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特許7030129原子炉システム、当該システム用の送信器装置、および関連する環境状態測定方法
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  • 特許-原子炉システム、当該システム用の送信器装置、および関連する環境状態測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】原子炉システム、当該システム用の送信器装置、および関連する環境状態測定方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/10 20060101AFI20220225BHJP
   G01T 3/00 20060101ALI20220225BHJP
   G21C 17/108 20060101ALI20220225BHJP
   G21C 17/12 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
G21C17/10
G01T3/00 F
G01T3/00 H
G01T3/00 D
G21C17/108 100
G21C17/12 100
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019540053
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2017067478
(87)【国際公開番号】W WO2018169592
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】15/417,504
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ペトロスキー、ライマン、ジェイ
【審査官】井海田 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0083879(US,A1)
【文献】特表2014-507642(JP,A)
【文献】特表2016-501362(JP,A)
【文献】特開平01-046694(JP,A)
【文献】特表2009-544958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/10
G01T 3/00
G21C 17/108
G21C 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信器装置であって、
中性子束を検出する構成の中性子検出器と、
当該中性子検出器に並列に電気接続されたコンデンサと、
入力端および出力端を有し、当該入力端が当該コンデンサに電気接続されているガス放電管と、
当該出力端に電気接続され、当該中性子束に相当する信号を発信するように構成されたアンテナ
を具備する送信器装置。
【請求項2】
前記出力端および前記アンテナに電気接続された発振回路をさらに含み、当該発振回路は前記アンテナにパルス給電するように構成されていることを特徴とする、請求項1の送信器装置
【請求項3】
前記発振回路第2のコンデンサと、当該第2のコンデンサに電気接続されたインダクタとから成り、当該第2のコンデンサおよび当該インダクタはそれぞれ前記アンテナに電気接続されていることを特徴とする、請求項2の送信器装置
【請求項4】
前記発振回路はさらに前記インダクタに直列に電気接続された抵抗温度検出器を有し、当該抵抗温度検出器は前記アンテナから発信される信号を変化させるように構成されていることを特徴とする、請求項3の送信器装置
【請求項5】
前記発振回路はさらに前記インダクタに直列に電気接続された第2のインダクタを有し、当該第2のインダクタは前記アンテナから発信される信号を変化させるように構成されていることを特徴とする、請求項3の送信器装置
【請求項6】
前記第2のインダクタ可変インダクタである、請求項5の送信器装置
【請求項7】
前記中性子検出器と前記ガス放電管との間に電気接続された多段マルクス回路をさらに含む、請求項2の送信器装置
【請求項8】
前記送信器装置は半導体を含まない、請求項1の送信器装置
【請求項9】
