(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ミコナゾール及び/又は硝酸ミコナゾールを含むシート製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4174 20060101AFI20220225BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220225BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220225BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20220225BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220225BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220225BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20220225BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220225BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220225BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220225BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220225BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220225BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220225BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220225BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A61K31/4174
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/49
A61K8/86
A61K9/70
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/28
A61P31/10
(21)【出願番号】P 2019514665
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2018017251
(87)【国際公開番号】W WO2018199303
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2017090594
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302060568
【氏名又は名称】株式会社カナエテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 祥平
(72)【発明者】
【氏名】菅 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】金光 祐子
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-363070(JP,A)
【文献】特開2016-210780(JP,A)
【文献】特表2007-534661(JP,A)
【文献】特開2013-249283(JP,A)
【文献】国際公開第2004/028502(WO,A1)
【文献】特開平7-291847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4174
A61K 8/02
A61K 8/34
A61K 8/36
A61K 8/37
A61K 8/49
A61K 8/86
A61K 9/70
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/18
A61K 47/26
A61K 47/28
A61P 31/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料から構成された基布に殺菌消毒液が担持されてなるシートであって、
前記殺菌消毒液は、該消毒液の総質量に基づいて、ミコナゾール及び/又は硝酸ミコナゾールを含む抗真菌成分を0.01ないし1質量%、ノニオン界面活性剤を0.1ないし10質量%、及びイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1種以上のフェノール類を0.01ないし1質量%含有する水性溶液であるシート。
【請求項2】
前記シートが医薬品、医薬部外品又は化粧品用のシートである請求項1記載のシート。
【請求項3】
