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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】無機蛍光材料を含む複合塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220225BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20220225BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20220225BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20220225BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20220225BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20220225BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20220225BHJP
   C01F 17/00 20200101ALI20220225BHJP
   C01B 21/082 20060101ALI20220225BHJP
   C01B 33/24 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C09D201/00
C09K11/59
C09K11/80
C09K11/64
C09K11/02 Z
C09D5/33
C09D7/62
C01F17/00
C01B21/082 C
C01B33/24
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020071668
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021085034
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2020-04-13
(31)【優先権主張番号】201911205133.1
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519020764
【氏名又は名称】寧波瑞凌新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningbo Radi-Cool Advanced Energy Technologies Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 88, Dongfeng Road, Fenghua District, Ningbo City, Zhejiang Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】楊 栄貴
(72)【発明者】
【氏名】徐 静涛
(72)【発明者】
【氏名】万 容兵
(72)【発明者】
【氏名】王 明輝
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110317521(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105348892(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108329726(CN,A)
【文献】特開2014-231607(JP,A)
【文献】特開2014-015388(JP,A)
【文献】特開2008-121006(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132646(WO,A1)
【文献】特開2012-096213(JP,A)
【文献】特開2011-094143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09K 11/59
C09K 11/80
C09K 11/64
C09K 11/02
C09D 5/33
C09D 7/62
C01F 17/00
C01B 21/082
C01B 33/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光の反射及び8μm~13μm大気の窓の波長域の赤外線を放射させるために用いられる放射冷却塗料無機蛍光材料が添加された複合塗料であって、