前記送信器装置はたった一つの、信号による給電機構を有し、当該給電機構は前記中性子検出器であることを特徴とする、請求項1の送信器装置
【請求項10】
原子炉システムであって、
計装シンブルを具備する燃料集合体と、
送信器装置とを具備し、
当該送信器装置は、
当該計装シンブル内に配置され、中性子束を検出するように構成された中性子検出器と、
当該中性子検出器に並列に電気接続されたコンデンサと、
入力端および出力端を有し、当該入力端が当該コンデンサに電気接続されているガス放電管と、
当該出力端に電気接続され、当該中性子束に相当する信号を発信するように構成されたアンテナとを有することを特徴とする
原子炉システム。
【請求項11】
前記送信器装置は前記出力端および前記アンテナに電気接続された発振回路をさらに含み、当該発振回路は前記アンテナにパルス給電するように構成されていることを特徴とする、請求項10の原子炉システム。
【請求項12】
前記発振回路第2のコンデンサと、当該第2のコンデンサに電気接続されたインダクタとを具備し、当該第2のコンデンサおよび当該インダクタはそれぞれ前記アンテナに電気接続されていることを特徴とする、請求項11の原子炉システム。
【請求項13】
送信器装置によって多数の環境状態を測定する方法であって、当該送信器装置は、中性子検出器、当該中性子検出器に並列に電気接続されたコンデンサ入力端および出力端を有するガス放電管、ならびに当該出力端に電気接続されたアンテナとから成り、当該入力端は当該コンデンサに電気接続されており、当該方法は、
当該中性子検出器によって中性子束を検出するステップと、
当該ガス放電管の絶縁破壊電圧に到達するまで当該コンデンサにエネルギーを蓄積するステップと、
当該中性子束に相当する信号を当該アンテナによって発信するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項14】
前記送信器装置は前記出力端および前記アンテナに電気接続された発振回路をさらに含み、
前記方法は当該発振回路によって前記アンテナにパルス給電するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13の方法。
【請求項15】
前記発振回路第2のコンデンサ、当該第2のコンデンサに電気接続されたインダクタ、および当該インダクタに直列に電気接続された抵抗温度検出器とを具備し、当該第2のコンデンサおよび当該インダクタはそれぞれ前記アンテナに電気接続されており、
前記方法は前記アンテナから発信された信号を当該抵抗温度検出器によって変化させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項14の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して原子炉システムに関する。本発明はまた、原子炉システム向けの送信器装置に関する。本発明はさらに、送信器装置を用いて環境状態を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最新式の原子炉システムの多くは、炉心内の放射能を軸方向のさまざまな高さで測定する炉内センサを用いている。これらのセンサは、炉心内の半径方向および軸方向の出力分布を測定するために使用される。このような出力分布測定データは、原子炉が原子炉出力分布の限界内で運転されているかを判断するのに用いられる。こうした機能を実行するために用いられる典型的な炉内センサは、周囲で起きている核分裂の量に比例する電流を発生させる自己給電型検出器である。この種のセンサは、電流を発生させるための外部電源を必要としない、一般的に自己給電型検出器と称されるものであり、その詳細は、1998年4月28日に発効し、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,745,538号に説明されている。図1は、自己給電型検出器要素10において電流I(t)を発生させる機構を示す図である。エミッタ要素12は、バナジウムなどの中性子感応物質を使用し、中性子の照射に応答して電子を放出する。自己給電型検出器は、計装シンブル集合体内にパッケージ化するのが一般的である。図2は、代表的な炉内計装シンブル集合体16を示す。図1に示すエミッタ要素12は、本質的に減損しない中性子感応型であり、生成される信号レベルは低い。