前記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種以上である請求項1又は2記載のシート。
【請求項4】
前記殺菌消毒液は、更に、アミノ酸を含有し、その含有量は、前記消毒液の総質量に基づいて、0.005ないし5質量%である請求項1~3のいずれか1項記載のシート。
【請求項5】
前記アミノ酸は、リシン、アルギニン、ヒスチジン及びそれらの塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種以上である請求項4記載のシート。
【請求項6】
前記消毒液のpHは、5ないし8に調整されてなる請求項1~3のいずれか1項記載のシート。
【請求項7】
前記消毒液のpHは、4ないし9に調整されてなる請求項4又は請求項5記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミコナゾールを含む水性液体抗真菌剤を基布に含浸させてなる医薬品、医薬部外品又は化粧品用の清拭用シートに関し、ミコナゾールの基布への吸着が抑制された清拭用シートに関する。
また、本発明は、ミコナゾールを含む清拭用の水性液体抗真菌剤組成物に関し、組成物を有効成分とする液剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾール系抗真菌剤であるミコナゾールは、医薬品、医薬部外品等の抗真菌成分として広範に使用されている。
また、抗菌剤としてミコナゾールを含み得るローション組成物を含むペーパータオル用の抗菌セルロースシートも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、抗真菌成分としてミコナゾールを含有する水性溶液を基布に担持させた清拭用シートは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ミコナゾールを含む抗真菌成分を含有する水性溶液を、繊維材料から構成された基布に担持させてシートとしたところ、ミコナゾールが基布に吸着されて基布から溶出され難くなり、十分な抗真菌活性を発揮できないという問題が生じることが分った。
上記の問題は、ミコナゾールを含む抗真菌成分を含有する水性溶液に、ノニオン界面活性剤を配合することにより解消することを見出したが、一方で、ノニオン界面活性剤の配合量を増加するとべたつきが発生して使用感が悪くなり、また、コスト高になるという新たな問題が発生した。嗜好性が求められる化粧品等においては、べたつきを最小限に留め使用感を向上させる必要がある。
【0005】
従って、本発明は、上記の問題を解決し得る、即ち、ミコナゾールを含有する水性溶液を繊維材料から構成された基布に担持させてなるシートであって、ノニオン界面活性剤の低い配合量においても、ミコナゾールの基布への吸着を低く抑え得る、使用感に優れるシートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ミコナゾール及びノニオン界面活性剤を含有する水性溶液に、特定量のイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1種以上のフェノール類を配合することにより、ノニオン界面活性剤の低い配合量においても、ミコナゾールの基布への吸着が低く抑えられることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、
[1]繊維材料から構成された基布に殺菌消毒液が担持されてなるシートであって、
前記殺菌消毒液は、該消毒液の総質量に基づいて、ミコナゾール及び/又は硝酸ミコナゾールを含む抗真菌成分を0.01ないし1質量%、ノニオン界面活性剤を0.1ないし10質量%及びイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1種以上のフェノール類を0.01ないし1質量%含有する水性溶液であるシート、
[2]前記シートが医薬品、医薬部外品又は化粧品用のシートである前記[1]記載のシート。
[3]前記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種以上である前記[1]又は前記[2]記載のシート、
[4]前記殺菌消毒液は、更に、アミノ酸を含有し、その含有量は、前記消毒液の総質量に基づいて、0.005ないし5質量%である前記[1]~[3]のいずれか1つに記載のシート、
[5]前記アミノ酸は、リシン、アルギニン、ヒスチジン及びそれらの塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種以上である前記[4]記載のシート、
[6]前記消毒液のpHは、5ないし8に調整されてなる前記[1]~[3]のいずれか1つに記載のシート、
[7]前記消毒液のpHは、4ないし9に調整されてなる前記[4]又は前記[5]記載のシート、
に関する。
【0008】
本発明は、更に
(1)ミコナゾールを含有する液体であって、ミコナゾールの基布への吸着を抑制する効果を有する。
前記液体は、該液体の総質量に基づいて、ミコナゾール及び/又は硝酸ミコナゾールを含む抗真菌成分を0.01ないし1質量%、ノニオン界面活性剤を0.1ないし10質量%及びイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1種以上のフェノール類を0.01ないし1質量%含有する水性溶液である液体、
