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特許7030123注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置
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  • 特許-注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置 図1
  • 特許-注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置 図2
  • 特許-注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置 図3
  • 特許-注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置 図4
  • 特許-注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置 図5
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  • 特許-注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置 図7
  • 特許-注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置 図8a
  • 特許-注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置 図8b
  • 特許-注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置 図8c
  • 特許-注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】注射装置用の針カニューレ、注射針組立品、およびこうした組立品を含む注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/34 20060101AFI20220225BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A61M5/34
A61M5/20 510
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019535809
(86)(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017084696
(87)【国際公開番号】W WO2018122295
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】16207643.4
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】トネセン, レネ ウェスターガード
(72)【発明者】
【氏名】ピーダスン, イーレク
(72)【発明者】
【氏名】ラウストスン, アイナ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05716348(US,A)
【文献】登録実用新案第3030963(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0188247(US,A1)
【文献】国際公開第2015/197866(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/116614(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/34
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延在する、注射装置用の細長い管状針カニューレ(130)であって、
- 皮膚穿孔遠位端(133b)と、
- 前記皮膚穿孔遠位端(133b)の軸方向に反対側に配置された近位端(133a)であって、用カートリッジ(102)のシール構造(102b)を貫通するように構成される近位端と、
- 前記皮膚穿孔遠位端(133b)と前記近位端(133a)との間に延在する側壁と、
- 前記中心軸に沿って前記針カニューレ(130)を貫通する内腔であって、前記内腔が前記皮膚穿孔遠位端(133b)で軸方向に配置された第一の開口部および前記近位端(133a)で軸方向に配置された第二の開口部を有し、前記近位端(133a)が近位に向いている角度付けられた表面(134)によって画定され、前記角度付けられた表面(134)が先導部分(134.1)を画定する最近位点で前記側壁と交差し、かかと部分(134.2)を画定する対向して配置された後続部分で前記側壁と交差する、内腔と、を備え、
近位に向いている前記角度付けられた表面(134)が、前記中心軸に対して50~75度の間の角度(α1)を形成する前記かかと部分(134.2)における表面部分(134a、134b)を含み、前記中心軸に対して60~85度の間の角度(α2)を形成する前記先導部分(134.1)における表面部分(134c)をさらに含
前記先導部分の角度(α2)が前記かかと部分の角度(α1)より大きい、
