(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料、ならびにその製造方法およびその用途
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20220225BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220225BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220225BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220225BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220225BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220225BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20220225BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20220225BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/134
H01M4/1393
H01M4/1395
(21)【出願番号】P 2019528666
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 CN2018106160
(87)【国際公開番号】W WO2019052572
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2019-05-23
(31)【優先権主張番号】201710839171.7
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519186624
【氏名又は名称】江蘇道贏科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Jiangsu Daoying Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.1 Mintai Road, Yizheng Economic Development Zone, Yangzhou, Jiangsu 211400, China
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】鄭 洪河
(72)【発明者】
【氏名】楊 思鳴
(72)【発明者】
【氏名】鄭 雪瑩
(72)【発明者】
【氏名】張 暁輝
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/026269(WO,A1)
【文献】特開2014-192064(JP,A)
【文献】特開2000-011997(JP,A)
【文献】特開2007-080827(JP,A)
【文献】特開2015-090845(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026268(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0093879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/133
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 4/62
H01M 4/38
H01M 4/134
H01M 4/1393
H01M 4/1395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料であって、
該複合負極材料は、
カレント・コレクタと、
ケイ素-炭素のコーティング層と
を含み、該ケイ素-炭素のコーティング層は、前記カレント・コレクタをコーティングするためのケイ素-炭素のペーストを含んで成るものであり、
前記マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料において、
前記ケイ素-炭素のペーストは、
炭素質ペーストと、
ケイ素カプセルパウダーと
を含み、
前記炭素質ペーストは、
分散剤と、
炭素材料と、
第1伝導剤と、
第1バインダーと
を含み、前記分散剤中に、前記炭素材料と、第1伝導剤と、第1バインダーとが分散されていて、
前記炭素材料が、天然グラファイト、人工グラファイト、熱分解炭素、硬質炭素材料およびそれらの組み合わせから選択され、
前記ケイ素カプセルパウダーは、マイクロカプセル構造を有し、該マイクロカプセル構造が、
ケイ素パウダーと、
該ケイ素パウダーの表面をコーティングするための第2バインダーと
を含み、
前記マイクロカプセル構造において、前記ケイ素パウダーが、核であり、第2バインダーが、外殻であり、
第2バインダーが、アルギネート、ポリアクリレート、アラビアゴム、グアルゴム、ヒアルレートおよびそれらの組み合わせから選択され、
前記ケイ素カプセルパウダーが前記炭素質ペーストに分散されるときに、第1バインダー、第2バインダーは、互いに、不溶性であるか、または難溶性であり、
前記ケイ素-炭素のコーティング層中に前記分散剤が含まれていない
ことを特徴とする、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
【請求項2】
第1バインダーが、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはスチレンブタジエンゴムであることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
【請求項3】
第2バインダーが、カルシウムイオンおよび/または銅イオンが添加されるバインダーであり、第2バインダーに対するカルシウムイオンおよび/または銅イオンの質量分率が、2~15%であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
