及び組成物に関する,特に,本発明は,潜在的に可燃性の液体を輸送するためのパイプ修復するための方法,キット及び組成物に関する,また,本発明は,パイプを修復するためのキット又は組成物の使用方法と,そのような方法,キット又は組成物で修復されたパイプにも関する。
【背景技術】
【0002】
液体を輸送するためのパイプ,例えば排液を除去するためのドレンパイプは,しばしば機械的応力,衝撃又は腐食によって損傷し,従って修復が必要となる。このような修復は,しばしば,パイプにおける要修復個所に適用されて硬化させるポリマー樹脂を使用して行われる。その結果,損傷個所をカバーする固体部分が残され,これはパイプが輸送することを意図する液体に対して十分な抵抗性を有する。このような修復は,通常,パイプの要修復箇所を含み,かつカバーするパイプの内面における円筒部に対して,すなわち,損傷がパイプの全周に亘って存在するか否かに関わらず,パイプのある長さに亘るパイプ内部の全周をカバーする部分に対して,ポリマー樹脂を施すことによって行われる。このような方法でのパイプの修復は,修復時間の観点から効率的であり,損傷の一部がポリマー樹脂でカバーされることなく,未修復状態で残されるリスクを低減することが確認されている。そのような円筒部をカバーする修復は,技術者により,パイプの要修復箇所から離れた場所から,例えば検査用ハッチから,適当な機材を使用して行われる。
【0003】
このような方法での損傷パイプの修復は,しばしば,損傷パイプを交換するよりも費用効果的である。これは,修復プロセスが,埋設されたパイプを掘削してその損傷部を交換する場合と比較して,より非破壊的であり,より短い中断時間しか必要とされないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接地された導電性/散逸性のパイプ,例えば潜在的に可燃性を有する液体を輸送するために使用されるパイプにつき,通常のポリマー樹脂を使用して修復する場合,特に,パイプの修復がパイプ内面の円筒部において行われると,パイプの修復箇所が電気絶縁性になり得る。その場合,パイプの電気絶縁部又は部分は,パイプの修復箇所,例えばパイプにおける修復された円筒部の何れかの側に静電荷を蓄積させることがあり得る。この蓄積した静電荷は,静電放電によるスパークを生成し,パイプ内における可燃性液体の着火を生じさせることがある。このような着火は,パイプ及び関連するプラント基材に深刻な損傷を生じさせ,プラントの作業員に傷害を生じさせ,パイプからの液体の漏洩により環境の汚染及び被害を生じさせることになりかねない。
【0005】
本発明の1つの目的は,特に,本明細書等において特定されていると否とを問わず,従来技術における少なくとも1つの欠点を解消する方法,キット,組成物又は使用方法,あるいは既存の方法,キット,組成物又は使用方法の代替案を提供することである。例えば,本発明の1つの目的は,静電荷の蓄積の潜在性が低減され,従ってパイプ内の可燃性液体の着火リスクが低減されたパイプの修復部を提供する,パイプの修復方法を提供することであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば,添付した特許請求の範囲に記載した方法,キット,組成物及び使用方法が提供される。本発明の他の特徴は,従属請求項及び以下の記載から明らかである。
【0007】
本発明の第1態様によれば,パイプの修復方法が提供される。この方法は,パイプの要修復個所における該パイプの内面に,バインダーと,該結合剤を横切る静電荷生成を低減する導電性/散逸性材料とを施すステップを備える。
【0008】
導電性/散逸性材料は,付加的及び/又は代替的に,少なくとも部分的に導電性である材料として定義することができ,例えば帯電防止材料,散逸性材料又は導電性材料を含むことができる。絶縁性材料は,その材料に沿って静電荷が導通しないため,バインダーを横切る静電荷生成を低減するものではない。
【0009】
導電性/散逸性材料は,十分な導電性を提供することによりバインダーの導電性を高め,好適にはバインダーの導電性を,少なくとも,結合剤が配置されない個所におけるパイプの導電性(すなわち,損傷及び修復前のパイプの導電性)まで高めるものである。
【0010】
「結合剤を横切る」とは,パイプの要修復箇所における結合剤の少なくとも一部の全長及び/又は全幅を横切ることを意味する。
【0011】
発明者らは,第1態様に係る方法を実施することにより修復されたパイプが,修復個所において十分な導電性を有し,その導電性が,パイプの修復個所を横切る静電荷生成を低減し,又は好適に防止し,従ってバインダーを横切る静電放電により発生されたスパークがパイプ内の可燃性液体を着火させるリスクを低減するのに十分なものであることを見出した。従って,第1態様に係る方法は,特に,パイプが通常は可燃性液体を輸送するために使用される場合のより安全な修復を提供し,従って配管類,関連するプラント,及びパイプ/プラントの作業員を損傷や傷害から保護するものである。
【0012】
第1態様に係る方法は,耐薬品性に優れ,及び/又はより費用効果的であるバインダー,例えばポリシリケート樹脂又はエポキシ樹脂を使用して,パイプの要修復個所におけるバインダー上での,又は結合剤を横切る静電荷生成のリスクを伴わずにパイプの修復を可能とし得るものである。
【0013】
第1態様に係る方法は,導電性の結合剤を使用する類似の方法と対比して,より費用効果的であり,及び/又はより耐薬品性に優れた修復を提供し得るものである。
【0014】
好適には,本方法は,修復部を備えるパイプを提供する。好適には,本方法は,散逸性又は導電性である修復部を備えるパイプを提供する。好適には,本方法は,散逸性である修復部を備えるパイプを提供する。
【0015】
表面抵抗値が105Ω/sq未満である材料は,導電性材料として分類することができる。導電性材料は,電気抵抗が比較的低く,電子がこれら材料の表面を横切って,又は体積を通して容易に流れる。このような材料において,電荷は大地に,又はその材料が接触又は近接する他の導電性物体に移動する傾向を呈する。
【0016】
単位長さ当たりの電気抵抗値が103Ω/m未満であるパイプは,導電性であるものと考えることができる。
【0017】
電気抵抗値が105~1012 Ω/sqの材料は,散逸性材料として分類することができる。散逸性材料において,電子は,導電性材料におけるよりも遅く,そしてより制御された態様で,大地まで流れる。
【0018】
単位長さ当たりの電気抵抗値が103~106 Ω/mのパイプは,散逸性であるものと考えることができる。
【0019】
表面抵抗値が1012Ω/sq超である材料は,絶縁性材料として分類することができる。絶縁性材料は,その表面を横切るか,又は体積を通しての電子の流れを防止し,又は制限する。絶縁性材料は,比較的高い電気抵抗値を有し,接地するのが困難である。静電荷は,これらの材料上における部位に長時間に亙って滞留する。