細長い管状針カニューレ。
【請求項2】
前記かかと部分(134.2)における前記表面部分(134a、134b)が、前記角度付けられた表面(134)の少なくとも20%を画定し、前記先導部分(134.1)における前記表面部分(134c)が前記角度付けられた表面(134)の少なくとも30%を画定する、請求項1に記載の細長い管状針カニューレ。
【請求項3】
前記角度付けられた表面(134)が、前記側壁と交差して、半径方向内向きの周縁および半径方向外向きの周縁を画定し、前記半径方向内向きの周縁および/または前記半径方向外向きの周縁が、前記かかと部分(134.2)の周りに対称的に配置された環状セクションに沿って鈍くされ、前記環状セクションが、00~220度以内または140~190度以内の環状幅を有する、請求項1又は記載の細長い管状針カニューレ。
【請求項4】
前記先導部分(134.1)に配置された縁が鋭くなっている、請求項1から3のいずれかに記載の細長い管状針カニューレ。
【請求項5】
前記先導部分(134.1)表面部分(134c)の前記中心軸に対する角度(α2)が、記かかと部分(134.2)表面部分(134a、134b)の前記中心軸に対する角度(α1)よりも5~10度大きい、請求項1~4のいずれかに記載の細長い管状針カニューレ。
【請求項6】
前記かかと部分(134.2)表面部分(134a、134b)が前記中心軸に対して55~70度の間の角度(α1)を成す、請求項1~5のいずれかに記載の細長い管状針カニューレ。
【請求項7】
前記針カニューレ(130)が皮下注射用に構成され、前記針カニューレ(130)が26G針以、27G針以下、28G針以下、29G針以下または30G針以下である、請求項1~6のいずれかに記載の細長い管状針カニューレ。
【請求項8】
前記針カニューレ(130)の前記側壁が、前記第一の開口部と前記第二の開口部以外の開口部を含まない細長い管状エンクロージャを形成する、請求項1~7のいずれかに記載の細長い管状針カニューレ。
【請求項9】
注射装置用の注射針組立品(150)であって
針ハブ(140)と、
- 請求項1~8のいずれかに記載の細長い管状針カニューレ(130)と、
- 第一の針カバー(110a)
備え、
前記針ハブ(140)が、前記針カニューレの遠位部分が前記針ハブ(140)から遠位に延在し、前記針カニューレの近位部分が前記針カニューレ(130)の前記近位端(133a)に向かって前記針ハブから近位に延在するように、前記皮膚穿孔遠位端(133b)と前記近位端(133a)との間に前記針カニューレ(130)を保持し、
前記第一の針カバー(110a)が前記針ハブ(140)上に取り付けられ、前記針カニューレ(130)の前記近位部分を密封する軸方向に延在する細長い可撓性のエンクロージャを形成し、前記第一の針カバー(110a)が前記針ハブ(140)に対して取り付けられた針ハブ端および前記針カニューレ(130)の前記近位端(133a)を越えて延在する自由端を有し、遠位に向けられた貫通力が前記第一の針カバー(110a)の前記自由端に加えられて、前記第一の針カバーの前記自由端を前記針ハブ(140)に向かって付勢するとき、前記第一の針カバー(110a)が軸方向に陥没し前記針カニューレ(130)の前記近位部分によって貫通されるよう構成される、注射針組立品(150)。
【請求項10】
前記第一の針カバー(110a)がシリコーンゴムから作製される、請求項9に記載の注射針組立品(150)。
【請求項11】
前記注射針組立品(150)が、第二の針カバー(110b)をさらに備え、前記第二の針カバー(110b)が前記針ハブ(140)上に取り付けられ、前記針カニューレ(130)の前記遠位端を密封する軸方向に延在する細長い可撓性のエンクロージャを形成し、前記第二の針カバー(110b)が前記針ハブ(140)に対して取り付けられた針ハブ端および前記針カニューレ(130)の前記遠位端(133b)を越えて延在する自由端を有し、近位に向けられた貫通力が前記第二の針カバー(110b)の前記自由端に加えられて、前記第二の針カバー(110b)の前記自由端を前記針ハブ(140)に向かって付勢するとき、前記第二の針カバー(110b)が軸方向に陥没し、前記針カニューレ(130)の前記遠位部分により貫通されるように構成される、請求項9または0に記載の注射針組立品(150)。
【請求項12】
注射装置(100)であって、
- 遠位薬物排出端および反対側近位端を画定するハウジング(106)と、
請求項9~11のいずれかに記載の注射針組立品(150)であって、前記針カニューレ(130)の位端(133a)が前記ハウジング(106)の近位端の方を向くようにして前記ハウジング(106)に対して配置された、注射針組立品と、
- 薬剤を含む薬剤用カートリッジ(102)であって、前記針カニューレ(130)の前記中心軸と同軸上に配置された長軸方向軸に沿って延在する円筒形本体を含み、前記針カニューレ(130)の前記近位部分によって貫通されて薬剤用カートリッジ(102)からの薬剤の排出を可能にするシール構造(102b)をさらに備え、前記第一の針カバー(110a)およびシール構造(102b)が前記針カニューレ(130)によって貫通されていない第一の状態から前記針カニューレ(130)の前記近位部分によって貫通されている第二の状態に動するために前記注射針組立品(150)に対して軸方向に移動可能に配置されている、薬剤用カートリッジと、
