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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】新規な過酸化物安定剤
(51)【国際特許分類】
   C01B 15/037 20060101AFI20220225BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20220225BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20220225BHJP
   C11D 7/36 20060101ALI20220225BHJP
   C11D 7/06 20060101ALI20220225BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20220225BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220225BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20220225BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20220225BHJP
   C01B 15/055 20060101ALI20220225BHJP
   C01B 15/12 20060101ALI20220225BHJP
   C01B 15/16 20060101ALI20220225BHJP
   C01B 15/10 20060101ALI20220225BHJP
   C01B 15/08 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C01B15/037 G
C11D3/48
C11D7/26
C11D7/36
C11D7/06
C11D7/50
A01P3/00
A01N25/02
A01N59/00 A
C01B15/055
C01B15/12
C01B15/16
C01B15/10 Q
C01B15/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019526001
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 IB2017057223
(87)【国際公開番号】W WO2018092087
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】62/424,608
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518408349
【氏名又は名称】ディバーシー,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】アーマドプール ファラツ
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-502450(JP,A)
【文献】特開昭54-137445(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0049510(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0259745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 15/00-23/00
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状カーボネートを溶液に添加することからなる、前記溶液中の過酸化物化合物を安定化する方法であって、前記環状カーボネートがグリセロールカーボネートであることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記溶液が第四級アンモニウム化合物を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記過酸化物化合物が過酸化水素、過酸化水素付加物、IIIA族酸化剤、またはVIA族酸化剤、VA族酸化剤、VIIA族酸化剤の過酸化水素供与体、過酸化ナトリウム、尿素過酸化物、過ホウ酸、過ホウ酸ナトリウム/過ホウ酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジアセチル、ジ(n-プロピル)ペルオキシジカーボネート、ペルオキシ安息香酸ブチル、ブチルヒドロペルオキシド、エチリデンペルオキシド、エチルヒドロペルオキシド、ペルオキシ一硫酸、ペルオキシカルボン酸、過炭酸塩、過安息香酸、クメンペルオキシド、またはそれらの混合物を含む群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記過酸化物化合物が過酸化水素、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、ペルオキシ一硫酸、ペルオキシカルボン酸、またはそれらの混合物を含む群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記過酸化物化合物が過酸化水素である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液がさらに、水、エトキシル化および/またはプロポキシル化を伴うプロピレングリコール誘導体、アルコキシトリグリコールおよび他のグリコール、例えば、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、ブトキシトリグリコール、ヘキシルトリグリコール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、メタノール、エタノール、ブチル3-ヒドロキシブチレート、イソプロピルアルコール、エチルヘキシルグリセロール、分枝状または非分枝状ジオール、荷電または非荷電非界面活性剤乳化剤、二塩基性エステル、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、およびその混合物を含む群から選択される溶媒を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記過酸化物化合物が前記溶液中に0.05重量%~49重量%の濃度で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記環状カーボネートが、前記溶液中に0.05重量%~49重量%の濃度で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液のpHが10までである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液のpHが6までである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記pHが0.1から10である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2016年11月21日出願の米国仮特許出願第62/424,608からの優先権を主張し、その内容を、参照により本明細書に組み込む。