【請求項4】
前記ケイ素-炭素のペーストにおいて、炭素材料:ケイ素パウダーの重量比が、(2~10):1であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
【請求項5】
前記ケイ素カプセルパウダーの原材料に対する前記ケイ素パウダーの質量分率、第2バインダーの質量分率が、それぞれ、70~95%、2~15%であり、
前記炭素質ペーストに対する前記炭素材料の質量分率、第1バインダーの質量分率、第1伝導剤の質量分率が、それぞれ、90~98%、1~5%、0.5~5%であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
【請求項6】
前記ケイ素パウダーが、ナノシリコンおよび/またはマイクロシリコンであり、
前記分散剤が、水であるか、アルコールと水との混合溶媒であり、
第1伝導剤が、アセチレンブラック、スーパーP、スーパーS、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびそれらの組み合わせから選択される
ことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
【請求項7】
前記ケイ素カプセルパウダーが、第2伝導剤をさらに含み、第2伝導剤が、アセチレンブラック、スーパーP、スーパーS、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
【請求項8】
マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の製造方法であって、当該製造方法が、以下の工程:
(a)ケイ素カプセルパウダーの調製:
分散剤にケイ素カプセルパウダーのケイ素パウダーと、第2バインダーとを分散させて、ケイ素質ペーストを得、次いで、該ケイ素質ペーストを乾燥させて、磨砕して、マイクロカプセル構造を有する前記ケイ素カプセルパウダーを得る工程であって、前記マイクロカプセル構造において、前記ケイ素パウダーが、核であり、第2バインダーが、外殻であり、前記分散剤に第2伝導剤を添加するか、または添加しない、工程、
(b)炭素質ペーストの調製:
分散剤
に炭素材料のパウダー、第1バインダーおよび第1伝導剤を分散させて
、炭素質ペーストを得る工程、
(c)ケイ素-炭素のペーストの調製:
前記炭素質ペーストの調製が完了するとき、あるいは前記炭素質ペーストの調製が完了した後、前記工程(a)で調製したケイ素カプセルパウダーを、前記工程(b)で調製した炭素質ペーストに添加し、次いで、混合および撹拌して
、ケイ素-炭素のペーストを得る工程、
(d)マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の調製:
カレント・コレクタに、前記工程(c)で調製したケイ素-炭素のペーストをコーティングし、乾燥させて
、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を得る工程
を含むことを特徴とする、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、リチウムイオン電池(又はリチウムイオンバッテリ)の電極の分野に関し、特に、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料、ならびにその製造方法および用途(又は使用)に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ケイ素材料(又はシリコン材料)は、大きなリチウム保存容量(又はリチウム・ストレージ・キャパシティ)を有し、その理論的な容量(又はキャパシティ)は、約4200mAh/gであり、そして、実際の比容量は、3000mAh/gを超え、これは、次世代の高い比エネルギーのリチウム電池(又はリチウムバッテリ)の重要な負極材料として、グラファイト材料(又は黒鉛材料)の代替として非常に期待されている。しかし、ケイ素材料の適用が直面する最も重要な3つの技術的な問題が存在する。
第1に、ケイ素粒子(又はシリコン粒子)は、リチウムイオンのインターカレーションや、デインターカレーションの間、ケイ素材料の体積(又は量又は容量又は容積又はボリューム)が劇的に変化し、その膨張比は、300%に到達し得るので、それにより、ケイ素粒子がパウダー化(又は粉末化)され、電極スライス(又は電極片又は電極板)の容量(又はキャパシティ)が、急速に低下するという問題が生じる。
第2に、ケイ素材料の初期のクーロン効率は、高くない。
第3に、ケイ素表面(又はシリコン表面)のSEIフィルムの安定性が不十分であり、特に、体積が変化する過程でのダメージおよび増大によって、深刻なリチウム消費の問題が生じる。
上記の問題を解決するために、当業者は、主に、以下の3つの局面からスタートする。
第一として、ケイ素材料の補飾(又は装飾又は変更又はエンベリッシュメント(embellishment))および修飾(又は改質又は改変又はモディフィケーション(modification))が挙げられ、これには、ケイ素材料の粒子サイズのコントロールや、表面コントロール、炭素材料との複合(又は複合化又は複合材又は複合体又は複合物又はコンポジット)などが含まれる。
第二として、適切なバインダー系(又はバインダーシステム)の選択が挙げられ、特に、三次元ネットワークタイプの架橋構造を有するバインダー系の選択であり、これには、架橋アルギネート系、架橋ポリアクリルアミド系などが含まれる。また、この局面における現在の研究では、良好な結果が達成されている。
第三として、優れた電解質系(又は電解質システム)の選択が挙げられ、特にフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む電解質系であり、これも良好な性能(又はパフォーマンス)を示すものである。
【0003】