しかしながら、炉心の全長にわたって延びる中性子感応型エミッタ要素は、複雑で高価な信号処理部がなくても単独で十分な信号を提供する。単一の中性子感応型エミッタ要素の全長にわたって生成される信号は、それぞれが炉心のさまざまな軸方向領域を起源とする信号成分の総和であり、各信号成分は、炉心の軸方向領域を画定する、図2に示すような長さが異なるガンマ線感応要素14が発生する信号を各軸方向領域に割り振ることにより決定される。割り振られた信号に比率計算を施すと、核分裂生成物による遅延ガンマ線の影響の大半が取り除かれる。炉内計装シンブル集合体は、燃料集合体を出る冷却材の温度を測定する熱電対18も含む。原子炉炉心の各炉内計装シンブル集合体内の自己給電型検出器要素および熱電対からの電気信号出力は、電気コネクタ20に集められ、原子炉から十分距離を置いた場所に送られ、炉心出力分布の測定値を求めるための最終処理を施され、使用される。
【0003】
図3は、ペンシルベニア州クランベリー郡に所在のウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニーLLCが現在、WINCISE(商標)という製品名で販売する、炉心の燃料集合体計装シンブル内の固定型炉内計装シンブル集合体16を用いて炉心の出力分布を測定する炉心監視システムの一例を示す。計装シンブル集合体16を起点とするケーブル22は、格納容器シール台24を貫通して、信号処理キャビネット26へ延びるが、計装シンブル集合体の出力は、このキャビネットにおいて調整され、デジタル化され、多重化された後、格納容器の壁28を通ってコンピュータワークステーション30へ送られ、そこでさらに処理され、表示される。また、炉内計装シンブル集合体からの熱電対信号は基準接点装置32へ送られるが、この装置は、ワークステーション30にも接続されているプラントコンピュータ36と通信する不適切炉心冷却モニタ(inadequate core cooling monitor)34へ信号を送信する。格納容器の壁28の内側は過酷な環境ゆえに、信号処理キャビネット26は炉心から有意な距離離隔して配置する必要があり、その信号は、検出器16から信号処理キャビネット26へ極めて高価なケーブルを介して送る必要がある。ケーブルは長尺となるため、信号対雑音比が小さくなる。信号処理用の電子機器は炉心領域を取り囲む高放射線環境から遮蔽しなければならないため、残念ながらこうした長尺のケーブルが必要となる現状がある。
【0004】
従来設計の原子力プラントでは、炉内検出器は、半球状の下端部から原子炉容器に入り、燃料集合体の下部ノズルを経て燃料集合体計装シンブルに挿入される。例えばAP1000等の現世代の原子力プラントの少なくとも一部は、炉内監視用手段の入口が原子炉容器の最上部にあるが、これは、燃料交換時、燃料にアクセスする前に、すべての炉内監視用ケーブルを取り外す必要があるということである。燃料集合体内に内蔵される炉内モニタが原子炉容器内の燃料から離隔した位置にある受信器に監視信号を無線送信する無線式であれば、燃料に直ちにアクセスすることが可能であり、燃料集合体にアクセスする前に炉内監視用ケーブルを切り離し、引き抜いて保管し、燃料交換プロセス完了後にケーブルを接続し直す時間と費用のかかるプロセスが不要である。したがって、無線方式は、燃料交換による運転休止のクリティカルパスを何日も節減することになる。また、無線システムはすべての燃料集合体の監視を可能にするため、利用可能な炉心出力分布情報の量が有意に増大する。
【0005】
しかしながら、無線システムは、ガンマ線、中性子線および高温の存在により半導体電子回路が非常に短時間で動作不能となる炉心内部または炉心近傍に電子部品を配置する必要がある。真空管は放射線に感応しないことが知られているが、最近まで、その大きさおよび電流需要がその使用を妨げてきた。近年の微小電気機械デバイスの発達により、真空管は集積回路の構成部品のサイズにまで縮小し、電力消費を大幅に減少させることが可能となっている。そのようなシステムは、2011年1月7日に出願された「Wireless In-core Neutron Monitor」と題する米国特許出願第12/986,242号で説明されている。当該特許出願に開示された実施態様の信号送信用電気的ハードウェアの主要な電源は、例示的な電源の一部として示される充電式電池である。電池の充電状態は、電源内に含まれる、専用電源自己給電型検出器要素が発生させる電力により維持されるので、この装置にとって究極の電源は原子炉内の放射線である。この充電状態は、専用電源自己給電型検出器要素が炉心内で強度の放射線に晒される限り持続する。