【0002】
発明の分野
本発明は、過酸化物化合物の安定剤に関する。
【背景技術】
【0003】
過酸化物組成物または溶液、例えば過酸化水素を含有する組成物または溶液は、経時的に過酸化物損失を受けやすいことが知られている。過酸化物損失の速度を低減するために、安定剤、例えばキレート剤、酸性化剤、および緩衝剤が、使用されてきた。多くの従来の安定剤は、狭いpH範囲、通常は酸性範囲内でのみ有効である。
【0004】
ポリホスホン酸キレート剤、例えば1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP、本明細書ではエチドロン酸とも呼び、商品名DEQUEST 2010による)、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エチレンジ-アミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミン-テトラ(メチレンホスホン)酸、それらの塩は、溶液中の遊離の遷移金属イオンによる過酸化物化合物の触媒的分解を防止することが知られている。そのようなポリホスホン酸キレート剤およびその塩の欠点は、それらの好ましくない環境プロフィールであり-リンは環境中に放出され得、湖および他の水域の富栄養化に寄与し得る。HEDPによってまた、高濃度で使用する場合、表面腐食が引き起こされ得る。
【0005】
水酸化カリウム(KOH)は、多くのニッチ用途を有する塩基である。それは、洗浄(例えば、グリースおよび破片除去)のための、およびpHを調整するための溶液中で使用される。殺菌特性を有することが知られている一方、その活性は低い。KOHの活性を、温度を上昇させることによって、および/またはより高い濃度を使用することによって増加させることができる。KOHは、極めて腐食性であり、注意深く取り扱わなければならない。これは、「現場洗浄(cleaning-in-place)」系で広く使用され、通常、KOHを中和するために酸洗浄が続く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、酸性およびアルカリ性pH範囲の両方において有効である安定剤を含む新規な過酸化物安定化化合物を提供することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、驚くべきことに、環状カーボネート、例えばプロピレンカーボネートならびにその類似体(例えば、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびグリセロールカーボネート)を使用して、溶液中の過酸化物化合物を安定化することができることを見出した。これらの環状カーボネートを過酸化物安定剤として使用する利点は、それらの相対的に低いコスト、高い入手可能性、および環境に対する親和性であり-例えば、それらは容易に生分解性であり、低い揮発性を有し、安全な食品添加物として認可され、かつ生きている生物に対する毒性が低い、ないしは毒性がない。他の利点には、成分の可溶化および土の洗浄を補助するための溶媒として作用するそれらの能力、ならびに広範囲のpH、例えば0.1~14での有効性が含まれる。これは、公知の過酸化物安定剤が典型的には溶液のpHが上昇するに伴ってより有効でなくなるので、予想外である。例えば、従来の安定剤、例えばEDTA、ジピコリン酸およびアセトアニリドは、アルカリ性範囲において最小の有効性を示す。さらに別の利点は、環状カーボネートが低い凝固点(例えば、プロピレンカーボネートについて-49℃)を有し、したがって、溶液が凍結するのを防止するのに有用であり得ることである。
【0008】
また、驚くべきことに、本発明者は、ポリホスホン酸キレート剤およびそれらの塩の安定化効果を、pKb値が3.0までのアルカリ性pH調整剤を添加した場合、はるかに低い濃度で達成することができることを見出した。これによって、改善された環境プロフィールおよびコスト削減がもたらされ得る。
【0009】
したがって、本発明は、過酸化物化合物と、(i)環状カーボネート;(ii)(a)ポリホスホン酸キレート剤およびその塩と、(b)ポリホスホン酸キレート剤またはその塩のアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物に対するw/w比が約1:1~約50:1である、pKb値が3.0までのアルカリ性pH調整剤との組み合わせ;ならびに(iii)それらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの化合物の有効量とを含有する、安定化された過酸化物溶液を提供する。
【0010】
別の態様によれば、本発明は、(i)環状カーボネート;(ii)(a)ポリホスホン酸キレート剤およびその塩、ならびに(b)ポリホスホン酸キレート剤またはその塩のアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物に対するw/w比が約1:1~約50:1である、pKb値が3.0までのアルカリ性pH調整剤の組み合わせ;ならびに(iii)それらの混合物を含む、本質的にそれからなる、またはそれらからなる群から選択される少なくとも1つの化合物の、溶液中の過酸化物化合物の安定化における使用を提供する。
【0011】
さらに別の態様によれば、本発明は、溶液中の過酸化物化合物を安定化する方法を提供し、当該方法は、(i)環状カーボネート;(ii)(a)ポリホスホン酸キレート剤およびその塩、ならびに(b)ポリホスホン酸キレート剤またはその塩のアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物に対するw/w比が約1:1~約50:1である、pKb値が3.0までのアルカリ性pH調整剤の組み合わせ;ならびに(iii)それらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの化合物の有効量を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を添加する工程を包含する。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、溶液中の過酸化物化合物の安定化に使用するための、(i)環状カーボネート;(ii)(a)ポリホスホン酸キレート剤およびその塩、ならびに(b)pKb値が3.0までのアルカリ性pH調整剤の組み合わせ;ならびに(iii)それらの混合物を含む、本質的にそれからなる、またはそれらからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を提供する。
【0013】