- 前記薬剤用カートリッジに作用するように圧縮されたばねを含む排出組立品と、を備え、
前記排出組立品(7)、前記圧縮されたばねによって前記薬剤用カートリッジ(102)を前記第一の状態から前記第二の状態へと移動できるように作動可能である、注射装置(100)。
【請求項13】
前記排出組立品(7)の作動時に、前記針カニューレ(130)の前記近位部分が、前記針カニューレ(130)と前記シール構造(102b)との間の相対的な回転を伴わない相対軸移動によって、前記薬剤用カートリッジ(102)の前記シール構造(102b)を貫通する、請求項12に記載の注射装置(100)。
【請求項14】
前記注射針組立品(150)は請求項11に記載の第二の針カバー(110b)を備え、前記注射装置前記第二の針カバー(110b)を遮蔽するように配置された針シールド(105)を備え、前記針シールド(105)および前記注射針組立品(150)、前記針カニューレ(130)の前記遠位部分が前記第二の針カバー(110b)を貫通し、前記針カニューレ(130)の前記遠位部分前記針シールド(105)の遠位端部分を越えて延伸できるよう互いに対して軸方向に移動するように配置される、請求項12又は13記載の注射装置(100)。
【請求項15】
前記薬剤用カートリッジ(102)の前記シール構造(102b)、非スリットのカートリッジ隔壁を構成するか、またはそれを含む、請求項12~14のいずれかに記載の注射装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針カニューレ、注射針組立品およびこうした注射針組立品を含む薬剤を注入するための注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器の開発内では、安全な装置を開発することが主な焦点である。また、医療機器は可能な限り単純でユーザーフレンドリであることも特に懸念される。自動インジェクタなどの医療用注射器では、針の取り扱いがないまたはそれにほとんど関与しないことを目指している。使用する前に、針を滅菌しておく必要がある。
【0003】
一部の注射装置では、針は、針自体の周りに滅菌バリアを維持する針カバー、例えば弾性穿孔可能針カバーによって保護される。こうした針カバーは、針組立品を形成するために針と一緒に組み立てられることがよくある。WO2015/197866A1号およびWO2016/116614A1号は、一対の可撓性の穿孔可能な針を組み込む医薬インジェクタを開示しており、これは使用前に前針および後部針を滅菌状態で維持する。滅菌バリアとして可撓性の穿孔可能な針カバーを使用することによって、針は、滅菌バリアを貫通することができ、それによって実際の注入手順を開始する前に針カバーを取り外す必要性をなくすことができる。これにより、針の取扱いを大幅に容易にする。
【0004】
隔壁を装備したカートリッジおよび初期使用時に隔壁を貫通して流体連通を確立する別個の針を使用するとき、隔壁のコアリングが起こるリスクがある。米国特許第2,716,983号は、針チップがコアリングを防止する設計を備える様々な穿孔用針を開示している。さらに、米国特許第5,716,348号は、円筒形壁が後方の開口部から間隔を置いた横方向に面する開口部を持つ針を開示し、制限は後方開口部と横方向に面する開口部の間に配置される。米国特許第5,709,668号は、カニューレの内部針先端によって貫通された時、ゴムシールまたは隔壁のコアリングを最小化または除去するための側面ポート形状を持つノンコアリングニードルを使用する自動インジェクタを開示している。
【0005】
上述の従来技術の装置に関して、針カニューレの設計がリスクを最小化する改善された針カニューレを提供し、こうした針カニューレを含む注射針組立品およびこうした注射針組立品を備える注射装置を提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0006】
第一の態様では、本発明は、注射装置用の針カニューレに関連し、細長い管状針カニューレは中心軸に沿って延在し、
- 皮膚穿孔遠位端と、
- 薬剤容器のシール構造を貫通するように構成されている、皮膚穿孔遠位端の軸方向に対向して配置された近位端と、
- 皮膚穿孔遠位端と近位端との間に延在する側壁と、
- 角度付けられた表面が先導部分を画定する最近位点で側壁と交差しかかと部分を画定する対向して配置された後続部分で側壁と交差し、皮膚穿孔遠位端で軸方向に配置された第一の開口部および概して近位に向いている角度付けられた表面により確定される近位端に軸方向に配置された第二の開口部を有する、中心軸に沿って針カニューレを貫通する内腔と、を含む。
【0007】
概して近位に向いている角度付けられた表面は、かかと部分に第一の表面部分を含み、第一の表面部分は、中心軸に対して50~75度の間の角度(α1)を形成する表面積を含む。概して近位に向いている角度付けられた表面は、先導部分に第二の表面部分を含み、第二の表面部分は、中心軸に対して60~85度の間の角度(α2)を形成する表面積を含む。
【0008】
第一の態様によれば、針カニューレは、針カニューレの先導部分でわずかに角度付けられた傾斜面が、針カニューレの先導部分が針カニューレに形のはっきりした接触点を設けて、協働密封要素との接続を確立できるような方法で、協働密封要素の貫通を可能にする。同時に、かかと部分における第一の表面部分は、かかと部分に対してかなり遠く延在する、針カニューレの先導部分で角度付けられた傾斜面よりも小さい角度(α1)を形成する表面積を含む。これにより、かかと部分が密封要素に無理に侵入する前に、前記リード部分が封止要素を穿刺または破壊することを可能にする。したがって、特定の安全な貫通により、貫通中の密封要素の剥がしのリスクをなくすまたはほんのわずかにすることが可能である。