従来の技術では、ケイ素材料の産業化の用途での選択肢の一つとして、ケイ素-炭素の複合(又は複合体又はコンポジット)が挙げられる。実際、ケイ素-炭素の複合の多くの方法が存在し、これには、非晶質炭素(又はアモルファス・カーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン(graphene)などを含む炭素材料のケイ素材料表面でのインサイチュでの成長が含まれる。
しかし、この材料の調製方法は、非常に煩雑であり、炭素材料の成長の間に、酸化ケイ素および炭化ケイ素が簡単に形成され、これらは、ケイ素材料の性能(又はパフォーマンス)に影響を与えるだろう。
別の方法は、ケイ素粒子および炭素材料の機械的な混合であり、この方法は、かかる2つの材料を均一に混合することが簡単であり、特に、ケイ素パウダー(又はケイ素粉末)とグラファイト材料との機械的な混合が産業化されている。概して、400mAh/gを超える容量(又はキャパシティ)を有するカーボン負極スライスを製造するために、グラファイトパウダー(又はグラファイト粉末)中、約10%のケイ素粒子を混合することができる。この製造方法は、単純であり、なおかつ実行(又は実施)が簡単であるが、直面し得る顕著な問題は、電極の容量が、急速に低下し、そして、ケイ素材料は、約200サイクル後において、その適切な性能を発揮することが殆どできない。これは、高い比エネルギーの電池の寿命に大きな影響を与える。
【0004】
上記の問題の解決を目的として、従来の技術では、いくつかの改良がなされている。例えば、特許文献1(中国発明特許出願公開第103022448号公報(CN103022448A))は、リチウム電池のケイ素-炭素の負極材料の製造方法を開示する。この方法は、以下の工程(又はステップ)(1)~(4)を含む。
1) 50~90重量部のミクロンサイズのケイ素パウダーをボールミルタンクに添加し、溶媒を添加して、ボールミル磨砕を行う、工程、
2) 10~50重量部の天然グラファイトを、上記工程1)でボールミル磨砕された工業用ケイ素パウダーに添加し、そして、ボールミル磨砕を続ける、工程、
3) 上記工程2)でボールミル磨砕した材料を乾燥させて、この乾燥した材料を磨砕(又はグラインディング)して、活性材料を得る、工程、
4) 70~80重量部の上記活性材料と、5~20重量部のアルギン酸ナトリウムと、5~20重量部のアセチレンブラックとを秤量し、1:5~1:1の脱イオン水:アルギン酸ナトリウムの質量比で、脱イオン水を添加し、均一に撹拌し、銅箔上にコーティングし、そして、乾燥させて、上記ケイ素-炭素の負極材料を得る、工程。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国発明特許出願公開第103022448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の中国特許出願は、電極スライスの初期のクーロン効率(又はイニシャル・クーロン・エフィシエンシー)の増加(70%超)をある程度まで達成するが、これは、まだ、満足できるものでなく、長期にわたるサイクル性能(又はサイクル・パフォーマンス)は、高い要求を満たしていない(50サイクル後、明らかに降下(又は分解又は変形又は変質)する)。そして、電極スライスの速度能力(又はレート・ケイパビリティ)は、改善されないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明によって解決され得る技術的な問題は、従来技術の欠点を克服することであり、改良されたケイ素-炭素の複合負極材料を提供することである。そして、本発明のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料は、サイクル性能(又はサイクル・パフォーマンス)、クーロン効率(又はクーロン・エフィシエンシー)および速度能力(又はレート・ケイパビリティ)において、優れた効果を有する。
【0008】
本発明は、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を製造するための方法をさらに提供する。
【0009】
本発明は、さらに、リチウムイオン電池の電極スライス(又は電極片又は電極板)の製造における、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の使用(又は用途)を提供する。
【0010】
上記の問題を解決するために、本発明によって採用される技術的な解決策の1つは、以下の通りである。
【0011】
マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料は、
カレント・コレクタ(又は集電体)と、
ケイ素-炭素のコーティング層(又は被覆層)と
を含み、上記ケイ素-炭素のコーティング層は、上記カレント・コレクタをコーティング(又は被覆)するケイ素-炭素のペースト(又はスラリー)を乾燥させることによって形成されるものであり、
上記ケイ素-炭素のペースト(又はスラリー)は、
炭素質ペーストと、
ケイ素カプセルパウダー(又はケイ素カプセル粉末)と
を含み、上記炭素質ペースト中に、上記ケイ素カプセルパウダーが分散されていて、
上記炭素質ペーストは、
分散剤と、
炭素材料と、
第1伝導剤と、
第1バインダーと
を含み、上記分散剤中に、上記炭素材料と、第1伝導剤と、第1バインダーとが分散されていて、
上記ケイ素カプセルパウダーは、
ケイ素パウダーと、
第2バインダーと
を含み、第2バインダーは、上記ケイ素パウダーの表面をコーティング(又は被覆)していて、
第2バインダーでコーティングされたケイ素パウダーと、第2バインダーとによって、マイクロカプセル構造が形成されていて、
第1バインダーは、第2バインダーとは異なるものである。
【0012】
上記マイクロカプセル構造は、固体の粒状物(又は粒子又は微粒子)、またはケイ素パウダーの表面を第2バインダーがコーティング(又は被覆)することによって形成される粒子である。この固体の粒状物または粒子は、ケイ素パウダーを核(又はコア)とし、このケイ素パウダーの表面をコーティングする第2バインダーを外殻(又はアウター・シェル)とするものである。