過酸化物化合物は、過酸化水素、過酸化水素付加物、IIIA族酸化剤、またはVIA族酸化剤、VA族酸化剤、VIIA族酸化剤の過酸化水素供与体、過酸化ナトリウム、尿素過酸化物、過ホウ酸、過ホウ酸ナトリウム/過ホウ酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過リン酸塩、過酸化カルシウム、過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジアセチル、ジ(n-プロピル)ペルオキシジカーボネート、ペルオキシ安息香酸ブチル、ブチルヒドロペルオキシド、エチリデンペルオキシド、エチルヒドロペルオキシド、ペルオキシ一硫酸、ペルオキシカルボン酸(過酢酸、過オクタン酸、過ギ酸、ペルオキシフタレートなど)、過炭酸塩(例えば、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム)、過安息香酸、クメンペルオキシド、またはそれらの混合物を含む、本質的にそれからなる、またはそれらからなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、環状カーボネートは、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、およびグリセロールカーボネートを含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる群から選択される。
【0015】
溶液は、1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリメチレンホスホン酸、ジ-エチレントリ-アミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エチレンジ-アミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミン-テトラ(メチレンホスホン)酸、それらの塩、およびそれらの混合物を含む、本質的にそれからなる、またはそれらからなる群から選択されるポリホスホン酸キレート剤またはその塩を有することができる。
【0016】
3.0までのpKb値を有するアルカリ性pH調整剤を、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、およびそれらの混合物を含む、本質的にそれからなる、またはそれらからなる群から選択することができる。
【0017】
溶液は、さらに、水、エトキシル化および/またはプロポキシル化を伴うプロピレングリコール誘導体、アルコキシトリグリコールおよび他のグリコール、例えば、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、ブトキシトリグリコール、ヘキシルトリグリコール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、メタノール、エタノール、ブチル3-ヒドロキシブチレート、イソプロピルアルコール、エチルヘキシルグリセロール、分枝状または非分枝状ジオール、荷電または非荷電非界面活性剤乳化剤、二塩基性エステル、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、およびその混合物を含む、本質的にそれからなる、またはそれらからなる群から選択された溶媒を含むことができる。
【0018】
本発明による溶液は、本明細書に列挙した化合物以外の過酸化物安定剤非含有であり得る。
【0019】
環状カーボネートは、約0.05、1、5、10もしくは15重量%から、または約2.5、7.5、12.5、17.5、20、30、40もしくは49重量%までの濃度で存在することができる。
【0020】
ポリホスホン酸キレート剤またはその塩のアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物に対する重量比は、約1:5~約100:1、または約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、10:1、約5:1もしくは約1:1までであり得る。
【0021】
過酸化物化合物は、約0.05、0.5、1、2、4、7、14、16、25、35もしくは45重量%から、または約50、30、20、10、8、5、3、1.5、0.1、もしくは0.01重量%までの濃度で存在することができる。
【0022】
溶液のpHは、約14、12、10、8、7、6、5、4、3、2もしくは1まで、および/または約0.1、1.8、2.5、3.2、3.8、4.2もしくは5.5からであり得る。
【0023】
本発明は、図面を参照することでより良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、プロピレンカーボネートが溶液中に10重量%の固定された濃度で存在する場合の過酸化物損失に対する過酸化水素濃度の効果を示すグラフである。
図2図2は、過酸化物損失に対する固定された量のHEDP(1重量%)と共に、様々な量のKOHの効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
明確のために、および曖昧さを避けるために、特定の用語を、本明細書中で以下のように定義する。
【0026】
「含む」という用語は、「限定せずに含む」ことを意味する。したがって、成分のリストを含む組成物は、明示的に列挙していない追加の成分を含み得る。「からなる」という用語は、「列挙した成分および天然の、または市販の不純物または添加剤として存在し得るような追加の成分を含む」ことを意味する。天然の、および市販の不純物は、通常の当業者には明らかであろう。市販の添加剤の例は、例えば、過酸化水素市販溶液中の微量の安定剤である。「本質的に~からなる」という用語は、列挙した成分(本明細書中で定義する)に加えて、溶液の基本的な、および新規な特性に実質的に影響を及ぼさない(正に、または負に)ような追加の成分「からなる」ことを意味する。「基本的な、および新規な特性」によって、本発明による安定剤によって提供される溶液の安定性を意味する。
【0027】
本発明は、「有効量の少なくとも1つの安定剤」を使用する。これを、本明細書中で、本明細書中に開示する加速老化試験を用いて測定して、安定剤の有効量が存在する場合、それが存在しない場合と比較して、過酸化水素安定性の少なくとも10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%による改善をもたらす量であると定義する。本発明の安定剤は、ベース溶液の抗菌効力を増強するために使用せず、単に溶液中の過酸化物化合物を安定化するために使用する。
【0028】
用語「重量パーセント(weight percent)」、「重量パーセント(wt.%)」、「重量パーセント(percent by weight)」、% w/wおよびそれらの変形は、当該物質の重量を組成物の全重量で除し、100を乗じた物質の濃度を指す。
【0029】
「約」という用語は、例えば、実際の世界で濃縮物またはすぐに使える(RTU)溶液を作製するために使用する典型的な測定および液体処理手順、組成物を作製するために使用する成分の製造、供給源、または純度の違い、ならびに方法を実施するために使用する成分の純度などによって生じ得る数量の変化量を指す。用語「約」はまた、特定の初期混合物から生じる組成物についての異なる平衡条件または異なる反応レベルに起因して異なる量を包含する。用語「約」によって修飾されるか否かにかかわらず、特許請求の範囲は、量に対する均等物を含む。
【0030】
明細書および特許請求の範囲において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの化合物」を含有する組成物への言及は、2つ以上の化合物を有する組成物を含む。また、用語「または」を、内容が明確に別段の指示をしない限り、一般に「および/または」の意味で使用することに留意するべきである。
【0031】