【0020】
単位長さ当たりの電気抵抗値が106Ω/mを超えるパイプは,絶縁性であるものと考えることができる。
【0021】
好適には,導電性/散逸性材料は,付加的及び/又は代替的に,電気抵抗値が1012 Ω/sq未満である材料として定義することができる。
【0022】
好適には,第1態様に係る方法が実施されるパイプは,導電性又は散逸性材料から形成される。好適には,第1態様に係る方法が実施されるパイプは,導電性又は散逸性である。例えば,本方法は,導電性/散逸性の粘土,好適には磁器化された粘土から形成されるパイプ,例えばNaylor Drainage社から供給されるThermachemパイプを修復するために実施することができる。
【0023】
好適には,本方法は,修復部を備えるパイプを提供し,該修復部の電気抵抗値は1012 Ω未満,好適には1011 Ω未満,好適には1010 Ω未満である。好適には,本方法は,修復部を備えるパイプを提供し,該修復部の表面電気抵抗値は1012 Ω/sq未満,好適には1011 Ω/sq未満,好適には1010 Ω/sq未満である。
【0024】
好適には,本方法は,修復部を備えるパイプを提供し,該修復部の電気抵抗値は105~1012 Ωの間,好適には106~1011 Ωの間,好適には107~1010 Ωの間である。好適には,本方法は,本方法は,修復部を備えるパイプを提供し,該修復部の表面電気抵抗値は105及び1012 Ω/sqの間,好適には106~1011 Ω/sqの間,好適には107~1010 Ω/sqの間である。
【0025】
好適には,本方法は,修復部を備えるパイプを提供し,該修復部の好適には結合剤を横切る単位長さ当たりの電気抵抗値は106 Ω/m未満,好適には105 Ω/m未満,例えば104 Ω/m未満,好適には103 Ω/m未満である。
【0026】
好適には,本方法は,バインダーを横切る耐薬品性を有する修復部を備えるパイプを提供し,従って耐薬品性に優れた修復部を備えるパイプを提供する。
【0027】
好適には,第1態様に係る方法を実施した後,パイプは修復され,導電性又は散逸性を維持する。
【0028】
パイプは,パイプの内部スペースを包囲する内面を有し,その内部スペースは,使用時に液体が流れるスペースである。好適には,バインダーは,パイプの要修復個所に施された後にパイプの内部スペースと対向する内面を有する。
【0029】
導電性/散逸性材料は,パイプの要修復個所に施されたとき,特に導電性/散逸性材料が少なくとも部分的にバインダーと接触し,少なくとも部分的にパイプの内部スペースに向けて露出するように配置されたときに,結合剤を横切る静電荷生成を低減する。
【0030】
導電性/散逸性材料は,結合剤の内面上で結合剤と接触するように配置することができる。
【0031】
好適には,導電性/散逸性材料を部分的にバインダー中に,そして部分的に結合剤の外部に配置することにより,導電性/散逸性材料は,例えばバインダーに沿う液体の流れによって結合剤の内面上に生成され得る静電荷のための十分な導電路を形成する。例えば,導電性/散逸性材料は,部分的にバインダー内に埋設することができる。
【0032】
幾つかの実施形態において,導電性/散逸性材料は,完全にバインダー中に埋設することができる。
【0033】
好適には,パイプは,好適には液体,好適には可燃性液体を輸送するためのドレンパイプである。そのような可燃性液体は,例えば,可燃性を有する炭化水素溶媒,あるいは化学的製造プロセスから得られた可燃性の製品,副産物又は残留物を含む炭化水素溶媒である。
【0034】
バインダーは,好適にはポリマー材料,好適には,ポリシリケート樹脂又はエポキシ樹脂である。バインダーは,耐薬品性を有するも電気的に絶縁性である。好適には,バインダーは,パイプの要修復個所への付着を容易とする流動可能な状態と,パイプに付着してから所定時間の経過後に達成される硬化(固化)状態を有する。バインダーは,2種以上の成分,例えば液体成分を混合することにより製造することができ,この混合は,例えばパイプの要修復箇所に付着した後に,バインダーを硬化させるための化学反応を開始させるものである。適当なバインダー,液体バインダー成分及びそのようなバインダーの表面への付着方法は,当業者において既知である。例えば,バインダーは,エポキシ樹脂成分A及びBを混合させて形成することができる。
【0035】
導電性/散逸性材料は,導電性/散逸性の粒子形態とすることができ,少なくとも1つの細長素子の形態とすることもできる。
【0036】
好適には,導電性/散逸性材料は,帯電防止材料,散逸性材料又は導電性材料から形成することができる。
【0037】
電気抵抗が105Ω/mに満たない材料は,導電性材料として分類することができる。
【0038】
電気抵抗が105~109 Ω/mである材料は,散逸性材料として分類することができる。
【0039】
電気抵抗が109~1012 Ω/mである材料は,帯電防止材料として分類することができる。
【0040】
電気抵抗が1013Ω/mを超える材料は,絶縁性材料として分類することができる。
【0041】
好適には,導電性/散逸性材料は,電気抵抗が1×10-3 Ωm未満,好適には1×10-6 Ωm,例えば1×10-7Ωm未満,好適には2×10-8 Ωmである材料から形成される。
【0042】
導電性/散逸性材料は金属,好適には銅,金,アルミニウム,鉄及び鋼から選択される金属を備えることができる。好適には,導電性/散逸性材料は銅を含む。
【0043】
導電性/散逸性材料は,実質的に金属,好適には銅,金,アルミニウム,鉄及び鋼から選択される金属よりなる構成とすることができる。好適には,導電性/散逸性材料は,実質的に銅よりなる。
【0044】
導電性/散逸性材料は,金属,好適には銅,金,アルミニウム,鉄及び鋼から選択される金属から形成することができる。好適には,電性/散逸性材料は銅金属から形成される。
【0045】
好適には,導電性/散逸性材料は,導電性材料から形成される。
【0046】
発明者らは,導電性/散逸性材料を導電性材料,例えば銅から形成すれば,パイプの修復箇所を横切る静電荷生成を極めて効果的に低減できることを見出した。導電性材料から形成された導電性/散逸性材料は,散逸性及び/又は導電性,好適には散逸性として分類することのできる電気抵抗を有するパイプの修復箇所を容易に形成することができる。
【0047】
バインダー及び導電性/散逸性材料は,パイプの内面に対して順次に付着させることができる。例えば,バインダーをパイプの要修復部分においてパイプの内面に付着させ,これに引き続いて導電性/散逸性材料をパイプの要修復部分におけるバインダーに付着させることができる。代替的に,導電性/散逸性材料をバインダーをパイプの要修復部分においてパイプの内面に付着させ,これに引き続いてバインダーをパイプの要修復部分におけるバインダーに付着させることができる。
