(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】紫外線吸収ハードコート
(51)【国際特許分類】
C09D 1/04 20060101AFI20220225BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220225BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220225BHJP
【FI】
C09D1/04
B32B27/18 A
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2019535186
(86)(22)【出願日】2017-08-25
(86)【国際出願番号】 US2017048573
(87)【国際公開番号】W WO2018052686
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-24
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】井原 大貴
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直大
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-261912(JP,A)
【文献】特開2011-183758(JP,A)
【文献】特開2015-010095(JP,A)
【文献】特開2008-233882(JP,A)
【文献】特開昭61-004770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D,B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収ハードコートであって、
結合剤、及び
前記ハードコートの総重量を基準として、1~90重量%の範囲のZnOナノ粒子の混合物を含み、
前記ZnOナノ粒子の数の少なくとも50パーセントが、L-リシンで表面改質されており、かつその上にシリカコーティングを有し、
前記ZnOナノ粒子自体が、10nm~100nmの範囲の平均粒径を有し、
前記シリカコーティングが少なくとも2nmの平均厚さを有する、紫外線吸収ハードコート。
【請求項2】
前記シリカコーティングが、表面改質されている、請求項1に記載のハードコート。
【請求項3】
前記結合剤が、前記結合剤の総重量を基準として、20重量%~80重量%
の多官能性アクリレートを含む、請求項1又は2に記載のハードコート。
【請求項4】
ヘイズメーターで測定される初期ヘイズ値が3%未満であり、且つスチールウール耐摩耗試験後の、前記初期ヘイズ値からのヘイズ値の変化であるΔヘイズ値が0.2%未満であり、前記試験は、磨耗試験機及び#0000スチールウールを用いて、350グラム荷重及び60サイクル/分の速度で100サイクル行われるものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のハードコート。
【請求項5】
表面を有する基材、及び
前記基材の前記表面上に配置された、請求項1~4のいずれか一項に記載のハードコート層
を含む物品。
【請求項6】
前記基材がフィルムである、請求項5に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年9月14日に出願された米国特許仮出願第62/394330号の利益を主張するものである。
【0002】
[背景技術]
窓ガラス(例えば建物及び自動車用窓ガラス)、並びに陰極線管(Cathode Ray Tube、CRT)及び発光ダイオード(LightEmitting Diode、LED)ディスプレイなどの光学ディスプレイを保護するために、各種コーティング及びフィルムが使用されている。
【0003】
窓ガラス及び光学ディスプレイ、特に比較的優れた硬度、耐候性、及び光学特性(例えば視認性)を同時に有する窓ガラス及び光学ディスプレイを保護するための更なる選択肢が望まれている。
【0004】
[発明の概要]
一態様において、本開示は、紫外線(UV)吸収ハードコートであって、結合剤(例えば、UV硬化アクリレート又は熱硬化アクリレート)、及びハードコートの総重量を基準として、1~90(いくつかの実施形態では、5~90、10~90、25~90、40~90、50~90、50~80、又は60~80)重量%の範囲のZnOナノ粒子の混合物を含み、ZnOナノ粒子の少なくとも一部(いくつかの実施形態では、粒子の数の少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100パーセント)が、L-リシンで表面改質されており、かつその上にシリカコーティングを有する、紫外線(UV)吸収ハードコートを提供する。
【0005】
一態様において、本開示は、表面を有する基材、及び基材の表面上に配置された、本明細書に記載のハードコートを含むハードコート層を含む、物品を提供する。
【0006】
別の態様において、本開示は、ハードコート前駆体であって、結合剤前駆体、及びハードコート前駆体の総重量を基準として、1~90(いくつかの実施形態では、5~95、5~90、25~90、40~90、50~90、50~80、又は60~80)重量%の範囲のZnOナノ粒子の混合物を含み、ZnOナノ粒子の少なくとも一部(いくつかの実施形態では、粒子の数の少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100パーセント)が、L-リシンで表面改質されており、かつその上にシリカコーティングを有する、ハードコート前駆体を提供する。
【0007】
本明細書に記載のハードコートの実施形態は、典型的に、良好な透明度及び硬度を有し、例えば光学ディスプレイ(例えば陰極線管(CRT)及び発光ダイオード(LED)ディスプレイ)、携帯情報端末(Personal Digital Assistant、PDA)、携帯電話、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、LCD)パネル、タッチスクリーン、取り外し可能コンピュータスクリーン、ウィンドウフィルム、及びゴーグルに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】「入手直後の」ZnOナノ粒子(商品名「NANOBYK-3820」でBYK-Chemie GmbH,Wesel,Germanyから入手)の透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy、TEM)デジタル顕微鏡写真である。
【0009】
【
図1B】「入手直後の」ZnOナノ粒子(レジノカラー工業株式会社(大阪)から商品名「AQ-E3913」で入手)のTEMデジタル顕微鏡写真である。
【0010】
【
図2】実施例1のTEMデジタル顕微鏡写真である。
【0011】
【
図3A】実施例1の別のTEMデジタル顕微鏡写真である。
【0012】
【
図3B】実施例1の別のTEMデジタル顕微鏡写真である。
【0013】
【
図3C】実施例1の別のTEMデジタル顕微鏡写真である。
【0014】
【
図4A】(レジノカラー工業株式会社(大阪)から商品名「AQ-E3913」で入手した)「入手直後の」ZnOナノ粒子のTEMデジタル顕微鏡写真である。
【0015】
