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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】インターナルフライス加工カッター
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/12 20060101AFI20220225BHJP
   B23C 3/06 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B23C5/12 A
B23C3/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019531297
(86)(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017074049
(87)【国際公開番号】W WO2018108344
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】16204058.8
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クネヒト, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】レール, ルドルフ
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】オーストリア国特許発明第00406028(AT,B)
【文献】特開2009-075305(JP,A)
【文献】特開2004-283935(JP,A)
【文献】西独国特許出願公告第02515937(DE,B)
【文献】特開2000-117525(JP,A)
【文献】特開平06-262423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/08、5/12
B23C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周(10)、内周(24)、およびインターナルフライス加工カッター(1)の回転軸を画定する中心軸(2)、を有するリング形状のキャリアディスク(3)と、
前記キャリアディスク(3)の前記内周(24)に取り外し可能に設置される複数の分離される工具ホルダセグメント(5)と、
前記キャリアディスク(3)上に設置されるかまたは前記工具ホルダセグメント(5)上に設置される、各工具ホルダセグメント(5)のための少なくとも1つのクランプ(8)と
を備える、インターナルフライス加工カッター(1)であって、
前記複数の工具ホルダセグメント(5)が共にリングを形成し、
各々の前記工具ホルダセグメント(5)がその内周に、切削インサート(6、7)または少なくとも1つの切れ刃のための設置要素を有する少なくとも1つの切削インサートシートを備え、
前記キャリアディスク(3)が、前記キャリアディスク(3)の軸方向(16)において前記工具ホルダセグメント(5)を支持する、各々の前記工具ホルダセグメント(5)のための軸方向当接面(26)を備え、
前記工具ホルダセグメント(5)の各々が、前記キャリアディスク(3)の前記軸方向当接面(26)に係合される軸方向接触面(28)を備え、
前記クランプ(8)が、前記キャリアディスク(3)の前記軸方向当接面(26)に対して前記工具ホルダセグメント(5)の前記軸方向接触面(28)を押圧する軸方向の力を発生させるように、配置および構成され、
前記クランプ(8)が、係止位置と解放位置との間で前記キャリアディスク(3)の径方向(17)に移動可能に設置され、前記係止位置では前記クランプ(8)が前記キャリアディスク(3)および前記工具ホルダセグメント(5)に係合されて前記キャリアディスク(3)と前記工具ホルダセグメント(5)との軸方向における分離を防止し、前記解放位置では、前記クランプ(8)が前記キャリアディスク(3)の前記軸方向(16)における前記キャリアディスク(3)と前記工具ホルダセグメント(5)との分離を可能にし、
前記クランプ(8)が、前記キャリアディスク(3)の径方向(17)に延在する案内溝(9)内に摺動可能に設置され、前記溝(9)が前記キャリアディスク(3)の前記外周(10)の方に開いている
インターナルフライス加工カッター(1)。
【請求項2】
前記クランプ(8)が前記解放位置の方にばね付勢される、請求項1に記載のフライス加工カッター(1)。
【請求項3】
前記クランプ(8)がねじ(11)によって設置され、前記ねじ(11)が、前記キャリアディスク(3)上のまたは前記工具ホルダセグメント(5)上の径方向(17)に延在する案内溝(13)内に摺動可能に設置されるナット(12)に係合される、請求項1または2に記載のフライス加工カッター(1)。
【請求項4】
前記クランプ(8)、および、前記キャリアディスク(3)または前記工具ホルダセグメント(5)が、前記クランプ(8)の前記係止位置および前記解放位置を明確に示すマーキング(21、22、23)を備える、請求項1からのいずれか一項に記載のフライス加工カッター(1)。
【請求項5】
前記クランプがシム(8)によって形成され、前記キャリアディスク(3)の表面内に、または前記工具ホルダセグメント(5)の表面内に、ポケット(20)が形成され、前記係止位置において前記シム(8)が前記ポケット(20)に係合される、請求項1からのいずれか一項に記載のフライス加工カッター。
【請求項6】
前記工具ホルダセグメント(5)および前記キャリアディスク(3)の各々が、相補的な突出部(27)と凹部(25)とを備え、前記キャリアディスク(3)から前記工具ホルダセグメント(5)上へトルクを伝達するために互いに係合される、請求項1からのいずれか一項に記載のフライス加工カッター(1)。
【請求項7】