前記放射冷却塗料で形成される放射冷却塗層は、太陽光全波長域に対する平均反射率が80%以上であり、8μm~13μm大気の窓の波長域の赤外線に対する放射率が90%以上であり、
前記無機蛍光材料は、発光基質及び前記発光基質にドーピングされた活性化剤を含み、前記発光基質はバンドギャップ≧4eVであり、
前記複合塗料で形成される塗層は、可視光波長域において吸収ピークを有し、300nm~400nm波長域の紫外線に対する前記複合塗料で形成される塗層の平均反射率は、300nm~400nm波長域の紫外線に対する前記射冷却塗層の平均反射率よりも10%~20%高くなり、かつ前記複合塗料で形成される塗層と前記射冷却塗層との太陽光全波長域に対する平均反射率の差は-5%~5%であることを特徴とする、無機蛍光材料を含む複合塗料。
【請求項2】
前記発光基質のバンドギャップは4eV~8eVであることを特徴とする、請求項1に記載の無機蛍光材料を含む複合塗料。
【請求項3】
前記発光基質は、SrSiO、YAl12、CaAlSiN、Y(Al,Ga)12のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の無機蛍光材料を含む複合塗料。
【請求項4】
前記活性化剤は、遷移元素のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項3に記載の無機蛍光材料を含む複合塗料。
【請求項5】
前記活性化剤は、Eu元素、Ce元素、Mn元素、Cr元素のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項4に記載の無機蛍光材料を含む複合塗料。
【請求項6】
前記無機蛍光材料は、EuドープしたSrSiO、CeドープしたYAl12、EuドープしたCaAlSiN、CeドープしたY(Al,Ga)12のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項5に記載の無機蛍光材料を含む複合塗料。
【請求項7】
前記EuドープしたSrSiOの化学式はSr2-aEuSiO、Sr3-eEuSiOのうちの少なくとも1種を含み、CeドープしたYAl12の化学式はY3-bCeAl12を含み、EuドープしたCaAlSiNの化学式はCa1-cEuAlSiNを含み、CeドープしたY(Al,Ga)12の化学式はY3-dCe(Al,Ga)12を含み、a、b、c、d及びeはいずれも原子百分率であり、a、b、c、d及びeはいずれも0.0001~0.5であることを特徴とする、請求項6に記載の無機蛍光材料を含む複合塗料。
【請求項8】
前記複合塗料における無機蛍光材料の質量百分率は0.01%~20%であることを特徴とする、請求項1に記載の無機蛍光材料を含む複合塗料。
【請求項9】
前記複合塗料における無機蛍光材料の質量百分率は8%~20%であることを特徴とする、請求項8に記載の無機蛍光材料を含む複合塗料。
【請求項10】
前記複合塗料で形成される塗層は、太陽光全波長域に対する平均反射率は80%以上であることを特徴とする、請求項に記載の無機蛍光材料を含む複合塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2019年11月29日に出願された中国特許出願201911205133.1号(発明の名称:無機蛍光材料を含む複合塗料)の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、放射冷却の技術分野に関し、特に無機蛍光材料を含む複合塗料に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽光波長域に対して高反射、8μm~13μm波長の赤外線波長域に対して高放射である塗層は、熱の蓄積を低減し、空調エネルギー消費の減少を実現することができる。しかし、太陽光波長域に対して高反射、8μm~13μm波長の赤外線波長域に対して高放射である塗層は、通常白色であり、このような機能塗層に色を付しようとすると、顔料や染料などの着色添加剤を加える必要がある。