【
図4B】実施例2のTEMデジタル顕微鏡写真である。
【0016】
【
図5】実施例1の透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光分析(Transmission Electron microscopy-Energy Dispersive X-raySpectroscopy、TEM-EDS)マッピング画像である。
【0017】
【
図6】実施例1及び「入手直後の」ZnO(BYK-Chemie GmbH,Wesel,Germanyから商品名「NANOBYK-3820」で入手)をUV光照射下で触媒として使用し、UV照射後のZnOナノ粒子を含んだMB溶液の外観を用いることによる、メチレンブルー(Methylene Blue、MB)溶液の光分解曲線を示す。
【0018】
【
図7】実施例3及び比較例Bの紫外可視(ultraviolet-visible、UV-Vis)スペクトルである。
【0019】
【
図8】実施例5、7、8、9及び比較例CのUV-Visスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例示的な結合剤前駆体としては、硬化性モノマー/オリゴマー又はゾル-ゲルガラスを重合することによって得られる、UV硬化性アクリレート又は熱硬化性アクリレート樹脂が挙げられる。樹脂のより具体的な例としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及び(ポリ)ビニルアルコールが挙げられる。更に、硬化性モノマー又はオリゴマーは、当該分野で公知の硬化性モノマー又はオリゴマーから選択され得る。いくつかの実施形態において、樹脂としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、Sartomer Company,Exton,PAから「SR399」の商品名で入手可能)、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate、IPDI)(例えば、日本化薬株式会社(東京)から商品名「UX5000」で入手可能)、ウレタンアクリレート(例えば、日本合成化学工業株式会社(大阪)から商品名「UV1700B」;及び日本合成化学工業株式会社(大阪)から商品名「UB6300B」で入手可能)、トリメチルヒドロキシルジイソシアネート/ヒドロキシエチルアクリレート(trimethyl hydroxyl di-isocyanate/hydroxy ethyl acrylate、TMHDI/HEA)(例えば、ダイセル・サイテック株式会社(東京)から商品名「EB4858」で入手可能)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide、PEO)変性ビスAジアクリレート(例えば、日本化薬株式会社(東京)から商品名「R551」で入手可能)、PEO変性ビス-Aエポキシアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社(大阪)から商品名「3002M」で入手可能)、シラン系UV硬化性樹脂(例えば、ナガセケムテックス株式会社(大阪)から商品名「SK501M」で入手可能)、及び2-フェノキシエチルメタクリレート(例えば、Sartomer Companyから商品名「SR340」で入手可能);並びにこれらの混合物が挙げられる。例えば、約1.25~約20重量%の2-フェノキシエチルメタクリレートを使用すると、ポリカーボネートに対する接着性が改善されることが観察されている。二官能性樹脂(例えば、PEO変性ビス-Aジアクリレート(「R551」))及びトリメチルヒドロキシルジイソシアネート/ヒドロキシエチルアクリレート(TMHDI/HEA)(例えば、ダイセル・サイテック株式会社から商品名「EB4858」から入手可能)を使用すると、ハードコートの硬度、耐衝撃性、及び柔軟性が同時に改善されることが観察されている。いくつかの実施形態において、三次元構造を形成することができる硬化性モノマー又はオリゴマーを使用することが望ましい場合がある。
【0021】
ハードコートを形成するための前駆体中の結合剤の量は、典型的に、ハードコートの総重量を基準として、約99重量%~約10重量%(いくつかの実施形態では、約95重量%~約5重量%、約90重量%~約10重量%、約75重量%~約10重量%、約60重量%~約10重量%、約50重量%~約10重量%、又は約40重量%~約20重量%)の結合剤をハードコートに付与するのに十分な量である。
【0022】
任意選択で、ハードコート前駆体は架橋剤を更に含む。例示的な架橋剤としては、(a)ジ(メタ)アクリル含有化合物、例えば、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート;(b)トリ(メタ)アクリル含有化合物、例えば、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;(c)高官能性(メタ)アクリル含有化合物、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;(d)オリゴマー状(メタ)アクリル化合物、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート;上記のポリアクリルアミド類似体;及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリ(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。このような材料は市販されており、少なくともいくつかの材料は、例えば、Sartomer Company;UCB Chemicals Corporation,Smyrna,GA;及びAldrich Chemical Company,Milwaukee,WIから入手可能である。他の有用な(メタ)アクリレート材料としては、ヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレート、例えば、米国特許第4,262,072号(Wendling et al.)に報告されているものが挙げられる。
【0023】
例示的な架橋剤は少なくとも3つの(メタ)アクリレート官能基を含む。例示的な市販の架橋剤としては、Sartomer Companyから入手可能な架橋剤、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate、TMPTA)(商品名「SR351」で入手可能)、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(pentaerythritol tri/tetraacrylate、PETA)(商品名「SR444」及び「SR295」で入手可能)、及びペンタエリスリトールペンタアクリレート(商品名「SR399」で入手可能)が挙げられる。更に、多官能性及び低官能性アクリレートの混合物、例えば、Sartomer Companyから商品名「SR399」で入手可能な、PETAとフェノキシエチルアクリレート(phenoxyethyl acrylate、PEA)との混合物を利用してもよい。これらの例示的な架橋剤は、硬化性モノマー又はオリゴマーとして使用することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、結合剤は、単官能性アクリレート(例えば、結合剤の総重量を基準として、単官能性アクリレートの固形分で1.25~20重量%)を含む。いくつかの実施形態において、結合剤は、二官能性アクリレート(例えば、結合剤の総重量を基準として、二官能性アクリレートの固形分で1.25~20重量%)を含む。いくつかの実施形態において、結合剤は、多官能性(例えば、三官能性又は四官能性)アクリレート(例えば、結合剤の総重量を基準として、多官能性(例えば、三官能性又は四官能性)アクリレートの固形分で20~80重量%(いくつかの実施形態では、60~80重量%))を含む。