各凹部(25)および各突出部(27)が、径方向に延在する2つの側表面を有することにより、前記2つの側表面が前記キャリアディスク(3)の前記中心軸(2)に向かってテーパ状になり、前記工具ホルダセグメント(5)の径方向の膨張を可能にする、請求項に記載のフライス加工カッター(1)。
【請求項8】
前記側表面のうちの1つが前記中心軸(2)に対して傾斜する平面内にあり、前記相補的な突出部(27)を前記凹部(25)の中に挿入するのを容易にする、請求項に記載のフライス加工カッター(1)。
【請求項9】
前記クランプ(8)が、前記相補的な突出部(27)と前記凹部(25)と同じ円周方向位置に位置する、請求項からのいずれか一項に記載のフライス加工カッター(1)。
【請求項10】
前記キャリアディスク(3)が各々の前記工具ホルダセグメント(5)のための径方向内側を向く径方向当接面(33)を備え、各々の前記工具ホルダセグメント(5)が、径方向外側を向く径方向接触面(34)を備え、前記キャリアディスク(3)および前記工具ホルダセグメント(5)が、前記キャリアディスク(3)の前記径方向当接面(33)と各々の前記工具ホルダセグメント(5)の前記径方向接触面(34)との間に隙間を存在させて、室温において前記工具ホルダセグメント(5)を径方向に熱膨張させるのを可能にする、ように、設計される、請求項1からのいずれか一項に記載のフライス加工カッター(1)。
【請求項11】
各々の前記工具ホルダセグメント(5)が前記中心軸(2)に対して垂直な方向にばね付勢されるラッチ(43)を有し、前記ラッチ(43)が前記キャリアディスク(3)にある相補的な凹部(45)に係合される、請求項1から10のいずれか一項に記載のフライス加工カッター(1)。
【請求項12】
前記キャリアディスク(3)が、軸方向に方向付けられる案内ピン(46)を備え、前記凹部(45)が前記案内ピン(46)内に位置し、前記キャリアディスク(3)の前記案内ピンが前記キャリアディスク(3)の前記軸方向に延長部分を有することにより、前記キャリアディスク(3)上に前記工具ホルダセグメント(5)を設置するとき、前記軸方向当接面(26)と前記軸方向接触面(28)とが互いに係合される前に前記工具ホルダセグメント(5)と前記案内ピン(46)とが互いに係合される、請求項11に記載のフライス加工カッター(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のインターナルフライス加工カッター(1)を有する設置用デバイス(37)であって、
工具ホルダセグメント(5)を収容するための設置面を有する基本ボディと、
前記基本ボディに取り付けられるハンドル(38)と、
前記設置面から突出する、各工具ホルダセグメント(5)のための少なくとも1つの係止要素(39)と
を有し、
各々の前記工具ホルダセグメント(5)が、前記係止要素(39)を収容および設置するための孔(40)を有する、
設置用デバイス(37)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はインターナルフライス加工カッター(internal milling cutter)に関する。インターナルフライス加工カッターは、通常、回転対称性を有するかあるいは断面において円形である1つまたは複数の部分を有するクランクシャフトまたは他の被工作物の切りくず除去式機械加工のために使用される。インターナルフライス加工カッターは、外周と、内周と、フライス加工カッターの回転軸を画定する中心軸とを有するリング形状のキャリアディスクを有する。外側表面のフライス加工を可能にするために、被工作物がキャリアディスクによって形成されるリングの中に挿入され、キャリアディスクがその内周に沿って、カッターの必要な切削動作を実施する切削インサートまたは少なくとも1つの切れ刃を装備するための少なくとも1つの切削インサートシートを備える。
【0002】
本開示は、特に、金属切削のための、特には、クランクシャフトを形成するための鉄ベースの金属で作られる素材片を機械加工するための、インターナルフライス加工カッターに関する。
【0003】
本開示で考察される特定の種類のインターナルフライス加工カッターが、キャリアディスクの内周に取り外し可能に設置される複数の分離される工具ホルダセグメントを有し、ここでは、複数の工具ホルダセグメントが、共に、内周を有するリングを形成する。これらの工具ホルダセグメントが実際の切削インサートシートを担持するかまたはさらには切れ刃を担持し、設置前の準備を整えることができる。
【0004】
加えて、キャリアディスクが、各々の工具ホルダセグメントのための軸方向当接面を備え、それによりキャリアディスクの軸方向における工具ホルダセグメントの軸方向接触面の支持を実現する。少なくとも1つのクランプが各工具ホルダセグメントにために提供され、ここでは、クランプがキャリアディスク上に設置されるかまたは工具ホルダセグメント上に設置される。クランプが、キャリアディスクの軸方向当接面に対して工具ホルダセグメントの軸方向接触面を押圧する軸方向の力を発生させるように、配置および構成される。
【0005】
米国特許出願公開第2012/0011979(A1)号から、メインボディの内周に交換可能に固定される1つまたは複数のセグメントを備えるメインボディを有する回転式切削工具が知られている。メインボディに対してセグメントを交換可能に固定することが、両側でダブテール形状になっておりさらには軸方向においてくさびで止めるようにテーパを有するように構成されるクランプ部片によって実施される。ダブテール形状のクランプ部片が、径方向で見て、各セグメントとメインボディとの間に位置する。ダブテール形状のクランプ部片は、メインボディから任意のセグメントを取り外すことができるようにする前に完全に脱着される必要があるという欠点を有する。さらに、径方向において工具ホルダセグメントとメインボディとの間に配置されるダブテール形状のクランプ部片が、径方向における工具ホルダセグメントの自由熱膨張を防止する。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本開示の態様が、工具ホルダセグメントを容易に交換するのを可能にするインターナルフライス加工カッターを提供する。本開示のさらなる態様が、径方向における工具ホルダセグメントの非制限の熱膨張を可能にするインターナルフライス加工カッターを提供する。