【0013】
本発明の好ましい態様によると、上記炭素質ペーストに、上記ケイ素カプセルパウダーを分散させたとき、第1バインダー、第2バインダーは、互いに、不溶性であるか、難溶性であるか、わずかに可溶性である。
【0014】
本発明のより好ましい態様によると、第1バインダーは、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはスチレンブタジエンゴムであり、第2バインダーは、アルギネート(又はアルギン酸塩又はアルギン酸エステル)、ポリアクリレート、アラビアゴム、グアルゴム、ヒアルレート(又はヒアルロン酸塩又はヒアルロン酸エステル)およびそれらの組み合わせから選択される。
【0015】
本発明のいくつかの好ましい態様によると、第2バインダーは、カルシウムイオンおよび/または銅イオンが添加されるバインダーであり、第2バインダーにおいて、第2バインダーに対するカルシウムイオンおよび/または銅イオンの質量分率は、2~15%である。ここで、銅イオンおよび/またはカルシウムイオンの添加によって、このバインダーによって形成される外殻の安定性および機械的な特性をより良好にすることができる。
いくつかの具体的な実行(又は実施)において、このバインダーを架橋することのできる他の成分も添加することができ、それにより、修飾(又は改質又は改変)されたバインダーを得ることができる。それにより、このバインダーによって形成される殻(又はシェル)を、強い機械的な特性や安定性を有するものにすることができる。
より好ましくは、第2バインダーは、カルシウムイオンおよび/または銅イオンが添加されるバインダーであり、第2バインダーにおいて、第2バインダーに対するカルシウムイオンおよび/または銅イオンの質量分率は、5~12%である。
【0016】
本発明のいくつかの具体的で好ましい実行(又は実施)では、ケイ素-炭素のペーストにおいて、炭素材料:ケイ素パウダーの重量比(又は質量比)は、(2~10):1である。
【0017】
本発明のいくつかの具体的で好ましい実行(又は実施)では、ケイ素カプセルパウダーの原材料に対する、ケイ素パウダーの質量分率、第2バインダーの質量分率は、それぞれ、70~95%、2~15%である。
【0018】
本発明のいくつかの具体的で好ましい実行(又は実施)では、炭素質ペーストに対する、炭素材料の質量分率、第1バインダーの質量分率、第1伝導剤の質量分率は、それぞれ、90~98%、1~5%、0.5~5%である。
【0019】
本発明のいくつかの具体的な実行(又は実施)では、ケイ素パウダーは、ナノシリコン(又はナノケイ素)および/またはマイクロシリコン(又はマイクロケイ素)である。
【0020】
本発明のいくつかの具体的な実行(又は実施)では、炭素材料は、天然グラファイト(又は天然黒鉛)、人工グラファイト(又は人工黒鉛)、熱分解炭素、硬質炭素材料(又はハード・カーボン・マテリアル)およびそれらの組み合わせから選択される。
【0021】
本発明のいくつかの具体的な実行(又は実施)では、分散剤は、水であるか、またはアルコールと水との混合溶媒である。
【0022】
本発明のいくつかの具体的な実行(又は実施)では、第1伝導剤は、アセチレンブラック、スーパーP(Super P)、スーパーS(Super S)、カーボンファイバー(又は炭素繊維)、カーボンナノチューブ、グラフェン(graphene)およびそれらの組み合わせから選択される。
【0023】
本発明のいくつかの具体的な実行(又は実施)では、好ましくは、ケイ素カプセルパウダーは、第2伝導剤をさらに含み、この第2伝導剤は、アセチレンブラック、スーパーP、スーパーS、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびそれらの組み合わせから選択される。
【0024】
本発明は、別の技術的な解決策として、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の製造方法を提供し、ここで、当該製造方法は、以下の工程(又はステップ)(a)~(d)を含む。
【0025】
(a) ケイ素カプセルパウダーの調製:
上記の分散剤において、ケイ素カプセルパウダーのケイ素パウダーと、第2バインダーとを分散させて、ケイ素質ペーストを得ること、次いで、このケイ素質ペーストを乾燥させて、磨砕して、マイクロカプセル構造を有するケイ素カプセルパウダーを得ることであって、このマイクロカプセル構造において、ケイ素パウダーが、核(又はコア)であり、第2バインダーが、外殻(又はアウター・シェル)であり、上記の分散剤に第2伝導剤を添加するか、または添加しないこと、
(b) 炭素質ペーストの調製:
上記の分散剤において、炭素材料のパウダー、第1バインダーおよび第1伝導剤を分散させて、炭素質ペーストを得ること、
(c) ケイ素-炭素のペーストの調製:
炭素質ペーストの調製がほぼ完了するとき、または完了するとき、あるいは炭素質ペーストの調製が完了した後、上記工程(a)で調製したケイ素カプセルパウダーを、上記工程(b)で調製した炭素質ペーストに添加すること、次いで、混合および撹拌して、ケイ素-炭素のペーストを得ること、
(d) マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料(又は複合アノード材料又はコンポジット・アノード・マテリアル)の調製:
カレント・コレクタ(上)に、上記工程(c)で調製したケイ素-炭素のペーストをコーティングし、乾燥させて、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を得ること。
【0026】
本発明は、さらに別の技術的な解決策として、リチウムイオン電池の電極スライス(又は電極片又は電極板)の製造における、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の使用(又は用途)を提供する。
【発明の効果】
【0027】
上記の技術的な解決策を使用することによって、本発明は、従来技術に対して、以下の利点を有する。
【0028】