【0025】
適切なZnOナノ粒子は、当該技術分野において公知であり、BYK-Chemie GmbH,Wesel,Germanyから商品名「NANOBYK3820」で、NanoMaterials Technology Pte,Ltd.,Bukit Batok Crescent,Singaporeから商品名「NANO-D 133W」で、レジノカラー工業株式会社(大阪)から商品名「AQ-E3913」で市販されているものを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、ハードコート中に存在するZnOナノ粒子の混合物は、ハードコートの総重量を基準にして、約1~約90重量%、約5~約90重量%、約10~約90重量%、約25~約90重量%、約40~約90重量%、約50~約90重量%、約50~約80重量%、又は約50~約90重量%の範囲にある。
【0027】
いくつかの実施形態において、ZnOナノ粒子自体(すなわち、コーティングを欠く粒子)は、約10nm~100nm(いくつかの実施形態では、25nm~100nm、25nm~80nm、50nm~80nm、又は60nm~80nm)の範囲の粒径を有する。ナノ粒子の平均直径は、当該技術分野において一般的に用いられている技術を使用する透過型電子顕微鏡(TEM)により測定される。ナノ粒子の平均粒径を測定するために、一滴のゾル試料を400メッシュ銅TEMグリッド上に置き、極薄カーボン基材をレイシーカーボンメッシュ(Ted Pella Inc.,Redding,CAから入手可能)の最上面に置くことにより、TEMイメージング用にゾル試料を調製してよい。液滴の一部は、濾紙でグリッドの側面又は底面に触れることで除去することができる。残りは乾燥させることができる。これにより、粒子を極薄カーボン基材上に置き、基材からの干渉を最小限に抑えて画像化することができる。次いで、TEM画像をグリッド上の複数の場所で記録することができる。500~1000個の粒子の寸法を測定するのに十分な画像が記録される。次いで、各試料についての粒径測定に基づいて、ナノ粒子の平均直径を計算することができる。TEM画像は、(LaB6電子源を用いて)300KVで動作する高解像度透過型電子顕微鏡(日立製作所(東京)から商品名「HITACHI H-9000」で入手可能)を使用して得ることができる。カメラ(例えば、Gatan,Inc.,Pleasanton,CAから商品名「GATAN ULTRASCAN CCD」で入手可能なモデル番号895、2k×2kチップ)を使用して、画像を記録することができる。50,000倍から100,000倍の倍率で画像を撮影することができる。試料によっては、300,000倍の倍率で画像が撮影される場合がある。
【0028】
ZnOナノ粒子の少なくとも一部(いくつかの実施形態では、粒子の数の少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100パーセント)は、L-リシンで表面改質されており、かつその上にシリカコーティングを有する。
【0029】
ZnOナノ粒子の表面は、例えば、ZnOナノ粒子を分散させて含有する水性-エタノール混合物にL-リシンを添加し、次いで室温で撹拌することにより、改質させることができる。得られた混合物を、混合物を攪拌しながら、数時間(例えば16時間)、高温(例えば60℃)にて、容器(例えばガラスジャー)内で(例えば油浴中で)、加熱することができる。更に、表面改質されたZnOナノ粒子がシリカでコーティングされる場合、シリカコーティングは、例えば、得られた加熱混合物にテトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate、TEOS)を加えて攪拌することにより実現することができる。次いで、得られた混合物を密閉円筒形のポリテトラフルオロエチレン裏打ちステンレス鋼製オートクレーブに入れることができ、それを高温(例えば150℃)で数時間(例えば6時間)オーブンに入れることができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、シリカコーティングが、少なくとも2nm(いくつかの実施形態では、少なくとも3nm、4nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、又は少なくとも50nm、いくつかの実施形態では、2nm~50nm、2nm~25nm、又は2nm~10nmの範囲)の平均厚さを有する。
【0031】
任意選択で、シリカコーティングは表面処理剤で改質される。一般に、表面処理剤は、粒子表面に(共有結合的に、イオン的に又は強い物理吸着により)付着する第1の端部と、樹脂に対する粒子の相溶性を付与しかつ/又は硬化中に樹脂と反応する第2の端部とを有する。表面処理剤の例としては、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、シラン、及びチタネートが挙げられる。好ましい種類の処理剤は、部分的に、ナノ粒子表面の化学的性質によって決定される。シリカ及び他のシリカ系フィラーにはシランが好ましい。金属酸化物にとっては、シラン及びカルボン酸が好ましい。表面改質は、モノマーとの混合に続いて又は混合後に行うことができる。シランが用いられる場合、結合剤中への組み込みの前に、シランをナノ粒子表面と反応させることが好ましい。表面処理剤の必要量は、粒径、粒子の種類、表面処理剤の分子量、及び表面処理剤の種類などの複数の要因に依存する。一般に、ほぼ単層の表面処理剤を粒子の表面に付着させることが好ましい。付着手順、又は必要とされる反応条件もまた、使用される表面処理剤に依存する。シランを使用する場合、酸性又は塩基性条件下での、約1~24時間の高温での表面処理が好ましい。カルボン酸などの表面処理剤は、通常、高温又は長時間を必要としない。
【0032】
表面処理剤の代表的な実施形態は、イソオクチルトリメトキシシラン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、ポリアルキレンオキシドアルコキシシラン(例えば、Momentive Specialty Chemicals,Inc.,Columbus,OHから商品名「SILQUEST A1230」として入手可能)、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン,ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ-t-ブトキシシラン、ビニルトリス-イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、ステアリン酸、ドデカン酸、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(2-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy]acetic acid、MEEAA)、β-カルボキシエチルアクリレート、2-(2-メトキシエトキシエトキシ)酢酸、メトキシフェニル酢酸、及びこれらの混合物などの化合物を含む。