【0007】
本開示による上記態様のうちの少なくとも1つの態様がインターナルフライス加工カッターによって対処され、このインターナルフライス加工カッターが、外周、内周、およびフライス加工カッターの回転軸を画定する中心軸、を有するリング形状のキャリアディスクと、キャリアディスクの内周に取り外し可能に設置される複数の分離される工具ホルダセグメントと、キャリアディスク上に設置されるかまたは工具ホルダセグメント上に設置される、各工具ホルダセグメントのための少なくとも1つのクランプと、を備え、複数の工具ホルダセグメントが共にリングを形成し、各々の工具ホルダセグメントがその内周に、切削インサートまたは少なくとも1つの切れ刃のための設置要素を備える少なくとも1つの切削インサートシートを備え、キャリアディスクが、キャリアディスクの軸方向において工具ホルダセグメントを支持する、各々の工具ホルダセグメントのための軸方向当接面を備え、工具ホルダセグメントの各々が、キャリアディスクの軸方向当接面に係合される軸方向接触面を備え、クランプが、キャリアディスクの軸方向当接面に対して工具ホルダセグメントの軸方向接触面を押圧する軸方向の力を発生させるように、配置および構成され、クランプが、係止位置と解放位置との間でキャリアディスクの径方向において移動可能に設置され、係止位置ではクランプがキャリアディスクおよび工具ホルダセグメントに係合され、それによりキャリアディスクおよび工具ホルダセグメントの軸方向における分離を防止し、解放位置において、クランプがキャリアディスクの軸方向におけるキャリアディスクおよび工具ホルダセグメントの分離を可能にする。
【0008】
リング形状のキャリアディスクの中心軸がその対称軸でもある。これがひいては、機械工具上に設置されるときのフライス加工カッターの回転軸と同一となる。
【0009】
本出願では、「軸方向の」、「径方向の」、ならびに「軸方向」、「径方向」という用語が使用される。「径方向の」はキャリアディスクの中心軸に対して垂直として定義される方向を意味し、「軸方向」はキャリアディスクの中心軸に平行な方向を意味する。
【0010】
本開示の実施形態によるフライス加工カッターは、工具ホルダセグメント上に設置されるインサートを交換するときに機械工具にリング形状のキャリアディスクをおよびひいてはフライス加工カッターの最大質量を残したままにするのを可能にするという点で有利である。言い換えると、インサートを取り換えるときに取り扱われる質量が低減される。さらに、本開示の実施形態が、個別の工具ホルダセグメントを別個に交換するのを可能にし、それにより、インサートの交換時に取り扱われる質量をさらに低減することができる。
【0011】
実施形態では、リング形状のキャリアディスクが、200mmから600mmの範囲の、または230mmから470mmの範囲の、内径を有する。
【0012】
実施形態では、リング形状のキャリアディスクが鉄ベースの金属から作られる。
【0013】
実施形態では、複数の工具ホルダセグメントによって形成されるリングがリング形状のキャリアディスクと同心であることが明らかである。実施形態では、工具ホルダセグメントによって形成されるリングが、150mmから500mmの範囲の、または170mmから400mmの範囲の、内径を有する。
【0014】
実施形態では、工具ホルダセグメントが鉄ベースの金属から作られる。
【0015】
実施形態では、すべての工具ホルダセグメントが互いにサイズおよび/または形状が等しい。
【0016】
上で概説したようなインターナルフライス加工カッターは、単一の工具ホルダセグメント上に設置される複数の切れ刃または切削インサートを同時に交換するのを可能にするという利点を有する。特に、切削インサートを備えるフライス加工カッターが使用される場合、切削インサートが工具ホルダセグメントの上に設置され、その間、工具ホルダセグメントがリング形状のキャリアディスクから脱着され得、それにより機械工具のダウンタイムが短縮される。
【0017】
実施形態では、各工具ホルダセグメントが、等しい数の切れ刃または等しい数の切削インサートシートを備える。
【0018】
実施形態では、工具ホルダセグメントのうちの少なくとも1つの工具ホルダセグメントが複数の切れ刃または切削インサートシートを備える。
【0019】
さらに、キャリアディスクの内周に取り外し可能に設置される複数の分離される工具ホルダセグメントの上に複数の切れ刃または切削インサートを設けることにより、各々の工具ホルダセグメントの熱膨張をさらに可能にする。熱膨張が複数のセグメントへと分割されるリングによって支持される。
【0020】
しかし、工具ホルダセグメントの熱膨張に対応するためにさらなる処置がとられ得る。中でも、実施形態のクランプが、工具ホルダセグメントのうちの任意の工具ホルダセグメントの径方向の膨張に干渉しないように位置する。特に、これは、係止位置と解放位置との間においてフライス加工カッターの径方向に移動可能に設置される本開示によるクランプを用いて実装され得る。
【0021】
各々のクランプが、キャリアディスクの軸方向当接面に対して工具ホルダセグメントの軸方向接触面を押圧する軸方向の力を発生させるように、配置および構成される。さらに、実施形態では、クランプが、キャリアディスクの径方向当接面に対して工具ホルダセグメントの径方向接触面を押圧する径方向の力を発生させる。
【0022】
さらに、本開示によるクランプのデザインがフライス加工カッターの容易な取り扱いを可能にし、ここでは、クランプが工具ホルダセグメントの交換時に容易に開けられたり閉じられたりされ得る。
【0023】