【0048】
好適には,バインダー及び導電性/散逸性材料はパイプの内面に一緒に付着させる。
【0049】
例えば,バインダー及び導電性/散逸性材料は,パイプの要修復個所におけるパイプの内面に同時に付着させることができる。
【0050】
代替的に,バインダー及び導電性/散逸性材料は,最初に組み合わせた後,パイプの要修復個所におけるパイプの内面に一緒に付着させることができる。
【0051】
バインダー及び導電性/散逸性材料をパイプの要修復個所におけるパイプの内面に付着させる前に組み合わせれば,単一の付着プロセスのみで修復を完結することができる利点がある。また,このような方法は,導電性/散逸性材料を,修復部におけるバインダー内における導電性/散逸性材料の部分的又は完全な埋設に必要とされる限度において,バインダー内に部分的又は完全に浸漬することができる利点もある。
【0052】
好適には,本方法は:
a) バインダーを,パイプにおけるパイプの要修復個所に付着させるステップと;
b) 導電性/散逸性材料を,パイプにおけるパイプの要修復個所において,バインダーと接触し,かつ,バインダーを実質的に横切るように,バインダーに付着させるステップと;
を備える。
【0053】
好適には,本方法におけるステップは,ステップa)に引き続いてステップb)を実行するものとする。
【0054】
好適には,導電性/散逸性材料はバインダーを,パイプ内における流れ方向,すなわち使用時に液体がパイプ内を流れる方向と略整列する方向においてバインダーを横断する。
【0055】
要修復個所を流れる液体は,液体がバインダーを横切って流れる際に,バインダーの二点間で静電荷を生成することがある。従って,導電性/散逸性材料がバインダーを横断するように配置されれば,バインダーを横切るように生成され得る静電荷が導電性/散逸性材料によって効果的に放電される利点を達成することができる。
【0056】
導電性/散逸性材料は,好適にはバインダーをその大部分に亘って横断し,バインダーの十分な部分により,静電荷の大幅な生成を防止する。これを達成するため,導電性/散逸性材料は,バインダーの全長及び/又は全幅を横切るものとすべきでない場合がある。
【0057】
好適には,パイプは円筒形状である。
【0058】
パイプの長さは任意の長さ,例えば少なくとも3 m,好適には少なくとも5 m又は少なくとも10 mとすることができる。
【0059】
パイプは地中に埋設されることがあり,従って,除去及び交換のために掘削を伴わずにはアクセスできない場合がある。このようなパイプは,第1態様に係る方法によって検査ハッチから修復することができる。
【0060】
好適には,バインダーは,パイプの円筒部分をカバーする。
【0061】
円筒部分とは,修復が,パイプ内面の全周に亘り,パイプの所定長さに沿って行われることを意味する。
【0062】
好適には,バインダーは,パイプの少なくとも10 cm,例えば少なくとも30 cm,好適ンは少なくとも50 cm又は少なくとも100 cmの長さをカバーする。
【0063】
好適には,バインダーは,パイプの最大20 m,例えば最大10 m,好適には最大5 mの長さをカバーする。
【0064】
幾つかの実施形態において,導電性/散逸性材料は,導電性/散逸性粒子の形態である。従って,第1態様は,パイプの修復方法を提供するものであり,この方法は,パイプの内面に,パイプの要修復個所において,バインダー及び導電性/散逸性粒子を付着させることにより,バインダーを横切る静電荷生成を低減するステップを備えることができる。
【0065】
導電性/散逸性粒子は,パイプ修復用の分布/分散のために任意の形態,例えば顆粒状,針状及び粉末状とすることができる。
【0066】
導電性/散逸性粒子は,粉末状とすることができる。電性/散逸性粒子は,導電性/散逸性粒子粉末,例えば,導電性粉末とすることができる。導電性粉末とは,導電性材料の粉末を意味する。導電性粉末は,それ自体では導電性ではないが,他の形態,例えばワイヤー又はシートとして提供される場合に導電性を有する材料から形成することができる。
【0067】
導電性/散逸性粒子は,金属,例えば銅,金,アルミニウム,鉄及び鋼から選択される金属を含むことができる。好適には,導電性/散逸性粒子は銅を含む。
【0068】
導電性/散逸性粒子は,実質的に金属,例えば銅,金,アルミニウム,鉄及び鋼から選択される金属よりなる構成とすることができる。好適には,導電性/散逸性粒子は,実質的に銅よりなる。
【0069】
導電性/散逸性粒子は,金属,例えば銅,金,アルミニウム,鉄及び鋼から選択される金属から形成することができる。好適には,導電性/散逸性粒子は,銅から形成する。
【0070】
好適には,導電性/散逸性粒子は,銅粉末である。
【0071】
好適には,導電性/散逸性粒子は,銅製の針である。
【0072】
好適には,導電性/散逸性粒子は,パイプの内面に対してパイプの要修復個所において付着させる前に,バインダーと組み合わせる。好適には,導電性/散逸性粒子は,パイプの内面に対してパイプの要修復個所において付着させる前に,バインダーと略均一に混合する。
【0073】
本方法は,パイプの内面に対してパイプの要修復個所において,バインダー及び導電性/散逸性粒子の混合物を付着させることにより,バインダーを横切る静電荷生成を低減するステップを備えることができる。
【0074】
本方法は,パイプの内面に対してパイプの要修復個所において,バインダー及び導電性/散逸性粒子の混合物を形成することにより,バインダーを横切る静電荷生成を低減するステップを備えることができる。
【0075】
好適には,導電性/散逸性粒子は,バインダー内部で生成される静電荷が導電性/散逸性粒子により伝導/消散させるに十分な濃度でバインダー内に分散している。好適には,導電性/散逸性粒子は,導電性/散逸性粒子が互いに接触していない場合でも,バインダー内部で生成される静電荷を伝導/消散可能とする。
【0076】
バインダー及び導電性/散逸性粒子の混合物は,少なくとも10 wt%,好適には少なくとも20 wt%,好適には少なくとも30 wt%の導電性/散逸性粒子を含むことができる。
【0077】
バインダー及び導電性/散逸性粒子の混合物は,最大で80 wt%,好適には最大で 70 wt%,好適には最大で60 wt%の導電性/散逸性粒子を含むことができる。
【0078】
バインダー及び導電性/散逸性粒子の混合物は,10~80 wt%,好適には20~70 wt%,好適には30~70 wt%の導電性/散逸性粒子を含むことができる。
【0079】
好適には,導電性/散逸性材料が導電性/散逸性粒子の形態である実施形態において,導電性/散逸性粒子は,バインダーと組み合わせた後にパイプライナーに付着させる。好適には,パイプライナーは可撓性,例えばグラスファイバー製のパイプライナーである。好適な可撓性及び/又は布状パイプライナーは,当業界において既知である。好適には,バインダー及び導電性/散逸性粒子を備えるパイプライナーを,パイプの要修復個所においてパイプの内面に付着させる。