【0033】
任意選択で、ハードコートは、公知の添加剤、例えば、防曇剤、帯電防止剤、指紋防止剤、抗油剤、抗リント剤、若しくは防汚剤などの易洗浄剤、又は易洗浄機能を付与する他の薬剤を更に含んでよい。
【0034】
ハードコートへのヘキサフルオロプロピレンオキシドウレタンアクリレート(hexafluoropropylene oxide urethane acrylate、HFPO)又は変性HFPOの添加は、ハードコートの易洗浄(例えば、指紋防止、抗油、抗リント及び/又は防汚)機能を改善することが観察されている。HFPO及び変性HFPOの例示的な量は、ハードコートの総重量を基準として、約0.01~約5.0重量%(いくつかの実施形態では、約0.05~約1.5重量%、又は約0.1~約0.5重量%)の範囲にある。
【0035】
ハードコート中にシリコーンポリエーテルアクリレート(例えば、Evonic Goldschmidt GmbH,Essen,Germanyから商品名「TEGORAD 2250」で入手可能)を含めることも、ハードコートの易洗浄機能を改善することが観察されている。シリコーンポリエーテルアクリレートの例示的な量は、ハードコートの総重量を基準として、約0.01~約5.0重量%(いくつかの実施形態では、約0.05~約1.5重量%、又は約0.1~約0.5重量%)の範囲にある。
【0036】
ハードコート前駆体の特定の構成成分は、当技術分野で周知である通り、組み合わせてハードコートに加工することができる。例えば、以下のプロセスを用いてよい。ハードコート前駆体は、バーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、キャピラリーコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング、又はスクリーン印刷などの公知のコーティング方法によって、基材上にコーティングすることができる。乾燥後、コーティングされたハードコート前駆体は、紫外線(UV)重合又は熱重合などの公知の重合方法により、硬化させることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、例えば、使用される硬化性モノマー及び/又はオリゴマーに応じて、無溶媒(すなわち、有機溶媒を含まない、又は水100%)プロセスを用いて、コーティングを形成することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、2つ以上の異なるサイズのナノ粒子ゾルを、改質剤を用いて又は用いずに、開始剤を含む溶媒中の硬化性モノマー及び/又はオリゴマーと混合してもよく、開始剤は、ハードコート前駆体を構成するために溶媒を添加することにより、所望の重量%(固形分中)に調整される。いくつかの実施形態において、シリカでコーティングされたZnOナノ粒子の一部は、L-リシンで表面改質することはできない。
【0039】
典型的には、ハードコートの厚さは、約80ナノメートル~約30マイクロメートル(いくつかの実施形態では、約200ナノメートル~約20マイクロメートル、又は約1マイクロメートル~約10マイクロメートル)の範囲にある。典型的には、ナノ粒子を使用することによって、より厚く、より硬いハードコート層を得ることができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のハードコートは、非常に好ましい耐候性特性を有する。例示的実施形態は、促進耐候試験(実施例に規定されている)の後であっても、ヘイズ値を維持し、非官能性ZnOナノ粒子を含まない同じハードコートと比較して、より高い耐摩耗性を示すことが観察された。そのような例示的実施形態はまた、低い触媒活性を示すことが観察されている。そのような例示的実施形態はまた、改善された耐摩耗性及びより低いヘイズを示すことが観察されている。
【0041】
本明細書に記載のハードコートは、例えば、光学ディスプレイ(例えば、陰極線管(CRT)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ)、プラスチックカード、レンズ、カメラ本体、ファン、ドアノブ、タップハンドル、ミラー、及び掃除機や洗濯機などの家電製品、並びに光学ディスプレイ(例えば、陰極線管(CRT)及び発光ダイオード(LED)ディスプレイ)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、液晶ディスプレイ(LCD)パネル、タッチスクリーン、取り外し可能コンピュータスクリーン、ウィンドウフィルム、及びゴーグルに有用である。更に、本明細書に記載のハードコートは、例えば、家具、ドア及び窓ガラス、便器及び浴槽、車両の内装/外装、カメラレンズ若しくはガラス、又はソーラーパネルに有用であり得る。
【0042】
本明細書に記載のハードコートを有するための例示的な基材としては、フィルム、ポリマープレート、シートガラス、及び金属シートが挙げられる。フィルムは透明であっても不透明であってもよい。本明細書で使用するとき、「透明」は全透過率が90%以上であることを意味し、「不透明」は全透過率が90%以下であることを意味する。例示的なフィルムとしては、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate、PMMA))、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン(polypropylene、PP))、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET))、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(acrylonitrile butadiene styrene copolymer、ABS)、エポキシ、ポリエチレン、ポリアセテート及び塩化ビニル、又はガラスから作製されたフィルムが挙げられる。ポリマープレートは透明であっても不透明であってもよい。例示的なポリマープレートとしては、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)、PCとPMMAのブレンド、又はPCとPMMAの積層体から作製されたものが挙げられる。金属シートは可撓性又は剛性であってよい。本明細書で使用するとき、「可撓性金属シート」は、顕著な不可逆的変化なしに曲げ又は伸張等の機械的応力に耐え得る金属シートを指し、「硬質金属シート」は、顕著な不可逆的変化なしに曲げ又は伸張等の機械的応力に耐えることができない金属シートを指す。例示的な可撓性金属シートとしては、アルミニウム製のものが挙げられる。例示的な硬質金属シートとしては、アルミニウム、ニッケル、ニッケルクロム、及びステンレス鋼から作製されたものが挙げられる。金属シートが使用されるとき、ハードコートと基材との間にプライマー層を適用することが望ましい場合がある。
【0043】