実施形態では、クランプがさらに、解放位置の方にばね付勢される。このように、クランプを開けた後では、例えばその設置用ねじを緩めることにより、自動でその解放位置で保持される。これにより、クランプがその開位置または解放位置で高い信頼性で保持される間において、オペレータがキャリアディスク上に設置される工具ホルダセグメントを取り外したり新しい工具ホルダセグメントを設置したりすることが可能となる。
【0024】
本開示によるデザインは、原理的には、キャリアディスク上にまたは工具ホルダセグメント上に設置されているクランプと共に機能するが、キャリアディスク上にクランプを設置することは、システム全体の工具ホルダセグメントの数がキャリアディスク内で同時に収容される工具ホルダセグメントの数より多いという点を考慮して、部品の数を少なくするという利点を有する。
【0025】
原理的には、フライス加工カッターの径方向に移動可能に設置されるクランプは多様な手法で実現され得る。1つの手法は、係止位置から解放位置までおよびその逆で枢動可能となるように回転軸上に設置されるように、クランプを提供することであってよい。この枢動運動は、少なくとも、キャリアディスクの径方向に成分を有する。
【0026】
別の実施形態では、クランプが係止位置と解放位置との間でキャリアディスクの径方向に摺動可能に移動可能となるように設置される。その結果として、クランプの摺動運動により、クランプを案内することが可能となることを理由としておよび汚染物質による外乱の傾向が低減されることを理由として、安定性が向上する。
【0027】
実施形態では、クランプが、キャリアディスクの径方向に延在する案内溝の中に摺動可能に設置され、ここでは、案内溝がキャリアディスクの外周の方に開いている。溝が外周の方に開いていることを理由として、案内溝に入るいかなる汚染物質も溝から逃げることができ、それにより汚染物質による有害な影響を一切回避することができる。
【0028】
実施形態では、クランプがねじによって設置され、ここでは、ねじが工具ホルダセグメント内のまたはキャリアディスク内の雌ねじ(female threading)に保持される。
【0029】
このねじは、実施形態では、設置された状態で、緩められるのみであり、その結果、クランプを緩めた後、フライス加工カッターから構成要素を取り外して保管する必要がない。
【0030】
実施形態では、ねじ、雌ねじ(female thread)、およびクランプが、2回転のみでねじを緩めることができるように、設計される。
【0031】
本開示の実施形態では、クランプがねじによって設置され、ここでは、ねじが、キャリアディスク上のまたは工具ホルダセグメント上の径方向に延在する案内溝内に摺動可能に設置されるナットに係合される。このようにして、係止位置と解放位置との間でのクランプの摺動運動が実現され得、この間、ねじがクランプ内の所定の位置に留まる。これにより、軸方向に所定のクランプ力を提供する。
【0032】
実施形態では、ねじがキャリアディスクの軸方向に方向付けられる。
【0033】
実施形態では、クランプ、およびキャリアディスクまたは工具ホルダセグメントが、クランプの係止位置および解放位置を明確に示すマーキングを備える。このようにして、オペレータが、クランプが正確に閉じられているかどうかを、つまりクランプが係止位置にあるかどうかを明確に確認することができる。より重要なことには、オペレータが、クランプがその解放位置にあってそれによりキャリアディスクにダメージを与えながらキャリアディスクの中に工具ホルダセグメントが挿入されることが可能であるタイミングを確認することができる。
【0034】
実施形態では、クランプがシムによって形成され、ここでは、工具ホルダセグメント上にシムが摺動可能に設置された状態でのキャリアディスクの表面において、またはキャリアディスク上にシムが摺動可能に設置された状態での工具ホルダセグメントの表面において、ポケットが形成され、ここでは、係止位置においてシムがポケットに係合される。
【0035】
別の実施形態では、係止位置においてシムを収容するポケットが、その上にシムが摺動可能に設置されているところの要素上の、摺動可能に設置されるシムを案内するための案内溝の延長部分である。
【0036】
実施形態では、シムが工具ホルダセグメントの方を向いてキャリアディスクの軸方向に突出する突出部を有し、ここでは、シムの係止位置時の突出部が、工具ホルダセグメントの表面内に形成される凹部に係合される。
【0037】
こうすることで、シムが係止位置にあるとき、キャリアディスクおよび工具ホルダセグメントが互いに所定の再現可能な関係となる。特に、相補的な突出部と凹部とが径方向における工具ホルダセグメントの位置を画定する。
【0038】
加えて、シム上の相補的な突出部と工具ホルダセグメントの表面内の凹部との間の係合が、シムから工具ホルダセグメント上へ径方向のクランプ力を伝達するのを支援する。
【0039】
本開示の実施形態では、工具ホルダセグメントおよびキャリアディスクの各々が、キャリアディスクから工具ホルダセグメント上へトルクを伝達するのを実現することを目的として互いに係合される相補的な突出部と凹部とを備える。
【0040】
クランプが、キャリアディスクの軸方向当接面に対して工具ホルダセグメントの軸方向接触面を押圧する軸方向の力を提供し、したがって、摩擦力を除いて、キャリアディスクから工具ホルダセグメント上にトルクを安定的に伝達する可能性が一切ない。このようにして、工具ホルダセグメント上のおよびキャリアディスク上の相補的に設計される凹部および突出部がこの目的を果たす。
【0041】
実施形態では、突出部および凹部の各々が径方向に延在する側壁を有し、その結果、キャリアディスクから工具ホルダセグメント上へまたはその逆でトルクが伝達される。実施形態では、凹部の側表面のうちの1つの側表面および突出部の側表面のうちの1つの側表面がキャリアディスクの中心軸の延びている平面内にある。これにより、キャリアディスクからそれぞれの工具ホルダセグメント上へのトルクの伝達を最適化することが可能となる。