本発明の負極材料において、ケイ素パウダーおよび炭素材料は、それぞれ、異なるバインダーの環境に置かれ、ケイ素パウダーは、第2バインダーによって完全にコーティング(又は被覆)されて、マイクロカプセル構造を形成する。その結果、このようなケイ素および炭素の活動(又はアクティビティ)は、最大限まで利用され、そして、電極スライスの長期間にわたるサイクル性能(又はサイクル・パフォーマンス)が大幅に改善される。これは、200サイクル後、従来の顕著な低下(又はフェーディング)から、このような低下(又はフェーディング)がほとんどない状態にまで改善(又は向上)する。電極スライスの内部抵抗は、明らかに低下し、速度性能は、大幅に改善される。そして、電極スライスの機械的な安定性が顕著に改善される。電極スライスの初期のクーロン効率が大幅に改善される。従って、本発明のケイ素-炭素の負極材料は、さらに高い比エネルギーを有し、なおかつ長寿命のリチウムイオン電池の開発にとって、大きな有意性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
例示の実施形態の詳細な説明
高い比エネルギーリチウム電池に対する要求の現実に基づいて、本発明は、マイクロカプセル構造を有するケイ素-炭素の複合負極材料を提供する。特に、第1に、ケイ素粒子に適切なバインダーが、ケイ素粒子と一緒に混合され、分散されて、ケイ素粒子との良好な適合性(又はコンパチビリティ)を有するバインダーであって、ケイ素粒子の表面を均一にコーティングし、このバインダーの安定性を、好ましくは、架橋技術によって、さらに増強させて、マイクロカプセル構造を形成する。このマイクロカプセル構造において、ケイ素粒子は、核(又はコア)であり、架橋により修飾(又は改質又は改変)されたバインダーが、外殻(又はアウター・シェル)である。このとき、現行では、炭素物質(グラファイト)ペースト(又は炭素質ペースト)の調製が、基本的に、ほぼ完了する(あたりの)時間に基づいて、ケイ素カプセルパウダーを添加し、そして、撹拌して、炭素質ペースト中にケイ素カプセルパウダーを均一に分散させる。従って、ある状況が形成され、ここでは、ケイ素に適切なバインダー中にケイ素が存在し、そして、炭素に適切なバインダー中に炭素が存在する(好ましくは、2つのバインダーは異なり、これら2つのバインダーは、互いに、不溶性であるか、難溶性であるか、または、わずかに可溶性であるが、明瞭な相の界面は存在しない)。そうすることで、ケイ素-炭素のペースト(又はスラリー)が形成され、次いで、このケイ素-炭素のペーストが、カレント・コレクタ(上)で、コーティングされ、そして、乾燥されて、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を得る。このマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料は、リチウムイオン電池(用)の電極スライス(又は電極片又は電極板)に処理(又は加工)することができ、この電極スライスの顕著な特徴(又はフィーチャ)は、2種類の異なるバインダーを含むことであり、これによって、以下のとこを確実にする。
活性材料のそれぞれが、その最も適切なバインダーの環境で仕事(又は作用又は作動又は作業)して、従来技術における電極スライスの不十分なサイクル性能や、低いクーロン効率、不十分な速度性能の問題を回避する。
これは、将来的な大容量で長寿命のケイ素-炭素の複合電極(又はコンポジット・エレクトロード)の開発のための重要な技術およびアプローチである。
【0030】
本発明のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の製造方法は、以下の工程(又はステップ)(a)~(d)を含む。
(a) 分散剤中に、ケイ素パウダー(リチウム電池で一般(又は共通)に使用されるナノシリコンまたはマイクロシリコンを採用する)と、第2バインダーと、第2伝導剤(好ましくは添加する、または添加しない)とを分散させて、撹拌し、そして、混合して、ケイ素質ペーストを得、次いで、このケイ素質ペーストを適切な温度(好ましくは60~90℃)で乾燥させて、磨砕(又はグラインディング)して、マイクロカプセル構造を有するケイ素カプセルパウダーを得ること(又は工程)であって、このマイクロカプセル構造では、ケイ素パウダーが、核(又はコア)であり、第2バインダーが、外殻(又はアウター・シェル)であり、
第2バインダーが、アルギネート(又はアルギン酸塩又はアルギン酸エステル)、ポリアクリレート、アラビアゴム、グアルゴム、ヒアルレート(又はヒアルロン酸塩又はヒアルロン酸エステル)およびそれらの組み合わせから選択される、工程、
(b) 分散剤中において、上記の炭素材料のパウダーと、第1バインダーと、第1伝導剤とを分散させて、混合し、そして、均一に撹拌して、炭素質ペーストを得ること(又は工程)であって、
第1バインダーが、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはスチレンブタジエンゴムである、工程、
(c) 上記の炭素質ペーストの調製が、ほぼ完了するとき、または、完了するとき、あるいは、上記の炭素質ペーストの調製が完了した後、上記ケイ素カプセルパウダーを上記炭素質ペーストに添加し、次いで、約30分間にわたって、撹拌を続け、ケイ素-炭素のペーストを得る、工程、
(d) カレント・コレクタ(上)に、上記で得られるケイ素-炭素のペーストをコーティングし(このコーティングの厚みは、好ましくは、40~200マイクロメートル(μm)である)、そして、乾燥させて(好ましくは60℃で乾燥させて)、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を得る、工程。