顔料や染料などの着色添加剤は、可視光の特定の波長域に対して高い吸収を有するので、塗層の太陽光波長域に対する反射率は大幅に低下する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記問題を解決するために、色を呈しながら、形成される塗層が太陽放射波長域で非常に高い反射率を有し、耐久性に優れた、無機蛍光材料を含む複合塗料を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の一実施形態によれば、放射冷却塗料及び無機蛍光材料を含み、前記無機蛍光材料は、発光基質及び前記発光基質にドーピングされた活性化剤を含み、前記発光基質はバンドギャップ≧4eVであり、前記複合塗料で形成される塗層は、可視光波長域に吸収ピークを有し、300nm~400nm波長域の紫外線に対する前記複合塗料で形成される塗層の平均反射率が300nm~400nm波長域の紫外線に対する前記放射冷却塗料で形成される放射冷却塗層の平均反射率よりも10%~20%高く、前記複合塗料で形成される塗層と前記放射冷却塗料で形成される放射冷却塗層との、太陽光全波長域に対する平均反射率の差は-5%~5%である無機蛍光材料を含む複合塗料が提供される。
【0006】
さらに、前記発光基質のバンドギャップは4eV~8eVである。
【0007】
さらに、前記発光基質は、SrSiO、YAl12、CaAlSiN、Y(Al,Ga)12のうちの少なくとも1種を含む。
【0008】
さらに、前記活性化剤は、遷移元素のうちの少なくとも1種を含む。
【0009】
さらに、前記活性化剤は、Eu元素、Ce元素、Mn元素、Cr元素のうちの少なくとも1種を含む。
【0010】
さらに、前記無機蛍光材料は、EuドープしたSrSiO、CeドープしたYAl12、EuドープしたCaAlSiN、CeドープしたY(Al,Ga)12のうちの少なくとも1種を含む。
【0011】
さらに、前記EuドープしたSrSiOの化学式は、Sr2-aEuSiO、Sr3-eEuSiOのうちの少なくとも1種を含み、CeドープしたYAl12の化学式は、Y3-bCeAl12を含み、EuドープしたCaAlSiNの化学式は、Ca1-cEuAlSiNを含み、CeドープしたY(Al,Ga)12の化学式は、Y3-dCe(Al,Ga)12を含み、a、b、c、d及びeはいずれも原子百分率であり、a、b、c、d及びeはいずれも0.0001~0.5である。
【0012】
さらに、前記複合塗料における無機蛍光材料の質量百分率は0.01%~20%である。
【0013】
さらに、前記複合塗料における無機蛍光材料の質量百分率は8%~20%である。
【0014】
さらに、前記放射冷却塗料で形成される放射冷却塗層は、太陽光全波長域に対する平均反射率が80%以上である。
【0015】
さらに、前記複合塗料で形成される塗層は、太陽光全波長域に対する平均反射率が80%以上である。
【0016】
紫外線波長域から可視光波長域での材料の吸収は、主に電子遷移に由来し、赤外線波長域での吸収は、主にフォノン振動に由来する。本発明の無機蛍光材料において、バンドギャップ≧4eVの発光基質は、太陽放射波長域では電子がバンドギャップを超えることによる吸収もなく、フォノン振動による吸収もない。活性化剤の選択により、無機蛍光材料は、可視光波長域のみにおいて選択的に吸収して1つの吸収ピークを生成し、対応する1つの発光ピークを生成することができ、異なる吸収ピーク(及び発光ピーク)の位置に応じて異なる色を呈することができる。
【0017】
また、異なる物体は、分子構造及び原子構造が異なるため、固有振動数が異なる。紫外線光波の周波数が放射冷却塗料の固有振動数とマッチングするため、放射冷却塗料は、紫外線波長域の光の放射エネルギーを大量に吸収できることにより、放射冷却塗料は、紫外線に照射されるときに、紫外線波長域において非常に高い吸収率を有する。しかし、無機蛍光材料の発光基質のバンドギャップ≧4eVである場合、無機蛍光材料を放射冷却塗料に添加して複合塗料を形成すると、複合塗料の固有振動数が紫外線光波の周波数とマッチングしなくなるので、複合塗料は、紫外線波長域の光に対する放射冷却塗料の吸収を顕著に低減することができる。
【0018】
従って、本発明に係る無機蛍光材料を含む複合塗料で形成される塗層は、紫外線波長域での反射率が高く、さらに可視光波長域での吸収と組み合わせて、複合塗料で形成される塗層と放射冷却塗料で形成される放射冷却塗層との太陽光全波長域に対する平均反射率の差が-5%~5%に維持される。これによって、本発明に係る無機蛍光材料を含む複合塗料は、色を呈しながら、形成される塗層が太陽放射波長域に対する反射率を大幅に低減することがなく、耐久性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電子吸収遷移の模式図である。
図2】f電子エネルギー準位の模式図である。