(2)前記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種以上である前記(1)記載の液体、
(3)前記液体は、更に、アミノ酸を含有し、その含有量は、前記液体の総質量に基づいて、0.005ないし5質量%である前記(1)又は前記(2)記載の液体、
(4)前記アミノ酸は、リシン、アルギニン、ヒスチジン及びそれらの塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種以上である前記(3)記載の液体、
(5)前記液体のpHは、5ないし8に調整されてなる前記(1)又は前記(2)記載の液体、
(6)前記液体のpHは、4ないし9に調整されてなる前記(3)又は前記(4)記載の液体
にも関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシート、液体組成物、水性液体抗真菌剤は、コットンやセルロースなど基布に含浸した場合でもミコナゾールが基布に吸着し難く、有効に抗真菌・抗菌活性を発揮するという利点を有する。また、中性から弱酸性で優れた抗真菌・抗菌活性を発揮し、清拭に使用するに際して、皮膚に対して低刺激性でべたつきが少ない。本発明は、少なくとも、これらの一つ以上の効果を発揮する。
また、本発明のシートにおける消毒液(ミコナゾール、ノニオン界面活性剤及びフェノール類を含む)は、pH=5~8の範囲において、ミコナゾールの基布に対する吸着率を低く、例えば、30%以下に抑えることができる。
【0010】
また、本発明は、更に、アミノ酸が配合された消毒液および該消毒液を基布に担持させたシートにも関するが、このようにアミノ酸を配合することにより、該消毒液は、pH=4~9という広い範囲においても、ミコナゾールの基布に対する吸着率を低く、例えば、30%以下に抑えることができる。
【0011】
本発明のミコナゾールの基布への吸着を抑制する液体は、該液体を基布に含浸させた際、該液体中のミコナゾールが基布に吸着し難く、容易に溶出するという利点を有する。
また、本発明のミコナゾールの基布への吸着を抑制する液体は、pH=5~8の範囲において、ミコナゾールの基布に対する吸着率を低く、例えば、30%以下に抑えることができ、また、アミノ酸を配合することにより、pH=4~9という広い範囲においても、ミコナゾールの基布に対する吸着率を低く、例えば、30%以下に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明は、繊維材料から構成された基布に殺菌消毒液が担持されてなる医薬品、医薬部外品又は化粧品用のシートであって、
前記殺菌消毒液は、該消毒液の総質量に基づいて、ミコナゾールを含む抗真菌成分を0.01ないし1質量%、ノニオン界面活性剤を0.1ないし10質量%及びイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1種以上のフェノール類を0.01ないし1質量%含有する水性溶液であるシートに関する。
【0013】
本発明に使用し得る繊維材料から構成された基布における繊維材料としては、コットン、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタラートなどの合成繊維、パルプなどのセルロース繊維、又はこれら繊維を混用した繊維からなる材料が挙げられ、基布としては、これらの繊維材料から構成された紙、不織布、タオル、布などが挙げられる。好ましい基布は、柔らかく肌触りのよい紙、不織布等である。
好ましくは、コットンから構成された不織布、レーヨン70%及びポリエチレンテレフタラート30%から構成された不織布等が挙げられ、また、柔らかく肌触りが良く肌に優しいコットン100%から構成された不織布が好ましい。
【0014】
本発明のシートは、基布に殺菌消毒液を担持させることにより構成される。
本発明に使用し得る殺菌消毒液は、抗真菌成分として、アゾール系抗真菌剤、好ましくはミコナゾールを含有する。本明細書において、特に断らない限り、単にミコナゾールと記載した場合、ミコナゾール、硝酸ミコナゾールおよびミコナゾール硝酸塩から選択されるいずれか、またはそれらの混合物を意味するものとする。
上記のアゾール系抗真菌剤としては、例えば、ミコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、チオコナゾール、オキシコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロコナゾール、ネチコナゾール、イソコナゾール、スルコナゾール、ビフォナゾール、ナノコナゾール、ルリコナゾールおよびそれらの塩等が挙げられ、前記塩としては、硝酸塩、塩酸塩等が挙げられる。
上記の抗真菌成分は、ミコナゾール以外に、例えば上記のアゾール系抗真菌剤の少なくとも1つ以上を含むことができる。
抗真菌成分は、殺菌消毒液の総質量に基づいて、0.01ないし1質量%、好ましくは、0.01ないし0.75質量%、より好ましくは、0.04ないし0.5質量%含み得る。