別段特定しない限り、「アルキル」または「アルキル基」という用語は、直鎖状アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、環状アルキル基(または「シクロアルキル」もしくは「脂環式」もしくは「炭素環式」基)(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、分枝鎖アルキル基(例えば、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチルなど)、ならびにアルキル置換アルキル基(例えば、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基)を含む、1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を指す。
【0032】
別段特定しない限り、「アルキル」という用語は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含む。用語「置換アルキル」は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の1つ以上の水素を置換する置換基を有するアルキル基を指す。このような置換基には、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲナ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィン、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、複素環式、アルキルアリール、または芳香族(複素芳香族を含む)基が含まれ得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、置換アルキルは、複素環式基を含むことができる。本明細書中で使用する場合、用語「複素環式基」は、環中の1つ以上の炭素原子が炭素以外の元素、例えば、窒素、硫黄または酸素である炭素環式基に類似する閉環構造を含む。複素環式基は、飽和または不飽和であってもよい。例示的な複素環式基としては、アジリジン、エチレンオキシド(エポキシド、オキシラン)、チイラン(エピスルフィド)、ジオキシラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ジオキセタン、ジチエタン、ジチエート、アゾリジン、ピロリジン、ピロリン、オキソラン、ジヒドロフラン、およびフランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明は、本明細書中に列挙する任意の成分を省略する可能性を意図する。本発明は、さらに、構成要素が本発明に含まれるか、または本発明から除外されると明示的に言及されていなくても、いかなる構成要素も省略することを意図する。
【0035】
本明細書中の化学構造を、当該分野で知られている従来の標準に従って描写する。したがって、炭素原子のような原子が、描写するように、満たされていない原子価を有する外見を呈する場合、当該原子価は、水素原子を必ずしも明示的に描写しない場合であっても水素原子によって満たされると仮定される。本発明の化合物のいくつかの構造は、立体炭素原子を含む。そのような不斉から生じる異性体(例えば、全てのエナンチオマーおよびジアステレオマー)は、別段指示しない限り本発明の範囲内に含まれることを理解するべきである。すなわち、別段規定しない限り、任意のキラル炭素中心は、(R)または(S)立体化学のいずれかであり得る。このような異性体を、古典的な分離技法によって、および立体化学的に制御された合成によって、実質的に純粋な形態で得ることができる。さらに、アルケンは、適切な場合、EまたはZ配置のいずれかを含むことができる。さらに、本発明の化合物は、溶媒和していない、ならびに許容可能な溶媒、例えば水、THF、エタノールなどで溶媒和した形態で存在してもよい。一般に、溶媒和した形態は、本発明の目的のために、溶媒和していない形態と同等であると考えられる。
【0036】
過酸化物化合物
本発明による新規な過酸化物安定剤は、溶液または組成物中の過酸化物化合物の安定化に有用である。本明細書中で使用する場合、「過酸化物化合物」は、酸素-酸素単結合または過酸化物アニオンを含有する化合物である。
【化1】
例としては、アルカリ金属過酸化物(例えば、過酸化ナトリウム)が挙げられる。
【0037】
また含まれるのは、水溶液に溶解した場合に過酸化水素を発生し、放出する化合物(例えば、過酸化尿素、過ホウ酸、過ホウ酸ナトリウム/過ホウ酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、またはアルカリ、アルカリ土類、もしくは遷移族金属またはそれらの塩の他の過酸化物)である。
【0038】
さらに他の例は、以下の式による化合物である。
【化2】
式中、R1およびR2は、独立して、置換または非置換、分枝状または非分枝状、環状または直鎖状アルキル基である。R1およびR2は、環状構造を形成するように連結されていてもよい。例としては、ジアルキルペルオキシド、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジ(n-プロピル)ペルオキシジカーボネート、ブチルペルオキシベンゾエート、およびLuperox(商標)という商品名の下で商業的に入手できる多くの他のものが挙げられる。特定の場合において、R1およびR2は、硫黄原子またはリン原子であり得る(例えば、ペルオキシ二硫酸)。
【化3】
式中、Rは、Hまたは置換もしくは非置換、分枝状もしくは非分枝状、環状もしくは直鎖状アルキル基である。例としては、過酸化水素、ブチルヒドロペルオキシド、エチリデンペルオキシド、エチルヒドロペルオキシドが挙げられる。特定の場合において、Rは、硫黄原子またはリン原子であり得る(例えば、ペルオキシ一硫酸)。
【化4】
式中、Rは、水素、酸素、または置換もしくは非置換、分枝状もしくは非分枝状、環状もしくは直鎖状アルキル基である。例としては、ペルオキシカルボン酸(過酢酸、過オクタン酸、過ギ酸、ペルオキシフタレートなど)、過炭酸塩(例えば、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム)、過安息香酸、クメンペルオキシドなどが挙げられる。
【0039】
好ましい過酸化物化合物は、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化ベンゾイル、過酸化ジベンジル、ペルオキシカルボン酸(過酢酸、過オクタン酸、過ギ酸など)、過炭酸塩(例えば、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム)、ペルオキシ一硫酸、およびペルオキシ二硫酸である。
【0040】
環状炭酸
本明細書中で使用する場合、環状カーボネートは、式1による化合物である:
【化5】
式中、X=置換または非置換、分枝状または非分枝状アルキル基であり、nは、化合物が、溶解度増強成分の使用の有無にかかわらず、その過酸化物安定性増強効果を送達するのに十分に水溶液に可溶であるように選択される。例えば、nは、0~16、0~12、または0~6であり得る。
一例は、プロピレンカーボネートである:
【化6】
他の例は、トリメチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、およびグリセロールカーボネートである。