【0080】
代替的に,導電性/散逸性粒子は,バインダーをパイプライナーに付着させる前に,パイプライナー中に導入することができる。
【0081】
導電性/散逸性粒子は,第1態様に係る方法において,パイプライナーの製造中に,又はパイプライナーの製造後であってパイプライナーの使用前に,パイプライナー中に導入することができる。
【0082】
発明者らは,導電性/散逸性粒子を導電性/散逸性材料として使用すれば,簡単なパイプ修復方法が提供され,これにより導電性/散逸性粒子が,修復すべきパイプへの付着前にバインダーと容易に混合されて,上述した修復部の安全性を改善できることを見出した。
【0083】
幾つかの実施形態において,導電性/散逸性材料は,少なくとも1つの細長素子の形態である。すなわち,第1態様はパイプの修復方法を提供し得るものであり,この方法は,パイプの要修復個所においてパイプの内面にバインダー及び少なくとも1つの細長素子を付着させることにより,バインダーを横切る静電荷生成を低減するステップを備える。
【0084】
好適には,細長素子はパイプの流れ方向と略整列する方向,換言すれば使用時にパイプを通して液体が流れる方向にパイプを横断する。
【0085】
修復されたパイプを通して流れる液体は,液体がバインダーを横切って流れる際に,バインダー上の2点間で静電荷生成を生じさせることがある。従って,バインダーを横断するように少なくとも1つの細長素子を配置すれば,バインダーを横切って生成され得る静電荷を,少なくとも1つの細長素子により放電できる利点が達成される。
【0086】
細長素子は,好適にはバインダーの大部分及びバインダーの相当の部分を横切ってバインダーを横断させることにより,静電荷の顕著な生成を防止する。これを達成するために,細長素子がバインダーの全長及び/又は全幅を横断させる必要はない。
【0087】
細長素子は,バインダーの全長及び/又は全幅を横断させることができる。例えば,細長素子をバインダーよりも長く形成することができ,及び/又はバインダーをパイプに付着させる前に細長素子をバインダーにより被覆し,又はバインダー中に浸漬し,その際に細長素子の第1端部及び第2端部はバインダーにより被覆又はカバーされずに残される構成とすることができる。
【0088】
少なくとも1つの細長素子は,パイプの要修復個所に適切に配置されたとき,例えば細長素子が少なくとも部分的にバインダーと接触すると共に少なくとも部分的にパイプの内面に露出するときに,静電荷の生成を低減する。
【0089】
細長素子は,バインダーの内面上でバインダーと接触する配置とすることができる。
【0090】
好適には,細長素子は,例えばバインダーに沿う液体の流れによりバインダーの内面上に生成され得る静電荷のための十分な導電性を有する通路を形成するように,部分的にバインダーの内部に,そして部分的にバインダーの外部に配置される。例えば,細長素子は,その幾つかの部分又はセクションがパイプの内部スペースに露出し,細長素子における露出した部分又はセクションが,バインダーを横切る静電荷生成を散逸させるよう,部分的にバインダー内に埋設することができる。
【0091】
細長素子は,好適にはバインダーの層がバインダーの内面と細長素子との間に配置されるように,完全にバインダー中に埋設することができる。その層は十分に薄いため,バインダーの内面上における静電荷生成を導通させ,細長素子から伝導/散逸させることができる。
【0092】
細長素子はパイプライナー,例えばグラスファイバー製のパイプライナー中に配置することができる。
【0093】
発明者らは,少なくとも1つの細長素子を導電性/散逸性材料として使用すれば,修復部において十分な導電性を有することにより,パイプの修復部を横切る静電荷生成を低減し,好適には防止して,上述した修復部における安全性の改善が図れるように修復されたパイプを提供し得ることを見出した。少なくとも1つの細長素子は,堅牢で連続的な導電性/散逸性材料の通路を形成し,この通路はバインダーを横切る静電荷生成を高い信頼性をもって効果的に低減し得るものである。このような導電性/散逸性材料の連続的な通路は,バインダーを横切る静電荷生成を低減するために導電性/散逸性材料が不連続な通路を形成する場合と対比して,導電性が低く,場合によってはより安価な導電性/散逸性材料を本発明において使用可能とするものである。
【0094】
幾つかの実施形態において,導電性/散逸性材料は,バインダーを横切る静電荷生成を低減するための複数の細長素子の形態である。
【0095】
好適には,バインダーを横切る静電荷生成を低減するための複数の細長素子を,パイプの内面に付着させる。
【0096】
複数の細長素子は,ワイヤーとして,例えば金属ワイヤー,好適には銅製ワイヤーとして提供することができる。
【0097】
複数の細長素子は,パイプの内面周りで等間隔に配置することができる。
【0098】
複数の細長素子は,バインダーを異なる方向で横断するように配置することができる。これにより,静電荷生成を散逸させるための異なる方向での導電路を形成することができる。
【0099】
複数の細長素子は,互いに分離させることができる。
【0100】
複数の細長素子は,静電荷の消散効率を改善するために互いに接続させることができる。
【0101】
複数の細長素子はメッシュとして,例えば第1方向で互いに並んで配置された複数の細長素子を有し,これらの細長素子が,第1方向に対して略垂直な第2方向で互いに並んで配置された複数の細長素子と接続するメッシュとして提供することができる。複数の細長素子は,金属ワイヤーメッシュとして提供することができる。複数の細長素子は,銅製ワイヤーメッシュとして提供することができる。
【0102】
複数の細長素子はマットとして,例えば互いに接続する細長素子のマットとして提供することができる。
【0103】
複数の細長素子は,パイプライナー,例えばグラスファイバー製マットの上又は内部に配置することができる。好適には,複数の細長素子は,メッシュ又はマットとして提供することができ,パイプライナーの内側に配置される。好適には,メッシュ又はマットは,パイプライナーの2層間でこれらに固定することにより,複数の細長素子を備えるパイプライナーを形成することができる。このようなパイプライナーは,例えば,細長素子の層(バインダーを横切る静電荷生成を低減するための)が,グラスファイバー製のパイプライナーにおける2層間に配置される「サンドイッチ」構造とすることができる。
【0104】
複数の細長素子は,パイプライナーの内面上に配置することができる。
【0105】