混合された(又は混合された状態の)ケイ素カプセルパウダーの調製において、カルボキシル基またはヒドロキシル基が豊富(又はリッチ)な第2バインダーを使用することが好ましく、これは、ケイ素表面でのフィルム形成に有利であり、これによって、材料の初期のクーロン効率が改善される。好ましくは、第2バインダーは、カルシウムイオンおよび/または銅イオンが添加されるバインダーであり、ここで(第2バインダーにおいて)、カルシウムイオンおよび/または銅イオンは、第2バインダーの質量に基づいて、2~15%を占める。より好ましくは、カルシウムイオンおよび/または銅イオンは、第2バインダーの質量に基づいて、5~12%を占める。カルシウムイオンおよび/または銅イオンは、CaCl2、CaSO4、CuCl2およびCuSO4などの形態で添加される。さらに、バインダーの架橋による修飾(又は改質又は改変)は、炭素質ペーストにおけるバインダーの分離(又は分解又は溶解)の可能性を低減するだけでなく、サイクルプロセスの間、ケイ素の体積効果(又はボリューム・エフェクト)をも抑制(又は防止)する。これ(又はケイ素カプセルパウダー)を炭素質ペーストと混合するとき、ケイ素と炭素を、それらの最適なバインダーの環境に置くことができ、これは、電極スライスの電気的な特徴(又はプロパティ)を改善するために有益である。第1伝導剤および第2伝導剤は、いずれも、アセチレンブラック、スーパーP(Super P)、スーパーS(Super S)、カーボンファイバー(又は炭素繊維)、カーボンナノチューブ(又は炭素ナノチューブ)、グラフェン(graphene)およびそれらの組み合わせから選択される。上記の工程(a)および工程(b)で使用される分散剤は、いずれも、水であってよく、あるいは、アルコールと水との混合溶媒であってよい。ここで、炭素材料:ケイ素パウダーの重量比(又は質量比)は、(2~10):1となるように調整(又は制御又はコントロール)され、そして、ケイ素パウダー、第2バインダーは、それぞれ、ケイ素カプセルパウダーの質量に基づいて、70~95%、2~15%を占める。好ましくは、ケイ素カプセルパウダーは、ケイ素カプセルパウダーの質量に基づいて、0.01~15%の第2伝導剤をさらに含む。炭素材料、第1バインダー、第1伝導剤は、それぞれ、炭素質ペーストの質量に基づいて、90~98%、1~5%、0.5~5%を占める。
【0031】
以下、具体的な実施形態を組み合わせて、さらに本発明を詳細に説明する。かかる実施形態は、本発明の基本的な原理、主要な特徴および効果(又は利点又はアドバンテージ)を説明するためのものであることを理解すべきである。そして、本発明は、以下の実施形態の範囲により限定されないことを理解すべきである。以下の実施形態で採用される実行条件は、具体的な要件によって、さらに調整(又は調節)されてよく、規定されていない実行条件は、通常、従来の実験における条件である。以下の実施形態において、すべての原材料は、他に具体的に記載されていない限り、市販されていて、購入できるものである。
【0032】
(実施形態1)
本実施形態は、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を提供し、これは、以下の方法に従って調製される。
【0033】
(a)
水中、ケイ素パウダー(100nm)と、アルギン酸ナトリム(又はアルガ酸ナトリウム又は藻酸ナトリム又は海藻酸ナトリム)と、アセチレンブラックとを80:15:5の質量比で分散させて、完全に撹拌して、均一に混合されたケイ素質ペーストを得た。
このケイ素質ペーストを80℃で乾燥させて、完全に磨砕(又はグラインディング)して、ふるいにかけて分けて、マイクロカプセル構造を有するケイ素カプセルパウダーを得た。このマイクロカプセル構造では、ケイ素パウダーが、核(又はコア)であり、第2バインダーが、外殻(又はアウター・シェル)である。
(b)
水中、グラファイト(又は黒鉛)のパウダー(又は粉末)と、カルボキシメチルセルロースナトリウムと、スチレンブタジエンゴムと、アセチレンブラックとを95:2:1:2の質量比で分散させて、完全に撹拌して、均一に混合されたグラファイトペースト(又は黒鉛ペースト)を得た。
(c)
グラファイトペーストの調製がほぼ完了するとき、上記ケイ素カプセルパウダーを、このグラファイトペーストに添加した。グラファイト:ケイ素パウダーの重量比を3:1に調整(又は制御又はコントロール)した。次いで、この混合物の撹拌を30分間にわたって続けて、ケイ素-炭素のペーストを得た。
(d)
カレント・コレクタ(又は集電体)(上)に、上記で得られたケイ素-炭素のペーストをコーティングし、60℃で乾燥させて、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を得た。
【0034】
上記で得られたマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を負極スライス(又は負極片又は負極板)にした(又は加工した)。カウンター電極(又は対電極)として、リチウムスライス(又はリチウム片又はリチウム板)を使用して、2032ボタン電池バッテリを組み立てた(又は製造した)。電解質の溶液は、伝導性の塩として1MのLiPF6を含み、添加剤として、FECが添加された(電解質の質量に基づいて10%を占める)、EC/DMC/DECの溶液(1:1:1の容量比)であった。
組み立てられた電池を密封(又はシール)し、放置した後、一定電流の条件下で、その電気化学的な性能を充放電テスター(又はチャージ・ディスチャージ・テスター)で試験した(ここで、充電-放電の速度(又はチャージ・ディスチャージ・レート)は、0.2Cであり、電圧の範囲は、0.01~1Vであった)。
【0035】
(実施形態2)
本実施形態は、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を提供し、これは、以下の方法に従って調製される。
その調製工程(又は調製ステップ)は、基本的には、実施形態1のものと同じであったが、以下の点で異なっていた。
工程(a)において、ケイ素パウダー:アルギン酸ナトリウム:アセチレンブラックの質量比は、80:15:0であった。
【0036】
(実施形態3)
本実施形態は、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を提供し、これは、以下の方法に従って調製される。
その調製工程(又は調製ステップ)は、基本的には、実施形態1のものと同じであったが、以下の点で異なっていた。