抗真菌成分がミコナゾールの場合、殺菌消毒液の総質量に基づいて、0.01ないし1質量%、好ましくは、0.01ないし0.5質量%、より好ましくは、0.02ないし0.2質量%含み得る。
【0015】
本発明に使用し得る殺菌消毒液は、ノニオン界面活性剤を含有する。
前記ノニオン活性剤は抗真菌成分を可溶化することができる点で、HLBが10以上のノニオン活性剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
上記ノニオン界面活性剤は、上記に列挙した1種類を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
【0016】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油等が挙げられる。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油として、NIKKOL HCO-60(日光ケミカルズ株式会社製、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG-60 水添ヒマシ油)、HLB:14.0)、NIKKOL HCO-40(日光ケミカルズ株式会社製、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG-40 水添ヒマシ油)、HLB:12.5)等を用いることもできる。
【0017】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(Tween20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル(Tween40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル(Tween60)及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(Tween80)等が挙げられる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして、ノニオン LT-221(日油株式会社製、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、HLB:16.7)、NIKKOL TL-10(日光ケミカルズ株式会社製、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(20E.O.)、HLB:16.9)等を用いることもできる。
【0018】
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビットラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビットテトラステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビットテトライソステアリン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビットペンタオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0019】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ジオレイン酸ポリグリセリル及びモノミリスチン酸デカグリセリル等が挙げられる。
【0020】
ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ラウリン酸ポリオキシエチレングリセリル及びポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル等が挙げられる。
【0021】
ポリオキシエチレンステロールの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンフィトステロール等が挙げられる。
【0022】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等が挙げられる。
【0023】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとして、ユニセーフ34S-23(日油株式会社製、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル、HLB:10.8)等を用いることもできる。
【0024】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール及びモノオレイン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤は、殺菌消毒液の総質量に基づいて、0.1ないし10質量%、好ましくは、0.1ないし5質量%、より好ましくは、0.1ないし3質量%含み得る。
ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、好ましくはポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油の場合は、殺菌消毒液の総質量に基づいて、0.1ないし10質量%、好ましくは、0.1ないし5質量%、より好ましくは、0.1ないし3質量%含み得る。
【0025】
本発明に使用し得る殺菌消毒液は、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1種以上のフェノール類を含有する。該フェノール類は、単独で用いることも、複数を組み合わせて用いることもできる。
本発明において、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンは、ミコナゾールの基布への吸着率を低下させるために用いられるが、それ自体が殺菌剤であり、そのため、本発明のシートに殺菌作用を追加するという点においても有効に機能し得る。
フェノール類は、殺菌消毒液の総質量に基づいて、0.01ないし1質量%、好ましくは、0.01ないし0.6質量%、より好ましくは、0.01ないし0.4質量%含み得る。
フェノール類がイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、エチルパラベンまたはプロピルパラベンの場合、殺菌消毒液の総質量に基づいて、それぞれ、0.01ないし0.5質量%、好ましくは、0.01ないし0.3質量%、より好ましくは、0.01ないし0.2質量%含み得る。フェノール類がサリチル酸またはメチルパラベンの場合、殺菌消毒液の総質量に基づいて、0.02ないし1質量%、好ましくは、0.03ないし1質量%、より好ましくは、0.05ないし1質量%含み得る。
【0026】
本発明に使用し得るフェノール類としては、上記の特定のフェノール類に限らず、水への溶解度が3g/L以下となるフェノール類を使用することもできる。
このようなフェノール類を使用する場合、例えば、水への溶解度が2.5g/L以下となるフェノール類や、水への溶解度が0.5g/L以下となるフェノール類が好ましい。
上記のようなフェノール類を用いる場合も、該フェノール類を殺菌消毒液の総質量に基づいて、0.01ないし1質量%、好ましくは、0.01ないし0.6質量%、より好ましくは、0.01ないし0.4質量%含み得る。
【0027】
また、本発明の殺菌消毒液には、フェノール類に代えて、あるいは、フェノール類に加えて脂肪族アルコールを使用することができる。この際に使用できる脂肪族アルコールとしては、炭素数2~8の脂肪族アルコール、具体的には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等が挙げられ、エタノールが好ましい。
本発明において、脂肪族アルコールは、ミコナゾールの基布への吸着率を低下させるために用いられるが、それ自体が殺菌剤であり、そのため、本発明のシートに殺菌作用を追加するという点においても有効に機能し得る。また、本発明のシートに清涼感、速乾性及びミコナゾールの溶解性の向上を与えるという効果も有する。
脂肪族アルコールは、殺菌消毒液の総質量に基づいて、10ないし80質量%、好ましくは、20ないし60質量%、より好ましくは、20ないし40質量%含み得る。
エタノールについての好ましい量は、殺菌消毒液の総質量に基づいて、10ないし60質量%、好ましくは、20ないし50質量%、より好ましくは、20ないし40質量%含み得る。
また、本発明のシートは、人体以外の例えば、ベッド、テーブル、椅子、車いす、杖、床、手すり、サンダル、スリッパ、尿器、便器、各種介護用品、各種医療機器、その他に用いるウェットティッシュなどの雑貨としても有用である。
【0028】
本発明に使用し得る殺菌消毒液は、更に、アミノ酸を含有し得る。
アミノ酸は、単体では、ミコナゾールの基布への吸着率を低下させるものではないが、ノニオン性界面活性剤と組み合わせることにより、さらに、フェノール類と組み合わせることにより、ミコナゾールの吸着率の低下を増強することができる。特に弱酸性領域、pH4~7、好ましくは、pH5~6において、前記組み合わせによるアミノ酸の吸着抑制増強効果が顕著に認められる。
アミノ酸としては、例えば、塩基性アミノ酸が好ましく、具体的にはリシン、アルギニン、ヒスチジン及びそれらの塩酸塩等が挙げられる。
上記アミノ酸は、上記に列挙した1種類を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
アミノ酸を使用する場合の配合量は、殺菌消毒液の総質量に基づいて、0.01ないし1質量%、好ましくは、0.01ないし0.3質量%、より好ましくは、0.01ないし0.2質量%含み得る。
アミノ酸としてアルギニンを使用する場合の配合量は、殺菌消毒液の総質量に基づいて、0.01ないし0.5質量%、好ましくは、0.01ないし0.1質量%、より好ましくは、0.01ないし0.05質量%含み得る。
【0029】
本発明に使用し得る殺菌消毒液は、更に、ミコナゾールの溶剤を含有し得る。該溶剤は、ミコナゾールが溶解し、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、例えばジオール類が挙げられる。