複数の細長素子は,パイプライナー,例えばグラスファイバー製のパイプライナー内に配置することにより,複数の細長素子が,修復すべきパイプの内部に露出させるパイプライナーの表面上で露出する構成とすることができる。例えば,複数の細長素子を,パイプライナーに縫い合わせ,又は織り込むことができる。好適には,複数の細長素子は,チューブ状のパイプライナー,例えばグラスファイバー製のパイプライナー内に配置することにより,複数の細長素子が,修復すべきパイプの内部に露出させるパイプライナーの内面上で露出する構成とすることができる。
【0106】
発明者らは,バインダーを横切る静電荷生成を低減するため,特に複数の細長素子がパイプの内面周りで規則的に配置される場合,特に複数の細長素子が互いに接続する場合,そして,特に複数の細長素子がメッシュ又はマットとして提供される場合に,複数の細長素子が,単一の細長素子よりも静電荷生成のための伝導性/散逸性が高い通路を形成するために,より効率的であることを見出した。
【0107】
好適には,細長素子は,パイプの内面に対して相補的なチューブ形状でパイプの内面上に配置する。
【0108】
好適には,細長素子は,パイプの内面に対して略共面的に配置することにより,修復の実行後におけるパイプ内部スペースの寸法を可能な限り維持する構成とする。
【0109】
細長素子は,パイプの内面に対して相補的なチューブ形状,例えばチューブ状のワイヤーメッシュとして提供することができる。
【0110】
好適には,細長素子は,チューブ状のメッシュとして提供することができる。
【0111】
代替的に,細長素子は,シートとして提供することができる。このようなシートは,パイプ内面への付着前又は付着の間に,パイプ内面に対して相補的なチューブ形状に形成することができる。例えば,細長素子は,細長素子は,ワイヤーメッシュシートとして提供することができる。
【0112】
発明者らは,チューブ状に形成された複数の細長素子,例えばチューブ状のメッシュ又はワイヤーメッシュを使用すれば,数福すべきパイプの個所の内面への複数の細長素子の付着が容易となり,バインダーを横切る静電荷生成を低減するための効果的な手段が提供されることを見出した。
【0113】
好適には,細長素子は,銅製ワイヤーメッシュシート又は管状の銅製ワイヤーメッシュシートにより提供される。
【0114】
好適には,少なくとも1つの細長素子が,メッシュ又はマットとして提供される複数の細長素子である実施形態において,本方法は素地にステップ,すなわち:
i) バインダーと,メッシュ又はマットを組み合わせるステップ;
ii) 組み合わされたバインダー及びメッシュ又はマットで可拡部材の周りを包み込むステップ;
iii) 可拡部材をパイプ内に装入し,組みあわされたバインダー及びメッシュ又はマットをパイプの要修復個所に近接させるステップ;
iv) 可拡部材を外側に膨張させて,組みあわされたバインダー及びメッシュ又はマットをパイプの要修復個所に接触させるステップ;
v) 可拡部材を内側に収縮させて可拡部材をパイプから取り出し,組みあわされたバインダー及びメッシュ又はマットをパイプの要修復個所においてパイプ上に残留させるステップ;
を備えることができる。
【0115】
バインダーと,メッシュ又はマットは,例えばバインダーの反応成分を混合させて液状のバインダーを調製した後,その液状バインダーをメッシュ又はマット上に注出し,又は拡散させることによって互いに組合わせることができ,これにより,所定時間の経過後にバインダーを硬化させる反応が開始される。このようなバインダーは,当業者において既知である。
【0116】
適当な可拡部材には,膨張可能な部材,例えばホース又はチューブが含まれ,これはホース又はチューブの一部又は端部がシールされた可撓性バルーンを備え,ホース又はチューブを通してバルーンに圧縮空気を供給したときに外向きに膨張させることができる。このような可拡部材は,当業者において既知である。
【0117】
ステップiii)は,可拡部材をパイプ内に,例えば検査用ハッチを通して挿入することを含む。可拡部材は,好適には細長い可拡部材であり,好適には周長がパイプの周長よりも短い。可拡部材は,可拡部材のパイプ内における所定位置までの装入及び可拡部材の取り出しを容易とするように,ロッドに取り付けておくことができる。
【0118】
ステップiv)は,好適には圧縮空気を可拡部材内に供給して可拡部材を拡張させ,組み合わされたバインダー及びメッシュ又はマットをパイプの要修復個所でパイプ内面に接触させることを含む。好適には,組み合わされたバインダー及びメッシュ又はマットを可拡部材により十分な力でパイプの内面に押圧して,バインダーとパイプ内面との間で初期の接合を行う。
【0119】
好適には,ステップiv)の後でステップv)の前に,可拡部材,バインダー及びメッシュ又はマットを,パイプの要修復箇所に残留させる。その際,可拡部材が,組みあわされたバインダー及びメッシュ又はマットをパイプの内面に対して,十分な時間,例えば30分間に亘って押圧することによりバインダーを硬化させて,メッシュ又はマットを備え,パイプの要修復個所を被覆する固体を形成する。
【0120】
好適には,ステップv)において,可拡部材が,組み合わされたバインダー及びメッシュ又はマットを解放し,組み合わされたバインダー及びメッシュ又はマットをパイプの要修復個所の固体として残留させる。
【0121】
代替的な実施形態において,メッシュ又はマットで,バインダーと組み合わせる前に可拡部材,周りを包み込むことができる。
【0122】
好適には,少なくとも1つの細長素子は銅を含む。
【0123】
好適には,少なくとも1つの細長素子は銅から形成される。好適には,少なくとも1つの細長素子は実質的に銅からなる。
【0124】
好適には,導電性/散逸性材料が導電性/散逸性粒子形態である実施形態において,本方法は以下のステップ,すなわち:
1) バインダーを導電性/散逸性粒子と組み合わせるステップ;
2) 組み合わされたバインダー及び導電性/散逸性粒子をパイプライナーと組み合わせるステップ;
3) 組み合わされたバインダー及び導電性/散逸性粒子を備えるパイプライナーで可拡部材周りを包み込むステップ;
4) 可拡部材をパイプ内に装入して,組み合わされたバインダー及び導電性/散逸性粒子を備えるパイプライナーをパイプの要修復個所でパイプ内面に近接させるステップ;
5) 可拡部材を外側に膨張させて,組み合わされたバインダー及び導電性/散逸性粒子を備えるパイプライナーをパイプの要修復個所でパイプ内面に接触させるステップ;並びに,
6) 可拡部材を内側に収縮させて可拡部材をパイプから取り出し,組み合わされたバインダー及び導電性/散逸性粒子を備えるパイプライナーをパイプの要修復個所に残留させるステップ;
を備える。
【0125】
好適には,パイプライナーは,当業界において既知のグラスファイバー製パイプライナーである。
【0126】
幾つかの実施形態において,本方法はつぎのステップ,すなわち:
A) 導電性/散逸性粒子を備えるパイプライナーを準備し,バインダーをチューブ状パイプライナーの外面に付着させるステップ;
B) チューブ状パイプライナーを裏返して,バインダーをチューブ状パイプライナーの内面側に配置するステップ;
C) チューブ状パイプライナーをパイプの要修復個所に近接させるステップ;
D) チューブ状パイプライナーを裏返して,バインダーを備えるチューブ状パイプライナーの表面を徐々にパイプの要修復個所に付着させるステップ;
を備えることができる。
【0127】
好適には,パイプライナーは,当業界において既知のグラスファイバー製パイプライナーである。
【0128】
本方法は,特に,パイプにおける比較的長い部分の修復を行う場合に有益であり得る。
【0129】
幾つかの実施形態において,導電性/散逸性材料は,少なくとも1つの細長素子と,導電性/散逸性粒子とにより提供される。従って,第1態様はパイプの修復方法を提供し得るものであり,この方法は,パイプの要修復個所においてパイプの内面に,バインダーと,バインダーを横切る静電荷生成を低減するための少なくとも1つの細長素子と,バインダーを横切る静電荷生成を低減するための導電性/散逸性粒子とを付着させるステップを備える。
【0130】
導電性/散逸性粒子及び少なくとも1つの細長素子は,導電性/散逸性粒子又は少なくとも1つの細長素子の何れかを使用する実施例について上述したと同様に,パイプの要修復個所でパイプに付着させることができる。
【0131】
導電性/散逸性粒子及び少なくとも1つの細長素子は,導電性/散逸性粒子又は少なくとも1つの細長素子の何れかを使用する実施例に関連して上述した全ての特徴を有し得るものである。
【0132】
好適には,パイプの要修復個所でパイプの内面に付着させる導電性/散逸性粒子は,方法を実施する間にバインダー中に導入することができる。例えば,導電性/散逸性粒子は,バインダーを少なくとも1つの細長素子と組み合わせる前に,バインダーと混合することができる。
【0133】
本発明の第2態様によれば,パイプを修復するためのキットが提供される。このキットは:
- バインダーと;
- 導電性/散逸性材料と:
を備える。
【0134】
第2態様に係るキットは,第1態様に係る方法において使用することができる。
【0135】
第2態様におけるバインダーの好適な特徴及び利点は,第1態様に関して記載した通りである。
【0136】
第2態様における導電性/散逸性材料の好適な特徴及び利点は,第1態様における導電性/散逸性材料に関して記載した通りである。
【0137】
第2態様に係るキットは,静電荷生成の潜在性を低減し,従ってパイプ内を流れる可燃性液体が着火するリスクを低減するパイプ修復を可能とし得る,簡便で効果的なパイプ修復用キットを提供するものである。
【0138】
本発明の第3態様によれば,パイプを修復するための組成物が提供される。この組成物は:
- バインダーと;
- 該バインダーを横切る静電荷生成を低減するための導電性/散逸性材料と;
を備える。
【0139】
第3態様におけるバインダーの好適な特徴及び利点は,第1態様に関して記載した通りである。
【0140】
第3態様における導電性/散逸性材料の好適な特徴及び利点は,第1態様における導電性/散逸性材料に関して記載した通りである。
【0141】
本発明の第4態様によれば,少なくとも1つの部分を備え,該部分が,バインダーと,該バインダーを横切る静電荷生成を低減するための導電性/散逸性材料と,を備えるパイプが提供される。
【0142】
第4態様に係るパイプの好適な特徴及び利点は,第1態様に関して記載した通りである。
【0143】
第4態様におけるバインダーの好適な特徴及び利点は,第1態様に関して記載した通りである。
【0144】
第4態様における導電性/散逸性材料の好適な特徴及び利点は,第1態様における導電性/散逸性材料に関して記載した通りである。
【0145】
好適には,パイプは,バインダー及び導電性/散逸性材料を備える少なくとも1つの部分に沿って,単位長さ当たりの電気抵抗が,106 Ωm未満,好適には105 Ωm未満,例えば104 Ωm未満,好適には103 Ωmである。
【0146】
好適には,パイプは,バインダー及び導電性/散逸性材料を備える少なくとも1つの部分において,耐薬品性を有する。
【0147】
好適には,パイプは,バインダー及び導電性/散逸性材料によりカバーされ,かつ修復されていることにより,バインダーを横切る静電荷生成を低減する。好適には,バインダーを横切る静電荷生成を低減するためにバインダー及び導電性/散逸性材料を備える少なくとも1つの部分は,修復部分である。
【0148】
好適には,第4態様に係るパイプは,第1態様に係る方法により修復されたものとする。
【0149】
本発明の第5態様によれば,導電性/散逸性材料を使用してパイプを修復する方法が提供される。この方法において,導電性/散逸性材料は,パイプの修復部分における静電荷生成を低減する。
【0150】
第5態様における好適な特徴及び利点は,第1態様に係る方法に関して記載した通りである。
【0151】
第5態様における導電性/散逸性材料の好適な特徴及び利点は,第1態様における導電性/散逸性材料に関して記載した通りである。
【0152】
本発明の第6態様によれば,バインダー及び導電性/散逸性材料を使用して,バインダーを横切る静電荷生成を低減する使用方法が提供される。
【0153】
第6態様に係る使用方法における好適な特徴及び利点は,第1態様に係る方法に関して記載した通りである。
【0154】
第6態様におけるバインダーの好適な特徴及び利点は,第1態様に関して記載した通りである。
【0155】
第6態様における導電性/散逸性材料の好適な特徴及び利点は,第1態様における導電性/散逸性材料に関して記載した通りである。
【0156】
以下,本発明の理解を容易とし,例示的な実施形態がどのように実施されるかを示すために,添付図面を参照しつつ更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【
図1】本発明の第4態様に係るパイプ(100)の一部分を示す斜視図である。このパイプは,本発明の第1態様に係る方法により,本発明の第3態様に係る組成物を使用して修復されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0158】
図1は,外面(101)及び内面(102)を備えるパイプ(100)の一部分を示す。このパイプは,クラック(103)の形態の損傷部を備え,このクラックはパイプ(100)の外面(101)から内面(102)までの開口部を形成している。損傷部は,バインダー(110)を,チューブ(120)として形成された銅メッシュと組み合わせ,バインダー(110)及び銅メッシュのチューブ(120)をパイプの内面(102)に付着させた後,バインダー(110)を硬化させることによって修復されている。硬化が完了すると,修復されたパイプ(100)が得られ,その内面は,チューブ状の銅メッシュに部分的に含侵させて固化させたバインダー(110)でカバーされている。