【0042】
本開示の別の実施形態では、クランプが、工具ホルダセグメントおよびキャリアディスクに設けられる相補的な突出部と凹部と同じ円周方向位置に位置する。
【0043】
実施形態では、各凹部が、径方向に延在する2つの側表面を有することにより、これらの2つの側表面がキャリアディスクの中心軸に向かってテーパ状になり、それにより妨げのない工具ホルダセグメントの径方向の膨張を可能にする。特に、これが、実施形態において側表面がキャリアディスクの半径に完全に位置合わせされて延在するような場合に、実現される。
【0044】
別の実施形態では、突出部がキャリアディスクに形成され、凹部がそれぞれの工具ホルダセグメント内に形成される。さらに別の実施形態では、突出部が、キャリアディスクの径方向当接面から径方向に延在する。凹部は、この実施形態では、工具ホルダセグメントの接触面内を径方向に延在する。実施形態では、突出部およびキャリアディスクが2つの部品の形態として設計され、ここでは、例えば、突出部がキャリアディスクの上にねじ込まれるナットとして形成される。このようにして、ある程度摩耗した突出部が交換され得る。
【0045】
本開示の実施形態では、キャリアディスクの軸方向当接面がリング形状である。各々の工具ホルダセグメントの軸方向接触面がキャリアディスクの軸方向当接面に対して相補的であることから、この実施形態では、各々の工具ホルダセグメントがリングの一部分である接触面を有する。
【0046】
軸方向当接面および軸方向接触面が軸方向を示す面ベクトル(surface vector)を有することを理解されたい。
【0047】
加えて、キャリアディスクが、本開示の実施形態では、各々の工具ホルダセグメントのための径方向内側を向く径方向当接面を備え、ここでは、工具ホルダセグメントの各々が、径方向外側を向く径方向接触面を備える。径方向外側または径方向内側を向く表面で、径方向外側または径方向内側を向くそれぞれの面ベクトルポイント(surface vector point)を有することを理解されたい。
【0048】
実施形態では、径方向当接面がリング形状である。
【0049】
さらなる実施形態では、軸方向当接面および径方向当接面が、ラジアル断面において、L形の形状を有する。
【0050】
本開示の実施形態では、フライス加工カッターが、正確に3つの工具ホルダセグメントを備える。セグメントの数が減ると、セグメントの任意の設置プロセスまたは脱着プロセスの複雑さが低減される。しかし、オペレータによる各々のセグメントのまたは複数のセグメントの手動の取り扱いを可能にしながら、各々の工具ホルダセグメントの重量が適切な値を超えないように注意を払わなければならない。
【0051】
本開示の実施形態では、各々の工具ホルダセグメントが、中心軸に対して垂直な方向にばね付勢されるラッチを有し、ここでは、ラッチがキャリアディスクにある相補的な凹部に係合される。
【0052】
ばね付勢されるラッチが、クランプがその解放位置にある場合でも、キャリアディスクで各々の工具ホルダセグメントを予め係止するのを可能にし、それにより工具ホルダセグメントがキャリアディスクから抜け落ちることが回避される。
【0053】
もちろん、実施形態では、ラッチは、別法として、キャリアディスクに設けてられてもよく、それぞれの工具ホルダセグメントにある相補的な凹部に係合されてもよい。
【0054】
本開示の実施形態では、ラッチおよび凹部が、キャリアディスクの軸方向当接面に対して工具ホルダセグメントの軸方向接触面が係合されるときに、互いに係合されることになるように、配置および構成される。したがって、工具ホルダセグメントの軸方向接触面がキャリアディスクの軸方向当接面から離されるとき、ラッチおよび凹部が互いとの係合から外される。
【0055】
本開示の実施形態では、ラッチを付勢するのに使用されるばね力が、オペレータによって加えられる手動による力を介してラッチを相補的な凹部に係合させるようにまたはその相補的な凹部との係合から外すように、選択される。
【0056】
本開示の実施形態では、ラッチが、キャリアディスクの凹部の中に係合されるばね付勢されるボールピンであり、このポールピンが球形の一部分によって形成される。
【0057】
本開示のさらなる実施形態では、キャリアディスクが、軸方向に方向付けられる案内ピンを備え、ここでは、ラッチを収容するための凹部がこの案内ピンの中に位置する。案内ピンは、この事例では、工具ホルダセグメントの設置中に工具ホルダセグメントを予め位置決めするのを実現することに加えて、ラッチとの組合せで、クランプを締めるまでの間においてキャリアリングで工具ホルダセグメントを保持するための保持機能を果たす。
【0058】
さらなる実施形態では、キャリアディスクが、軸方向に方向付けられる案内ピンを備え、ここでは、案内ピンがキャリアディスクの軸方向に延長部分を有し、したがってキャリアディスク上に工具ホルダセグメントを設置するとき、軸方向当接面および軸方向接触面が互いに係合される前に工具ホルダセグメントおよび案内ピンが互いに係合されるようになる。
【0059】
本開示のさらなる実施形態では、工具ホルダセグメントの径方向接触面が軸方向に位置する案内チャンファ(guiding chamfer)を有し、その結果、工具ホルダセグメントをキャリアディスク上に設置するときにキャリアディスクおよび工具ホルダセグメントの多様な要素が以下の順序で互いに係合されるようになる:
1.工具ホルダセグメントおよび案内ピン
2.案内チャンファおよび径方向当接面
3.軸方向当接面および軸方向接触面
【0060】
本開示の実施形態では、工具ホルダセグメントが、切削インサートを径方向において設置するための、および/または切削インサートを接線方向において設置するための、インサートシートを有する。切削インサートを径方向において設置する場合、インサートシートは、主として軸方向を向く接触面を提供し、切削インサートを接線方向において設置するためのインサートシートは、主として径方向を向く接触面を有する。
