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7030139二液硬化型無溶剤系接着剤およびラミネートフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】二液硬化型無溶剤系接着剤およびラミネートフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20220225BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220225BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20220225BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20220225BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20220225BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220225BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220225BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J11/06
C08G18/10
C08G18/42
C08G18/76 057
B32B27/00 D
B32B27/40
B32B27/18 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019567187
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2019002464
(87)【国際公開番号】W WO2019146756
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2018012638
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】上村 節
(72)【発明者】
【氏名】城之内 達也
(72)【発明者】
【氏名】上村 太一
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012330(WO,A1)
【文献】特開2012-251063(JP,A)
【文献】国際公開第2007/094341(WO,A1)
【文献】特開2015-117328(JP,A)
【文献】特開2004-115681(JP,A)
【文献】特開2009-149852(JP,A)
【文献】特開昭58-122977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/06
C09J 11/06
C08G 18/10
C08G 18/42
C08G 18/76
B32B 27/00
B32B 27/40
B32B 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分およびポリオール成分と、シランカップリング剤とを含む二液硬化型無溶剤系接着剤であって、
前記ポリイソシアネート成分は、
ジフェニルメタンジイソシアネートおよびポリオールの反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーと、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートとを含有し、
前記ポリオール成分は、
数平均分子量1000以下のポリエステルポリオールと、3価以上のアルコールとを含有し、
前記二液硬化型無溶剤系接着剤100質量部に対して、未反応の前記ジフェニルメタンジイソシアネートが20質量部以上30質量部以下であり、
前記二液硬化型無溶剤系接着剤100質量部に対して、前記シランカップリング剤が0.1質量部以上15質量部以下であり、
前記ポリオール成分100質量部に対して、前記3価以上のアルコールが0.1質量部以上10質量部以下であり、
前記二液硬化型無溶剤系接着剤の総量100質量部に対して、リン酸を、0.003質量部以上0.030質量部以下含有する
ことを特徴とする、二液硬化型無溶剤系接着剤。
【請求項2】
前記二液硬化型無溶剤系接着剤の総量100質量部に対して、前記シランカップリング剤を、0.2質量部以上5.0質量部以下含有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の二液硬化型無溶剤系接着剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二液硬化型無溶剤系接着剤からなる接着層を備える
ことを特徴とする、ラミネートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液硬化型無溶剤系接着剤およびラミネートフィルムに関し、詳しくは、ラミネート接着剤として好適な二液硬化型無溶剤系接着剤、および、その二液硬化型無溶剤系接着剤を用いて得られるラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種フィルムをラミネート接着剤で貼着したラミネートフィルムは、包装材料の分野において、広く普及している。とりわけ、プラスチックフィルムおよび金属箔をラミネート接着剤で貼着したラミネートフィルムは、遮光性、気体および液体のバリア性に優れており、各種包装材料として、広く普及している。
【0003】
このようなラミネートフィルムに用いられるラミネート接着剤としては、キシリレンジイソシアネートおよびポリエステルジオールの反応生成物であるジイソシアネート基末端プレポリマー、および、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート変性体を含むポリイソシアネート成分と、ポリエステルジオールの酸変性体およびトリメチロールプロパンを含むポリオール成分とを含む二液硬化型無溶剤系接着剤が提案されており、さらに、その二液硬化型無溶剤系接着剤100部に対してリン酸0.033部およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.67部を添加することも、提案されている(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-162656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献1に記載される二液硬化型無溶剤系接着剤では、作業衛生環境の観点から、ポリイソシアネート成分中における未反応のキシリレンジイソシアネートを薄膜蒸留などにより除去する必要があり、手間がかかるという不具合がある。
【0006】
一方、ジフェニルメタンジイソシアネートは、蒸気圧が比較的高いため、作業衛生環境の観点からは、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートの除去は不要である。
【0007】
しかし、二液硬化型無溶剤系接着剤中の未反応のジフェニルメタンジイソシアネートの残存割合によっては、適度なポットライフを得られず、その結果、外観不良を惹起するという不具合がある。
【0008】
また、二液硬化型無溶剤系接着剤としては、低温硬化性(室温養生性)が要求され、さらに、用途に応じて、耐内容物性に優れるラミネートフィルムを得ることが要求される。
【0009】
本発明は、製造効率に優れるとともに、適度なポットライフを有し、外観不良を抑制でき、また、低温硬化性にも優れ、さらに、耐内容物性に優れるラミネートフィルムを製造できる二液硬化型無溶剤系接着剤、および、その二液硬化型無溶剤系接着剤を用いて得られるラミネートフィルムである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を含む二液硬化型無溶剤系接着剤であって、前記ポリイソシアネート成分は、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびポリオールの反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーと、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートとを含有し、前記ポリオール成分は、数平均分子量1000以下のポリエステルポリオールを含有し、前記二液硬化型無溶剤系接着剤100質量部に対して、未反応の前記ジフェニルメタンジイソシアネートが20質量部以上30質量部以下であり、前記二液硬化型無溶剤系接着剤の総量100質量部に対して、リン酸を、0.003質量部以上0.030質量部以下含有する、二液硬化型無溶剤系接着剤を含んでいる。
【0011】
本発明[2]は、前記二液硬化型無溶剤系接着剤の総量100質量部に対して、シランカップリング剤を、0.2質量部以上5.0質量部以下含有する、上記[1]に記載の二液硬化型無溶剤系接着剤を含んでいる。
【0012】