典型的に、フィルム基材の厚さは、約5マイクロメートル~約500マイクロメートルの範囲にある。典型的に、ポリマープレートの厚さは、約0.5mm~約10mm(いくつかの実施形態では、約0.5mm~約5mm、又は約0.5mm~約3mm)の範囲にあるが、これらの範囲外の厚さも有用であり得る。基材としてのシートガラス又は金属シートの場合、典型的な厚さは、約5マイクロメートル~約500マイクロメートル、又は(いくつかの実施形態では、約0.5mm~約10mm、0.5mm~約5mm、又は約0.5mm~約3mm)であるが、これらの範囲外の厚さも有用であり得る。
【0044】
本明細書に記載のハードコートは、2つ以上の表面を有する基材については、基材の2つ以上の表面上に配置することができる。また、2つ以上のハードコート層を表面に適用してもよい。典型的に、本明細書に記載のハードコート層の厚さは、約80ナノメートル~約30マイクロメートル(いくつかの実施形態では、約200ナノメートル~約20マイクロメートル、又は約1マイクロメートル~約10マイクロメートル)の範囲にあるが、これらの範囲外の厚さも有用であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、物品は、ハードコート層と基材との間にプライマー層などの機能層を更に含んでもよい。任意選択で、接着剤層をハードコート層とは反対側の基材表面に適用してもよい。アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、及びゴム系接着剤を含む、例示的な接着剤が、当技術分野において公知となっている。
【0046】
更に、接着剤層が存在する場合、任意選択でライナー(linear)(例えば剥離ライナー)を接着剤層の上に含めることができる。剥離ライナーは当技術分野において公知であり、紙及びポリマーシートを含む。
【0047】
ハードコート前駆体は、溶媒中の硬化性モノマー及び/又はオリゴマー(例えば、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)又は1-メトキシ-2-プロパノール(1-methoxy-2-propanol、MP-OH))を抑制剤と共に溶媒に添加するなどの、当技術分野で公知の技術を用いて構成成分を組み合わせることによって、調製することができる。いくつかの実施形態では、使用する硬化性モノマー及び/又はオリゴマーによっては、溶媒を使用することができない。ハードコート前駆体は、防曇剤及び/又は帯電防止剤などの公知の添加剤を更に含んでもよい。
【0048】
ハードコート前駆体(溶液)を基材表面に適用するための技術は、当技術分野において公知であり、これらの技術としては、バーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、キャピラリーコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング及びスクリーン印刷が挙げられる。コーティングされたハードコート前駆体は、UV重合又は熱重合を含む、当技術分野において公知の重合方法によって、乾燥させ硬化させることができる。
【0049】
例示的実施形態
1A.紫外線吸収ハードコートであって、
結合剤(例えば、UV硬化アクリレート又は熱硬化アクリレート)、及び
ハードコートの総重量を基準として、1~90(いくつかの実施形態では、5~90、10~90、25~90、40~90、50~90、50~80、又は60~80)重量%の範囲のZnOナノ粒子の混合物を含み、ZnOナノ粒子の少なくとも一部(いくつかの実施形態では、粒子の数の少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100パーセント)が、L-リシンで表面改質されており、かつその上にシリカコーティングを有する、紫外線吸収ハードコート。
【0050】
2A.ZnOナノ粒子自体(すなわち、コーティングを欠く粒子)が、約10nm~100nm(いくつかの実施形態では、25nm~100nm、25nm~80nm、50nm~80nm、又は60nm~80nm)の範囲の粒径を有する、例示的実施形態1Aの紫外線吸収ハードコート。
【0051】
3A.シリカコーティングが、少なくとも2nm(いくつかの実施形態では、少なくとも3nm、4nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、又は少なくとも50nm、いくつかの実施形態では、2nm~50nm、2nm~25nm、又は2nm~10nmの範囲)の平均厚さを有する、先行するAの例示的実施形態のいずれか一項に記載のハードコート。
【0052】
4A.シリカコーティングが、表面改質されている(例えば、シランカップリング剤により)、先行するAの例示的実施形態のいずれか一項に記載のハードコート。
【0053】
5A.3%未満のヘイズ値及び0.2%未満のΔヘイズ値(実施例に記載の試験によって決定される)を有する、先行するAの例示的実施形態のいずれか一項に記載のハードコート。
【0054】
6A.
表面を有する基材、及び
基材の表面上に配置された、先行するAの例示的実施形態のいずれか一項に記載のハードコートを含む、ハードコート層
を含む物品。
【0055】
7A.基材がフィルムである、例示的実施形態6Aに記載の物品。
【0056】
8A.基材がポリマープレートである、例示的実施形態6Aに記載の物品。
【0057】
9A.基材とハードコート層との間にプライマー層を更に含む、例示的実施形態6A~8Aのいずれか一項に記載の物品。
【0058】
1B.紫外線吸収ハードコート前駆体であって、
結合剤前駆体(例えば、UV硬化性アクリレート又は熱硬化性アクリレート)、及び
ハードコート前駆体の総重量を基準として、1~90(いくつかの実施形態では、5~95、5~90、25~90、40~90、50~90、50~80、又は60~80)重量%の範囲のZnOナノ粒子の混合物を含み、ZnOナノ粒子の少なくとも一部(いくつかの実施形態では、粒子の数の少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100パーセント)が、L-リシンで表面改質されており、かつその上にシリカコーティングを有する、紫外線吸収ハードコート前駆体。
【0059】
2B.ZnOナノ粒子自体(すなわち、コーティングを欠く粒子)が、約10nm~100nm(いくつかの実施形態では、25nm~100nm、25nm~80nm、50nm~80nm、又は60nm~80nm)の範囲の平均粒径を有する、例示的実施形態1Bに記載の紫外線吸収ハードコート前駆体。
【0060】
3B.シリカコーティングが、5nm~50nm(いくつかの実施形態では10nm~40nm)の範囲の平均厚さを有する、例示的実施形態1B又は2Bに記載の紫外線吸収ハードコート前駆体。
【0061】
4B.シリカコーティングが、表面改質されている(例えば、シランカップリング剤により)、先行するBの例示的実施形態のいずれか一項に記載の紫外線吸収ハードコート前駆体。
【0062】
5B.シリカコーティングが、少なくとも2nm(いくつかの実施形態では、少なくとも3nm、4nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、又は少なくとも50nm、いくつかの実施形態では、2nm~50nm、2nm~25nm、又は2nm~10nmの範囲)の平均厚さを有する、先行するBの例示的実施形態のいずれか一項に記載のハードコート。
【0063】
6B.
