IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタテクノクラフト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-サイレン装置 図1
  • 特許-サイレン装置 図2
  • 特許-サイレン装置 図3
  • 特許-サイレン装置 図4
  • 特許-サイレン装置 図5
  • 特許-サイレン装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】サイレン装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
G10K15/04 304C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020120371
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017680
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2020-11-18
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591159055
【氏名又は名称】株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】竹内 将人
(72)【発明者】
【氏名】井上 博喜
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正臣
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-069960(JP,A)
【文献】特開昭63-293599(JP,A)
【文献】実開昭61-138000(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急車両に搭載されるサイレン装置であって、
基本サイレン音に、前記基本サイレン音の周波数の倍音成分であって、かつ所定の周波数領域における倍音成分を付加した第1合成サイレン音を生成するサイレン音生成部を備え、
前記サイレン音生成部は、前記基本サイレン音に、前記基本サイレン音の周波数の1/2倍音成分および2倍音成分を付加した第2合成サイレン音を生成し、
前記サイレン音生成部で生成された前記第2合成サイレン音を出力するスピーカをさらに備え、
前記第2合成サイレン音は、前記基本サイレン音の周波数が互いに異なる第1サイレン音と第2サイレン音とを有し、
前記スピーカは、前記第1サイレン音と前記第2サイレン音との音圧差がゼロになるように前記第2合成サイレン音を出力する
サイレン装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサイレン装置であって、
前記所定の周波数領域は、2kHz~4kHzである
サイレン装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のサイレン装置であって、
前記第2合成サイレン音の波形に対して、当該波形の位相および周波数の少なくとも一方を所定量変化させた波形を付加するコーラス処理部をさらに備えた
サイレン装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のサイレン装置であって、
前記サイレン音生成部は、前記基本サイレン音に2160Hz近傍の警戒音を付加した第3合成サイレン音を生成する
サイレン装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のサイレン装置であって、
前記サイレン音生成部で用いられる音データを記憶する記憶部をさらに備えた
サイレン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救急車等の緊急車両に搭載されるサイレン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
救急車等の緊急車両には、緊急時等にサイレン音を出力して、周囲に注意を促すためのサイレン装置が搭載されている。例えば、救急車に搭載されたサイレン装置は、法令等に基づいて、相対的に高い960Hzの高サイレン音(ピー音)と、相対的に低い770Hzの低サイレン音(ポー音)とを、一定周期で交互に繰り返し出力している。
【0003】
このようなサイレン装置として、基本サイレン音に、基本サイレン音よりも高音域の第1付加サイレン音を付加した第1合成サイレン音を生成して、緊急車両から出力するサイレン音出力装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このサイレン音出力装置では、第1合成サイレン音がスピーカから出力される際、第1合成サイレン音がスピーカのホーン等を通過することで、基本サイレン音の倍音(2倍音、3倍音・・・)および第1付加サイレン音の倍音(2倍音、3倍音・・・)も同時に生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-125253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたサイレン音出力装置において、生成される第1合成サイレン音の倍音は、意図的に生成されるものではなく、スピーカの特性によって生成されるものであり、生成される音は、2倍音、3倍音と倍音成分が大きくなるにつれて徐々に小さくなる。そのため、人間の聴覚特性上感度の高い周波数成分の音が必ずしも大きくなるとは限らず、緊急車両の認知性を十分に高めることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1形態によれば、緊急車両に搭載されるサイレン装置が提供される。このサイレン装置は、基本サイレン音に、基本サイレン音の周波数の倍音成分であって、かつ所定の周波数領域における倍音成分を付加した第1合成サイレン音を生成するサイレン音生成部を備えている。これによれば、人間の聴覚特性上感度の高い周波数成分の音を大きくすることができる。そのため、緊急車両の認知性を向上させることができる。