【0006】
したがって、本発明の目的の1つは、燃料集合体の計装シンブル内の環境状態に関するデータを遠隔場所へ送信する機構を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
上記および他の課題は、改良型原子炉システム、当該システム向け送信器装置、および多数の環境状態を測定する関連の方法に関する本発明によって解決される。
【0008】
本発明の一局面において、送信器装置は、中性子束を検出する構成の中性子検出器と、当該中性子検出器に並列に電気接続されたコンデンサと、入力端および出力端を有するガス放電管と、当該出力端に電気接続されたアンテナとを具備する。当該入力端は当該コンデンサに電気接続されている。当該アンテナは、当該中性子束に相当する信号を発信するように構成されている。
【0009】
本発明の別の局面では、計装シンブルを具備する燃料集合体と前述の送信器装置とを含む原子炉システムが提供される。
【0010】
本発明の別の局面では、前述の送信器装置を用いて多数の環境状態を測定する方法が提供される。この方法は、中性子検出器で中性子束を検出するステップと、ガス放電管の絶縁破壊電圧に到達するまでコンデンサ内にエネルギーを蓄積するステップと、中性子束に相当する信号をアンテナから発信するステップとを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0012】
図1】自己給電型放射線検出器の概略図である。
【0013】
図2A】炉内計装シンブルの平面図である。
【0014】
図2B図2Aの炉内計装シンブル集合体の前部筒体の内部を示す概略図である。
【0015】
図2C図2Aの炉内計装シンブル集合体の後端部にある電気コネクタの断面図である。
【0016】
図3】炉内監視システムの概略配置図である。
【0017】
図4】原子炉システムの単純化した概略図である。
【0018】
図5】原子炉容器および内部構成機器の部分断面立面図である。
【0019】
図6】炉内核計装シンブル集合体を含む原子燃料集合体の部分断面立面図である。
【0020】
図7】本発明の一つの非限定的実施態様における送信器装置の概略回路図である。
【0021】
図8図7に示す送信器装置の回路図上の或る点における電圧の時間的推移を示すグラフである。
【0022】
図9図7に示す送信器装置の回路図上の別の点における電圧の時間的推移を示すグラフである。
【0023】
図10】本発明の別の非限定的実施態様における別の送信器装置の概略回路図である。
【0024】
図11】本発明の別の非限定的実施態様における別の送信器装置の概略回路図である。
【0025】
図12】本発明の別の非限定的実施態様における別の送信器装置の概略回路図である。
【0026】
図13】本発明の別の非限定的実施態様における別の送信器装置の概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
加圧水で冷却される原子力発電システムの一次側は、有用エネルギーを発生させるための二次側から隔離されるものの当該二次側と熱交換関係にある閉回路を構成する。一次側は、核分裂性物質を含む複数の燃料集合体と当該燃料集合体を支持する炉心内部構造とを収容する原子炉容器、熱交換蒸気発生器内の一次回路、加圧器の内部空間、加圧水を循環させるポンプおよび配管類を含み、これらの配管類は蒸気発生器とポンプの各組をそれぞれ独立に原子炉容器に接続する。原子炉容器に接続される蒸気発生器、ポンプおよび配管系の各組より成る一次側の各部分は、一次側ループを形成する。
【0028】
説明の目的のために、図4は炉心44を密閉する蓋体42を備えた概して円筒形の圧力容器40を有する原子炉システムを簡略化して示す。水などの原子炉冷却材は、ポンプ46により容器40に圧入され、炉心44を通過するとき熱エネルギーを吸収して、一般的に蒸気発生器と呼ばれる熱交換器48へ送られる。その熱エネルギーは蒸気駆動タービン発電機のような利用回路(図示せず)へ運ばれる。原子炉冷却材はその後、ポンプ46へ戻り、一次側ループが完成する。一般的に、上述したような複数のループが、原子炉冷却材配管50を介して単一の原子炉容器40に接続されている。