【0009】
実施形態によっては、中央軸に対して50~75度の間で角度(α1)を形成する第一の表面部分の表面積は、その角度付けられた表面の総面積の少なくとも20%を構成する。また、実施形態によっては、中央軸に対して60~85度の間で角度(α2)を形成する第二の表面部分の表面積は、その角度付けられた表面の総面積の少なくとも30%を構成する。
【0010】
さらなる実施形態において、その角度付けられた表面は、側壁と交差し、半径方向内向きの周縁および半径方向外向きの周縁を画定する。半径方向内向きの周縁および/または半径方向外向きの周縁は、実施形態によっては、かかと部分の周りに対称的に配置された環状セクションに沿って鈍い非インサイジング縁部で形成されてもよい。実施形態によっては、こうした鈍い縁を有する環状セクションは、100~220度以内、すなわち、かかと部分からいずれかの円周方向に50~110度以内の環状幅を持ちうる。実施形態によっては、環状セクションは、140~190度以内の環状幅を有してもよい。
【0011】
先導部分に配置された縁部は、これらの縁が鋭くなるように形成されうる。
【0012】
例示的実施形態では、先導部分における表面部分は、かかと部分の表面部分の角度(α1)より5~10度大きい、中心軸に対して角度(α2)を形成する。
【0013】
さらなる例示的な実施形態では、かかと部分における表面部分は中心軸に対して55~70度の間の角度(α1)を形成する。
【0014】
針カニューレは、一部の実施形態では、皮下注射用に構成されてもよく、針カニューレのサイズは26G針以下であり、27G針が好ましく、28G針がより好ましく、29G針がより好ましく、30G針が最も好ましい。
【0015】
さらなる実施形態では、針カニューレの側壁は、第一の開口部および第二の開口部以外の開口部を含まない細長い管状エンクロージャを形成する。
【0016】
第二の態様では、本発明は、注射装置用の針カニューレに関連し、細長い管状針カニューレは中心軸に沿って延在し、
- 皮膚穿孔遠位端と、
- 薬剤容器のシール構造を貫通するように構成されている、皮膚穿孔遠位端の反対側に配置された近位端と、
- 皮膚穿孔遠位端と近位端との間に延在する側壁と、
- 皮膚穿孔遠位端で軸方向に配置された第一の開口部および近位端で軸方向に配置された第二の開口部を有する、中心軸に沿って針カニューレを貫通する内腔と、を備え、
近位端は、近位に向いている角度付けられた表面によって画定され、角度付けられた表面の表面部分の少なくとも60%が、中央軸に対して70度~85度で角度(α)を形成する。
【0017】
第二の態様によれば、針カニューレは、針カニューレのわずかに角度付けられた傾斜面が、針カニューレの先導部分が針カニューレに形のはっきりした接触点を設けて、協働密封要素との接続を確立できるようにする。したがって、特定の安全な貫通により、貫通中の密封要素の剥がしのリスクをなくすまたはほんのわずかにすることが可能である。
【0018】
実施形態によっては、角度付けられた表面の表面部分の少なくとも60%は、中央軸に対して76度~84度の間の角度(α)を形成する。
【0019】
さらなる実施形態では、角度付けられた表面は、先導部分を画定する最近位点で側壁と交差しかかと部分を画定する対向して配置された後続部分で側壁と交差し、かかと部分の角度付けられた表面は、中心軸に対して76度~84度の間が好ましい、中心軸に対して70度~85度の間の角度(α)を形成する。
【0020】
特定の実施形態では、かかと部分は、鈍い縁で形成される。さらなる実施形態では、針カニューレの近位端における全ての周縁は、鈍い縁で形成される。
【0021】
さらなる例示的な実施形態では、針カニューレの近位端の全体的な角度付けられた表面は、中心軸に対して76度~84度の間が好ましい、70度~85度の間で中心軸に対して角度(α)を形成する。
【0022】
実施形態によっては、角度付けられた表面は、単一の平面状の角度を付けられた切断先端として提供されてもよい。
【0023】
針カニューレは、一部の実施形態では、皮下注射用に構成されてもよく、針カニューレのサイズは26G針以下であり、27G針が好ましく、28G針がより好ましく、29G針がより好ましく、30G針が最も好ましい。
【0024】
さらなる実施形態では、針カニューレの側壁は、第一の開口部および第二の開口部以外の開口部を含まない細長い管状エンクロージャを形成する。
【0025】
第三の態様では、本発明は、第一の態様および第二の態様のいずれか一つによる針カニューレを組み込む注射針組立品に関連する。
【0026】
注射針組立品は、
- 針ハブと、
- 第一または第二の態様のいずれかによる細長い管状針カニューレと、
- 第一の針カバーと、を備えるよう形成されてもよく、
針ハブは、針カニューレの遠位部分が針ハブから遠位に延在するように、針カニューレの近位部分が針ハブから針カニューレの近位端に向かって延在するように、皮膚穿孔遠位端と近位端との間に針カニューレを保持し、