【0041】
ポリホスホン酸キレート剤およびその塩ならびに特定のアルカリ性pH調整剤
本発明において開示する他の有用な安定剤は、ポリホスホン酸キレート剤、およびそれらの塩、ならびに3.0の最大pKb値を有するアルカリ性pH調整剤の組み合わせである。ポリホスホン酸キレート剤は、それらの分子の各々中に1個より多いホスホネートまたはホスホン酸基を含有するキレート剤と呼ばれる。ポリホスホン酸キレート剤の例は、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリメチレンホスホン酸、ジ-エチレントリ-アミンペンタ(メチレンホスホン酸)、およびエチレンジ-アミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミン-テトラ(メチレンホスホン)酸である。本発明によるアルカリ性pH調整剤の例には、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムが含まれる。
【0042】
安定剤濃度
安定剤としての環状カーボネートを、約0.05、1、5、10もしくは15重量%から、または約2.5、7.5、12.5、17.5、20、30、40もしくは49重量%までの濃度で使用することができる。
【0043】
ポリホスホン酸キレート剤(複数可)および/またはその塩(複数可)の、3.0までのpKb値を有するアルカリ性pH調整剤に対するw/w比は、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約10:1、約5:1、約1:1、または約1:5であり得る。これらの値の間の重量比をまた、本明細書中で意図する。
【0044】
酸化剤
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、約0.001重量%~約99重量%の酸化剤を含むことができる。他の実施形態では、本発明の組成物は、約1重量%~約60重量%の酸化剤を含むことができる。いくつかの他の実施形態では、本発明の組成物は、約50重量%~約80重量%の酸化剤を含むことができる。他の実施形態では、本発明の組成物は、約15重量%~約30重量%の酸化剤を含む。さらに他の実施形態では、本発明の組成物は、約25重量%の酸化剤を含む。さらなる実施形態において、本発明は、約1重量%~約20重量%の酸化剤を含む。これらの範囲および値の間の全ての範囲および値は、本発明によって包含されることを理解するべきである。当業者は、特定の酸化剤もまた過酸化物化合物であることを理解するであろう。
【0045】
無機酸化剤の例には、以下のタイプの化合物もしくはこれらの化合物の供給源、またはこれらのタイプの化合物のアルカリ金属塩、またはそれらと付加物を形成する化合物が含まれる:過酸化水素、尿素-過酸化水素複合体、または以下のものの過酸化水素供与体:1族(IA)酸化剤、例えば過酸化リチウム、過酸化ナトリウム;2族(IIA)酸化剤、例えば過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化バリウム;12族(IIB)酸化剤、例えば過酸化亜鉛;13族(IIIA)酸化剤、例えばホウ素化合物、例えば過ホウ酸塩、例えば式Na[B(OMOH)]・6HOの過ホウ酸ナトリウム六水和物(過ホウ酸ナトリウム四水和物とも呼ばれる);式Na(O[(OH)]・4HOのペルオキシホウ酸ナトリウム四水和物(過ホウ酸ナトリウム三水和物とも呼ばれる);式Na[B(O(OH)]の過ホウ酸ナトリウム(過ホウ酸ナトリウム一水和物とも呼ばれる);14族(IVA)酸化剤、例えば、過ケイ酸塩およびペルオキシ炭酸塩、それは過炭酸塩とも呼ばれ、例えばアルカリ金属の過ケイ酸塩またはペルオキシ炭酸塩である;15族(VA)酸化剤、例えばペルオキシ亜硝酸およびその塩;ペルオキシリン酸およびそれらの塩、例えば過リン酸塩;16族(VIA)酸化剤、例えばペルオキシ硫酸およびそれらの塩、例えばペルオキシ一硫酸およびペルオキシ二硫酸、ならびにそれらの塩、例えば過硫酸塩、例えば過硫酸ナトリウム;ならびにVIIa族酸化剤、例えば過ヨウ素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム。他の活性無機酸素化合物は、遷移金属過酸化物、および他のそのような過酸素化合物、およびそれらの混合物を含むことができる。
【0046】
有機酸化剤の例としては、過安息香酸、過安息香酸の誘導体、t-ブチルベンゾイルヒドロペルオキシド、ベンゾイルヒドロペルオキシド、または任意の他の有機ベースの過酸化物およびそれらの混合物、ならびにこれらの化合物の供給源が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、過酢酸、過ギ酸、過炭酸、ペルオクタン酸などのC1~C12過カルボン酸を含む過酸;過シュウ酸、過コハク酸、過クエン酸、過グリコール酸、過リンゴ酸などの過二酸または過三酸;および過安息香酸などの芳香族過酸、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、上に列挙した無機酸化剤の1つ以上を使用する。好適な無機酸化剤には、オゾン、過酸化水素、過酸化水素付加物、IIIA族酸化剤、またはVIA族酸化剤の過酸化水素供与体、VA族酸化剤、VIIA族酸化剤、またはそれらの混合物が含まれる。このような無機酸化剤の好適な例としては、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、過リン酸塩、過ケイ酸塩、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
好ましい酸化剤は、過酸化水素、および/または任意の無機もしくは有機過酸化物もしくは過酸である。いくつかの実施形態では、酸化剤はまた、抗菌活性を有することができる。他の実施形態では、酸化剤は、抗菌、漂白、または当業者に知られている他の活性を示すのに不十分な量で存在する。
【0049】
溶媒または担体
本発明の配合物は、溶媒または担体、例えば水、エトキシル化および/またはプロポキシル化を伴うプロピレングリコール誘導体、アルコキシトリグリコール、および他のグリコール、例えばメトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、ブトキシトリグリコール、ヘキシルトリグリコール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテルを含んでもよい。プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、またはそれらの混合物を、使用することができる。他の好適な溶媒は、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、メタノール、エタノール、3-ヒドロキシ酪酸ブチル、イソプロピルアルコール、エチルヘキシルグリセロール、分枝状または非分枝状ジオール、荷電または非荷電非界面活性剤乳化剤、二塩基性エステル、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、およびそれらの混合物である。使用する場合、溶媒は、約0.01、0.05、1、5、10、15、20、30、40、もしくは50重量%から、または約25、40、60、70、85、もしくは99.9重量%までの濃度で存在してもよい。好ましくは、配合物は、少なくとも1つの溶媒または担体を含む。