【0029】
本発明を適用できる原子炉の設計例を図5に示す。炉心44は互いに平行で垂直に延びる複数の燃料集合体80から成るが、それ以外の容器内部構造物は、説明の目的で、下部炉内構造物52と上部炉内構造物54とに分けることができる。従来設計の下部炉内構造物は、炉心コンポーネントおよび計装体を支持し、整列させ、案内するとともに、容器内の冷却材の流れ方向を定める機能を有する。上部炉内構造物54は、燃料集合体80(簡略化のため2つだけ図示)を拘束し、あるいは燃料集合体に二次的拘束手段を提供し、計装体と例えば制御棒56のようなコンポーネントを支持し、案内する。図5に例示する原子炉の場合、冷却材は1つまたは2つ以上の入口ノズル58から原子炉容器40に流入し、当該原子炉容器40と炉心槽60との間に画定される環状部を流下し、下部原子炉容器プレナム61において180°方向転換し、下部支持板および燃料集合体80が着座する下部炉心板64を上向きに貫流し、当該集合体の中および周りを流動する。下部支持板62および下部炉心板64の代わりに、62と同じ高さで単一構造の下部炉心支持板を配置する設計もある。炉心44を出た冷却材は上部炉心板66の下面を流れ、さらに、上部炉心版66に開けられた複数の穴68を上向きに流れる。冷却材はその後、上方および半径方向に流れて1つ以上の出口ノズル70へ到達する。
【0030】
上部炉内構造物54は、容器または容器蓋体42に取り付けて支持させることが可能であり、上部支持集合体72はその一部である。荷重は、上部支持集合体72と上部炉心板66との間を主として複数の支柱74によって伝えられる。それぞれの支柱は、所定の燃料集合体80および上部炉心板66の孔68の上方で整列関係にある。
【0031】
直線方向に移動可能な制御棒56は一般的に駆動シャフト76および中性子毒物棒のスパイダ集合体78を含むが、それらは制御棒案内管79により上部炉内構造物54を通り抜け、整列関係にある燃料集合体80内へ案内される。
【0032】
図6は、参照番号80で総括表示する燃料集合体を垂直方向に短縮した形で示す立面図である。燃料集合体80は、図5のような加圧水型原子炉に用いるタイプであり、下端部に下部ノズル82を備えた構造躯体を有する。下部ノズル82は、原子炉炉心領域の下部炉心支持板64上に燃料集合体を支持する。燃料集合体80の構造躯体は、下部ノズル82に加えて、上端部の上部ノズル84と、多数の案内管またはシンブル86とを有する。これらの案内管は、下部ノズル82と上部ノズル84との間を縦方向に延び、両端部はそれらのノズルに剛性的に固着されている。
【0033】
燃料集合体80はさらに、案内シンブル86(案内管とも呼ばれる)の軸方向離隔位置に取り付けられた複数の横方向グリッド88と、当該グリッド88により横方向に離隔して支持された細長い燃料棒90の整列アレイとを有する。図6からはわからないが、従来型のグリッド88は、卵箱パターンを形成するように相互に差し込まれた直交ストラップから成り、4つのストラップの隣接界面がほぼ正方形の支持セルを画定する。燃料棒90は支持セルを貫通し、互いに横方向に離隔した関係で支持される。多くの従来設計と同様に、支持セルを形成するストラップの対向する壁面には、ばねおよびディンプルが打抜き加工により形成されている。ばねおよびディンプルは支持セル内へ放射状に延びてそれらの間に燃料棒を捕捉し、燃料棒の被覆を押圧して当該燃料棒を定位置に保持する。また、燃料集合体80の中心部には、下部ノズル82と上部ノズル84との間を延びてそれらに取り付けられる計測管92が配置される。このような部品の配置構成により、燃料集合体80は、部品の全体構成を損なうことなく容易に取り扱うことができる一体型ユニットを形成する。
【0034】
上述したように、燃料集合体80のアレイ状の燃料棒90は、燃料集合体の長さ方向に離隔したグリッド88により互いに離隔した関係に保持される。各燃料棒90は複数の原子燃料ペレット94を有し、両端部は上部端栓96および下部端栓98により閉じられている。燃料ペレット94は、上部端栓96と積み重ねたペレットの最上部との間に位置するプレナムばね100により、積み重ねた形を保持する。核分裂性物質より成る燃料ペレット94は、原子炉の核反応を発生させる元である。ペレットを取り囲む被覆は、核分裂生成物が冷却材に流入して原子炉系を汚染するのを防ぐ障壁の役目を果たす。