上記ジオール類としては、例えば、ブタンジオール、プロパンジオール(1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール)、ペンタンジオール、ヘキサンジオールまたはオクタンジオール等が挙げられ、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)が好ましい。
ジオール類を使用する場合の配合量は、殺菌消毒液の総質量に基づいて、1ないし10質量%、好ましくは、2ないし10質量%、より好ましくは、3ないし10質量%含み得る。
ジオール類を使用する場合で、ジオール類がプロピレングリコールの場合の配合量は、殺菌消毒液の総質量に基づいて、1ないし10質量%、好ましくは、2ないし10質量%、より好ましくは、3ないし10質量%含み得る。
【0030】
本発明に使用し得る殺菌消毒液は、上述した成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、保湿剤、清涼剤、消炎剤などの有効成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、可溶化剤、溶解補助剤、安定化剤、香料、色素等を配合する事もできる。
さらに、本発明に使用し得る殺菌消毒液は、上述した成分以外に、溶媒として水を含む。
水としては、精製水を用いることができる。殺菌消毒液中に含まれる水の量は、通常、上述した各成分の合計量を100質量%から差し引いた残部である。
殺菌消毒液に含まれる水の量は、通常、殺菌消毒液の総質量に基づいて、50ないし95質量%程度、好ましくは85ないし95質量%程度となる。
【0031】
本発明に使用し得る殺菌消毒液は、例えば、精製水等の水に上記の成分を混合し、必要に応じて加熱、攪拌等の処理を行って、上記の成分を溶解することにより調製され得る。
得られた殺菌消毒液は、必要に応じてpH調整剤を添加して所望のpHに調整し得る。
pH調整剤は、緩衝作用のある有機酸及び有機酸塩類が一般に用いられる。具体的には例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、無水クエン酸、コハク酸、リン酸等を用いることができる。
殺菌消毒液を、繊維材料から構成された基布に含浸させることにより、本発明のシートを製造することができる。
繊維材料から構成された基布に含浸される殺菌消毒液の量は、通常、基布の質量の2ないし4倍、好ましくは3ないし4倍の質量である。
【0032】
本発明に使用し得る殺菌消毒液が、ミコナゾールを含む抗真菌成分、ノニオン界面活性剤及び、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1種以上のフェノール類を含む場合、該消毒液のpHを、5ないし8に調整すれば、ミコナゾールの基布への吸着を低く、例えばミコナゾールの吸着率を30%以下に抑えることができる。また、ミコナゾールの吸着率を20%以下に抑えることが好ましく、ミコナゾールの吸着率を10%以下に抑えることが更に好ましい。
本発明に使用し得る好ましい殺菌消毒液として、ミコナゾールを含む抗真菌成分、ノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油及び、フェノール類としてイソプロピルメチルフェノールを含む殺菌消毒液が挙げられ、該消毒液のpHを、6ないし8に調整すれば、ミコナゾールの基布への吸着を低く、例えばミコナゾールの吸着率を20%以下に抑えることができる。
また、本発明に使用し得る殺菌消毒液が、ミコナゾールを含む抗真菌成分、ノニオン界面活性剤、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1種以上のフェノール類及びアミノ酸を含む場合、該消毒液のpHを、4ないし9に調整すれば、ミコナゾールの基布への吸着を低く、例えばミコナゾールの吸着率を30%以下に抑えることができる。また、ミコナゾールの吸着率を20%以下に抑えることが好ましく、ミコナゾールの吸着率を10%以下に抑えることが更に好ましい。
本発明に使用し得る別の殺菌消毒液として、ミコナゾールを含む抗真菌成分、ノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、フェノール類としてイソプロピルメチルフェノール、及びアミノ酸としてアルギニンを含む殺菌消毒液が挙げられ、該消毒液のpHを、5ないし9、好ましくは5ないし6に調整すれば、ミコナゾールの基布への吸着を低く、例えばミコナゾールの吸着率を20%以下に抑えることができる。pHを5ないし6に調製することは、皮膚に対する刺激性を抑える観点からも好ましい。
【0033】
本発明のシートは、ミコナゾールの基布への吸着を抑制し、それにより有効に殺菌消毒効果を発揮し得るため、医薬品、医薬部外品又は化粧品用のシート又はウェットティッシュなどの雑貨として有用である。
【0034】
本発明はまた、ミコナゾールの基布への吸着を抑制する液体であって、
前記液体は、該液体の総質量に基づいて、ミコナゾールを含む抗真菌成分を0.01ないし1質量%、ノニオン界面活性剤を0.1ないし10質量%及びイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベンからなる群から選択される少なくとも1種以上のフェノール類を0.01ないし1質量%含有する水性溶液である液体にも関する。