本発明[3]は、前記ポリオール成分が、3価以上のアルコールを含有する、上記[1]または[2]に記載の二液硬化型無溶剤系接着剤を含んでいる。
【0013】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の二液硬化型無溶剤系接着剤からなる接着層を備える、ラミネートフィルムを含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二液硬化型無溶剤系接着剤は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を含み、さらに、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートと、リン酸とを、所定割合で含んでいる。
【0015】
そのため、本発明の二液硬化型無溶剤系接着剤は、製造効率に優れるとともに、適度なポットライフを有し、外観不良を抑制でき、また、低温硬化性にも優れ、さらに、耐内容物性に優れるラミネートフィルムを製造できる。
【0016】
また、本発明のラミネートフィルムは、上記の二液硬化型無溶剤系接着剤からなる接着層を含むため、製造効率に優れ、外観および耐内容物性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の二液硬化型無溶剤系接着剤は、有機溶剤および水を含まず、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を含んでいる。二液硬化型無溶剤系接着剤において、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分は、個別に調製され、使用直前に混合して用いられる。
【0018】
ポリイソシアネート成分は、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびポリオールの反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーと、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートとを含有している。
【0019】
ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0020】
これらジフェニルメタンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0021】
ジフェニルメタンジイソシアネートは、好ましくは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含み、また、必要に応じて、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含む。より好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとを含有する(液状ジフェニルメタンジイソシアネート)。なお、それらの割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0022】
ポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール、高分子量ポリオールが挙げられる。
【0023】
低分子量ポリオールとしては、例えば、分子中に水酸基を2つ以上有し、分子量50以上300以下、好ましくは、400以下の有機化合物が挙げられる。
【0024】
低分子量ポリオールとして、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7~20)ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0025】
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0026】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0027】
高分子量ポリオールとしては、分子中に水酸基を2つ以上有し、数平均分子量300を超過し、好ましくは、400を超過する高分子量化合物(好ましくは、重合体)が挙げられる。
【0028】
高分子量ポリオールとして、具体的には、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
【0029】
高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0032】
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、上記の低分子量ポリオールや、公知の低分子量ポリアミンなどを開始剤とする、アルキレンオキサイドの付加重合物が挙げられる。
【0033】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。また、これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドが挙げられる。また、ポリオキシアルキレンポリオールとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体などが含まれる。
【0034】
ポリトリメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、植物成分由来の1,3-プロパンジオールの重縮合反応により得られるグリコールなどが挙げられる。
【0035】
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(ポリテトラメチレンエーテルグリコール(結晶性))や、テトラヒドロフランなどの重合単位に、アルキル置換テトラヒドロフランや、上記した2価アルコールを共重合した非晶性(非結晶性)ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0037】
低分子量ポリオールとしては、上記した低分子量ポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコールが挙げられ、より好ましくは、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0038】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸(C11~13)、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2-アルキル(C12~C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0039】
これら多塩基酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0040】
多塩基酸として、好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、酸無水物が挙げられ、より好ましくは、アジピン酸、フタル酸、無水フタル酸が挙げられ、さらに好ましくは、アジピン酸が挙げられる。
【0041】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0042】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤として、例えば、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類や、例えば、L-ラクチド、D-ラクチドなどのラクチド類などを開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記2価アルコールを共重合したものなどのラクトンベースポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0043】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、上記2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物(結晶性)や、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールや1,6-ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0044】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0045】
高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0046】
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、300を超過、好ましくは、400を超過、より好ましくは、500以上、さらに好ましくは、600以上である。また、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、2000以下、さらに好ましくは、1000以下である。