【0035】
核分裂プロセスを制御するために、複数の制御棒56は、燃料集合体80の所定位置にある案内シンブル86内を往復移動可能である。具体的には、上部ノズル84の上方に配置された棒クラスタ制御機構(スパイダー集合体とも呼ばれる)78により制御棒56を支持させる。この棒クラスタ制御機構は、内部にねじ溝があり複数のアーム104が放射状に延びる円筒状のハブ部材102を有し、それらは制御棒56とともに、図5に関して前述したスパイダ集合体78を形成する。各アーム104は制御棒56に相互接続されているため、制御棒ハブ102に結合された制御棒駆動シャフト76(図5に示す)がモータにより駆動されると、制御棒機構78は、すべて公知の態様で、制御棒を案内シンブル内で垂直方向に移動させて、燃料集合体80内の核分裂プロセスを制御する。
【0036】
図7は、本発明の一つの非限定的実施態様における送信器装置200の概略回路図を示す。この例示的な送信器装置200は、好ましくは、図6の燃料集合体の計装シンブル86のうちの1つのシンブル内に設置される。以下に詳述するように、送信器装置200は、計装シンブル86(図6)内の環境状態(非限定的な例として中性子束)の無線による監視を可能にする。
【0037】
この例示的な送信器装置200は、自己給電型中性子検出器210、当該中性子検出器210に並列に電気接続された第1のコンデンサ212、ガス放電管214、アンテナ220、および発振回路222を含む。本発明で使用可能な適当なガス放電管の一例は、イリノイ州シカゴのリトルヒューズ社が現在市販している、商品名が“Gas Discharge Tube”の製品である。ガス放電管214は、入力端216と出力端218とを有する。一実施例において、ガス放電管214は、入力端216と出力端218が導通するとアークまたは火花が発生する火花ギャップ装置として設計されている。別の実施例において、ガス放電管214は、入力端216と出力端218が導通すると比較的強度の小さいグロー放電が発生するように設計されている。入力端216は第1のコンデンサ212に電気接続され、出力端218はアンテナ220に電気接続されている。図示のように、発振回路222は、第2のコンデンサ224と、当該第2のコンデンサ224に並列に電気接続されたインダクタ226とを含む。第2のコンデンサ224およびインダクタ226はそれぞれ、出力端218およびアンテナ220に電気接続されている。
【0038】
動作については、送信器装置200が計装シンブル86(図6)のうちの1つのシンブル内にあると、中性子検出器210が中性子を吸収して電子を外向きに移動させるため、電流が生じる。したがって、中性子検出器210、すなわち送信器装置200は自己給電型(すなわち別途の給電機構を含まない)という利点がある。中性子検出器210が電流を発生させると、この電流が第1のコンデンサ212を充電する。
【0039】
図8は、第1のコンデンサ212のところで測定した電圧Vの時間的推移を示すグラフである。図示のように、電圧Vは電圧Vに到達するまで増加する。電圧Vは、ガス放電管214の絶縁破壊電圧である。絶縁破壊電圧Vに到達すると、ガス放電管214が導通するため、入力端216および出力端218が、第1のコンデンサ212をアンテナ220および発振回路222に電気接続する。発振回路222は、本質的に不安定な回路である。ことほど左様に、絶縁破壊電圧Vに到達すると、発振回路222内に強い発振が短期間生起する。
【0040】
図9は、発振回路222で測定した電圧Vの時間的推移を示すグラフである。図示のように、電圧Vは一般的に発振前はゼロボルトであり、比較的短期間発振した後またゼロボルトに戻り、この過程を周期的に繰り返す。振動が減衰するのは、アンテナ220からの電磁波放射によるエネルギーの散逸と、抵抗損失によるものである。したがって、アンテナ220は発振回路222からのパルス給電により無線信号を発信する。
【0041】