【0061】
実施形態では、切削インサートがインサートシート内に設置される。実施形態では、切削インサートのうちの少なくとも1つの切削インサートが超硬合金などの硬質の耐摩耗材料から作られる。
【0062】
さらなる実施形態では、本開示によるインターナルフライス工具(internal milling tool)がクランクシャフトのフライス加工のためのフライス工具である。クランクシャフトは、通常、鉄ベースの金属素材片から作られる。
【0063】
本開示のさらなる態様では、上記の本発明の種々の実施形態で説明したようなインターナルフライス加工カッターを備える設置用デバイスを提供する。
【0064】
本開示による設置用デバイスが、工具ホルダセグメントを収容するための設置面を備える基本ボディと、基本ボティに取り付けられるハンドルと、設置面から突出する、各工具ホルダセグメントのための少なくとも1つの係止要素とを有し、ここでは、各々の工具ホルダセグメントが係止要素を収容および設置するための孔を有する。
【0065】
実施形態では、係止要素がねじであり、工具ホルダセグメントが雌ねじを備える。
【0066】
さらなる実施形態では、設置用デバイスが、設置面から突出する、各々の工具ホルダセグメントのための少なくとも1つの位置決めピンを備え、ここでは、各々の工具ホルダセグメントが位置決めピンに相補的に適合する少なくとも1つの位置決め孔を備える。このようにして、設置用デバイス上に設置される工具ホルダセグメントが、設置用デバイスからキャリアディスク上へ移されて位置決めされるときに、正確に位置決めされ得るようになる。
【0067】
設置用デバイスの実施形態では、工具ホルダセグメント内の位置決め孔が、設置用デバイス上に設置される工具ホルダセグメントをキャリアディスクの中に挿入するときにキャリアディスクの案内ピンも収容するように配置される貫通孔である。
【0068】
設置用デバイスの実施形態では、ハンドルが対称に配置される2つのT形ハンドルバーを備える。これらの2つのT形ハンドルバーが、設置用デバイスを使用するときのオペレータの手首の負荷を低減する。
【0069】
さらなる実施形態では、設置用デバイスが、工具のための、また特には、クランプを設置するねじを締めたり緩めたりするためのレンチのための、保持要素を備える。
【0070】
別の実施形態では、設置用デバイスが、工具ホルダセグメントの相補的な接触面に係合される各々の工具ホルダセグメントのための当接面を備える。さらなる実施形態では、設置用デバイスの当接面が径方向内側を向く円形表面である。この事例では、工具ホルダセグメントの接触面が径方向外側を向く。
【0071】
本開示の実施形態では、設置用デバイスの基本ボディが径方向延長部分を有し、その結果、キャリアディスク上に設置される工具ホルダセグメントに係合されるとき、クランプが露出される。
【0072】
実施形態の以下の説明および対応する添付図から、本開示のさらなる利点、特徴、および用途が明らかとなる。描かれる実施形態が、示される正確な構成および手段のみに限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本開示の実施形態によるインターナルフライス加工カッターを示す側面図である。
図2a】その解放位置にある図1のフライス加工カッターのクランプのうちの1つのクランプを示す拡大切り欠き斜視図である。
図2b図2aのクランプを示す概略断面図である。
図3a】その係止位置にある図1のフライス加工カッターのクランプを示す拡大切り欠き斜視図である。
図3b図3aのクランプを示す概略断面図である。
図4】フライス加工カッターの内周から見た、図1のフライス加工カッターのクランプを示す拡大切り欠き斜視図である。
図5図6を示す拡大切り欠き斜視図である。
図6図1のフライス加工カッターの工具ホルダセグメントの外周を示す斜視図である。
図7】工具ホルダセグメント上に設置された取り扱いデバイスを備える図1のフライス加工カッターを示す斜視正面図である。
図8】半径に対して垂直な平面の図1のフライス加工カッターを示す拡大断面切り取り図である。
図9図7のフライス加工カッターおよび取り扱いデバイスを示す一部切り取りの切り欠き図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
これらの図では、等しい要素は等しい参照符号で示される。
【0075】
図1は、本開示によるフライス加工カッター1の実施形態の軸方向の上面図である。図1はインターナルフライス加工カッターの多様な要素を確認するために与えられるものである。フライス加工カッター1はクランクシャフトのフライス加工のために提供されるフライス加工カッターである。フライス加工カッターの回転軸がフライス加工カッターの中心軸2または対称軸を形成する。
【0076】
フライス加工カッター1が、リング形状のキャリアディスク3の形態のメインボディを備える。キャリアディスク3が、3つの工具ホルダセグメント5を担持するのに使用される内周4を有する。各々の工具ホルダセグメント5が、接線方向に設置される複数の切削インサート6、ならびに径方向に設置される複数の切削インサート7を担持する。図に描かれるフライス加工カッター1の実施形態では、各々の工具ホルダセグメント5が、シム8の形態の2つのクランプによりキャリアディスクに対してクランプで締められる。
【0077】
実際の工具ホルダを3つのセグメント5に分割することにより、熱管理を改善することが達成される。切削インサート6、7内で発生して工具ホルダセグメント5の中へと案内されるすべての熱がそれぞれの工具ホルダセグメント5の熱膨張を引き起こす。3つのセグメントに分割することにより、完全な360°のリングで形成された工具ホルダと比較して、径方向における各々の工具ホルダセグメントの膨張の制限を低減することが可能となる。
【0078】