第一の針カバーは、針ハブ上に取り付けられ、針カニューレの近位部分を密封する軸方向に延在する細長い可撓性エンクロージャを形成し、針ハブに対して取り付けられる針ハブ端および針カニューレの近位端を越えて延在する自由端を有し、遠位に向けられた貫通力が第一の針カバーの自由端に加えられて、第一の針カバーの自由端を針ハブに向かって付勢するとき、軸方向に陥没し、針カニューレの近位部分により貫通されるように構成される。
【0027】
さらなる実施形態では、注射針組立品は第二の針カバーをさらに備えてもよく、第二の針カバーは針ハブ上に取り付けられ、針カニューレの遠位部分を密封する軸方向に延在する細長い可撓性のエンクロージャを形成し、針ハブに対して取り付けられた針ハブ端および針カニューレの遠位端を越えて延在する自由端を有し、近位に向けられた貫通力が第二の針カバーの自由端に加えられて、第二の針カバーの自由端を針ハブに向かって付勢するとき、軸方向に陥没し、針カニューレの遠位部分により貫通されるように構成される。
【0028】
特定の実施形態では、第一の針カバーおよび/または第二の針カバーは、シリコーンゴムから作製されうる。
【0029】
第四の態様では、本発明は、第三の態様による針組立品を組み込む注射装置に関連する。
【0030】
注射装置は、
- 遠位薬物排出端および反対側近位端を画定するハウジングと、
- ハウジングの近位端の方を向く針カニューレの近位端を備えるハウジングに対して配置された、第三の態様による注射針組立品と、
- 第一の針カバーおよびシール構造が針カニューレによって貫通されない第一の状態から針カニューレの近位部分が第一の針カバーおよびシール構造を貫通している第二の状態にカートリッジを移動するために、注射針組立品に対して軸方向に移動可能に配置されている、針カニューレの中心軸と同軸上に配置された長手方向軸に沿って延在する円筒形本体を含み、カートリッジからの薬剤の排出を可能にする針カニューレの近位部分によって貫通されるよう適合されたシール構造をさらに含む、薬剤を含むカートリッジと、
- カートリッジに作用するように構成された圧縮されたばねを含む排出組立品と、を備えるよう形成されてもよく、
排出組立品は、圧縮されたばねがカートリッジを第一の状態から第二の状態へと移動できるように作動可能である。
【0031】
注射装置は、排出組立品の作動時、針カニューレの近位端が、針カニューレとシール構造との間の相対的な回転を伴わない相対軸移動によって薬剤容器のシール構造を貫通するように構成されうる。
【0032】
実施形態によっては、薬剤容器のシール構造および第一の針カバーは、針カニューレの近位端による貫通中に相互に隣接する。
【0033】
さらなる実施形態では、注射針組立品は、第三の態様に関連して説明したような第二の針カバーを含む。こうした注射装置は、第二の針カバーを遮蔽するように配置された針シールドを備えるように形成されてもよく、針シールドおよび注射針組立品は、針カニューレの遠位部分が第二の針カバーを貫通し、針カニューレの遠位部分が針シールドの遠位端部分を越えて延伸できるよう互いに対して軸方向に移動するように配置されている。
【0034】
さらなる実施形態では、シール構造は、長軸方向軸に実質的に直交する平面内に配置されたカートリッジ隔壁を含む。
【0035】
さらに実施形態によっては、カートリッジのシール構造は、非スリットのカートリッジ隔壁として提供されるか、またはそれを含む。
【0036】
特定の実施形態では、注射装置は、針シールドと注射針組立品との間の相対運動によって起動または誘発される自動インジェクタとして形成される。自動インジェクタは、前方の針に針の前部を覆う第二の針カバーを貫通させ、続いて前方の針を注射部位に挿入するように、針の前部が、針シールドを注射部位に押し付けて、針シールドに対して針を前方に移動する手動力を加えて、針の注射部位に手動で挿入されるように構成されうる。
【0037】
従って、針シールドは、第二の針カバーを針カニューレの遠位部分によって貫通させるために、第二の針カバーに作用するように構成されうる。特定の実施形態では、針シールドは、針カバーに対して軸方向に動かされるときに、第二の針カバーと係合し、それによって針カニューレに対して第二の針カバーの自由端を動かし、針カバーが針カニューレの遠位部分によって貫通される。
【0038】
特定の実施形態では、自動インジェクタは、針カニューレの遠位部分が所定の貫通深さに達するとトリガされるように構成される。こうしたトリガは、ユーザーが自動インジェクタを注射部位に手動で押すことによって促進される。
【0039】
本明細書で使用される場合、「含む/含んでいる/から成る」という用語は、記載された特徴、整数、工程または構成要素の存在を指定するために取られるが、一つ以上の他の特徴、整数、工程、構成要素またはその群の存在または付加を除外しないことを強調すべきである。
【0040】
本明細書で使用される場合、「医薬」という用語は、制御された様式で中空の針またはカニューレなどの送達手段を通過することができる任意の流動性の薬剤を包含することを意味する。流動性薬物の例は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液である。また、投与前に凍結乾燥された薬物は、上記の定義によって包含される液体形態に溶解される。代表的薬剤には、例えば、医薬品、ペプチド、タンパク質(例えば、インスリン、インスリン類似体及びC-ペプチド)、ホルモン、生物由来剤、又は活性薬剤、ホルモン系及び遺伝子系剤、栄養式および固体(分配)又は液体形態の両方の他の物質が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