アンテナ220から発信されるパルス信号の周期は、中性子検出器210が検出する中性子束に逆比例することがわかる。具体的には、中性子検出器210で発生する電流は計装シンブル86(図6)内の中性子束に直接比例し、絶縁破壊電圧Vは比較的一定である。そのため、パルス周期(例えば図9のtを参照)もまた、計装シンブル86(図6)内の中性子束に逆比例する。したがって、アンテナ220からの発信信号を受信する適当な無線受信器を校正することにより、計装シンブル86(図6)内の中性子束を容易に求めることができる。また、炉心出力が非常に低い場合でも、アンテナ220から放射されるパルスのエネルギーは実質的に不変であり、パルスの発生頻度が下がるだけである。さらには、送信器装置200の周波数はパルス動作とは無関係なので、装置設計者は送信器装置200の周波数を選択可能である。このことから、燃料集合体80や炉心内の他の燃料集合体の中の様々な場所に多数の異なる送信器装置を使用できるという利点が得られる。運転員は、個々の送信器装置を、第2のコンデンサ224の容量とインダクタ226のインダクタンスとにより決まるその装置の周波数により識別できる。したがって、燃料集合体80の中のさまざまな場所で、中性子束などの環境状態を無線で監視できるという利点が得られる。
【0042】
図10は、本発明の別の非限定的実施態様における別の送信器装置300の概略回路図である。図示のように、送信器装置300は送信器装置200(図7)に似た構成であり、同様の構成部品には同様の参照番号を付してある。説明を簡単にし、開示を簡略化するために、アンテナ320と発振回路322にだけ参照番号を付してある。ただし、送信器装置300の発振回路322には、図示のように、インダクタ326に直列に電気接続された抵抗温度検出器328もあり、この検出器328は第2のコンデンサ324に電気接続されている。抵抗温度検出器328は、配置された環境の温度が上昇するにつれて電気抵抗が大きくなる。本発明の一局面によると、抵抗温度検出器328はアンテナ320から発信される信号を変化させるが、この変化は検出可能である。具体的には、抵抗温度検出器322を組み入れることによって、発振回路322の電圧振幅減衰率を変化させる。したがって、適当な無線受信器によって振幅減衰率の変化を測定すれば、運転員は、計装シンブル86(図6)内の或る場所における所与の温度を容易に求めることができる。したがって、送信器装置300は、計装シンブル86(図6)内の中性子束(すなわち図7に示す送信器装置200と同じ方式で得られる)とともに、当該シンブル内の温度の表示値を運転員に提供できる利点がある。
【0043】
図11、12は、それぞれ、本発明の別の非限定的実施態様に基づく別の2つの送信器装置400、500の概略回路図である。図示のように、送信器装置400、500は送信器装置200、300(図7、10)に似た構成であり、同様の構成部品には同様の参照番号を付してある。説明を簡単にし、開示を簡略化するために、アンテナ420と発振回路422、522にだけ参照番号を付してある。図11に示すように、発振回路422は、第1のインダクタ426および抵抗温度検出器428に直列に電気接続された第2のインダクタ(非限定的な例として可変インダクタ430)をさらに含む。可変インダクタ430はさらに、第2のコンデンサ424に電気接続されている。図12に示すように、発振回路522は、第2のコンデンサ524に並列に電気接続された可変コンデンサ532をさらに含む。可変コンデンサ532は、インダクタ526および抵抗温度検出器528にも電気接続されている。その利点として、可変インダクタ430または可変コンデンサ532の電気値に環境要因の変化があれば、パルス送信周波数に検出可能な変化が生じる。
【0044】
送信器装置400、500は、計装シンブル86(図6)内の最大3つの環境状態に関する表示値を運転員に提供できる利点があることがわかる。例えば、送信器装置400、500のそれぞれは、前述の送信器装置300と同様に、アンテナ420、520から発信される信号を介して、計装シンブル86(図6)内の中性子束および温度に相当するデータを無線受信器に送信できる。さらに、可変インダクタ430(図11)および可変コンデンサ532(図12)はいずれも、それぞれのアンテナ420、520から発信される信号の周波数に検出可能な変化を起こすように構成されている。変化した周波数は、送信器装置400、500が第3の環境状態(非限定的な例として圧力、燃料棒の経時的な総中性子線量、水の流量など)を測定して、適当な受信器に無線で通知するのを可能にする仕組みを提供する。例えば、燃料棒が内部圧力により変形して、可変インダクタ430のコイル付近へ移動し、アンテナ420から発信される信号の周波数に検出可能な変化が生じることを利用することにより、圧力を無線で監視することができる。