【0035】
本発明のミコナゾールの基布への吸着を抑制する液体は、上述の殺菌消毒液と同一の水性溶液であり得、そのため、該液体に含み得る成分、成分の含有量等は、殺菌消毒液のための上記記載と同様のものを採用することができる。
【0036】
本発明のミコナゾールの基布への吸着を抑制する液体の剤形としては、例えば液剤が挙げられる。
液剤としては、本発明の液体、即ち、上述の殺菌消毒液を、例えば、合成樹脂製の容器に充填した態様が挙げられる。
液剤を上記の態様で使用する場合、容器内の本発明の液体を基布に含浸させて使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中の記載において、界面活性剤Aないし界面活性剤E、PG、IPMP及びPETは以下を意味する。
界面活性剤A:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG-60 水添ヒマシ油)(HLB:14.0)
界面活性剤B:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG-40 水添ヒマシ油)(HLB:12.5)
界面活性剤C:モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)(HLB:16.7)
界面活性剤D:ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(20E.O.)(HLB:16.9)
界面活性剤E:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(HLB:10.8)
PG:プロピレングリコール
IPMP:イソプロピルメチルフェノール
PET:ポリエチレンテレフタラート
【0038】
試験例1:ノニオン系界面活性剤の配合量の影響
表1に記載される配合量で殺菌消毒液を調製し、不織布(コットン100%)に、該不織布の質量の3.5倍の質量の殺菌消毒液を含浸させて配合例1ないし配合例6のシートを製造した。基布に殺菌消毒液を含浸させた後、乾燥しないように密閉系で少なくとも12時間以上保存した後に、基布から殺菌消毒液を搾出し、液中のミコナゾールを定量した。ミコナゾールの定量は、液体クロマトグラフィーを用いて、常法にて行った。
各シートにおけるミコナゾールの吸着率(%)を測定した。
尚、ミコナゾールの吸着率(%)は、以下の計算式によって計算した値である。
吸着率(%)=100-(絞り液中に含まれるミコナゾールの総量(定量値)/シートに含浸させた液中に含まれるミコナゾールの総量(定量値)×100)
また、殺菌消毒液の抗菌作用、抗真菌作用は、最小発育阻止濃度試験(MCI)により評価した。
結果を表1に纏めた。
尚、表中の各成分の量は、殺菌消毒液の総質量に基づく質量%を表す。
【表1】
結果:表1より、ノニオン系界面活性剤(界面活性剤A:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG-60 水添ヒマシ油))の配合量を増やすことで、ミコナゾールの基布(不織布)への吸着率(%)を抑制できることが分った。しかし、ノニオン系界面活性剤の配合量を増やすとべたつきが生じた。
また、搾出した殺菌消毒液が抗真菌・抗菌活性を有することをMIC法により確認した。
【0039】
試験例2:pHの影響
配合例3と同様の配合割合の殺菌消毒液のpHを種々調整した配合例7ないし配合例11のシートを製造し、ミコナゾールの吸着率(%)を測定した。(測定方法は、試験例1と同じ)
結果を表2に纏めた。
【表2】
結果:中性ないし弱酸性領域では、ミコナゾールの吸着率(%)は低く抑えられた。
【0040】
試験例3:フェノール類等配合の影響
フェノール類として、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン又はプロピルパラベンを0.1質量%配合した以外は配合例10と同様の配合割合の殺菌消毒液である配合例12ないし配合例16のシートを製造し、ミコナゾールの吸着率(%)を測定し、配合例10のシートと比較した。また、エタノールを30質量%配合した配合例17のシートを製造し、ミコナゾールの吸着率(%)を測定した(測定方法は、試験例1と同じ)。
結果を表3に示した。
【表3】
結果:配合例12ないし16はいずれも、配合例10に比べて、顕著な吸着率の低下がみられた。ノニオン系界面活性剤とフェノール類(イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、メチルパラベン又はプロピルパラベン)を組合せて配合することにより、ミコナゾールの基布への吸着を顕著に抑制できた。すなわち、べたつきの問題がほとんど生じない少量のノニオン系界面活性剤とフェノール類を組み合わせることにより、ミコナゾールの基布への吸着を顕著に抑制できることが分かった。
また、エタノールを配合する事により、ノニオン系界面活性剤の配合量が少量でも、pH=7におけるミコナゾールの吸着率(%)を低くできることが分った。