表面を有する基材、及び
基材の表面上に配置された、先行するBの例示的実施形態のいずれか一項に記載のハードコート層
を含む物品。
【0064】
7B.基材がフィルムである、例示的実施形態6Bに記載の物品。
【0065】
8B.基材がポリマープレートである、例示的実施形態6Bに記載の物品。
【0066】
9B.基材と紫外線吸収ハードコート前駆体層との間にプライマー層を更に含む、例示的実施形態6B~8Bのいずれか一項に記載の物品。
【0067】
本発明の利点及び実施形態は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【0068】
材料
別途注記のない限り、実施例及び本明細書の他の部分における全ての部、百分率、比率等は、重量によるものである。下記の表1は、使用する略称、並びに下記の実施例及び比較例で使用された材料の出所を示している。
【表1】
【0069】
***直径20nmのZnOゾル(「NANOBYK-3820」)及び直径96nmのZnOゾル(「AQ-3913」)の製造元は、ZnOナノ粒子の平均粒径はそれぞれ20nmと96nmであると明示しているが、これらの(入手直後の)製品を透過型電子顕微鏡(TEM)(モデルH-8100、日立(東京))で分析したところ、ZnOナノ粒子の実際の平均サイズは、「NANOBYK-3820」ZnOゾルではより大きく(約70nm)、「AQ-E3913」ZnOゾル(10~70nm)ではより小さいことが判明した。以下に記載した実施例及び比較例で使用した「入手直後の」ZnOナノ粒子のTEMデジタル顕微鏡写真を、
図1A(「NANOBYK-3820」ZnOゾル)及び
図1B(「AQ-E3913」ZnOゾル)に示す。
方法
光学特性の決定方法
実施例及び比較例に従って調製された試料のヘイズ及びパーセント透過率(TT)などの光学特性は、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社(東京)から商品名「NDH5000W」で入手)を使用して測定した。光学特性の決定は、調製直後の試料に対して行い(すなわち、初期光学特性)、かつ試料をスチールウール耐摩耗性試験及び促進耐候試験に供した後に行った。「ヘイズ試験」により、試料をスチールウール耐摩耗性試験及び促進耐候性試験に供する前後のヘイズ値の差を比較した。
【0070】
スチールウール耐摩耗性の決定方法
実施例及び比較例に従って調製された試料の引掻き抵抗性を、350グラム荷重及び60サイクル/分の速度で、10サイクル又は100サイクル後に、直径30mmの#0000スチールウールを用いたスチールウール摩耗試験後の表面変化によって評価した。ストロークは長さ85mmであった。試験に使用した機器は、磨耗試験機(株式会社井元製作所(京都)から商品名「IMC-157C」で入手)であった。スチールウール耐摩耗性試験が完了した後、掻き傷の存在及びそれらの光学特性(パーセント透過率、ヘイズ)について試料を観察した。上記の方法を用いて、Δヘイズ(すなわち、摩耗試験後のヘイズから初期ヘイズを差し引いたもの)を再度測定した。
【0071】
下記の表2に記載した通り、掻き傷の存在を評価した。
【表2】
【0072】
コーティングと基材との界面における接着力の決定方法
実施例及び比較例に従って調製した試料の接着性能を、JIS K5600(1999年4月)に従ったクロスカット試験により評価した。試験では、1mmの間隔を有する5×5の格子(すなわち25個の1mm×1mmの正方形)及びテープ(日東電工株式会社(大阪)から商品名「ニチバン」で入手)を使用した。
【0073】
UV吸収特性の決定方法
その開示内容が参照により本明細書に組み込まれるJIS A 5759(2008)に従い、UV-Vis分光器(株式会社日立ハイテクノロジーズ(東京)から商品名「U-4100」で入手)によって、200nm~800nmの範囲で、UV吸収特性を評価した。
【0074】
光触媒活性の評価方法
紫外線(UV)光(365nm、4mW/cm2)の照射下で、水中でのメチレンブルー(MB)の光触媒分解を測定することによって、光触媒活性を評価した。用いたMB濃度は5mg/Lであり、SiO2コーティングZnOナノ粒子が1重量%であった。分解実験では、照射前に、水溶液を暗所で30分間連続的に撹拌して、吸着/脱着平衡を確保した。MBの平衡濃度を光分解プロセスの初期値として使用した。いくつかの中間体がMB分解中に形成され、そしてMB及びその分解中間体の主要吸収帯は約665nmであった。SiO2コーティングZnOナノ粒子とZnOナノ粒子の光触媒活性を調べるために、本研究における吸収変化に従ってMBの鉱化作用を評価した。脱イオン水を基準とする液体キュベット構成で(665nmにて)UV-Vis分光光度計を用いて、アリコート溶液の吸光度を測定することにより、MBの分解をモニタした。
【0075】
L-リシン改質ZnOゾル(ゾル-1)の調製
ガラスジャー内の20グラムのZnOゾル(「NANOBYK-3820」)と20グラムのエタノールの混合物に、0.146グラムのL-リシンを、室温で10分間撹拌しながら添加した。ジャーを密封し、60℃で16時間撹拌しながら油浴中に置き、これにより、平均サイズ20nmのL-リシンを有する表面改質ZnOナノ粒子を含有するZnOゾル(本明細書ではゾル-1と称する。)を得た。
【0076】
L-リシン改質ZnOゾルを用いたSiO2コーティングZnOゾル(ゾル-2)の調製
所望量(下記実施例1に記載の通り、2.552、5.104、又は10.208グラム)のTEOSを、室温で10分間撹拌しながらゾル-1に添加した。次いで、混合物を密閉円筒形ポリテトラフルオロエチレン裏打ちステンレス鋼製オートクレーブに移し、150℃で6時間加熱し、それによりSiO2コーティングZnOゾル(本明細書ではゾル-2と称する。)を得た。
【0077】
水熱法により非表面改質ZnOゾルを用いたSiO2コーティングZnOゾルの調製(ゾル-3)
20グラムのZnOゾル(「NANOBYK-3820」)、20グラムのエタノール、及び5.104グラムのTEOSを、ガラスジャー内で室温にて10分間撹拌しながら混合した。次いで、混合物を密閉円筒形ポリテトラフルオロエチレン裏打ちステンレス鋼製オートクレーブに移し、150℃で6時間加熱し、それによりSiO2コーティングZnOゾル(本明細書ではゾル-3と称する。)を得た。
【0078】
ゾル-2を使用した改質SiO2コーティングZnO(ゾル-4)の調製
ガラスジャー内で、室温にて10分間撹拌しながら、1.254グラムの3-メタクリロキシプロピル-トリメトキシシラン(「A-174」)及び0.025グラムの4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(「PROSTAB」)をゾル-2に添加した(TEOSの量は5.104グラムであった)。ジャーを密封し、60℃で16時間、オーブン内に置いた。次に、20グラムの1-メトキシ-2-プロパノールを添加し、60℃でロータリーエバポレーターを使用して、溶液の固形分重量%が約40重量%になるまで、得られた溶液から水及びエタノールを除去した。得られた溶液に20グラムの1-メトキシ-2-プロパノールを投入し、次いで、60℃で、ロータリーエバポレーターを使用して、残存する水を除去した。この後者の工程を、溶液から水を更に除去するために2回繰り返した。全ZnOナノ粒子の最終濃度を40重量%に調整し、これにより3-メタクリロキシプロピル-トリメトキシシラン改質SiO2コーティングZnOゾル(本明細書ではゾル-4と称する。)を得た。