図3】本発明の実施例2及び実施例6~11で提供される蛍光材料の質量百分率が異なる複合塗料で形成される塗層の300nm~600nm波長域に対する反射率の曲線図である。
図4】本発明の実施例1~4及び比較例2~5で使用される着色添加剤の吸収スペクトルである。同図において、aは比較例2の吸収スペクトル、bは比較例3の吸収スペクトル、cは比較例4の吸収スペクトル、dは比較例5の吸収スペクトルである。
図5】本発明の実施例1~4及び比較例1の複合塗料で形成される塗層の反射スペクトルである。
図6】本発明の実施例2~4の複合塗料で形成される塗層の降温効果図である。同図において、eは環境温度、fは実施例2の塗層の表面温度、gは実施例3の塗層の表面温度、hは実施例4の塗層の表面温度、Δfは実施例2の降温効果図(Δf=e-f)、Δgは実施例3の降温効果図(Δg=e-g)、Δhは実施例4の降温効果図(Δh=e-h)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明で提供される無機蛍光材料を含む複合塗料をさらに説明する。
【0021】
塗料の色調整は、顔料や染料などの着色添加剤を添加するだけで実現可能であり、方法が簡単である。しかし、太陽光波長域に対して高反射、波長8μm~13μmの赤外線波長域に対して高放射である塗料の色調整では、着色添加剤の吸収スペクトルが厳格に制御される必要があり、着色添加剤が狭帯域吸収を有することが要求されている。
【0022】
図1に示すように、バンド構造の観点から、狭帯域吸収を有する着色添加剤は、特定の禁制帯幅Egを有するべきである。これによって、室温で光子エネルギー(hv)がEg-kTに等しい場合、価電子帯電子はこの光子により励起され、禁制帯を超えて伝導帯に入ることができる。この場合、この光子は吸収され、電子は価電子帯に戻ることができ、緩和によりフォノンを生成することもできる。また、伝導帯又は価電子帯には拡張状態が存在すると、光子エネルギーがEg-kTよりも大きい場合に、いずれも吸収され得る。Egが比較的大きい場合、吸収ピークは紫色又は紫外線波長域に近いので、吸収全体に対する影響が小さい。一方、Egが比較的小さい着色添加剤である場合、吸収ピークが広過ぎるので、最終的に着色添加剤の吸収が高くなり過ぎる恐れがある。そこで、狭帯域吸収を実現するために、着色添加剤の伝導帯及び価電子帯は、できるだけ局在状態にされる必要がある。
【0023】
また、着色添加剤は非常に大きなバンドギャップを有すると、太陽放射スペクトルにおける光子はいずれも価電子帯電子を伝導帯へ励起することができないが、禁制帯にいくつかの不純物帯が存在するので、狭帯域吸収を形成することもできる。図2に示すように、いくつかの絶縁体に希土類元素を導入することにより、結晶場の作用下でf電子エネルギー準位が分裂した2つのfエネルギー準位はちょうど禁制帯に落ち、狭帯域吸収を形成することができる。
【0024】
さらに、フォノン振動による赤外線波長域の光の吸収を回避するために、着色添加剤の赤外線波長域を選別する必要がある。
【0025】
従って、様々な色を呈しながら、太陽放射波長域に対して非常に高い反射率を有し、大気の窓の波長域の赤外線に対して高放射率を有する複合塗料を得るために、本発明では、無機蛍光材料を含む複合塗料が提供される。前記複合塗料は、放射冷却塗料及び無機蛍光材料を含み、前記無機蛍光材料は、発光基質及び前記発光基質にドーピングされた活性化剤を含み、前記発光基質はバンドギャップ≧4eVである。バンドギャップ≧4eVの発光基質は、太陽放射波長域では電子がバンドギャップを超えることによる吸収もなく、フォノン振動による吸収もない。活性化剤の選択により、無機蛍光材料は、可視光波長域のみにおいて選択的に吸収して1つの発光ピークを生成し、対応する1つの吸収ピーク(及び発光ピーク)を生成することができ、異なる吸収ピーク(及び発光ピーク)の位置に応じて異なる色を呈することができる。従って、本発明の無機蛍光材料は、可視光波長域にのみ1つの吸収ピークがあり、紫外線波長域及び赤外線波長域のいずれにも吸収ピークがない。
【0026】
また、異なる物体は、分子構造及び原子構造が異なるため、固有振動数が異なる。紫外線光波の周波数が放射冷却塗料の固有振動数とマッチングするため、放射冷却塗料は、紫外線波長域の光の放射エネルギーを大量に吸収できることにより、放射冷却塗料は、紫外線に照射されるときに、紫外線波長域において非常に高い吸収率を有する。しかし、無機蛍光材料の発光基質のバンドギャップ≧4eVである場合、無機蛍光材料を放射冷却塗料に添加して複合塗料を形成すると、複合塗料の固有振動数が紫外線光波の周波数とマッチングしなくなるので、複合塗料は、紫外線波長域の光に対する放射冷却塗料の吸収を顕著に低減することができる。