【0041】
試験例4:フェノール類(イソプロピルメチルフェノール(IPMP))配合におけるpHの影響
配合例12と同様の配合割合の殺菌消毒液のpHを種々調整した配合例18ないし配合例20のシートを製造し、ミコナゾールの吸着率(%)を測定し、イソプロピルメチルフェノールが配合されていない配合例8ないし配合例11のシートと比較した。(測定方法は、試験例1と同じ)
結果を表4に纏めた。
【表4】
結果:イソプロピルメチルフェノールの配合により、pH=6~8の範囲においてミコナゾールの吸着率(%)を低くできることが確認された。
一方、pH5においては、ノニオン系界面活性剤とフェノール類を組み合わせて配合しても、ミコナゾールの基布への吸着の抑制が十分に発揮されないことが示唆された。
【0042】
試験例5:アミノ酸(L-アルギニン)配合の影響
L-アルギニンを0.02質量%配合した以外は配合例8、10、11と同様の配合割合及び同じpHの殺菌消毒液である配合例21ないし配合例23のシートを製造し、ミコナゾールの吸着率(%)を測定し、配合例8ないし11のシートと比較した。(測定方法は、試験例1と同じ)
結果を表5に示した。
【表5】
結果:アミノ酸(L-アルギニン)の配合により、pH5~8において、ミコナゾールの吸着率(%)が減少する傾向が観られた。
【0043】
試験例6:フェノール類(イソプロピルメチルフェノール(IPMP))とアミノ酸(L-アルギニン)の併用の影響
L-アルギニンを0.02質量%配合した以外は配合例12及び配合例18ないし20(イソプロピルメチルフェノールを含む)と同様の配合割合で、pHが4.0、5.0、6.0、7.0、8.0及び9.0の殺菌消毒液である配合例24ないし配合例29のシートを製造し、ミコナゾールの吸着率(%)を測定し、配合例12及び配合例18ないし20のシートと比較した。(測定方法は、試験例1と同じ)
結果を表6に示した。
【表6】
結果:ノニオン系界面活性剤とフェノール類(イソプロピルメチルフェノール)との組合せに、さらにアミノ酸(L-アルギニン)を併用することにより、pH=4~9)において、ミコナゾールの吸着率(%)が低く抑えられることが確認された。特にpH5、6の弱酸性領域においては、L-アルギニン添加によるミコナゾール吸着抑制増強効果が顕著であった。
【0044】
試験例7:アミノ酸の種類の影響
L-アルギニンをリジンに変更した以外は配合例22(イソプロピルメチルフェノールを含まない)及び配合例27(イソプロピルメチルフェノールを含む)と同様の配合割合及び同じpHの殺菌消毒液である配合例30及び配合例31のシート、並びに、L-アルギニンをヒスチジンに変更した以外は配合例22(イソプロピルメチルフェノールを含まない)及び配合例27(イソプロピルメチルフェノールを含む)と同様の配合割合及び同じpHの殺菌消毒液である配合例32及び配合例33のシートを製造し、ミコナゾールの吸着率(%)を測定した。(測定方法は、試験例1と同じ)
結果を表7に示した。
【表7】
結果: リジン及びヒスチジンについても、L-アルギニンの場合と同様の吸着抑制効果が認められた。
【0045】
試験例8:ノニオン系界面活性剤の種類の影響
界面活性剤A(ノニオン系界面活性剤)を他の種々のノニオン系界面活性剤(界面活性剤Bないし界面活性剤E)に変更し及びノニオン系界面活性剤の配合量を変更した以外は配合例10(イソプロピルメチルフェノール及びアミノ酸を含まない)と同様の配合割合及び同じpHの殺菌消毒液である配合例34、36、38及び40のシート、並びに、配合例27(イソプロピルメチルフェノール及びアミノ酸を含む)と同様の配合割合及び同じpHの殺菌消毒液である配合例35、37、39及び41のシートを製造し、ミコナゾールの吸着率(%)を測定した。(測定方法は、試験例1と同じ)
結果を表8に示した。
【表8】
結果:種々のノニオン系界面活性剤(界面活性剤Bないし界面活性剤E)において、それぞれ単独で、界面活性剤Aと同様のミコナゾール吸着抑制効果が認められた。また、界面活性剤Aと同様に、フェノール類(イソプロピルメチルフェノール)とアミノ酸(L-アルギニン)との組合わせにより、より強力なミコナゾールの吸着抑制効果が確認された。
【0046】
試験例9:不織布の材質検討
不織布の材質を、コットン100%不織布をレーヨン70%及びポリエチレンテレフタラート30%からなる不織布に変更し、及び不織布を変更した以外は配合例10、12、15、16と同様の配合割合及び同じpHの殺菌消毒液である配合例42ないし配合例45のシート並びに不織布を変更し且つpHを5.0とした以外は配合例10、12、15、16と同様の配合割合の殺菌消毒液である配合例46ないし配合例49のシートを製造し、これらの不織布へのミコナゾールの吸着率(%)を測定した。(測定方法は、試験例1と同じ)
結果を表9に示した。
【表9】
結果:レーヨン70%及びポリエチレンテレフタラート30%からなる不織布において、pH5及びpH7でコットン100%と同様に、フェノール類(イソプロピルメチルフェノール、メチルパラベン、プロピルパラベン)とノニオン系界面活性剤(界面活性剤A)との併用によるミコナゾールの吸着抑制が確認された。