【0050】
カルボン酸
いくつかの実施形態では、溶液または組成物は、少なくとも1つの分枝状または非分枝状、飽和または不飽和、置換または非置換のモノカルボン酸またはポリカルボン酸を含んでもよい。カルボン酸を、C1~C22カルボン酸から選択することができる。いくつかの実施形態では、カルボン酸は、C5~C11カルボン酸であってもよい。いくつかの実施形態では、カルボン酸は、C1~C4カルボン酸であってもよい。好適なカルボン酸の例としては、フロイ酸、サリチル酸、安息香酸、クエン酸、スルホサリチル酸、スルホコハク酸、グリコール酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、リンゴ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ならびにそれらの分枝状異性体、マレイン酸、アスコルビン酸、アルファ-またはベータ-ヒドロキシ酢酸、ネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリンスベリン酸およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
使用する場合、酸は、約0.05、1、10、もしくは20重量%から、または80、60、40、30、20、10、もしくは5重量%までの濃度で存在してもよい。
【0052】
他の有機酸および無機酸
特定の実施形態において、溶液または組成物は、1つ以上の他の有機酸、無機酸およびそれらの塩を含み得る。
【0053】
好適な無機酸としては、硫酸、重硫酸ナトリウム、リン酸、硝酸、塩酸、次亜塩素酸、スルファミン酸、それらの塩、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な有機酸には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、アルキルスルホン酸、例えば直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ギ酸、酢酸、グリコール酸、モノ、ジ、またはトリハロカルボン酸、ピコリン酸、ジピコリン酸、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
存在する場合、これらの有機酸および/または無機酸の総量は、約0.01、0.5、1、3、10、15もしくは20重量%から、または約60、40、20、10、3もしくは1重量%未満であり得る。
【0055】
界面活性剤
本発明の組成物または溶液は、過酸化物と相溶性である任意の界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性/双性イオン性およびカチオン性界面活性剤、ならびにそれらの混合物から選択され得る。
【0056】
例示的な非イオン性、両性、および双性イオン性界面活性剤は、Gohl et al.の米国特許第8,871,807号に開示されているものである(これらの界面活性剤を、本明細書中に参考として包含する)。好適な陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸、ポリオキシエチレンオクチルエーテルカルボン酸、C6~C22アルキルスルホン酸、キシレンスルホン酸、硫酸水素アルキル、またはアルキルホスホン酸およびそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。好適なカチオン性界面活性剤には、直鎖状アルキルアミンおよびアルキルアンモニウム、例えばベンザルコニウム塩素、塩化ベンゼトニウム(benzethonius chloride)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、およびそれらの非塩形態が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
使用する場合、界面活性剤は、約0.01、0.5、5、15、20もしくは40重量%から、または約70、50、25、10、3もしくは1重量%未満の濃度で存在してもよい。
【0058】
ヒドロトロープ(hydrotrope)
本発明の組成物または溶液は、1つ以上のヒドロトロープを含み得る。ヒドロトロープとしては、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびそれらの塩、ポリエーテルホスフェートエステル、ジフェニルオキシドジスルホネート、および安息香酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
使用する場合、ヒドロトロープは、約0.01、1、3、5、10、もしくは20重量%から、または約25、15、8、4、1.5、もしくは0.1重量%までの量で存在してもよい。
【0060】
抗菌性化合物
他の実施形態では、組成物は、微生物などを死滅させるための抗菌性化合物(例えば、殺菌剤または消毒剤)を含むことができる。抗菌性化合物を、精油、第四アンモニウム化合物、有機酸、パラベン、アルデヒド、フェノール化合物、アルコール、ハロゲンタイプもしくは過酸素(peroxygen)タイプの漂白剤、ホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒド放出剤、ペルオキシカルボン酸、またはそれらの混合物から選択することができ、これらに限定されない。
【0061】
使用する場合、抗菌性化合物の濃度は、約0.005、0.1、1、5、10、20、40、もしくは60重量%から、または約50、30、15、3、もしくは0.5重量%までであり得る。
【0062】
環状アルコール
いくつかの実施形態は、環状アルコールを含むことができる。環状アルコールは、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、およびフェネチルアルコールから選択することができ、これらに限定されない。使用する場合、環状アルコールは、約0.02、0.5、2、5、10、15、20、もしくは25重量%から、または約60、50、40、30、20、10、もしくは5重量%までの濃度で存在し得る。
【0063】
付加的成分
本発明の組成物は、限定せずに顔料および染料、芳香剤、レオロジー調整剤、腐食防止剤、消泡剤、スキンコンディショニング剤、柔軟剤、帯電防止剤、しわ防止剤、移染防止剤/着色防止剤、脱臭剤/臭気捕捉剤、pH調整剤、ビルダー、皮膚軟化剤、漂白剤活性剤、酵素、キレート剤、光沢剤、ラジカル捕捉剤、防腐剤、防汚(soil shielding)剤/防汚剤(soil releasing agent)、紫外線防止剤、撥水剤、防虫剤、抗ピリング剤(anti-pilling agent)、酸味剤、カビ取り剤(mildew removing agent)、アレルギー剤(allergicide agent)、およびそれらの混合物を含む、当業者には明らかな追加の成分を含み得る。
【0064】
使用する場合、1つ以上の染料は、約0.0002、0.05、1、2、もしくは3重量%から、または約5、3、2、1、0.5、もしくは0.01重量%までの濃度で存在してもよい。
【0065】