【0027】
具体的には、300nm~400nm波長域の紫外線に対する本発明の無機蛍光材料を含む複合塗料で形成される塗層の平均反射率は、300nm~400nm波長域の紫外線に対する放射冷却塗料で形成される放射冷却塗層の平均反射率よりも10%~20%高い。
【0028】
従って、本発明の無機蛍光材料により、色調整が実現されるとともに、複合塗料で形成される塗層の紫外線波長域での反射率が高くなり、さらに可視光波長域での吸収と組み合わせて、前記無機蛍光材料を含む複合塗料で形成される塗層は、放射冷却塗料で形成される放射冷却塗層に対して反射率全体の変化率が-5%~5%、さらに-3%~5%に維持され、無機蛍光材料の添加により塗層の反射率及び放射率が大幅に低減することがない。
【0029】
いくつかの実施例において、前記発光基質のバンドギャップは、4eV~8eVであることがさらに好ましい。
【0030】
いくつかの実施例において、前記発光基質は、SrSiO、YAl12、CaAlSiN、Y(Al,Ga)12のうちの少なくとも1種を含み、前記活性化剤は、遷移元素のうちの少なくとも1種を含み、Eu元素、Ce元素、Mn元素、Cr元素のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0031】
さらに、前記無機蛍光材料は、吸収が低く、コストが低いEuドープしたSrSiO(SrSiO:Eu)、CeドープしたYAl12(YAl12:Ce)、EuドープしたCaAlSiN(CaAlSiN:Eu)、CeドープしたY(Al,Ga)12(Y(Al,Ga)12:Ce)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0032】
さらに、前記EuドープしたSrSiOの化学式はSr2-aEuSiO、Sr3-eEuSiOのうちの少なくとも1種を含み、CeドープしたYAl12の化学式はY3-bCeAl12を含み、EuドープしたCaAlSiNの化学式はCa1-cEuAlSiNを含み、CeドープしたY(Al,Ga)12の化学式はY3-dCe(Al,Ga)12を含み、a、b、c及びdはいずれも原子百分率であり、a、b、c及びdはいずれも0.0001~0.5である。
【0033】
図3から分かるように、複合塗料における前記無機蛍光材料の添加量によって、形成される塗層の紫外線反射率は異なる。いくつかの実施例において、前記複合塗料における無機蛍光材料の質量百分率は、好ましくは0.01%~20%、さらに好ましくは2%~20%、4%~20%、8%~20%、15%~20%である。
【0034】
いくつかの実施例において、前記放射冷却塗料で形成される放射冷却塗層は、太陽光全波長域に対する平均反射率が80%以上であり、好ましくは90%以上である。
【0035】
従って、放射冷却塗料の選択により、放射冷却塗料に前記無機蛍光材料を添加した後に、複合塗料が色を呈することが確保されるとともに、形成される塗層は、太陽光全波長域に対する平均反射率が85%以上であり、8μm~13μm大気の窓の波長域の赤外線に対する放射率が90%以上に保持され、即ち、太陽光波長域に対して高反射率、8μm~13μm波長の赤外線波長域に対して高放射率を有する複合塗料が得られる。
【0036】
さらに、前記放射冷却塗料で形成される放射冷却塗層の太陽光全波長域に対する平均反射率、及び前記無機蛍光材料の吸収を調整することにより、前記複合塗料で形成される塗層は、太陽光全波長域に対する平均反射率が80%以上、好ましくは90%以上になることができる。
【0037】
従って、無機蛍光材料を含む複合塗料を建物の外面に塗布することにより、形成される塗層は、様々な色を呈することができ、太陽放射波長域に対して非常に高い反射率及び放射率を有するので、建物の熱を減少させ、エアコンなどの冷却設備のエネルギー消費量を削減することができる。
【0038】
以下、具体的な実施例により前記無機蛍光材料を含む複合塗料をさらに説明する。
【0039】
比較例1
本比較例では、放射冷却塗料に着色添加剤が添加されず、塗料は白色であった。
【0040】
比較例2
本比較例では、比較例1をもとに、質量百分率が8%の市販の黄緑色染料が添加された。
【0041】
比較例3
本比較例では、比較例1をもとに、質量百分率が8%の市販の青色染料が添加された。
【0042】
比較例4
本比較例では、比較例1をもとに、質量百分率が8%の市販の黄色染料が添加された。
【0043】
比較例5