【0047】
なお、高分子量ポリオールの数平均分子量は、GPC法(標準ポリスチレン換算)により測定することができ、また、詳しくは後述するように、水酸基価および平均官能基数から算出することができる。
【0048】
これらポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0049】
ポリオールとして、好ましくは、高分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの併用が挙げられる。
【0050】
ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールが併用される場合、それらの併用割合は、例えば、それらの総量100質量部に対して、ポリエーテルポリオールが、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。また、ポリエステルポリオールが、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0051】
これらを併用することにより、ポリエーテルポリオール由来の優れた塗工性と、ポリエステルポリオール由来の優れた接着性とを、両立させることができる。
【0052】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーを得るには、上記したジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールとを、例えば、バルク重合や溶液重合などの重合方法(好ましくは、バルク重合)により反応させる。
【0053】
バルク重合では、例えば、窒素気流下においてジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールとを、反応温度が、例えば、50℃以上、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下で、例えば、0.5時間以上、例えば、15時間以下反応させる。
【0054】
溶液重合では、有機溶剤に、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールとを加えて、反応温度が、例えば、50℃以上、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下で、例えば、0.5時間以上、例えば、15時間以下反応させる。
【0055】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
【0056】
なお、溶液重合が採用される場合、後述するように、重合反応の終了後に、有機溶剤が除去される。
【0057】
さらに、上記重合反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加することができる。
【0058】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0059】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫(オクチル酸スズ)、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクタン酸ビスマス(オクチル酸ビスマス)、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられ、好ましくは、オクチル酸スズ、オクチル酸ビスマスが挙げられる。
【0060】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0061】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0062】
ウレタン化触媒の添加割合は、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールとの総量10000質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、例えば、1質量部以下、好ましくは、0.5質量部以下である。
【0063】
また、上記重合反応において有機溶剤を用いた場合には、有機溶剤を、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により除去し、無溶剤化する。
【0064】
ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールとの配合割合は、好ましくは、残存する未反応ジフェニルメタンジイソシアネートが後述する割合になるように調整される。より具体的には、ポリオール中の水酸基に対する、ジフェニルメタンジイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)として、例えば、4.0を超過し、好ましくは、4.1以上、より好ましくは、4.5以上、さらに好ましくは、5.0以上であり、例えば、8.0未満、好ましくは、7.5以下、より好ましくは、7.0以下、さらに好ましくは、6.5以下である。
【0065】
また、質量基準では、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールとの総量100質量部に対して、ジフェニルメタンジイソシアネートが、例えば、52質量部以上、好ましくは、55質量部以上であり、例えば、65質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。また、ポリオールが、例えば、35質量部以上、好ましくは、40質量部以上であり、例えば、48質量部以下、好ましくは、45質量部以下である。
【0066】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーを得ることができる。
【0067】
なお、イソシアネート基含有量(イソシアネート基含有率)は、ジ-n-ブチルアミンによる滴定法や、FT-IR分析などの公知の方法によって求めることができる。
【0068】
また、ポリイソシアネート成分は、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートを含有する。
【0069】
未反応のジフェニルメタンジイソシアネートは、例えば、上記のイソシアネート基末端プレポリマーの製造における未反応成分として、反応生成物中に含有される。
【0070】
また、例えば、得られる反応生成物から、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートの一部を、蒸留法や抽出法などにより除去して、ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量を調整することもできる。
【0071】
さらに、例えば、得られる反応生成物に、別途、ジフェニルメタンジイソシアネートを添加して、ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量を調整することもできる。
【0072】
好ましくは、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートおよびイソシアネート基末端プレポリマーの割合が後述する範囲になるように、上記のイソシアネート基末端プレポリマーの製造における当量比を調整し、得られる反応生成物を、そのまま、ポリイソシアネート成分として用いる。
【0073】
未反応のジフェニルメタンジイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量100質量部に対して、例えば、25質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、32質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、45質量部以下、より好ましくは、40質量部以下、さらに好ましくは、35質量部以下である。
【0074】
また、イソシアネート基末端プレポリマーの含有割合が、上記の残部であり、ポリイソシアネート成分の総量100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、55質量部以上、より好ましくは、60質量部以上、さらに好ましくは、65質量部以上であり、例えば、75質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、68質量部以下である。
【0075】
なお、ポリイソシアネート成分(イソシアネート基末端プレポリマーの製造における反応生成物を含む。)中における未反応のジフェニルメタンジイソシアネートの含有量は、例えば、HPLC測定により求めることができ、また、上記のイソシアネート基末端プレポリマーの製造におけるジフェニルメタンジイソシアネートおよびポリオールの仕込み比から、理論濃度として算出することもできる。
【0076】