【0079】
L-リシン改質ZnOゾル(ゾル-5)の調製
ZnOゾル(「NANOBYK-3820」)ではなくZnOゾル(「AQ-E3913」)を使用したこと、及びL-リシンの量が0.073グラムであったことを除き、ゾル-1について記載されているように、L-リシン改質を行った(本明細書ではゾル-5と称する)。
【0080】
L-リシン改質ZnOゾルを用いたSiO2コーティングZnOゾル(ゾル-6)の調製
20グラムの水とエタノールの混合溶液(水:エタノール=1:1(重量%))を、20グラムのゾル-5に添加した。次に、5.104グラムのTEOSを、室温で10分間撹拌しながら上記の溶液に添加した。次いで、混合物を密閉円筒形ポリテトラフルオロエチレン裏打ちステンレス鋼製オートクレーブに移し、150℃で6時間加熱し、それによりSiO2コーティングZnOゾル(本明細書ではゾル-6と称する。)を得た。
【0081】
ゾル-6を使用した改質SiO2コーティングZnO(ゾル-7)の調製
ゾル-6を使用して、ゾル-4について記載されているように、3-メタクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン(「A-174」)改質を行った。全ZnOナノ粒子の最終濃度を20重量%に調整し、それにより3-メタクリロキシプロピル-トリメトキシシラン(「A-174」)改質SiO2コーティングZnOゾル(本明細書ではゾル-7と称する。)を得た。
【0082】
改質ZnOゾル(ゾル-8)の調製
ガラスジャー内で、室温にて10分間撹拌しながら、1.254グラムの3-メタクリロキシプロピル-トリメトキシシラン(「A-174」)及び0.025グラムの4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(「PROSTAB」)を、20グラムのZnOゾル(「AQ-E3913」)と22.5グラムの1-メトキシ-2-プロパノールの混合物に添加した。ジャーを密封し、90℃で16時間、オーブン内に置いた。次いで、60℃でロータリーエバポレーターを使用して、溶液の固形分重量%が約40重量%になるまで、得られた溶液から水を除去した。得られた溶液に20グラムの1-メトキシ-2-プロパノールを投入し、次いで、60℃で、ロータリーエバポレーターを使用して、残存する水を除去した。この後者の工程を、溶液から水を更に除去するために2回繰り返した。全ZnOナノ粒子の最終濃度を40重量%に調整し、これにより表面改質ZnOナノ粒子を含有するZnOゾル(本明細書ではゾル-8と称する。)を得た。
【0083】
コーティング前駆体溶液(C-1)の調製
3.75グラムのゾル-4と、0.5グラムの三官能性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(「SR368」)を混合した。0.06グラムの二官能性α-ヒドロキシケトン(「ESACURE ONE」)を、光開始剤として混合物に添加した。1-メトキシ-2-プロパノールを添加することにより、混合物を20固形分重量%に調整した。最後に、0.02グラムのシリコーンポリエーテルアクリレート(「TEGO RAD 2250」)を混合物に添加してコーティング前駆体溶液C-1を得た。
【0084】
コーティング前駆体溶液(C-2)の調製
5グラムのゾル-7と、1.25グラムの「KRM8530」を混合した。0.04グラムの二官能性α-ヒドロキシケトン(「ESACURE ONE」)及び0.04グラムのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(「IRGACURE 819」)を、光開始剤として混合物に添加した。1-メトキシ-2-プロパノールを添加することにより、混合物を20固形分重量%に調整した。最後に、0.006グラムのシリコーンポリエーテルアクリレート(「TEGO RAD 2250」)を混合物に添加してコーティング前駆体溶液C-2を得た。
【0085】
コーティング前駆体溶液(C-3)の調製
7.5グラムのゾル-7と、0.625グラムの「KRM8530」を混合した。0.04グラムの二官能性α-ヒドロキシケトン(「ESACURE ONE」)及び0.04グラムのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(「IRGACURE 819」)を、光開始剤として混合物に添加した。1-メトキシ-2-プロパノールを添加することにより、混合物を20固形分重量%に調整した。最後に、0.006グラムのシリコーンポリエーテルアクリレート(「TEGO RAD 2250」)を混合物に添加してコーティング前駆体溶液C-3を得た。
【0086】
コーティング前駆体溶液(C-4)の調製
9グラムのゾル-7と、0.25グラムの「KRM8530」を混合した。0.04グラムの二官能性α-ヒドロキシケトン(「ESACURE ONE」)及び0.04グラムのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(「IRGACURE 819」)を、光開始剤として混合物に添加した。1-メトキシ-2-プロパノールを添加することにより、混合物を20固形分重量%に調整した。最後に、0.006グラムのシリコーンポリエーテルアクリレート(「TEGO RAD 2250」)を混合物に添加してコーティング前駆体溶液C-4を得た。
【0087】
コーティング前駆体溶液(C-5)の調製
3.75グラムのゾル-8と、0.625グラムの「KRM8530」を混合した。0.04グラムの二官能性α-ヒドロキシケトン(「ESACURE ONE」)及び0.04グラムのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(「IRGACURE 819」)を、光開始剤として混合物に添加した。1-メトキシ-2-プロパノールを添加することにより、混合物を20固形分重量%に調整した。最後に、0.006グラムのシリコーンポリエーテルアクリレート(「TEGO RAD 2250」)を混合物に添加してコーティング前駆体溶液C-5を得た。
【0088】
下記の表3に、C-1、C-2、C-3、C-4、及びC-5コーティング前駆体溶液の組成をまとめる。
【表3】
【0089】
ベースナノ粒子充填ハードコート層のコーティング及び硬化
50マイクロメートル厚のPETフィルム(「LUMIRROR U32」又は「A4100」、50マイクロメートル)をガラステーブル上にレベル調整して固定し、次いで、メイヤーロッド#8を使用してコーティング前駆体溶液を基材上にコーティングした。空気中で60℃にて5分間乾燥させた後、コーティングされた基材を窒素ガス下でUV照射器(Heraeus Noblelight America LLC,Buford,GAのH-バルブ又はD-バルブ、モデルDRS)に2回通した。コーティング済み試料表面に900mJ/cm2、700mW/cm2の紫外線(UV-A)が照射されたと概算した。