本開示の意味では、径方向は、フライス加工カッターの中心軸2を中心とする図1のフライス加工カッターの半径に沿う任意の方向である。それに対応して、軸方向は中心軸2に平行な任意の方向であり、つまり図1の投影面に対して垂直に延びる任意の方向である。
【0079】
図2から9を参照して、以下で、キャリアリング3上の工具ホルダセグメント5のクランプで締める機能を説明する。
【0080】
図2aがフライス加工カッター1の切り欠き図の拡大斜視図を示しており、ここでは、それぞれの工具ホルダセグメント5のためのクランプとしてのシム8が配置されている。図2bが図2aのクランプ8を通る断面図を示す。
【0081】
図2aおよび2bはその非係止位置または解放位置でクランプ8を示すが、図3aおよび3bが同じクランプ8をその閉位置または係止位置で示す。シム8がキャリアディスク3内の案内溝9の中に摺動可能に設置される。案内溝9がキャリアディスク3の外周10の方に開いており、それにより、ダストおよび他の汚染物質を案内溝9の外へ送るのを可能にする。
【0082】
シム8をキャリアディスク3に設置するために、シム8を通してねじ11が入れられる。ねじが、キャリアディスクの中にフライス加工される案内溝13の中に位置するナット12の中にねじ込まれる。この案内溝13は、ねじ11を緩めるときにナット12をキャリアディスク3の径方向に摺動可能に移動させることができるようにするように、延在する。ナット12が径方向に摺動可能に移動させられ得ることから、ねじ11さらにはねじ11に取り付けられるシム8も摺動することになる。
【0083】
シム8がねじ11のヘッドに固着され、その結果、ねじが緩められるとき、シム8が、キャリアディスク3内のシム8のための案内溝9の基面(ground)14から離される。ねじ11およびナット12のねじ部は、ねじ11を完全に2回転させることによりシムがクランプで締められるかまたは緩められ得るようにするように、選択される。
【0084】
シム8が、工具ホルダセグメント5の方を向くその端部に、シム8のボディから軸方向16に延在する突出部15を備える。シム8が径方向17に摺動させられてその結果としてシム8がその係止位置にくると、突出部15が、工具ホルダセグメント5に設けられる凹部18の中へと軸方向に移動させられ得る。
【0085】
図2aでは凹部18を完全に見ることができる。凹部18は、工具ホルダセグメント5の表面内に形成されるポケット20の底部表面19内に設けられる。このポケット20はキャリアディスク内に設けられる案内溝9の延長部分であり、それによりシム8のその解放位置からその係止位置までの完全な摺動運動を可能にする。
【0086】
シム8の状態または位置の情報をオペレータに提供するために、シム8さらにはキャリアディスク3が印の形態のマーキング21、22、23を備える。シム8上のマーキング21およびキャリアディスク3上のマーキング23が位置合わせされると、シム8がその解放位置にくる。シム8上のマーキング22およびキャリアディスク3上のマーキング23が位置合わせされると、シム8がその係止位置にくる。これらのマーキングは、特に、オペレータが工具ホルダセグメント5を交換するのを容易にする。工具ホルダセグメント5を挿入する前に、オペレータが一目で分かるような形ですべてのシム8をチェックすることができ、それにより、すべてのシム8がそれらの解放位置にあって工具ホルダセグメント5を挿入することが可能であることを確認することができる。
【0087】
図4はその内周24からのキャリアディスク3の斜視切り取り図である。シム8がその解放位置にある状態で描かれている。この視点から、キャリアディスク3内のナット12のための案内溝13をよく見ることができる。
【0088】
ねじが設置されることにより、シム8を介しての、フライス加工カッター1の駆動されるキャリアディスク3から工具ホルダセグメント5へのトルクの伝達により、シム8が迅速に摩耗することになり、加えてミル全体が必要な精度を欠くことになる。したがって、キャリアディスク3および各々の工具ホルダセグメント5が、キャリアディスクから工具ホルダセグメントまでトルクを伝達するための追加の相補的な要素を備える。
【0089】
図に描かれる特定の実施形態では、これらの2つの相補的な要素が、キャリアディスク3の径方向当接面33からの突出部(この図では図示せず)と、工具ホルダセグメント5の径方向接触面34から延在する凹部15とによって形成される。本実施形態では、各々の工具ホルダセグメント5が1つの凹部25を備える。図6の工具ホルダセグメント5の斜視図では、凹部25のロケーションを見ることができる。
【0090】
凹部25の側壁29、30および突出部の側壁がフライス加工カッター1の半径上に正確に配置され、その結果、凹部25の側壁29、30または突出部の側壁によりセグメントの熱膨張が妨げられることがない。
【0091】
加えて、2つの側壁29、30が、フライス加工カッター1の中心軸2の延びている平面内に位置する。キャリアディスク3上の突出部の側壁が凹部25の側壁に対して相補的な形状を有することが明らかである。
【0092】
キャリアディスク3の軸方向当接面26がそれ自体でリングを形成し、ここでは、工具ホルダセグメント5の接触面28がリンクのセクションを形成する。
【0093】
軸方向当接面26に加えて、キャリアディスク3が径方向当接面33を有し、この径方向当接面33が工具ホルダセグメント5の外周または径方向接触面34に対して相補的である。しかし、設置時、径方向当接面33と径方向接触面34との間に隙間が設けられ、それにより径方向における工具ホルダセグメント5の熱膨張を可能にする。さらに、突出部27の円周面35と凹部25の円周方向端面36との間に隙間が設けられる。
【0094】
シム8は、シム8の係止位置時にねじ11が締められるときに、工具ホルダセグメント5の軸方向接触面28をキャリアディスク3の軸方向当接面26に対して押圧するような軸方向の力をシム8により発生させるように、またさらには、工具ホルダセグメント3の径方向接触面34をキャリアディスク3の径方向当接面33に対して押圧するような径方向の力をシム8により発生させるように、配置および構成される。