また、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートの含有量は、後述する二液硬化型無溶剤系接着剤(すなわち、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の合計)に対して所定の範囲になるように、調整される。
【0077】
より具体的には、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートの含有割合は、低温硬化時における外観不良を抑制し、耐内容物性の向上を図る観点から、後述する二液硬化型無溶剤系接着剤100質量部に対して、20質量部以上、好ましくは、21質量部以上、より好ましくは、22質量部以上であり、30質量部以下、好ましくは、28質量部以下、より好ましくは、25質量部以下である。
【0078】
未反応のジフェニルメタンジイソシアネートの含有割合が上記範囲であれば、優れた塗工外観および低温硬化性を得ることができる。
【0079】
なお、二液硬化型無溶剤系接着剤中における未反応のジフェニルメタンジイソシアネートの含有割合は、例えば、HPLC測定により求めることができ、また、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の配合比から、理論濃度として算出することもできる。
【0080】
また、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基当量は、例えば、210を超過し、好ましくは、230以上であり、例えば、320以下、好ましくは、300以下、好ましくは、250以下である。
【0081】
なお、イソシアネート基当量は、アミン当量と同義であり、JIS K 1603-1(2007)のA法またはB法により、求めることができる。
【0082】
ポリオール成分は、必須成分として、ポリエステルポリオールを含有する。
【0083】
ポリエステルポリオールとしては、上記したポリエステルポリオールが挙げられ、具体的には、低分子量ポリオールと多塩基酸との重縮合物、植物由来のポリエステルポリオール、ラクトンベースポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0084】
ポリエステルポリオールとして、好ましくは、低分子量ポリオールと多塩基酸との重縮合物が挙げられる。
【0085】
低分子量ポリオールとしては、上記した低分子量ポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコールが挙げられ、より好ましくは、ジエチレングリコールが挙げられる。
【0086】
多塩基酸としては、上記した多塩基酸が挙げられ、好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が挙げられ、より好ましくは、アジピン酸、フタル酸が挙げられる。
【0087】
低分子量ポリオールと多塩基酸とを重縮合させる方法は、特に制限されず、公知の方法が採用される。
【0088】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、無溶剤状態における粘度調整の観点から、1000以下であり、好ましくは、950以下、より好ましくは、900以下、さらに好ましくは、850以下である。また、例えば、300を超過、好ましくは、400を超過、より好ましくは、500以上、さらに好ましくは、600以上である。
【0089】
なお、ポリエステルポリオールの数平均分子量は、GPC法により測定することができ、また、水酸基価および平均官能基数から算出することができる(以下同様)。
【0090】
好ましくは、ポリエステルポリオールの数平均分子量は、水酸基価および平均官能基数から、下記式により算出する。
【0091】
数平均分子量=水酸基価×平均官能基数
なお、水酸基価は、JIS K 1557-1(2007)のA法またはB法に準拠するアセチル化法やフタル化法などから求めることができる。また、平均官能基数は、ポリエステルポリオールを構成する各成分の仕込み比および官能基数から求めることができる。
【0092】
また、ポリオール成分は、任意成分として、その他の高分子量ポリオール(ポリエステルポリオールを除く高分子量ポリオール)や、低分子量ポリオールを含有することができる。
【0093】
その他の高分子量ポリオールとしては、例えば、上記のポリエーテルポリオール、上記のポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。その他の高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0094】
好ましくは、その他の高分子量ポリオールは、ポリオール成分に含有されない。換言すれば、ポリオール成分は、好ましくは、高分子量ポリオールとして、上記したポリエステルポリオールを単独で含有する。
【0095】
低分子量ポリオールとしては、上記の低分子量ポリオールが挙げられる。低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0096】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価以上のアルコールが挙げられる。3価以上のアルコールは、架橋性ポリオールであり、換言すれば、ポリオール成分は、好ましくは、架橋性ポリオールを含有する。
【0097】
ポリオール成分が3価以上のアルコールを含有すれば、低温硬化性および耐内容物性に優れる二液硬化型無溶剤系接着剤を得ることができる。
【0098】
3価以上のアルコールとして、より具体的には、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0099】
これら3価以上のアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0100】
3価以上のアルコールとして、好ましくは、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、グリセリン、トリメチロールプロパンが挙げられ、ボイル耐性の観点から、さらに好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0101】
3価以上のアルコールの含有割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、3以下である。
【0102】
さらに、二液硬化型無溶剤系接着剤は、リン酸を含有する。
【0103】
より具体的には、二液硬化型無溶剤系接着剤において、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分のいずれか一方またはその両方がリン酸を含有する。好ましくは、ポリオール成分が、リン酸を含有する。
【0104】
リン酸としては、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸などが挙げられる。また、リン酸としては、例えば、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸などの縮合リン酸も挙げられる。
【0105】
さらに、リン酸としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのリン酸塩または縮合リン酸塩、例えば、オルトリン酸モノメチル、オルトリン酸モノエチル、オルトリン酸モノプロピル、オルトリン酸モノブチル、オルトリン酸モノ-2-エチルヘキシル、オルトリン酸モノフェニル、亜リン酸モノメチル、亜リン酸モノエチル、亜リン酸モノプロピル、亜リン酸モノブチル、亜リン酸モノ-2-エチルヘキシル、亜リン酸モノフェニルなどのモノエステル類、例えば、オルトリン酸ジ-2-エチルヘキシル、オルトリン酸ジフェニル、オルトリン酸トリメチル、オルトリン酸トリエチル、オルトリン酸トリプロピル、オルトリン酸トリブチル、オルトリン酸トリ-2-エチルヘキシル、オルトリン酸トリフェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジ-2-エチルヘキシル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリ-2-エチルヘキシル、亜リン酸トリフェニルなどのジ、トリエステル類、または、縮合リン酸とアルコール類とから得られるモノ、ジ、トリエステル類などが挙げられる。
【0106】
これらリン酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0107】
リン酸として、好ましくは、オルトリン酸が挙げられる。
【0108】
リン酸の含有割合は、低温硬化時における外観不良を抑制し、また、耐内容物性の向上を図る観点から、二液硬化型無溶剤系接着剤の総量100質量部に対して、0.003質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上、より好ましくは、0.010質量部以上、さらに好ましくは、0.012質量部以上、とりわけ好ましくは、0.014質量部以上であり、0.030質量部以下、好ましくは、0.025質量部以下、より好ましくは、0.020質量部以下である。