【0008】
本発明の第2形態によれば、所定の周波数領域は、2kHz~4kHzである。これによれば、人間の聴覚特性上感度の高い2kHz~4kHzの音を大きくすることができるので、緊急車両の認知性を向上させることができる。
【0009】
本発明の第3形態によれば、サイレン音生成部は、基本サイレン音に、基本サイレン音の周波数の1/2倍音成分および2倍音成分を付加した第2合成サイレン音を生成する。これによれば、サイレン音の甲高さを抑えて不快感を軽減することができる。
【0010】
本発明の第4形態によれば、サイレン装置は、第2合成サイレン音の波形に対して、当該波形の位相および周波数の少なくとも一方を所定量変化させた波形を付加するコーラス処理部をさらに備えている。これによれば、第2合成サイレン音にコーラス効果を付与することで、サイレン音にソフトな印象を与えることができる。
【0011】
本発明の第5形態によれば、サイレン音生成部で生成された第2合成サイレン音を出力するスピーカをさらに備え、第2合成サイレン音は、基本サイレン音の周波数が互いに異なる第1サイレン音と第2サイレン音とを有し、スピーカは、第1サイレン音と第2サイレン音との音圧差が所定値以下になるように第2合成サイレン音を出力する。これによれば、第1サイレン音と第2サイレン音との音圧の変動によって生じる不快感を軽減することができる。
【0012】
本発明の第6形態によれば、サイレン音生成部は、基本サイレン音に2160Hz近傍の警戒音を付加した第3合成サイレン音を生成する。これによれば、鹿が警戒したときに出す鳴き声を模した音として、主要周波数が2160Hz近傍の警戒音を付加することで、鹿との遭遇確率を低減することができる。
【0013】
本発明の第7形態によれば、サイレン装置は、サイレン音生成部で用いられる音データを記憶する記憶部をさらに備えている。これによれば、生成する音毎に音生成部を設ける必要がなく、1つのサイレン音生成部で複数の音を生成することができるので、サイレン装置の構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るサイレン装置を示すブロック構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係るサイレン音生成部によって生成される第1合成サイレン音を示すグラフである。
図3】本発明の一実施形態に係るスピーカから出力される第2合成サイレン音を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態に係るサイレン音生成部によって生成される第3合成サイレン音を示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態に係るコーラス処理部によって付与されるコーラス効果を説明するグラフである。
図6】本発明の一実施形態に係るコーラス処理部によって付与されるコーラス効果を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る、緊急車両に搭載されるサイレン装置の好適な実施形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。なお、以下の実施形態では、緊急車両が救急車である場合を例に挙げて説明するが、これに限定されず、緊急車両は消防車やパトカー等であってもよい。また、本発明に係るサイレン装置は、緊急車両に後付け可能な装置である。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るサイレン装置を示すブロック構成図である。図1において、サイレン装置100は、操作部10、記憶部20、サイレン音生成部30、コーラス処理部40、アンプ50およびスピーカ60を備えている。ここで、サイレン音生成部30およびコーラス処理部40は、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムを格納したメモリとを有するマイクロプロセッサで構成されている。
【0017】
操作部10は、例えば救急車に設けられたサイレンアンプの操作盤であり、救急車の乗員によって操作されるサイレンスイッチ11、交差点モードスイッチ12、住宅モードスイッチ13および鹿よけモードスイッチ14を有している。また、操作部10は、各スイッチの操作状態をサイレン音生成部30に出力する。
【0018】
サイレンスイッチ11は、スピーカ60からのサイレン音の発生および停止を切り替える際に、乗員によって押下される。交差点モードスイッチ12は、救急車が例えば交差点に進入する際に、乗員によって押下される。住宅モードスイッチ13は、救急車が例えば住宅街を走行する際に、乗員によって押下される。鹿よけモードスイッチ14は、救急車が例えば山間部を走行しており、鹿との遭遇を回避したい場合に、乗員によって押下される。なお、各スイッチが押下されるタイミングは、これに限定されず、乗員は、任意のタイミングで各スイッチを押下してよい。