【0095】
工具ホルダセグメント5が、図7に描かれるように、設置用デバイス37を使用してキャリアディスク3内に容易に設置され得る。設置用デバイス37が、キャリアディスク3の3つのすべての工具ホルダセグメント5を同時に容易に設置することを目的としてオペレータによって握持され得る2つのT形ハンドルバー38を備える。このようにして、切削インサート6、7を装備するセグメントが容易に交換され得る。
【0096】
それぞれの工具ホルダセグメント5の中の対応する位置決め孔の中にある位置決めピン49(図9に描かれる)と、それぞれの工具ホルダセグメント5内の対応するねじ穴(図6で参照符号40によって示される)の中に係合される設置用ねじ39とにより、各々の工具ホルダセグメント5が設置用デバイス上に設置されて位置決めされる。
【0097】
設置用デバイス37の基本ボディがリング形状であり、ここでは、基本ボディのリングが、それらの係止位置でさらにはそれらの解放位置で工具ホルダセグメント5のシム8を露出するのに十分に小さい直径を有する。
【0098】
さらに、設置用デバイス37がレンチ42を保持するホルダ41を備え、ここでは、このレンチ42がシム8のねじ11に適合する。
【0099】
加えて、シム8が解放位置の方にばね付勢され、それにより、3つの工具ホルダセグメント5をキャリアディスク3の中に入れるときにシム8をそれらの解放位置で高い信頼性で保持する。
【0100】
両手を使える一人のオペレータで考えると、すべてのシム8がそれらの解放位置で保持される間に、3つの工具ホルダセグメント5を成功裏にキャリアディスク3の中に挿入させるには、深刻な状況が生じる可能性がある。各々のシム8をそれらの解放位置からそれらの係止位置まで移動させるのにおよびねじ11を締めるのに両手が必要である場合、工具ホルダセグメント5が、設置用デバイス37と共に、キャリアディスク3から再び抜け落ちる可能性がある。
【0101】
このような状況を回避するために、工具ホルダセグメント5の各々が図8および9に描かれるばね付勢されるラッチを備える。示される実施形態のばね付勢されるラッチがばね付勢されるボールピンの形態を有し、つまり円筒形ホルダ44内に設置されるボール43を有する。ボール43が、ばね(この図では図示せず)の力に逆らって、軸方向に対して垂直な方向に移動可能である。ボール43が凹部45に係合され、ここでは、凹部45がキャリアディスク3に位置する。凹部が部分的な球形の形態を有する。
【0102】
凹部45が、より正確には、キャリアディスク3の軸方向当接面26内に収容される案内ピン46内に位置する。案内ピン46が軸方向当接面26から垂直に突出する。ピン46の存在している位置においてボール43を凹部45の中にばね付勢する力は、キャリアディスク5を垂直方向に方向付けられているときにつまりその中心軸を水平にしているときにキャリアディスク5でセグメントおよび設置用デバイス37を高い信頼性で保持するように、選択される。
【0103】
さらに、案内ピン46が、キャリアディスク3の中に挿入されるときの工具ホルダセグメント5を案内するように機能する。したがって、案内ピン46の長さは、工具ホルダセグメント5をキャリアディスク3の中に挿入するときに工具ホルダセグメント5内の位置決め孔47と案内ピン46との間で最初の接触を確立するように、選択される。結果として、工具ホルダセグメント5の径方向接触面34の案内チャンファ48が径方向当接面33に接触し、最後に重要なこととして、キャリアディスク3の軸方向当接面26および工具ホルダセグメント5の軸方向接触面28が接触する。このようにして、正確な基面である接触面(precision ground contact surface)26および当接面28は互いに既に係合されている場合には互いに対して相対運動することが一切ない。
【0104】
図8が案内ピン46およびボールピン43、44の組合せの断面図を示すが、図9では同じ構成が一部破断の切り欠き図で描かれている。図8に提供される情報に加えて、図9は、工具ホルダセグメント5内の位置決め孔47が、同時に、キャリアディスク3の案内ピン46および設置用デバイス37の位置決めピン49を収容する、ことを示している。
【0105】
新規な開示のために、特徴が別の特徴と併せてのみ説明されている場合でも、明確に排除されていないかまたは技術的に不可能ではない場合において、本記述、図、および特許請求の範囲から当業者には明らかとなるすべての特徴が、それ自体で、または本明細書で開示される特徴のあらゆる組合せと共に、組み合わされ得ることを指摘しておく。特徴のすべての考えられる組合せの包括的な明確な記述は、本記述を読み易いものとすることのみを目的として省略される。
【符号の説明】
【0106】
1 フライス加工カッター
2 回転軸/中心軸
3 キャリアディスク
5 工具ホルダセグメント
6 接線方向に設置される切削インサート
7 径方向に設置される切削インサート
8 シム/クランプ
9 シム8の案内溝
10 キャリアディスクの外周
11 ねじ
12 ナット
13 ナット12の案内溝
14 基面
15 突出部
16 軸方向
17 径方向
18 凹部
19 ポケット20の底部表面
20 ポケット
21、22、23 マーキング
24 内周
25 凹部
26 軸方向当接面
28 工具ホルダセグメント5の軸方向接触面
29、30 側壁
33 径方向当接面
34 径方向接触面
37 設置用デバイス
38 ハンドルバー
39 設置用ねじ
40 ねじ穴
41 工具42のためのホルダ
42 レンチ
43 ボール
44 円筒形ホルダ
45 ボールのための凹部
46 キャリアディスク3の案内ピン
47 位置決め孔
48 案内チャンファ
49 設置用デバイス37の位置決め
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9