【0109】
また、リン酸がポリオール成分に含有される場合には、ポリオール成分の総量100質量部に対して、リン酸が、例えば、0.005質量部以上、好ましくは、0.010質量部以上、より好ましくは、0.030質量部以上、さらに好ましくは、0.040質量部以上であり、例えば、0.090質量部以下、好ましくは、0.070質量部以下である。
【0110】
二液硬化型無溶剤系接着剤がリン酸を上記の割合で含有していれば、外観不良を抑制でき、また、低温硬化性および耐内容物性の向上を図ることができる。
【0111】
さらに、二液硬化型無溶剤系接着剤は、好ましくは、シランカップリング剤を含有する。
【0112】
より具体的には、二液硬化型無溶剤系接着剤において、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分のいずれか一方またはその両方が、シランカップリング剤を含有する。好ましくは、ポリオール成分が、シランカップリング剤を含有する。
【0113】
シランカップリング剤は、例えば、構造式R-Si≡(X)またはR-Si≡(R’)(X)(式中、Rは、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基またはメルカプト基を有する有機基を示し、R’は炭素数1~4の低級アルキル基を示し、Xはメトキシ基、エトキシ基またはクロル原子を示す。)で示される。
【0114】
シランカップリング剤として、具体的には、例えば、ビニルトリクロルシランなどのクロロシラン、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(別名:3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル)、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジ(γ-グリシドキシプロピル)ジメトキシシランなどのエポキシシラン、例えば、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-プロピルメチルジメトキシシラン、n-(ジメトキシメチルシリルプロピル)エチレンジアミン、n-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン、例えば、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン、例えば、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシランなどのイソシアナトシランなどが挙げられる。
【0115】
シランカップリング剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0116】
シランカップリング剤として、好ましくは、エポキシシラン、アミノシランが挙げられ、さらに好ましくは、エポキシシランが挙げられ、とりわけ好ましくは、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(別名:3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル)が挙げられる。
【0117】
シランカップリング剤の含有割合は、二液硬化型無溶剤系接着剤の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.15質量部以上、より好ましくは、0.2質量部以上であり、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5.0質量部以下、さらに好ましくは、1.0質量部以下、さらに好ましくは、0.5質量部以下、さらに好ましくは、0.4質量部以下、とりわけ好ましくは、0.3質量部以下である。
【0118】
また、シランカップリング剤がポリオール成分に含有される場合には、ポリオール成分の総量100質量部に対して、シランカップリング剤が、例えば、0.3質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下、さらに好ましくは、5質量部以下、さらに好ましくは、1.5質量部以下、とりわけ好ましくは、1.0質量部以下である。
【0119】
二液硬化型無溶剤系接着剤が上記の割合でシランカップリング剤を含有していれば、耐内容物性のさらなる向上を図ることができ、さらには、優れたボイル耐性を得ることができる。とりわけ、シランカップリング剤の含有割合と、リン酸の含有割合との両方が、上記の範囲に調整されていれば、柑橘系果汁(オレンジジュースなど)などに対する耐内容物性の向上を図ることができる。
【0120】
さらに、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分のいずれか一方またはその両方には、必要に応じて、例えば、消泡剤、エポキシ樹脂、触媒、塗工性改良剤、レベリング剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤などの添加剤を適宜配合することができる。
【0121】
添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
【0122】
そして、二液硬化型無溶剤系接着剤では、上記したポリオール成分(主剤)と上記したポリイソシアネート成分(硬化剤)とが、それぞれ調製され、使用時に配合される。
【0123】
ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の配合割合は、接着性の向上を図る観点から、例えば、ポリオール成分の水酸基に対するポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)として、例えば、0.5以上、好ましくは、0.6以上であり、例えば、5以下、好ましくは、3以下である。
【0124】
また、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の配合割合は、ポリイソシアネート成分100質量部に対して、ポリオール成分が、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上であり、例えば、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
【0125】
そして、二液硬化型無溶剤系接着剤は、上記のように処方された後、公知のラミネータによって、被着体に塗工される。
【0126】
被着体としては、例えば、プラスチックフィルム、バリア層などが挙げられる。
【0127】
すなわち、二液硬化型無溶剤系接着剤は、プラスチックフィルムやバリア層を積層して、複合フィルムを作製するためのラミネート接着剤として用いられる。
【0128】
好ましくは、二液硬化型無溶剤系接着剤は、プラスチックフィルムと、バリアフィルムとを貼着するために用いられる。
【0129】
プラスチックフィルムとしては、例えば、オレフィン系重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル系重合体(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレートや、それらのポリアルキレンアリレート単位を主成分とするコポリエステルなど)、ポリアミド系重合体(例えば、ナイロン6、ナイロン66など)、ビニル系重合体(例えば、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体など)などの重合体からなるフィルムが挙げられる。
【0130】
プラスチックフィルムとして、好ましくは、オレフィン系重合体からなるフィルム、より好ましくは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレフィルムが挙げられる。
【0131】
また、プラスチックフィルムとしては、未延伸フィルム(未延伸ポリエチレン、未延伸ポリプロピレンなど)、または、一軸または二軸延伸フィルム(二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリアルキレンテレフタレート、ナイロンなど)のいずれも用いることができる。
【0132】
プラスチックフィルムとして、好ましくは、未延伸フィルムが挙げられ、より好ましくは、未延伸ポリエチレンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルムが挙げられる。
【0133】
また、プラスチックフィルムは、各種共押出フィルム、または、プラスチックフィルム同士を予め貼着した複合フィルムとして、用意することもできる。
【0134】
プラスチックフィルムの厚みは、特に制限されないが、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0135】
バリアフィルムは、気体または液体に対するバリア性を有するフィルムであって、例えば、金属フィルム、無機蒸着フィルムなどが挙げられる。
【0136】