【0159】
《実施例セット1》
例示として,第1態様に係る方法をパイプ試片について実施して,パイプ試片に結合剤と,結合剤を横切る静電荷生成を低減させるための導電性/散逸性材料とを付着させた。
【0160】
パイプ試片は,エポキシ樹脂の成分A及び成分Bを混合してバインダーを形成し,バインダーを銅メッシュ(粗目又は微細)に付着させ,バインダー及び銅メッシュの組み合わせで可膨部材の周りを包み込み,可膨部材を,Naylor Drainage社により供給されたThermachemパイプ(導電性/散逸性磁器化粘土パイプ)の供試片内に装入し,可膨部材を圧縮空気により外側に膨張させて,バインダー及び銅メッシュをパイプの内面に接触させ,圧縮空気を脱気して可膨部材を内側に収縮させつつ可膨部材を除去して,バインダー及びメッシュの組み合わせをパイプの所定位置に残留させることにより形成したものである。
【0161】
パイプ試片は,
図1に示すパイプ(100)のセクションに類似しているが,損傷していなかった。パイプ試片は,固化したバインダー(110)でカバーされ,バインダーの一部がチューブ状の銅メッシュ(120)に含侵されている内面を有していた。
【0162】
本方法を,供試パイプ1aを形成するための粗目の銅メッシュと,供試パイプ1bを形成するための微細な銅メッシュとを使用して実施した。
【0163】
パイプ試片について試験を行い,以下の手順で表面電気抵抗を測定した。
【0164】
表面電気抵抗の単位は,Ω又はΩ/sqである。これは,電荷がその表面を横切って伝導させる材料の特性を記述するものであり,表面導電性の逆数である。
【0165】
《測定方法》
表面抵抗は,オームの法則に基づく次式に基づいて計算する。
【数1】
ここに:
Ps = 材料の表面抵抗 (Ω/□)
V = 印加電圧
I = 電流測定値 (アンペア)
K = セル定数 (測定電極の長さ (100mm) / 測定電極間の間隔 (10mm) = 10
【0166】
電流測定セルがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の絶縁体により電圧印加用の平行電極から分離された測定セルを使用した。次に,測定セルを電位計に接続し,これにより電極間で材料を横切る電流を測定した。
【0167】
平行電極を試片の各所に,又はエッジ部から少なくとも10 mm離れた個所に配置した。セルを10 Vに附勢した。算出抵抗が1.0 x 106 Ω未満であれば,その結果を記録し,その手順を試片の他の個所において,又は該当する場合には新たな試片について反復した。
【0168】
算出抵抗が1.0 x 106 Ωを超え,かつ1.0 x 107 Ωに満たなければ,100 Vを印加して試験手順を反復した。1.0 x 107 Ω及び1.0 x 109 Ωの間の測定抵抗については,印加電圧を500 Vとして試験手順を反復した。1.0 x 109 Ωを超える測定抵抗については,印加電圧を1000 Vに昇圧した。
【0169】
次に,算出抵抗(印加電圧/測定電流)を上記公式に大入試て表面抵抗値を計算し,試験が行われた全ての個所についての幾何学的平均値を最終的な抵抗値とした。
【0170】
殆どの材料は程度の差こそあれ,大気圧下の水を吸収し,これは多くの材料において表面抵抗に劇的な影響を及ぼす。従って,試験は相対湿度(RH 50 ± 5%)及びより乾燥した条件(RH 25 ± 2%)の下で行った。何れの場合にも,試料は,試験に先立ち,上述した相対湿度下で24時間に亘って調湿した。
【0171】
以下の表に示される試験結果において,記号 “E” は指数を表記するために使用されている。すなわち,例えば1.8E+07 は 1.8 x 107を意味する。
【0172】
《実施例セット1の試験結果》
表1は,粗目メッシュライナーを使用する供試パイプ1aに関する相対湿度50 %(RH)での試験結果を示す。
【0173】
【0174】
図2は,微細メッシュライナーを使用する供試パイプ1bに関する相対湿度50 %(RH)での試験結果を示す。
【0175】
【0176】
表3は,粗目メッシュライナーを使用する供試パイプ1aに関する相対湿度25 %(RH)での試験結果を示す。
【0177】
【0178】
表4は,微細メッシュライナーを使用する供試パイプ1bに関する相対湿度25 %(RH)での試験結果を示す。
【0179】
【0180】
何れの測定も,パイプの内面上における樹脂層について行われたものである。
【0181】
《試験結果の概要》
供試パイプについて行った試験結果を要約すれば,表5に示す通りである。
【0182】
表5は,試験結果の概要を示す。
【0183】
【0184】
試験を行ったパイプの両試片間では,広範な抵抗測定値が認められる。これは,樹脂内における金属ゲージ層の近傍での樹脂厚変動によるものと考えられるが,未確認である。表面抵抗測定値の幾何学的平均値は,パイプ内側に堆積させた樹脂が,“IEC 60079-32-1”: 2013の表1に基づく105 Ω/sq~1012 Ω/sqの範囲に適合するために散逸性と考えられることを示す。
【0185】
《実施例セット2》
上述した試片の作成及び実験手順を,以下の代替的な供試パイプ片について繰り返した。その作成方法において,銅粉末をバインダーと組み合わせた後に,バインダーをグラスファイバー製のライナー(マット)又は銅メッシュ(マット)に付着させた。
【0186】
供試パイプ2aは,銅粉末と混合したバインダーと,グラスファイバー製ライナー(グラスファイバー製マット)とを使用して修復シミュレーションを行った。バインダーは,200 mlのエポキシ樹脂成分A,400 mlのエポキシ樹脂成分B及び556 gの銅粉末から形成した。
【0187】
供試パイプ2bは,銅粉末と混合したバインダーと,グラスファイバー製ライナー(グラスファイバー製マット)とを使用して修復シミュレーションを行った。バインダーは,200 mlのエポキシ樹脂成分A,400 mlのエポキシ樹脂成分B及び1112 gの銅粉末から形成した。
【0188】
供試パイプ2cは,銅粉末と混合したバインダーと,微細な銅メッシュ(銅マット)とを使用して修復シミュレーションを行った。バインダーは,200 mlのエポキシ樹脂成分A,400 mlのエポキシ樹脂成分B及び1112 gの銅粉末から形成した。
【0189】
供試パイプ2dは,銅粉末と混合したバインダーと,微細な銅メッシュ(銅マット)とを使用して修復シミュレーションを行った。バインダーは,200 mlのエポキシ樹脂成分A,400 mlのエポキシ樹脂成分B及び556 gの銅粉末から形成した。
【0190】