【実施例】
【0090】
実施例1(Ex-1)
実施例1はゾル-2であった。
【0091】
実施例2(Ex-2)
実施例2はゾル-6であった。
【0092】
実施例3(Ex-3)
前駆体溶液(C-1)を、メイヤーロッド#8によりPETフィルム(「LUMIRROR U32」、50マイクロメートル)上にコーティングした。コーティングは1.5マイクロメートルの概算乾燥厚さを有していた。オーブン温度を60℃に設定した。空気中で60℃にて5分間乾燥させた後、「ベースナノ粒子充填ハードコート層のコーティング及び硬化」に記載されているように、フィルムをUV(H-バルブ)によって硬化させた。
【0093】
実施例4(Ex-4)
C-1の代わりにC-2をPETフィルム(「A4100」、50マイクロメートル)上にコーティングし、硬化のためにD-バルブを使用したことを除いて、実施例3について記載したように、実施例4を調製した。
【0094】
実施例5(Ex-5)
C-1の代わりにC-3をPETフィルム(「A4100」、50マイクロメートル)上にコーティングし、硬化のためにD-バルブを使用したことを除いて、実施例3について記載したように、実施例5を調製した。
【0095】
実施例6(Ex-6)
C-1の代わりにC-4をPETフィルム(「A4100」、50マイクロメートル)上にコーティングし、硬化のためにD-バルブを使用したことを除いて、実施例3について記載したように、実施例6を調製した。
【0096】
実施例7(Ex-7)
メイヤーロッド#12をコーティングに使用したことを除いて、実施例5について記載したように、実施例7を調製した。
【0097】
実施例8(Ex-8)
メイヤーロッド#16をコーティングに使用したことを除いて、実施例5について記載したように、実施例8を調製した。
【0098】
実施例9(Ex-9)
メイヤーロッド#30をコーティングに使用したことを除いて、実施例5について記載したように、実施例9を調製した。
【0099】
比較例A(CE-A)
比較例Aはゾル-3であった。
【0100】
比較例B(CE-B)
比較例Bは未加工PETフィルム(「LUMIRROR U32」、50マイクロメートル)であった。
【0101】
比較例C(CE-C)
比較例Cは未加工PETフィルム(「A4100」、50マイクロメートル)であった。
【0102】
比較例D(CE-D)
C-1の代わりにC-5をPETフィルム(「A4100」、50マイクロメートル)上にコーティングしたことを除いて、実施例4について記載したように、比較例Dを調製した。
【0103】
比較例Aは、水熱反応後に固化したため、それ以上処理することはできなかった。
【0104】
実施例1の粒径及び形態を透過型電子顕微鏡(TEM)によって評価した。
【0105】
図2は、5.104グラムのTEOSを使用することによって調製した実施例1(すなわち、ゾル-2)の低倍率TEM画像を示す。SiO
2は、凝集することなくZnO上に適切にコーティングされた。SiO
2層は数nmの厚さであり、TEM顕微鏡写真で明瞭に観察することができた。
【0106】
図3A、
図3B、及び
図3Cは、様々な量のTEOSを使用することによって調製した実施例1(すなわち、ゾル-2)の低倍率TEM画像を示す。反応系中のTEOS濃度を変えることによって、SiO
2層の厚さも適切に制御された。反応系中の2.552、5.104、及び10.208グラムのTEOSにより、それぞれ2nm(
図3A)、4nm(
図3B)、及び8nm(
図3C)のSiO
2の厚さを得た。この結果は、SiO
2の前駆体がZnO表面で優先的に反応したことを示した。理論に拘束されることを望むものではないが、L-リシンがSiO
2の適切なコーティングを促進するのに役立ったと考えられた。
【0107】
図4A及び
図4Bは、入手直後のZnOゾル(「AQ-E3913」)TEM画像(
図4A)を示し、実施例2(
図4B)は、実施例2(すなわち、ゾル-6)がSiO
2でZnO上に適切にコーティングされたことを示す。
【0108】
図5は、実施例1の透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光分析(TEM-EDS)マッピング結果を示す。SiはZnOナノ粒子上に明瞭に検出され、他の場所はほとんど検出されず、SiO
2がZnOナノ粒子上に適切にコーティングされたという結論を支持している。
【0109】
上記の方法を用いて、実施例1及び比較例Aを、光触媒活性について試験した。
【0110】
図6は、UV光照射下での実施例1及び比較例Aを触媒として使用することによるMB溶液の光分解曲線、及びUV照射後のZnOナノ粒子を含んだMB溶液の外観を示す。UV光(365nm)照射により、約665nmでのMBの特徴的吸収は徐々に減少し、入手直後のZnOを触媒として使用することにより、最終的に9時間以内にほとんど消失した(CE-A)。一方、実施例1では、比較例Aに比べて分解速度がはるかに遅かった。MB溶液の外観は色の違いを明確に示していた。比較例Aのゾルの青色は徐々に白色になり、そして6時間でほぼ白色になったが、その間、実施例1の外観にはほとんど変化がなかった。この結果は、SiO
2コーティングがZnOの光触媒活性を抑制するのに有効であることを示した。
【0111】
上記の方法を用いて、実施例3、4、5、6、7、8、及び9並びに比較例B、C、及びDを、それらのUV吸収性能、光学特性、及び耐久性について試験した。
【0112】
図7は、実施例3及び比較例BのUV-Visスペクトルを示す。実施例2のUVカット率は79.0%であり、比較例BのUVカット率は12.35%であった。
図8は、実施例5、7、8、及び9並びに比較例CのUV-visスペクトルを示す。実施例5、7、8、及び9のUVカット率は、それぞれ61.73%、72.83%、84.57%、及び91.48%であり、比較例CのUVカット率は17.39%であった。
【0113】
下記の表4は、スチールウール摩耗試験後の、実施例3、4、5、6、7、8及び9並びに比較例B、C及びDの初期光学特性並びに耐久性をまとめたものである。
【表4】
【0114】
全ての実施例は、100サイクル後のスチールウール摩耗試験後に0.2%未満のΔヘイズで維持することができたが、全ての比較例ははるかに高い値を示したことに留意されたい。実施例3の引掻き評点は1であり、他の実施例は0であり、全ての比較例は4であった。実施例4、5、6、7、8、及び9は優れたスチールウール耐摩耗性を示し、掻き傷は観察されなかった。
【0115】
更に、接着性能試験後の全ての実施例において剥離及び亀裂はほとんど観察されず、実施例2のコーティングはPET基材への優れた接着性を有するという結論を得た。
【0116】
本開示の予見可能な修正及び変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者にとって明らかであろう。本発明は、例示目的で本出願に記載された実施形態に限定されるべきではない。