金属フィルムとしては、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅、鉛などからなる金属箔が挙げられる。金属フィルムとして、好ましくは、アルミニウムからなる金属箔が挙げられる。
【0137】
金属フィルムの厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、100μm以下、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、15μm以下である。
【0138】
無機蒸着フィルムは、少なくとも一方面に無機質層が蒸着されたプラスチックフィルムである。
【0139】
無機質層は、蒸着やスパッタリング、ゾル-ゲル法などから形成することができる。無機質層は、例えば、チタン、アルミニウム、ケイ素などの単体またはそれらの元素を含む無機化合物(酸化物など)などからなる。好ましくは、アルミナ単独、シリカ単独、または、アルミナおよびシリカの両方を蒸着した蒸着フィルムが挙げられる。
【0140】
また、無機蒸着フィルムにおいて、無機質層が蒸着されるプラスチックフィルムとしては、上記と同様のものが挙げられ、具体的には、オレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ビニル系重合体などの重合体からなるフィルムが挙げられる。無機質層が蒸着されるプラスチックフィルムとして、好ましくは、ポリエステル系重合体からなるフィルムが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが挙げられる。
【0141】
無機蒸着フィルムは、上記した無機質層と、上記したプラスチックフィルムとの組み合わせにより形成される。無機蒸着フィルムとして、好ましくは、アルミナが蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0142】
バリアフィルムとして、好ましくは、無機蒸着フィルムが挙げられる。
【0143】
バリアフィルムとして、無機蒸着フィルムが用いられる場合、プラスチックフィルムに対する貼着面は、無機蒸着フィルムの一方面(無機質層)または他方面(プラスチックフィルム)のいずれであってもよい。好ましくは、無機蒸着フィルムにおける無機質層が、プラスチックフィルムに対して貼着される。
【0144】
また、プラスチックフィルムおよびバリアフィルムは、必要に応じて、オーバーコート層を有することができる。また、プラスチックフィルムおよびバリアフィルムは、必要に応じて、コロナ放電処理、プライマー処理などの各種処理がされていてもよい。
【0145】
そして、これらのフィルム(プラスチックフィルム、バリアフィルムなど)を、上記二液硬化型無溶剤系接着剤からなる接着層を介して接着することによって、ラミネートフィルムが得られる。
【0146】
より具体的には、ラミネートフィルムの作製では、まず、プラスチックフィルムまたはバリアフィルムのいずれか一方の表面に、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分が配合された接着剤を、塗工する。
【0147】
次いで、その塗工面を、他方のバリアフィルムまたはプラスチックフィルムの表面に貼着して、その後、常温または加温下において、養生して硬化させる。
【0148】
ラミネートフィルムとしては、バリアフィルムおよびプラスチックフィルムを貼着(1次ラミネート)して、1次ラミネート複合フィルムを作製してもよく、さらには、1次ラミネート複合フィルムの少なくとも一方の表面に、他のプラスチックフィルムを貼着(2次ラミネート)して、2次ラミネート複合フィルムを作製することもできる。
【0149】
1次ラミネートでは、通常、送出ロールから、バリアフィルムまたはプラスチックフィルムのいずれか一方を送り出して、他方を貼着し、巻取ロールに巻き取り、必要により、加温・養生(例えば、25~60℃での養生)する。
【0150】
2次ラミネートでは、通常、巻取ロールから、1次ラミネート複合フィルムを送り出して、他のプラスチックフィルムを貼着し、巻取ロールに巻き取り、必要により、加温・養生する。
【0151】
なお、2次ラミネート複合フィルムの作製では、1次ラミネートおよび2次ラミネートの両方において、本発明の二液硬化型無溶剤系接着剤を用いてもよく、あるいは、1次ラミネートおよび2次ラミネートのいずれか一方において、本発明の二液硬化型無溶剤系接着剤を用いて、他方において、他の接着剤を用いることもできる。
【0152】
ラミネート温度(塗工温度)は、例えば、35℃以上、好ましくは、40℃以上である。ラミネートできれば温度上限はないが、通常、100℃以下、好ましくは、90℃以下、さらに好ましくは、85℃以下である。
【0153】
また、ラミネート(塗工)時には、例えば、接着剤を加温して、適切な粘度に調整することができる。加温する場合、その温度は、例えば、35~100℃、好ましくは、35~90℃、さらに好ましくは、40~80℃である。また、その場合の接着剤の粘度は、例えば、50℃において、4000~8000、好ましくは、5000~7500である。なお、加温を100℃以下にすれば、塗工前に、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応を抑制できるので、過度の増粘の防止および良好な作業性を確保することができる。
【0154】
二液硬化型無溶剤系接着剤の塗工量は、各ラミネート工程において、例えば、0.5~5g/m、好ましくは、1~5g/m、さらに好ましくは、1.5~4.5g/mである。
【0155】
また、二液硬化型無溶剤系接着剤が用いられるラミネート装置は、順転写型塗布装置および逆転写型塗布装置(リバースコータ)のいずれを用いることもできる。
【0156】
そして、このような二液硬化型無溶剤系接着剤は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を含み、さらに、未反応のジフェニルメタンジイソシアネートと、リン酸とを、所定割合で含んでいる。
【0157】
そのため、上記の二液硬化型無溶剤系接着剤は、製造効率に優れるとともに、適度なポットライフを有し、外観不良を抑制でき、また、低温硬化性にも優れ、さらに、耐内容物性に優れるラミネートフィルムを製造できる。
【0158】
そのため、本発明の二液硬化型無溶剤系接着剤によれば、食品、飲料、医薬品および医薬部外品などの各種の産業分野におけるラミネートフィルムを好適に得ることができる。
【0159】
また、本発明は、上記した二液硬化型無溶剤系接着剤を用いて得られるラミネートフィルム(1次ラミネートフィルム、2次ラミネートフィルムなど)、すなわち、上記した二液硬化型無溶剤系接着剤からなる接着層を備えるラミネートフィルムを、含んでいる。
【0160】
このようなラミネートフィルムは、上記の二液硬化型無溶剤系接着剤からなる接着層を含むため、製造効率に優れ、外観および耐内容物性にも優れる。
【実施例
【0161】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0162】
<ポリイソシアネート成分>
製造例1(ポリエステルジオールAの製造)
アジピン酸614g、ネオペンチルグリコール477g、および、プロピレングリコール87gを反応器に仕込み、窒素気流下160~220℃でエステル化反応させた。
【0163】
その後、所定の水を留出後、触媒としてオクチル酸錫0.01gを加え、窒素気流下180~220℃でエステル化反応させることにより、ポリエステルジオールAを得た。
【0164】
ポリエステルジオールAの平均官能基数は2.0、水酸基当量は400、数平均分子量は800であった。
【0165】
製造例2(ポリイソシアネート成分A-1の製造)
ポリエステルジオールA110g、ポリプロピレングリコール(商品名D-1000、分子量1000、三井化学SKCポリウレタン社製(以下同じ))320g、および、ルプラネートMI(液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、BASF社製(以下同じ))571gを反応器に仕込み、窒素気流下70~80℃でウレタン化反応させ、ポリイソシアネート成分A-1を得た。
【0166】
ポリイソシアネート成分A-1中の未反応ジフェニルメタンジイソシアネート濃度(理論濃度)は34.3%であり、イソシアネート基当量(JIS K 1603-1(2007)A法に準拠(以下同じ))は274であった。
【0167】
製造例3(ポリイソシアネート成分A-2の製造)
ポリエステルジオールA116g、D-1000(ポリプロピレングリコール、分子量1000)339g、および、ルプラネートMI(ジフェニルメタンジイソシアネート)544gを反応器に仕込み、窒素気流下70~80℃でウレタン化反応させ、ポリイソシアネート成分A-2を得た。
【0168】
ポリイソシアネート成分A-2中の未反応ジフェニルメタンジイソシアネート濃度(理論濃度)は30.3%であり、イソシアネート基当量は295であった。
【0169】
製造例4(ポリイソシアネート成分A-3の製造)