供試パイプ2eは,グラスファイバー製パイプライナーと混合したバインダーを使用して修復シミュレーションを行った。このパイプライナーは,微細な銅メッシュ(銅マット)をパイプ供試辺の内側に露出するようにパイプ状に縫い合わせ,又は織り込んで形成したものである。
【0191】
比較例の供試パイプ2fは,修復されていないThermachem磁器化粘土で構成され,従って内面上にバインダー,マット又はメッシュを有しないものである。
【0192】
《実施例セット2の試験結果》
表6は,グラスファイバー製のマット及び銅粉末556 gを使用する供試パイプ2aに係る試験結果を示す。
【0193】
【0194】
表7は,グラスファイバー製のマット及び銅粉末1112 gを使用する供試パイプ2bに係る試験結果を示す。
【0195】
【0196】
表8は,グラスファイバー製のマット及び銅粉末1112 gを使用する供試パイプ2cに係る試験結果を示す。
【0197】
【0198】
表9は,グラスファイバー製のマット及び銅粉末556 gを使用する供試パイプ2dに係る試験結果を示す。
【0199】
【0200】
表10は,微細メッシュ(銅製マット)の縫込み/織り込みで形成したグラスファイバー製パイプライナーを使用する供試パイプ2eに係る試験結果を示す。
【0201】
【0202】
表11は,模擬修復部を有しない比較例の供試パイプ2fに係る試験結果を示す。
【0203】
【0204】
以上の試験結果は,第1態様に係る方法を実施した後のパイプ修復部が,散逸性と分類される表面電気的項を有することを示す。特に,以上の試験結果は,模擬修復部を有するパイプ試片,すなわち,バインダー及び銅メッシュから形成された修復部(表1-5),銅粉末を含むバインダーと,グラスファイバー製パイプライナーから形成された修復部(表6及び7),銅粉末を含むバインダーと,銅メッシュから形成された修復部(表8及び9),又は銅粉末を含むバインダーと,グラスファイバー製パイプライナーに縫い合わせ又は織り込んだ銅メッシュから形成された修復部(表10)を有するパイプ試片が,何れも散逸性の模擬修復部を提供することを示す。このパイプ供試片は,同一パイプにおける非修復部と匹敵するか,又はより改善された散逸特性を示すものである(表11)。
【0205】
これは,そのような修復部が,上述した形式の損傷したパイプに使用される場合に,修復部において十分な導電性を有することにより,パイプの修復部を横切る静電荷生成を低減し,効果的に防止することができ,従って,バインダーを横切る静電放電により発生するスパークにより,パイプ内における可燃性液体が着火するリスクが低減可能であることを意味する。すなわち,試験結果から明らかな通り,従って,第1態様に係る方法は,特に,パイプが通常は可燃性液体を輸送するために使用される場合のより安全な修復を提供し,従って配管類,関連するプラント,及びパイプ/プラントの作業員を損傷や傷害から保護するものである。
【0206】
要約すれば,本発明は,パイプ及び/又はドレンの修復方法を提供する。本方法は,パイプにおける損傷部を導電性/散逸性材料でカバーすることを含む。導電性/散逸性材料はバインダーに対して好適にはその内部で接触し,導電性/散逸性材料は,バインダーを横切る静電荷生成を,導電性/散逸性材料が設けられていないバインダーにおける対応部分で生じることとなる静電荷生成よりも低減するように機能する。本方法は,バインダーを横切る静電放電により発生するスパークにより,パイプ内における可燃性液体が着火するリスクを低減し得るものである。従って,第1態様に係る方法は,パイプが通常は可燃性液体を輸送するために使用される場合のより安全なパイプ修復を可能とするものである。パイプを修復するためのキット,組成物,パイプ,並びにキット又は組成物の使用方法も提供される。
【0207】
本明細書に開示される任意的な特徴は,個別的に,又は性質に反しない限り互いに組み合わせて使用することができ,特に前述した組み合わせ又は特許請求の範囲に記載した組み合わせで使用することができる。前述した本発明の各態様又は例示的な実施態様における任意的な特徴は,性質に反しない限り,本発明の他の態様又は他の例示的な実施態様にも適用することができる。換言すれば,本明細書を読破した当業者であれば,本発明の各例示的な実施形態における任意的な特徴は,異なる例示的な実施形態の間での互換性を有するものと解すべきものである。
【0208】
本明細書を通じて「備える」又は「備え」等の用語は,特定された構成要素を含むも,他の構成要素を除外するものでないことを意味する。「よりなる」又は「実質的に~よりなる」等の用語は,特定された構成要素を含むも,構成要素を製造するために使用されるプロセスに由来する不純物や不可避的材料として存在する材料や,本発明の技術的効果を達成する以外の目的で添加される材料を除いて,その他の構成要素を除外するものであることを意味する。典型的に,組成物に関する場合,実質的に一組の成分よりなる組成物は,特定されていない成分の含入量が5重量%未満,典型的には3重量%未満,より典型的には1重量%未満である。
【0209】
「~よりなる」又は「~よりなり」等の用語は,特定された構成要素を含むも,他の構成要素の添加を除外することを意味する。
【0210】
該当する場合,そして文脈いかんにより,「備える」又は「備え」等の用語は,「よりなる」又は「実質的に~よりなる」等も含み,又は包含することも意味し,「よりなる」又は「実質的に~よりなる」等を含むものとも解することができる。
【0211】
幾つかの好適な実施形態について図示及び記載したが,当業者であれば,添付した特許請求の範囲において特定された本発明の範囲を逸脱することなく,各種の変更・変形か可能であるものと理解される。
【0212】
本願に関連して本明細書と同時に,又は先行的に提出され,本明細書の公衆の閲覧のために公開されている全ての書面に留意されたい。このような書面の開示は,全てが参照として組み込まれる。
【0213】
本明細書(添付した特許請求の範囲及び図面を含む)に開示された全ての特徴,並びにそのように開示されたステップ及びプロセスにおける全てのステップは,そのような特徴及び/又はステップが互いに排他的でない限り,任意の態様で組み合わせることができる。
【0214】
本明細書(添付した特許請求の範囲及び図面を含む)に開示された各特徴は,特に明示しない限り,同一の,均等な,又は類似の目的に供し得る代替的な特徴と置換することができる。すなわち,明示しない限り,開示された各特徴は,均等な,又は類似する特徴の上位概念系列の一例に過ぎない。
【0215】
本発明は,上述した実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は,本明細書(添付した特許請求の範囲及び図面を含む)に開示された特徴のうち,何れかの新規な特徴又は新規な特徴の組み合わせのみならず,そのように開示されたステップのうち,何れの新規なステップ又は新規なステップの組み合わせにも及ぶものである。