【0019】
記憶部20は、基本サイレン音データ21、第1合成サイレン音用データ22、第2合成サイレン音用データ23および第3合成サイレン音用データ24を有している。ここで、記憶部20は、サイレン装置100と一体的に設けられてもよいし、外付けの記憶媒体であってもよい。音データを記憶する記憶部20を設けたことにより、生成する音毎に音生成部を設ける必要がなく、1つのサイレン音生成部30で複数の音を生成することができるので、サイレン装置100の構成を簡素化することができる。
【0020】
基本サイレン音データ21は、960Hzの高サイレン音(ピー音)および770Hzの低サイレン音(ポー音)のデータを記憶している。第1合成サイレン音用データ22は、高サイレン音の倍音成分であって、人間の聴覚特性上感度の高い2kHz~4kHzの範囲内にある2880Hz(3倍音)、3840Hz(4倍音)のデータ、および低サイレン音の倍音成分であって、2kHz~4kHzの範囲内にある2310Hz(3倍音)、3080Hz(4倍音)のデータを記憶している。
【0021】
第2合成サイレン音用データ23は、高サイレン音の1/2倍音成分および2倍音成分である480Hz、1920Hzのデータ、および低サイレン音の1/2倍音成分および2倍音成分である385Hz、1540Hzのデータを記憶している。第3合成サイレン音用データ24は、鹿が警戒したときに出す鳴き声を模した音であって、主要周波数が2160Hzの音(以下、鹿の警戒声とも称する)のデータを記憶している。
【0022】
サイレン音生成部30は、操作部10から入力される各スイッチの操作状態に基づいて、記憶部20から音データを取得し、サイレン音を生成してコーラス処理部40に出力する。コーラス処理部40は、サイレン音生成部30から入力されたサイレン音にコーラス効果を付与してアンプ50に出力する。アンプ50は、コーラス処理部40から入力されたサイレン音を増幅し、スピーカ60は、アンプ50で増幅されたサイレン音を出力する。以下、サイレン音生成部30およびコーラス処理部40の詳細な動作について説明する。
【0023】
サイレン音生成部30は、サイレンスイッチ11のみが押下されている場合に、通常の緊急走行時に用いられる通常サイレン音を生成する。具体的には、サイレン音生成部30は、記憶部20から基本サイレン音データ21を取得し、基本サイレン音である960Hzの高サイレン音(ピー音)と770Hzの低サイレン音(ポー音)とが交互に繰り返される通常サイレン音を生成する。
【0024】
また、サイレン音生成部30は、サイレンスイッチ11に加えて、交差点モードスイッチ12が押下されている場合に、救急車が交差点等に進入する際に用いられる第1合成サイレン音を生成する。具体的には、サイレン音生成部30は、記憶部20から基本サイレン音データ21および第1合成サイレン音用データ22を取得し、基本サイレン音に倍音成分を付加した第1合成サイレン音を生成する。
【0025】
すなわち、サイレン音生成部30は、基本サイレン音である960Hzの高サイレン音に、2880Hz(3倍音)、3840Hz(4倍音)を付加した音(ピー音)と、基本サイレン音である770Hzの低サイレン音に、2310Hz(3倍音)、3080Hz(4倍音)を付加した音(ポー音)とが交互に繰り返される第1合成サイレン音を生成する。
【0026】
図2は、サイレン音生成部30によって生成される第1合成サイレン音を示すグラフである。図2の横軸は周波数(Hz)を示し、縦軸はスペクトルレベル(dB)を示す。図2において、第1合成サイレン音は、基本サイレン音に、人間の聴覚特性上感度の高い2kHz~4kHzの範囲内にある3倍音および4倍音を付加しているので、交差点付近の他の車両の運転者が第1合成サイレン音に気付きやすくなる。そのため、救急車の認知性を向上させることができる。なお、図2に示した第1合成サイレン音において、基本サイレン音の3倍音および4倍音以外の倍音成分は、スピーカ60の特性によって生成されるものである。
【0027】
また、サイレン音生成部30は、サイレンスイッチ11に加えて、住宅モードスイッチ13が押下されている場合に、救急車が住宅街等を走行する際に用いられる第2合成サイレン音を生成する。具体的には、サイレン音生成部30は、記憶部20から基本サイレン音データ21および第2合成サイレン音用データ23を取得し、基本サイレン音に1/2倍音成分および2倍音成分を付加した第2合成サイレン音を生成する。
【0028】
すなわち、サイレン音生成部30は、基本サイレン音である960Hzの高サイレン音に、480Hz(1/2倍音)、1920Hz(2倍音)を付加した音(ピー音)と、基本サイレン音である770Hzの低サイレン音に、385Hz(1/2倍音)、1540Hz(2倍音)を付加した音(ポー音)とが交互に繰り返される第2合成サイレン音を生成する。
【0029】
このように、第2合成サイレン音は、基本サイレン音に、基本サイレン音の周波数の1/2倍音成分および2倍音成分を付加している。そのため、救急車が住宅街を走行している場合に、サイレン音のシャープネスを下げることで甲高さを抑え、近隣の住民に与える不快感を軽減することができる。
【0030】