工程(a)において、第2バインダーは、カルシウムイオンが添加されたバインダーであり、カルシウムイオンをCaCl2の形態で添加した。添加したカルシウムイオン:アルギン酸ナトリウムの質量比は、2:25であった。
【0037】
(実施形態4)
本実施形態は、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を提供し、これは、以下の方法に従って調製される。
その調製工程(又は調製ステップ)は、基本的には、実施形態1のものと同じであったが、以下の点で異なっていた。
工程(a)において、第2バインダーは、銅イオンが添加されたバインダーであり、銅イオンをCuSO4の形態で添加した。添加した銅イオン:アルギン酸ナトリウムの質量比は、1:10であった。
【0038】
(実施形態5)
本実施形態は、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を提供し、これは、以下の方法に従って調製される。
その調製工程(又は調製ステップ)は、基本的には、実施形態1のものと同じであったが、以下の点で異なっていた。
工程(a)において、採用した第2バインダーは、アラビアゴムであった。ケイ素パウダー:アラビアゴム:アセチレンブラックの質量比は、80:10:5であった。
【0039】
(実施形態6)
本実施形態は、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を提供し、これは、以下の方法に従って調製される。
その調製工程(又は調製ステップ)は、基本的には、実施形態1のものと同じであったが、以下の点で異なっていた。
工程(a)において、採用した第2バインダーは、グアルゴムであった。ケイ素パウダー:グアルゴム:アセチレンブラックの質量比は、80:10:10であった。採用した第1バインダーは、カルボキシメチルセルロースナトリウムと、スチレンブタジエンゴムとの混合物であった。
【0040】
(実施形態7)
本実施形態は、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を提供し、これは、以下の方法に従って調製される。
その調製工程(又は調製ステップ)は、基本的には、実施形態1のものと同じであったが、以下の点で異なっていた。
工程(a)において、採用した第2バインダーは、ヒアルロン酸ナトリムであった。ケイ素パウダー:ヒアルロン酸ナトリム:アセチレンブラックの質量比は、75:15:10であった。採用した第1バインダーは、カルボキシメチルセルロースナトリウムと、スチレンブタジエンゴムとの混合物であった。
【0041】
(実施形態8)
本実施形態は、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を提供し、これは、以下の方法に従って調製される。
その調製工程(又は調製ステップ)は、基本的には、実施形態1のものと同じであったが、以下の点で異なっていた。
工程(c)において、グラファイト:ケイ素パウダーの重量比は、4:1であった。
【0042】
(比較例1)
本実施形態は、ケイ素-炭素の複合負極材料を提供し、これは、以下の方法に従って調製される。
その調製工程(又は調製ステップ)は、基本的には、実施形態1のものと同じであったが、以下の点で異なっていた。
工程(a)において、アルギン酸ナトリムは添加せず、同量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを添加した。
【0043】
(比較例2)
本実施形態は、ケイ素-炭素の複合負極材料を提供し、これは、以下の方法に従って調製される。
その調製工程(又は調製ステップ)は、基本的には、実施形態1のものと同じであったが、以下の点で異なっていた。
工程(b)において、カルボキシメチルセルロースナトリウムは添加せず、同量のアルギン酸ナトリムを添加した。
【0044】
(性能試験(又はパフォーマンス・テスト))
上記の実施形態1~8および比較例1~2で調製した電極スライス(又は電極片又は電極板)について、以下の性能(又はパフォーマンス)を試験した。表1に具体的な結果を示す。
【0045】
【0046】
上記の表の試験結果から、以下のことが理解できる。
新規の構成(又はジオメトリ)の構造を有するマイクロカプセルのケイ素-炭素の複合負極材料から作製された電極スライスのサイクル性能(又はサイクル・パフォーマンス)は、大幅に改善されている。200サイクル後、電極スライスの容量保持率(又はキャパシティ・リテンション・レート)は、ほぼ90%まで上昇し、これは、従来の電極スライス(約30%)に対して、電極スライスの寿命が大幅に改善されていることを示している。さらに、マイクロカプセルのケイ素-炭素の複合電極スライスの速度性能(又はレート・パフォーマンス)も顕著に増加して、これは、10Cの放電条件下、従来の電極スライス(約30mAh/g)に対して、約600mAh/gまで上昇し、20倍以上も高くなっている。
本発明によって、従来のケイ素-炭素のハイブリッドの電極スライスの速度(又はレート)およびサイクルに関する不利益(又は欠点)を克服することや、電極スライスのサイクル性能および速度性能が大幅に改善されていることが理解できる。
この新規な構成(又はジオメトリ)を有する電極スライスは、将来の高い比エネルギーで長寿命のリチウムイオン電池の開発にとって、大いなる有意性を有する。
【0047】
上記で説明した実施形態は、本発明の技術的な概念(又はコンセプト)および特徴(又はフィーチャ)を例示することのみを目的とするものであり、当業者が本発明を理解することができ、そうすることで、本発明を実行できるようになることを意図したものであり、この発明が保護される範囲を制限すると結論付けるべきではない。本発明に従う均等のバリエーションや変更は、本発明が保護される範囲に包含されるべきである。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料であって、
該複合負極材料は、
カレント・コレクタと、
ケイ素-炭素のコーティング層と
を含み、該ケイ素-炭素のコーティング層は、前記カレント・コレクタをコーティングするケイ素-炭素のペーストを乾燥させることによって形成されるものであり、