香料は、約0.01、0.5、1、もしくは5重量%から、または約7、3、2、0.2重量%までの濃度で存在してもよい。
【0066】
キサンタンガムまたはグアーガムを含むがこれらに限定されないレオロジー改質剤は、約0.02、0.5、1、5、10重量%、または約15、7、3、0.7、0.1、もしくは0.02重量%までの濃度で存在してもよい。
【0067】
ベンゾトリアゾール、モリブデン酸塩、ジチオリン酸亜鉛を含むがこれらに限定されない防蝕剤は、約0.01、0.5、1、5、10重量%から、または約15、7、3、0.1、0.05重量%までの濃度で存在してもよい。
【0068】
シロキサン、低溶解度油、低HLB非イオン性界面活性剤を含むがこれらに限定されない消泡剤は、約0.001、0.1、0.5、2、4、5、もしくは7重量%、または約10、8、5、4、もしくは3重量%までの濃度で存在してもよい。
【0069】
緩衝剤は、約0.01、0.5、1、5、もしくは7重量%から、または約10、5、3、0.1、もしくは0.05重量%までの濃度で存在してもよい。
【0070】
皮膚軟化剤または皮膚コンディショニング剤、例えばグリセリン、グリセリド、ラノリン、長鎖脂肪酸、長鎖アルコール、およびリン脂質は、約0.01、0.5、2、5、もしくは10重量%から、または約15、8、4、1、もしくは0.1重量%までの濃度で存在してもよい。
【0071】
ビルダーは、約0.01、0.5、2、4、もしくは8重量%から、または約5、3、1、もしくは0.1重量%までの濃度で存在してもよい。
【0072】
漂白活性化剤は、約0.0005、0.01、1、5、もしくは10重量%から、または約15、8、3、もしくは0.1重量%までの濃度で存在してもよい。
【0073】
土壌懸濁剤は、約0.01、0.5、2、5、もしくは10重量%から、または約15、8、4、1、もしくは0.1重量%までの濃度で存在してもよい。
【0074】
増白剤は、約0.0005、0.05、0.1、2、もしくは7重量%から、または約10、5、3、1、もしくは0.01重量%までの濃度で存在してもよい。
【0075】
ラジカルスカベンジャーは、約0.005、0.5、1、5、もしくは15重量%から、または約20、10、3、0.1、もしくは0.01重量%までの濃度で存在してもよい。
【0076】
本発明による組成物または溶液を、濃縮または固体形態(例えば、錠剤、粉末など)で、ならびに液体成分が1つの部分に含まれ、固体成分が別の部分に含まれる2部分系などの多部分系で配合することができる。本発明による溶液を、ディスペンサー、例えばスプレーディスペンサー、または別の適切なディスペンサーパッケージに包装することができる。
【0077】
本発明の実施形態を、様々な目的、例えば洗浄、消毒および防腐、局所的処理、漂白、水および土壌処理、石油抽出および精製、ポリマー化学、採鉱、触媒反応、汚染物質破壊、脱塩素、臭気制御および空気処理、過酸形成、ならびに食品加工用途に使用することができる。
【0078】
以下の実施例は、本発明の有用性および新規性を例示するのに役立つであろう。
【0079】
試験結果
加速老化試験を用いて、本明細書中に開示する過酸化物配合物の安定性を決定した。加速老化試験は、40℃、50℃または54℃の高温を有するチャンバ内で、設定した時間、前述の過酸化物含有配合物をインキュベートし、次いで、最適化されたヨウ素ベースの滴定方法を使用して最終的な過酸化物濃度を試験し、それらを、加速老化試験前に測定した各配合物の初期過酸化物濃度に対して比較することを含む。高温での加速老化条件では、場合によっては溶液中の過酸化物化合物の分解を引き起こす反応は熱力学的に加速され、したがって、この方法は、過酸化物化合物が調製した配合物中で安定であるか否かを確認するために、大気温度ではるかに長いインキュベーション時間を待つ必要性に取って代わる。ヨード滴定は、約±0.05%の合計限界誤差範囲を有する。
【0080】
成分リスト
試験し、前に述べた溶液に使用した成分を、以下のように要約する:
過酸化物化合物/酸化剤
過酸化水素-Arkema Inc.から供給される50重量%工業グレードの過酸化水素の水性ストック。
【0081】
環状炭酸
プロピレンカーボネート-Sigma Aldrichから供給された99.7重量%ストック。
グリセロールカーボネート-Huntsman Internationalによって製造された99重量%原料;商品名:Jeffsol(登録商標)GC
エチレンカーボネート-Sigma Aldrichから供給された98重量%ストック。
【0082】
3.0の最大pKb値を有するアルカリ性pH調整剤
水酸化カリウム(KOH)-複数の供給源から商品化学成分として入手可能な脱イオン水中45重量%水酸化カリウムの水性ストック溶液。
水酸化ナトリウム(NaOH)-複数の供給源から商品化学成分として入手可能な脱イオン水中の10重量%水酸化ナトリウムの水性ストック溶液。
【0083】
ポリホスホン酸キレート剤
Dequest 2010-Italmatch Chemicalsによって製造されたエチドロン酸の60重量%水性ストック
【0084】
他のキレート剤
Trilon M Liquid-BASFによって製造されたメチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩の40重量%水性ストック。
Dissolvine GL-47-S-47-49重量%L-グルタミン酸、N,N-二酢酸四ナトリウム塩、AkzoNobel Inc.製。
【0085】
界面活性剤
Bio-terge PAS-8S-オクタンスルホン酸ナトリウムの38重量%水性ストック、Stepan Company製。
Bio-soft S-101-Stepan Companyによって製造された90~100重量%(以下の例では95.5重量%を使用した)のドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)の水性ストック。
Pluronic L62-BASFによって製造された、オキシランとのメチル-オキシランブロックコポリマーの100重量%ストック。
Tomadol 91-2.5およびTomadol 91-6-エトキシル化C9~C11アルコールの100重量%ストック、Air Products製
Glucopon 600 UP-BASF製オリゴマーD-グルコピラノースC10~C16-アルキルグルコシドの50重量%水性ストック
Pluronic 17R4-BASF Inc.によって製造された、オキシランとの100重量%メチルオキシランポリマー。
【0086】
溶媒
Dowanol TPMおよびDowanol DPM-それぞれ、Dow Chemicalsによって製造されたトリプロピレングリコールメチルエーテルおよびジプロピレングリコールメチルの100重量%ストック
Omnia Solvent-a 98重量%以上のブチル-3-ヒドロキシ酪酸、Eastman Chemicals製
ベンジルアルコール-95重量%超の原料、INEOS製
【0087】
酸味料
Lutropur MSA 100-BASFによって製造された99.5重量%のメタンスルホン酸のストック。
ベンゼンスルホン酸-Sigma Aldrichから供給された90重量%以上のストック。
p-トルエンスルホン酸一水和物-98.5重量%超のストック、Sigma Aldrichから供給
サリチル酸-Sigma Aldrichから供給される100重量%ストック。