【0045】
図13は、本発明の別の非限定的実施態様における別の送信器装置600の概略回路図である。図示のように、送信器装置600は送信器装置200、300、400、500(図7、10、11、12)に似た構成であり、同様の構成部品には同様の参照番号を付してある。具体的には、送信器装置600は、中性子検出器610、コンデンサ612、ガス放電管614、アンテナ620、および発振回路622を含み、これらはそれぞれ、送信器装置200、300、400、500(図7、10、11、12)の対応する構成要素と同じ機能を果たす。図示のように、送信器装置600は、中性子検出器610とガス放電管614との間に電気接続された多段マルクス回路をさらに含む(2段マルクス回路642、644を例示)。任意の段数のマルクス回路をガス放電管に前置(すなわち中性子検出器に後置)して、回路性能を高める所望の機能を発揮させるのが可能であることがわかる。マルクス回路642、644の各段はそれぞれ、コンデンサ646、648、第1の抵抗器650、652、第2の抵抗器654、656、およびそれぞれのガス放電管658、660を含む。
【0046】
送信器装置200、300、400、500、600により多数の環境状態を測定する方法は、中性子検出器210、610によって中性子束を検出するステップと、ガス放電管214、614の絶縁破壊電圧Vに到達するまでコンデンサ212、612にエネルギーを蓄積するステップと、アンテナ220、320、420、520、620によって中性子束に相当する信号を発信するステップとから成ることがわかる。この方法はさらに、発振回路222、322、422、522、622からアンテナ220、320、420、520、620にパルス給電するステップ、アンテナ220、320、420、520、620からの発信信号を抵抗温度検出器328、428、528によって変化させるステップ、および/またはアンテナ220、320、420、520、620からの発信信号を可変インダクタ430または可変コンデンサ532によって変化させるステップから成ることがある。
【0047】
本願の新規な送信器装置200、300、400、500、600は、計装シンブル86(図6)内の前述の環境状態を測定するとともに、少なくとも次の2つの理由により比較的厳しい運転条件に耐えることができる。第1の利点として、送信器装置200、300、400、500、600はいずれも半導体を含まない。第2に、送信器装置200、300、400、500、600は一般的に、たった一つの、信号による給電機構を有する(例えば、それぞれの中性子検出器(中性子検出器210、610のみを番号表示))。環境状態のデータの送信を無線で行う従来の試みは、一般的に中性子検出器から得られるよりも多量の電力を必要とするか、または半導体の内臓により比較的厳しい放射線環境に耐えることができないか、あるいはその両方である。また、既知の装置(図示せず)は、送信器出力が比較的小さいため、原子炉出力が臨界閾値を下回ると完全に停止するものがある。送信器装置200、300、400、500、600は、自己給電型中性子検出器210、610と電力貯蔵コンデンサ212、612とを組み合わせることによって、広い原子炉出力領域にわたりまあまあの送信電力が得られる点に新規性がある。さらに、送信器装置400、500は、前述のように、計装シンブル86内の所与の感知場所から、最大3つの異なる環境パラメータの表示値を同時に送信できる利点がある。さらには、すべての監視は無線で行われるので、環境状態の監視のための主要な原子炉容器貫通部とケーブルを設ける必要性が減少および/または排除される。
【0048】
したがって、本発明は、改良された原子炉システム(非制限的な例として計装シンブル86内の環境状態の監視能力が向上した原子炉システム)、当該原子炉システム向けの送信器装置200、300、400、500、600、および環境状態を測定するための関連する方法を提供する。
【0049】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の配置構成は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13