前記マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料において、
前記ケイ素-炭素のペーストは、
炭素質ペーストと、
ケイ素カプセルパウダーと
を含み、前記炭素質ペースト中に、該ケイ素カプセルパウダーが分散されていて、
前記炭素質ペーストは、
分散剤と、
炭素材料と、
第1伝導剤と、
第1バインダーと
を含み、前記分散剤中に、前記炭素材料と、第1伝導剤と、第1バインダーとが分散されていて、
前記ケイ素カプセルパウダーは、
ケイ素パウダーと、
第2バインダーと
を含み、第2バインダーは、前記ケイ素パウダーの表面をコーティングしていて、
第2バインダーでコーティングされたケイ素パウダーと、第2バインダーとの間にマイクロカプセル構造が形成されていて、
第1バインダーが、第2バインダーとは異なる
ことを特徴とする、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
(態様2)
前記ケイ素カプセルパウダーが、前記炭素質ペーストに分散されるときに、第1バインダー、第2バインダーは、互いに、不溶性であるか、難溶性であるか、わずかに可溶性であることを特徴とする、態様1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
(態様3)
第1バインダーが、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはスチレンブタジエンゴムであり、
第2バインダーが、アルギネート、ポリアクリレート、アラビアゴム、グアルゴム、ヒアルレートおよびそれらの組み合わせから選択される
ことを特徴とする、態様2に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
(態様4)
第2バインダーが、カルシウムイオンおよび/または銅イオンが添加されるバインダーであり、第2バインダーに対するカルシウムイオンおよび/または銅イオンの質量分率が、2~15%であることを特徴とする、態様1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
(態様5)
前記ケイ素-炭素のペーストにおいて、炭素材料:ケイ素パウダーの重量比が、(2~10):1であることを特徴とする、態様1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
(態様6)
前記ケイ素カプセルパウダーの原材料に対する前記ケイ素パウダーの質量分率、第2バインダーの質量分率が、それぞれ、70~95%、2~15%であり、
前記炭素質ペーストに対する前記炭素材料の質量分率、第1バインダーの質量分率、第1伝導剤の質量分率が、それぞれ、90~98%、1~5%、0.5~5%であることを特徴とする、態様1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
(態様7)
前記ケイ素パウダーが、ナノシリコンおよび/またはマイクロシリコンであり、
前記炭素材料が、天然グラファイト、人工グラファイト、熱分解炭素、硬質炭素材料およびそれらの組み合わせから選択され、
前記分散剤が、水であるか、アルコールと水との混合溶媒であり、
第1伝導剤が、アセチレンブラック、スーパーP、スーパーS、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびそれらの組み合わせから選択される
ことを特徴とする、態様1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
(態様8)
前記ケイ素カプセルパウダーが、第2伝導剤をさらに含み、第2伝導剤が、アセチレンブラック、スーパーP、スーパーS、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、態様1に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料。
(態様9)
態様1~8のいずれか1項に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の製造方法であって、当該製造方法が、以下の工程:
(a)前記ケイ素カプセルパウダーの調製:
前記分散剤において、前記ケイ素カプセルパウダーのケイ素パウダーと、第2バインダーとを分散させて、ケイ素質ペーストを得ること、次いで、該ケイ素質ペーストを乾燥させて、磨砕して、マイクロカプセル構造を有する前記ケイ素カプセルパウダーを得ることであって、前記マイクロカプセル構造において、前記ケイ素パウダーが、核であり、第2バインダーが、外殻であり、前記分散剤に第2伝導剤を添加するか、または添加しないこと、
(b)前記炭素質ペーストの調製:
前記分散剤において、前記炭素材料のパウダー、第1バインダーおよび第1伝導剤を分散させて、前記炭素質ペーストを得ること、
(c)前記ケイ素-炭素のペーストの調製:
前記炭素質ペーストの調製がほぼ完了するとき、または完了するとき、あるいは前記炭素質ペーストの調製が完了した後、前記工程(a)で調製したケイ素カプセルパウダーを、前記工程(b)で調製した炭素質ペーストに添加し、次いで、混合および撹拌して、前記ケイ素-炭素のペーストを得ること、
(d)前記マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の調製:
前記カレント・コレクタに、前記工程(c)で調製したケイ素-炭素のペーストをコーティングし、乾燥させて、前記マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料を得ること
を含むことを特徴とする、マイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の製造方法。
(態様10)
リチウムイオン電池の電極スライスの製造における、態様1~8のいずれか1項に記載のマイクロカプセルタイプのケイ素-炭素の複合負極材料の使用。