以下では、本発明を、封入された図面によって示される実施形態を参照しながらより詳細に説明する。図示された実施形態は、例示目的のみに使用され、本発明の範囲を制限するために使用されるべきでないことを強調する必要がある。
図1図1は、初期遮蔽状態である、本発明による針組立品の組み込みに適した注射装置の一例の断面側面図を示す。
図2図2は、針の遠位端が針シールドから完全に突出する状態の図1の注射装置の断面図を示す。
図3図3は、カートリッジが流体送達のために針の近位端に接続されており、かつ排出が開始された状態の図1の注射装置の断面側面図を示す。
図4図4は、針シールドがその元の位置に戻って針を再び遮蔽状態に戻した状態における、図1の注射装置の断面側面図を示す。
図5図5は、本発明による針組立品を組み込んだ注射装置の第一の実施形態の前方部分の断面側面図を示す。
図6図6は、本発明によるこうした針カニューレの近位部分の拡大側面図を示す。
図7図7は、注射針組立品の近位針カバーが見える本発明による針カニューレの近位部分の断面側面図を示す。
図8A図8a、8bおよび8cは、本発明によるさらなる例示的な針カニューレを提供するための製造工程を概略的に示す。
図8B】同上。
図8C】同上。
図9図9は、図8a~8cに示す製造工程によって提供される針カニューレの近位端のさらなる詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1~4は、本発明に関連して使用するのに適した例示的な注射装置の動作状態を図示する。注射装置は、装置の基本的機能を説明するために、四つの異なる動作状態で示されている。図示の装置は、本文書の図1c、2c、3c、および5cに関連してWO2015/197866A1号に開示された装置と全体的に類似している。開示された装置の詳細な説明のため、WO文書を参照する。
【0043】
図示の注射装置は、適切であるが非限定的な例を形成し、本発明の針カニューレおよび注射針組立品は、その他のタイプの注射装置と共に使用できることに留意されたい。図示された注射装置のすべての詳細は、これらの詳細がすでに上記のWO文書に記載されているため、本明細書に詳細に記載されていない。
【0044】
図1~4は、カートリッジ2を含む薬剤、近位端3aおよび遠位端3bを有する針カニューレ3として提供される注射針、針ハブ4、針シールド5、ハウジング6および排出組立品7を備える注射装置1を示す。排出組立品の詳細は、本発明の針組立品が多くの異なるタイプの排出組立品と協働するため、本明細書の一般的な用語でのみ説明される。
【0045】
図示の実施形態では、図1に示す遮蔽状態において、針シールド5の遠位端は、針カニューレの遠位端3bに遠位に配置される。このように、針は針シールドによって完全に遮蔽される。また、現在の実施形態では、針シールド5は、針組立品を完全に包み込む単一の要素であることがわかる。
【0046】
図1から分かるように、針3は、針カニューレの近位端に配置された一つおよび遠位端に配置された一つの、二つの尖端を有する針カニューレとして配置される。針ハブ4は、針カニューレ3の中央部分を握り、それにより、針の遠位端と近位端両方がハブ4に対して軸方向に突出し、すなわち、それぞれ前方の針および後方の針を形成する。図示の実施形態では、ハブ4はハウジング6に対して固定して取り付けられる。使用中、針3aの近位端は、遠位端3bがユーザーの皮膚を穿孔して薬剤をユーザーの身体に注入するように配置される間に、注入される薬剤を含有する容器2と係合するよう配置される。
【0047】
図示の実施形態では、容器2は、カートリッジ内部との流体連通を確立するために針カニューレによって穿孔されるよう適合されたカートリッジ隔壁2bの形態のシール構造によって覆われた遠位に配置された出口を持つ本体2aを備えるカートリッジを形成する。カートリッジの本体は、摺動可能に配置されたピストン2cを収容する。針がカートリッジ隔壁2bを穿孔する状態では、ピストン2cはカートリッジ2から薬剤を分注するために出口に向かって駆動可能である。
【0048】
また、図1から分かるように、針の近位端3aは、可撓性の穿孔可能な針カバーを形成する近位針カバー10aによって覆われており、針3bの遠位端はまた可撓性の穿孔可能な針カバーを形成する遠位針カバー10bによって覆われる。針カバー10aおよび10bはまた、それぞれ後方カバーおよび前方カバーと呼ばれる。同様に、ハブから近位方向に延在する針カニューレの部分は、後方針と呼ばれる一方、ハブから遠位方向に延在する針カニューレの部分は前方針と呼ばれる。図1~4において、針カバー10aおよび10bの形状は、概略的に図示されているだけであることに留意されたい。後方針カバー10aおよび前方針カバー10bは、針が滅菌されるように配置され、その後、針自体が針組立品のさらなる取り扱いによって汚染されないように配置される。
【0049】
図2では、針シールド5は、針の遠位端3bが針シールドの遠位端5bを越えて遠位に延在するように、針ハブ4に対して引き込まれている。このようにして、針3bの遠位端が露出し、ユーザーと流体連通する準備が整う。図2で見ることもできるように、針シールドを引き込む行為によって、遠位針カバー10bが引き戻される。これにより、針の遠位端が針カバーを通して穿孔し、それによって針の遠位端が覆われなくなる。針カバーの可撓性の性質により、針カバーは容易に引き込まれる。