2-フロ酸-100重量%ストック、PennAKem製。
クエン酸-95重量%超のストック、Jungbunzlauer製
安息香酸-95重量%超のストック、Emerald Performance Materials製。
【0088】
腐食防止剤
Cobratec 35G-PMC Specialties Groupによって製造された、プロピレングリコール中のベンゾトリアゾールの35重量%溶液。
【0089】
消泡剤
Antifoam XFO-64、Ivanhoe Industries Inc.から入手可能な独自の消泡剤。
【0090】
香料
Spring Fresh Fragrance、Robertet Inc.によって製造された独自の香料。
【0091】
以下の表は、使用した上記成分の量を列挙している。このような成分が「純粋な」形態(すなわち、化合物の100重量%濃度)で存在しない場合、試験溶液中の実際の濃度は、述べたものよりも低く、上記の濃度に以下の表に列挙する濃度を乗じることによって計算することができる。例えば、溶液1は、99.7重量%のストック溶液として存在する10重量%のプロピレンカーボネートを含有する。したがって、溶液1中のプロピレンカーボネートの実際の量は、10×0.997=9.97重量%である。
【0092】
メタンスルホン酸または別のスルホン酸を含有する表2~8の溶液についてのpH値は、約0である。
【実施例
【0093】
実施例1
試験を行って、種々のpH範囲(弱酸性および弱アルカリ性)での過酸化水素溶液の安定性に対する、ならびに種々の貯蔵時間および貯蔵温度についての、2つの異なる炭酸塩の効果を決定した。結果を、以下の表1に要約する。
【0094】
【表1】
**%過酸化物損失を、以下のように計算した。
【数1】
***過酸化物安定性改善(%)を、開示した本発明の過酸化物安定剤(複数可)を含有する配合物(複数可)からの%過酸化物損失を、当該安定剤(複数可)を含まない同じ配合物に対して比較し、百分位数値に変換することによって計算した。
【0095】
表1では、KOHを各溶液に用いて、pHを上に示した値に調整した。各溶液の残りは、脱イオン水であった。
【0096】
溶液#1および#2は、それぞれ10重量%のプロピレンカーボネートおよびグリセロールカーボネートを含有した。溶液#3は、環状カーボネートを含まなかった。溶液#3の過酸化物損失は、溶液を54℃で2週間保存した場合、溶液#1および#2についてそれぞれ3.83%および1.88%のみの過酸化物損失と比較して、100%であった。溶液#4は、3.5重量%のプロピレンカーボネートを含有した。溶液#5は、炭酸塩を含まなかった。54℃での2週間にわたる過酸化物損失は、溶液#5についての3.0%と比較して、溶液#4について1.75%であった。したがって、溶液#1は、溶液#3と比較して98.9%の安定性改善を示した。溶液#2は、溶液#3に対して99.5%の安定性改善を示した。溶液#4は、溶液#5に対して42%の安定性改善を示した。
【0097】
実施例2
試験を行って、10重量%プロピレンカーボネートを、種々の濃過酸化水素ベースの消毒剤溶液(溶液#6~#17)に添加する効果を決定した。結果を、以下の表2aおよび2bに要約する。
【0098】
表2a
【表2】
【0099】
表2b
【表3】
【0100】
溶液#6~#17は、プロピレンカーボネートの添加によって、配合物中に含まれる成分の残りにかかわらず、加速老化期間にわたる溶液の過酸化物安定性が改善されたことを実証する。
【0101】
実施例3
試験を行って、種々の量のプロピレンカーボネートを種々の試験溶液に添加することの効果を決定した。結果を、以下の表3aおよび3bに要約する。
【0102】
表3a
【表4】
【0103】
表3b
【表5】
【0104】
表3aおよび3bに示すように、過酸化物損失は、プロピレンカーボネートの濃度が増加するに伴って減少した。
【0105】
実施例4
試験を行って、10重量%プロピレンカーボネートを有する、または有しない、ベース配合物中の過酸化物濃度を増加させる影響を評価した。結果を、以下の表4aおよび4bに示し、図1にプロットする。
【0106】
表4a
【表6】
【0107】
表4b
【表7】
【0108】
実施例5
試験を行って、他のカーボネート化合物、すなわちエチレンカーボネートおよびグリセロールカーボネートの過酸化水素安定性に対する効果を決定した。結果を、以下の表5に示す。
【0109】
表5
【表8】
【0110】
上記の結果は、これらの他のカーボネート化合物も過酸化水素溶液の安定化に有効であることを示す。
【0111】
実施例6
さらなる試験を行って、すぐに使用できる(RTU)過酸化物ベースの消毒剤溶液の安定性および殺菌効力に対するプロピレンカーボネートの効果を決定した。結果を、以下の表6に示す。
【0112】
表6
【表9】
【0113】
殺菌効果を、ASTM E2197-02 Standard Quantitative Disk Carrier Test(QCT-2)方法を用いて、5重量%有機土壌チャレンジおよび2分間の曝露(接触時間)の存在下で行った。上に示したように、すぐに使用できる過酸化物消毒剤溶液の安定性は、プロピレンカーボネートの添加によっても高められ得る。殺菌効力はまた、プロピレンカーボネートの添加後に1対数増加する。
【0114】
実施例7
さらに別の試験を行って、アルカリ金属水酸化物(NaOHおよびKOH)を含む、または含まない濃過酸化水素溶液の安定性に対する、少量のエディトロン酸(HEDPまたはDequest 2010とも呼ばれる)(1重量%まで)の添加の効果を評価した。結果を、以下の表7に示す。
【0115】
表7
【表10】
【0116】
これらの結果は、少量のHEDPの添加によって、濃過酸化水素溶液の安定性が改善されることを示す(溶液#52を溶液#51と比較されたい)。アルカリ金属水酸化物(KOH、NaOH)をさらに加えると、安定化効果がさらに増強される(溶液#53、#54、#55および#56参照)。この結果は、過酸化水素がアルカリ性pH値でより安定でないことが知られており、KOHおよびNaOHの両方が、3.0まで、またはそれ未満のpKb値を有するアルカリ性pH調整剤であるので、予想外である。
【0117】
実施例8
試験を行って、HEDPの濃度を1重量%で一定に保持した場合の、全体の過酸化物安定性に及ぼすKOHの量の増加の効果を実証した。結果を、以下の表8に示し、図2にプロットする。
【0118】
表8
【表11】
【0119】
上記の結果は、Dequest 2010濃度を1重量%で一定に保持しながらKOHの濃度を増加させると、どれだけの量のKOHを添加しても、過酸化物安定性の改善がもたらされることを示す。グラフは、約0.15重量%のKOHでは、組み合わせが過酸化物安定性を改善する最低の能力を有し、一方、約0.15重量%より高い、および低いKOH濃度では、系における過酸化物安定化効果が最大になることを示す。
【0120】
追加の実施形態
本発明のさらなる実施形態を、以下に開示する。
【0121】
表9
溶液63は、例示的な床消毒剤である。
【表12】
【0122】
表10
溶液64は、ペットシャンプーの一例である。
【表13】
【0123】
上に記載した実施形態に対する変形は、本明細書中で記載し、特許請求する本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることが理解されるであろう。

図1
図2