ポリエステルジオールA94g、D-1000(ポリプロピレングリコール、分子量1000)273g、および、ルプラネートMI(ジフェニルメタンジイソシアネート)633gを反応器に仕込み、窒素気流下70~80℃でウレタン化反応させ、ポリイソシアネート成分A-3を得た。
【0170】
ポリイソシアネート成分A-3中の未反応ジフェニルメタンジイソシアネート濃度(理論濃度)は43.9%であり、イソシアネート基当量は233であった。
【0171】
製造例5(ポリイソシアネート成分A-4の製造)
ポリエステルジオールA124g、D-1000(ポリプロピレングリコール、分子量1000)361g、および、ルプラネートMI(ジフェニルメタンジイソシアネート)515gを反応器に仕込み、窒素気流下70~80℃でウレタン化反応させ、ポリイソシアネート成分A-4を得た。
【0172】
ポリイソシアネート成分A-4中の未反応ジフェニルメタンジイソシアネート濃度(理論濃度)は25.8%であり、イソシアネート基当量は323であった。
【0173】
製造例6(ポリイソシアネート成分A-5の製造)
ポリエステルジオールA82g、D-1000(ポリプロピレングリコール、分子量1000)238g、および、ルプラネートMI(ジフェニルメタンジイソシアネート)680gを反応器に仕込み、窒素気流下70~80℃でウレタン化反応させ、ポリイソシアネート成分A-5を得た。
【0174】
ポリイソシアネート成分A-5中の未反応ジフェニルメタンジイソシアネート濃度(理論濃度)は51.0%であり、イソシアネート基当量は210であった。
【0175】
各ポリイソシアネート成分の配合処方、および、ポリオール中の水酸基に対す、ジフェニルメタンジイソシアネート中のイソシアネート基の当量比R(NCO/OH)を、表1に示す。
【0176】
製造例7(ポリイソシアネート成分A-6の製造)
ポリエステルジオールA124g、D-1000(ポリプロピレングリコール、分子量1000)361g、および、TDI(トルエンジイソシアネート)515gを反応器に仕込み、窒素気流下70~80℃でウレタン化反応させた。その後、未反応のトルエンジイソシアネートを薄膜上流にて除去することにより、ポリイソシアネート成分A-6を得た。
【0177】
ポリイソシアネート成分A-6中の未反応トルエンジイソシアネート(TDI)濃度(理論濃度)は0.1%であり、イソシアネート基当量は574であった。
【0178】
各ポリイソシアネート成分の配合処方、および、ポリオール中の水酸基に対す、ジフェニルメタンジイソシアネート中のイソシアネート基の当量比R(NCO/OH)を、表1に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
<ポリオール成分>
製造例8(ポリエステルジオールBの製造)
フタル酸221g、アジピン酸327g、および、ジエチレングリコール587gを反応器に仕込み、窒素気流下160~220℃でエステル化反応させた。
【0181】
その後、所定の水を留出後、触媒としてオクチル酸錫0.01gを加え、窒素気流下180~220℃でエステル化反応させることにより、ポリエステルジオールBを得た。
【0182】
ポリエステルジオールBの平均官能基数は2.0、水酸基当量は375、数平均分子量は700であった。
【0183】
製造例9(ポリオール成分B-1の製造)
ポリエステルジオールB980g、および、トリメチロールプロパン10gを反応器に仕込み、窒素気流下80℃で60分撹拌混合した。
【0184】
その後60℃に降温し、3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル(シランカップリング剤)9g、および、オルトリン酸(以下、単にリン酸と称する。)0.45gを添加し30分撹拌混合して、ポリオール成分B-1を得た。
【0185】
製造例10(ポリオール成分B-2の製造)
ポリエステルジオールB980g、および、グリセリン10gを反応器に仕込み、窒素気流下80℃で60分撹拌混合した。
【0186】
その後60℃に降温し、3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル(シランカップリング剤)9g、および、オルトリン酸(以下、単にリン酸と称する。)0.45gを添加し30分撹拌混合して、ポリオール成分B-2を得た。
【0187】
製造例11(ポリオール成分B-3の製造)
ポリエステルジオールB980g、および、トリメチロールプロパン10gを反応器に仕込み、窒素気流下80℃で60分撹拌混合した。
【0188】
その後60℃に降温し、3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル(シランカップリング剤)4.5g、および、リン酸0.45gを添加し、30分撹拌混合して、ポリオール成分B-3を得た。
【0189】
製造例12(ポリオール成分B-4の製造)
ポリエステルジオールB980g、および、トリメチロールプロパン10gを反応器に仕込み、窒素気流下80℃で60分撹拌混合した。
【0190】
その後60℃に降温し、3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル(シランカップリング剤)97.9g、および、リン酸0.49gを添加し30分撹拌混合して、ポリオール成分B-4を得た。
【0191】
製造例13(ポリオール成分B-5の製造)
ポリエステルジオールB980g、および、トリメチロールプロパン10gを反応器に仕込み、窒素気流下80℃で60分撹拌混合した。
【0192】
その後60℃に降温し、3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル(シランカップリング剤)9g、および、リン酸0.85gを添加し、30分撹拌混合して、ポリオール成分B-5を得た。
【0193】
製造例14(ポリオール成分B-6の製造)
ポリエステルジオールB980g、および、トリメチロールプロパン10gを反応器に仕込み、窒素気流下80℃で60分撹拌混合した。
【0194】
その後60℃に降温し、3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル(シランカップリング剤)9g、および、リン酸0.30gを添加し、30分撹拌混合して、ポリオール成分B-6を得た。
【0195】
製造例15(ポリオール成分B-7の製造)
ポリエステルジオールB980g、および、トリメチロールプロパン10gを反応器に仕込み、窒素気流下80℃で60分撹拌混合した。
【0196】
その後60℃に降温し、3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル(シランカップリング剤)9g、および、リン酸0.10gを添加し、30分撹拌混合して、ポリオール成分B-6を得た。
【0197】
製造例16(ポリオール成分B-8の製造)
ポリエステルジオールB980g、および、トリメチロールプロパン10gを反応器に仕込み、窒素気流下80℃で60分撹拌混合した。
【0198】
その後60℃に降温し、3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル(シランカップリング剤)9g、および、リン酸1.0gを添加し、30分撹拌混合して、ポリオール成分B-8を得た。
【0199】
製造例17(ポリオール成分B-9の製造)
ポリエステルジオールB980g、および、トリメチロールプロパン10gを反応器に仕込み、窒素気流下80℃で60分撹拌混合した。
【0200】
その後60℃に降温し、3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル(シランカップリング剤)9g、および、リン酸0.05gを添加し、30分撹拌混合して、ポリオール成分B-9を得た。
【0201】
製造例18(ポリオール成分B-10の製造)
ポリエステルジオールB980g、および、トリメチロールプロパン10gを反応器に仕込み、窒素気流下80℃で60分撹拌混合した。
【0202】
その後60℃に降温し、3-(トリメトキシシリル)プロピルグリシジルエーテル(シランカップリング剤)533g、および、オルトリン酸(以下、単にリン酸と称する。)0.69gを添加し30分撹拌混合して、ポリオール成分B-10を得た。
【0203】
各ポリオール成分の配合処方を、表2に示す。
【0204】
【表2】
【0205】
<二液硬化型無溶剤系接着剤>
上記により得られた各ポリイソシアネート成分および各ポリオール成分を所定の配合部数(質量部)で組み合わせることにより、各実施例および各比較例の二液硬化型無溶剤系接着剤を用意した。
【0206】
また、得られた二液硬化型無溶剤系接着剤中の、未反応ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)濃度と、リン酸濃度、シランカップリング剤濃度とを、配合割合に基づいて算出した。さらに、これら二液硬化型無溶剤系接着剤を用いて配合液粘度の経時変化を測定し、その結果を表3~表6に示す。
【0207】
評価
各二液硬化型無溶剤系接着剤を用いて、後述の方法により複合フィルムを作製後、それぞれの複合フィルムの物性を評価した。
【0208】
その結果を表3~表6に示す。
【0209】
<複合フィルムAの作製>