さらに、スピーカ60は、第2合成サイレン音について、基本サイレン音である960Hzの高サイレン音に、480Hz(1/2倍音)、1920Hz(2倍音)を付加した音(ピー音)を第1サイレン音とし、基本サイレン音である770Hzの低サイレン音に、385Hz(1/2倍音)、1540Hz(2倍音)を付加した音(ポー音)を第2サイレン音としたとき、第1サイレン音と第2サイレン音との音圧差が任意に設定される所定値以下(望ましくは、ゼロ)になるように、サイレン音を出力する。ここで、音圧は、スピーカ60の特性によって決定されるものであり、第1サイレン音と第2サイレン音との音圧差が所定値以下になるように、スピーカ60の特性があらかじめ設定されている。
【0031】
図3は、スピーカ60から出力される第2合成サイレン音を示すグラフである。図3の横軸は時間(s)を示し、縦軸は音圧(dB)を示す。図3において、第2合成サイレン音は、第1サイレン音と第2サイレン音との音圧差が所定値以下になるように生成されている。そのため、第1サイレン音と第2サイレン音との音圧の変動により、近隣の住民に与えられる不快感を軽減することができる。
【0032】
また、サイレン音生成部30は、サイレンスイッチ11に加えて、鹿よけモードスイッチ14が押下されている場合に、救急車が山間部等を走行しており、鹿との遭遇を避けたいときに用いられる第3合成サイレン音を生成する。具体的には、サイレン音生成部30は、記憶部20から基本サイレン音データ21および第3合成サイレン音用データ24を取得し、基本サイレン音に、鹿が警戒したときに出す鳴き声を模した音であって、主要周波数が2160Hzの音(鹿の警戒声)を付加した第3合成サイレン音を生成する。
【0033】
図4は、サイレン音生成部30によって生成される第3合成サイレン音を示すグラフである。図4の横軸は時間を示し、縦軸は周波数(Hz)を示す。図4において、第3合成サイレン音は、基本サイレン音に、鹿の警戒声を付加している。そのため、救急車が山間部を走行している場合に、鹿との遭遇確率を低減することができる。
【0034】
なお、サイレン音生成部30は、基本サイレン音に代えて、第1合成サイレン音に、鹿の警戒声を付加してもよい。また、鹿の警戒声は、鹿との遭遇頻度に合わせて、任意のサイクルで付加されてもよい。例えば、鹿に遭遇する頻度の低い箇所では、基本サイレン音の5サイクルに対して1回、鹿の警戒声が付加さてもよい。さらに、緊急走行時以外にも、任意の時間間隔で鹿の警戒声を発生させることで、救急車の帰還時における鹿との遭遇確率を低減することができる。
【0035】
図1に戻って、コーラス処理部40は、サイレン音生成部30から出力される第2合成サイレン音の波形に対して、当該波形の位相および周波数の少なくとも一方を、任意に設定される所定量変化させた波形を付加する。コーラス処理部40による上記の処理により、第2合成サイレン音に、コーラス効果が付与される。
【0036】
コーラス効果とは、一般的に音楽で用いられているものであり、ある音の波形に対して、当該波形の位相や周波数をずらした波形を付加することにより元の音をぼかし、音の広がり感や包まれ感を生じさせ、ソフトな印象を与える効果のことである。
【0037】
図5は、コーラス処理部40によって付与されるコーラス効果を説明するグラフである。図5の横軸は周波数(Hz)を示し、縦軸はラウドネス(sone)を示す。また、図5の実線はコーラス効果を付与した第2合成サイレン音の波形を示し、一点鎖線はコーラス効果を付与しない第2合成サイレン音の波形を示す。図5によれば、第2合成サイレン音にコーラス効果を付与することで、コーラス効果を付与しない場合と比較して、各周波数において、うるささを示す物理量であるラウドネスを低減させることができ、サイレン音にソフトな印象を与えられることが分かる。
【0038】
図6は、コーラス処理部40によって付与されるコーラス効果を説明するグラフである。図6の横軸は時間(s)を示し、縦軸はラウドネス(sone)を示す。また、図6の実線はコーラス効果を付与した第2合成サイレン音の波形を示し、一点鎖線はコーラス効果を付与しない第2合成サイレン音の波形を示す。図6によれば、第2合成サイレン音にコーラス効果を付与することで、コーラス効果を付与しない場合と比較して、ピークではコーラス効果を付与しない場合を超えている箇所があるものの、全体的にラウドネスを低減させることができ、サイレン音にソフトな印象を与えられることが分かる。
【0039】
このように、第2合成サイレン音にコーラス効果を付与することで、近隣の住民に与えられる不快感を軽減することができる。また、ラフネスを抑えることで音の強弱感が低減されるため、耳障りなノイズ感や変動感を薄めることができる。
【0040】
このように、本発明の一実施形態に係るサイレン装置によれば、基本サイレン音に、基本サイレン音の周波数の倍音成分であって、かつ所定の周波数領域における倍音成分を付加した第1合成サイレン音を生成するサイレン音生成部を備えている。これによれば、人間の聴覚特性上感度の高い周波数成分の音を大きくすることができる。そのため、緊急車両の認知性を向上させることができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…操作部
11…サイレンスイッチ
12…交差点モードスイッチ
13…住宅モードスイッチ
14…鹿よけモードスイッチ
20…記憶部
21…基本サイレン音データ
22…第1合成サイレン音用データ
23…第2合成サイレン音用データ
24…第3合成サイレン音用データ
30…サイレン音生成部
40…コーラス処理部
50…アンプ
60…スピーカ
100…サイレン装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6