【0050】
図示の実施形態では、針ハブに対して針シールドを引き込む行為は、装置を誘発し、それにより、排出組立品7を起動する。排出組立品は、主に圧縮ばねによって提供される力によって遠位に付勢されるプランジャーから成る。圧縮ばねをトリガする前に、プランジャーが保持機構によって軸方向に保持される予め引張状態にある。トリガすると、プランジャーは軸方向に開放され、圧縮バネから放出されるエネルギーによって前方に押される。次に、プランジャーは、カートリッジ2のピストン2c上に遠位に向けられた力をかける。図示の装置では、排出組立品7のプランジャーは、ハウジング6に対して最初にカートリッジ2を移動させ、その後、カートリッジ2内の薬剤の用量が針組立品50を通って排出されるように、カートリッジ2内のピストン2cを移動させる。図3では、排出組立品7が、針の近位端と係合するために、遠位方向前方にカートリッジ2を含む薬剤を押していることがわかる。針の近位端は、カートリッジの隔壁2bを穿刺することによって、カートリッジから針を通り針の遠位端までの流体経路を確立し、それによって薬剤が選択された注射部位でユーザーに注入されうる。図3でも分かるように、近位針カバー10aはまた、カートリッジの針への移動によって圧縮されている。これによって、針の近位端をむき出しにし、それがカートリッジと係合することを可能にする。
【0051】
図4では、排出組立品は、カートリッジ内に配置されたピストン2cを遠位に押し、それによってカートリッジ内の薬剤を針を通して注射部位に注入する。薬剤が注入された後、針ハブに対して針シールドが再び押されて、針の遠位端を遮蔽する。図示の実施形態では、これは、ユーザーが注射部位に対して注射装置のハウジング6を手動で引き込む結果として発生する。図示の実施形態では、針シールド5は、針シールドばねによって遠位方向に付勢される。
【0052】
図1~4に関する上記の説明は、例示的な注射装置の使用の背景情報を提供するために提供されてきた。説明された注射装置は、多くの異なる市販の注射装置のうちの一つである。針カニューレおよび本発明の注射針組立品は、隔壁を装備したカートリッジが図1~4に関して上述したものだけではなく、個別の針組立品と協働する、異なるタイプの注射装置と併用できることに留意されたい。
【0053】
図5は、図1~4に示す注射装置と類似した注射装置の遠位部分の断面詳細図を示すが、本発明の態様による針組立品150の実施形態を組み込む。近位針カバー110aは、WO2016/116614A1の図11a~11dに示す針カバー10と類似して形成される。
【0054】
検査は、従来の二重尖端針に対して、装置のトリガ中に特定の条件により、針カニューレ130の近位端が、近位針カバー10aおよびカートリッジ隔壁2bを貫通するとき、針カバー10aおよび/またはカートリッジ隔壁2bの材料の切り抜きコアを生成するリスクがあると、示している。リスクは、貫通中に接続速度が速い場合に最も顕著であるが、例えば、冷蔵庫温度などの薬剤の長期保存中に使用された温度に対応する低い周囲温度で貫通が起こるときにも、リスクは最も顕著であることが示されている。
【0055】
針カニューレの中心軸と28度の角度を形成する平面の角カットとして提供される傾斜した表面を備える近位部分を持つ例示的な30G針カニューレの異なるサンプルで、詳細な検査が実施されてきた。個別の貫通検査は、近位針カバー10aとのみ協働する、すなわちカートリッジ隔壁と協働することなくこうした例示的な30G針と実施され、しかし、またカートリッジ隔壁とのみ協働する、すなわち、近位針カバー10aと協働することなく、こうした例示的な30G針と実施されている。すべての試験は、摂氏5度の周囲温度かつ、図1~4に示されるように、自動インジェクタをトリガすることによって得られる速度に対応する貫通速度で実施されている。両方の状況では、例示的な30G針は、それぞれ針カバーおよびカートリッジ隔壁の破壊の痕跡なしに許容できる状態で実施されている。しかし、図1~4に示す構成に対応する実際の設定では、例示的な30G針を含む針組立品は、針カバー10aおよびカートリッジ隔壁2bの両方を持つ自動インジェクタに組み込まれ、破壊要素の痕跡が観察されている。そのような設定におけるコアリングの影響は、針カニューレの貫通の間の、針カバー10aと隔壁2bとの間の相互作用する力と関連付けられる可能性が高い。
【0056】
針カニューレの中心軸と90度の角度を形成する平面の角カットとして提供される端面を備える近位部分を持つ例示的な針カニューレを用いてさらなる詳細な検査が実施され、そこでは、針カニューレの近位端のすべての縁は、その後、研磨によって滑らかにされている。こうしたブラント針カニューレは、針カニューレのみがカートリッジ隔壁と協働する設定において許容できる状態で実施される。ところが、図1~4に示す構成に対応する実際の設定では、90度切断の例示的なブラント針を含む針アセンブリは、針カバー10aおよびカートリッジ隔壁2bの両方を持つ自動インジェクタに組み込まれ、破壊要素の痕跡が観察されている。
【0057】