タケラックA-310(ポリオール成分、三井化学社製)10重量部と、タケネートA-3(ポリイソシアネート成分、三井化学社製)1重量部を混合して、酢酸エチルで希釈することにより、二液型有機溶剤系接着剤を調製した。
【0210】
そして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm、ルミラーP60、東レフィルム加工社製)とアルミニウム箔(厚み9μm、東洋アルミニウム社製)とを、二液型有機溶剤系接着剤により1次ラミネートして、1次ラミネート複合フィルムを作製した。
【0211】
次いで、1次ラミネート複合フィルム(A)のアルミニウム箔の表面に、無溶剤ラミネータ(岡崎機械工業社製、ノンソルラミネーターTNS-400-200)を用いて、各実施例および各比較例の二液硬化型無溶剤系接着剤を塗工(塗工温度50℃、塗工量約2.0g/m、塗工速度150m/分)した。
【0212】
その後、その塗工面に、未延伸ポリエチレンフィルム(厚み40μm、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムTUX-HC(三井化学東セロ社製))を貼り合わせて、ラミネート複合フィルムAを作製した。その後、ラミネート複合フィルムAを40℃、2日間養生して、二液硬化型無溶剤系接着剤を硬化させた。
【0213】
<評価:オレンジジュース耐性試験>
上記により得られたラミネート複合フィルムAを使用して、6.5×17.5cmの大きさの袋を作製した。なお、袋は、ヒートシールにより作成し、未延伸ポリエチレンフィルムを内側、ポリエチレンテレフタレートフィルムを外側とした。
【0214】
その袋に、内容物として、ポンジュース(果汁100%)を充填した。その袋を、50℃の恒温器に2週間保存した後、内容物を取り出し、アルミニウム箔/未延伸ポリエチレンフィルム間の接着強度を、25℃環境下、試験片幅15mm、引張速度300mm/min、T型剥離試験により測定した。その結果を表3~表6に示す。
【0215】
なお、表3~表6には、T型剥離試験後のラミネート複合フィルムAの状態を、併せて示す。具体的には、「PEノビ」とは、試験後に未延伸ポリエチレンフィルムが伸びていたことを示し、「AL/Ad」とは、アルミニウム箔と接着剤層との間で剥離したことを示す。
【0216】
また、同様に、ヒートシール強度を測定した。その結果を、表3~表6に示す。
【0217】
なお、表3~表6には、ヒートシール強度試験後のラミネート複合フィルムAの状態を、併せて示す。具体的には、「Filmギレ」とは、試験後に未延伸ポリエチレンフィルムが切れていたことを示し、「△剥離」とは、未延伸ポリエチレンフィルムが接着剤層から剥離し、角山状に浮き上がっていたことを示す。
【0218】
<複合フィルムBの作製>
アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み12μm、VMPET、東レフィルム加工社製)のアルミ蒸着面に、無溶剤ラミネータ(岡崎機械工業社製、ノンソルラミネーターTNS-400-200)を用いて、各実施例および各比較例の二液硬化型無溶剤系接着剤を塗工(塗工温度50℃、塗工量約1.5g/m、塗工速度150m/分)した。その後、その塗工面に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm、E-5102、東レフィルム加工社製)を貼り合わせて、1次ラミネート複合フィルム(B)を作製した。
【0219】
次いで、1次ラミネート複合フィルム(B)のE-5102の背面に、無溶剤ラミネータ(岡崎機械工業社製、ノンソルラミネーターTNS-400-200)を用いて、各実施例および各比較例の二液硬化型無溶剤系接着剤を塗工(塗工温度50℃、塗工量約2.0g/m2、塗工速度150m/分)した。
【0220】
その後、その塗工面に、未延伸ポリエチレンフィルム(厚み40μm、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムTUX-HC(三井化学東セロ社製))を貼り合わせて、ラミネート複合フィルムBを作製した。その後、ラミネート複合フィルムBを40℃、2日間養生して、二液硬化型無溶剤系接着剤を硬化させた。
【0221】
<評価:耐内容物(アルカリ)性試験>
上記により得られたラミネート複合フィルムBを使用して、6.5×17.5cmの大きさの袋を作製した。なお、袋は、ヒートシールにより作成し、未延伸ポリエチレンフィルムを内側、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを外側とした。
【0222】
その袋に、内容物として、花王アタック(弱アルカリ性液体洗剤)、を充填した。その袋を、50℃の恒温器に2週間保存した後、内容物を取り出し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(E-5102)/未延伸ポリエチレンフィルム間の接着強度を、25℃環境下、試験片幅15mm、引張速度300mm/min、T型剥離試験により測定した。その結果を表3~表6に示す。
【0223】
また、同様に、ヒートシール強度を測定した。その結果を、表3~表6に示す。
【0224】
なお、表3~表6には、T型剥離試験後のラミネート複合フィルムBの状態を、併せて示す。具体的には、「PET表層剥離」とは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(E-5102)の表層において、接着剤層および未延伸ポリエチレンフィルムが剥離したことを示す。
【0225】
また、同様に、ヒートシール強度を測定した。その結果を、表3~表6に示す。
【0226】
なお、表3~表6には、ヒートシール強度試験後のラミネート複合フィルムBの状態を、併せて示す。具体的には、「Filmギレ」とは、試験後に未延伸ポリエチレンフィルムが切れていたことを示す。
【0227】
<評価:塗工外観>
上記により得られた一次ラミネート複合フィルム(B)のラミネート外観を観察し、以下の基準で評価した。
○:気泡および/または柚子肌が確認されず、外観良好であった。
△:極僅かな気泡が確認された。
×:顕著な気泡および/または柚子肌が確認された。
【0228】
<複合フィルムCの作製>
ナイロン(NY)フィルム(厚み15μm、エンブレムONBC、ユニチカ株式会社製)の内面に、無溶剤ラミネータ(岡崎機械工業社製、ノンソルラミネーターTNS-400-200)を用いて、各実施例および各比較例の二液硬化型無溶剤系接着剤を塗工(塗工温度50℃、塗工量約1.5g/m、塗工速度150m/分)した。その後、その塗工面に、未延伸ポリエチレンフィルム(厚み40μm、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムTUX-HC(三井化学東セロ社製))を貼り合わせて、ラミネート複合フィルムCを作製した。その後、ラミネート複合フィルムCを40℃、2日間養生して、二液硬化型無溶剤系接着剤を硬化させた。
【0229】
<評価:耐内容物(ボイル)性試験>
上記により得られたラミネート複合フィルムCを使用して、6.5×17.5cmの大きさの袋を作製した。なお、袋は、ヒートシールにより作成し、未延伸ポリエチレンフィルムを内側、ナイロンフィルムを外側とした。
【0230】
その袋に、内容物として、水/油(体積比9/1)、を充填した。その袋を、100℃の熱水にて30分ボイルした後、内容物を取り出し、ナイロン/未延伸ポリエチレンフィルム間の接着強度を、25℃環境下、試験片幅15mm、引張速度300mm/min、T型剥離試験により測定した。その結果を表3~表6に示す。
【0231】
また、同様に、ヒートシール強度を測定した。その結果を、表3~表6に示す。
【0232】
なお、表3~表6には、T型剥離試験後のラミネート複合フィルムCの状態を、併せて示す。具体的には、「PE切れ」とは、試験後に未延伸ポリエチレンフィルムが切れていたことを示し、「NY/ad」とは、試験後にナイロンフィルムと接着剤界面とがはがれていたことを示す。
【0233】
また、同様に、ヒートシール強度を測定した。その結果を、表3~表6に示す。
【0234】
なお、表3~表6には、ヒートシール強度試験後のラミネート複合フィルムCの状態を、併せて示す。具体的には、「PE/PE」とは、試験後に未延伸ポリエチレンフィルム間が剥がれていたことを示す。
【0235】
<評価:塗工外観>
上記により得られた一次ラミネート複合フィルム(C)のラミネート外観を観察し、以下の基準で評価した。
○:気泡および/または柚子肌が確認されず、外観良好であった。
△:極僅かな気泡が確認された。
×:顕著な気泡および/または柚子肌が確認された。
【0236】
【表3】
【0237】
【表4】
【0238】
【表5】
【0239】
【表6】
【0240】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該当技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0241】
本発明の二液硬化型無溶剤系接着剤およびラミネートフィルムは、食品、飲料、医薬品および医薬部外品などの各種の産業分野において、好適に用いることができる。