本比較例では、比較例1をもとに、質量百分率が8%の市販の赤色染料が添加された。
【0044】
実施例1:
本実施例では、比較例1をもとに、質量百分率が8%の黄緑色のCeドープしたY(Al,Ga)12、即ちY(Al,Ga)12:Ce(化学式:Y3-dCe(Al,Ga)12)が添加された。ここで、発光基質Y(Al,Ga)12のバンドギャップは6.4eV、dは0.2であった。
【0045】
実施例2
本実施例では、比較例1をもとに、質量百分率が8%の青色のEuドープしたSrSiO、即ちSrSiO:Eu(化学式:Sr2-aEuSiO)が添加された。ここで、発光基質SrSiOのバンドギャップは5.3eV、aは0.005であった。
【0046】
実施例3
本実施例では、比較例1をもとに、質量百分率が8%の黄色のCeドープしたYAl12、即ちYAl12:Ce(化学式:Y3-bCeAl12)が添加された。ここで、発光基質YAl12のバンドギャップは6.2eV、bは0.3であった。
【0047】
実施例4
本実施例では、比較例1をもとに、質量百分率が8%の赤色のEuドープしたCaAlSiN、即ちCaAlSiN:Eu(化学式:Ca1-cEuAlSiN)が添加された。ここで、発光基質CaAlSiNのバンドギャップは4.8eV、cは0.01であった。
【0048】
図4から分かるように、実施例1~4の塗層は、可視光波長域にのみ1つの吸収ピークがあり、比較例2~5の塗層は、全波長域に吸収があるので、図5に示すように、本発明の無機蛍光材料を添加した塗層は、色を呈するが、塗層の反射率が低下することがない。
【0049】
本発明の実施例2~4の複合塗料を同じプロセスに従って基板に塗布し、架橋硬化温度が25℃の条件下で、厚さが150μmの塗層が作成された。図6から分かるように、本発明の複合塗料で形成される塗層は、基板温度を効果的に低下させることができる。
【0050】
実施例5
本実施例は、EuドープしたSrSiO、即ちSrSiO:Eu(化学式:Sr3-eEuSiO)が添加され、発光基質SrSiOのバンドギャップが5.3eV、eが0.05である以外、実施例2と同様である。
【0051】
実施例6
本実施例は、添加されたSrSiO:Euの質量百分率が2%である以外、実施例2と同様である。
【0052】
実施例7
本実施例は、添加されたSrSiO:Euの質量百分率が4%である以外、実施例2と同様である。
【0053】
実施例8
本実施例は、添加されたSrSiO:Euの質量百分率が6%である以外、実施例2と同様である。
【0054】
実施例9
本実施例は、添加されたSrSiO:Euの質量百分率が10%である以外、実施例2と同様である。
【0055】
実施例10
本実施例は、添加されたSrSiO:Euの質量百分率が15%である以外、実施例2と同様である。
【0056】
実施例11
本実施例は、添加されたSrSiO:Euの質量百分率が20%である以外、実施例2と同様である。
【0057】
前記実施例及び比較例の塗料を同じプロセスに従って基板に塗布し、架橋硬化温度が25℃の条件下で厚さが150μmの塗層が作成された。各塗層の反射率及び8μm~13μmでの放射率を測定し、結果を表1に示す。
【0058】
表1
【0059】
表1から分かるように、本発明の無機蛍光材料が添加された複合塗料で形成される塗層は、色を呈するとともに、太陽光波長域に対して非常に高い反射率を有し、8μm~13μm波長の赤外線波長域に対して非常に高い放射率を有し、建物の外面に塗布することにより、建物の熱を減少させ、エアコンなどの冷却設備のエネルギー消費量を削減することができる。
【0060】
以上の実施例の各技術特徴は、互いに任意に組み合わせることができる。説明の簡潔のために、前記実施例の各技術特徴のすべての可能な組み合わせを説明しなかったが、これらの技術特徴の組み合わせに矛盾がない限り、本発明の範囲に含まれると理解されるべきである。
【0061】
以上の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を述べるものに過ぎず、説明が具体的で詳しいが、本発明の範囲を制限するものとみなされるべきではない。当業者であれば、本発明の思想から逸脱しない限り、いくつかの変形及び改良を行うことができ、これらの変形及び改良はいずれも本発明の保護範囲に含まれる。従って、本発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲に従うものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6