本発明によれば、複数の異なる針ゲージ27Gおよび30Gの針カニューレが調製されており、針カニューレはそれぞれ、針カニューレの中心軸に対して近位端を角度(α)で切断することによって形成されている。針カニューレの近位部分を切断して、それぞれ76度、80度、85度の針カニューレの中心軸に対する角度(α)を有する傾斜面を提供することによって、多くのサンプル針カニューレが調製されてきた。切断に続いて、平面状の角度を付けられた切断先端の端面は、針カニューレの平面の端面に対して90度の角度で加えられるガラスブラストの形態の仕上げプロセスに加えられている。すべての試験は、摂氏5度の周囲温度かつ、室温(摂氏20度)であり、図1~4に示されるように自動インジェクタをトリガすることによって得られる速度に対応する貫通速度で実施されている。針カバーおよびカートリッジ隔壁の破壊の痕跡は観察されていない。
【0058】
図6は、80度の切断傾斜端を有する針カニューレ130の近位部分の拡大側面図を示す。単一の切断され、角度付けられた端面134は、針カニューレの最近位点を画定する先導部分134.1を示す。表面134はさらに、後続部分134.2、すなわちかかと部分を示す。
【0059】
図7は、80度の切断された傾斜を備え、近位針カバー10aの一部も見える、針カニューレ130の近位部分の断面側面図を示す。
【0060】
本発明による針カニューレは、針カニューレのわずかに角度付けられた傾斜面が、先導部分134.1が針カニューレに形のはっきりした接触点針を設けて、それぞれ針カバーとカートリッジ隔壁との接触を確立できることを実証している。わずかに角度付けられた研削加工面は、形のはっきりした先端を確立することによりカバーが必ず破る場所を針が確実に示すことと、針カニューレの近位端のかかと部分の近くの場所に鋭利なナイフ様構造を導入しないこととの間の適切なバランスであることを証明する。ノンコアリングニードルカニューレを形成する目的では、研削は、70~85度の範囲内の中心軸に対して角度を示す針カニューレの近位端に有効と考えられる。
【0061】
本発明によると、近位開口部を囲む近位端表面の一区分を覆うのみにわずかに角度付けられた表面が提供されうることに留意されたい。しかし、近位表面の主要部分、特にかかと部分を覆う表面積は、70~85度の角度間隔内で針カニューレの中心軸に対する傾き角度で形成されることが意図されている。
【0062】
任意のその後の仕上げ(ガラスブラスト、研磨など)は、特に針チューブの「かかと」において、鋭利な縁、構造またはフランジが、潜在的に、カバーまたはシール要素と協働してコリングを引き起こさないことを確実にするためである。
【0063】
図8a~8cは、本発明によるさらなる例示的な針カニューレを提供するための製造工程を概略的に示す。こうした針カニューレ130の近位部分は、単純な3ステッププロセスで製造される。図示の実施形態では、図8aに示すように、斜めカットは、中心軸に対して70度の研磨角度で針カニューレを研磨することによって針カニューレの近位端133aにまずなされる。これにより、近位に面した角度付けられた面134aが形成され、それが先導部分134.1およびかかと部分134.2を画定する。図8bに示す第二の手順ステップでは、針カニューレの近位端は、最初に形成された鋭い縁が鈍くなるように、サンドブラスト動作、または類似の鈍化動作を加えられる。したがって、角度付けられた面134aがカニューレ130の側壁と交差する領域134bでは、領域134bは、半径方向内側に面する縁部および半径方向外側に面する縁部において、両方とも鈍い円周方向に走る縁を形成する。図8cに示す第三の手順ステップでは、第二の研磨工程は、中央軸に対して80度の研磨角度を有する針カニューレの先導部分134.1に配置された研磨領域のみによって実施され、それによって先導部分134.1の周りに対称的に配置された平面部分134cが形成される。ここでは、先導部分134.1にのみ配置された縁が、鋭くされる。
【0064】
図示の実施形態では、図9を参照してさらに説明すると、第一の研磨動作は中心軸に対して研磨角α1によって実現されうるが、第二の研磨動作は、中心軸に対して研磨角α2によって実現されうる。さらなる例示的な実施形態では、第一の研磨動作の研磨角度は、中心軸に対して50~75度の間隔内の角度α1を形成するかかと部分134.2に表面部分134aを設けるように実施されうる。一般に、こうした実施形態では、第二の研磨動作の研磨角は、表面部分134aの角度α1より5~10度大きい、中心軸に対する角度α2を形成する先導部分134.1に表面部分134cを設けるように実施されうる。
【0065】
上述の簡単な3ステップの動作を使用することにより、針カニューレ130の近位端133aが鋭利な先導部分ならびに鈍いかかと部分を持つ近位に面した端面を示す、安価で効果的なノンコアリング溶液が提供される。
【0066】
皮膚貫通先端を担持する針カニューレの遠位部分133bは非常に脆弱なので、この端部は製造/組立時に保護され、針の位置付けには使用されないことが重要なことに留意されたい。従って、針133aの近位部分がこの目的を果たしうる場合、好ましい。従って、針の近位部分の設計には、針カニューレが針ハブ要素に対して取着されるまで、近位部分を支持表面と係合させることによって針の位置決めを可能にする堅牢な設計が提供されている。
【0067】
さらに、一部の好ましい実施形態が前述に示されているが、本発明はこれらに限定されることなく、以下の特許請求の範囲内および残りの開示内に定義された主題内での他の方法で具体化されてもよいことを強調する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9